放送人権委員会 判断ガイド 2024
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110放送人権委員会 判断ガイド2024人権侵害名誉申立人は、氏名は発表されていないものの関係者にはすぐに自分だと判断される内容であるとした上で、「私が複数の学生に対して『小中学生でもできる』などと言った侮辱が理由で処分されたと報道された。不正確な情報をあたかも実際に起きたかのように、間違った報道をされた」と主張し、「誤った情報が周知され、大学で正常に勤務できない状況が作られた」として、局に謝罪を求めた。委員会は、本件放送に新たに申立人の社会的評価を低下させる情報はないと判断した。噂話と名誉毀損噂があると放送した場合において、「『人の噂であるから真偽は別として』という表現を用いて、…名誉を毀損する事実を摘示した場合、…事実の証明の対象となるのは、風評そのものが存在することではなく、その風評の内容たる事実の真否である」という判例(最高裁昭和43年1月18日判決刑集22巻1号7頁)がある。この法理は、事件の被害者の名誉または生活の平穏にかかわる事実を報道する場合にも十分に配慮されなければならないことである。第44号 上田・隣人トラブル殺人事件報道(2010.8.5)解 説委員会は、本件報道を構成している近隣住民のインタビューには伝聞や噂話が入り込む余地があると指摘した。そして、噂によって名誉を毀損した場合には、その噂が実際に存在するということではなく、その内容自体の真実性または真実相当性を証明しなければ免責されないとする最高裁判決を示し、インタビューの放送について慎重な取り扱いを求めた。判 例〈噂、風評と名誉毀損〉最高裁第一小法廷決定 1968年1月18日本件のように、「人のうわさであるから真偽は別として」という表現を用いて、公務員の名誉を毀損する事実を適示した場合、刑法230条ノ2所定の事実の証明の対象となるのは、風評そのものが存在することではなくて、その風評の内容たる事実の真否であるとした原判断は相当である。非難感情の先行による人権侵害被申立人には、はじめから申立人が自らの保護下にある生徒に対して、必要以上に親近感をあからさまに示し、教師としてあるまじき行為を重

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