放送人権委員会 判断ガイド 2024
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92放送人権委員会 判断ガイド2024企画・取材、制作、放送バラエティー番組らば、「被害者」の意にかかわりなく表現だけを取り上げて問題ありとすることには、委員会としては謙抑的であるのが妥当であろう(「被害者」の意にかかわりなく表現だけに着目する場合には、言動が向けられた「被害者」に該当する者の意図をいったん脇におく結果、その者が、その言動を本当に問題視していない場合やむしろ積極的に捉えている場合なども含まれうることになる。そのような、言動が向けられた当事者すら問題にしていない場合に、委員会が特定の表現に問題があったと後から判断することには謙抑的であるのが妥当であろう)。もちろん、関係する言動の当事者が問題にしていなければ、いかなる言動も許される訳ではないが、人権侵害が成立するのは、余程ひどい表現の場合に限定するのが妥当であろう。第79号 ローカル深夜番組女性出演者からの申立て(2023.7.18)解 説深夜のローカルバラエティー番組に出演していた女性フリーアナウンサーが、番組内での他の出演者からの度重なる下ネタや性的な言動によって羞恥心を抱かせられ、そのような番組を放送されたことでイメージが損なわれたとして、人権侵害を受け、放送倫理上の問題が生じたと申し立てた。放送局側は、番組の内容は社会通念上相当な範囲を逸脱しておらず、人権侵害や放送倫理上の問題はないと反論していた。委員会は審理の結果、人権侵害は認められず、放送倫理上の問題もあるとまでは言えないと判断した。そのうえで、制作現場における構造上の問題(フリーアナウンサーとテレビ局という立場の違い、ジェンダーバランスの問題)に触れ、あいテレビに対して職場環境や仕組みを見直し改善していくための取り組みを続けるよう要望し、また、放送業界全体に対しても注意を促した。

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