放送人権委員会 判断ガイド 2024
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206放送人権委員会 判断ガイド2024要望、見解、声明などが起こりうる可能性を十分に斟酌したボカシ・モザイク処理の要件を確立すべきである。 よって、放送にあたっては、次の事項に留意すべきである。④プライバシー保護は徹底的に プライバシー保護が特に必要な場合は、一般の視聴者のみならず取材対象者の周辺にいる関係者においても、放送された人物が本人であると識別されることのないように慎重に行うべきである。その場合でも、前後の映像やコメント等によって識別されることがありうるので注意すべきである。中途半端なボカシ・モザイク処理は憶測を呼ぶなどかえって逆効果になりうることに留意すべきではないか。⑤放送段階で使わない勇気を 伝える内容と使用する映像との関係を十分に吟味し、ボカシなど加工を施してまで使用することが必然ではない映像については、放送時にこれに代替する映像素材を検討し、場合によってはその映像を使わないことも認めることがあってもよいのではないか。⑥映像処理や匿名の説明を ボカシ・モザイク使用や顔なし映像の場合は、画面上でその理由を注記(字幕表示等)することで、メディア取材に対する市民意識を変える努力をすべきではないか。⑦局内議論の活性化と具体的行動を 一つ一つの映像を放送するに当たり、逮捕時の連行映像など定型的にボカシ・モザイク処理をするものも含め、なぜ必要なのかの議論を日常的に行うことが大切ではないか。社内ルールが定められていない放送局においては早急にルールが策定されるべきである。 Ⅴ.行き過ぎた"社会の匿名化"に注意を促す以上の留意点をふまえ、原則は顔出しインタビューであり、あくまで例外として顔なしインタビューを認めるという点について、テレビ局各局は、放送関係者だけではなく、一般社会においても認知されるよう努力すべきである。その際、取材対象となる市民との信頼関係に基づく十分な意思疎通が必要である。これにより、人が自由に様々な意見、知識、情報に接し、これを摂取する機会を持つことの大切さを認識することができる。また、例外的に顔なし映像を用いたり匿名化の処理をする場合には、画面上でその処理の理由を注記することなどにより、行きすぎた社会全体の匿名化にも注意を促すことができるものと考える。

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