56放送人権委員会 判断ガイド2024企画・取材、制作、放送出演者への対応を含め番組の出演者の発言についても当然放送局に責任が及ぶものと考えられる。したがって、本件における当該ゲストの当該発言についても、テレビ朝日は責任を負う立場にある。もっとも、放送局の責任の程度・範囲は出演者の性格に応じて一様ではなく、本件のようなゲストの主観的、偶発的発言については、放送局を代表する立場の者に比べ、総じて広い自由が認められるべきであり、したがって放送局が負うべき責任は軽減される場合がある。第18号 出演者比喩発言問題(2002.9.30)解 説情報番組でゲスト出演者が戸塚ヨットスクールを引き合いにした発言を行い、同スクールの校長が名誉毀損を申し立てた事案。委員会は、ゲストの本件発言は論評的な面も否定できず、局に過剰な責任を負わせると活発な番組作りを阻害する恐れがあると考えるという判断を示した。不適切発言は原則として番組中に対応すべき局としては、結果として生放送番組で不適切な発言がなされた場合には、可能な限り当該番組中での適切な対応ができる態勢を作っておかなければならなかったのではないかということが問題になる。局が責任を負うべき番組中で、出演者が不適切な発言をしたのであるから、局は原則として当該番組中においてこれに対してしかるべき対応をとらなければならない。第43号 拉致被害者家族からの訴え(2010.3.10)解 説討論番組において司会者が2人の拉致被害者の名前をあげて「生きていないことは外務省も分かっている」と発言したことについて、拉致被害者家族連絡会が「名誉やプライバシーの侵害以上に最も重大な人権侵害」と申し立てた。委員会は、不適切な発言と気づいた後の局の対応が迅速性に欠け、後日の謝罪放送に不適切な部分があったことから放送倫理上問題があったと判断した。出演者との打ち合わせと放送中のチェック体制このような事態を招いた番組の制作・放送現場の態勢上の問題点として二点を挙げておく必要がある。
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