143放送倫理上の問題客観性、公平・公正真実に迫るために最善の努力を傾けなければならない」と定めている。すでに述べたとおり、企画、制作に関わっていない「持込番組」であっても、「放送責任が当社にあることは承知しております」とTOKYO MXは自らの責任を認めている。そして「持込番組」においてこそ、考査はその放送責任を果たす唯一の機会として適正な対応が強く求められる。ところが、ヒアリングによれば、今回の考査はテロップやナレーションが付加されていない部分がある未完成の状態で行われたもので、申立人への取材を一切行っていない点を不問に付したまま、「特定の人物などへの誹謗中傷や放送禁止用語の有無を含む法令・放送基準上の問題、事実誤認がないかを確認したところ、特段の問題が無かった」と判断して、そのまま放送が行われたとのことである。以上のような考査におけるTOKYO MXの対応は、考査部門の責任はいうに及ばず、放送局全体の「持込番組」への対応という観点からも、放送倫理上の問題があった。第61号 世田谷一家殺害事件特番への申立て(2016.9.12)テレビ朝日は、申立人の考えや活動を事前に知りながら、申立人をプロファイリングなるものの「最後のピース」として登場させ、申立人が「強い怨恨を持つ顔見知り犯行説」に賛同したかのように視聴者に受け取られる可能性が強い本件面談場面を放送した。その結果、申立人の考えや活動をよく知る人々の誤解を生じ、申立人はこれらの人々から厳しい批判や反発を受け、精神的苦痛を余儀なくされた。「日本民間放送連盟 報道指針」は、「4.報道表現」において「報道における表現は、節度と品位をもって行われなければならない」として、「過度の演出や視聴者・聴取者に誤解を与える表現手法(中略)の濫用は避ける」と規定している。この規定に照らして、本件放送は申立人に対する公正さを著しく欠いたと言わざるを得ない。関 連不適切な“テレビ的技法”(30ページ)
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