放送人権委員会 判断ガイド 2024
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120放送人権委員会 判断ガイド2024人権侵害プライバシー理についての合理的な期待を裏切るものであり、上告人らのプライバシーを侵害するものとして不法行為を構成するというべきである。​プライバシー侵害と免責①特定の信仰を持っていることやその教団に属していることは、他者にはみだりに公開されたくない個人に関する情報として保護されるべきプライバシーであり、いかにアレフが団体規制法に基づく観察対象となっているからといって、個々の信者に対するプライバシー侵害が許されるものではない。しかし、申立人のプライバシーを公開するものであっても、正当な目的に基づいて相当な手段によるものであれば、それが違法なものとはされないことがある。報道においては、公共性のある事実について、専ら公益を図る目的で報道し、報道の態様が相当で、報道することにプライバシーの保護に優越する価値が認められれば、違法な権利侵害とはされない。第71号 宗教団体会員からの肖像権等に関する申立て(2020.2.14)解 説ニュース番組で、オウム真理教の後継団体であるアレフの現状を伝えた企画の中で、アレフ会員である申立人と取材記者とのやり取りが放送された。申立人は、再三撮影をしないよう訴えたにもかかわらず無断で全国放送され、肖像権とプライバシーが侵害されたと訴え、申立てを行った。委員会は、審理のうえ、プライバシー、肖像権の侵害はなく、放送倫理上の問題もないとした。プライバシー侵害と免責②表現の自由とプライバシーの権利侵害との調整にあたっても、報道・取材の自由が民主主義社会において国民の知る権利に奉仕するという意義をあわせ考えることにより、同様の法理により、当該取材・報道が、公共の利害に関する事実に係り、もっぱら公益を図る目的でなされたものであり、または社会の正当な関心事であり、かつ、当該取材・報道の手段・方法が目的に照らして相当性をもつ場合には、プライバシー侵害の違法性はないと判断されるべきであろう。

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