83企画・取材、制作、放送私人間のトラブル解 説番組は食品工場で起きた「ストーカー事件」を取り上げたが、恋愛感情に起因する事件ではなく、職場の同僚同士の処遇をめぐる軋轢・紛争が背景にあった。紛争の一方当事者が積極的に取材に協力し、この人物から提供された隠し撮りの映像や隠し録音の会話が放送されたが、加害者側とされた相手方である申立人への取材は行われなかった。関 連第58号 ストーカー事件再現ドラマへの申立て(2016.2.15)情報提供によるトラブルの取材・報道②本件の番組制作は、隣人トラブルの一方の当事者から手紙とビデオテープなどがフジテレビに送付され、それを基に番組企画を進めたことに始まる。このように、対立する一方からの情報提供に対しては、他の一方についても十分な情報を入手し、トラブル当事者の相互関係を的確に把握した上で、両者対等の立場から取材に入ることが、特に私人間の場合は重要である。やむを得ず一方からのみの情報に基づいて取材に入る場合には、最終的に相手方に対する取材とその言い分を取り入れるなど、十分なフォローが必要である。第11号 隣人トラブル報道(1999.12.22)トラブル取材のあり方本件紛争は、申立人の社会的に不適切な行為に起因して惹起したということはできても、一方的に申立人のみが社会的制裁をうけるべき事案であるかは、申立人側からも充分な事情聴取をし、その言い分や背景事情を取材してはじめて可能なことである。しかも本件放送は捜査当局の関与していない紛争についての独自取材に基づく報道である。このような場合、特に捜査による正確性の担保がないだけに報道が確度の高い取材に基づいて行われることが必要である。社会的な不正や悪を指摘する報道であっても、報道対象者に報道の意図を明らかにしてその弁明を聞くことは報道の鉄則である。第26号 喫茶店廃業報道(2005.10.18)関 連隠しカメラ・隠しマイクは原則使用しない②(28ページ)
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