放送人権委員会 判断ガイド 2024
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139放送倫理上の問題事実の正確性うことが、放送による人権侵害の発生を防止することになるものと思われる。関 連専門的なテーマを取り扱う場合は出演者に十分な事前説明を(55ページ)第51号 大阪市長選関連報道への申立て(2013.10.1)放送倫理基本綱領は「報道は、事実を客観的かつ正確、公平に伝え、真実に迫るために最善の努力を傾けなければならない」とうたい、民放連の報道指針は「2 報道姿勢」において、「誠実で公正な報道活動こそが、市民の知る権利に応える道である。われわれは取材・報道における正確さ、公正さを追求する」と定める。その(2)では、「予断を排し、事実をありのまま伝える。未確認の情報は未確認であることを明示する」とある。本件放送は、「スクープ」であることを強調して疑惑を断定的に報じ、さらに「やくざ」と言う強い表現で論評を行ったものである。そして、すでに述べたように、それは申立人への取材を行わないまま放送された。委員会は、特に以下の4点から、本件放送に放送倫理上の重大な問題があると判断した。関 連報道対象者への取材は不可欠②(21ページ)疑惑報道は疑惑の段階であることを明確に伝える(31ページ)名誉感情侵害の判断③(115ページ)第46号 大学病院教授からの訴え(2011.2.8)高裁判決は難解である。そして、もとより、地裁判決と高裁判決のどちらが妥当かは、議論の対象となりうるものであり、両判決を正確に紹介したうえで高裁判決を批判するのは、意義あることである。また、放送にあたり一般視聴者が理解できるように専門用語を避け、あるいは細部を捨象するなどの工夫を行う必要が生じることは少なくないが、わかりやすい放送と不正確な放送は、次元を異にする。本件放送は内容が正確性を欠いている点において放送倫理上の問題があると判断する。

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