放送人権委員会 判断ガイド 2024
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158放送人権委員会 判断ガイド2024人権侵害がなくても「事実の正確性」は放送倫理上の検討課題本件映像は匿名化の処置がなされており、人権侵害には当たらない。しかし、番組が放送された場合、たとえ視聴者が申立人と特定できなくても、申立人自身は自らが放送されていることを当然認識できる。それが実際の申立人とは異なる虚構だったとすれば、そこには放送倫理上求められる「事実の正確性」に係る問題が生まれる。その意味で、本件は、申立人が権利侵害を受けたと主張する放送内容について、それに係る放送倫理上の問題があったかどうかを検討すべき事案にあたる。そもそも本件映像が存在しなければ、本件申立てがなされることはなかったこともまた閑却すべきではない。第57号 出家詐欺報道に対する申立て(2015.12.11)参 照委員会 運営規則5条(苦情の取り扱い基準)1 (1) 名誉、信用、プライバシー・肖像権の権利侵害、およびこれらに係る放送倫理上の問題に関するものを原則とする。関 連匿名化した場合、真実性の探求はより十全に行う必要がある(47ページ)相当性があっても放送倫理上の問題は検討名誉毀損の成否との関係では、これらの事実について、テレビ熊本(熊本県民テレビ)が真実と信じたことに相当な理由を認めうると判断したことは既に述べたとおりであるが、ここでの「相当性」は、名誉毀損(=権利侵害)という重大な結論に結びつくという意味で取材過程や取材結1運営規則の解釈と適用運営規則と委員会の任務I-4

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