25企画・取材、制作、放送取材て申請を決断した翌日に、申立人は申請を行うこととなった。一時金の申請という、申立人にも周囲にも大きな影響を与えることがらに関する援助であったこと、後日、申立人は申請取下げを行い、再申請にあたって弁護団の援助を得ていることを考え合わせると、本件での取材の一連の流れは、取材対象者との関わりにおいて踏み込み過ぎたと評価されかねない部分があった。第75号 一時金申請に関する取材・報道に対する申立て(2020.11.16)行き過ぎた直接取材3名の男性記者やカメラマンが二手に分かれてエスカレーターの乗り口と降り口とから挟み、通路を塞ぐようにして取材を試みたり、それを避けるため別な方向に向かった申立人に記者が話しかけるなど、NHKも認める通り行き過ぎがあったことは明らかである。一般論として、アポイントメントなしで直接取材を試みることが許されないわけではないとしても、取材を拒否する申立人を執拗に追跡して上記のような行為に及んだのは行き過ぎである。第62号 STAP細胞報道に対する申立て(2017.2.10)通行が制限されていない私道での撮影申立人は、テレビ静岡が自宅前の私有地に許可なく侵入して撮影を行ったとして、取材行為の違法性を主張している。当日、捜査員にその旨を取材陣に伝えてもらったともいう。申立人宅前の道路は、いわゆる私道である。登記簿では幅約4メートルの中央部分で隣の住宅の所有者と折半したかたちになっていると思われる。テレビ静岡のカメラマンは、この私道上で申立人宅を撮影した。私道は県道からそのまま続いており、私道に入る地点に「私道に付き立ち入り禁止」といった表示もない。塀や柵などで囲まれ、一見して私有地と分かる場所と違って、特に通行が制限されていない本件のような私道の場合、そこで取材行為を行ったからといってただちに違法とはいえない。
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