放送人権委員会 判断ガイド 2024
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41企画・取材、制作、放送編集・制作撮影日の異なる映像は日付を明示VTR部分は行政代執行前日に取材した部分と、代執行当日の部分から構成されているにもかかわらず、日付(曜日)のテロップが後段の代執行当日の状況を撮影した部分にしか表示されず、前日に園児たちを撮影していた部分には入っていなかった。そのために、視聴者に対し前日と当日の映像を同じ日のものと誤解させる可能性を生じた。当該映像の構成は、「当日→前日→当日」の順で、前日の映像(園児)を当日の映像(行政代執行)で挟み込む構成になっている。このVTR構成と、テロップ等で前日であることを明記しなかったこととあいまって、現場の映像はすべて、園児の映像も含め行政代執行当日の一連の映像と理解されても致し方がないものとなっている。さらに、当委員会におけるヒアリングによれば、放送時間の都合等から素材となったVTRを短縮し、また状況を伝えるナレーションを省略するなどした結果、視聴者に誤解を与える原因を作ってしまったものと考えられる。これらは総じて、報道において事実を伝える場合、「いつ、どこで」といった基本的な要素を明示することが必須であるとの認識が欠如していたといわざるを得ない。第40号 保育園イモ畑の行政代執行をめぐる訴え(2009.8.7)解 説保育園用地を強制収用する行政代執行を伝えた情報バラエティー番組について、保育園理事が名誉毀損を申し立てた事案。委員会は、園児の映像は前日に撮影されたのに、ずさんな映像編集によって保育園が代執行当日に園児を現場に並ばせ、大阪府の非情さを訴えるために園児を利用したかのような印象を視聴者に与え、申立人の社会的評価を低下させたと判断した。関係ない場所で撮影した映像の使用VTR冒頭の高速道路の映像についても、まったく関係のない場所で撮影したものを使用している。これは、行政代執行の現場について、視聴者に誤った印象を与えるものである。視聴者は冒頭映像を含めて現場からのリポートと通常、理解するのであって、現場とはまったく異なる場所での撮影映像を使用することは、事実報道のリポートとしてはあってはならない手法である。

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