151放送倫理上の問題表現の適切さ第52号 宗教団体会員からの申立て(2014.1.21)本件放送は、申立人の顔に一定のボカシをかけたものの、年齢、出身地方や出身国立大学のある都市の情報、出身大学を想起させる構内や学部名の入った門柱の映像、友人との写真などの情報を放送の中で順次明らかにしたことにより、申立人を知る者からは、放送対象が申立人であると特定しうる放送内容となった。そのような状況の下で、申立人が脱会カウンセラーとの間でカウンセリングを受けている場面を隠し録音して放送し、両親に宛てた私信を示しながらその内容をナレーションで朗読するという手法で放送し、申立人の思春期の心情や信仰に対する思いを語る部分を明らかにしたことは、申立人の承諾なく私生活の領域に深く立ち入るものであり、申立人のプライバシーへの十分な配慮があるとは言えない。日本民間放送連盟放送基準は、「第1章 人権(3)」において、「個人情報の取り扱いには十分注意し、プライバシーを侵すような取り扱いはしない」、また、同連盟報道指針は、「3.人権の尊重」において、「名誉、プライバシー、肖像権を尊重する」としており、本件放送部分は、放送倫理上問題がある。関 連ボカシ処理しても特定される場合がある①(48ページ)カウンセリングの隠し録音(29ページ)第50号 大津いじめ事件報道に対する申立て(2013.8.9)「日本民間放送連盟 放送基準」は、「ニュース報道にあたっては、個人のプライバシーや自由を不当に侵したり、名誉を傷つけたりしないように注意する」と規定している。テレビ映像の録画機能の高度化やインターネットの普及は従来想像できなかったメディア状況の変化をもたらしている。この点ではフジテレビもすでに多様な問題を実際に経験してきたはずである。変貌著しいメディア状況の中、放送倫理との関連で、「日本民間放送連盟 放送基準」のこの規定も新しい想像力とともに読み込まれる必要がある。
元のページ ../index.html#169