放送人権委員会 判断ガイド 2024
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24放送人権委員会 判断ガイド2024企画・取材、制作、放送取材テーマの根幹にかかわる疑問は取材相手に正面から問うべき筆跡鑑定事務所の見解と申立人A氏のコメントを対比的に放送するのであれば、取材に対して真摯に対応したA氏に対して、インタビュー時点ないしはその後に、筆跡鑑定事務所の見解を伝え、この点の疑問を正面から問うことが望ましかった。また、申立人法人が原本を保管する49枚の手記に八百津町が出生地と書かれていることが、八百津町が世界記憶遺産の登録申請に取り組んできた大きな根拠なのだから、それが自筆か自筆ではないのかということは本件放送のテーマの根幹に関わる重要な点であり、事実の解明という点からも前記の疑問を正面から問うことが望ましかった。第68号 命のビザ出生地特集に対する申立て(2018.11.7)解 説第二次世界大戦中にナチス・ドイツの迫害から逃れた多くのユダヤ人を救った外交官・杉原千畝の手記等を岐阜県八百津町がユネスコ世界記憶遺産に登録申請したのに対して、CBCテレビは、千畝が「八百津町で出生」という通説に疑念が生じているとして特集等を放送した。その中で、二つの手記が杉原千畝の自筆であるかどうかについて筆跡鑑定事務所の見解から疑問があるとしたが、手記を管理している申立人に対しては取材の時点でそのことが分かっていたにもかかわらず、伝えていなかった。放送後、申立人から、手記は偽造文書であり、自分たちは偽造者であるかのような印象を一般視聴者に与え、社会的評価を低下させられたと申立てがあった。委員会は、本件の各放送は名誉毀損にあたらず、放送倫理上の問題もないと判断したが、本項のようにすることが望ましかったとし、今後の取材・報道にあたって、この点を参考にすることを要望した。取材にあたっての取材対象者との関係本件では、A記者からの、申請受付が始まったが申立人は申請を行うかという問い合わせを契機に申立人は申請受付の開始を知ったのであるが、A記者は、道庁の担当者がA記者に説明した申請にあたって必要な添付書類等の内容を申立人に伝え、申請書をプリントアウトして申立人に渡し、用意したタクシーに申立人と同乗して申請に向かうなどしており、申立人自ら、あるいは支援者、代理人等が行うべきことの一部を代わって行っているといえる。このこともあって、申立人が申請開始を知っ

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