45企画・取材、制作、放送編集・制作裁きの場としての「女性法廷」の意義を軽視し和解だけを推進する人物であるかのように誤解されかねない状況が作り出されたといえる。その結果、申立人は周囲の人々を中心に疑問や苦情を受けるに至ったことが認められる。したがって、NHKが、コメンテーターとしての申立人の発言の本質的な部分を断りなく削除したことは編集の行き過ぎであり、同人の人格権に対する配慮を欠いたものといえる。第20号 女性国際戦犯法廷・番組出演者の申立て(2003.3.31)解 説本件番組に出演した申立人は「スタジオ収録後、NHKの制作意図の変更に伴い、何の連絡もなく、自分の発言が改変して放送された。この結果、発言が視聴者に不正確に伝わり、研究者としての立場や思想に対する著しい誤解を生み、名誉権及び著作者人格権を侵害した」と申し立てた。委員会は、▽放送局は「女性法廷」の意義について申立人が重要とした「裁き」による責任の明確化の発言部分をすべて削除した、▽放送局は編集過程で、「女性法廷」に対し本質的な批判を述べている人物のインタビューVTRを挿入した――ことについて、申立人への説明や了解を経ないまま編集を行ったため、コメンテーターとしての申立人の人格権に対する配慮を欠き、放送倫理上問題があると判断した。批判的コメントの後からの挿入は不適切NHKは申立人に知らせることなく、「女性法廷」に対し本質的な批判を加えているC氏のインタビューを後から挿入し、そのC氏の発言の後で司会者から申立人に対し「女性法廷」の意味を問い、申立人の従前の発言をそのまま使用するという編集を行った。そのため、申立人はC氏の発言内容を知ったうえでコメントする機会が与えられず、C発言に異論のない同調者であるかのような誤解を招く危険が生じた。その結果、申立人はコメンテーターとしての役割を十分発揮できず、また、これまでの学問的・思想的立場に反し、「女性法廷」の意義と役割を重視しない者であるかのような評価をもたらす恐れが生じた。したがって、NHKのこのような編集は不適切であり、コメンテーターとしての申立人の人格権に対する配慮を欠いたものといえる。第20号 女性国際戦犯法廷・番組出演者の申立て(2003.3.31)
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