放送人権委員会 判断ガイド 2024
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135人権侵害公人など社会的関心が向けられている人物申立人は、同人が謝罪会見において音楽活動から退くことを表明した後は一般市民であると主張する。しかし、以上のような経緯からすれば、本件放送は、2014年3月7日に行われた謝罪会見から2か月半ほど経過した時点で行われたものではあったとはいえ、依然として申立人に対する社会的関心は持続していたと言える。以上からすれば、謝罪会見から2か月半ほど経過したとの一事をもって本件放送当時申立人が一般市民にすぎないということはできず、本件放送において申立人を取り上げたことには正当性が認められる。第56号 大喜利・バラエティー番組への申立て(2015.11.17)解 説申立人は、バラエティー番組が一音楽家にすぎない申立人を大喜利の「お題」とし、視聴者を巻き込んで「お笑いのネタ」にしたことは名誉感情の侵害だと訴えた。申立人は全聾の作曲家として知られ高い評価を得てきたが、別人に作曲を依頼していたことが発覚して謝罪会見を開き、再検査の結果、聴覚障害に当たらないと診断され障害者手帳を返上したことを明らかにした。委員会はこうした申立人の聴覚の疑惑に社会的関心が向けられることは当然で、厚生労働省が聴覚障害認定の見直しを検討するなど社会的な影響も見られたと指摘し、大喜利で申立人を取り上げた正当性は放送時点においても認められるなどとして名誉感情侵害とは言えないと判断した。関 連名誉感情侵害の判断②(114ページ)公的人物公共の利害に関する事実に係る取材・報道の対象となる申立人本人は、少なくともグリーンピア南紀に関連する取材・報道については、その社会的地位からその存在は私的なものではなくなり、国民の知る権利の対象となった、いわば公的存在であるというべきであり、保護されるべきプライバシーは制約される。第35号 “グリーンピア南紀”再生事業の報道(2007.12.4)解 説番組は、大規模年金保養施設の払下げを受けた自治体とその再開発を請け負った会社との不明瞭な契約を取材、報道した。その会社のオーナーである申立人は、

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