放送人権委員会 判断ガイド 2024
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57企画・取材、制作、放送出演者への対応一つは、出演者に対し本番までにVTRの内容について実際の映像を見せることもなければ、前日及び当日の直前打ち合わせでもVTRで扱う項目を伝える程度の説明しか行っていなかったことである。その結果、出演者たちはコメントするための必要最小限の基本情報すら持ち合わせないまま番組に出演し、事実を誤認させるVTRによって生じた、誤った思い込みに基づく不適切なコメントをすることとなった。二つ目としては、TBSの答弁書及びヒアリングによれば、現場の制作者(スタッフ)は撮影日が異なることを理解していたにもかかわらず、コメンテーターの発言が事実誤認に基づくものであることを本番中(放送終了時まで)に気づくことも指摘することもできず、結果として視聴者に対し誤った理解を与えることになったことである。これは、当該生番組の放送態勢におけるチェックシステムあるいはバックアップシステムに、重大な欠陥があったことを示唆しているものと思われる。第40号 保育園イモ畑の行政代執行をめぐる訴え(2009.8.7)解 説大阪府が高速道路建設のため保育園用地のイモ畑を行政代執行で強制収用した件を取り上げた番組に対し、保育園理事が「VTR部分は園児を行政代執行に対する盾として利用したかのような事実に反する内容で、またそれを前提としたスタジオトークの発言によっても名誉を毀損された」として申し立てた事案。委員会決定の「このような事態」とは、ニュース素材の編集において配慮不足が見られたため視聴者に誤解を与えたうえ、その編集映像をもとにしたスタジオトークにおいては出演者が明らかな事実誤認を基に発言を重ねたことを指す。委員会は、本件放送が申立人の名誉を毀損する疑いが強く、少なくとも同人の名誉感情を侵害していることは明らかであり、放送倫理上重大な問題ありと判断した。関 連撮影日の異なる映像は日付を明示(41ページ)名誉感情侵害の判断④(116ページ)出演者の身体的・精神的な健康状態への配慮は社会通念上、当然のこと一般論として、放送局が出演者の身体的・精神的な健康状態に配慮すべきかどうかにつき、放送倫理基本綱領や日本民間放送連盟放送基準に、直接言及する規定を見出すことはできないが、同基準第12章「視聴者の

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