放送人権委員会 判断ガイド 2024
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97企画・取材、制作、放送放送とインターネットテレビの責任を問えるか否かである。フジテレビは「第三者の故意行為が介在している」として、責任を負うべきは「当該第三者」であると主張する。テレビ画像を切り取ってインターネットにアップロードする行為は著作権法に違反する。この点では、フジテレビには静止画像によるプライバシー侵害の責任は問えない。第50号 大津いじめ事件報道に対する申立て(2013.8.9)解 説いじめ事件の報道で、加害者とされる少年の実名部分がモザイク処理されていない映像が流れた。放送では氏名は判読できなかったが、ネット上に流失した静止画像では判読可能であった。委員会は「テレビ映像に限れば、申立人の主張するプライバシー侵害には当たらない」とした一方で、録画機能の高度化やインターネット上に静止画像がアップロードされるといった新しいメディア状況を考慮したとき、静止画像にすれば氏名が判読できる映像を放送した点で、人権への適切な配慮を欠き、放送倫理上の問題があると判断した。ネット上の第三者の書き込みによる二次被害と局の責任テレビ放送による報道に際しては、その報道がもたらす二次的影響まで勘案し、より慎重な配慮がなされるべきであるということになろう。被申立人側も、その点については配慮が足りなかったかもしれないことを率直に認めている。放送を見た第三者によるインターネット・サイトへの書き込みによる名誉毀損・プライバシー侵害などの被害の発生は、たしかにそれ自体が深刻な問題であり、今後放送に際して検討されるべき課題として残されているといわなければならない。しかしながら、被申立人も主張するように、匿名で飛び交う無責任な発言を事前に予測することは著しく困難なことも事実であり、また、それらの書き込みの多くが放送の趣旨・内容とはおよそ関係がなく、放送では触れられていない事柄にまで言及されていることを考えると、第三者によるインターネット・サイトへの書き込みにより仮に名誉権・プライバシー権等の人格権への侵害が生ずる場合があるとしても、それは放送による権利侵害とは別の問題であり、そこまで放送に法的および倫理的責任を問うことはできないものと判断

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