放送人権委員会 判断ガイド 2024
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69企画・取材、制作、放送事件9事 件(1)取材など警察発表に依拠した報道の相当性警察発表の内容にどの程度依拠し、警察発表にどの程度真実性があると考えて報道することができるかについては、異なる考え方がある。このような議論状況のもとでは、前記のように、副署長の、①、②及び④の部分に関する明確とはいいがたい説明を受けて、取材する側が、これらの部分についても申立人が事実を認めていると理解し、①、②及び④についても真実である可能性が高いと信じたことについて、相当性を認めうると委員会は判断した。第63号 事件報道に対する地方公務員からの申立て(テレビ熊本)(2017.3.10)第64号 事件報道に対する地方公務員からの申立て(熊本県民テレビ)(2017.3.10)解 説地方公務員(申立人)が準強制わいせつ容疑で逮捕された。局は警察の「広報連絡」と広報担当への取材をもとに報道したが、申立人は、自分が認めていないことまで事実と認めていると報道し、悪質な犯行を行ったと印象づける内容で名誉を毀損されたと主張した。委員会は、警察発表に依拠した報道の真実性をめぐって異なる考え方の判決が出ている状況をふまえ、局が真実と信じたことについて相当性は認めうるとして名誉毀損が成立するとは言えないと判断した。一方で、捜査機関からの情報の他に裏付けもない逮捕直後の段階での報道においては、より慎重な姿勢で捜査機関に取材し、事実が「疑い」や「可能性」にとどまるのであれば、そのことを正確に表現する姿勢が求められる点を指摘。局はこのような姿勢を欠いたため、申立人の名誉への配慮が十分でなく、正確性に疑いのある放送を行う結果となったとし、放送倫理上問題があると判断した。関 連相当性があっても放送倫理上の問題は検討(158ページ)

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