テレビ東京『激録・警察密着24時!!』『鬼滅の刃』の模倣品捜査密着事案に関する意見の通知・公表
上記委員会決定の通知は、1月17日午後2時からBPOで行われた。委員会からは小町谷委員長、井桁委員、長嶋委員の3人が出席した。テレビ東京からはコンテンツ戦略担当の専務取締役ら5人が出席した。
小町谷委員長から、放送倫理違反があったと判断するに至った経緯を説明したあと、「当事者から抗議書が届いた段階でもう少し掘り下げた調査をしていればここまで事案が拡大することもなかったのではないか」と指摘した。これを受けてテレビ東京の専務取締役は「意見書や委員の説明は真摯に受け止めていきたい。引き続き今回のご意見を参考にしながら再発防止策を徹底するとともに、番組全般の作り方にしっかり生かしていきたい」と述べた。
その後、午後3時から千代田放送会館2階ホールで記者会見を開き、委員会決定を公表した。会見には27社51人が出席した。
最初に小町谷委員長から本件事案の特徴として、捜査に密着する番組でありながら、いきなり逮捕の時点から取材し、逮捕までの捜査活動は事後撮影によるものだった。担当ディレクターが不正競争防止法違反という馴染みのない事件への理解にかなり苦労していたなどをあげた。そのうえで3つ問題点を指摘。①不起訴に触れず、刺激的な演出をした②『鬼滅の刃』キャラクターを描いた商品を発注、捜索後も販売を続けたという事実と異なる放送をした③密着をうたいながら事後撮影を放送した。これらの要因として4点を指摘。①モザイクをしていれば特定されないという強烈な“モザイク信仰”②警察は活動を広報でき、テレビ局は視聴率を稼げる、視聴者は娯楽を楽しめるといった“三方良し”の構図③ひっ迫した制作体制で担当ディレクターが引継ぎを十分に行えなかった④刺激的なスーパーで犯罪をエンタメ化するステレオタイプが繰り返された。
以上のことから、事実に基づいた公正な報道活動、視聴者に誤解を与えないように注意するなどの民放連の放送基準や放送倫理基本綱領等に違反していると判断したと説明した。
続いて井桁委員からは「警察密着ものは他の局も含めて4、50年の歴史がある中で、プライバシー問題への理解の高まりや広がりは目覚ましいものがある。その中では放送、報道の必要性と、プライバシーや人権意識との緊張関係について、配慮やアップデートが必要だったのではないか」などの指摘があった。また長嶋委員からは、「これからもネット犯罪やもっと巧妙で知的な犯罪に対して捜査に密着して啓発してほしい」としたうえで、「この事案をジャーナリズム全体の固定化されたステレオタイプを見直す契機にしてほしい」と呼び掛けた。
このあとの質疑応答では、「(意見書に)なぜやらせがあったかどうかの文言をいれなかったのか」という旨の質問があった。これに対し委員会は「故意に事実であるかのように仕立てたということはヒアリングでは出てこなかった」「取材ディレクターは別の番組も担当して大きな負担を抱えた状態で、やらせや仕込みをする余裕はなかった」と答えた。また「制作者の中でストーリーに落とし込むという意識が強かったのでは?」との質問に対し、取材ディレクター、編集ディレクター、プロデューサーが個々に作業にあたり、「何か統一的なストーリーに基づいて作られたのではなかった」と説明した。さらに「警察密着番組が抱える問題を突破できることは可能か」との質問に対しは、「どんな取材でも取材対象者との一定の緊張感と距離感は必要。中立的な立場で放送していくことがあるべき姿」と答えた。
以上