108談会の特集を組んだ。個人の特定を避けるため、出演者の顔にモザイクをかける必要があったが、2カ所でモザイクがかからない映像を放送してしまった。原因は編集担当者の編集機の操作ミス。放送ギリギリまで作業をしていたため、編集済み素材をデスクがチェックできずに放送するというミスが重なった。モザイクには手間と時間がかかるため、編集担当者と記者は前日から徹夜で作業をしていた。当時は電通の新入社員の過労自殺を受けて、「働き方改革」が叫ばれていた時期。私は報道部長で、会社から社員の残業削減を進めるよう強く指示を受けていた。しかし、夕方ニュースは視聴率が低下していて、仕事量を削減することが難しい状況だった。この事態がモザイクミスにつながってしまったのだ。すぐに出演者5人に謝罪し、再発防止策として特集の編集時間を増やすなどの措置を講じた。さらにこの事故をBPOの放送倫理検証委員会に報告した。7年前の『ぴーかんテレビ』の教訓を生かせなかった私は責任を痛感。それ以降、常に会社とBPOを気にしながら仕事をするようになった。管理職の責務を果たすことばかり考え、モノづくりへの情熱が薄れつつあることに気づいた。報道部長を務めた後、東京編成部に異動。ここではフジテレビの編成担当者との協議を通じて、編成方針や視聴率などを確認する役割を担った。初めて知るキー局の編成はローカル局にはない緻ち密みつさがあった。編成担当者が個人視聴率を詳細に分析し、スポンサー動向を考慮しながら番組を企画。制作現場はその方針に沿って番組を制作していた。制作のプロデューサーやディレクターが作りたい企画というよりは、マーケティング的な編成戦略のもとで番組が誕生するシステムに疑問を感じた。
元のページ ../index.html#116