第203回

第203回–2025年2月

テレビ東京『激録・警察密着24時!!』委員会決定の通知・公表について報告

第203回放送倫理検証委員会は、2月14日に千代田放送会館で開催された。
委員会が1月17日に公表した、委員会決定第46号テレビ東京『激録・警察密着24時!!』『鬼滅の刃』の模倣品捜査密着事案に関する意見について、担当委員から当日の様子などが報告された。
9月の委員会で審議入りした毎日放送の『ゼニガメ』については、前回の委員会で意見書の修正案が議論されたのを受け、今回は担当委員から意見書の再修正案が提出された。複数の委員から質問や意見が出され、次回の委員会までに再々修正案を作成することになった。
TBSテレビは2024年10月19日に放送した約2時間のバラエティー番組『熱狂マニアさん!』の中で、インテリア小売業大手「ニトリ」のマニアを特集した。放送後、BPOに視聴者から「番組全編で1社を取り上げ価格や商品名も紹介しており、番組の提供にも社名が入りCMを流していた。これは番組といいながら、明らかに広告ではないのか」という声が寄せられた。委員会は議論の結果、番組内容や制作過程に「番組と広告の違い」等を含む放送倫理上の問題がなかったかを詳しく検証する必要があるとして前回の委員会で審議入りを決めた。今回の委員会では関係者に対するヒアリングの予定などが報告された。
1月にBPOに寄せられた視聴者・聴取者意見などが報告された。

議事の詳細

日時
2025年2月14日(金)午後5時~午後7時10分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、
大石委員、大村委員、長嶋委員、西土委員、毛利委員、米倉委員

1. テレビ東京『激録・警察密着24時!!』『鬼滅の刃』の模倣品捜査密着事案に関する意見の通知・公表について報告

テレビ東京は2023年3月、『激録・警察密着24時!!』の中で「人気アニメ『鬼滅の刃』に便乗 悪質コピー商品の販売業者を追い詰めろ」として、販売業者が「不正競争防止法違反」で摘発された事件を取り上げたが、販売業者から放送内容が名誉を毀損する表現や虚偽の事実を警察官に演じさせた、ねつ造の疑いがあるとして抗議及び申し入れ書が送られた。これを受けてテレビ東京は2024年5月に不適切な内容が複数あったことを認め、謝罪するおわび放送をした。
委員会は同年7月「放送倫理違反の疑いがあり、詳しく検証する必要がある」として審議入りし、テレビ東京や制作会社スタッフなどを対象にヒアリングを実施。その結果、被疑者3名が不起訴になっていたことに触れなかった、『鬼滅の刃』のキャラクターを描いた商品を発注した事実はなかった、密着ドキュメントをうたいながら捜査のほとんどが事後撮影だったことなどを確認した。こうした問題について委員会は、「モザイクなどをすれば個人特定に対する配慮は足りている」とする“モザイク信仰”が人権意識を鈍らせた。また逮捕と犯罪者を安直に結びつける構図にとらわれ、ナレーションであおり、刺激的なスーパーで犯罪捜査をエンタメ化するこの番組のステレオタイプが繰り返されたなどの4つの要因を挙げた。
以上のことから本件放送は、事実と異なる内容を報じ、視聴者の信頼を裏切り、放送倫理基本綱領、民放連の放送基準及びテレビ東京の放送番組編成基準の各項目に反しているとして、放送倫理違反があると判断した。
2025年1月17日、委員会は当該放送局に委員会決定を通知し、引き続き記者会見を開いて意見書を公表した。この日の委員会では、委員会決定を伝えたテレビ東京のニュース番組の録画を視聴し、委員長と担当委員が通知・公表時の様子について報告した。
通知と公表の概要は、こちら。

2. 毎日放送『ゼニガメ』について審議

毎日放送は、2024年7月17日に放送したローカルバラエティー番組『ゼニガメ』で、出張買取業者に密着取材する企画を放送したが、翌日、番組に事実と異なる放送があったことを公表して謝罪した。さらに2023年11月と2024年5月の放送分にも事実と異なる内容があったことも判明し、委員会は9月に審議入りを決めた。担当委員が当該放送局から提出された報告書の精査と番組関係者へのヒアリングを実施し、12月の委員会に意見書の原案を提出した。1月の委員会では意見書の修正案に対する議論が交わされ、今回の委員会では担当委員から再修正案が提出された。これに対して複数の委員から質問や意見が出されたため担当委員は更なる検討を重ね、次回委員会に再々修正案を提出することになった。

3. TBSテレビ『熱狂マニアさん!』について審議

TBSテレビは2024年10月19日午後7時から約2時間のバラエティー番組『熱狂マニアさん!』の中で、インテリア小売業大手「ニトリ」のマニアを特集し放送した。番組は「ニトリマニアが集結!1万点からベスト3 名もなき家事が今夜消滅!」と題し、ニトリの商品を使った時短料理や収納テクニックなどを全編にわたり放送した。
放送後、BPOに視聴者から「番組全編で1社を取り上げ価格や商品名も紹介しており、番組の提供にも社名が入りCMを流していた。これは番組といいながら、明らかに広告ではないのか」という声が寄せられた。委員会で議論をしたところ、この番組では2024年になってからニトリを3回(1月13日、6月1日、10月19日)取り上げていることが判明したため、当該放送局に番組DVDと報告書の提出を求めることにした。
TBSテレビの報告書によると、本番組は、ある特定のジャンルに関して、並外れた熱意や愛情を注いでいるマニアが、熱狂していることや好きなものを紹介するバラエティー番組。コロナ禍による巣ごもり需要により、コンビニやスーパー、大手日用雑貨店への興味関心がファミリー層などで高まったことを受け、「時短料理術」や「清掃・収納術」など、人気有名企業の商品活用法に詳しいマニアを番組が発掘し、単なる商品紹介ではない、衣食住にまつわる「生活の知恵」を幅広い視聴者に届けてきたという。
委員会は、12月と1月の2回にわたって議論した結果、番組内容や制作過程に「番組と広告の違い」等を含む放送倫理上の問題がなかったかを詳しく検証する必要があるとして1月の委員会で審議入りを決めた。今回の委員会では、当該放送局の関係者から近々ヒアリングを行う予定であることなどが報告された。

4. 1月の視聴者・聴取者意見を報告

1月に視聴者・聴取者から寄せられた意見には、人気タレントと女性とのトラブルをめぐる一連の問題に関するものが最も多かった。具体的には、フジテレビの記者会見について、自社の不祥事は記者会見の生中継をしない一方で、ニュース番組では防犯カメラの映像等を使い軽犯罪やマナー違反程度の事で一般人を度々叩く姿勢はおかしいといった意見や、社員からトラブルの報告を受けた後のフジテレビの対応の不味さが問題の本質であるという事を分かっていないのではないか、個人情報保護を理由に明確な回答を避け責任回避や問題先送りに終始した印象を受けた、といった意見が寄せられた。また、生中継された記者会見については、ネット上のテレビに関する憶測の真偽が分かると共に、ネットニュースを出しているメディアがどのような記者によって構成されているかが分かる良い機会だったという意見も寄せられた。このほか番組か広告かの問題について、具体的な番組名をあげて、実質的に広告であるにもかかわらず視聴者が番組と誤解しかねない構成や演出だと批判する意見が寄せられた。

以上

2025年1月17日

テレビ東京『激録・警察密着24時!!』『鬼滅の刃』の模倣品捜査密着事案に関する意見の通知・公表

上記委員会決定の通知は、1月17日午後2時からBPOで行われた。委員会からは小町谷委員長、井桁委員、長嶋委員の3人が出席した。テレビ東京からはコンテンツ戦略担当の専務取締役ら5人が出席した。
小町谷委員長から、放送倫理違反があったと判断するに至った経緯を説明したあと、「当事者から抗議書が届いた段階でもう少し掘り下げた調査をしていればここまで事案が拡大することもなかったのではないか」と指摘した。これを受けてテレビ東京の専務取締役は「意見書や委員の説明は真摯に受け止めていきたい。引き続き今回のご意見を参考にしながら再発防止策を徹底するとともに、番組全般の作り方にしっかり生かしていきたい」と述べた。

その後、午後3時から千代田放送会館2階ホールで記者会見を開き、委員会決定を公表した。会見には27社51人が出席した。
最初に小町谷委員長から本件事案の特徴として、捜査に密着する番組でありながら、いきなり逮捕の時点から取材し、逮捕までの捜査活動は事後撮影によるものだった。担当ディレクターが不正競争防止法違反という馴染みのない事件への理解にかなり苦労していたなどをあげた。そのうえで3つ問題点を指摘。①不起訴に触れず、刺激的な演出をした②『鬼滅の刃』キャラクターを描いた商品を発注、捜索後も販売を続けたという事実と異なる放送をした③密着をうたいながら事後撮影を放送した。これらの要因として4点を指摘。①モザイクをしていれば特定されないという強烈な“モザイク信仰”②警察は活動を広報でき、テレビ局は視聴率を稼げる、視聴者は娯楽を楽しめるといった“三方良し”の構図③ひっ迫した制作体制で担当ディレクターが引継ぎを十分に行えなかった④刺激的なスーパーで犯罪をエンタメ化するステレオタイプが繰り返された。
以上のことから、事実に基づいた公正な報道活動、視聴者に誤解を与えないように注意するなどの民放連の放送基準や放送倫理基本綱領等に違反していると判断したと説明した。
続いて井桁委員からは「警察密着ものは他の局も含めて4、50年の歴史がある中で、プライバシー問題への理解の高まりや広がりは目覚ましいものがある。その中では放送、報道の必要性と、プライバシーや人権意識との緊張関係について、配慮やアップデートが必要だったのではないか」などの指摘があった。また長嶋委員からは、「これからもネット犯罪やもっと巧妙で知的な犯罪に対して捜査に密着して啓発してほしい」としたうえで、「この事案をジャーナリズム全体の固定化されたステレオタイプを見直す契機にしてほしい」と呼び掛けた。

このあとの質疑応答では、「(意見書に)なぜやらせがあったかどうかの文言をいれなかったのか」という旨の質問があった。これに対し委員会は「故意に事実であるかのように仕立てたということはヒアリングでは出てこなかった」「取材ディレクターは別の番組も担当して大きな負担を抱えた状態で、やらせや仕込みをする余裕はなかった」と答えた。また「制作者の中でストーリーに落とし込むという意識が強かったのでは?」との質問に対し、取材ディレクター、編集ディレクター、プロデューサーが個々に作業にあたり、「何か統一的なストーリーに基づいて作られたのではなかった」と説明した。さらに「警察密着番組が抱える問題を突破できることは可能か」との質問に対しは、「どんな取材でも取材対象者との一定の緊張感と距離感は必要。中立的な立場で放送していくことがあるべき姿」と答えた。

以上

第336回

第336回 – 2025年2月

「警察密着番組に対する申立て」委員会決定を通知・公表へ…など

議事の詳細

日時
2025年2月18日(火)午後4時~午後9時
場所
千代田放送会館BPO第1会議室
議題
出席者
曽我部委員長、鈴木委員長代行、廣田委員長代行、大谷委員、
國森委員、斉藤委員、野村委員、松尾委員、松田委員

1.「調査報道に対する地方自治体元職員からの申立て」通知・公表報告

審理入りしていた「調査報道に対する地方自治体元職員からの申立て」について、委員会決定第80号として、申立人と被申立人の放送局双方への通知と公表会見を委員会の開催前に行った。委員会では、起草を担当した委員や事務局から、その様子が報告された。

2.「警察密着番組に対する申立て」審理

申立ての対象となったのは、テレビ東京が2023年3月28日に放送した『激録・警察密着24時!!』で、人気漫画・アニメのキャラクターを連想させる商品に関する不正競争防止法違反事件を取り上げ、警察の捜査の模様や2021年7月28日に執行された会社役員ら4人の逮捕場面などを放送した。
これに対し、番組で取り上げられた会社役員らは、番組の放送時点で逮捕された4人のうち3人が不起訴処分になっているにもかかわらず、その事実に言及せず、また「人気キャラクターに便乗して荒稼ぎ」「被害者面」「逆ギレ」といった過度なナレーションやテロップを付けて放送するなど、4人の名誉を著しく傷つけたなどとして申立てを行った。さらに、捜査員同士の会話や会議の様子は事後に撮影されたものであるのに、捜査の時系列に沿っているかのように番組内で構成されており、視聴者を混乱させ、許容される演出の範囲を大きく逸脱しているなどと主張している。
被申立人のテレビ東京は、不適切な放送内容が複数あったとして、お詫び放送やウェブサイトでのお詫び文掲載のほか、警察密着番組の制作中止や関係者の処分を行った。さらに再発防止策として番組チェック体制の強化や社内教育・研修の拡充などを進めていくとしている。
申立人側は、お詫び放送等の対応に一定の評価をしているものの、警察署内での事後撮影をめぐる見解の相違やテレビ東京が番組制作過程を明らかにしなかったことに納得せず、双方の交渉は不調に終わり、6月の委員会で審理入りすることが決まった。
今回の委員会では、起草委員作成の修正案について議論を行った結果、委員会決定案が大筋でまとまり、3月に通知・公表を行う見通しとなった。

3. 最新申立て状況

事務局から最新の申立て状況について説明した。

4. その他

2月3日に大阪市で開催した近畿地区意見交換会の事後アンケートの調査結果などについて、事務局から報告を行った。

以上

2024年度 第80号

「調査報道に対する地方自治体元職員からの申立て」に
関する委員会決定

2025年2月18日 放送局:サンテレビ(兵庫県)

見解:問題なし(少数意見付記)
申立ての対象は、サンテレビが2023年9月26日と27日に放送した夕方ニュース番組『ニュース×情報 キャッチ+』。ふるさと納税PRのために兵庫県洲本市が出店したアンテナショップで、市の元課長が現職時代に不正をはたらいていたという内容の調査報道を放送した。これに対し、元課長は放送内容は虚偽であり名誉を毀損されたと申し立てた。サンテレビは、放送内容は真実であり、少なくとも真実であると信じるに足る相当の理由があると主張、公務員による公金の不正流用を番組で取り上げたものであり、公共性・公益性もあると反論していた。委員会は審理の結果、人権侵害は認められず、放送倫理上の問題があるとは言えないと判断した。ただし4人の委員が、放送倫理上問題があるとする少数意見を付記した。

【決定の概要】

本件は、サンテレビが2023年9月26日と27日に放送した『特集 内部告発』の「【前編】洲本市元課長の不正行為~東京アンテナショップ元店員たちの証言と録音データ『現市長は知っていたはずだ…』~」と「【後編】洲本市元課長の不正行為『公金で高級和牛を女性に』~サンテレビの市への情報公開請求で分かったお金の流れ~」が、同市魅力創生課元課長の不正行為やその疑惑を取り上げたことに対し、元課長本人が放送の内容は虚偽であり名誉権を侵害されたとして申立てを行った事案である。
【前編】【後編】(以下「本件放送」)は、同市東京アンテナショップ(以下「ショップ」)の元店長と元店員らの証言を手がかりとして、申立人が当時、目を掛けていた女性(以下「X氏」)のために公金を私的に流用したり、同市の広告事業などにおいて便宜を図るなど、不正行為やその疑いがあったと報道した。ショップは、公募で選ばれた第三セクター(以下「三セク」)が市から運営を委託され、2019年1月下旬にオープンしたが、わずか2カ月あまりで市から契約を解除された(以下「契約解除」)。また、同三セクは、それとほぼ同時にふるさと納税事業者としての承認も市から取り消された(以下「承認取消」)。
本件について、委員会は、名誉権侵害の問題に加えて、放送倫理上の問題について、以下の通り検討し、人権侵害は認められず、放送倫理上の問題があるとは言えないと判断する。
本件放送に申立人の実名はなく、映像で顔にモザイクがかかっていても、ふるさと納税制度をめぐる背景事情から、放送で取り上げられた元課長が申立人であると特定することができた視聴者は相当数いたと考えられ、特定可能性は認められる。
本件放送は、以下のような内容により申立人の社会的評価を低下させた。①申立人が、ショップに来店するたびに、自分で代金を支払わず弁当などの商品を公金で飲食したり、盗んだりしていたと報道した。②申立人が、ショップを運営する三セクに対し、ショップのレジ袋を(直接にレジ袋の製造・販売業者から購入するのではなく)Ⅹ氏が勤務していた広告代理店を通して購入するよう一方的に指示し、三セクがそれに従い購入したところ(予定の)8倍近い価格だったと報道した。③申立人のショップでの「万引き・横領行為」について、当時の店員らが三セクの社長に改善を求めるために提出した要望書が、ショップから関連業者にFAXで送信された。それを知って名誉毀損だと立腹した申立人が、報復としてショップの契約解除と三セクの承認取消へと導いたと報道した。④申立人がショップの店長について、売り上げを抜いていたという虚偽の噂を流していると報道した。⑤申立人が、公金でX氏に牛肉やハンバーグを送付し、それが常態化していたと報道した。⑥市の広告事業発注先が、2019年秋、X氏が勤務していた広告代理店から、X氏が設立したばかりの企業に変更され、それから3年間に約4,600万円が支出されたという事実を前提として、この発注先変更は、申立人とX氏が親しい関係にあったからではないかという疑念を提示した。
本件放送には、事実の公共性と目的の公益性が認められるため、事実摘示による人権侵害の有無については、真実性又は相当性が認められるか否かが問題となる。上記①~⑤の事実摘示のうち、⑤の一部について相当性が認められないが、多くは真実性又は相当性が認められるため、結論として本件放送に人権侵害があったとすることは相当でないと考える。
地方公務員の不祥事に関連する報道では、職務上の行動は出来る限り公開されることが必要であり、取材結果から推論したことを断定するのではなく、その疑いがあるという限度で報道したにとどまる場合、疑念として合理的な根拠があれば足りると考える。⑥の広告事業発注先の変更が、申立人とX氏が親しい関係にあったからではないかという疑念の提示については、サンテレビがそのような疑念を抱いたとしてもやむを得ない程度の合理的な根拠があったと認めることができる。
放送倫理上の問題の有無について、委員会は、サンテレビが本件放送でⅩ氏に焦点をあてた構成としているのに、Ⅹ氏と同氏が勤務していた広告代理店への取材が行われていなかったことについて検討した。委員の中には異論もあったが、本件放送の主たる対象の申立人への直接取材が行われていたことから、X氏と同氏が勤務していた広告代理店への取材が行われていなかったことについて、委員会は、放送倫理上の問題があるとは言えないと判断する。
委員会は、サンテレビが、洲本市で管理職にあった地方公務員の不正や、それを許した市幹部らのリーダーシップの欠如という地域にとって重要な問題に果敢に取り組み、ローカル局に期待される役割を真摯に果たそうと努力してきた経緯を積極的に評価する。ただし、本決定には、X氏や同氏が勤務していた広告代理店への取材が実現していなかったことについて、人権侵害であるという反対意見、及び、放送倫理上の問題があるという反対意見が付されている。サンテレビには、委員会決定の結論だけを見て満足するのではなく、これらの反対意見の趣旨も踏まえて、今後、人権により配慮した番組をつくるよう努めることを要望する。

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2025年2月18日 第80号委員会決定

放送と人権等権利に関する委員会決定 第80号

申立人
兵庫県洲本市役所の元課長
被申立人
株式会社 サンテレビジョン
苦情の対象となった番組
『ニュース×情報 キャッチ+』(平日 午後5時20分~午後6時)
放送日
(1)2023年9月26日(前編)
(2)2023年9月27日(後編)

【本決定の構成】

I.事案の内容と経緯

  • 1.放送の概要と申立ての経緯
  • 2.本件放送の内容
  • 3.論点

II.委員会の判断

  • 1.本件申立てとその背景事情
  • 2.本件放送による社会的評価の低下について
  • 3.本件放送の真実性と相当性
  • 4.放送倫理の観点からの検討

III.結論

IV.少数意見

  • 1.廣田智子委員長代行の少数意見
  • 2.松尾剛行委員・松田美佐委員・斉藤とも子委員の少数意見

V.放送概要

VI.申立人の主張と被申立人の答弁

VII.申立ての経緯および審理経過

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2025年2月18日 決定の通知と公表の記者会見

通知は、2025年2月18日午後1時30分から千代田放送会館で行われ、午後2時30分から千代田放送会館2階ホールで公表の記者会見が行われた。詳細はこちら。

  • 「補足意見」、「意見」、「少数意見」について
  • 放送人権委員会の「委員会決定」における「補足意見」、「意見」、「少数意見」は、いずれも委員個人の名前で書かれるものであって、委員会としての判断を示すものではない。その違いは下のとおりとなっている。

    補足意見:
    多数意見と結論が同じで、多数意見の理由付けを補足する観点から書かれたもの
    意見 :
    多数意見と結論を同じくするものの、理由付けが異なるもの
    少数意見:
    多数意見とは結論が異なるもの

2025年1月に視聴者から寄せられた意見

2025年1月に視聴者から寄せられた意見

引退を表明したタレントの女性とのトラブルをめぐる報道に多くの意見が寄せられました。

2025年1月にBPOに寄せられた意見の総数は、2,440件で、先月から523件増加しました。
意見のアクセス方法は、ウェブ 86.3% 電話 12.6%郵便・FAX 1.1%
男女別は、男性 46.9% 女性 31.9% 無回答 21.4%で、世代別では10代 0.7% 20代 8.9% 30代 28.1% 40代 24.2% 50代 23.8% 60代 13.1% 70歳以上 3.0%
視聴者意見のうち、個別の番組や放送局に対するものは当該局へ個別に送付します。1月の個別送付先は32局で、意見数は507件でした。放送全般に対する意見は396件で、その中から19件を選び会員社すべてに送りました。

意見概要

番組に関する意見

女性とのトラブルが報じられ引退を表明したタレントをめぐる報道に対して多くの意見が寄せられました。またトラブルを知りながらタレントの起用を続けたと報じられたテレビ局の記者会見のあり方などに対して意見が寄せられました。
ラジオに関する意見は83件、CMについては5件でした。

青少年に関する意見

1月中に青少年委員会に寄せられた意見は91件で、前月から29件増加しました。
今月は「要望・提言」が44件と最も多く、次いで「表現・演出」が31件で、以下「報道・情報」の8件などが続きました。

意見抜粋

番組に関する意見

  • 芸能事務所における性加害問題を受けてテレビ各社は忖度によって報道を控えたことを反省したはずだ。12月に女性とのトラブルが報じられたタレントについて、各社は出演番組を他の番組に変更するなどしているが、なぜそういう判断をしたのか、取材によって裏付けが取れたのか、隠さずに説明してほしいと思う。

  • タレントとのトラブルの報告を受けた会社側が事実を隠ぺいしていたとしたら悪質だと思う。女性が安心して働ける職場環境を守ってほしい。

  • 当事者間で示談が済んだ問題について情報番組で連日長い時間を割いて放送しているが、守秘義務によって事実関係が明らかにならないことがわかっているにもかかわらず、推測や憶測によってスタジオトークを展開することに大きな違和感を覚える。当事者への二次加害になっていないだろうか。

  • 週刊誌の記事を鵜吞みにした内容の番組が多いと感じる。一応「記事が事実だとすれば」という断りを付けるものの、スタジオのパネルや文字スーパーなどの表現、また出演者のコメントも記事が事実だという前提に立って展開され、視聴者は「事実なのだろう」という意識を刷り込まれてしまう。週刊誌が言っていることと番組が知りえた事実とをはっきりと分けて明示してほしい。

  • 昨年の週刊誌報道に加えて、現役の女性アナウンサーが性的な接待があったと証言しているとの記事。メディアの信頼性が揺らいでいると感じる。

  • 有力なタレントに”性を上納する”というような風潮が、報じられている局だけでなく他局でも無かったのかどうか。各局は社内調査を急ぐべきだと思う。

  • 週刊誌記事の内容を精査して裏取り取材をしているのか疑問だし、報道が一方的だと感じる。被害者といわれている人の主張は週刊誌の取材内容として伝えられているが、他方加害者とされる側の言い分は守秘義務のせいか伝わってこない。

  • 芸能事務所における性加害問題も、大物お笑いタレントの性加害疑惑も、今回のタレントと女性の間の問題も、すべて週刊誌報道によって世間が知るところとなった。テレビの報道は人権意識を高くもってこうした問題は先陣を切って暴いてほしいと思う。

  • 問題となった放送局のやり直しの記者会見が長すぎる。同じような質問が何度も繰り返されている。記者の質もひどいと失望したが、長時間公共の電波を使ってやる必要があることだったのか疑問を感じた。

  • 長時間にわたり経営陣を一方的に攻撃しているようで恐怖を感じた。また、不同意性交などという言葉が怒号とともに飛び交い、当事者ふたりの、特に女性側の人権が傷つけられていると感じた。

  • 週刊誌が重要な事実を誤って報じ、こっそりと修正していたことが明るみになった。修正前の記事内容を鵜呑みにして事実であるかのように伝えていた報道番組、情報番組はどう責任を取るのだろうか。

  • 放送局の経営陣には制作部門出身の方が多いと思うが、きちんとした経営のプロを入れた方がよい。また公共性の高い企業なのだから、経営陣の在任期間をルール化するなど透明性の確保が重要なのではないか。

  • ニュース番組を含めて最近は、番組の良いところでコマーシャルになる。このあとの結果を知りたければ、コマーシャルを見てからです、というやり方はよろしくないと感じている。ひとつの内容が完結してから、コマーシャルに入っていただきたい。

  • 天気予報などで金曜日が祝日だったり月曜日が振替休日になったりするときに、「次の三連休」と断定的に言われると腹が立つ。勤めの関係などで連休とはならない人への配慮がほしいと思う。

  • 正月の伝統行事として、寒げいこ、寒中水泳、裸まつりなどの映像を目にするが、先日有名タレントの死を伝えた際にはヒートショックにくれぐれも注意と呼びかけていなかったか。

  • 自死とみられるというニュースが流れるたびに、よりそいホットラインやいのちの電話の番号が表示される。しかし何度かけてもつながらない。心が不安定になっている人は「相談しようとしても相手にされない」とさらにショックを受けるのではないか。案内先と案内方法をもう少し考えてほしいと思う。

  • 昔のテレビは笑いで涙が出たが今は悲しみの涙しか出ない。

青少年に関する意見

【「要望・提言」】

  • お笑い番組で、出演者が相方の頭をたたくツッコミはやめてほしい。子どもも大人も真似する人がいて、それが本当のけんかの原因にもなる。人が傷つかないお笑いでお願いしたい。

  • アニメ番組の開始時に「部屋を明るくしてテレビ画面から離れてご覧ください」というテロップが表示される。子どものためにアニメ以外の番組でも同様の警告テロップを出すべきだ。

【「表現・演出」に関する意見】

  • 子どもも見ている時間帯の連続ドラマで、女性の遺体が全裸のまま地べたに放置されたシーンが放送された。倫理的にどうなのだろうか。予告なくいきなり現れたシーンで不快に感じた。

  • バラエティー番組で、芸人をオープンカーに乗せたまま、洗車機にかけるドッキリがあった。シートベルトを固定して逃げられないようにしていたが、いじめを助長するようにみえた。

【「報道・情報」に関する意見】

  • 毎年思うことだが、派手に盛り上げた成人式をニュースで扱うのをやめてほしい。あのような大人たちの姿を見せると、子どもに悪い影響を与えかねない。

【「編成」に関する意見】

  • 夕方やゴールデン帯に放送されるアニメ番組が、子どもの視聴習慣の定着に一役買っていたと思う。いまでは番組が減ってしまったが、サブチャンネルを活用して青少年向けの放送はできないだろうか。

【「食べ物」に関する意見】

  • バラエティー番組の「激辛チャレンジ」の企画は残念に思う。辛いもの好きの人が増えたとはいえ、あの料理は本当に食べられるのか。食事はおいしく、楽しく、感謝していただくものだと思う。

第275回

第275回-2025年1月28日

視聴者からの意見について…など

2025年1月28日、第275回青少年委員会を千代田放送会館BPO第一会議室で開催し、欠席の榊原洋一委員長を除く7人の委員が出席しました。進行は吉永副委員長が代行しました。
12月後半から1月前半までの1カ月の間に寄せられた視聴者意見について、担当の委員から報告がありました。
1月の中高生モニター報告のテーマは「年末年始に見たスペシャル番組について」でした。
委員会ではこれらの視聴者意見や中高生モニター報告について議論しました。
最後に今後の予定について確認しました。

議事の詳細

日時
2025年1月28日(火)午後4時00分~午後6時30分
放送倫理・番組向上機構BPO第一会議室(千代田放送会館7階)
議題
視聴者からの意見について
中高生モニター報告について
今後の予定について
出席者
吉永副委員長、飯田豊委員、池田雅子委員、佐々木輝美委員
沢井佳子委員、髙橋聡美委員、山縣文治委員

視聴者からの意見について

12月後半から1月前半までの1カ月の間に寄せられた視聴者意見について担当の委員から報告がありました。
北九州市で起きた中学生殺傷事件で、死亡した女子生徒の顔写真が各局の報道番組で使用されたことについて、視聴者から「被害者の人権を侵害している」などの意見がありました。
担当委員は「現場から逃走した犯人(容疑者)が逮捕されていない段階で、(女子生徒の)遺族提供として報じられた。報道を通じて情報提供に期待する点で公益性の高いものだったと理解できる」と説明しました。
ある委員は「顔写真を放送したら『ルール違反だ』という非常に単純な線引きを(一部の視聴者が)するが、あの写真があることで今回の犯行の非情さを多くの人たちが感じ取れた。その意味で(被害者の)名前や顔写真は大事だと思う」と述べました。
江戸時代の性風俗を描いた連続ドラマで、遊女の遺体が全裸のまま放置されるシーンを放送したところ、視聴者から「子どもも見ている時間帯に放送するのは、倫理的にどうなのだろうか」などの批判的な意見が多く寄せられました。
担当委員はとくに当該シーンに男児の子役が出演している点を念頭において、「番組制作上の配慮はカット割りなどからうかがえる。インティマシー・コーディネーターを起用していることを含め、出演者の安全配慮義務の観点から問題があるとは言えない」としました。
ひとりの委員は「(江戸時代の公認された)売春制度がストーリーの背景にあるわけで、『もう少し丁寧な解説がほしいな』と感じた」と述べ、別の委員は「遊女として働かされていた女性たちがいかに劣悪な状況に置かれていたかというメッセージがよく伝わってきた。ストーリー全体を見れば、当該シーンも様々な配慮を重ねて作られたものであり、よく挑戦したと思える」と語りました。
このほかに大きな議論になる番組はなく、新たに「討論」に進むものはありませんでした。
なお、11月の委員会から継続している「水を張った洗面台に顔面を押し付けるドッキリ企画」などについての「討論」は、榊原委員長が欠席のため来月の委員会以降に持ち越しとなりました。

中高生モニター報告について

1月のテーマは「年末年始に見たスペシャル番組について」で、合わせて21番組への報告がありました。
年末年始期間は家族や親戚と一緒にテレビを視聴したモニターが多くいました。視聴した番組にばらつきが見られたことも特徴的で、複数のモニターが取り上げた番組は『第75回NHK紅白歌合戦』(NHK総合)、『月曜から夜ふかし 元旦SP』(日本テレビ)、『お笑いオムニバスGP』(フジテレビ)、『芸能人格付けチェック!2025お正月スペシャル』(朝日放送テレビ)でした。
「自由記述」には年末年始の番組編成に関する意見のほか、第274回BPO青少年委員会の「討論」の概要を読んだ感想も寄せられています。
「青少年へのおすすめ番組」では『ワタシだけの革命史』(NHK総合)に5人から、『歴史デリバリー「本の大衆化 ベストセラーの仕掛け人を追う!」』(NHK Eテレ)と『日曜ビッグバラエティ サンドウィッチマンの井戸を掘る!』(テレビ東京)にそれぞれ4人から、『KUNOICHI 2025』(TBSテレビ)に3人から、『劇場版「名探偵コナン 世紀末の魔術師」』(BS12 トゥエルビ)に2人から感想が届いています。

◆モニター報告より◆

【年末年始に見たスペシャル番組について】

  • 『第75回NHK紅白歌合戦』(NHK総合)
    • K-POPが好きな人は一部であり、紅白を見る世代に合っていないと感じた。日本人の歌手こそ紅白を目指しているので、もっと出場のチャンスを与えた方がいいと思う。司会者が「よいお年を」と言ってから年明けまで15分もあるので、曲を短縮せずフルで聴かせてほしいと思った。(中学2年・女子・秋田)
    • いつもは見ていませんが、初めて4時間30分連続で視聴しました。山あり谷ありの展開で、番組制作者が苦心して制作したことが分かりました。聴いたことのない曲が多く、新しい曲や歌手との出会いはテレビの歌番組ならではのメリットだと感じました。YouTubeでの「ウラトーク」もかなり賑やかで、視聴者を飽きさせない工夫を感じました。(中学3年・男子・千葉)
    • 毎日のように音楽配信サービス(Spotify、YouTube Music)を利用している私にとって、1年の終わりにその年の代表的な音楽を聴いて年を越せるのはすごくうれしいです。キャスティングに関して、流行に合わせながらもバランスを取るのは難しいと思いますが、日本の番組らしさを忘れず、けん玉のギネス世界記録を更新しながら続いてほしいです。(高校2年・女子・愛媛)
  • 『Mrs. GREEN APPLE 18祭』(NHK総合)
    好きなアーティストが出演するので視聴しました。作曲の裏側を見ることができてファンとして嬉しかったし、18歳世代の人の本音がたくさん聞けてとても勉強になりました。18歳以下の人でも視聴しやすいように、20時45分からなどもっと早い時間に放送してほしいです。(中学2年・女子・鳥取)

  • 『SASUKE2024 ~第42回大会~』(TBSテレビ)
    3番目のアトラクション・スクリュードライバーで、人類最初のプレーヤーとして女性プロレスラーの中野たむさんが挑戦しましたが見事に失敗。最初にチャレンジした選手が不利だと思いました。またベテラン勢はみんな50歳を超えても筋肉を鍛えていて『SASUKE』に賭ける思いが強く伝わってきました。日々の生活で気をつけていることやトレーニングなどを紹介してほしいです。(中学1年・男子・山梨)

  • 『新春スペシャルドラマ「スロウトレイン」』(TBSテレビ)
    野木亜紀子さん脚本のドラマのセリフは心にグサッとくるものが多いので、このドラマも視聴しました。とてもあたたかい話で、お正月に見るのに適しているなと思いました。悪人もいなくて、都子(多部未華子)がユンス(チュ・ジョンヒョク)にお金を渡したシーンで「絶対盗まれるじゃん」と思った自分を反省したいです。(高校1年・女子・岐阜)

  • 『明石家さんまのご長寿グランプリ2024』(TBSテレビ)
    昨年の録画と比較して視聴したが、2023年の方が面白く感じた。昨年は全国各地の「ご長寿早押しクイズ」予選会が放送されて面白い回答をたくさん見ることができたが、今年は明石家さんまさんの夢を叶える企画を放送していたので、いつも見ている番組と面白さが変わらなかった。年末だからこその「ご長寿早押しクイズ」をもっと見たかった。一般人を笑いの対象にするのは時代的に厳しくなっていると思うが、出演者の承諾を得ているなら問題ないし、制作者を信じて安心して視聴してよいと私は思う。(高校2年・女子・青森)

  • 『ゴールデンラヴィット』(TBSテレビ)
    裏で『ミュージックステーション SUPER LIVE 2024』(テレビ朝日)を放送している中あえていつもの朝のような放送をし、また通常の企画をスペシャル版にすることで、ファンだけではなく初めて見た人も楽しめた。普段の『ラヴィット』も見たいと思わせる番組だった。(高校2年・女子・東京)

  • 『ジョブチューン★新春SP!』(TBSテレビ)
    いつも自分が好んで食べているメニューが有名料理人に評価されるのが新鮮で、家族と予想しながら楽しく視聴しました。放送終了後に早速お店に行ったところ売り切れていて、母が「“テレビ離れ”と言われていても、身の回りのものがこんなふうに変化するなら、まだまだテレビって影響力持っているのね」と話していて本当にそうだと思いました。(高校3年・女子・熊本)

  • 『月曜から夜ふかし 元旦SP』(日本テレビ)
    • 印象に残ったのは、山形県の人々が年末年始を楽しみにしてない問題です。面白おかしく編集されているけれども、地域格差を浮き彫りにしていると感じました。「今まで山形は都会だと思っていたけれど、仙台に行ったときに仙台駅に圧倒されて最近諦めている」「山形は山に囲まれていて他の考え方が定着しづらく、取り残されている」という子どもたちの声がありましたが、小さな子が地元に失望している様子をみると、東京一極集中や地方の過疎化が進んでしまうのも無理はないと感じてしまいました。(中学3年・女子・東京)
    • 大人向けの番組がゴールデン帯に合わせてどう形を変えるのかに注目して視聴しました。免許合格やキックボクシングのプロテスト合格、マジックなど、新春にふさわしいめでたい話題や盛り上がる企画が多く、久しぶりに安心して家族と視聴することが出来ました。ゴールデン帯に放送する番組が安心安全に視聴できる内容である重要性を改めて感じました。(高校3年・女子・奈良)

  • 『せっかち勉強』(日本テレビ)
    一番驚いたネタは「ふなっしーは5年前から日本刀をコレクションしていて、毎月2本買い、80振り以上の刀剣が自宅に飾られている」というもの。そのイメージがなかったのでとても驚いた。(中学1年・女子・神奈川)

  • 『妄想移住ランキング』(日本テレビ)
    地方の魅力を知ることができ「住んでみたい」と心から思えた素晴らしい番組でした。豊かな自然や食べ物などの魅力を強調し紹介するだけではなく、都市からの距離や病院の有無など、我々の不安となる部分をしっかり説明してくれていました。(高校2年・男子・神奈川)

  • 『相棒 season23 元旦スペシャル』(テレビ朝日)
    登場人物が多く事件も大規模で、お正月らしく豪華だと感じました。災害に関する描写があり、1年前の能登半島地震を思い出しました。ドラマで災害によって人が亡くなるシーンを初めて見たので衝撃的でした。(高校1年・女子・愛知)

  • 『夢対決2025 とんねるずのスポーツ王は俺だ!!』(テレビ朝日)
    年末年始はいつもこの番組を見ています。様々なスポーツで豪華なメンバーが揃うので、スポーツをやりたい人も増えると思います。真剣勝負をしつつも笑いを誘う場面もありとても面白いです。リアル野球BANは駆け引きがとても面白く、鈴木誠也選手がダブルプレーを連発して大の字に倒れたシーンが印象的でした。(高校2年・男子・山口)

  • 『アメトーーク 年末SP』(テレビ朝日)
    毎年恒例の「運動できない芸人」はやっぱり面白かったです。なぜそのプレーができないのかすごく不思議で笑ってしまいます。ハンドボールのゴールに激突するシーンは本当にびっくりしました。家電芸人の企画は有名な商品や技術を紹介するだけでただの通販番組を見ている気分になるので、普段の深夜帯の放送だけでいいと思います。(高校3年・男子・埼玉)

  • 『逃走中~大みそかSP~』(フジテレビ)
    面白くて毎回見ています。出演者の作戦や絡みも個性があって、見ごたえがあります。でもミッションなどでのプレーヤー同士の密告や通報は、少しかわいそうだと思います。(中学1年・男子・山形)

  • 『新しいカギ 新春スペシャル』(フジテレビ)
    「学校かくれんぼ」に登場する学校の生徒たちがサプライズの時にすごく盛り上がるのを見ると、自分も含めて今の小・中・高校生はこの番組を視聴しているんだなと思う。スペシャルゲストが毎回豪華で、回を重ねるごとに隠れ場所がレベルアップしている所も美術担当やスタッフの方々の意気込みが感じられて面白い。コントや他の企画もどれも楽しく、大笑いしながら過ごせた2時間で、こういった学校やお笑いを主役にした番組が今後も続いてほしい。(中学2年・女子・埼玉)

  • 『お笑いオムニバスGP 2025』(フジテレビ)
    • 「史上最大のヌルヌル階段レース SUBERUNA GP 2025」は、本気で攻略しようとしている人と落ちて笑いを取る人がいて面白かったです。階段で落ちていくのは痛そうで心配になったけれど、ヌルヌルがあるから平気なのかな。第二回、三回と続いてほしいです。(中学3年・女子・神奈川)
    • 「SUBERUNA」は次々と展開してよそ見する暇もなくずっと面白かった。出演者が若手芸人ばかりでもなかったので、最近の芸人を知らない視聴者も楽しめると思った。『SASUKE』(TBSテレビ)は見ていて緊張し疲れたが、「SUBERUNA」は何度でも挑戦できるところが今の時代に合っているし純粋に楽しめた。(高校3年・男子・東京)

  • 『オールスター合唱バトル』(フジテレビ)
    これまでの努力を紹介することで“感動”が伝わってくるよい番組だった。普段はテレビよりもSNSを見ている時間の方が長いので、SNSとテレビが融合したこの番組にとても興味をもった。実際にYouTubeやInstagram、Xで番組の宣伝を見て視聴したので効果はあったと思う。また最近の曲が多く、若者のテレビ離れをくい止めてくれる番組だと思った。(高校1年・男子・長崎)

  • 『BABA抜き最弱王決定戦2025新春SP』(フジテレビ)
    他人のババ抜きを見る機会は今までなかったのでとても新鮮で面白かった。シャッフルボタンが押されるたびに試合がどうなるのかが気になり、目が離せなかった。普段クールな俳優が焦ったり、負けてものすごく悔しそうな表情をしたりするのを初めて見たので、この番組の醍醐味の一つだと思った。大富豪や七並べなどの対決も見てみたい。(高校1年・男子・兵庫)

  • 『監察医 朝顔2025新春スペシャル』(フジテレビ)
    もともと『監察医 朝顔』のドラマを見ていたので、特別ドラマが放送されると知った時は嬉しかった。主人公の娘役が小学生に成長していたり、その父親に対する態度を見て、同じ子役が出演し続けることでリアルな時間の流れを感じることができ、物語に入り込めた。(高校2年・女子・東京)

  • 『世界の秘境で大発見!日本食堂 第22弾』(テレビ東京)
    「第22弾」だが初めて視聴した。「世界の秘境」という番組名の響きだけで選んだが、想像を超えて楽しめた。スロベニアで3年間お店を出している人はスロベニア語を話せないが、客と話が通じていて驚いた。店を出したりシェアハウスで暮らすことができるのは、この人の明るい性格や態度を見て協力したいと思う人がいたからだそうで、“人間力で伝わることはある”と思った。現地の人々の役に立っている人を知ると日本に誇りを感じて好きになるから、こういった番組が増えると嬉しい。(中学3年・男子・東京)

  • 『芸能人格付けチェック!2025お正月スペシャル』(朝日放送)
    • GACKTとDAIGOを去年に引き続き同じチームにしたのは、GACKTの無言の圧がかなり絶妙でよかったと思いました。一方でチェック項目が中華の時に「町中華を不正解にする」のはよくないなと思いました。作っている人に失礼だと思います。(中学2年・男子・東京)
    • 音楽系のチェックを毎回楽しみにしています。豊嶋泰嗣さんは好きなヴァイオリニストの一人なので正座をしてチェックに挑みました。減点方式で芸能人の格付けが決まりますが、ミスをする人を不思議と応援したくなり、つい最後まで視聴してしまいます。(中学2年・女子・東京)
    • 親戚と一緒に笑いながら見ました。答え合わせをする際の不正解芸人たちのリアクションや、MCの浜田雅功さんとのやり取りが面白かったです。(高校3年・女子・栃木)

【自由記述】

  • 『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』(日本テレビ)が正月に放送されなくなって早2年ほどでしょうか。やっぱりあれがないと年を越せない気がします。番組を見てから夜に神社に行くのが僕にとっての年越しなので、来年は復活してほしいです。(高校3年・男子・埼玉)

  • 『BABA抜き最弱王決定戦2025新春SP』(フジテレビ)のコマーシャルの間に「あと90秒」とテロップが出ていたのはとても良い工夫だと思った。普段から残り時間を示せば、コマーシャルの長さに関わらず、視聴率をより高くとれると思う。(高校1年・男子・兵庫)

  • 『きっちりおじさんのてんやわんやクッキング』(BS朝日)は、ほのぼのとした雰囲気の番組を1年が終わるこの時期に家族で視聴できて楽しかったです。年末年始の家族が集まるタイミングなど、これからも継続して番組を続けてほしいです。(中学2年・女子・鳥取)

  • 『THE名門 日本全国すごい学校名鑑』(BSテレビ東京)で自分の学校が放送された。30分の放送では生徒会長を追ってばかりで、家の様子や家族インタビューまであり、学校訪問としては疑問が残った。これを見た視聴者が自分の学校のことを知ってもらえたとは思えず、とても残念だった。(高校3年・男子・東京)

  • 年末年始は毎年、ドラマの一挙放送を楽しみにしています。ただどんなに面白くても後半は集中力が切れてしまい、内容をあまり覚えていません。1日2話ずつ放送するくらいがちょうどいいと感じました。(高校1年・女子・愛知)

  • 年末年始のスペシャル番組は放送時間が長くて特別感がありますが、長尺ゆえに見飽きてしまうことも考えられます。所々に小さなコーナーをはさんだり、複数の企画を途中まで交互に放送したり、などを思いつきましたが、番組制作者がどのように工夫しているのか、普段のレギュラー放送の制作過程と違う点はどこなのか、などが気になりました。(中学3年・女子・長崎)

  • アナウンサーについて「人前に出る仕事なので容姿端麗であることが必要だ」という意見がありますが、最近は「情報を的確に視聴者に伝える」という本来の役割から脱線しているように感じます。また体調不良による欠席が目立ち、テレビ局が酷使しているのではないかとも感じます。(中学3年・女子・東京)

  • 274回BPO青少年委員会の討論の「バラエティー番組を見るうえでの“お約束”がどこまで認められるか」について、自分なりの「子どもの意見」を考えました。そもそも子どもが意見を出さない理由は「興味がない」か「それぐらい判断がつく」かのどちらかです。もし「教育に悪い」「子どものいじめにつながる」と意見する大人がいたのなら、結局のところ、子どもを盾にして自分の不満対象を排除したいとしか思えません。子どもでもそれぐらいの分別はつきますし、その程度の分別がつかない子どもはスマホでいくらでも暴力やいじめのやり方を学びますから、テレビが何をしても大した影響はないと思います。それにそんなに教育に悪いのなら、親が教育すればいい。責任転嫁と身勝手の押し付けにテレビがおびえる必要はないと思います。こうして考える機会を持つことは大事だと思いますが、テレビ局の人には頑張ってほしいです。(中学3年・男子・千葉)

【青少年へのおすすめ番組】

  • 『ワタシだけの革命史』(NHK総合)
    今まで出したCDのジャケット柄がたくさん飾られていて面白かった。(中学2年・女子・秋田)

  • 『歴史デリバリー「本の大衆化 ベストセラーの仕掛け人を追う!」』(NHK Eテレ)
    • Uber Eats風の恰好で登場するシーンは、取り上げる時代ごとの「運び屋」に扮した格好のほうが好奇心をかき立てられると思いました。(中学2年・女子・埼玉)
    • 複数の時代を説明しているので、「今回のまとめ」として年表などで表しても良いと思いました。(中学3年・女子・長崎)
    • 「豊本メモ」で少しずつ区切りのよいところでまとめて振り返ってくれるので見やすかった。(高校2年・女子・青森)
  • 『BSスペシャル「“情報”は人類を滅ぼすのか~ユヴァル・ノア・ハラリ 現代を読み解く~」』(NHK BS)
    「情報=SNSやインターネット」と思っていましたが、本や新聞も“情報”だと改めて気づかされました。学校では「インターネットは悪で、本は正しい」と教えられますが、本も間違った方向に人を動かすことがあるのだと思いました。(高校1年・女子・愛知)

  • 『KUNOICHI 2025』(TBSテレビ)
    • 最後の完全制覇のところがあっさりしすぎだと感じました。3時間かけて最後のステージが30秒で終わってしまうのは残念でした。40秒はないと面白くないと思います。(中学2年・男子・東京)
    • ホール内の実施や難易度、失敗した際に落ちるのが水ではないことなど、女性への配慮を感じた。(高校2年・女子・東京)
  • 『クイズ!国民一斉調査』(日本テレビ)
    全ての調査結果がパーセンテージを使って表されていたが、「何人中何人」の方が分かりやすいかもしれないと思った。(高校3年・女子・栃木)

  • 『日曜ビッグバラエティ サンドウィッチマンの井戸を掘る!』(テレビ東京)
    石川県では井戸掘りボランティアされている方もいて、水があると人も集まり素敵なことだと思った。どの地域にも必ず芸能人が訪れていたが、当日夕方に帰京してしまう人がいるのは非常に残念だし、まあまあ失礼ではないかと思った。(高校3年・男子・東京)

  • 『newsおかえり』(朝日放送テレビ)
    震源地近くで被災された方の中継を見て、幼い子ども達に確実に防災教育を提供する必要性があると思いました。関西圏に住んでいても、親が震災を経験していなかったり、震災を知らない人も出てきているのこの時代に、この特集は確実にメディアの伝承という重大な役割を果たし、視聴者に減災と防災について考えさせたと思います。(高校3年・女子・奈良)

  • 『実況解説野球旅~プロ野球88年世代旅!第2弾~』(BSフジ)
    野球選手の私服姿や旅をするプライベートな姿を見る機会は少ないので、番組で裏側を見られて嬉しいです。普段の試合で実況席に座っている人もゲスト出演していて、コメントをしている姿を選手たちと同じ画面に合成していたのは面白い演出だと思いました。(中学1年・男子・山梨)

  • 『劇場版「名探偵コナン 世紀末の魔術師」』(BS12 トゥエルビ)
    この作品はしっかりとした謎解きがあり、「よく見ていたら謎が分かったかも!」というハラハラ感があって良い映画だと思う。(高校3年・男子・埼玉)

  • 『キラめく!にじいろキッズ』(岐阜放送)
    知っている小学校が紹介されていて親近感がわきました。「歯磨きをしよう」というテーマで、私も小学生の時にプラークチェッカーをやったなと懐かしい記憶も思い出しました。(高校1年・女子・岐阜)

◆委員のコメント◆

【年末年始に見たスペシャル番組について】

  • 『第75回NHK紅白歌合戦』(NHK総合)について「日本人の歌手に出場のチャンスを与えたほうがよい」という意見がモニターから毎年あるが、『紅白』は依然としてナショナリズム的な“磁場”があり、若い視聴者にも影響があるのだと感じた。

  • 『はじめてのおつかい』『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』(いずれも日本テレビ)や『芸能人が本気で考えた!ドッキリGP』(フジテレビ)など、大人の視聴者から“ダメだ”といった意見がくる番組は、子どもには人気で肯定的な意見も多いと感じた。

【自由記述について】

  • 映画『はたらく細胞』を見た高校2年生のモニターから「1、2年早く映画が公開されていれば各細胞の名前や機能を簡単に覚えられた」と報告があった。これから“マッチングの時代”になっていくので、学校の先生が「こういうことを教えたい」というときに、いい番組にマッチングでアクセスできる仕組みがあると良いと思う。

【その他:お年寄りが出演するバラエティー番組について】

  • 『明石家さんまのご長寿グランプリ2024』(TBSテレビ)を楽しく視聴したという高校2年生からの報告は考えさせられた。昔から「老人がメディアに載らない」ことは問題だと思っていたが、たとえば「ご長寿早押しクイズ」の企画が“元気に活躍しているお年寄り”といった文脈であれば、子どもも楽しみながら“年を取ることはどういうことか”を理解できるのではないか。

  • 「ご長寿早押しクイズ」はいわゆる“お年寄りを笑う番組”だと思う。高齢者世代が視聴してどう感じているのかは気になるが…。

  • 認知機能が衰えたお年寄りに対して「何度も同じことを言うな」などと怒る人がいるが、そういった寛容性の乏しい社会は良くないと思う。核家族が増えてお年寄りと若い世代が接する機会も少ないので、「こういうぼけ方もあるよね~」とむしろ笑い飛ばしてしまうのもアリだと思う。お年寄りを笑うこともあれば、逆に幼い子のへんてこりんな言動を笑うこともあって、それらを自然な現象として捉えてあまり目くじら立てないほうがよいのでは。

  • 番組制作者も今はいろいろな意見を窮屈に捉えてしまっていると思うが、「マイナスの反応があるならばトライする前にやめたほうが無難だ」といった流れになってしまうと、作り手のダイナミズムや発展がなくなってしまう。若い世代が肯定的に見ているのだし、制作現場にももう少し緩やかさや寛容性があっていいのだと思う。

今後の予定について

次回は2025年2月25日(火)に千代田放送会館BPO第一会議室で定例委員会を開催します。

以上