放送人権委員会 判断ガイド 2024
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82放送人権委員会 判断ガイド2024企画・取材、制作、放送私人間のトラブル10私人間のトラブルトラブル報道の意義近時、一般市民の社会生活において、さまざまな場面で、違法駐車・異臭・騒音・ペット・土地の境界線等の近隣トラブルが発生し、双方の言い分が対立して感情的に先鋭化し、刑事事件にまで発展することも少なくない。テレビ放送は、「公共の福祉、文化の向上、産業と経済の繁栄に役立ち、平和な社会の実現に寄与することを使命とする」(日本民間放送連盟 放送基準前文)ものであるから、報道番組において、上記の紛争を取り上げて問題提起し、さらにはこれらの紛争の解決に役立つ指針を提示することは社会的意義のある放送である。しかし、このような視点に基づいて放送するに当たっては、充分双方の事情・言い分を取材し、視聴者に当該問題の社会的背景を理解できるような奥行きのある取材と検証が必要である。第26号 喫茶店廃業報道(2005.10.18)情報提供によるトラブルの取材・報道①本件のように、対立する一方当事者からの情報提供に対しては、他の一方についての十分な情報も入手し、トラブル当事者の相互関係を的確に把握した上で、両者対等の立場から取材にあたることが、特に私人間の場合は重要である。やむを得ず一方からのみの情報に基づいて取材に入る場合には、最終的に相手方に対する取材とその言い分を取り入れるなど、十分なフォローが必要である。このことは、委員会決定第11号(「隣人トラブル報道」)も指摘するところである。しかし、本件放送では、取材の過程でも、一方当事者の側からのみ取材を行い、相手方を一切取材せず、十分な裏付けもなく、事件の背景を掘り下げるなどの努力を怠ったといわざるをえない。第59号 ストーカー事件映像に対する申立て(2016.2.15)

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