放送人権委員会 判断ガイド 2024
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126放送人権委員会 判断ガイド2024人権侵害肖像権第53号 散骨場計画報道への申立て(2015.1.16)解 説散骨場の建設計画を進める申立人は、地元記者会と個人名と顏の映像は出さないという条件で合意して記者会見に応じたのに、局が顏の映像を放送したと肖像権侵害を申し立てた。委員会は上記のように述べ肖像権侵害を認めなかった。撮影だけでも肖像権侵害は成立しうる本件放送では、子どもが映っている場面は一切放送されていないが、フジテレビも、本件放送の取材の際に番組クルーが撮影した映像に子どもが映っていること自体は認めている。一般論として、放送等の公表がない撮影だけの場合でも肖像権侵害が成立することはある(最高裁2005(平成17)年11月10日第一小法廷判決・民集59巻9号2428頁[法廷内撮影訴訟・和歌山カレー事件]、東京地裁2015(平成27)年11月5日判決・判例タイムズ1425号318頁[監視カメラ撤去等請求事件]等参照)。第65号 都知事関連報道に対する申立て(2017.7.4)撮影行為による肖像権侵害の判断撮影行為による肖像権侵害の有無を判断するにあたり、上記最高裁判決では、肖像権の保護と正当な取材行為の保障とのバランスを考慮して、「人の容ぼう等の撮影が正当な取材行為等として許されるべき場合もあるのであって、ある者の容ぼう等をその承諾なく撮影することが不法行為法上違法となるかどうかは、被撮影者の社会的地位、撮影された被撮影者の活動内容、撮影の場所、撮影の目的、撮影の態様、撮影の必要性等を総合考慮して、被撮影者の上記人格的利益の侵害が社会生活上受忍の限度を超えるものといえるかどうかを判断して決すべきである」と述べている。委員会も、基本的にはこれと同様の判断基準により撮影行為による肖像権侵害の有無を検討するのが妥当であると考える。

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