放送人権委員会 判断ガイド 2024
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13企画・取材、制作、放送企画公的人物の疑惑追及一般に、報道機関が公職選挙によって選出された議員など公的立場にある者について、しかるべき情報源からの裏金情報に接したような場合、捜査機関をはじめ、事前に対象者から取材をするなど、可能なかぎりの裏付け調査を行ったうえで、自らの責任においてその疑惑を追及し、報道することは、国民の知る権利の保障という観点から望ましいことであって、決して閉塞されることがあってはならないと考える。金権選挙や、公権力を有するものに対する買収は、もしそれが事実であれば民主主義の根幹を揺るがす大問題である。第38号 広島県知事選裏金疑惑報道(2008.12.3)解 説県知事選挙に絡んで裏金を受け取っていた疑いがあると実名報道された3人の元県議が、事実に反するとして名誉毀損を申し立てた事案。委員会は地域住民の正当な関心事に取り組むことは報道機関の責務だとして、疑惑の追及に取り組んだ局の姿勢を評価した。番組構成によって問題が生じる場合も仮に、番組の一部を部分として取り出した場合に問題はないとしても、番組全体のなかでの位置づけによっては問題を生ずる場合があるのであって、本件放送における申立人にかかわる放送部分は、そのような場合に当たるといえる。すなわち、本件番組の趣旨が、前述のように、高齢者の財産を狙う犯罪に警鐘を鳴らし、その対策を紹介するとともに、被害が急増している背景に標的となりやすい孤独な高齢者が増えている現状があることを伝えようとしたものであったとしても、番組の前半部において悪質な犯罪の手口を再現し、それにつづいて遺品処理業と「うなずき屋」というビジネスを取り上げ、そのあと再び一人暮らしの母親の先物取引の被害の話でしめくくり、その上で被害防止対策を紹介するという番組構成からは、申立人の運営する「うなずき屋」があたかも孤独な老人を食い物にするあくどい商売であるかのような印象を視聴者に与えかねないものであった。

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