放送人権委員会 判断ガイド 2024
90/264

72放送人権委員会 判断ガイド2024企画・取材、制作、放送事件としており、「国民は、犯罪被害者等の名誉又は生活の平穏を害することのないよう十分配慮する……よう努めなければならない」との努力義務を課しているところである(第6条)。このように犯罪報道にあたっては、一方で無罪推定の原則を尊重して被疑者側の主張にも耳を傾ける必要があるとともに、他方、事件の被害者等の名誉または生活の平穏を害することのないよう十分配慮することが求められているということができる。第44号 上田・隣人トラブル殺人事件報道(2010.8.5)参 照民放連 報道指針3 人権の尊重 (4) 取材対象となった人の痛み、苦悩に心を配る。事件・事故・災害の被害者、家族、関係者に対し、節度をもった姿勢で接する。集団的過熱取材による被害の発生は避けなければならない。犯罪被害者等基本法(基本理念) 第3条 すべて犯罪被害者等は、個人の尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい処遇を保障される権利を有する。(国民の責務)第6条 国民は、犯罪被害者等の名誉又は生活の平穏を害することのないよう十分配慮するとともに、国及び地方公共団体が実施する犯罪被害者等のための施策に協力するよう努めなければならない。(2)実名報道、コメント、テロップ等容疑者の実名報道とプライバシー侵害、名誉毀損の成否ある犯罪の容疑者として、警察はXを逮捕した。この出来事がテレビのニュースとして流された。実名、顔写真入りだった。Xのプライバシーは明らかに侵害された。社会的信用は低下し、名誉も損なわれた。つまり、外形的にはニュースを流したテレビ局はXに対してプライバシー侵害、名誉毀損という不法行為を行ったことになる。だが、報道した事項が公共の利害に関する事実にかかわり(公共性)、その報道が公益を図る

元のページ  ../index.html#90

このブックを見る