放送人権委員会 判断ガイド 2024
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33企画・取材、制作、放送編集・制作境遇・信条などによって取り扱いを差別しない」、また第2章法と政治(10)では、「人種・民族・国民に関することを取り扱う時は、その感情を尊重しなければならない」と定めている。にもかかわらず、考査においてこれらの点に関する配慮がなされていなかった。1月2日に放送された『ニュース女子』では、過激で犯罪行為を繰り返すものと描かれた反対運動と結びつけて、「朝鮮人はいるわ、中国人はいるわ」、「親北派ですから」などと特定の国籍や民族的出自を論じ、申立人が在日韓国人であることに関連して、人種や民族を取り扱う際に必要な配慮を欠いていたと言わざるを得ないものであった。さらに1月9日に放送された『ニュース女子』では、冒頭で「『ヘイト』『捏造だ』と抗議殺到」、「大炎上」などとして、人種や民族の取扱に配慮を欠いた前回の放送を取り上げたにもかかわらず、そのような配慮を欠いた点について触れることもなく、「まあ、盛り上がっているという事ですよ」とMCのA氏が総括して冒頭部分を終えるなど、上記の「日本民間放送連盟 放送基準」を守ろうとする姿勢が欠けていたと言わざるを得ないものであった。第67号 沖縄の基地反対運動特集に対する申立て(2018.3.8)関 連「持込番組」の考査(102ページ)障害に触れる際の配慮「精神的・肉体的障害に触れる時は、同じ障害に悩む人々の感情に配慮しなければならない。」(民放連 放送基準「第8章 表現上の配慮」56)。本件放送では、50dB程度の聴力であれば「普通の会話は完全に聞こえる」という説明がなされたり、障害者手帳の交付対象となる法律上の聴覚障害の認定がなかったとしても、実際には難聴である可能性があることの説明がなかったりしたことについては、この観点から疑問を呈することができる。すなわち、聴覚障害の認定対象外の難聴者が「実は聞こえているのでないか」という社会的偏見にさらされていることからすれば、これらの放送内容は、単に申立人の症状の説明として不正確であるにとどまらず、同じ障害がある人々に対する配慮に欠けるものと言わざるをえない。

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