放送人権委員会 判断ガイド 2024
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59企画・取材、制作、放送出演者への対応​他の出演者の言動で悩まされてきた責任を人権侵害として放送局に問えるか申立人が内心で長年悩んできたとしても、そのことについて放送局に責任を問えるかは別問題である。放送倫理上の問題にも共通するが、人権侵害の責任を放送局に問えるか否かを検討する場面では、放送局に規範違反があったかを問題とすることになる。それゆえ、申立人が性的な言動で長年悩んできたことに放送局に責任があると言うためには、放送局が、申立人の意に反していたことに気づいていたか、あるいは気づいていなかったとしても通常の注意を払えば気づくことができた(過失があった)と言える必要がある。加えて、本件番組に深夜バラエティー番組として社会通念上許容される範囲を超える性的な言動があり、あるいは申立人の人格の尊厳を否定するような言動があったと言えるのであれば、申立人の内心に関するあいテレビの認識にかかわらず、人権侵害が成立する可能性がある。そのような内容の番組は、申立人の意に反していることにあいテレビが気づけたか否かという観点とはかかわりなく、放送を控えるべきであったと言えるからである。第79号 ローカル深夜番組女性出演者からの申立て(2023.7.18)解 説深夜のローカルバラエティー番組に出演していた女性フリーアナウンサーが、番組内での他の出演者からの度重なる下ネタや性的な言動によって羞恥心を抱かせられ、そのような番組を放送されたことでイメージが損なわれたとして、人権侵害を受け、放送倫理上の問題が生じたと申し立てた。放送局側は、番組の内容は社会通念上相当な範囲を逸脱しておらず、人権侵害や放送倫理上の問題はないと反論していた。委員会は審理の結果、人権侵害は認められず、放送倫理上の問題もあるとまでは言えないと判断した。そのうえで、制作現場における構造上の問題(フリーアナウンサーとテレビ局という立場の違い、ジェンダーバランスの問題)に触れ、あいテレビに対して職場環境や仕組みを見直し改善していくための取り組みを続けるよう要望し、また、放送業界全体に対しても注意を促した。

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