放送人権委員会 判断ガイド 2024
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115人権侵害名誉感情しばしば世相に対する批判も含む表現形式として、社会的に定着した娯楽である。それは、表現の自由の行使として正当な行為であって、たとえ個人に対する揶揄となったとしても、その者が正当な社会的関心の対象である場合には、個々の表現が許容限度を超えない限り許されると考えるべきである。そして、大喜利は短い応答の中に即興で笑いを盛り込むものであり、その中には大げさな表現やナンセンスな表現、言葉遊び等も当然含まれうる。また、短時間で次々に回答がなされていくものであり、即興性が特徴である。大喜利が社会的に定着した表現形式であることからすれば、名誉感情侵害の判断においてもこうした大喜利の特徴を斟酌すべきである。第56号 大喜利・バラエティー番組への申立て(2015.11.17)関 連社会的関心が向けられている人物(135ページ)名誉感情侵害の判断③本件放送は、内部告発者の発言として「やくざと言ってもいいくらいの団体」という論評を行うものである。この発言は、論評の前提となる事実に真実性・真実相当性が認められない場合には、違法な権利侵害との評価をまぬがれない。また、この発言は、その組合員に対する否定的評価を当然に内包しており、社会通念上許される限度を超えた侮辱行為として、組合員の名誉感情を侵害しているおそれもある。第51号 大阪市長選関連報道への申立て(2013.10.1)解 説「大阪市交通局の労働組合が『現職市長の支援に協力しなければ、不利益がある』と、職員を脅すように指示していた疑いが、独自の取材で明らかになりました」とのリードで伝えたニュースについて、労組が名誉毀損等を申し立てた事案。ニュースは、労組が勤務時間中に現職市長支援のための「知人紹介カード」を組合員から集めていた事実が発覚したことに加え、放送局が独自に入手した知人紹介カードの回収リストには「非協力的な組合員がいた場合は、今後、不利益になることを本人に伝える」との指示が書き込まれていたと報じた。さらに内部告発者が「やくざと言ってもいいくらいの団体だと思っています」と語る匿名映像を使用した。その後、大阪市交通局の調査で知人紹介カードの回収リストは、内部告発者がねつ造

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