放送人権委員会 判断ガイド 2024
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205要望、見解、声明などいる。海外では、例外としての顔なしインタビューをするにあたり、国際通信社傘下の映像配信会社が理由を付記したうえで配信したり、放送局が報道部門幹部だけでなく、法務部等社内複数の関係部署の承諾を義務付けている例もある。 しかし、実際の取材現場では、被取材者側に顔を出してインタビューに応じることへの抵抗感が強まる傾向があることや取材者側に顔を出すよう説得する十分な時間がないなどの理由から、顔なしインタビューが行われるケースも多いのではないかと推測される。とりわけ、地域の出来事について、周辺住民のインタビューをする際に、特に匿名にしなければならない具体的な理由が見当たらないにもかかわらず、安易に、顔なしインタビューが行われてはいないだろうか。Ⅲ.安易なボカシ、モザイク、顔なし映像はテレビ媒体の信頼低下を追認していないかテレビ画面では一層、ボカシやモザイク、顔なしインタビューが日常化している。しかし、事実を伝えるべき報道・情報番組がこの流れに乗って、安易に顔なし映像を用いることは、テレビ媒体への信頼低下をテレビ自らが追認しているかのようで、残念な光景である。テレビ局の取材に対して取材対象者が顔出しでインタビューに応じてくれるかどうかは、テレビという媒体が、あるいは取材者が、どこまで信頼されているかを測る指標の一つであると考えられるからである。Ⅳ.取材、放送にあたり委員会が考える留意点以上をふまえると、取材にあたっては、次の事項に留意すべきである。①真実性担保の努力を 安易な顔なしインタビューを避けて、可能な限り発言の真実性を担保するため、検証可能な映像を確保することなどの努力を行うことが大切ではないか。②取材対象者と最大限の意思疎通を 安易な顔なしインタビューを避けるには、限られた時間であっても取材対象者と可能な限り意思疎通を図るよう努めるべきではないか。③情報源の秘匿は基本的倫理 情報の発信源は明示することが基本であるが、情報の提供者を保護するなどの目的で情報源を秘匿しなければならない場合、これを貫くことは放送人の基本的倫理である。放送時においても、原則は顔出しインタビューとすべきである。一方、特にデジタル化時代の放送に対し、インターネットなどを用いた無断での二次的利用等

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