放送倫理検証委員会

放送倫理検証委員会 議事概要

第203回

第203回–2025年2月

テレビ東京『激録・警察密着24時!!』委員会決定の通知・公表について報告

第203回放送倫理検証委員会は、2月14日に千代田放送会館で開催された。
委員会が1月17日に公表した、委員会決定第46号テレビ東京『激録・警察密着24時!!』『鬼滅の刃』の模倣品捜査密着事案に関する意見について、担当委員から当日の様子などが報告された。
9月の委員会で審議入りした毎日放送の『ゼニガメ』については、前回の委員会で意見書の修正案が議論されたのを受け、今回は担当委員から意見書の再修正案が提出された。複数の委員から質問や意見が出され、次回の委員会までに再々修正案を作成することになった。
TBSテレビは2024年10月19日に放送した約2時間のバラエティー番組『熱狂マニアさん!』の中で、インテリア小売業大手「ニトリ」のマニアを特集した。放送後、BPOに視聴者から「番組全編で1社を取り上げ価格や商品名も紹介しており、番組の提供にも社名が入りCMを流していた。これは番組といいながら、明らかに広告ではないのか」という声が寄せられた。委員会は議論の結果、番組内容や制作過程に「番組と広告の違い」等を含む放送倫理上の問題がなかったかを詳しく検証する必要があるとして前回の委員会で審議入りを決めた。今回の委員会では関係者に対するヒアリングの予定などが報告された。
1月にBPOに寄せられた視聴者・聴取者意見などが報告された。

議事の詳細

日時
2025年2月14日(金)午後5時~午後7時10分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、
大石委員、大村委員、長嶋委員、西土委員、毛利委員、米倉委員

1. テレビ東京『激録・警察密着24時!!』『鬼滅の刃』の模倣品捜査密着事案に関する意見の通知・公表について報告

テレビ東京は2023年3月、『激録・警察密着24時!!』の中で「人気アニメ『鬼滅の刃』に便乗 悪質コピー商品の販売業者を追い詰めろ」として、販売業者が「不正競争防止法違反」で摘発された事件を取り上げたが、販売業者から放送内容が名誉を毀損する表現や虚偽の事実を警察官に演じさせた、ねつ造の疑いがあるとして抗議及び申し入れ書が送られた。これを受けてテレビ東京は2024年5月に不適切な内容が複数あったことを認め、謝罪するおわび放送をした。
委員会は同年7月「放送倫理違反の疑いがあり、詳しく検証する必要がある」として審議入りし、テレビ東京や制作会社スタッフなどを対象にヒアリングを実施。その結果、被疑者3名が不起訴になっていたことに触れなかった、『鬼滅の刃』のキャラクターを描いた商品を発注した事実はなかった、密着ドキュメントをうたいながら捜査のほとんどが事後撮影だったことなどを確認した。こうした問題について委員会は、「モザイクなどをすれば個人特定に対する配慮は足りている」とする“モザイク信仰”が人権意識を鈍らせた。また逮捕と犯罪者を安直に結びつける構図にとらわれ、ナレーションであおり、刺激的なスーパーで犯罪捜査をエンタメ化するこの番組のステレオタイプが繰り返されたなどの4つの要因を挙げた。
以上のことから本件放送は、事実と異なる内容を報じ、視聴者の信頼を裏切り、放送倫理基本綱領、民放連の放送基準及びテレビ東京の放送番組編成基準の各項目に反しているとして、放送倫理違反があると判断した。
2025年1月17日、委員会は当該放送局に委員会決定を通知し、引き続き記者会見を開いて意見書を公表した。この日の委員会では、委員会決定を伝えたテレビ東京のニュース番組の録画を視聴し、委員長と担当委員が通知・公表時の様子について報告した。
通知と公表の概要は、こちら。

2. 毎日放送『ゼニガメ』について審議

毎日放送は、2024年7月17日に放送したローカルバラエティー番組『ゼニガメ』で、出張買取業者に密着取材する企画を放送したが、翌日、番組に事実と異なる放送があったことを公表して謝罪した。さらに2023年11月と2024年5月の放送分にも事実と異なる内容があったことも判明し、委員会は9月に審議入りを決めた。担当委員が当該放送局から提出された報告書の精査と番組関係者へのヒアリングを実施し、12月の委員会に意見書の原案を提出した。1月の委員会では意見書の修正案に対する議論が交わされ、今回の委員会では担当委員から再修正案が提出された。これに対して複数の委員から質問や意見が出されたため担当委員は更なる検討を重ね、次回委員会に再々修正案を提出することになった。

3. TBSテレビ『熱狂マニアさん!』について審議

TBSテレビは2024年10月19日午後7時から約2時間のバラエティー番組『熱狂マニアさん!』の中で、インテリア小売業大手「ニトリ」のマニアを特集し放送した。番組は「ニトリマニアが集結!1万点からベスト3 名もなき家事が今夜消滅!」と題し、ニトリの商品を使った時短料理や収納テクニックなどを全編にわたり放送した。
放送後、BPOに視聴者から「番組全編で1社を取り上げ価格や商品名も紹介しており、番組の提供にも社名が入りCMを流していた。これは番組といいながら、明らかに広告ではないのか」という声が寄せられた。委員会で議論をしたところ、この番組では2024年になってからニトリを3回(1月13日、6月1日、10月19日)取り上げていることが判明したため、当該放送局に番組DVDと報告書の提出を求めることにした。
TBSテレビの報告書によると、本番組は、ある特定のジャンルに関して、並外れた熱意や愛情を注いでいるマニアが、熱狂していることや好きなものを紹介するバラエティー番組。コロナ禍による巣ごもり需要により、コンビニやスーパー、大手日用雑貨店への興味関心がファミリー層などで高まったことを受け、「時短料理術」や「清掃・収納術」など、人気有名企業の商品活用法に詳しいマニアを番組が発掘し、単なる商品紹介ではない、衣食住にまつわる「生活の知恵」を幅広い視聴者に届けてきたという。
委員会は、12月と1月の2回にわたって議論した結果、番組内容や制作過程に「番組と広告の違い」等を含む放送倫理上の問題がなかったかを詳しく検証する必要があるとして1月の委員会で審議入りを決めた。今回の委員会では、当該放送局の関係者から近々ヒアリングを行う予定であることなどが報告された。

4. 1月の視聴者・聴取者意見を報告

1月に視聴者・聴取者から寄せられた意見には、人気タレントと女性とのトラブルをめぐる一連の問題に関するものが最も多かった。具体的には、フジテレビの記者会見について、自社の不祥事は記者会見の生中継をしない一方で、ニュース番組では防犯カメラの映像等を使い軽犯罪やマナー違反程度の事で一般人を度々叩く姿勢はおかしいといった意見や、社員からトラブルの報告を受けた後のフジテレビの対応の不味さが問題の本質であるという事を分かっていないのではないか、個人情報保護を理由に明確な回答を避け責任回避や問題先送りに終始した印象を受けた、といった意見が寄せられた。また、生中継された記者会見については、ネット上のテレビに関する憶測の真偽が分かると共に、ネットニュースを出しているメディアがどのような記者によって構成されているかが分かる良い機会だったという意見も寄せられた。このほか番組か広告かの問題について、具体的な番組名をあげて、実質的に広告であるにもかかわらず視聴者が番組と誤解しかねない構成や演出だと批判する意見が寄せられた。

以上