放送人権委員会 判断ガイド 2024
98/264

80放送人権委員会 判断ガイド2024企画・取材、制作、放送事件容疑者映像の繰り返し、スローモーション処理は注意申立人の知らない間に撮影した歩行中の申立人の顔や姿を大写しにした映像を報道の最初と最後に繰り返して使用し、さらにスローモーション処理までして申立人の実名と共に申立人の犯行であることを視聴者に必要以上に強く印象づける方法で放送したことは、放送倫理に欠けるところがあったと判断せざるを得ない。第31号 エステ店医師法違反事件報道(2007.6.26)被害者映像の使用に配慮が求められるケース本件においては、申立人が好奇の対象となりやすい犯罪の被害者であり、かつ、放送には不慣れな一般人で、しかも冷静な判断を期待しにくいような状況にあったこと、さらに取材がなされてから放送されるまでに3日間の時間があったことなどを考慮すると、放送に当たっては肖像の使用につき再度の確認を取るなどの慎重な配慮が望ましかったといえる。第24号 警察官ストーカー被害者報道(2004.12.10)解 説ストーカー被害を警察に届け出た女性が、局が約束を破りインタビューを顔出しで放送したため肖像権やプライバシーを侵害され、ネット上でも悪質な誹謗中傷を受けたと申し立てた事案。局は申立人の了解を得て顔出しで放送したと主張した。委員会は人権侵害はないと判断したが、事案の内容を考えると二次的影響まで勘案した慎重な配慮が望ましかったと指摘した。関 連匿名・モザイク処理の原則と例外(51ページ)ネット上の第三者の書き込みによる二次被害と局の責任(97ページ)事件と関係ない映像は使用しない申立人は詐欺事件で逮捕された容疑者と自動車の販売取引はあったが、そのことだけで直ちに「事件の舞台」として申立人の関与を即断することはできない。また、同人との共犯関係を示す証拠はなかったのであるから、容疑者逮捕のニュースで販売店の映像を使用する場合は、共犯関係を示唆することがないよう特段の注意が必要である。

元のページ  ../index.html#98

このブックを見る