放送人権委員会 判断ガイド 2024
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22放送人権委員会 判断ガイド2024企画・取材、制作、放送取材報道対象者への取材は不可欠④学園を批判する一方当事者からの取材とそこから得た資料のみでは、一方に偏した放送内容になるおそれがあるから、他方当事者への忍耐強い働きかけと取材が必要であった。以上を要するに、インターネット教育の特殊性から、一般学校の教師、生徒、保護者に対するアプローチと比較して困難さのあることも理解できないではないが、なお本件取材には不十分、不適切な点があり、結果として一方に偏ることになったのは、放送倫理上問題があったものと判断する。第16号 インターネットスクール報道(2002.1.17)解 説報道内容は、インターネットで教育を行うフリースクールの生徒や保護者から授業料を払ったのに何の指導もしてくれないと抗議の声があがり、被害者の会が結成されたというもの。学園側(インターネットスクール)が事実を歪曲した一方的な報道だと名誉毀損を申し立てた。委員会は学園側に対する取材努力が足りなかったと指摘した。報道対象者への取材は不可欠⑤取材・放送に当たっては、対象となる人物に番組意図を明らかにしてその弁明を聞くことが原則であるが、例外が許されないものとは言えない。放送・報道に関する一般論として、事件や事故について報じる場合に速報性も重要な要素の一つであることは否定されず、対象者が直接取材に応じるまでの間は一切放送・報道できないとの結論も妥当でないことは明らかである。例えば、真摯な申入れをしたが接触できない、応じてもらえない場合、適切な代替措置が講じられた場合(当事者が当該対象事実について公表したプレスリリース等の掲載や、その他の方法による本人主張・反論の十分な紹介)、緊急性がある場合、本人に対する取材が実現せずとも確度の高い取材ができている場合などは、これら内容を含めた諸事情を総合考慮して、本人取材を不要とする余地があると解される。

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