188放送人権委員会 判断ガイド2024審理対象外とした事例覚せい剤押収報道・インタビューを受けた住民の家族ローカルニュースの中で、覚せい剤押収事件について、押収現場での記者リポートや付近住民のインタビューなどを放送した。インタビューは人物が分からないようにカーテン越しに撮影された映像で音声だけが伝えられたが、インタビューを受けた人物の家族から、「(放送は現場と自宅の場所を)特定するに十分な情報であり、家族の肉声は、現場を監視し警察に通報した者のように聞こえた」「インタビューは、麻薬の運び出しと関係のない会話を一部切り取って放送した」「麻薬関連の報道は、暴力団も絡み、住民の安全に配慮するべきところを、私たち家族を危険にさらし、地域社会に誠実に暮らす家族の名誉を傷つけた」として申立てがあった。委員会は、人権侵害の有無及びそれに係る放送倫理上の問題を検討する必要があると判断したが、審理に不可欠な、取材の経緯を知る申立人の家族への事情聴取について了承が得られなかったことから、審理対象にしないことを決定した。(2019年12月 第276回委員会)放送で犯罪者扱いされたとの申立て子どもの虐待に関する放送。父親と名乗る男性が、聞いたことも、身に覚えも、指摘されたこともない虐待という罪で、一方的に犯罪者扱いされ、名誉を毀損されたとして申し立てた。放送における名誉毀損は、一般の視聴者の普通の注意と視聴の仕方を基準として判断されるものであるが、匿名措置がとられている、この番組の出演者が申立人の子であるか否かを認識するのは極めて困難であり、これにより番組に現れない申立人の社会的評価が低下するものとは評価することができず、申立人の名誉権を侵害するものとは言えないと判断し、審理の対象としないことを決定した。(2022年8月 第307回委員会)東京五輪反対運動での無断撮影に対する申立て申立人も主催者として関わっている東京五輪反対運動を、主催者にも申立人にも何の了解も得ないまま撮影し放送したことは権利(肖像権・名誉権)侵害にあたるとして申立てが行われた。委員会は、放送における映像の使用について、申立人の人格的利益に対する侵害が受忍限度を超えるものであると解することは困難であると判断した。また、申立人が映った映像の後に流れた映画監督の発言により、申立人の社会的評価を低下させ、名誉権を侵害したとも言えないとして、運
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