130放送人権委員会 判断ガイド2024人権侵害自己決定権自己決定権個々人が自己の生き方を自ら選択し、確固とした自己像を形成することは、あるべき人間的営為の一つだろう。「自己決定権」という言葉を使うか否かはともかく、他者は一個の人間の生き方の選択や確立した自己像を安易に論評したり、非難するべきではない。ましてや、社会的な影響力を持つメディアには慎重な姿勢が求められる。第61号 世田谷一家殺害事件特番への申立て(2016.9.12)自己決定権の侵害申立人の主張する「制作者及び視聴者を意識した行動を取らせ、これを自然な行動であるとして視聴者に提示したことによる自己決定権及び人格権の侵害」とは、申立人が、同意書兼誓約書の拘束力を背景としたスタッフからの指示を問題にしていることからすれば、実質的には、本人の意思に反するような言動を強要されたことによる権利侵害をいうものと理解できる。この点について、若者であるとはいえ成人である出演者が自由意思で応募して出演している番組制作の過程で、制作スタッフからなされた指示が自己決定権や人格権の侵害として違法性を帯びることは、自由な意思決定の余地が事実上奪われているような例外的な場合であると考えられる。第76号 リアリティ番組出演者遺族からの申立て(2021.3.30)解 説申立人は、本番組が、出演者である申立人の娘に、制作者及び視聴者を意識した行動を取らせ、それが「リアル」なものであるかのように銘打って放送したという点で、自己決定権及び人格権を侵害すると主張していた。具体的には、撮影に先立ち、スタッフが「ビンタしちゃえば」「プロレスラーらしく振る舞ってほしい」等の指示をしていたと訴えた。また、出演契約書に相当する「同意書兼誓約書」の内6自己決定権
元のページ ../index.html#148