放送人権委員会 判断ガイド 2024
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78放送人権委員会 判断ガイド2024企画・取材、制作、放送事件に応じて放送の適否を判断するべきであろう。しかし、本件放送の対象事件は、準強制わいせつ罪という重い法定刑の事案であることに加え、申立人が区民課の窓口で一般市民とも接触する立場にあり、勤務部署も公共的な意味合いの強い場であることに鑑みれば、申立人の実名や申立人の勤務先、職場窓口の映像を放送することが許されない場合とはいえず、したがって、権利侵害が生じたとはいえない。第63号 事件報道に対する地方公務員からの申立て(テレビ熊本)(2017.3.10)第64号 事件報道に対する地方公務員からの申立て(熊本県民テレビ)(2017.3.10)解 説テレビ熊本は、市役所の外観の映像を流して、申立人の担当部署等について「○○区役所区民課主事」と説明した。熊本県民テレビは、申立人の職場である区役所の窓口の映像を流して「○○区役所に勤務する」と説明した。申立人は、こうしたことまで放送することは権利侵害だと主張した。容疑者の自宅映像とプライバシー自宅マンションの映像もプライバシーに関係するものではあるが、本件放送では、マンションの出入口の映像以外にはマスキングが施されており、現地の住所としては、「熊本市〇〇区」の表記がなされているのみなので、一般視聴者が本件放送を視聴して住所を特定することは困難で、このマンションの住人や出入口を日常的に見ている近隣住民が特定可能な程度にすぎないと考えられる。そして、本件放送に公共性・公益性があること、自宅マンションが被疑事実の現場であることなどからすると、放送の内容、方法が相当な範囲を逸脱しているとは考えがたく、権利侵害があったとはいえないと判断する。第63号 事件報道に対する地方公務員からの申立て(テレビ熊本)(2017.3.10)解 説前項と同じ事案。

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