105人権侵害名誉事実の摘示と意見・論評の表明の区別問題とされている表現が、事実を摘示するものであるか、意見ないし論評の表明であるかによって、名誉毀損にかかる不法行為の責任の成否に関する要件が異なるため、当該表現がいずれの範疇に属するかを判別することが必要となるが、当該表現が証拠等をもってその存否を決することが可能な他人に関する特定の事項を明示的又は黙示的に主張するものと理解されるときは、当該表現は、上記特定の事項についての事実を摘示するものと解するのが相当である。そして、上記のような証拠等による証明になじまない物事の価値、善悪、優劣についての批評や論議などは、意見ないし論評の表明に属するというべきである。(最高裁平成16年7月15日判決民集58巻5号1615頁、当委員会決定33号など)第39号 徳島・土地改良区横領事件報道(2009.3.30)テレビ放送による名誉毀損の判断テレビジョン放送をされた報道番組の内容が人の社会的評価を低下させるか否かについては、新聞記事等の報道の場合と同様に、一般の視聴者の普通の注意と視聴の仕方とを基準として判断すべきであるとされる。そして、テレビジョン放送をされた報道番組によって摘示された事実がどのようなものであるかという点についても、一般の視聴者の普通の注意と視聴の仕方を基準として判断するのが相当であるとされる。テレビジョン放送をされる報道番組においては、新聞記事等の場合とは異なり、視聴者は、音声及び映像により次々と提供される情報を瞬時に理解することを余儀なくされるのであり、録画等の特別の方法を講じない限り、提供された情報の意味内容を十分に検討したり、再確認したりすることができないものであることからすると、当該報道番組により摘示された事実がどのようなものであるかという点については、当該報道番組の全体的な構成、これに登場した者の発言の内容や、画面に表示されたフリップやテロップ等の文字情報の内容を重視すべきことはもとより、
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