9企画・取材、制作、放送取材・報道の自由したことに対し、経営者とその家族が「軽微な罰金刑にもかかわらず、顔のアップ映像や実名・住所などまで放送したのはプライバシーの侵害である」と申し立てた事案。委員会は、報道機関が何を放送するかの選択も「報道の自由の一態様である」としつつ、顔のアップや警察の車両に連行される場面などを繰り返し放送したことで、過剰な制裁的・懲罰的効果を生じさせ、申立人に対する人権への適切な配慮を著しく欠き、放送倫理上重大な問題があると判断した。言論の自由いかに深刻な問題であっても言論は悪意に基づくとか、著しく品位に欠けるとか、それが言論の名に値しないといった特段の事情が認められない限り自由であるべきである。それが公共の電波で行われたからということで事情を異にするものではない。異論が提起されたことによって自らの立場が否定されたとの不快の念が持たれる場合があったとしても、メディアの世界における自由な言論は保障されなければならない。第43号 拉致被害者家族からの訴え(2010.3.10)解 説北朝鮮による拉致被害者家族連絡会が、討論番組で拉致問題に触れた司会者の発言について、①名前をあげて根拠を示すことなく生きていないと断定した発言は、家族の心情を直接傷つけ、名誉毀損やプライバシー侵害以上の最も重大な人権侵害である、②政府の基本方針に疑念を生じさせ、北朝鮮に誤ったメッセージを発したことによって救出運動を妨害し、ひいては拉致被害者の人命にもかかわる最も重大な人権侵害である――として申し立てた。委員会は②の申立てについて、ジャーナリストとしての責任において、拉致問題を見る視点について問題提起をし、その観点から政府の方針を批判したものであって、言論の自由の範囲内にあり、人権侵害とは認めなかった。また①の申立てについては、事柄の重大性や申立人の心情が著しく傷つけられたことからみて、放送前・番組中・放送後の局の対応は、迅速性に欠け、謝罪放送の実施方法に不適切な点があったと批判を受けてもやむをえないものであり、放送倫理上の問題があったと判断した。知る権利と取材・報道の自由報道機関の報道は国民の「知る権利」に奉仕するという使命をもつことから、憲法は報道機関に「報道の自由」を認め、また、放送法は放送事業者に「放送番組編集の自由」を認めており、「報道」や「編集」の前提となる「取材活動」についても、憲法や放送法の趣旨・精神に照らして、「取材の
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