放送人権委員会 判断ガイド 2024
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36放送人権委員会 判断ガイド2024企画・取材、制作、放送編集・制作決まり文句のようなものとして安易に用いることのないよう、留意する必要があろう。第77号 宮崎放火殺人事件報道に対する申立て(2022.1.18)解 説委員会は「本件放送には人権侵害も、放送倫理上の問題もない」と判断したが、「放送倫理上、問題がある」との少数意見が付された。少数意見は「根拠も具体的内容も明確ではない『何らかの金銭的なトラブル』という、本件放送で人の社会的評価を低下させる可能性のある表現の使用は控えるのが妥当だったのではないだろうか。……『何らかの金銭的なトラブル』という表現を用いる必要性ないし正当な理由は本件放送では見いだせないと考える」との考えを示した。同時に「この少数意見は、あくまでも本件放送における文脈に照らした『何らかの金銭的なトラブル』という表現を問題視するものであり、『トラブル』という表現を用いることを一般的に問題にしているわけではない」旨を指摘している。素材利用時に元の言葉のニュアンスを歪めない…ナレーションやテロップに先立って放送された、やんちゃ発言VTRも、パワハラが実際に存在したという印象を強めるものである。ところで、「やんちゃ」という言葉は多義的である。もともとは、「子どもがだだをこねること。わがまま。また、そういう子ども。」といった微笑ましい様子を描写するニュアンスをも含むものとして、どちらかと言えばポジティブな意味で用いる場合が多かったようであるが、近年は、「〔若者が〕ぐれること。非行。」というネガティブな意味で使われることもある(いずれも、『三省堂国語辞典(第七版)』による)。やんちゃ発言VTRは、2009年6月12日開催のイベント「『男のやんちゃ買い』推進委員会」発足記者発表会の模様を撮影したもので、そこでは、女性には理解されにくいことの多い男性のモノへのこだわりをポジティブに評価する意味で「やんちゃ買い」という表現が使われていることは明らかであるが、本件放送の視聴者はこうした文脈を理解することはできない。むしろ、本件放送はパワハラ(疑惑)をめぐるタレントと事務所との間のトラブルを話題にしているのであるから、その文脈からは、「やんちゃ」という言葉は上記のうちネガティブな意味合いで用いているように捉えられる可能性が高い。そして、申立人がこのネガティブな意味での「やんちゃ」な人物であるという印象を与えることから、パワハラが

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