134放送人権委員会 判断ガイド2024人権侵害公人などが主題を離れ、いたずらに申立人らの人身攻撃に及ぶ論評に至っているともいえないので、本件放送で申立人らの社会的評価を低下させることがあったとしても、名誉侵害の不法行為の違法性はない。第42号 派遣法・登録型導入報道(2009.11.9)判 例〈公務員に対する意見・論評〉最高裁第一小法廷判決「長崎教師批判ビラ配布事件」1989年12月21日公共の利害に関する事項について自由に批判、論評を行うことは、もとより表現の自由の行使として尊重されるべきものであり、その対象が公務員の地位における行動である場合には、右批判等により当該公務員の社会的評価が低下することがあっても、その目的が専ら公益を図るものであり、かつ、その前提としている事実が主要な点において真実であることの証明があったときは、人身攻撃に及ぶなど論評としての域を逸脱したものでない限り、名誉侵害の不法行為の違法性を欠くものというべきである。国家試験の委員社会福祉士国家試験については、法と事務規程によって試験委員の秘密保持義務が規定されている。同時に、試験委員は国家試験の「判定に関する事務」を行い、委員長がその事務を統括し、万一委員長に事故あるときは副委員長の中から代理する者を選ぶと定められている。このような試験委員・委員会副委員長の職務からすれば、申立人は、試験に関し公的な権限を行使する地位にある。したがって、社会福祉士国家試験に関わる自らの行為について放送によって様々な批判がなされたとしても、これはいわば公人として甘受すべき立場にあったといえる。第49号 国家試験の元試験委員からの申立て(2013.3.29)解 説番組は、社会福祉士の試験委員会副委員長であった大学教授(申立人)が過去問題解説集を出版して講義で用いたことなどが国家試験の公正・公平性に疑念を招いたと伝えた。これに対し申立人は、試験問題を漏えいしたり出題のヒントを与えていたかのような印象を与えるもので、名誉と信用を毀損されたと申し立てた。委員会は人権侵害には当たらず、公人の職務に関する報道であったことを勘案すれば、放送倫理についても問題があったとは言えないと判断した。
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