放送人権委員会 判断ガイド 2024
58/264

40放送人権委員会 判断ガイド2024企画・取材、制作、放送編集・制作意見,論評等を付加するなどの編集作業を経て,番組としてこれを外部に公表することになるものと考えられるが,上記のとおり,放送事業者がどのように番組の編集をするかは,放送事業者の自律的判断にゆだねられており,番組の編集段階における検討により最終的な放送の内容が当初企画されたものとは異なるものになったり,企画された番組自体放送に至らない可能性があることも当然のことと認識されているものと考えられることからすれば,放送事業者又は制作業者から素材収集のための取材を受けた取材対象者が,取材担当者の言動等によって,当該取材で得られた素材が一定の内容,方法により放送に使用されるものと期待し,あるいは信頼したとしても,その期待や信頼は原則として法的保護の対象とはならないというべきである。 解 説委員会は決定第20号「女性国際戦犯法廷・番組出演者の申立て」(2001.1.30)において、▽放送局は「女性法廷」の意義について申立人が重要とした「裁き」による責任の明確化の発言部分をすべて削除した、▽放送局は編集過程で、「女性法廷」に対し本質的な批判を述べている人物のインタビューVTRを挿入した――ことについて、申立人への説明や了解を経ないまま編集を行ったため、コメンテーターとしての申立人の人格権に対する配慮を欠き、放送倫理上問題があると判断した。映像の扱いについて取材先との約束は守る申立人と熱海記者会との間で「個人名と顔の映像は露出しないとの合意」がなされ、SBSはその条件を受け入れて記者会見等の取材をした。SBSは申立人に対して、その合意事項を遵守すべき立場にあった。ところが、SBSはその合意事項に反して、申立人の顔の映像を放送してしまった。取材対象者との信頼を確保し、その信頼を裏切らないことは、放送倫理上報道機関にとって当然のことである。日本民間放送連盟の報道指針においても「視聴者・聴取者および取材対象者に対し、常に誠実な姿勢を保つ。」(2.報道姿勢(1))、「取材対象となった人の痛み、苦悩に心を配る。」(3.人権の尊重(4))とされている。第53号 散骨場計画報道への申立て(2015.1.16)解 説局は合意に基づき申立人の映像にモザイク処理をして放送する予定だったが、当日の多忙等のため処理をしないまま放送してしまった。委員会は放送倫理上の問題があるとしたが、一方で、申立人と地元記者会との合意に関連して、取材・報道規制につながる申し入れに応じてはならないと指摘した。関 連取材・報道規制につながる記者会と取材先との合意は問題(26ページ)

元のページ  ../index.html#58

このブックを見る