放送人権委員会 判断ガイド 2024
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172放送人権委員会 判断ガイド2024運営規則と委員会の任務付言や要望など具体的にどのような言葉がフジテレビに伝わったかは、申立人自身も正確に認識していない。東京都知事(当時)といった公的権力を行使しうる立場にある者が、自己に関連する批判的報道を行わないよう放送局に働きかけをしたと受け止められかねない行為をすることは、取材・報道の自由への介入にもなりうる危険な行為であり配慮が必要である。この点は、本件の直接の審理対象ではないが、付言しておく。第65号 都知事関連報道に対する申立て(2017.7.4)​委員会決定を社内の環境や仕組みを見直す契機と捉える下ネタや性的な言動によって男性が女性をからかい、からかわれた女性は、内心では挫折、疲労、ときには恐怖を感じながらも軽く受け流すしかないといった場面は、社会のいたるところでこれまで多く繰り返されてきたし、今でも様々な場所で行われているであろう。先進的な取り組みをすることで社会の範を示すことが望まれる放送局のあり方としては、本件のような事案を教訓として、降板するほどの覚悟がなくても出演者が自分の悩みを気軽に相談できるような環境やジェンダーに配慮した体制を整備したうえで、日ごろから出演者の身体的・精神的な健康状態に常に気を配り、あるいは問題を申告した人に不利益を課さない仕組みを構築するなど、よりよい制度を作るための取り組みを絶えず続けるよう要望する。第79号 ローカル深夜番組女性出演者からの申立て(2023.7.18)解 説深夜のローカルバラエティー番組に出演していた女性フリーアナウンサーが、番組内での他の出演者からの度重なる下ネタや性的な言動によって羞恥心を抱かせられ、そのような番組を放送されたことでイメージが損なわれたとして、人権侵害を受け、放送倫理上の問題が生じたと申し立てた。放送局側は、番組の内容は社会通念上相当な範囲を逸脱しておらず、人権侵害や放送倫理上の問題はないと反論していた。委員会は審理の結果、人権侵害は認められず、放送倫理上の問題もあるとまでは言えないと判断した。そのうえで、制作現場における構造上の問題(フリーアナウンサーとテレビ局という立場の違い、ジェンダーバランスの問題)に触れ、あいテレビに対して職場環境や仕組みを見直し改善していくための取り組みを続けるよう要望し、また、放送業界全体に対しても注意を促した。

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