放送人権委員会 判断ガイド 2024
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35企画・取材、制作、放送編集・制作死亡したいわゆる「割り箸事故」で、その治療に関与した医師の責任をめぐる民事裁判の判決内容を報道するに際して、当該医師とその家族が放送で名誉を毀損され、精神的苦痛を受けたと申し立てた事案。委員会は、番組での判決要旨のまとめ方などについて、当事者の主張を整理した部分の記述を裁判所の判断そのものであるかのように取り上げた不正確・不公正な報道で、放送倫理上重大な問題があると判断した。関 連不正確な報道による公平性の欠如(52ページ)裏付けを欠く不適切なコメントキャスターが本件放送の最後の締めとして「じゃぶじゃぶ使われているきらいがある」と指摘した点について、これが申立人に対する人身攻撃に及ぶ意見ではないものの、被申立人の本件放送当時の裏付け取材の範囲を超え、断定的に、一般の視聴者にすべての補助金が適正に使用されていないのではないかという認識を与えかねない不適切な表現であると言わざるをえない。第39号 徳島・土地改良区横領事件報道(2009.3.30)多様に受け取られる可能性のある言葉には留意が必要申立人は、「何らかの金銭的なトラブル」について、①兄にも非があると示唆すること、②遺族である申立人はまったく聞いたことがないのに、警察への取材に依拠し、申立人に確認をせず放送で使用したこと、の2点を問題視している。しかし、①については、すでに指摘したように本件放送を全体として見れば、兄に何らかの非があったとはっきりと伝えているわけでも、強く示唆しているわけでもなく、②についても、兄と容疑者がともにすでに死亡していること、複数の捜査関係者への取材で確かめたうえで、両者間に「何らかの金銭的なトラブル」があったという警察の認識として伝えていることなどから、放送倫理上の問題があるとはいえない。ただし、一般論として、「トラブル」のように、立場や文脈や視聴の仕方により多様に受け取られる可能性のある言葉は、事件報道の常とう句、

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