第204回

第204回–2025年3月

毎日放送『ゼニガメ』委員会決定を通知・公表へ

第204回放送倫理検証委員会は、3月14日に千代田放送会館で開催された。
9月の委員会で審議入りした毎日放送の『ゼニガメ』について、担当委員から意見書の修正案が報告され意見交換した結果、合意が得られたため、今後当該放送局へ通知して公表することになった。
TBSテレビは2024年10月19日に放送したバラエティー番組『熱狂マニアさん!』2時間スペシャルで、インテリア小売業大手「ニトリ」のマニアを特集した。放送後、視聴者からBPOに「番組全編で1社を取り上げ、価格や商品名も紹介しており、番組の提供にも社名が入りCMを流していた。これは番組といいながら明らかに広告ではないのか」という声が寄せられた。委員会は議論の結果、番組内容や制作過程に「番組と広告の違い」等を含む放送倫理上の問題がなかったかを詳しく検証する必要があるとして、2025年1月の委員会で審議入りを決めた。今回の委員会では関係者に対するヒアリングの結果が報告されたうえで、意見書の案が提示され議論した。
2月にBPOに寄せられた視聴者・聴取者意見などが報告された。

議事の詳細

日時
2025年3月14日(金)午後4時~午後6時35分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、
大石委員、大村委員、長嶋委員、毛利委員、米倉委員

1. 毎日放送『ゼニガメ』について審議

毎日放送は、2024年7月17日に放送したローカルバラエティー番組『ゼニガメ』で、出張買取業者に密着取材する企画を放送したが、翌日、番組に事実と異なる放送があったことを公表して謝罪した。さらに2023年11月と2024年5月の放送分にも事実と異なる内容があったことも判明し、委員会は9月に審議入りを決め、その後の委員会で議論を重ねてきた。
今回の委員会では、意見書の修正案が再度担当委員から報告された。これについて意見が交わされた結果、合意が得られたため、表現などについて一部手直しの上、今後しかるべき時期に当該放送局に対して通知し、記者会見を開いて公表することになった。

2. TBSテレビ『熱狂マニアさん!』について審議

TBSテレビは2024年10月19日に放送したバラエティー番組『熱狂マニアさん!』
2時間スペシャルで、インテリア小売業大手「ニトリ」のマニアを特集した。「ニトリマニア集結!1万点からベスト3 名もなき家事が今夜消滅!」と題し、ニトリの商品を使った時短料理や収納テクニックなどを全編にわたり放送した。
放送後、視聴者からBPOに「番組全編で1社を取り上げ、価格や商品名も紹介しており、番組の提供にも社名が入りCMを流していた。これは番組といいながら明らかに広告ではないのか」という声が寄せられた。委員会で議論をしたところ、この番組では2024年にニトリを3回(1月13日、6月1日、10月19日)取り上げていることが判明したため、当該放送局に番組DVDと報告書の提出を求めることにした。
TBSテレビの報告書によると、本番組はある特定のジャンルに関して、並外れた熱意や愛情を注いでいるマニアが熱狂していることや好きなものを紹介するバラエティー番組。コロナ禍による巣ごもり需要によりコンビニやスーパー、大手日用雑貨店への興味関心がファミリー層などで高まったことを受け、「時短料理術」や「清掃・収納術」など、人気有名企業の商品活用法に詳しいマニアを番組が発掘し、単なる商品紹介ではない、衣食住にまつわる「生活の知恵」を幅広い視聴者に届けてきたという。
委員会は、番組内容や制作過程に「番組と広告の違い」等を含む放送倫理上の問題がなかったかを詳しく検証する必要があるとして、2025年1月の委員会で審議入りを決めた。今回の委員会では、番組関係者に対するヒアリングの結果が報告された。そのうえで、担当委員から意見書の案が提示され議論した結果、次回の委員会までにさらに検討することになった。

3. 2月の視聴者・聴取者意見を報告

2月に視聴者・聴取者から寄せられた意見には、引き続き人気タレントと女性とのトラブルをめぐる一連の問題に関するものや、兵庫県議会百条委員会の調査結果に対する意見などがあり、事務局から概要が報告された。しかし全体的に意見数が少なく、さらに踏み込んだ検証が必要であるとの意見はなかった。

以上

第203回

第203回–2025年2月

テレビ東京『激録・警察密着24時!!』委員会決定の通知・公表について報告

第203回放送倫理検証委員会は、2月14日に千代田放送会館で開催された。
委員会が1月17日に公表した、委員会決定第46号テレビ東京『激録・警察密着24時!!』『鬼滅の刃』の模倣品捜査密着事案に関する意見について、担当委員から当日の様子などが報告された。
9月の委員会で審議入りした毎日放送の『ゼニガメ』については、前回の委員会で意見書の修正案が議論されたのを受け、今回は担当委員から意見書の再修正案が提出された。複数の委員から質問や意見が出され、次回の委員会までに再々修正案を作成することになった。
TBSテレビは2024年10月19日に放送した約2時間のバラエティー番組『熱狂マニアさん!』の中で、インテリア小売業大手「ニトリ」のマニアを特集した。放送後、BPOに視聴者から「番組全編で1社を取り上げ価格や商品名も紹介しており、番組の提供にも社名が入りCMを流していた。これは番組といいながら、明らかに広告ではないのか」という声が寄せられた。委員会は議論の結果、番組内容や制作過程に「番組と広告の違い」等を含む放送倫理上の問題がなかったかを詳しく検証する必要があるとして前回の委員会で審議入りを決めた。今回の委員会では関係者に対するヒアリングの予定などが報告された。
1月にBPOに寄せられた視聴者・聴取者意見などが報告された。

議事の詳細

日時
2025年2月14日(金)午後5時~午後7時10分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、
大石委員、大村委員、長嶋委員、西土委員、毛利委員、米倉委員

1. テレビ東京『激録・警察密着24時!!』『鬼滅の刃』の模倣品捜査密着事案に関する意見の通知・公表について報告

テレビ東京は2023年3月、『激録・警察密着24時!!』の中で「人気アニメ『鬼滅の刃』に便乗 悪質コピー商品の販売業者を追い詰めろ」として、販売業者が「不正競争防止法違反」で摘発された事件を取り上げたが、販売業者から放送内容が名誉を毀損する表現や虚偽の事実を警察官に演じさせた、ねつ造の疑いがあるとして抗議及び申し入れ書が送られた。これを受けてテレビ東京は2024年5月に不適切な内容が複数あったことを認め、謝罪するおわび放送をした。
委員会は同年7月「放送倫理違反の疑いがあり、詳しく検証する必要がある」として審議入りし、テレビ東京や制作会社スタッフなどを対象にヒアリングを実施。その結果、被疑者3名が不起訴になっていたことに触れなかった、『鬼滅の刃』のキャラクターを描いた商品を発注した事実はなかった、密着ドキュメントをうたいながら捜査のほとんどが事後撮影だったことなどを確認した。こうした問題について委員会は、「モザイクなどをすれば個人特定に対する配慮は足りている」とする“モザイク信仰”が人権意識を鈍らせた。また逮捕と犯罪者を安直に結びつける構図にとらわれ、ナレーションであおり、刺激的なスーパーで犯罪捜査をエンタメ化するこの番組のステレオタイプが繰り返されたなどの4つの要因を挙げた。
以上のことから本件放送は、事実と異なる内容を報じ、視聴者の信頼を裏切り、放送倫理基本綱領、民放連の放送基準及びテレビ東京の放送番組編成基準の各項目に反しているとして、放送倫理違反があると判断した。
2025年1月17日、委員会は当該放送局に委員会決定を通知し、引き続き記者会見を開いて意見書を公表した。この日の委員会では、委員会決定を伝えたテレビ東京のニュース番組の録画を視聴し、委員長と担当委員が通知・公表時の様子について報告した。
通知と公表の概要は、こちら。

2. 毎日放送『ゼニガメ』について審議

毎日放送は、2024年7月17日に放送したローカルバラエティー番組『ゼニガメ』で、出張買取業者に密着取材する企画を放送したが、翌日、番組に事実と異なる放送があったことを公表して謝罪した。さらに2023年11月と2024年5月の放送分にも事実と異なる内容があったことも判明し、委員会は9月に審議入りを決めた。担当委員が当該放送局から提出された報告書の精査と番組関係者へのヒアリングを実施し、12月の委員会に意見書の原案を提出した。1月の委員会では意見書の修正案に対する議論が交わされ、今回の委員会では担当委員から再修正案が提出された。これに対して複数の委員から質問や意見が出されたため担当委員は更なる検討を重ね、次回委員会に再々修正案を提出することになった。

3. TBSテレビ『熱狂マニアさん!』について審議

TBSテレビは2024年10月19日午後7時から約2時間のバラエティー番組『熱狂マニアさん!』の中で、インテリア小売業大手「ニトリ」のマニアを特集し放送した。番組は「ニトリマニアが集結!1万点からベスト3 名もなき家事が今夜消滅!」と題し、ニトリの商品を使った時短料理や収納テクニックなどを全編にわたり放送した。
放送後、BPOに視聴者から「番組全編で1社を取り上げ価格や商品名も紹介しており、番組の提供にも社名が入りCMを流していた。これは番組といいながら、明らかに広告ではないのか」という声が寄せられた。委員会で議論をしたところ、この番組では2024年になってからニトリを3回(1月13日、6月1日、10月19日)取り上げていることが判明したため、当該放送局に番組DVDと報告書の提出を求めることにした。
TBSテレビの報告書によると、本番組は、ある特定のジャンルに関して、並外れた熱意や愛情を注いでいるマニアが、熱狂していることや好きなものを紹介するバラエティー番組。コロナ禍による巣ごもり需要により、コンビニやスーパー、大手日用雑貨店への興味関心がファミリー層などで高まったことを受け、「時短料理術」や「清掃・収納術」など、人気有名企業の商品活用法に詳しいマニアを番組が発掘し、単なる商品紹介ではない、衣食住にまつわる「生活の知恵」を幅広い視聴者に届けてきたという。
委員会は、12月と1月の2回にわたって議論した結果、番組内容や制作過程に「番組と広告の違い」等を含む放送倫理上の問題がなかったかを詳しく検証する必要があるとして1月の委員会で審議入りを決めた。今回の委員会では、当該放送局の関係者から近々ヒアリングを行う予定であることなどが報告された。

4. 1月の視聴者・聴取者意見を報告

1月に視聴者・聴取者から寄せられた意見には、人気タレントと女性とのトラブルをめぐる一連の問題に関するものが最も多かった。具体的には、フジテレビの記者会見について、自社の不祥事は記者会見の生中継をしない一方で、ニュース番組では防犯カメラの映像等を使い軽犯罪やマナー違反程度の事で一般人を度々叩く姿勢はおかしいといった意見や、社員からトラブルの報告を受けた後のフジテレビの対応の不味さが問題の本質であるという事を分かっていないのではないか、個人情報保護を理由に明確な回答を避け責任回避や問題先送りに終始した印象を受けた、といった意見が寄せられた。また、生中継された記者会見については、ネット上のテレビに関する憶測の真偽が分かると共に、ネットニュースを出しているメディアがどのような記者によって構成されているかが分かる良い機会だったという意見も寄せられた。このほか番組か広告かの問題について、具体的な番組名をあげて、実質的に広告であるにもかかわらず視聴者が番組と誤解しかねない構成や演出だと批判する意見が寄せられた。

以上

2025年1月17日

テレビ東京『激録・警察密着24時!!』『鬼滅の刃』の模倣品捜査密着事案に関する意見の通知・公表

上記委員会決定の通知は、1月17日午後2時からBPOで行われた。委員会からは小町谷委員長、井桁委員、長嶋委員の3人が出席した。テレビ東京からはコンテンツ戦略担当の専務取締役ら5人が出席した。
小町谷委員長から、放送倫理違反があったと判断するに至った経緯を説明したあと、「当事者から抗議書が届いた段階でもう少し掘り下げた調査をしていればここまで事案が拡大することもなかったのではないか」と指摘した。これを受けてテレビ東京の専務取締役は「意見書や委員の説明は真摯に受け止めていきたい。引き続き今回のご意見を参考にしながら再発防止策を徹底するとともに、番組全般の作り方にしっかり生かしていきたい」と述べた。

その後、午後3時から千代田放送会館2階ホールで記者会見を開き、委員会決定を公表した。会見には27社51人が出席した。
最初に小町谷委員長から本件事案の特徴として、捜査に密着する番組でありながら、いきなり逮捕の時点から取材し、逮捕までの捜査活動は事後撮影によるものだった。担当ディレクターが不正競争防止法違反という馴染みのない事件への理解にかなり苦労していたなどをあげた。そのうえで3つ問題点を指摘。①不起訴に触れず、刺激的な演出をした②『鬼滅の刃』キャラクターを描いた商品を発注、捜索後も販売を続けたという事実と異なる放送をした③密着をうたいながら事後撮影を放送した。これらの要因として4点を指摘。①モザイクをしていれば特定されないという強烈な“モザイク信仰”②警察は活動を広報でき、テレビ局は視聴率を稼げる、視聴者は娯楽を楽しめるといった“三方良し”の構図③ひっ迫した制作体制で担当ディレクターが引継ぎを十分に行えなかった④刺激的なスーパーで犯罪をエンタメ化するステレオタイプが繰り返された。
以上のことから、事実に基づいた公正な報道活動、視聴者に誤解を与えないように注意するなどの民放連の放送基準や放送倫理基本綱領等に違反していると判断したと説明した。
続いて井桁委員からは「警察密着ものは他の局も含めて4、50年の歴史がある中で、プライバシー問題への理解の高まりや広がりは目覚ましいものがある。その中では放送、報道の必要性と、プライバシーや人権意識との緊張関係について、配慮やアップデートが必要だったのではないか」などの指摘があった。また長嶋委員からは、「これからもネット犯罪やもっと巧妙で知的な犯罪に対して捜査に密着して啓発してほしい」としたうえで、「この事案をジャーナリズム全体の固定化されたステレオタイプを見直す契機にしてほしい」と呼び掛けた。

このあとの質疑応答では、「(意見書に)なぜやらせがあったかどうかの文言をいれなかったのか」という旨の質問があった。これに対し委員会は「故意に事実であるかのように仕立てたということはヒアリングでは出てこなかった」「取材ディレクターは別の番組も担当して大きな負担を抱えた状態で、やらせや仕込みをする余裕はなかった」と答えた。また「制作者の中でストーリーに落とし込むという意識が強かったのでは?」との質問に対し、取材ディレクター、編集ディレクター、プロデューサーが個々に作業にあたり、「何か統一的なストーリーに基づいて作られたのではなかった」と説明した。さらに「警察密着番組が抱える問題を突破できることは可能か」との質問に対しは、「どんな取材でも取材対象者との一定の緊張感と距離感は必要。中立的な立場で放送していくことがあるべき姿」と答えた。

以上

第46号

テレビ東京『激録・警察密着24時!!』『鬼滅の刃』の模倣品捜査密着事案に関する意見

2025年1月17日 放送局:テレビ東京

テレビ東京は2023年3月、『激録・警察密着24時!!』の中で「人気アニメ『鬼滅の刃』に便乗 悪質コピー商品の販売業者を追い詰めろ」として、販売業者が「不正競争防止法違反」で摘発された事件を取り上げたが、販売業者から放送内容が名誉を毀損する表現や虚偽の事実を警察官に演じさせたねつ造の疑いがあるとして抗議及び申し入れ書が送られた。これを受けてテレビ東京は2024年5月に不適切な内容が複数あったことを認め、謝罪するおわび放送をした。
委員会は同年7月「放送倫理違反の疑いがあり、詳しく検証する必要がある」として審議入りし、テレビ東京や制作会社スタッフなどを対象にヒアリングを実施。その結果、被疑者3名が不起訴になっていたことに触れなかった、『鬼滅の刃』のキャラクターを描いた商品を発注した事実はなかった、密着ドキュメントをうたいながら捜査のほとんどが事後撮影だったことなどを確認した。こうした問題について委員会は、「モザイクなどをすれば個人特定に対する配慮は足りている」とする“モザイク信仰”が人権意識を鈍らせた。また逮捕と犯罪者を安直に結びつける構図にとらわれ、ナレーションであおり、刺激的なスーパーで犯罪捜査をエンタメ化するこの番組のステレオタイプが繰り返されたなどの4つの要因を挙げた。
以上のことから本件放送は、事実と異なる内容を報じ、視聴者の信頼を裏切り、放送倫理基本綱領、民放連の放送基準及びテレビ東京の放送番組編成基準の各項目に反しているとして、放送倫理違反があると判断した。

2025年1月17日 第46号委員会決定

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目 次

2025年1月17日 決定の通知と公表

通知は、2025年1月17日午後2時からBPO第1会議室で行われ、
午後3時から千代田放送会館2階ホールで公表の記者会見が行われた。
記者会見には、27社51人が出席した。詳細はこちら。




第202回

第202回–2025年1月

TBSテレビ『熱狂マニアさん!』が審議入り

第202回放送倫理検証委員会は、1月10日に千代田放送会館で開催された。
9月の委員会で審議入りした毎日放送の『ゼニガメ』については、先月の委員会で意見書の原案が議論されたのを受け、今回は担当委員から意見書の修正案が提出された。他の委員から複数の質問や意見が出され、次回の委員会までに再修正案を作成することになった。
TBSテレビが2024年10月19日に放送したバラエティー番組『熱狂マニアさん!』の中で、約2時間にわたりインテリア小売業大手「ニトリ」のマニアを特集し放送した。放送後、BPOに視聴者から「番組全編で1社を取り上げ価格や商品名も紹介しており、番組の提供にも社名が入りCMを流していた。これは番組といいながら、明らかに広告ではないのか」という声が寄せられた。委員会は、12月と1月の2回にわたり議論した結果、番組内容や制作過程に「番組と広告の違い」等を含む放送倫理上の問題がなかったかを詳しく検証する必要があるとして審議入りを決めた。
12月にBPOに寄せられた視聴者・聴取者意見などが報告された。

議事の詳細

日時
2025年1月10日(金)午後4時~午後6時20分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、
大石委員、大村委員、長嶋委員、西土委員、毛利委員、米倉委員

1. 毎日放送『ゼニガメ』について審議

毎日放送は、2024年7月17日に放送したローカルバラエティー番組『ゼニガメ』で、出張買取業者に密着取材する企画を放送したが、翌日に番組に事実と異なる放送があったことを公表し、謝罪した。さらに2023年11月と2024年5月の放送分にも事実と異なる内容があったことが判明し、9月4日に「一部事実と異なる内容があった」とする調査結果を発表し謝罪した。委員会は9月に審議入りを決め、12月には担当委員が作成した意見書原案が提出された。今月の委員会では、担当委員から修正案が出され、他の委員から複数の質問や意見が出された。
次回委員会までにさらなる検討を進め、担当委員が再修正案を提出する。

2. TBSテレビ『熱狂マニアさん!』について審議

TBSテレビは、2024年10月19日の19時から約2時間にわたりバラエティー番組『熱狂マニアさん!』の中で、インテリア小売業大手「ニトリ」のマニアを特集し放送した。番組は「ニトリマニアが集結!1万点からベスト3 名もなき家事が今夜消滅!」と題して、ニトリの商品を使った時短料理や収納テクニックなどを全編にわたり放送する内容だった。
放送後、BPOに視聴者から「番組全編で1社を取り上げ価格や商品名も紹介しており、番組の提供にも社名が入りCMを流していた。これは番組といいながら、明らかに広告ではないのか」という声が寄せられた。この視聴者意見を受けて11月の検証委員会で議論をした際に、2024年になってからニトリを3回(1月13日、6月1日、10月19日)番組で取り上げていることが判明したため、当該放送局に対してそれらの番組DVDと報告書を求め、12月6日に報告書が提出された。
TBSテレビの報告書によると、これまで当該番組は、ある特定のジャンルに関して、並外れた熱意や愛情を注いでいるマニアが、熱狂していることや好きなものを紹介する番組で、近時はコロナ禍による巣ごもり需要により、コンビニやスーパー、大手日用雑貨店への興味関心がファミリー層などで高まったことを受け、「時短料理術」や「清掃・収納術」など、人気有名企業の商品活用法に詳しいマニアを番組が発掘し、単なる商品紹介ではない、衣食住にまつわる「生活の知恵」を幅広い視聴者に届けてきたという。
委員会は、12月と1月の2回にわたり議論した結果、番組内容や制作過程に「番組と広告の違い」等を含む放送倫理上の問題がなかったかを詳しく検証する必要があるとして審議入りを決めた。今後は当該放送局の関係者からヒアリングを行うなどして審議を進める。

3. 12月の視聴者・聴取者意見を報告

12月に寄せられた視聴者・聴取者の意見では、亡くなった人の報じ方について意見が多く寄せられた。俳優が自宅で亡くなっているのが見つかった件では、当日に遺族にカメラを向け心境を聞くことの何がジャーナリズムなのか疑問に思うなどの意見が、北九州市のファストフード店で中学生が刺され死亡した件では、被害者の名前や顔写真が繰り返し報道されたことが人権蹂躙ではないかなどの批判が寄せられた。この他、タレントが女性とトラブルを起こしていたことが分かったことについて意見が多く寄せられ、タレントがMCをしている番組は打ち切りにすべきだ、実態を調査して再発防止策をたててほしいなどの意見があったことを事務局から報告した。

以上

2025年1月10日

TBSテレビ『熱狂マニアさん!』が審議入り

TBSテレビは、2024年10月19日(土)の19時から約2時間にわたりバラエティー番組『熱狂マニアさん!』の中で、インテリア小売業大手「ニトリ」のマニアを特集し放送した。番組は「ニトリマニアが集結!1万点からベスト3 名もなき家事が今夜消滅!」と題して、ニトリの商品を使った時短料理や収納テクニックなどを全編にわたり放送する内容だった。
放送後、BPOに視聴者から「番組全編で1社を取り上げ価格や商品名も紹介しており、番組の提供にも社名が入りCMを流していた。これは番組といいながら、明らかに広告ではないのか」という声が寄せられた。この視聴者意見を受けて11月の検証委員会で議論をした際に、2024年にニトリを3回(1月13日、6月1日、10月19日)番組で取り上げていることが判明したため、当該放送局に対してそれらの番組DVDと報告書を求め、12月6日に報告書が提出された。
TBSテレビの報告書によると、これまで当該番組は、ある特定のジャンルに関して、並外れた熱意や愛情を注いでいるマニアが、熱狂していることや好きなものを紹介する番組で、近時はコロナ禍による巣ごもり需要により、コンビニやスーパー、大手日用雑貨店への興味関心がファミリー層などで高まったことを受け、「時短料理術」や「清掃・収納術」など、人気有名企業の商品活用法に詳しいマニアを番組が発掘し、単なる商品紹介ではない、衣食住にまつわる「生活の知恵」を幅広い視聴者に届けてきたという。
委員会は、12月と1月の2回にわたり議論した結果、番組内容や制作過程に「番組と広告の違い」等を含む放送倫理上の問題がなかったかを詳しく検証する必要があるとして審議入りを決めた。今後は当該放送局の関係者からヒアリングを行うなどして審議を進める。

第201回

第201回–2024年12月

テレビ東京『激録・警察密着24時!!』委員会決定を通知・公表へ

第201回放送倫理検証委員会は、12月13日に千代田放送会館で開催された。
7月の委員会で審議入りしたテレビ東京の『激録・警察密着24時!!』について、11月の委員会で意見書の修正案に関する議論は終了しており合意が得られたため、来月にも当該放送局へ通知して公表することになった。
9月の委員会で審議入りした毎日放送の『ゼニガメ』については、先月の委員会で意見書の骨子案が提出されたのに続き、今回は担当委員から意見書の原案が提出された。原案に関する詳細な説明のあとに議論した結果、次回の委員会までに修正案を作成することになった。
11月にBPOに寄せられた視聴者・聴取者意見などが報告された。

議事の詳細

日時
2024年12月13日(金)午後4時~午後6時50分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、
大石委員、大村委員、長嶋委員、西土委員、毛利委員、米倉委員

1. 毎日放送『ゼニガメ』について審議

毎日放送は、2024年7月17日に放送したローカルバラエティー番組『ゼニガメ』で、出張買取業者に密着取材する企画を放送したが、翌7月18日に番組に事実と異なる放送があったことを公表し謝罪した。さらに、2023年11月と2024年5月の放送分でも事実と異なる内容があったことが判明し、9月4日に「一部事実と異なる内容があった」とする調査結果を発表し謝罪した。委員会は9月に審議入りし、10月の委員会で意見書の骨子案が提出されたのに続き、今月の委員会では担当委員が作成した意見書の原案が提出された。担当委員から原案に関する詳細な説明があり、他の委員からは複数の質問や意見が出された。
今後は担当委員が来年1月の委員会に向けてさらなる検討を進め、修正案を作成する。

2. 11月の視聴者・聴取者意見を報告

11月に寄せられた視聴者・聴取者の意見としては、第一に、11月17日に投開票された兵庫県知事選に関するものが約540件あったことを事務局から報告した。具体的には「斎藤知事の問題をテレビ各局が報道していたが、インターネットによってウソだと分かった」「選挙期間中、テレビで選挙の報道があまりされていないことが選挙結果を左右した。SNSを利用する人と、テレビなど既存メディアを利用する人の間で、格差が生まれたのではないか」などの意見が寄せられた。第二に、11月27日に東京都文京区で発生した火災で、炎を背景にした人のシルエットがうつる映像を放送した局があったことについて「非常にショッキングであり配慮すべきだ」など批判的意見が約250件寄せられたことを事務局から報告した。

以上

2024年10月30日

青森・秋田・岩手3県のテレビ・ラジオ各社との意見交換会を開催

青森・秋田・岩手3県のテレビ局・ラジオ局と放送倫理検証委員会との意見交換会が、10月30日に盛岡市で開催された。テレビ局・ラジオ局の参加者は16局41人で、委員会からは小町谷育子委員長、岸本葉子委員長代行、高田昌幸委員長代行、井桁大介委員、大石裕委員、長嶋甲兵委員の6人が出席した。放送倫理検証委員会はこれまでに全国各地で意見交換会を開催してきたが、青森・秋田・岩手の3県での開催は今回が初めてのことである。

冒頭にBPO放送倫理検証委員会の小町谷育子委員長が開会の挨拶を行い「放送倫理検証委員会は2007年に番組のねつ造が批判を浴びた際、国会に提出された放送法の改正案に抗して放送の自由を守るべく、BPOの活動強化のために発足した委員会です。ただ、発足から17年が経ち、当時のことをリアルに覚えておられる方は少なくなり、みなさまにとってBPOは少し遠い存在になってしまっているのではないかと感じています。本日はみなさまと率直な意見交換を行うことでその距離をぐっと縮め、日頃の業務でお悩みの事柄を一緒に考える機会にしたいと存じます」と述べた。

最初のパート『LGBTQ・ジェンダー問題 対応の視点 今日からでもできそうなこと』では、エッセイストの岸本葉子委員長代行が表現者として日頃気を付けていることを紹介した。
視聴者に情報を伝える場合、「2人組の男が逃走中」といった性別が不可欠なことを伝えるときは例外として、必要がない限り性別には言及せず「女優」「女流作家」といった肩書は本人が望まないと使わないと述べた。恋愛や結婚相手の呼称は異性であることを前提とせず「付き合っている人」「パートナー」「お連れ合い様」といった呼び方をしてみてはどうかと紹介した。また「女性レジ係」とは言わず「付けまつげの濃いレジ係」などと描写で情報を補うことで性別の代わりにしたり、「おばあちゃんの知恵」や「女子会のノリ」といった少しリスキーな表現の前に「いわゆる」と一言振ったりすることを提案した。その上で、世の中の感覚や受け取られ方に常にアンテナを張って、自分の考え方のバイアスやスレスレの表現に気づく感覚を養うことが大切だと述べた。
参加者からは「いいか悪いかは別として、ギリギリの所を攻める知恵を働かせるのが制作者のテクニックなのではないか。若い制作者の胸中には表現の自由と配慮とがせめぎ合っているように感じる」という意見が出た。これを受けてラジオ局の番組審議会委員長を務めた経験のある慶應義塾大学名誉教授の大石裕委員が「報道は非常に広範囲の視聴者を対象とするため表現への配慮のハードルを上げざるを得ないが、そうした規準を番組ごとに幾つか設けて、視聴者と対話しながらその場その場でどうするかを決定せざるを得ないのではないか」と述べた。岸本委員長代行は「こういう話をすると『じゃあ何を守ればセーフなんですか』とルールを求める傾向があるが、世間の受け取り方を肌感覚としてキャッチしつつ、自分が表現したいことを成立させる方法を探ることこそ制作者の醍醐味ではないか」と述べた。

次のパート『委員会決定42号を読み解く 視聴者質問の作り上げについての考察』では、この事案を担当した東京都市大学教授の高田昌幸委員長代行が解説した。
ある人気長寿番組が生放送で視聴者からの質問に答えるコーナーを設けていたが、番組のテーマにしっくりくる質問がないと、制作チームのトップがスタッフに質問の作り上げを命じ、自作自演を繰り返していたと経緯を説明した。その背景には、これぐらいは大丈夫じゃないか、他でもやっているだろうという意識があったと指摘。問題発覚後、番組には視聴者から「いつか読んでもらえるんじゃないかと期待して質問を送り続けていたが全部嘘だったんですね」といったメールが多数届いたと紹介した。その上で「SNS全盛時代の昨今、ちょっとでも変なことがあるとすぐ広まりとんでもない落とし穴にはまってしまう。これぐらいいいじゃないかといった業界内の古い常識や視聴者を無視したやり方は、今は全く通用しない」と述べた。
参加者から「自作自演までしてなぜそのコーナーを維持しなければならなかったのか。質問が来ないなら別のコンセプトのコーナーを作るということに何故ならなかったのか」という質問が出た。高田委員長代行は「局内でこの質問コーナーの評判は良く、どんどんやってくれと言われていた。そうしたなかで制作者は、この路線で完璧な番組を作ろうという呪縛から抜け出せなくなったのではないか」と答えた。別の参加者からは「自社のニュース番組にも視聴者の疑問に答えるコーナーがある。毎週質問が来るという状況ではないので、来ないときはディレクターが自分の疑問に基づいた取材をして番組作りをするようにしている。番組の双方向性に過剰に力点を置き、視聴者とつながっていなきゃいけないと思い込んでしまうと問題をはらんでしまうのではないか」と述べた。

意見交換会後半の最初のパート『一般人の映り込み、実名報道における人権・プライバシー保護の在り方について』では、弁護士の井桁大介委員がプライバシー侵害と表現の自由の兼ね合いについて解説した。
日本の法律にはプライバシーの定義がない。裁判例もプライバシーという用語を正面から用いることを避ける傾向にある。プライバシーとは何かについて過去の判例から説明すると▼一般人であれば公開を欲しないであろうこと、▼欲しない他者には開示されたくないことという抽象的な基準となる。状況や文脈で変わってくるため、事前の予測が難しい。例えば裁判例の中には、公道で歩いていたところを無断で撮影された場合にプライバシー侵害を認めた事例や、教育関連業者の委託先が利用者の氏名・性別・生年月日・郵便番号・住所などを漏洩した場合にプライバシー侵害を認めた事例などがあると述べた。また、メディアの撮影の違法性が問われたケースは、▼プライバシー保護の必要性と表現の自由の必要性とを比較考慮し限度を超えているかどうかで判断されており、具体的には、▼相手方の社会的地位や活動内容・場所・目的・対応・必要性等を総合考慮して、一般人基準でこの程度までは我慢すべきだという範囲を超えているかどうかで考えられていると説明した。
実名報道については、実名で報じたから即座に違法ということにはならない。ただ、個人的には、無罪推定の問題も絡んでくることから、罰金もつかないと思われる軽微な事件で実名報道されているケースを目にすると、プライバシー侵害にあたると言われてもおかしくないのではないかと指摘した。その上で、表現や報道は誰かを傷付けることからは避けられないが、誰かを傷付けてでもその放送をする必要があるのかどうかを常に問われており、そのことを意識してほしいと述べた。
参加者から「ヘルメットを被らず自転車に乗っている人の映像を放送するかどうか迷った際、放送したことでその人が誹謗中傷の対象になると、何かしらの責任を問われることになりかねないと懸念を抱き断念した。この判断は正しかったと思うか」という質問が出た。井桁委員は「放送自体に違法性がない場合に、放送がきっかけで誰かが誹謗中傷の被害を受けたとしても、原則としてその責任を放送局が負うことはない」としたうえで、「実際にそういうことがあると寝覚めが悪く悩ましいと思うが、一方で、制作側が少数の抗議する人の意見を想像で先回りして自粛し始めると、行きつくところまで行ってしまうのではないかと危惧する」と答えた。その上で「プライバシーの問題は弁護士10人に聞いたら答えがばらけてしまう程、簡単には結論の出せない問題だ。適正な取材で、公共的な空間における撮影で、社会的に相当な対応で行っている場合は、プライバシー保護より放送、報道の自由の方が勝つと考えていいのではないか。抗議を受けるかどうかではなく、社会的意義のある放送かどうかを自問することが大事だと思う」と述べた。
別の参加者が「一人暮らしのお年寄りが自宅の火災で亡くなったニュースをネットで報じた後、親族から実名報道を取り下げるよう苦情がきた。応じなかったがひと揉めした」と体験談を紹介した。井桁委員は「これも大変難しい問題だと思う。ただ、災害・事件・事故が発生した際、個人情報保護を重視しすぎる社会というのはよろしくないのではないかと私は考えている。社会で情報を共有することが公共圏の維持につながり最終的には公益に資すると考えているからだ」と述べた。小町谷委員長は「アメリカに滞在中、殺人事件を報じたニュースが被害者の名前を伝えていないことがあった。報道の自由が重んじられる国なのにおかしいなとそのときは思ったが、後で被害者の遺族に連絡がついていない段階での自制的な報道だったことを知った。遺族にとって、自分で親族の死を確認する前に、メディアの報道でその死を知るということは辛いことなのではないか。報じるタイミングが遺族感情に影響することはあると思う」と述べた。
高田委員長代行が「京都アニメーション事件で、警察は当初被害者の家族は実名報道を望んでいないとして被害者の氏名を一切明らかにしなかった。ところが地元新聞社が独自に取材を進めた結果、実名で書いてほしいと望む家族が現れた。実名報道の判断を当局に任せきりにするのはよくない」と述べた。また「加害者側の氏名を警察が匿名で発表するケースも増えている。そういう場合は『警察はこの容疑者の氏名を匿名で発表しています』と放送し、実名を公表していないことをきちんと伝えてみてはどうか」と提案した。そして「冤罪もあるので、ニュースで逮捕を報じたら起訴、判決と最後まで報じるべきだ。そうしないと逮捕のときの実名報道で容疑者に極悪人のイメージが定着してしまう」と述べた。これを受けて井桁委員が「身に覚えがないのに逮捕され実名報道されて困っている人はたくさんいる。このことをみなさんが真剣に考えてくれると嬉しい」と述べた。

最後のパート『番組か広告かの見極めについて』では、演出家やテレビ番組のプロデューサーを務める長嶋甲兵委員が解説した。
日本民間放送連盟「番組内で商品・サービスなどを取り扱う場合の考査上の留意事項」は、特定の商品・サービスを取り上げる場合、取り上げ方や演出方法によって番組が広告放送だと誤解を招く場合があるとして、▼番組で取り扱う理由・目的が明確となっているか、▼視聴者への有益な情報提供であり、かつ視聴者に対してフェアな内容となっているか、▼特定の企業・団体などから番組制作上、特別な協力を受けた場合にはその旨を番組内で明らかにしているか、以上3点を特に留意すべき事項として例示し、これらのことを総合的に判断する必要があるとしている。
そうは言っても、具体的に何をどうすれば良いのかは示されておらず、対応策は制作現場ごとにそれぞれ考えていかなければならない。工夫の一例として、昨年キー局で放送された番組を例に挙げたい。この番組は、同業界のライバル会社同士が相手の商品やサービスを互いに褒め合う内容で、ライバルだからこそ分かる商品やサービスの凄さを伝えることは視聴者にとって有益な情報になっており面白かった。そういう工夫を色々な形で考え出して番組制作にあたればいいとヒントをもらえるという内容だった。
キー局と地方局とでは置かれている状況が全く違い、例えばキー局だと2つのファミレスを取り上げることができるが、地方局にはそういう余地がないなど、番組の在り方の前提に格差がある。それでもなぜこういう創意工夫を凝らさなければならないかについて、制作者の立場から説明したい。独立した立場で色んな企業を説得し、お金を出してもらって自分たちの作りたい番組を作るというのが放送局のあるべき健全な姿だ。きれいごとだと言われる方もいると思うが、その原則は忘れずに守ってほしい。スポンサーや代理店に対して私はその原則を持ち出し、こういう原則があるからそれは受け入れられないと主張して、独立性を守り制作にあたってきた。今は、お金を出しているところの言うことを聞くのは当たり前だと疑問すら感じていない人が制作現場に増えてきているように感じる。それは、政府の公式見解をそのまま伝えることが当たり前だと思うことと同様に、非常に危険なことだと述べた。
参加者からは「ショッピング情報のコーナーで自局のアナウンサーが商品の使用感を述べる際、できるだけ客観的に感想を述べようとしているが、本数が多くて丁寧にやっていくのは大変だ」といったことや「開店のタイミングに合わせて店の経営者を密着取材した持ち込み番組の考査にあたり、売名行為に近いものを感じたため、編成・総務・営業・報道の社内横断的な考査検証委員会を開催して判断することにした」といった体験談が紹介された。
これを受けて高田委員長代行が「番組か広告放送かの問題で放送倫理違反を問われたある局では、持ち込み番組が放送間際に届いたため考査の担当者が番組を放送前に見ておらず、後日そのことを非常に悔いたケースがあった。私は、番組か広告放送かの問題は、ひとえに考査がきちんと機能しているかどうかに尽きると思っている」と述べた。また、大石委員は「ローカル局の場合、地元の経済界や産業界、様々なところとの結びつきが強いだけにご苦労は多いと思うが、スポンサー側と信頼関係を持ちつつも、信頼関係があるからこそこちらとしてはこの内容で放送したいとご理解いただく努力を、絶え間なく続けざるを得ないのではないか」と述べた。

意見交換会の最後に、地元局の幹事社を務めた岩手めんこいテレビのコンテンツ推進局編成業務部 兼 番組審議室の岩渕博美編成担当部長が閉会の挨拶を行い「今回の意見交換会のテーマは日々悩み向き合っている課題に応えていた。社会が変化し視聴者のニュースや番組に向ける視線は厳しくなっており、少しのことでも騒がれてどうしたものかと悩むケースが増えている。だからと言って委縮してしまっては視聴者の期待に応える番組は作れないと思う。認識をアップデートしてバランスを取りながらより良い放送が届けられるように今後も努力していきたい。有意義な時間だった」と結んだ。

以上

第200回

第200回–2024年11月

毎日放送『ゼニガメ』について審議

第200回放送倫理検証委員会は、11月8日に千代田放送会館で開催された。
テレビ東京は、2023年3月28日の『激録・警察密着24時!!』で放送した人気漫画・アニメを連想させる商品に関する不正競争防止法違反容疑事件の密着取材の中で、逮捕された4人のうち3人が不起訴になった事実を伝えなかった等複数の不適切な内容があったと2024年5月に公表し謝罪した。委員会は、放送倫理違反の疑いがあり詳しく検証する必要があるとして7月の委員会で審議入りを決めた。今回の委員会では担当委員から意見書の修正案が提示され議論した。
毎日放送は、2024年7月17日に放送した『ゼニガメ』で、出張買取業者に密着取材する企画を放送したが、事実と異なる放送があったことを公表し謝罪した。その後さらに同じ業者を取材した2023年11月と2024年5月の放送分でも、事実と異なる内容があったことが判明し、9月4日に「一部事実と異なる内容があった」とする調査結果を発表し謝罪している。委員会は、放送倫理上の問題がなかったかを検証する必要があるとして9月の委員会で審議入りを決めた。今回の委員会では担当委員からヒアリングの結果報告と意見書の骨子案が提示され議論した。
10月にBPOに寄せられた視聴者・聴取者意見などが報告された。
10月30日に盛岡市で開催された北東北地区(青森、秋田、岩手)の意見交換会の様子と事後アンケートの集計などが報告された。

議事の詳細

日時
2024年11月8日(金)午後4時~午後7時20分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、
大石委員、大村委員、長嶋委員、西土委員、毛利委員、米倉委員

1. テレビ東京『激録・警察密着24時!!』について審議

テレビ東京は、2023年3月28日に放送した『激録・警察密着24時!!』の中で、人気漫画・アニメ「鬼滅の刃」を連想させる商品をめぐる愛知県警の不正競争防止法違反容疑の強制捜査を取り上げ、逮捕された4人のうち3人が不起訴になったことを伝えず、また事後撮影した映像を密着取材したかのように編集して放送した。2回目の審議となる今回の委員会では、前回の委員会で各委員から寄せられた意見や指摘をもとに作成された意見書第2稿(修正案)をもとに詰めの議論をし、最終稿に向けた作業を進めることを確認した。
なお、この番組はBPO放送人権委員会でも審理されている。

2. 毎日放送『ゼニガメ』について審議

毎日放送は、2024年7月17日に放送したローカルバラエティー番組『ゼニガメ』で、出張買取業者に密着取材する企画を放送したが、翌7月18日に番組に事実と異なる放送があったことを公表し謝罪した。さらに、2023年11月と2024年5月の放送分でも事実と異なる内容があったことが判明し、9月4日に「一部事実と異なる内容があった」とする調査結果を発表し謝罪した。委員会は9月に審議入りし、当該放送局から提出された報告書などを基に議論を重ね、10月に制作スタッフらからのヒアリングを実施した。今月の委員会では、担当委員からヒアリングの結果の報告と意見書の骨子案の説明があった。他の委員からは複数の質問や意見が出され、活発な議論が行われた。今後は意見書の原案の作成を進める。

3. 10月に寄せられた視聴者・聴取者意見を報告

10月に寄せられた視聴者・聴取者の意見では、サッカーJ1「町田ゼルビア」側がSNSでの誹謗中傷をめぐって刑事告訴したことを取り上げたニュース番組への批判や衆院選選挙特番で複数の局が、CG画面などで候補者名の近くに「裏金」などの文字を表示したことに対する批判の声が多く寄せられた。
また大手チェーンストアの商品のみを扱った番組について「明らかに広告ではないか」という視聴者意見が寄せられたことを事務局から報告した。

4. 北東北地区意見交換会の報告

放送倫理検証委員会は、2024年10月30日に青森、秋田、岩手の東北3県の放送局を対象に盛岡市で意見交換会を実施した。参加した委員から当日の様子などが報告され、事務局から事後アンケートの集計結果などが説明された。
意見交換会の詳細はこちら

以上

第199回

第199回–2024年10月

テレビ東京『激録・警察密着24時!!』について審議

第199回放送倫理検証委員会は、10月11日に千代田放送会館で開催された。
テレビ東京は、2023年3月28日の『激録・警察密着24時!!』の中で人気漫画・アニメを連想させる商品に関する不正競争防止法違反被疑事件に密着し放送したが、逮捕された4人のうち3人が不起訴になった事実を伝えなかった等、複数の不適切な内容があったと2024年5月に公表し謝罪した。委員会は、当該放送局に報告書と番組DVDの提出を求めて討議した結果、放送倫理違反の疑いがあり詳しく検証する必要があるとして7月の委員会で審議入りを決めた。今回の委員会では担当委員から意見書の原案が提示され議論した。
毎日放送は、2024年7月17日に放送した『ゼニガメ』の中で、出張買取業者が奈良県内の家屋の清掃や遺品整理を行った際、金庫から金の延べ板が見つかり現金で買い取る様子を紹介したが、実際は買取業者が事前に用意した物であることがわかり、事実と異なる放送があったことを公表し謝罪した。その後さらに同じ業者を取材した2023年11月と2024年5月の放送分でも、事実と異なる内容があったことが判明し、毎日放送は9月4日に「一部事実と異なる内容があった」とする調査結果を発表し謝罪しているが、制作スタッフ側の関与は認められなかったとしている。委員会は議論の結果、放送倫理上の問題がなかったかを検証する必要があるとして9月の委員会で審議入りを決めた。今回の委員会では関係者に対するヒアリングの予定などが報告された。
TBSテレビが2024年6月19日に放送した『東大王』の特別番組「東大王VS難関中学 関東名門校SP」の中で、「野々村親子と学ぶ 業界No.1!味の素SP」というクイズコーナーが約30分間にわたってあり、視聴者からBPOへ「番組か広告か分かりづらい」という意見が寄せられた。当該放送局から提出された報告書を基に討議したが、審議入りはせず議事概要に意見を掲載することで終了した。
NHKのラジオ国際放送問題について議論した。
9月にBPOに寄せられた視聴者・聴取者意見などが報告された。
北東北地区(青森、秋田、岩手)で開催する意見交換会の実施要項と事前アンケートの集計などが報告された。

議事の詳細

日時
2024年10月11日(金)午後4時~午後7時
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、
大石委員、大村委員、長嶋委員、西土委員、米倉委員

1. テレビ東京『激録・警察密着24時!!』について審議

テレビ東京は、2023年3月28日に放送した『激録・警察密着24時!!』の中で、人気漫画・アニメ「鬼滅の刃」を連想させる商品をめぐる愛知県警の不正競争防止法違反容疑の強制捜査を取り上げ、逮捕された4人のうち3人が不起訴になったことを伝えず、また事後撮影した映像を密着取材したかのように編集して放送した。委員会は7月に審議入りし、関係者からのヒアリングを済ませており、今回は担当委員が作成した意見書の原案をもとに審議した。各委員から様々な意見が出され、議論が交わされたことをうけて第2稿を作成し、次回の委員会で継続審議することを確認した。
なお、この番組はBPO放送人権委員会でも審理されている。

2. 毎日放送『ゼニガメ』について審議

毎日放送は、2024年7月17日に放送したローカルバラエティー番組『ゼニガメ』で、出張買取業者に密着取材する企画を放送した。奈良県内の家屋の清掃や遺品整理を行った際、金庫から金の延べ板が見つかり業者が現金で買い取る様子を紹介したが、実際は業者が事前に用意した物であることが明らかになり、事実と異なる放送があったことを翌7月18日に公表し謝罪した。さらに、2023年11月と2024年5月の放送分でも同じ業者が土地や建物を遺族とおぼしき人物から現金で買い取る様子を放送していたが、実際はロケ以前に業者が買い取っていたこと、遺族として登場した人物も買取業者が事前に依頼していたことなどが判明した。毎日放送は9月4日に「一部事実と異なる内容があった」とする調査結果を発表し謝罪しているが、制作スタッフ側の関与は認められなかったとしている。委員会は9月に審議入りし、当該放送局から提出された資料に基づき担当委員が議論を重ねた結果、ヒアリングの方向性がほぼ固まってきたことなどが報告された。関係者に対するヒアリングを10月中に行い、次回の委員会までに意見書の骨子案を作成することになった。

3. TBSテレビ『東大王』について討議

TBSテレビは2024年6月19日(水)19時から3時間にわたる『東大王』の特番「東大王VS難関中学 関東名門校SP」を制作。番組は3部構成で、中学受験で出題された問題を東大王チームが解くコーナー、動物園にいる動物を表す難読漢字をクイズにした番組名物の「難問オセロ!」コーナーと続き、最後に「野々村親子と学ぶ業界No.1!味の素SP」と題したクイズコーナーが放送された。
クイズは冷凍ギョーザや中華合わせ調味料など味の素の6商品を紹介して出題する形式で、正解の解説には味の素の社員が登場。画面左上には「東大王×No.1づくし!味の素」のテロップを表示し、味の素を冷凍食品界の王者と紹介。No.1商品と称する冷凍食品について3題を出題した後、何れも売り上げNo.1と銘打った中華合わせ調味料、和風だし、洋風インスタントスープに関するクイズを出題。クイズに優勝したチームには味の素商品の詰め合わせセットが贈られた。このコーナーの放送尺は約30分間だった。

放送後、BPOに視聴者から「クイズコーナーで味の素の商品に関する問題や解説を長時間にわたって取り上げていた。番組か広告か分かりづらい点、ステマなのかどうか分からない点において番組に疑問を持った」という声が寄せられた。これを受けて委員会は、TBSテレビに対して報告書を求め、10月4日に当該放送局から報告書が提出された。
報告書によると、当該コーナーは商品誕生の試行錯誤が学べる新企画として制作現場が立案したコーナーで、第1弾の明治に続く2回目の放送だった。制作にあたって味の素から対価は受け取っておらず、企画中に検討された企業PRにつながるような内容は全て取り上げず、番組側がクイズにしたいと考えた要素だけで自主的に構成された番組であるとしている。
一方で、放送中26分間にわたり画面左上に「東大王×No.1づくし!味の素」のテロップが出続けた点や、商品を賞賛するばかりの放送内容を「番組かCMか分かりづらい」と受け止めた視聴者がいた点については、結果的に反省すべき事だとしている。
当該コーナーは、放送後TBSテレビの考査局から「慎重さが求められる事案」との指摘を受けたが、放送前の段階で番組プロデューサー陣は問題があるとは思わず考査部門には相談していない。TBSテレビは、制作現場の番組と広告放送の識別の甘さを改めるべく、今後勉強会の開催やヒヤリハット事例集をまとめるなどして周知・徹底を図りたいとしている。

委員会は、本事案について10月11日に討議入りを決定。民放連の「番組内で商品・サービスなどを取り扱う場合の考査上の留意事項」に照合すると共に、番組か広告放送かの問題で放送倫理違反に問われた過去の委員会決定の事案と本事案とを比較して問題点を整理した。その結果、以下のような厳しい指摘が相次いだ。

  • 視聴者に身近な商品を取り上げれば視聴率につながると、制作現場が警戒心も後ろめたさもなく当たり前に考えていることに本事案の問題の根深さを感じる。

  • 1社提供で番組本編も提供社のことを取り上げているケースは、放送倫理違反であるにしても、視聴者は番組本編も広告だろうという意識で見るので実は影響はそんなに大きくない。むしろ、提供社でもない企業の事を殊更に取り上げる方が、その企業の担当者と何か裏取引があるのではないかという不信感が視聴者に募る。本事案はまさにそういう構成だ。

  • テレビショッピングかと思う程、芸能人らが褒めて美味しい美味しいと繰り返しており、視聴者からは番組か広告か分かりづらくステマかもしれないという意見が届いた。番組で取り上げた企業から対価はもらっておらず、自主的に構成した番組なので問題があるとは思わずそのまま放送したというテレビ局の対応を是認してしまっていいのか。

  • 民放連の「番組内で商品・サービスなどを取り扱う場合の考査上の留意事項」は、取り上げた企業から対価をもらっていなくても、番組制作や考査にあたっては、視聴者に広告放送であるとの誤解を招く内容・演出になっていないか常に留意する必要があるとしている。だからこそ、これまでの委員会決定で指摘したとおり番組考査が大事なのだが、TBSテレビの報告書を読む限り、制作現場は考査の必要性を全く意識せずに放送に至っており問題だ。

  • 番組か広告放送かの問題を巡って、地方局で放送倫理違反を問われるケースが相次いで以降、全国の地方局は番組と広告の境目を常に意識し苦労している。キー局がその点を全く意識せずに番組を制作しているというのが信じられない。これまで委員会決定を通じてBPOが訴えてきたことがまるで伝わっていない。これまでの委員会決定及び委員長談話の対象は全て地方局の事案であり、放送局間で公平な取扱いをしているのかも気になるところだ。

  • 「味の素」という企業名を書いたテロップが出続けていたり、商品を売上げNo.1と強調し味の素の商品を激賞したりしており、視聴者が広告ではないかと感じるのも致し方ないところがある。

  • 番組か広告放送かの問題で審議入りをして放送倫理違反を問われたある放送局の番組は「おいしさの追求」と銘打って企業の肯定的な側面の紹介に終始していた。本事案も番組コーナーのコンセプトはほぼ同じなので同様に審議入りすべきだ。

こうした厳しい意見が相次いだ一方で、本事案は、番組全編を通して一企業を取り上げているわけではない点や、番組のフォーマットであるクイズ形式に取り上げた企業の商品情報を落とし込んでいる点において、審議入りの判断をするまでには至らないという意見が出た。番組全体ではなく番組の一部で企業の商品やサービスを取り上げたケースにおいても審議入りの対象としてしまうと、キー局はもとより地方局も今後の対応に苦慮するのではないかといった意見も出た。
また、TBSテレビが報告書で、制作現場の番組と広告放送の識別の甘さを改めるべく、今後勉強会の開催やヒヤリハット事例集をまとめるなどして周知・徹底を図りたいとしていることから、本事案は、今後のTBSテレビの自主的な対応に任せるということで討議を終了し、審議入りは見送った。

4. NHKのラジオ国際放送問題について議論

NHKは、2024年8月19日にラジオ国際放送などの中国語ニュースで中国籍の外部スタッフが、沖縄県の尖閣諸島の帰属などをめぐって、原稿にはない発言を行った。NHKは9月10日に「ラジオ国際放送問題への対応について」という文書を公表した。また、委員が作成したメモとNHKが公表した文書を資料としてこの問題について議論したが、委員会としてはこれについて取り上げるという判断には至らなかった。

5. 9月の視聴者・聴取者意見を報告

9月に寄せられた視聴者・聴取者意見のうち、タレントが80キロ超のチャリティマラソンに挑む番組企画について、台風が接近し影響が懸念されていたにもかかわらずマラソンを中止しなかったことについての批判や、そもそも一人のタレントに80キロ超のマラソンを課す番組企画は無謀だといった声が寄せられた。この他、女性芸人が護身術を学んだ後に痴漢にあった場合どんな反応を見せるかという番組コーナーについて、性犯罪を思い起こさせるような演出は悪ふざけの度が過ぎるといった意見が寄せられたことなどが事務局から報告され、議論した。

6. 北東北地区意見交換会の開催について

放送倫理検証委員会は、2024年10月30日に青森、秋田、岩手の東北3県の放送局を対象に盛岡市で意見交換会を実施する。事務局から当日の実施要項や事前アンケートの集計結果を説明した。

以上

第198回

第198回–2024年9月

毎日放送ローカルバラエティー番組『ゼニガメ』が審議入り

第198回放送倫理検証委員会は、9月13日に千代田放送会館で開催された。
テレビ東京は、2023年3月28日の『激録・警察密着24時!!』で放送した人気漫画・アニメを連想させる商品に関する不正競争防止法違反容疑事件の密着取材の中で、逮捕された4人のうち3人が不起訴になった事実を伝えなかった等複数の不適切な内容があったと2024年5月に公表し謝罪した。委員会は、当該放送局に報告書と番組DVDの提出を求めて協議した結果、放送倫理違反の疑いがあり詳しく検証する必要があるとして7月の委員会で審議入りを決めた。今回の委員会では担当委員から当該放送局の関係者らにヒアリングした結果が報告された。
毎日放送は、2024年7月17日に放送した『ゼニガメ』の中で、出張買取業者が奈良県内の家屋の清掃や遺品整理を行った際、金庫から金の延べ板が見つかり現金で買い取る様子を紹介したが、実際は買取業者が事前に用意した物であることがわかり、事実と異なる放送があったことを公表し謝罪した。その後さらに同じ業者を取材した2023年11月と2024年5月の放送分でも、事実と異なる内容があったことが判明し、毎日放送は9月4日に「一部事実と異なる内容があった」とする調査結果を発表し謝罪しているが、制作スタッフ側の関与は認められなかったとしている。委員会は議論の結果、放送倫理上の問題がなかったかを検証する必要があるとして審議入りを決めた。
7月と8月にBPOに寄せられた視聴者・聴取者意見などが報告された。

議事の詳細

日時
2024年9月13日(金)午後4時~午後6時50分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、
大石委員、大村委員、長嶋委員、西土委員、毛利委員、米倉委員

1. テレビ東京『激録・警察密着24時!!』について審議

テレビ東京は、2023年3月28日に放送した『激録・警察密着24時!!』の中で、人気漫画・アニメ「鬼滅の刃」を連想させる商品をめぐる愛知県警の不正競争防止法違反容疑の強制捜査を取り上げた。この放送で、逮捕された4人のうち3人が不起訴になったことを伝えず、また取り上げた会社が強制捜査後も商品を中国に発注していたと放送するなどして、捜査対象の会社側から「そういう事実はない」と指摘され、そのことを認めている。委員会は、すでに当該放送局から提出された報告書と番組DVDを踏まえて議論したのちに前回7月の委員会で、複数の問題点があるのではないかとして審議入りを決めた。今回の委員会では、テレビ東京や番組制作会社などの関係者からヒアリングした結果を担当委員や事務局から報告した。そしてヒアリングで明らかになった番組制作の工程や背景などが説明され、他の委員からの質疑とともに議論した。今後は意見書の原案の作成を進める。
なお、この番組はBPO放送人権委員会でも審理されている。

2. 毎日放送『ゼニガメ』について審議

毎日放送は、2024年7月17日に放送したローカルバラエティー番組『ゼニガメ』で、出張買取業者に密着取材する企画を放送した。奈良県内の家屋の清掃や遺品整理を行った際、金庫から金の延べ板が見つかり業者が現金で買い取る様子を紹介したが、実際は業者が事前に用意した物であることが明らかになり、事実と異なる放送があったことを翌7月18日に公表し謝罪した。さらに、2023年11月と2024年5月の放送分でも、同じ業者が土地や建物を遺族とおぼしき人物から現金で買い取る様子を放送していたが、実際はロケ以前に業者が買い取っていたこと、遺族として登場した人物も買取業者が事前に依頼していたことなどが判明した。毎日放送は9月4日に「一部事実と異なる内容があった」とする調査結果を発表し謝罪しているが、制作スタッフ側の関与は認められなかったとしている。委員会は、当該放送局から提出された報告書と番組DVDを踏まえて議論した結果、放送倫理上の問題があったのかどうかを詳しく検証する必要があるとして審議入りを決めた。

3. 7月の視聴者・聴取者意見を報告

7月に寄せられた視聴者・聴取者意見のうち、東京都知事選挙の投開票があった7月7日に放送された番組が、投票用紙への名前の記入方法や整理券をなくした場合の本人確認に関して誤った情報を伝え、翌週の放送で訂正したことについて多数の批判意見が寄せられたことが事務局から報告された。また、日本時間の同月14日に米国のトランプ前大統領が銃撃されたことを伝えた番組で、出演者が「(トランプ氏にとって)プラスのアピールにもなりかねない」と話したことについて批判する意見が寄せられたことなども報告された。

4. 8月の視聴者・聴取者意見を報告

8月に寄せられた視聴者・聴取者意見のうち、バラエティー番組で新型コロナ感染予防対策を茶化して笑いものにしていたことに批判が多数寄せられたことが報告された。また、情報バラエティー番組の司会者がオリンピックのメダリストの容姿を動物に例えるという不適切な発言をしたことについての批判や、ドキュメントバラエティー番組で元首相銃撃事件を再現ドラマ形式で特集したが容疑者を擁護するような内容になっていたとの批判、ラジオ国際放送などの中国語ニュースの中で中国籍の外部スタッフが沖縄県の尖閣諸島は中国の領土などと原稿にはない発言をしたことについての批判が数多く寄せられたことなどが事務局から報告され、議論した。

以上

2024年9月13日

毎日放送ローカルバラエティー番組『ゼニガメ』が審議入り

毎日放送は、2024年7月17日に放送したローカルバラエティー番組『ゼニガメ』で、出張買取業者に密着取材する企画を放送した。奈良県内の家屋の清掃や遺品整理を行った際、金庫から金の延べ板が見つかり業者が現金で買い取る様子を紹介したが、実際は業者が事前に用意した物であることが明らかになり、事実と異なる放送があったことを翌7月18日に公表し謝罪した。さらに、2023年11月と2024年5月の放送分でも、同じ業者が土地や建物を遺族とおぼしき人物から現金で買い取る様子を放送していたが、実際はロケ以前に業者が買い取っていたこと、遺族として登場した人物も買取業者が事前に依頼していたことなどが判明した。毎日放送は9月4日に「一部事実と異なる内容があった」とする調査結果を発表し謝罪しているが、制作スタッフ側の関与は認められなかったとしている。委員会は、当該放送局から提出された報告書と番組DVDを踏まえて議論した結果、放送倫理上の問題があったのかどうかを詳しく検証する必要があるとして審議入りを決めた。

第197回

第197回–2024年7月

テレビ東京『激録・警察密着24時!!』が審議入り

第197回放送倫理検証委員会は、7月12日に千代田放送会館で開催された。
テレビ東京は、2023年3月28日の『激録・警察密着24時!!』で放送した人気漫画・アニメの商品に関する不正競争防止法違反容疑事件の密着取材の中で、逮捕された4人のうち3人が不起訴になった事実を伝えなかった等複数の不適切な内容があったと2024年5月に公表・謝罪した。委員会は、当該放送局に報告書と番組DVDの提出を求めて協議した結果、放送倫理違反の疑いがあり、詳しく検証する必要があるとして審議入りを決めた。
6月にBPOに寄せられた視聴者・聴取者意見などが報告された。

議事の詳細

日時
2024年7月12日(金)午後5時~午後6時40分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、
大石委員、大村委員、長嶋委員、西土委員、毛利委員、米倉委員

1. テレビ東京『激録・警察密着24時!!』について審議

テレビ東京は2023年3月28日に放送した『激録・警察密着24時!!』の中で、愛知県警が強制捜査をした人気漫画・アニメ「鬼滅の刃」を連想させる商品に関する不正競争防止法違反の被疑事案を取り上げた。2024年の5月になってテレビ東京は記者会見などで、この放送で「4人が逮捕された」ことは伝えたが、うち「3人が不起訴になった」ことは伝えなかったことを認めた。また放送に登場した会社が強制捜査後も商品を中国に発注していたと放送したが、番組側はこの事実を確認しておらず、会社側から「そういう事実はない」と指摘されたことも認めている。委員会は、テレビ東京から提出された報告書と番組DVDを踏まえて議論したが、複数の問題点があるのではないかという意見が出された。そして放送倫理違反の疑いがあり、取材・編集の各段階について検証する必要があるとして審議入りを決めた。今後、番組関係者らからヒアリング等を行う。なおこの番組はBPO放送人権委員会でも審理されている。

2. 6月に寄せられた視聴者・聴取者意見を報告

6月に寄せられた視聴者・聴取者の意見のうち、東京都知事選の放送をめぐって「特定の候補者の当選を目的とした放送があった」、「小池氏vs蓮舫氏」の対決に注目した報道については「あたかも二人しか立候補していないような放送ではないか」といった意見や、日本テレビのドラマ『セクシー田中さん』をめぐる日本テレビの報告書について「故人の原作者に罪をなすりつけているようだ」といった意見に加えて、「インターネットの方にこそ多大な前科がある」とするSNSの問題点を指摘する意見があったことを事務局から報告。またクイズ番組で特定の商品に関する取り上げ方をめぐって「番組か広告かわかりづらい」といった視聴者意見についても報告した。

以上

2024年7月12日

テレビ東京『激録・警察密着24時!!』が審議入り

テレビ東京は2023年3月28日に放送した『激録・警察密着24時!!』の中で、愛知県警が強制捜査した人気漫画・アニメ「鬼滅の刃」の関連商品に関する不正競争防止法違反の疑いがある事案を取り上げた。2024年の5月になってテレビ東京は記者会見などで、この放送で「4人が逮捕された」ことは伝えたが、うち「3人が不起訴になった」ことは伝えなかったと認めている。また放送に登場した会社が強制捜査後も商品を中国に発注していたと放送したが、番組側はこの事実を確認しておらず、会社側から「そういう事実はない」と指摘されたことも認めている。委員会は、テレビ東京から提出された報告書と番組DVDを踏まえて議論したが、複数の問題点があるのではないかという意見が出された。放送倫理違反の疑いがあり、取材・編集の各段階について検証する必要があるとして審議入りを決めた。今後、番組関係者らからヒアリング等を行う。なおこの番組はBPO放送人権委員会でも審理入りが決まっている。

第196回

第196回–2024年6月

日本テレビのドラマ『セクシー田中さん』調査報告書について議論

第196回放送倫理検証委員会は、6月14日に千代田放送会館で開催され、5月にBPOに寄せられた視聴者・聴取者意見などが報告され議論を行った。

議事の詳細

日時
2024年6月14日(金)午後5時~午後7時
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、
大石委員、大村委員、長嶋委員、西土委員、毛利委員、米倉委員

1. 5月に寄せられた視聴者・聴取者意見を報告

5月に寄せられた視聴者・聴取者意見について、フックのついたロープを鼻の孔にかけて軽トラックをけん引するバラエティー番組について「企画内容が危険で楽しめなかった」等の意見が多数寄せられたことが報告された。また、警察の捜査に密着取材した番組についての「取材中に逮捕された人がその後不起訴になっているのに、そのことに触れずに番組を放送しており推定無罪の原則に反しているのではないか」といった意見や、路線バスとして使われている車両を貸し切ってグルメスポット等を巡る番組に対して「貸切バスに乗っているのに番組タイトルで路線バスをうたうのはおかしい」「実在しないバス路線をいかにも運行しているかのように扱っている。戸惑う人が出るのではないか」といった意見が寄せられたことが事務局から報告され、議論した。

2. 日本テレビのドラマ『セクシー田中さん』調査報告書について議論

日本テレビが2023年10月期に放送したドラマ『セクシー田中さん』の原作者が亡くなった事態を受けて設置された社内特別調査チームから、調査報告書が5月31日に公表された。放送されたドラマの内容自体に放送倫理上の問題があるわけではないが、委員会としてはドラマ制作の過程で問題がなかったかどうかについて関心を持ってきた。委員会は、かねてより放送局が自主的・自律的に問題を検討し解決への道を探ることが望ましいと考えており、今回の問題についても、日本テレビの調査を待つこととし、今般公表された調査報告書を議論した。主な意見や感想は以下の通り。

  • この報告書の直後に出た小学館の調査報告書と比較すると、当たり前だが自社寄りの内容になっているという気がするが、今回の問題の理解が深まった。著作者人格権という大がかりな話というよりは、単純に仕事の仕方やサポートが不十分であったことなどが問題だったのではないかという印象を抱いた。
  • 原作者と制作の間の交渉に立つ出版社は、ドラマ制作が漫画の売上げにつながるという利益を有しており、出版社が原作者のライツの代理人としてふさわしいのかという問題にもきちんと取り組む必要があるのではないか。原作者の権利をどう守っていくべきかを議論するきっかけになってほしい。
  • この報告書は、原作者を措いて脚本家をディフェンスしているように読み取れるところがある。
  • 出版社と放送局、原作者と脚本家は、レイヤーが分かれていて、最終的に原作者と脚本家がぶつかり合ってしまったところがあるのではないか。本来ならば、原作者にも脚本家にもエージェントが必要なはずだ。
  • 問題点は「原作に忠実に」という点と、原作が完結していないので「ラストはオリジナル脚本になる」という点で、それをどう扱うかが両者の間で詰め切れておらず、すれ違いがあったことが問題である。
  • 脚本チーム、コアメンバーは、いったいどのような権限を持ち、何をやっていたのかが、報告書を読んでもわからなかった。
  • ドラマ化には改変ありきで進んでいることが問題ではないか。漫画原作の良いところは、絵コンテが出来ているようなもので、キャスティングにも反映しやすい効率的な側面がある。しかしコマ割りや表現は考えに考え抜いて作られているのだから、演出家や脚本家などの現場がそれをちゃんと尊重して制作するという枠組みを作ってほしい。
  • 少女漫画の「キャンディ・キャンディ」について原作者の権利が争われた事件などで、著作者人格権は強く守られているはずなのだが、現場ではいろいろなプレーヤーの立場によって、その捉え方が違うと感じる。
  • 原作者は、当然出版社が自分の利益を代表してテレビ局と交渉してくれるだろうと思っているはずだが、大きな組織の利益に抱え込まれている気がする。
  • 報告書を読んで、つくづく原作者として守りたいものがある場合には、最初にそれを文章で書いて、これが守られなければ、原作の使用許可をいつでも撤回できるとして、判子を押さないとだめだと感じた。
  • 制作チームのフォローアップ体制を構築し、問題事例を継承してもらいたい。
  • 二次元と三次元なので改変は起こるものだが、みだりに変えるのではなく必然性が説明できる改変にするべきだという事を基本の教育としてほしい。
  • ドラマの制作現場の事はよくわからないが、作っていくうちに想定外の展開があったり、演者が関わる事で新しいものが生まれたりと、ある種の生き物のようなところがあると想像できる。最初に契約を作ることは難しいという人がいるが、そういう部分もあるのかもしれない。
  • プロデューサーの優しさだとは思うが、制作者サイドの意見を咀嚼して脚本家に伝えているけれど、生き物であれば、咀嚼をせずに脚本家に対し原作者から出ている厳しい意見をちゃんと伝えるべきではなかったか。
  • 商業的二次利用をする際は、原作者の著作者人格権のもとでするのが原則で、原作者がノーと言えば使えないのだが、報告書ではややあいまいにしていて違和感がある。
  • 不信感がつのってきたところに撮影日程で明らかに虚偽を伝えられて、決定的に信頼関係が損なわれた。報告書の他の事実関係に埋もれてしまっているようだが、これだけ取ればそれこそ倫理的に問題だし、うそをつかずに誠実に対処する事が今後も大事だと思う。
  • 日本のエンターテインメント業界の契約体質が非常に関係している気がして、条件は制作開始前に一定程度枠を決めて書面化しておかないといけないのではないか。
  • ある程度の条件を互いに都合の良い解釈をしている可能性があり、この業界の根本的な問題点のような気がする。

以上

第195回

第195回–2024年5月

4月の視聴者・聴取者意見を報告

第195回放送倫理検証委員会は、5月10日に千代田放送会館で開催され、4月にBPOに寄せられた視聴者・聴取者意見などが報告され議論を行った。

議事の詳細

日時
2024年5月10日(金)午後5時~午後6時
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、
大石委員、大村委員、長嶋委員、西土委員、毛利委員、米倉委員

1. 4月に寄せられた視聴者・聴取者意見を報告

4月に寄せられた視聴者・聴取者の意見は1,877件で、通常ベースの数値となった。衆議院東京15区の補欠選挙を伝えた報道番組について、候補者の紹介が公平ではないという意見があったことなどが事務局から報告された。

以上

第194回

第194回–2024年4月

TBSテレビ『news23』「JA自爆営業」調査報道に関する意見への対応報告を了承

第194回放送倫理検証委員会は、4月12日に千代田放送会館で開催された。
委員会が2024年1月11日に通知・公表したTBSテレビ『news23』「JA自爆営業」調査報道に関する意見について、当該放送局から再発防止に関する取り組み状況などの対応報告が書面で提出され、その内容を検討した結果、報告を了承して公表することにした。
ローカルワイド番組でホームレス男性を取材した特集コーナーについて当該放送局から提出された報告書を基に議論した。
3月にBPOに寄せられた視聴者・聴取者意見が報告された。

議事の詳細

日時
2024年4月12日(金)午後5時~午後6時35分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、
大石委員、大村委員、長嶋委員、西土委員、毛利委員、米倉委員

1. TBSテレビ『news23』「JA自爆営業」調査報道に関する意見への対応報告を了承

1月11日に通知公表したTBSテレビ『news23』「JA自爆営業」調査報道に関する意見(委員会決定第45号)への対応報告が、当該放送局から委員会に書面で提出された。
報告書には、委員会決定の公表後、TBSテレビ報道局の全員にBPO意見の全文を周知し、報道の基本倫理の再確認と再発防止に向けた職場での議論を求めたとあり、問題の発覚後、編集主幹と所管するセンター長が各出稿部と6つの報道番組とを個別に回って再発防止ミーティングを開催し、計7回約180人と意見交換を行ったことが記されてある。
そして、新たな教育研修として、報道番組と情報番組でニュースを扱うディレクターとアシスタントディレクター向けの、制作会社のスタッフまで広く対象にした「報道基礎講座」を計8回のべ600人を対象に開催し、新年度以降も、新たに配属されたスタッフに同様の取り組みを実施することや、中堅記者やデスクについては取材や出稿を指揮する立場で必要なことは何かを学ぶ研修を充実させていくと述べられている。
また、今年夏をめどに、調査報道など問題提起型の独自取材に取り組む部署を、取材や危機管理態勢を一層強化する形で新設する予定だとしている。
その上で、現行の「TBS報道倫理ガイドライン」の「情報源の明示と秘匿」の項目を改訂し、取材源の秘匿が必要な取材に際しては、撮影開始前に取材協力者と面会して取材目的や放送のリスクなどを丁寧に説明し信頼関係を構築することや、取材対象者の置かれた立場などについて詳しく情報を収集し、どのような措置を講ずれば取材源の秘匿を守りぬくことができるのか、局側の責任で慎重に判断すると共に、場合によっては取材や放送の断念もいとわないこと、放送後に周辺でどのような反応があったのか、取材対象者に聞き取りを継続的に行い、取材対象者が苦しい立場に追い込まれることのないよう留意することとしている。
これを受けて委員からは、改定された「TBS報道倫理ガイドライン」は具体性に富んでおり充実した内容だといった意見や、改革していこうという熱量が感じられ、オープンでフランクな意見交換がなされているという雰囲気が伝わってくるといった意見、研修が拡充され制作会社のスタッフも対象とされている点や、調査報道ユニットを再編して、今後も社会に問題提起する報道を一層進めていくと結ばれている点など、今回意見書で伝えようとしたことをきちんと受け止めた内容だといった意見が出され、報告を了承して公表することにした。
TBSテレビの対応報告は、こちら(PDFファイル)

2. ローカルワイド番組内の特集コーナーについて議論

ローカルワイド番組の特集コーナーで、公園で暮らすホームレス男性を取り上げたところ、ホームレス支援団体などから「男性のプライバシー権や名誉権を侵害している。ホームレスの人々への暴力を助長する」などの抗議があったと当該放送局から報告があり、委員会で議論した。映像には、公園で男性が放尿するシーンや大量のスーツケースを並べている映像を使用。当該放送局は「男性にモザイクをかける配慮をし、プライバシーや名誉権の侵害にはあたらない」としているが、委員からは「ホームレスの社会的問題を取り上げるのに放尿シーンが必要だったのか」「モザイクをかけたとしても、公園には男性以外にホームレスがいないようであり特定されるはずだ」「プライバシーへの理解、SNSへの影響に対する配慮がない」「社会的弱者やマイノリティの人々への配慮が足りないという放送基準の問題はあるのではないか」「取材に応じないから勝手に放送していいのか。もっと丁寧なアクセスが必要」とする意見が出た。一方、「どのシーンを使うかは放送局に判断の余地はある」「排除が全面に出された番組とは一線を画し、インクルージョンの視点は維持されているのではないか」などとする放送の自由への配慮に触れた意見も出て、議論を終えた。

3. 3月に寄せられた視聴者・聴取者意見を報告

3月に寄せられた視聴者・聴取者の意見総数は1,768件(前月2,308件)で、意見数は減少している。芸能事務所における性加害問題や特定のお笑いタレント関連の意見が落ち着いてきたのが主な要因。一方で増えているのが米・ドジャースの大谷翔平選手に関する意見で、“過熱報道”への批判や元通訳の違法賭博疑惑に関連して、大谷選手を擁護する声が目立ったことなどが事務局から報告され、議論した。

以上

第193回

第193回–2024年3月

NHK『ニュースウオッチ9』新型コロナワクチン接種後に亡くなった人の遺族を巡る放送についての意見への対応報告を了承

第193回放送倫理検証委員会は、3月8日に千代田放送会館で開催された。
委員会が2023年12月5日に通知・公表したNHK『ニュースウオッチ9』新型コロナワクチン接種後に亡くなった人の遺族を巡る放送についての意見について、当該放送局から再発防止に関する取り組み状況などの対応報告が書面で提出され、その内容を検討した結果、報告を了承して公表することにした。
関西テレビが2023年11月3日に放送した『ちまたのジョーシキちゃん』の外食チェーン店のランキングを訂正した事案を討議したが、審議入りはせず議事概要に意見を掲載することで終了した。
2月にBPOに寄せられた視聴者・聴取者意見が報告された。

議事の詳細

日時
2024年3月8日(金)午後5時~午後7時35分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、
大石委員、大村委員、長嶋委員、西土委員、毛利委員、米倉委員

1. NHK『ニュースウオッチ9』新型コロナウイルス接種後に亡くなった人の遺族を巡る放送についての意見への対応報告を了承

昨年12月5日に通知・公表したNHK『ニュースウオッチ9』新型コロナワクチン接種後に亡くなった人の遺族を巡る放送についての意見(委員会決定第44号)への対応報告が、当該放送局から委員会に書面で提出された。
報告書には、委員会決定の公表後すぐに、NHKの全役職員にBPO意見の全文を周知し、全国の放送現場で取材・制作に携わる一人ひとりが、再発防止の取り組みを自分事として真摯に受け止め、互いに納得がいくまで議論を尽くす組織へと改善し、視聴者の信頼に応えていくことや、役員・本部部局長などからなる放送倫理委員会を開催し、出席者からは「視聴者の信頼はNHKにとって必要不可欠で、『公共放送人』としての心構えをしっかり浸透させる必要がある」という意見が出たことなどが記されている。また今回の問題では、上司のCL(チーフリード)や編集責任者(編責)がみずからの役割を果たしていなかったことから、上司や編責の権限を明確に定義した。例えば編責は、企画提案の採否やニュースのオーダー、時間配分を決定するだけでなく、すべての項目の取材・制作における品質管理・リスク管理を行うことを明記した。さらにBPOから「ジャーナリズムに関わる感度の底上げが焦眉の課題」と指摘されたことを受け、「公共メディア職員としての使命感、責任感の向上」「新人層から基幹職まで一気通貫した研修カリキュラムの構築」など、成果が一朝一夕に出るものではないという認識の上で「新たなジャーナリズム教育」に取り組むことなどが記されている。
委員からは、これまでと同じような内容が繰り返されている、制作した者と管理する者が1対1で責任を持てば問題は起こっていなかったはずで縦の管理を強化するなどの取組みにどれだけ効果があるのか疑問だという意見もあったが、委員会決定の公表後に取られた措置に対するフィードバックの意見が載っている点を評価する、新しいジャーナリズム教育の実行に注目したい、NHKのニュース報道の質の高さを踏まえれば問題を組織全体の評価につなげることは慎重であるべきだなどの意見が出され、報告を了承して公表することにした。
NHKの対応報告は、こちら(PDFファイル)

2. 関西テレビ『ちまたのジョーシキちゃん』について討議

関西テレビは、ローカルバラエティー番組『ちまたのジョーシキちゃん』(毎週金曜午後7:00~8:00)を制作。2023年11月3日放送のコーナー企画「関西人1万人が選ぶぎょうざがおいしいチェーン店ランキング ベスト10」の中で、大手外食チェーンA社を除外したランキングを放送した。放送後、A社からの指摘を受けて11月24日の番組でお詫びした。
番組は関西での話題や人気施設、有名飲食チェーン店などを取り上げ、ゲストを交えて展開するトークバラエティー番組。おりおりインターネットアンケートの結果をもとにランキングを採用していた。
本放送ではアンケート結果で2位だったA社が除外され、3位以下のチェーン店が繰り上げられ、本来はランク外だった外食チェーンが10位で紹介されていた。
ランキングを捏造したことについて関西テレビは報告書の中で、A社とライバル関係にあった別の大手外食チェーンB社が1位になったことから「同じ番組の同一放送回では同時に取り扱うことができないのではないか」と懸念し、「2位のA社を外すことを、プロデューサーを含む番組全体会議で決定した」旨の説明をしている。
放送後の11月6日、A社からの指摘で社内協議。ランキングのお詫びと訂正をすることを決めたが、A社、B社ともにSNS等による風評被害が出る恐れを懸念しているとして、お詫びは11月24日の番組エンディングロールに直結させた15秒枠で放送。前回放送されたランキングと、A社を2位とした新たなランキングをCGでそれぞれ表示。ナレーションで「ここで関西テレビからお詫びと訂正です。11月3日に放送した『餃子ランキング』の順位に誤りがありました。正しくはこちらです。視聴者ならびに関係者の皆様に訂正し、お詫びいたします」と伝え、ランキングを捏造したことや経緯は一切触れていなかった。(WEBでもお詫び)
関西テレビでは12月8日、第三者委員会である「オンブズ・カンテレ委員会」(2007年の「発掘!あるある大事典Ⅱ」の食品データ改ざん問題を機に設置)を臨時開催。また2024年1月に番組審議会を開いて報告。それぞれの委員からアンケート結果の改ざんについて厳しい意見が寄せられた。

放送倫理検証委員会では2月9日に討議入りを決定。3月8日の討議では、弁護士の委員が委員会規約などを照らして問題点を整理。「本放送が虚偽の疑いがある放送であることは確実」「スポンサーの意向に忖度してアンケートを捏造した行為は放送の自主・自律の根幹を揺るがすという議論になる」との考察を報告した。これまでの委員会では以下のような厳しく指摘する意見が相次いだ。

  • B社に忖度してA社を外したことが問題であるのに、お詫び放送の中でもA社、B社に忖度して経緯を説明しないのは視聴者をばかにしている。
  • 虚偽放送はあきらかで、審議入りか審理入りかのレベルの話だ。悪質性は相当高い。
  • うそのランキングについて視聴者からあまり意見が寄せられていないのは、テレビはこんなもんだと思われているのではないか。
  • 外食産業という消費者、ファミリー層に影響のあることを取り上げているのだから、餃子のランキングにすぎないという問題ではないはずだ。
  • 仮に番組制作に営業がかんでいるとするならば、大きな問題ではないか。
  • 関西テレビはオンブズ・カンテレの存在に甘えている。番組としての自主・自律がない。

ただ一方で、アンケート捏造が構造的、恒常的に行われていた事案とは見受けられないことや、オンブズ・カンテレや番組審議会での厳しい意見を受けて、関西テレビが再発防止に向けた取り組みをしていることから、討議を終了し審議入りは見送った。

3. 2月に寄せられた視聴者・聴取者意見を報告

報道番組で芸能事務所創業者から性加害を受けたことを実名告白し、翌月自殺した男性の妻に対するインタビューが放送され、男性が「SNS上で誹謗中傷されたことを苦にしていた」という内容が含まれていたが、誹謗中傷が芸能事務所に所属していたタレントのファンによるものだとは断定されていなかった。ところがテレビ局が同ファンを犯罪者のように扱っているという意見が多数寄せられた。またバラエティー番組が「関西人がイライラする瞬間」というテーマを取り上げ、出演者が「病院から処方箋をもらって薬局に行くと、薬剤師から医師と同じ質問を何度も繰り返しきかれる」「薬剤師には医者への憧れのようなものがある」と発言したことについて、「職業差別だ」「薬剤師を侮辱している」「収録番組であるのにテレビ局はチェックせずに放送した」などと批判する意見が多数届いたことなどが事務局から報告され、議論した。

以上

2024年1月26日

関西ラジオ局意見交換会を開催

放送倫理検証委員会は2024年1月26日、関西に拠点を置くラジオ局との意見交換会をMBS本社で開催、12局31人が参加した。委員会からは小町谷育子委員長、岸本葉子委員長代行、井桁大介委員、大石裕委員、長嶋甲兵委員、毛利透委員の6人が出席した。ラジオ局との意見交換会は2023年3月の東海地区に続く2回目。

開会にあたり小町谷委員長は、近年、ラジオの放送内容を問題視する聴取者意見が連続していることに触れ「現場で起きている問題を共有し、放送倫理を一緒に考えていきたい」と話した。自由で寛容なメディアであるラジオで今、何が起きているのか。委員会が抱いた危機感を共有し、ラジオ現場の声に耳をかたむけていきたいという意見交換会の目的を説明した。

ゲストの問題発言の対応「過激トークとの向き合い方」

まずは、ゲストから問題発言が出た時にどう対応していくのか。実際の放送事例をもとに問題点の整理や質疑へ。報告者はMBSラジオ。ニュース解説の中で、北朝鮮ミサイル実験に対する日本の対応について、ゲスト評論家が朝鮮学校の存在をからめた発言をし、関西の人権団体から抗議をうけた。その後、番組内で「朝鮮学校の児童、生徒に対して、配慮の足りない表現がありました」というお詫びコメントを放送。加えて、朝鮮学校の授業を見学するなどして理解を深めていったことを報告した。MBSラジオの番組審議会からは「マスメディアはいったんマイノリティの側にたって考える姿勢が重要」との指摘をうけ、報告者は「現在の朝鮮学校や民族教育に関する知見や知識について、在阪メディアとして決定的に不足していた」との認識を示し「スタッフ、出演者それぞれが感度を高めていくことを一歩ずつ積み重ねるしかない」と総括した。
委員から放送時のアナウンサーの対応への疑問が呈されたところ、参加者から「問題発言があっても、大物ゲストだとアナウンサーの立場は弱い。(発言を)いさめたあと関係がギスギスする。番組の今後のことを考えてしまう」といった現場からの悩みも伝えられた。岸本委員長代行は「年長の人、感度のいい人をつけておいて、アナウンサー任せにしない」といった組織的な対応についての提案がなされた。

あらためて政治的公平性を問いかける「ラジオの現場から」

続いての報告はラジオ大阪で、2023年1月に放送された番組「大阪を前へ!」「兵庫を前へ!」について。内容は特定の政党の議員や立候補予定者をゲストに招き、本人のプロフィールや活動の紹介、友人や支援者による人柄紹介といったもので、一定のフォーマットに沿った15分と30分の番組が計15本放送され、特定政党の議員、関係者計18人が出演した。会場では初回1月12日の放送(6分)が流された。放送後にBPOに視聴者意見として「特定政党のPR番組を一般の番組と同じ扱いで放送することは問題だ」といった内容が寄せられ、BPOは「政治的公平性についての認識に問題がある」として討議入りを決めた。
このテーマについて弁護士の井桁委員が個人的な意見も交えて、法的・放送倫理的な問題点をレクチャー。冒頭「(この放送が)車の中で流れたらちょっとびっくりするだろうなと思った」と最初に放送を聞いた時の衝撃を語り、「政治的公平性」と「事前運動」の二つの側面からの問題点を指摘していった。まず事前運動については公職選挙法の規律をもとにし、「公示日(告示日)から〇日/〇ヵ月前ならセーフ」といった限定はない」との前提を示し、公示日(告示日)が近づくほど事前運動の可能性が高まっていくと話した。ただし、「選挙に関して放送設備を使うのは、政見放送と経歴放送以外は禁止」として、公選法が放送局に対して「選挙と距離をおくよう厳しく規制している」と言明。こうしたことを踏まえたうえで今回の放送は「事前運動の対象となるような放送だった」と指摘した。
一方、政治的公平性については「量的公平性」ではなく「質的公平性」の重要性を強調。少数意見の尊重、潜在する社会問題の発掘やアジェンダの提示があれば質的公平性は担保されると説明した。加えて「選挙報道で決して委縮してほしくない。みなさまにはアジェンダ設定という重要な役割がある」ことを強調した。

参加者からは、議員がDJの番組や立候補予定者になり得るゲスト出演についての報告があり、小町谷委員長は「いろんな視点を提示しているかどうかが重要になる」と答えた。一方、大石委員はラジオでは「セグメント化(集団)したターゲットを絞った、ある種の甘えがある」と指摘。「特定の視聴者が聴いてくれればいい」という姿勢とは一線を画して「信頼性を獲得し続けてほしい」と話した。

これからも、ともに悩み考える機会を

最後にBPO神田真介事務局長が「BPOではいろんな角度から議論し、悩みながら模索している。これからも現場のみなさんとこういう形で悩みを共有しながら、何ができるだろうか、どうすればいいだろうってことを考える機会を設けていきたい」と結んだ。

以上

第192回

第192回–2024年2月

関西テレビ『ちまたのジョーシキちゃん』を討議

第192回放送倫理検証委員会は、2月9日に千代田放送会館で開催された。
1月に大阪市で実施した関西地区ラジオ局意見交換会の模様などが、参加した委員から報告された。
次に1月にBPOに寄せられた視聴者・聴取者意見が報告された。
最後に自主報告された関西テレビのバラエティー番組の内容について議論され、討議入りして引き続き対応を検討することになった。

議事の詳細

日時
2024年2月9日(金)午後5時~午後7時15分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、
大石委員、大村委員、長嶋委員、西土委員、毛利委員、米倉委員

1. 関西地区ラジオ局との意見交換会の報告

1月26日に大阪市北区のMBSを会場に意見交換会を開催し、関西地区(大阪、兵庫、京都、滋賀、和歌山)のラジオ局12局から31人が参加した。
出席した委員からは「和やかな雰囲気の中で率直な意見が聞けた」「実際に放送素材を聴いて、みんなで話そうという機運が盛り上がった」という感想や「クライアントが強く出てきた時に、具体的にどうしようかという悩みを抱えている放送局がいくつかあることを知った」といった報告などがあった。
意見交換会の詳細はこちら

2. 1月に寄せられた視聴者・聴取者意見を報告

ドラマの脚本をめぐり制作側と見解の違いが生じていたことを明かしたあと自殺したことを受けて、視聴者からさまざまな意見が多数寄せられたことが報告され、議論した。この他、バラエティー番組で沖縄出身のタレントに対して模擬記者会見を行い、方言を使ったら負けというゲームをしたことについて、視聴者からかつて沖縄で行われた、方言を禁止し標準語を話すように教育した同化政策を想起させる、という意見が寄せられたことなどが報告された。

3. 関西テレビ『ちまたのジョーシキちゃん』を討議

関西テレビが2023年11月3日に放送したバラエティー番組『ちまたのジョーシキちゃん』の中で、関西人1万人が選ぶ(ある食品の)おいしい外食チェーン店のランキングを発表した際に、外食チェーン店1店の名前を除外していたことが分かり、11月24日の同番組内で訂正をした。当該放送局からはアンケート結果の順位を変えた経緯や再発防止への取り組みなどについての報告書や、番組審議会で厳しい意見を受けた議事録などが提出された。これを受けて委員会では「根本的なところで視聴者に向き合う、もしくは放送倫理に向き合うことから逃げているのでは」などの当該放送局の対応に疑念を抱く意見が出され、討議入りして問題点を整理した上、議論を継続していくことを決めた。

以上

2024年1月11日

TBSテレビ『news23』「JA自爆営業」調査報道に関する意見の通知・公表

上記委員会決定の通知は1月11日午後2時からBPOで行われた。委員会からは小町谷委員長、西土委員、高田委員長代行の3人が出席。TBSテレビからは報道局担当取締役ら4人が出席した。委員からは、内部告発者に寄りかかった安易な取材が行われていたこと、内部告発者が使わないでほしいと頼んだ映像を放送してしまったこと、編集作業の場に担当ディレクター以外の第三者がおらず放送前のプレビューも有効に機能していなかったこと、経験が浅くチームで唯一番組制作会社の所属だった担当ディレクターには細やかな指示や気遣いが必要だったのではないか、といった指摘があった。これを受けてTBSテレビの報道局担当取締役から「今回の事態は痛恨の失敗だと真摯に受け止めている。再発防止策を精査し更にアップデートして取り組んでいきたい。今後、強く正確な調査報道をしていくことで失われた視聴者の信頼を取り戻したい」という発言があった。

その後、午後3時から記者会見を開き委員会決定を公表した。会見には30社から47人が参加した。はじめに小町谷委員長が意見書のポイントを説明した。その中で、内部告発者の保護は放送局の責任において行われるべきもので、十分な時間をとって内部告発者の置かれた状況を把握し、身元がばれないよう対策を講じなければならないが、今回の場合、内部告発者の同意に依存して映像の見た目を優先した形で取材が進められており、内部告発者に寄りかかった安易な取材姿勢だったと考えていると述べた。次に、内部告発者が使用を控えてほしいと頼んだ映像を、約束を失念して放送してしまっており、情報源の秘匿を第一に考えていれば起こりえない失策を犯していたと指摘した。さらに、取材を担当したディレクターがひとりで映像編集を行ったため、事前の映像チェックが十分ではなく、放送前の最後の砦としてのプレビューも十分機能していなかったことを問題視した。最後に、担当ディレクターが報道での取材経験がほとんどなく、また、チームで唯一番組制作会社所属のメンバーだったことについて、引け目を感じなくて済むように細やかな指示や気遣いをしていれば、今回のような、結果にこだわり焦るあまり配慮を欠くような事態を避けることができたのではないかと述べた。

続いて西土委員が「内部告発者の言質に寄りかかる取材は、放送局の責任の所在を曖昧にする点で大きな問題をはらんでいる」と指摘した。そして「場合によっては、放送局が内部告発者に責任を転嫁するようなことになりかねない。この点において、今回の放送は、放送全般に対する国民の信頼を危うくする危険性があったのではないか」と述べた。高田委員長代行は「内部告発しようと思っていた人たちに、二の足を踏ませてしまったのではないかという点で、放送局にとって痛恨の失敗だった。不正や不祥事が噴出している今ほど調査報道が必要とされている時代はない。当該局のみならず放送業界全体で、今回の失敗から教訓を得てより素晴らしい報道を続けてもらいたい」と述べた。

このあとの質疑応答では、「内部告発者の身元がばれたことを問題としたのではなく、身元がばれたと強く疑われる状況を招いたことを問題視しているのか」という質問が出た。これに対して「公共の電波に乗せて伝える以上、身元がばれてしまった極めて高い可能性が生じた時点で、放送倫理上の問題が生じると考える」と答えた。「当該番組を放送した後、内部告発者から身元がばれそうだと連絡があった際、担当ディレクターの様子はどうだったのか」という質問に対しては、「担当ディレクターは、放送後も内部告発者とはコンタクトが取れていたので、とんでもないことが起きてしまったという程の重要性を感じていなかったようだ」と答えた。

以上

第191回

第191回–2024年1月

TBSテレビ『news23』委員会決定の通知・公表について報告

第191回放送倫理検証委員会は、1月12日に千代田放送会館で開催された。
委員会が1月11日に公表した、委員会決定第45号TBSテレビ『news23』「JA自爆営業」調査報道に関する意見について、担当委員から当日の様子などが報告された。
12月にBPOに寄せられた視聴者・聴取者意見が報告された。
関西地区ラジオ局との意見交換会開催の進捗状況が報告された。

議事の詳細

日時
2024年1月12日(金)午後5時~午後6時40分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、
大石委員、大村委員、長嶋委員、西土委員、毛利委員、米倉委員

1. TBSテレビ『news23』「JA自爆営業」調査報道に関する意見の通知・公表について報告

TBSテレビは、2023年1月『news23』の中の「調査報道23時」において、農業協同組合(JA)で、共済営業の過大なノルマ達成の為に、職員やその家族が不必要な契約を結ぶいわゆる“自爆営業”が横行していると、顔をぼかし声を変えた職員の証言をベースに報じた。放送後BPOに、この職員と会ったことがあるという視聴者から、放送を見て取材に応じているのが誰であるかをすぐ特定できたという声が寄せられた。委員会は、取材源の秘匿という報道の原則が損なわれた疑いがあり、取材から放送に至る経緯等について詳しく検証する必要があるとして、同年8月に審議入りを決めた。
委員会で関係者へのヒアリングや資料の精査を進めた結果、以下の点が明らかになった。まず、本放送の取材は、内部告発者の同意に依存して映像の見た目を優先した形で進められており、内部告発者の状況や真意をくみ取った取材とは言い難く、情報源の秘匿すなわち内部告発者とは十分な時間を取って信頼関係を築き、彼らが置かれた状況を正確に把握したうえで、身元が特定されないための対策を講じるという本来放送局が負うべき責任を軽んじた対応であったことが判明した。また、内部告発者が使用を控えてほしいと頼んだ映像を、約束を失念して放送してしまっており、情報源の秘匿を第一に考えていれば起こりえない失策を犯していたことも分かった。更に、取材を担当したディレクターがひとりで映像編集も行ったため、事前の映像チェックが十分ではなく、最後の砦としてのプレビューが機能していなかったことも明らかになった。
委員会はこれらの点などが問題であると指摘し、取材源の秘匿が厳守できていなかったとして、本放送は日本民間放送連盟報道指針の「2 報道姿勢」の(4)「情報の提供者を保護するなどの目的で情報源を秘匿しなければならない場合、これを貫くことは放送人の基本的倫理である」に反するものであり、放送倫理違反があったと判断した。2024年1月11日、委員会は当該放送局に委員会決定を通知し、引き続き記者会見を開いて意見書を公表した。
この日の委員会では、委員会決定を伝えたTBSテレビ『news23』の録画を視聴し、委員長と担当委員が通知・公表時の様子について報告した。
通知と公表の概要は、こちら

2. 12月に寄せられた視聴者・聴取者意見を報告

12月に寄せられた視聴者・聴取者意見は1834件で通常ベースの数値となった。そのうち、性加害問題のあった芸能事務所に所属していたアイドルグループが出演した音楽番組での扱いについて批判が集中したことなどが事務局から報告された。

3. 関西地区ラジオ局との意見交換会の開催について

「関西地区ラジオ局意見交換会」に関して、事務局から事前アンケートの集計結果が報告され、当日の進行などについて話し合われた。

以上

第45号

TBSテレビ『news23』「JA自爆営業」調査報道に関する意見

2024年1月11日 放送局:TBSテレビ

TBSテレビは、2023年1月『news23』の中の「調査報道23時」において、農業協同組合(JA)で、共済営業の過大なノルマ達成の為に、職員やその家族が不必要な契約を結ぶいわゆる“自爆営業”が横行していると、顔をぼかし声を変えた職員の証言をベースに報じた。放送後BPOに、この職員と会ったことがあるという視聴者から、放送を見て取材に応じているのが誰であるかをすぐ特定できたという声が寄せられた。委員会は、取材源の秘匿という報道の原則が損なわれた疑いがあり、取材から放送に至る経緯等について詳しく検証する必要があるとして、同年8月に審議入りを決めた。
委員会で関係者へのヒアリングや資料の精査を進めた結果、以下の点が明らかになった。まず、本放送の取材は、内部告発者の同意に依存して映像の見た目を優先した形で進められており、内部告発者の状況や真意をくみ取った取材とは言い難く、情報源の秘匿という本来放送局が負うべき責任を軽んじた対応であったことが判明した。また、内部告発者が使用を控えてほしいと頼んだ映像を、約束を失念して放送してしまっており、情報源の秘匿を第一に考えていれば起こりえない失策を犯していたことも分かった。更に、取材を担当したディレクターがひとりで映像編集も行ったため、事前の映像チェックが十分ではなく、最後の砦としてのプレビューが機能していなかったことも明らかになった。
委員会は、これらの点などを問題点として認定し、取材源の秘匿が厳守できていなかったとして、本放送は、日本民間放送連盟報道指針の「2 報道姿勢」の(4)に反するものであり、放送倫理違反があったと判断した。

2024年1月11日 第45号委員会決定

全文はこちら(PDF)pdf

目 次

2024年1月11日 決定の通知と公表

通知は、2024年1月11日午後2時から、BPO第1会議室で行われ、
午後3時から千代田放送会館2階ホールで公表の記者会見が行われた。
記者会見には30社47人が出席した。詳細はこちら。

2024年4月12日【委員会決定に対するTBSテレビの対応と取り組み】

委員会決定 第45号に対して、当該のTBSテレビから対応と取り組みをまとめた報告書が2024年4月3日付で提出され、委員会はこれを了承した。

TBSの対応

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目 次

  • 1) 委員会決定についての放送
  • 2) 報道現場への周知
  • 3) 放送倫理委員会、番組審議会、「放送と人権」特別委員会での取り組み
  • 4) BPO 委員を招いての勉強会
  • 5) 再発防止に向けて
  • 6) 終わりに


2023年12月5日

NHK『ニュースウオッチ9』 新型コロナワクチン接種後に亡くなった人の遺族を巡る放送についての意見の通知・公表

上記委員会決定の通知は、12月5日午後2時から千代田放送会館7階のBPO第1会議室で行われた。委員会からは小町谷委員長、米倉委員、大村委員の3人が出席し、NHKからは報道局長ら3人が出席した。
まず小町谷委員長から委員会決定について説明し、本件放送には放送倫理違反があると判断したことを伝えた。続いて担当委員から、インタビューで話しているのがワクチン接種後に亡くなった人の遺族なのに、コロナ感染で亡くなった人の遺族であるように受け取られる放送だったことや、取材相手に意図を明確に説明し十分な了解をもらい、そのうえで取材するという当たり前のことができていなかったこと等について指摘があった。これに対してNHKの報道局長が「ご指摘いただいたことを、報道局長として非常に重く受け止めている。取材・制作のあらゆる段階で真実に迫ろうとする基本的な姿勢を再確認し、ジャーナリズム教育の徹底など現在進めている再発防止策を着実に実行したい」と述べた。

その後、午後3時から千代田放送会館2階ホールで記者会見を開き、決定内容を公表した。記者会見には28社42人が参加した。
はじめに小町谷委員長が、意見書のポイントとして4つの問題を挙げた。1番目は、取材のやり方に基本的な問題があり、その具体例として、遺族への説明が不十分で、ワクチンの問題を取り上げないという考えが遺族に対して事前に説明されることがなかったこと。2番目は、VTR制作の担当者が、コロナを巡る取材経験が必ずしも十分ではないのに、周囲からの十分なサポートを受けていなかったこと。3番目は、内部のチェック機能が働かず、提案票に「ワクチン」という言葉が書いてあったにもかかわらず、これを認識していたスタッフがほとんどいなかったこと。4番目は、大切な家族を亡くした遺族3人の声を短く切り取って合計24秒で伝えるという編集の仕方が、「人の死」を巡る情報の扱い方としてあまりに「軽かった」のではないかという指摘だった。
続いて米倉委員が「結果論になるかもしれないが、ご遺族の方々をいわば、だますような形で放送が出てしまった」と指摘した。そのうえで、NHKの中で「徹底して議論し考えるという雰囲気のようなものが、もしかしたら欠如してはいなかったか」などと述べた。大村委員からは、小町谷委員長と米倉委員の発言を補足する形で、ジャーナリズムを担う者として備えるべき現実社会への知識、関心、そして問題意識の低下という事態が進行してはいないだろうかという危惧が述べられた。このあと、以下のような質疑応答があった。

〇質問・委員会は、NHK内のサポートに関することを最も重要な問題であると
    考えているのか。
 回答・取材者の経験が必ずしも十分でなかったのであれば、そのサポートが
    十分だったかを調べることになる。それも不十分だったとなれば、
    かなり重要視することになる。

〇質問・VTR制作の担当者と遺族の間で認識が食い違っていることを、委員会は
    どのように捉えたのか。
 回答・放送倫理の観点からすれば、やはり取材者側に十分な説明責任がある
    ということになる。

記者会見は約1時間15分で終了した。

以上

第190回

第190回–2023年12月

NHK『ニュースウオッチ9』委員会決定の通知・公表について報告

第190回放送倫理検証委員会は、12月8日に千代田放送会館で開催された。
委員会が12月5日に公表した、委員会決定第44号NHK『ニュースウオッチ9』新型コロナワクチン接種後に亡くなった人の遺族を巡る放送についての意見に関して、担当委員から当日の様子などが報告された。
TBSテレビが11月5日に放送した『サンデーモーニング』の生成AIの特集コーナーについて、当該放送局から提出された報告書を基に討議したが、審議入りはせず議事概要に意見を掲載することで終了した。
11月にBPOに寄せられた視聴者・聴取者意見等が報告された。
関西地区ラジオ局との意見交換会開催の進捗状況が報告された。

議事の詳細

日時
2023年12月8日(金)午後5時~午後7時
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、
大石委員、大村委員、長嶋委員、西土委員、毛利委員、米倉委員

1. NHK『ニュースウオッチ9』新型コロナワクチン接種後に亡くなった人の遺族を巡る放送についての意見の通知・公表について報告

NHKは2023年5月、『ニュースウオッチ9』の中で「新型コロナ5類移行から1週間・戻りつつある日常 それぞれの思い」という1分5秒のVTRを放送した。3人の遺族のインタビューが含まれており、そこには「父を亡くした〇〇さん」などのテロップが付けられていた。前後の脈絡などから3人は、家族が新型コロナウイルスに感染して亡くなった遺族であると受け取るのが自然な映像だったが、実際には、ワクチン接種後に亡くなった人の遺族であった。委員会は、ワクチン接種による被害を訴える遺族を、新型コロナウイルス感染によって亡くなった人の遺族と誤認させるような放送が、なぜ、どのようにしてなされたのか検証する必要があるとして、同年6月の委員会で審議入りを決めた。審議を経て、次のような事実を認めた。①VTR制作担当者は、ワクチン接種後に亡くなった人の遺族であると認識しながら、その旨を明示せずに放送に臨んだことについて、コロナウイルスに感染して亡くなった人と、ワクチン接種後に亡くなった人を、広い意味でのコロナ禍で亡くなった人に変わりないと考えたと述べ、直属の上司も同様の認識を示した。②制作担当者はインタビュー取材の相手である遺族に対し、ワクチンの問題を放送で扱わないという自分の意図を明確に説明せず、取材者としての基本を実践していなかった。③この担当者が取材経験などの面で十分ではないにもかかわらず、組織内で十分なサポートを受けることがなかった。④放送前に行われた試写においても適切なチェックがなされなかった。以上のことから委員会は、放送が放送倫理基本綱領やNHKの放送ガイドラインに反しているとし、放送倫理違反があったと判断した。
委員会は12月5日、当該放送局に委員会決定を通知し、引き続き記者会見を開いて意見書を公表した。この日の委員会では、委員会決定を伝えたNHKの『ニュースウオッチ9』の録画を視聴し、委員長と担当委員が通知・公表時の様子について報告した。
通知と公表の概要は、こちら

2. TBSテレビ『サンデーモーニング』について討議

TBSテレビは2023年11月5日に、報道番組『サンデーモーニング』内で「生成AI」をテーマにしたコーナーを放送した。その中でイスラエル・ハマス戦争に関係する画像計5枚について、「生成AIでつくられたフェイク画像」と断定できる根拠がないにもかかわらず、断定して放送した。その後、番組ホームページや翌週の当該番組でおわびと訂正をした。
委員会は当該放送局に報告書と番組DVDの提出を求め、討議を行った。報告書によれば、ハマス幹部に関する4枚の画像については、インターネット上に画像が出回った時期からして、実際にあったシーンを撮影した本物の画像である可能性が高いことが分かったという。そもそもこのコーナーは、まん延する生成AIによる創作物やフェイク画像の扱いについて警鐘を鳴らす目的で制作されており、まさにその中で、生成AIに関する誤った情報を放送し、視聴者の信頼を損ねてしまったことを重く受け止めているという。
ミスを起こした大きな原因は、放送内容をチェックする立場にあるプロデューサー陣の管理態勢に問題があり、また担当ディレクターも放送内容の事実確認に関する基本認識に欠けた部分があったほか、プロデューサー陣、担当ディレクターともに、生成AIやフェイク画像に関する認識が不十分だったからだという。当該番組の再発防止策として、事前プレビュー・チェックの強化や画像ファクトチェックの強化等をする。また報道局全体の再発防止策として、フェイク情報共有システムを新設し、ニュースに関連するフェイク情報や画像を発見した場合、系列各局で即座に情報を共有できるようにする等が打ち出されている。さらに当該放送局の放送倫理委員会で議論をして、全社的にも問題点の周知・徹底を図ることが報告書に記載されている。
委員会は、誤った情報を放送するにあたって事実確認が不十分であった点で放送倫理違反の疑いはあるものの、当該放送局の調査が詳細になされており、さらに踏み込んだ調査の必要性に乏しいこと、生成AIやフェイク画像を含むファクトチェックに関する再発防止策が速やかに取られており、経過を見守ることが望ましいと考え、討議を終了し、審議入りはしないこととした。もっとも、生成AI画像の問題は、他局にも同様の課題を突き付けていると考えられ、警鐘を鳴らすという意味において、委員からの意見を議事概要に掲載することとした。

【委員の主な意見】

  • 基本的なチェックが行われずに事実と違うことを放送した点で、放送倫理違反があったと言える。
  • 放送では、プロパガンダと生成AIの話が交錯しているが、おわび放送で生成AIのフェイク画像が誤りであることについては触れているものの、写真自体がフェイクであったのかについては説明がない。プロパガンダという面からみると、視聴者に対しては写真自体がフェイクかどうかについても説明すべきだったのではないか。
  • VTRが非常に分かりにくい。生成AIのフェイク画像であることを専門家が説明しているが、この画像がどのような状況で使われたか、なぜ取り上げているのかについての説明がない。
  • 単に事実確認の基本を怠っているだけであり、生成AIのような新しいものが出てきたから事実確認のハードルが上がった、というような事案ではないのではないか。
  • ローマ法王がトランプ(前米大統領)を支持しているというフェイクニュースを例に取れば分かるとおり、フェイクニュースは、それを作った人の意図と流通させている人の意図がまったく違う可能性が多い。当該放送局がどこまでこれを認識していたかは分からないが、フェイクニュースの問題は単純に捉えない方が良い。
  • 現実のニュース報道においても、生成AIによるフェイク画像が潜んでいる可能性がないとは言えない。これを全て検証する術があるのだろうか。SNSをリソースとしてはならない、という厳しい規制になりかねない。
  • 生成AI画像問題を取り上げるコーナーにおいて、フェイク画像にだまされたのではなく、本物である可能性が高い画像をフェイク画像と断定したのは、事実確認が甘すぎる。
  • 放送前に、画像分析ツールや複数の分析会社を利用すれば防げたのではないか。
  • 生成AIの技術はどんどん進化していくので、放送局に対してしっかりと確認するように伝えたとしても、現在の技術状況では確認に限界があり、一罰百戒にならないか。今後放送局が「これはフェイク画像だ」と言えなくなってしまう恐れがあると思う。
  • フェイク情報共有システムの構築などは、他の放送局にとっても参考になると思う。

3. 11月に寄せられた視聴者・聴取者意見を報告

11月に寄せられた視聴者・聴取者の意見の総数は約2500件で10月から半減した。主な要因は芸能事務所関連の意見が大幅に減少したこと。一方で、BPOに対する意見が90件と急増。「検証番組が不十分」「第三者に調査させよ」といった内容で、事務局からは「NHK、民放キー局の検証番組が出そろったことで検証内容についての意見がBPOに寄せられている」などの報告があった。

4. 関西地区ラジオ局との意見交換会の開催について報告

2024年1月26日に開催予定の「関西地区ラジオ局意見交換会」に関して、日程、会場および議題となるテーマ「政治的公平性」「パーソナリティー発言への対応」などの報告が事務局からあった。

以上

第44号

NHK『ニュースウオッチ9』新型コロナワクチン接種後に亡くなった人の遺族を巡る放送についての意見

2023年12月5日 放送局:NHK

NHKは2023年5月、『ニュースウオッチ9』の中で「新型コロナ5類移行から1週間・戻りつつある日常 それぞれの思い」という1分5秒のVTRを放送した。3人の遺族のインタビューが含まれており、そこには「父を亡くした〇〇さん」などのテロップがつけられていた。前後の脈絡などから3人は、家族が新型コロナウイルスに感染して亡くなった遺族であると受け取るのが自然な映像だった。しかし実際には、3人は、ワクチン接種後に亡くなった人の遺族であった。
委員会は、ワクチン接種による被害を訴える遺族を、新型コロナウイルス感染によって亡くなった人の遺族と誤認させるような放送が、なぜ、どのようにしてなされたのか検証する必要があるとして、同年6月の委員会で審議入りを決めた。関係者のヒアリングや議論を重ね、次のような事実を認めた。①VTR制作担当者と直属の上司は、コロナウイルスに感染して亡くなった人と、ワクチン接種後に亡くなった人を、広い意味で、コロナ禍で亡くなった人にかわりないという不適切な認識をして放送に臨んだ。②この担当者はインタビュー取材の相手である遺族に対し、ワクチンの問題を放送で扱わないという自分の意図を明確に説明せず、取材者としての基本を実践していなかった。③この担当者が取材経験などの面で十分とはいえないにもかかわらず、組織内で十分なサポートを受けていなかった。④放送前に行われた試写において、適切なチェックがなされなかった。
以上のことから委員会は、放送が放送倫理基本綱領やNHKの放送ガイドラインに反しているとし、放送倫理違反があったと判断した。

2023年12月5日 第44号委員会決定

全文はこちら(PDF)pdf

目 次

2023年12月5日 決定の通知と公表

通知は、2023年12月5日午後2時から、BPO第1会議室で行われ、
午後3時から千代田放送会館2階ホールで公表の記者会見が行われた。
記者会見には28社42人が出席した。詳細はこちら。

2024年3月8日【委員会決定に対するNHKの対応と取り組み】

委員会決定 第44号に対して、当該のNHKから対応と取り組みをまとめた報告書が2024年3月4日付で提出され、委員会はこれを了承した。

NHKの対応

全文pdf

目 次

  • 1) 委員会決定の放送対応
  • 2) 放送現場への周知
  • 3) 経営委員会・放送番組審議会への報告
  • 4) 放送倫理委員会の開催
  • 5) コンテンツ品質管理連絡会の実施
  • 6) BPO 放送倫理検証委員会との研修会
  • 7) 再発防止に向けて

第189回

第189回–2023年11月

NHK『ニュースウオッチ9』とTBSテレビ『news23』
委員会決定を通知・公表へ

第189回放送倫理検証委員会は、11月10日に千代田放送会館で開催された。
6月の委員会で審議入りしたNHKの『ニュースウオッチ9』について、担当委員から意見書の再修正案が報告され意見交換した結果、合意が得られたため、今後当該放送局へ通知して公表することになった。
8月の委員会で審議入りしたTBSテレビの報道番組『news23』について、担当委員から意見書の修正案が提出された。意見交換の結果、合意が得られたため、今後当該放送局へ通知して公表することになった。
10月にBPOに寄せられた視聴者・聴取者意見等が報告された。
関西地区ラジオ局との意見交換会を開催することを決めた。

議事の詳細

日時
2023年11月10日(金)午後5時~午後7時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、大石委員、大村委員、長嶋委員、西土委員、毛利委員、米倉委員

1. NHK『ニュースウオッチ9』について審議

ワクチン接種後に亡くなった人の遺族を、新型コロナウイルスに感染して亡くなった人の遺族と受け取られるような伝え方をし、放送倫理違反の疑いがあるとして6月の委員会で審議入りしたNHK『ニュースウオッチ9』(5月15日放送)について引き続き審議が行われた。
今回の委員会では、意見書の再修正案が担当委員から報告された。これについて意見が交わされた結果、合意が得られたため、表現などについて一部手直しの上、今後しかるべき時期に当該放送局に対して通知し、記者会見を開いて公表することになった。

2.TBSテレビ『news23』について審議

TBSテレビは1月12日、報道番組『news 23』の調査報道23時のコーナーにおいて、農業協同組合(JA)で職員が共済営業の過大なノルマを課され、ノルマ達成の為に職員やその家族が不必要な契約を結ぶ、いわゆる“自爆営業”が横行していると報じた。放送後、身元を隠す措置が不十分だったため、A地方のJAに勤める男性は職場で身元がばれて居づらくなり、退職に追い込まれたとの週刊誌報道があった。また、取材を受けた職員とは3回程度会話をしたことがあるという人から「放送を見て誰であるかを私ですら特定できた。彼は農協の問題を告発し多くの職員の声を代弁してくれた。退職になりとても残念だ。テレビ局の取材対象に対する不誠実な姿勢を問題にしてもらいたい」といった声がBPOへ寄せられた。委員会は、報道の取材源の秘匿という原則が損なわれるという放送倫理違反の疑いがあり、取材から放送に至る経緯等について詳しく検証する必要があるとして8月の委員会で審議入りを決め、9月の委員会で担当委員から当該放送局の関係者に行ったヒアリングの結果を基に議論し、10月の委員会では担当委員から提出された意見書案について議論した。
今回の委員会においては、担当委員から示された意見書の修正案について意見交換した結果、合意が得られたため、表現などについて一部手直しの上、当該放送局へ通知して公表することになった。

3.10月に寄せられた視聴者・聴取者意見を報告

10月に寄せられた視聴者・聴取者の意見総数は5千件を上回り、月間の意見数としては記録が残っている中で最も多かった。そのうち芸能事務所創業者による性加害問題について、東京キー局が相次いで検証番組を放送したことに関する意見が数多く寄せられたことや、芸能事務所側が記者会見を開いた際に、個々の記者に関する「NGリスト」が存在していたという報道に関する意見が多数寄せられたことなどが事務局から報告され、議論した。

4.関西地区ラジオ局との意見交換会の企画について

2024年1月26日(金)に放送倫理検証委員会と関西地区のラジオ13局との「意見交換会」を開催することを決めた。テーマは「政治的公平性」や「パーソナリティの発言対応」など。現場からの報告のほか、各局が日々直面している課題や悩みを共有していく場とする。

以上

第188回

第188回–2023年10月

TBSテレビ『news23』について審議

第188回放送倫理検証委員会は、10月13日に千代田放送会館で開催された。
ワクチンを接種後に亡くなった人の遺族の訴えを、新型コロナウイルスに感染して亡くなったと受け取られるように伝え、適切ではなかったと謝罪し、6月の委員会で審議入りしたNHKの『ニュースウオッチ9』について、今回の委員会では、担当委員から意見書の修正案が報告され議論した結果、次回の委員会までに再修正案を作成することになった。
1月12日放送のTBSテレビの報道番組『news23』において、農業協同組合(JA)で職員が共済営業の過大なノルマを課され、職員やその家族が不必要な契約を結ぶ“自爆営業”が横行していると報じた。放送後、身元を隠す措置が不十分だったため、内部告発した職員が退職に追い込まれたとの週刊誌報道やテレビ局の取材対象に対する不誠実な姿勢が問題だという視聴者の声がBPOへ寄せられ、委員会は、取材源の秘匿という原則が損なわれるという放送倫理違反の疑いがあり、8月の委員会で審議入りを決めた。今回の委員会では、担当委員から意見書の原案が提出され議論した結果、次回の委員会までに修正案を作成することになった。
統一地方選挙を前に公認立候補予定者が出演したラジオ大阪の番組『大阪を前へ!』等について、政治的な公平性の観点から問題はないか等を判断するために7月の委員会で討議入りした。今回の委員会では、当該放送局から番組審議会の指摘を受けて作成された報告書が提出され議論したが、一連の取り組みについて自律的な自浄作用が機能していることを評価して、討議を終了した。
9月にBPOに寄せられた視聴者・聴取者意見等が報告された。

議事の詳細

日時
2023年10月13日(金)午後5時~午後8時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室千代田放送会館7階)
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、大石委員、大村委員、長嶋委員、西土委員、毛利委員、米倉委員

1. NHK『ニュースウオッチ9』について審議

ワクチン接種後に亡くなった人の遺族を、新型コロナウイルスに感染して亡くなった人の遺族と受け取られるような伝え方をし、放送倫理違反の疑いがあるとして6月の委員会で審議入りしたNHK『ニュースウオッチ9』(5月15日放送)について引き続き審議が行われた。
前回の委員会では、担当委員から提出された意見書の原案に対し、詳細な指摘と意見が出された。今回の委員会では、それ以降に実施された関係者数名のヒアリングの内容等を総合的に検討して反映された意見書の修正案が報告された。これに対し、委員からはさらなる指摘と意見が出され、意見書の修正作業を続けることになった。

2.TBSテレビ『news23』について審議

TBSテレビは1月12日、報道番組『news 23』の調査報道23時のコーナーにおいて、農業協同組合(JA)で職員が共済営業の過大なノルマを課され、ノルマ達成の為に職員やその家族が不必要な契約を結ぶ、いわゆる“自爆営業”が横行していると報じた。放送後、身元を隠す措置が不十分だったため、A地方のJAに勤める男性は職場で身元がばれて居づらくなり、退職に追い込まれたとの週刊誌報道があった。また、取材を受けた職員とは3回程度会話をしたことがあるという人から「放送を見て誰であるかを私ですら特定できた。彼は農協の問題を告発し多くの職員の声を代弁してくれた。退職になりとても残念だ。テレビ局の取材対象に対する不誠実な姿勢を問題にしてもらいたい」といった声がBPOへ寄せられた。委員会は、報道の取材源の秘匿という原則が損なわれるという放送倫理違反の疑いがあり、取材から放送に至る経緯等について詳しく検証する必要があるとして8月の委員会で審議入りを決めた。
今回の委員会では、担当委員から意見書の原案についての報告があった。委員からは「身元を隠す措置についてどこまで対応する必要があるのか、この意見書でルールを示す必要があるのではないか」、「取材相手との対話などの事実関係によって放送倫理違反が左右される可能性はないのか」という意見が出た。一方で、「放送局の自主・自律を侵さないように、委員会として明確な基準を示すことは謙抑的であるべきだ」といった意見や「身元を隠す措置がもっと良くできたはずなのに、できなかった点を丁寧に挙げることで、放送現場の人が自ら法則を読み取って活かせるような意見書にすべきだ」といった意見が出され、次回の委員会までに意見書の修正案を作成することになった。

3.ラジオ大阪『大阪を前へ!』等について討議

大阪放送(ラジオ大阪)が2023年1月12日~29日の間、15回にわたって、特定の政党に所属する地方議員らをゲストに招いた番組『大阪を前へ!』『兵庫を前へ!』を放送したことについて、政治的な公平性に抵触しているのではないか等の観点から7月の委員会で討議入りした。
今回の委員会では、当該放送局から番組審議会での厳しい指摘を受けて作成された2回目の報告書を基に討議した。委員からは「最初の報告書のことが言及されていないが、当該放送局は当初は問題性はないとしていたのであり、番組審議会の指摘で初めて意識が変わったといえ、同じことを繰り返してしまうのではという問題意識はある」、「今回の報告書を読んでも事実関係は明らかとはいえず、危機感なく企画を安易に通している」、「審議入りすることによって初めて問題が放送界に共有され現場に届くのではないか」等の厳しい意見もあったが、「政治的公平性」について、社長をリーダーとした組織横断チームを作って幹部社員間で意識を共有し、全社員を対象とした研修会を実施していくなどの再発防止への取り組み等を一定程度評価し、討議を終了した。

4.9月に寄せられた視聴者・聴取者意見を報告

9月に寄せられた視聴者・聴取者の意見のうち、芸能事務所創業者による性加害問題について、街頭インタビューを紹介する際、事務所を擁護する声しか放送しないのは偏っているといった意見や、事務所に所属するタレントがMCを務めていた週末の情報番組で、その週にあった事務所の会見を全く伝えないのはおかしいといった意見、大手酒造メーカーが事務所に所属するタレントとの広告契約を更新しないと報じた際、タレントの名前や顔写真を放送したことについて、当該タレントが不祥事を起こしたように受け取られかねず問題だといった意見などが事務局から報告され、議論した。

以上

第187回

第187回–2023年9月

NHK『ニュースウオッチ9』について審議

第187回放送倫理検証委員会は、9月8日に千代田放送会館で開催された。
ワクチンを接種後に亡くなった人の遺族の訴えを、新型コロナウイルスに感染して亡くなったと受け取られるように伝え、適切ではなかったと謝罪し、6月の委員会で審議入りしたNHKの『ニュースウオッチ9』について、今回の委員会では、担当委員からヒアリングの内容と意見書の原案についての報告があり、次回の委員会までにさらに必要なヒアリングを実施し、意見書の修正案を作成することになった。
1月12日放送のTBSテレビの報道番組『news23』において、農業協同組合(JA)で職員が共済営業の過大なノルマを課され、職員やその家族が不必要な契約を結ぶ”自爆営業”が横行していると報じた。放送後、身元を隠す措置が不十分だったため、内部告発した職員が退職に追い込まれたとの週刊誌報道やテレビ局の取材対象に対する不誠実な姿勢が問題だという視聴者の声がBPOへ寄せられ、委員会は、取材源の秘匿という原則が損なわれるという放送倫理違反の疑いがあり、詳しく検証する必要があるとして8月の委員会で審議入りを決めた。今回の委員会では担当委員から当該放送局の関係者にヒアリングした結果が報告された。今後は意見書の原案の作成を進める。
統一地方選挙を前に公認立候補予定者が出演したラジオ大阪の番組『大阪を前へ!』等について、政治的な公平性の観点から問題はないか等を判断するために7月の委員会で討議入りし、今回の委員会には当該放送局から番組審議会の議事録等が提出され議論したが、さらに討議を継続することとした。
証言の一部を誤解して放送した報道情報番組について、当該放送局から提出された報告書を基に議論した。
8月にBPOに寄せられた視聴者・聴取者意見などが報告された。

議事の詳細

日時
2023年9月8日(金)午後5時~午後8時10分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、大石委員、
大村委員、長嶋委員、西土委員、毛利委員、米倉委員

1. NHK『ニュースウオッチ9』について審議

NHKの『ニュースウオッチ9』(5月15日放送)は、ワクチン接種後に亡くなった人の遺族を、新型コロナウイルスに感染して亡くなった人の遺族と受け取られるような伝え方をし、放送倫理違反の疑いがあるとして6月の委員会で審議入りとなった。
今回の委員会では、担当委員から当該番組の関係者に対して実施したヒアリングの内容と意見書の原案についての報告があった。委員から組織的な問題をより照射する方向性の意見などが出され、次回の委員会までにさらに必要なヒアリングを実施し、意見書の修正案を作成することになった。

2.TBSテレビ『news23』について審議

TBSテレビは1月12日、報道番組『news 23』の調査報道23時のコーナーにおいて、農業協同組合(JA)で職員が共済営業の過大なノルマを課され、ノルマ達成の為に職員やその家族が不必要な契約を結ぶ、いわゆる“自爆営業”が横行していると報じた。放送後、身元を隠す措置が不十分だったため、A地方のJAに勤める男性は職場で身元がばれて居づらくなり、退職に追い込まれたとの週刊誌報道があった。また、取材を受けた職員とは3回程度会話をしたことがあるという人から「放送を見て誰であるかを私ですら特定できた。彼は農協の問題を告発し多くの職員の声を代弁してくれた。退職になりとても残念だ。テレビ局の取材対象に対する不誠実な姿勢を問題にしてもらいたい」といった声がBPOへ寄せられた。委員会は、報道の取材源の秘匿という原則が損なわれるという放送倫理違反の疑いがあり、取材から放送に至る経緯等について詳しく検証する必要があるとして8月の委員会で審議入りを決めた。
今回の委員会では、担当委員から当該放送局の関係者にヒアリングした結果が報告された。委員からは「内部告発者を取材する際は高いレベルの取材源の秘匿が求められる。今回は最終的にそれが徹底できなかった。なぜ徹底できなかったのかについて意見書では説明を尽くすべきだ」「今回BPOが一石を投じたことによって、調査報道に対する取り組み方を抜本的に改めようとか、調査報道の取材にもっと力を入れようとか、いい方向へ進んでいくのであれば、本事案を問題化したことが放送業界にとってプラスになると思う」といった意見が出た。これらを踏まえて今後は担当委員が意見書の原案の作成を進める。

3.ラジオ大阪『大阪を前へ!』等について討議

大阪放送(ラジオ大阪)の番組『大阪を前へ!』、『兵庫を前へ!』は、統一地方選挙前半(3月31日告示、4月9日投票)の約2カ月前の2023年1月12日~29日までの間に計15回(15分番組×13回、30分番組×2回)放送された。ゲストは各回とも同じ政党の公認立候補予定者だった。
7月の委員会で、政治的な公平性に抵触しているのではないか等の観点から討議入りした。今回の委員会には、当該放送局が8月に臨時開催した番組審議会の議事録と現状報告等が提出され議論した結果、今後の対応等をまとめた報告書の提出を待つこととし、引き続き討議を継続することにした。

4.証言の一部を誤解して放送した報道情報番組について議論

報道情報番組で販売店の元店長の証言をVTRで放送した後に、関係先の企業から事実と異なる点を指摘され、テレビ局が後日お詫びした。当該放送局から委員会に提出された報告書によると、改めて調査した結果、証言の一部を番組側が誤解していたことが判明し、また事前に関係先に対する確認取材を行っていなかったことも分かった。関係先へは当該放送局の幹部が説明とお詫びに行き、理解を得られたという。委員会では、相手先にとっての不利益な情報を放送するにあたり、報道の基本である裏付けや確認取材を怠ったことは、にわかに信じがたい事である等の非常に厳しい意見が出た一方で、事実関係を速やかに解明し関係先へも対応していることから、現時点では委員会が調査をする必要性までは認められないとし、議事概要で取り上げるにとどめ、議論を終えた。

5.8月に寄せられた視聴者・聴取者意見を報告

8月に寄せられた視聴者・聴取者の意見のうち、芸能事務所創業者による性加害問題について、国連人権理事会の「ビジネスと人権」作業部会の記者会見と、当該事務所が設置した外部の専門家による「再発防止特別チーム」の調査結果公表があり、さまざまな意見が多数寄せられたこと、その中にはBPOに対応を求めるも意見が含まれていることなどについて事務局から報告があり、BPOの審議には、規約・委員会規則による制約があることなどの議論を行った。

以上

第186回

第186回–2023年8月

TBSテレビ『news23』が審議入り

第186回放送倫理検証委員会は、8月4日に千代田放送会館で開催された。
ワクチンを接種後に亡くなった人の遺族の訴えを、新型コロナウイルスに感染して亡くなったと受け取られるように伝え、適切ではなかったと謝罪し、6月の委員会で審議入りしたNHKの『ニュースウオッチ9』について、今回の委員会では、担当委員から当該番組の関係者に対して実施したヒアリング内容の報告があった。これに対して、他の委員からは事実関係についての質問などが出された。次回の委員会までにさらに必要なヒアリングを実施し、意見書の原案作成を目指すことになった。
1月12日放送のTBSテレビの報道番組『news23』において、農業協同組合(JA)で職員が共済営業の過大なノルマを課され、職員やその家族が不必要な契約を結ぶ「自爆営業」が横行していると報じた。放送後、身元を隠す措置が不十分だったため、内部告発した職員が退職に追い込まれたとの週刊誌報道やテレビ局の取材対象に対する不誠実な姿勢が問題だという視聴者の声がBPOへ寄せられた。委員会は、取材源の秘匿という原則が損なわれるという放送倫理違反の疑いがあり、詳しく検証する必要があるとして審議入りを決めた。
統一地方選挙を前に公認立候補予定者が出演したラジオ大阪の番組『大阪を前へ!』等について、政治的な公平性の観点から問題はないか等を判断するために前回の委員会で討議入りしたが、さらに討議を継続することとした。
7月にBPOに寄せられた視聴者・聴取者意見などが報告された。

議事の詳細

日時
2023年8月4日(金)午後5時~午後7時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、
大石委員、大村委員、長嶋委員、西土委員、毛利委員、米倉委員

1. NHK『ニュースウオッチ9』について審議

NHKの『ニュースウオッチ9』は、ワクチン接種後に亡くなった遺族を、新型コロナウイルスに感染して亡くなった人の遺族と受け取られるような伝え方をし、放送倫理違反の疑いがあるとして6月の委員会で審議入りとなった。
同番組は5月15日に「新型コロナ5類移行から1週間・戻りつつある日常」と題する1分5秒のVTRを放送した。VTRには、ワクチン被害者の遺族の会から遺族3人が出演したが、3人がワクチン接種後に亡くなった人の遺族であるとの説明は無く、テロップで「夫を亡くした」「母を亡くした」と紹介するにとどまった。
今回の委員会では、担当委員から当該番組の関係者に対して実施したヒアリングの報告があった。これに対して、他の委員からは事実関係についての質問などが出された。次回の委員会までにさらに必要なヒアリングを実施し、意見書の原案作成を目指すことになった。

2.TBSテレビ『news23』について審議

TBSテレビは1月12日、報道番組『news 23』の調査報道23時のコーナーにおいて、農業協同組合(JA)で職員が共済営業の過大なノルマを課され、ノルマ達成の為に職員やその家族が不必要な契約を結ぶ、いわゆる“自爆営業”が横行していると報じた。その中で、A地方のJAに勤める男性が、顔をぼかし声も変えてインタビューを受け、ノルマ達成のために1歳と5歳の子供に必要のない共済をかけていると語った。このインタビューには顔をぼかし声も変えた別のJAの職員も同席していた。また、JAのBに勤める男性は、顔をぼかし声も変えて、上司から給与やボーナスが支払えなくなるといわれ職員や農協の為にノルマを無くせないと述べた。
放送後、身元を隠す措置が不十分だったため、A地方のJAに勤める男性は職場で身元がばれて居づらくなり、退職に追い込まれたとの週刊誌報道があった。また、取材を受けた職員とは3回程度会話をしたことがあるという人から「放送を見て誰であるかを私ですら特定できた。彼は農協の問題を告発し多くの職員の声を代弁してくれた。退職になりとても残念だ。テレビ局の取材対象に対する不誠実な姿勢を問題にしてもらいたい」といった声がBPOへ寄せられた。
委員会は、当該放送局に報告書と番組DVDを求めて協議した。その結果、報道の取材源の秘匿という原則が損なわれるという放送倫理違反の疑いがあり、取材から放送に至る経緯等について詳しく検証する必要があるとして審議入りを決めた。今後は当該放送局の関係者からヒアリングを行うなどして審議を進める。

3.ラジオ大阪『大阪を前へ!』等について討議

大阪放送(ラジオ大阪)の番組『大阪を前へ!』、『兵庫を前へ!』は、統一地方選挙前半(3月31日告示、4月9日投票)の約2カ月前の2023年1月12日から1月29日までの間に計15回(15分番組×13回、30分番組×2回)放送された。ゲストは各回とも同じ政党の公認立候補予定者だった。
番組最終回の放送翌日、聴取者からBPOに「特定政党のキャッチフレーズをそのままタイトルにした番組で、ゲストはこの党の政治家と決まっており、内容は党の活動や今後の取り組みを紹介し宣伝することに尽きる。特定政党のPR番組を一般の番組と同じ扱いで放送することは問題だ」という趣旨の意見が寄せられた。
前回の委員会で、政治的な公平性に抵触しているのではないか等の観点から討議入りし、今回の委員会では様々な意見が出されたが、引き続き討議を継続することとした。

4.7月に寄せられた視聴者・聴取者意見を報告

7月に寄せられた視聴者・聴取者の意見のうち、シングルマザーとして娘を育てる女性が、スリランカ出身の男性と恋に落ち、3人で家族を作るというストーリーのテレビドラマに対して、「違法滞在を美化している」「不法移民を正当化している」などの意見が寄せられたことなどについて事務局から報告があった。

以上

2023年8月4日

TBSテレビ『news23』が審議入り

TBSテレビは1月12日、報道番組『news 23』の調査報道23時のコーナーにおいて、農業協同組合(JA)で職員が共済営業の過大なノルマを課され、ノルマ達成の為に職員やその家族が不必要な契約を結ぶ、いわゆる“自爆営業”が横行していると報じた。その中で、A地方のJAに勤める男性が、顔をぼかし声も変えてインタビューを受け、ノルマ達成のために1歳と5歳の子供に必要のない共済をかけていると語った。このインタビューには顔をぼかし声も変えた別のJAの職員も同席していた。また、JAのBに勤める男性は、顔をぼかし声も変えて、上司から給与やボーナスが支払えなくなるといわれ職員や農協の為にノルマを無くせないと述べた。
放送後、身元を隠す措置が不十分だったため、A地方のJAに勤める男性は職場で身元がばれて居づらくなり、退職に追い込まれたとの週刊誌報道があった。また、取材を受けた職員とは3回程度会話をしたことがあるという人から「放送を見て誰であるかを私ですら特定できた。彼は農協の問題を告発し多くの職員の声を代弁してくれた。退職になりとても残念だ。テレビ局の取材対象に対する不誠実な姿勢を問題にしてもらいたい」といった声がBPOへ寄せられた。
委員会は、当該放送局に報告書と番組DVDを求めそれらを踏まえて協議した。その結果、報道の取材源の秘匿という原則が損なわれるという放送倫理違反の疑いがあり、取材から放送に至る経緯等について詳しく検証する必要があるとして審議入りを決めた。今後は当該放送局の関係者からヒアリングを行うなどして審議を進める。

第185回

第185回–2023年7月

NHK『ニュースウオッチ9』について審議

第185回放送倫理検証委員会は、7月14日に千代田放送会館で開催された。
ワクチンを接種後に亡くなった人の遺族の訴えを、新型コロナウイルスに感染して亡くなったと受け取られるように伝え、適切ではなかったと謝罪し、6月の委員会で審議入りしたNHKの『ニュースウオッチ9』について、今回の委員会では、担当委員が作成した資料をもとに議論した。今後は当該番組の関係者に対してヒアリングを行っていく。
統一地方選挙を前に公認立候補予定者が出演したラジオ大阪の番組『大阪を前へ!』等について、当該放送局から提出された報告書と番組CDを踏まえて議論した。その結果、政治的な公平性の観点から問題はないか等を判断するため、討議事案としてさらに議論を継続することとした。
タマネギの糖度を紹介する特集で数値をねつ造した鹿児島読売テレビの情報番組『かごピタ』について、当該放送局から提出された報告書と番組DVDを踏まえて討議したが、一連の訂正とお詫びの放送や再発防止策等を受け、今回で討議は終了し審議の対象としないこととした。
6月にBPOに寄せられた視聴者・聴取者意見などが報告され議論した。

議事の詳細

日時
2023年7月14日(金)午後6時~午後9時20分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、
大石委員、大村委員、長嶋委員、西土委員、毛利委員、米倉委員

1. NHK『ニュースウオッチ9』について審議

NHKの『ニュースウオッチ9』は、ワクチン接種後に亡くなった遺族を、新型コロナウイルスに感染して亡くなった人の遺族と受け取られるような伝え方をし、放送倫理違反の疑いがあるとして6月の委員会で審議入りとなった。
同番組は5月15日に「新型コロナ5類移行から1週間・戻りつつある日常」と題する1分5秒のVTRを放送した。VTRには、ワクチン被害者の遺族の会から遺族3人が出演したが、3人がワクチン接種後に亡くなった人の遺族であるとの説明はなく、テロップで「夫を亡くした」「母を亡くした」と紹介するにとどまった。
今回の委員会では、担当委員から企画の提案、取材、編集、試写などの各段階において、詳細な疑問点と問題のある可能性が提示され、議論した。
委員会は今後、当該番組の関係者からヒアリングを行うなどして審議を進める。

2.ラジオ大阪『大阪を前へ!』等について討議

大阪放送(ラジオ大阪)の番組『大阪を前へ!』、『兵庫を前へ!』は、統一地方選挙前半(3月31日告示、4月9日投票)の約2カ月前の2023年1月12日から1月29日までの間に計15回(15分番組×13回、30分番組×2回)放送された。ゲストは各回とも同じ政党の公認立候補予定者だった。
番組最終回の放送翌日、聴取者からBPOに「特定政党のキャッチフレーズをそのままタイトルにした番組で、ゲストはこの党の政治家と決まっており、内容は党の活動や今後の取り組みを紹介し宣伝することに尽きる。特定政党のPR番組を一般の番組と同じ扱いで放送することは問題だ」という趣旨の意見が寄せられた。
これを受けて委員会では報告書と番組CDの提出を当該放送局に求めた。報告書によれば、2022年11月末に広告代理店から番組企画の打診があり、社内で検討。同年12月に統一地方選まで2カ月を逆算し、空いている放送枠を確認して収録した。放送期間は2023年1月12日から1月29日に決定したという。また、すべての回でゲストが特定政党から公認を受けた立候補予定者であり、番組CDで放送内容を聴取すると、立候補予定者の議会や地元選挙区などでの活動実績や抱負、経歴などが紹介されていた。委員会は、政治的な公平性に抵触しているのではないか等の観点から、番組を討議事案としてさらに議論を継続することとした。

3.鹿児島読売テレビ『かごピタ』について討議

鹿児島読売テレビは2023年2月24日に、情報番組『かごピタ』内でタマネギの糖度について約13分半にわたる特集を放送した。その後6月14日に地元地方紙が数値のねつ造等を報じ、同日当該放送局からも自主申告があったため委員会は報告書と番組DVDの提出を求め、討議を行った。
報告書によれば、新タマネギと普通のタマネギの糖度の違いを糖度計で比較した映像を流したが、普通のタマネギについては、タマネギを使わずに砂糖水を計測した数値を紹介。新タマネギについては加熱した場合の糖度を表示していたものの、計測時の現場では値が高く出過ぎたと判断し、水を加えて数値を低くして放送したという。
当該特集について3月に、業務委託をしている制作会社のスタッフから「納得がいかない」旨の相談を当該放送局の社員が受け、調査したところ数値のねつ造・改ざんが明らかになった。番組担当者は「インターネットで調べた一般的な数値に近づけるために行った」などと説明している。番組では3月31日に、不正確なところがあったとして内容の訂正とお詫びをしたが、糖度を偽ったことについては全く説明がなかった。
6月14日の地元紙報道を受けて、6月16日の同番組で「砂糖水を使って数値を『ねつ造』したこと」、「水を加えて数値の『改ざん』をしたこと」、「3月31日の訂正とお詫びの放送で『誤った計測方法について伝えていなかったこと』」の3点を認めて放送し、改めて謝罪した。
当該放送局は、タマネギの糖度の数値についてねつ造・改ざんを把握したにもかかわらず、3月のお詫び放送ではその旨の説明を全くしておらず、地元紙報道を受けてようやくねつ造・改ざんを認め謝罪したのであって、放送倫理が内発的に遵守されるべき点からは問題があると言わざるを得ない。もっとも、再発防止の対応策として、番組プロデューサーに報道経験者を加えることや取材における留意事項を記載したチェックシートを新たに導入したこと、また、研修会の実施、番組審議会で審議されたこと等が示されていることを踏まえ、委員会での意見を議事概要に掲載した上で討議を終了し、審議の対象としないこととした。

【委員の主な意見】

・数値を変えたという、事実と異なる内容を放送したことは放送倫理違反と言えよう。類似事例では『発掘!あるある大事典Ⅱ』があるが、その番組はかなりの構造的な問題点や、繰り返し改ざんがされていたというような案件であり、それと比較して提出された報告書以上の事実が出てくるとは思われず、恒常的なものとは認められないだろう。
・初回(3月31日)のお詫び放送では、数値改ざん等には触れておらず新聞報道後に、初めてねつ造・改ざんの事実を2回目のお詫び放送の中で伝えた。この報道がなければそのままになっていたのではないか、という点では猛省してほしい。
・事後的な是正も一定程度なされていると考えられ、再発防止策も報告されている。

4.6月に寄せられた視聴者・聴取者意見を議論

6月に寄せられた視聴者・聴取者の意見のうち、芸能人の不倫の問題をめぐって、本人たちの自筆の手紙や交換日記を映したり、内容を報道したりすることはプライバシーの侵害ではないかといった批判的な意見が多数あったことや、歌舞伎俳優の自殺ほう助事件に関して、睡眠薬の種類、量、その方法などについて詳しく報じるのはあきらかに過剰であり、WHOの自殺報道ガイドラインに抵触し、視聴者の自殺を助長するのではないかといった疑問を呈する意見などが事務局から報告され、議論した。

以上

第184回

第184回–2023年6月

NHK『ニュースウオッチ9』が審議入り

第184回放送倫理検証委員会は、6月9日に千代田放送会館で開催された。
NHK『ニュースウオッチ9』は、エンディングVTRにおいて、ワクチンを接種後に亡くなった人の遺族の訴えを、新型コロナウイルスに感染して亡くなったと受け取られるように伝え、適切ではなかったと謝罪した。当該放送局から提出された報告書や番組DVDを踏まえて協議した結果、放送倫理違反の疑いがあり、放送に至った経緯等について詳しく検証する必要があるとして審議入りを決めた。
前回の委員会に引き続き、民放ラジオのコメンテーター発言について議論したが、当該放送局の番組審議会での意見や是正措置を評価し議論を終了した。
5月にBPOに寄せられた視聴者・聴取者意見などが報告され議論した。

議事の詳細

日時
2023年6月9日(金)午後5時~午後8時
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、
大石委員、大村委員、長嶋委員、西土委員、毛利委員、米倉委員

1. NHK『ニュースウオッチ9』について審議

NHKは5月15日の『ニュースウオッチ9』のエンディングで「新型コロナ5類移行から1週間・戻りつつある日常」と題する1分5秒のVTRを放送した。
VTRには、ワクチン被害者の遺族の会から遺族3人が出演。「遺族の人たちの声を届けていきたい」「風化させることはしたくない」などと語ったが、3人がワクチン接種後に亡くなった人の遺族だとの説明は無く、テロップで「夫を亡くした」「母を亡くした」という紹介にとどまった。このため視聴者には、新型コロナウイルス感染により亡くなったかのような印象を与える放送となった。
NHKは遺族の会から抗議を受け、16日の同番組で「新型コロナに感染して亡くなったと受け取られるように伝えてしまった。適切ではありませんでした」と謝罪した。
委員会は、NHKから提出された報告書と番組DVDを踏まえて協議を行った。その結果、企画、取材、編集の各段階で不明な点が多く報告書は納得できる内容ではなく、放送倫理違反の疑いがあることから、放送に至った経緯等について詳しく検証する必要があるとして審議入りを決めた。
委員会は今後、当該番組の関係者からヒアリングを行うなどして審議を進める。

2. 民放ラジオのコメンテーター発言について議論

民放ラジオ局でコメンテーターが発言した内容とそこに至る経緯について、前回に引き続いて議論が行われた。当該放送局の番組審議会で厳しい意見が連続して出されていることや、当該放送局でとられたコンプライアンスの強化や発言に関する知識を深めるなどの活動があり、是正措置が一定程度評価できるものであることを考慮し、議論を今回で終了することにした。

3. 5月に寄せられた視聴者・聴取者意見を議論

5月に寄せられた視聴者・聴取者意見のうち、過大なノルマを達成するために職員やその家族が不必要な契約を結ぶいわゆる“自爆営業”がJAで横行している実態を放送した際、インタビューに応じたJA職員の身元を隠す措置が不十分だったため、特定され退職に追い込まれたとする報道を受けて、取材対象に対する不誠実な姿勢は問題だとの意見が寄せられたことなどを事務局が報告し、議論した。

以上

2023年6月9日

NHK『ニュースウオッチ9』が審議入り

NHKは5月15日の『ニュースウオッチ9』のエンディングで「新型コロナ5類移行から1週間・戻りつつある日常」と題する1分5秒のVTRを放送した。
VTRには、ワクチン被害者の遺族の会から遺族3人が出演。「遺族の人たちの声を届けていきたい」「風化させることはしたくない」などと語ったが、3人がワクチン接種後に亡くなった人の遺族だとの説明は無く、テロップで「夫を亡くした」「母を亡くした」という紹介にとどまった。このため視聴者には、新型コロナウイルス感染により亡くなったかのような印象を与える放送となった。
NHKは遺族の会から抗議を受け、16日の同番組で「新型コロナに感染して亡くなったと受け取られるように伝えてしまった。適切ではありませんでした」と謝罪した。
委員会は、NHKから提出された報告書と番組DVDを踏まえて協議を行った。その結果、企画、取材、編集の各段階で不明な点が多く報告書は納得できる内容ではなく、放送倫理違反の疑いがあることから、放送に至った経緯等について詳しく検証する必要があるとして審議入りを決めた。
委員会は今後、当該番組の関係者からヒアリングを行うなどして審議を進める。

第183回

第183回–2023年5月

民放ラジオのコメンテーター発言について議論

第183回放送倫理検証委員会は5月12日に開催され、前回の委員会で議論した番組の関連資料や、4月にBPOに寄せられた視聴者・聴取者意見などが報告され議論した。

議事の詳細

日時
2023年5月12日(金)午後5時~午後7時
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、
大石委員、大村委員、長嶋委員、西土委員、毛利委員、米倉委員

1. 民放ラジオのコメンテーター発言について議論

民放ラジオ局でコメンテーターが発言した内容とそこに至る経緯について、当該放送局から届けられた報告書等を基に議論が行われた。当該放送局の番組審議会でも活発な議論が行われていることにも注目し、その推移を見守りながら継続して議論することになった。

2. 4月に寄せられた視聴者・聴取者意見を議論

4月に寄せられた視聴者・聴取者意見のうち、岸田首相襲撃事件の報道で、爆弾の作り方や殺傷能力の高め方が分かるような内容があったこと、芸能事務所創業者による性加害疑惑がほとんど報じられていないことなどに意見が寄せられたことが事務局から報告され、議論が行われた。

以上

第182回

第182回–2023年4月

東海地区ラジオ局との意見交換会の報告

第182回放送倫理検証委員会は、新しく毛利透委員が加わり10人の委員が出席して4月14日に開催され、3月に名古屋市で行われた東海地区ラジオ局との意見交換会の模様や、3月にBPOに寄せられた視聴者意見などが報告され議論を行った。

議事の詳細

日時
2023年4月14日(金)午後5時~午後6時50分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、
大石委員、大村委員、長嶋委員、西土委員、毛利委員、米倉委員

1. 東海地区ラジオ局との意見交換会の報告

3月17日に名古屋市で、愛知・岐阜・三重の3県のラジオ局8局から約20人が参加して、委員との意見交換会が行われた。ラジオ局だけを対象にした意見交換会を開くのは、2007年の委員会発足以来、初めてのことである。
参加した委員からは「私たちはこれまでラジオにあまり目配りをしてこなかった。今回を初めの一歩として今後も続けていきたい」「議論の主たるテーマの1つだった『政治的公平性』について、放送局によって意識のばらつきがあることが分かった」「ラジオとテレビでは、同じ放送事業者とはいえ番組制作の事情がかなり異なることが分かった」といった感想や報告があった。
意見交換会の詳細はこちら

2. 3月に寄せられた視聴者・聴取者意見を議論

3月に寄せられた視聴者・聴取者意見のうち、ニュース番組でメジャーリーグの大谷翔平選手を乗せた飛行機を撮影しようと、取材ヘリコプターが夜遅くに羽田空港付近で長時間旋回し、騒音被害を受けたという苦情が多数寄せられたことや、ゲストが差別的な発言と受け取れるコメントをした番組があったことや、情報番組で動物園から生中継をした際に、出演者がペンギンのいる池にわざと何回も落ちたことについて「ペンギンを虐待している」という意見が殺到したことなどが事務局から報告され、議論が行われた。

以上

2023年3月17日

東海地区3県のラジオ局と意見交換会を開催

愛知、岐阜、三重の3県のラジオ局と放送倫理検証委員会との意見交換会が、2023年3月17日、名古屋市で開催された。ラジオ局側の参加者はAM、FMあわせて8局20人、委員会からは小町谷育子委員長、岸本葉子委員長代行、大石裕委員、大村恵実委員、長嶋甲兵委員の5人が出席した。放送倫理検証委員会がラジオ局だけを対象にした意見交換会を開くのは、2007年の委員会発足以来、初めてのことである。

冒頭、小町谷委員長が「昨年、数は少ないものの、ラジオ局の番組について聴取者から意見が届いた。それをきっかけにラジオ局について考えはじめたところ、私たちがラジオ局の実情をあまり知らないということに気づいた。というのも委員会は過去、ラジオ局の事案を議論したことがなかったからだ。そこでまずは、ラジオ局のみなさんと意見交換をさせていただこうということになった」と述べ、開催の趣旨を説明した。
これに続いて主に、次の3つのテーマについて意見が交換された。
「パーソナリティーについて」「政治的公平性について」「番組と広告について」である。

パーソナリティーについて

司会をつとめる放送倫理検証委員会の調査役から、関西のラジオ局で起きたひとつの事案が紹介された。朝のラジオ番組で、俳優が亡くなったことを報じる新聞記事を取り上げた際、違法薬物の影響を疑うような発言をし、結果、謝罪に至ったというもの。
これについて、生放送を多く担当するラジオ局の参加者から、「パーソナリティーには年齢を重ねられた人生の大先輩が多く、若手の制作者が何かを指摘しても受け入れてもらえないことがある」という趣旨の発言があった。
「同じ放送といっても、ラジオの場合はテレビと異なり、1人のディレクターが長時間の生放送を担当するケースが多く、流れの中でパーソナリティーにおまかせ、という状態になることもある」、「パーソナリティーとはよく言ったもので、個性を打ち出すことによってリスナーを引きつけるという現実がある」、「ヒヤリ、ハットのおそれは社内で絶えず共有している。ただ、今のラジオが生放送を中心にやっている以上、このリスクを減らすのは難しい」などの意見も出された。
その一方、「放送内容で分からないことがあったら必ず確認する。まるまるパーソナリティーにおまかせして、その人の発言が、間違いを含めて出ることがないよう心がけている」という趣旨の発言もあり、局や番組によって制作環境に違いのあることが明らかになった。
これらに対し、在京ラジオ局の番組審議会委員長をつとめた経験のある大石委員からは「ラジオがもっと多くのリスナーを獲得していこうと考えるなら、保守的な感性に陥ることなく、『あっ、こういう面白い人がいる』と、冒険をすることも必要だ。可能性を信じて頑張っていただきたい」という発言があった。
放送番組の制作にたずさわる長嶋委員は「(ラジオというメディアが)personalであり、intimate(親密)であるからこそ、テレビとは違う、面白い個性が発掘される可能性は、まだまだある」と指摘した。
現役のラジオ番組出演者でもある岸本委員長代行は、コスト・コントロールとリスク管理の両立、さらにはマンパワーの問題が、ラジオ局共通の問題であることを指摘した上で、自分の体験をもとに、定年後のスタッフの活用方法が、今後の番組作りの鍵になる可能性があることを示唆した。

政治的公平性について

去年1月に放送された関西のテレビ局の番組で、ひとつの政党の関係者ばかりが出演するものがあり、これについて委員長談話(2022年6月)が出されたことが意見交換の導入になった。小町谷委員長は「ひとつの政党に関係する人だけが出演したことによって、質的公平が損なわれてはいないかという話をした」と、当時の議論を振り返った。
続いて司会者が、最近BPOに寄せられたラジオ番組のリスナーの意見から、以下の2つを紹介した。
「去年、参議院選挙の立候補予定者がディスクジョッキーをつとめる番組が放送されたのを聞いたが、実質的に候補の宣伝になってはいないか」、「国会議員が出演している番組があり、所属政党の公約や議員活動についての宣伝と、とれる話ばかりをしていた。放送倫理上の問題があるのではないか」。

ラジオ局の参加者からは、「番組のスポンサーが、自分が支持する特定政党の関係者をゲストに連れてきたりすると、なかなかNOと言いづらいことがある。しかし選挙に関して言えば、社内規則を設けており、選挙の一定期間内の出演には規制がかけられている」など、実例に即した説明があった。
別の参加者は、仮に地方議会議員が出ている番組があったとしても、例えば「介護」であるとか、その議員の専門分野に限って話をしてもらい、政党に関することは話をしないようにしてもらうよう、事前に打ち合わせをするようにしている、といった事情を紹介した。
「政治家候補と言われる人について、出演の要請があったことはある」と述べる参加者がいたが、そういう場合でも政治的な話はしないようにした、という補足をつけた。

これらに対し大石委員は、政治的に公平な番組を作っていくときに、公平さは考慮すべきものであるが、それはメディアが国家などから規制されることに対し、取材や表現の自由を確保するために持っているものだという趣旨の意見が表明された。さらに「ラジオ局がその地域に根ざし、どう貢献するかということ。問題提起型の、ジャーナリズム機能としての役割をどの程度、担っているのかについて注視している」という趣旨の発言をした。
大村委員はスイスでの居住経験をもとに、「地域のマイノリティー」としての感覚を語ったのに続けて、「ラジオにおいて、地域の特性や課題が放送されることは、そこに住む者にとっては、『あ、この社会に生きている』という実感を持つことにつながる」、「放送が民主的過程に貢献する価値をふまえ、放送に政治家が出演することや、政策を取り上げること自体については、(局側が)萎縮することがないようにと強く思っている」と述べた。
岸本委員長代行は、自分が地方取材でバスに乗った際、車内でラジオがかかり続けていた経験をもとに、「政治的な話はしなくても、バスを利用する人が、この時間はいつも同じ党の人が自己アピールみたいな話をしていると感じたら、番組についてどう思うか。一般のリスナーに番組がどう聞こえるかを想像してほしい。それがリスナーからの信頼につながると思う」と述べた。
長嶋委員は「視聴者の方が、これって(政治的に)極端な番組じゃないか?と疑問を感じ、いろんな意見を寄せるケースが増えている」と述べ、政治的公平性に関して、視聴者・リスナー側の意識が高まっていることを指摘し、よけいな政治介入を排除するためにも放送局の自主・自律が重要として、このテーマについての議論を締めくくった。

番組と広告について

委員会決定第30号、第36号、および2020年の委員長談話について、司会者から説明があったのち、「音声のみの放送」であるために、番組部分と広告部分の区別がつきにくいというメディアの特性について、ラジオ局側の参加者から発言があった。

日々の番組制作についての苦心がいくつも語られた。
「出演型の生CMなのか、それとも番組なのか。境界線が曖昧なものっていうのが、相談案件として非常に増えているという印象がある」、「この商品をというのではなくて、できる限り番組としての形を作って、リスナーへのサービス提供になるよう努力をしている」などが代表的なものである。
企業法務の経験がある大村委員は、「いろんな企業の仕事にたずさわる中で、広告ではなく、番組で取り上げてもらうために、企業がコンサルタントに対価を支払うケースがあると聞いている」と述べた上で、ラジオ局側に実情をたずねた。
ある参加者は、「(スポンサーサイドから)なるべく溶け込ませてください、広告と分からないよう告知してください、と言われることがあり、線引きが難しいことがあった」と自分の体験を明かした。
別の参加者は、「なくはないでしょう。しかし、局側としては番組を模索するスタンスを伝えるしかない」との趣旨、発言した。
長嶋委員は、「こういう問題がBPOで取り上げられることを、むしろクライアントの介入に対する盾にして、自分たちが制作したいものを作って欲しいと思います」と述べた。

以上の3つについて活発な意見交換がなされた後、「差別語・不快語・楽曲について」と題して、短時間の情報交換があった。民放連に放送音楽の取り扱いに関する内規(放送基準・61)が存在することが、司会者からラジオ局側参加者にあらためて情報共有された。

最後に参加局を代表して東海ラジオの岸田実也・制作局編成制作部専任部長が「有意義な時間を過ごさせていただいた。テーマごとに勉強になった。根底にあるのはリスナーのことを考えて、ということだと思うので、持ち帰って番組作りに役立てていきたい」と挨拶した。

以上

第181回 放送倫理検証委員会

第181回–2023年3月

ラジオ局との意見交換会の議事進行などを議論

第181回放送倫理検証委員会は3月10日に千代田放送会館会議室で開催され、ラジオ局との意見交換会開催の準備状況や、2月にBPOに寄せられた視聴者意見などが報告され議論を行った。

議事の詳細

日時
2023年3月10日(金)午後5時~午後6時30分
場所
千代田放送会館会議室
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、
大石委員、大村委員、長嶋委員、西土委員、米倉委員

1. ラジオ局との意見交換会の議事進行などを議論

委員会の活動とラジオの番組制作に関する特性や実務について相互に情報を共有するために初めて開かれるラジオ局との意見交換会について、先月に続き主要な議題や議事の進行などについて議論を行った。

2. 2月に寄せられた視聴者意見を議論

2月に寄せられた視聴者意見のうち、「平成を彩った美女たちの今に迫る」という企画や「タレント、飲食業店員の容姿に対する出演者の査定発言」などに、「ルッキズムではないか」という批判的な指摘があったことが報告された。また生放送のバラエティー番組で、一連の広域強盗事件を指示した疑いのある「ルフィ」と名乗る容疑者が日本に送還される機上で逮捕されたことについて、番組独自のテロップで「速報“ルフィ”逮捕」と表示し、そのことを司会がシリアスな口調で繰り返してスタジオ観覧者の笑いを誘ったことに対し、「被害者がいるのに不謹慎だ」などの意見が複数寄せられたことなどが事務局から報告され、議論が行われた。

以上

第180回 放送倫理検証委員会

第180回–2023年2月

ラジオ局との意見交換会の議題などを議論

第180回放送倫理検証委員会は2月10日にオンライン会議形式で開催され、ラジオ局との意見交換会開催の企画や、1月にBPOに寄せられた視聴者意見などが報告され議論を行った。

議事の詳細

日時
2023年2月10日(金)午後5時~午後6時30分
場所
オンライン
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、
大石委員、大村委員、長嶋委員、西土委員、米倉委員

1. ラジオ局との意見交換会の議題などを議論

委員会の活動とラジオ局の番組制作に関する特性や実務について相互に情報を共有するための初めてのラジオ局との意見交換会について、主要な議題や議事の進行などについて議論を行った。

2. 1月に寄せられた視聴者意見を議論

1月に寄せられた視聴者意見のうち、情報番組内のコーナー企画で番組ディレクターがガムを噛みながら生中継し批判的意見が殺到した件や、クイズ番組において無重力状態でインコやメダカの実験を行ったのは動物虐待だとする意見が多数寄せられたこと、またバラエティー番組で取り上げられた県の水道事業に関する内容が事実と異なり、県民に動揺や不安を与えたという意見などを事務局が報告し、議論した。

以上

第179回 放送倫理検証委員会

第179回–2023年1月

ラジオ局と初めての意見交換会開催へ

第179回放送倫理検証委員会は1月13日に千代田放送会館で開催され、ラジオ局との意見交換会開催の企画や、12月にBPOに寄せられた視聴者意見などが報告され議論を行った。

議事の詳細

日時
2023年1月13日(金)午後5時~午後7時分
場所
千代田放送会館
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、
大石委員、大村委員、長嶋委員、西土委員、米倉委員

1. ラジオ局との意見交換会開催の企画を議論

委員会の活動とラジオ局の番組制作に関する特性や実務について相互に情報を共有するために、これまで開催実績のなかったラジオ局との意見交換会を開催する企画を検討していたが、今般、正式に開催することを決め、詳細を議論した。

2. 12月に寄せられた視聴者意見を議論

クイズ番組で、答えを間違えたり時間切れになったりすると出演者が5メートル下のクッションに落下するゲームの安全性、1軒の近隣住宅からの苦情で長野市が公園を廃止する件についての論調や取材した際の住民のプライバシーへの配慮、難病で聴力を失った男性を軸としたドラマのセリフや演技ならびに字幕の表現などについて意見が寄せられたことを事務局が報告し、議論した。

以上

2022年11月2日

宮城・山形地区テレビ・ラジオ各局と意見交換会を開催

宮城・山形地区のテレビ・ラジオ12局と放送倫理検証委員会との意見交換会が、2022年11月2日、仙台市内で開催された。放送局側の参加者は12局40人、委員会からは小町谷育子委員長、岸本葉子委員長代行、高田昌幸委員長代行、井桁大介委員、大石裕委員、長嶋甲兵委員、西土彰一郎委員、米倉律委員の8人が出席した。放送倫理検証委員会が新型コロナ感染拡大のため開催を控えていた地方での意見交換会を開くのは、2020年2月の大阪地区での開催以来2年9か月ぶりのことである。

開会にあたり、小町谷委員長が「意見交換会は研修会でも勉強会でもなく、参加者が互いに意見を活発に交換していただく会であり、BPOをよく知ってもらう機会だ。委員にとっては、地方局が抱えている問題点や悩みを教えていただく会でもある。実りの多い意義のある会にしたい」と挨拶した。

意見交換会の前半では、これまでに公表した委員会決定を踏まえ、「政治的公平性」と「番組と広告の境目」の2つのテーマについて、担当委員が説明するとともに質疑応答を行った。

「政治的公平性~委員長談話から」

冒頭、小町谷委員長がBPOおよび放送倫理検証委員会の設立の経緯や「審理」と「審議」の違いなどについて解説した。その上で「BPO放送倫理検証委員会とは何かと思ったときには、『委員会決定第1号』を読んでもらうと理解が進む。そこには『倫理は、外部から押しつけられるものではなく、内発的に生まれ、自律的に実践することによって鍛えられるものである』とあり、委員会の役割として『放送界が放送倫理と番組の質的向上のたゆまぬ努力をかさね、多様・多彩な放送活動をより自由に行うよう促すこと――委員会がめざすのは、この一点である』」と宣言していることに改めて言及した。
その上で小町谷委員長は、2022年6月に出された毎日放送『東野&吉田のほっとけない人』についての委員長談話を踏まえ「政治的公平性」について講演を行った。この中で委員長は、同番組には日本維新の会の橋下元代表、松井大阪市長、吉村大阪府知事の3人がそろって出演し、会の政策については多く語られたが、異なる視点があまり示されておらず、委員会は政治的公平性を損なっていると判断したと、経緯を説明した。一方で、政治的公平性についての意見書を公表すると、放送局が政治問題を伝えるにあたって質的公平性を追求する足かせになるのではないかということを懸念し、また放送後、(当該放送局の)番組審議会で厳しい意見が出され、社内チームによる調査がきちんとなされるなど、自主・自律的に事後対応が行われたことも考慮し、審理・審議入りはしなかったと述べた。
また視聴率を重視して、話題性のある面白い発言をする政治家がキャスティングされると、党派的に偏りが生じ、情報にも偏りが出る恐れがあること、異なる視点が提示されないと、1党派の政策が一方的、肯定的に放送されるきらいがあるなどの問題点が垣間見えたと述べ、政治的公平性を真剣に議論する努力を欠いた番組によって一番不利益を受けるのは、偏った情報を受け取ることになる視聴者であることを懸念し、委員長談話を公表したと述べた。
続いてこれまでに公表された選挙報道に関する委員会決定などに触れ、「特に参議院選挙では、その地域の候補者だけを取り上げたために、地方局の番組が審議入りすることが多い。放送局が独断で比例代表制の設定している選挙区域とは異なる区切りを設定して放送することは、選挙の公平・公正性を害し、選挙制度そのものをゆがめることになる」として注意を促した。
最後に小町谷委員長は、「放送倫理検証委員会は放送法改正の問題をきっかけに設立された。このため政府の動きは常に意識し、政治に向き合うことを余儀なくされている。だからこそ政治的公平性や選挙報道のような民主主義に直結する報道、放送については敏感にならざるを得ない。一方で政治についての意見を表明すればするほど、放送現場を窮屈にさせることになることも懸念している。多様な放送、よい番組が生まれるためにも、委員会は常に抑制的でなければならないと考えている」と締めくくった。
参加者からは「知事や市長等政治家の発言については、一方的にならないよう、公平・公正のバランスを考えているが、例えば、告示1か月を切ったあたりに、対立候補との接戦が見込まれるようなタイミングでコロナウイルスの感染爆発が起きたり、行政側の対応を追及しなければならない場合には、(現職の)出演自体を相当悩むと思う」という意見があった。
これに対し大石委員は「選挙とそれ以外の時は区分する必要があるが、すべて平等に取り上げるのではなく、その問題が重要だという強い認識があれば、掘り下げて報道することこそ放送ジャーナリズムの役割だ。それが『質的公正』である。選挙期間中でも、選挙関連報道が常に優先されるべきというわけではない。緊急事態が生じた場合には、関連情報を伝え、地域の人達の安全を優先するという判断を行うべき」と答えた。
また、長嶋委員は「放送局側は自ら忖度したり、萎縮したりして、党の政策などに切り込むことを怠っているのではないか。もっと党の主張などについては深く伝えないと視聴者は選択することもできない。メディアの役割を自覚し、外部からのさまざまな圧力は局側がポリシーをもって突っぱねてほしい」と述べた。
他の参加者からは、民放連放送基準(12)に関連し、「社員アナウンサーが参議院選挙に向けて立候補の準備をしていたが、出馬宣言前に他のテレビ局で報道されてしまったため、民放連等にも確認しながら、そのアナウンサーの録音番組・生放送を急遽差し替えたり取りやめた。予定していたお別れの挨拶番組もできず、結構大変だった。その後は、フリーの出演者でも選挙に出るかもしれないという報道が出た時点で本人の出演を止めるということにしている」という事例が報告された。

「番組と広告の境目について」

番組と広告をめぐる問題についてこれまで委員会が公表した2つの委員会決定(第30号、第36号)および委員長談話(2020年)を振り返り、事案の問題点と教訓、番組と広告の境目をめぐる問題を判断するための枠組み、枠組みの中で留意すべき視点などについて西土委員が講演した。
同委員は、放送倫理検証委員会の役割はガイドラインの策定を行うことではなく、民放連放送基準や各局の番組基準などを判断基準として、第三者としての視点から番組を検証し、判断することにあると強調した。
そして、番組と広告の境目を検証するための基準は、民放連放送基準(92)「広告放送はコマーシャルによって、広告放送であることを明らかにしなければならない」と民放連の「番組内で商品・サービスなどを取り扱う場合の考査上の留意事項」(2017年)であり、特に後者は番組と広告の境目を判断するための枠組みを示していると述べた。「留意事項」では特に留意すべき事項として3点を挙げているが、これはあくまで例示であり、実際の運用にあたっては視聴者に広告放送であると誤解を招くような内容・演出になっていないかを総合的に判断する必要があり、そのための視点の一つは局による番組の位置づけが視聴者に理解されているかどうかであると指摘した。また、番組内の個別の要素・場面をとりあげて倫理違反を見出すのではなく、視聴後感において番組全体が広告放送であるとの印象を残すか否かがより重要だと述べた。その上で、総合的判断を行うためのポイントは、なぜ視聴者に広告放送であるとの誤解を招いてはならないかということを常に考えることだと述べ、番組と広告の線引きの判断に迷ったら、委員長談話「番組内容が広告放送と誤解される問題について」に記されている「『番組』は視聴者からの信頼を前提として放送されている。ところが『番組』の中に『広告』の要素が混在し、『番組』と『広告』の識別が困難になれば、視聴者の商品・サービスに対する判断を誤らせ、ひいては放送事業者に対する信頼や、番組の内容に対する信頼が損なわれてしまうのではないか」という原点に立ち戻ってほしいと訴えた。そして、緊張感をもって一線を画す日々の作業を記録し、検証することを積み重ねていけば、問題が起きた場合にも説明することができ、何よりも視聴者の信頼に応えることができると述べた。
続いて、高田委員長代行は「番組はあらゆるものから独立して、放送局、放送人が自らの判断で、役に立つ、有益である情報を視聴者に対して伝えることだ。その意味で、番組制作者が忠誠を第一に誓っているのは視聴者。広告は広告主から対価を得て作られており、第一に忠誠を誓うのは広告主。民放番組では両方とも必要であり、だからこそ、これは広告、これは番組だときちんとわかるように放送すること、視聴者目線に立って考えるというシンプルなことが強く求められているのではないか」と述べた。
参加局からは「ローカル局にとって、1社提供の番組は(営業的に)非常に大きい。長野放送の問題などが立て続けにあったとき、一時的に1社提供の番組を自粛した時期もあった。しかし制作現場と営業の間を編成、考査などがつないで何ができるかを詰める作業を繰り返し行うことで色々な問題を克服し、1社提供の番組が実現できた」という報告もあった。

後半は「委員と語ろう」と題して、参加局に対する事前アンケートで関心の高かったジェンダー表現について意見を交わした。

「ジェンダー表現」

アンケートには以下のような回答が寄せられた。

  • 「原稿で、どこまで性別に言及するのかいつも悩んでいる。30代の女性医師、容疑者の男・・・。絶えずデスクと記者が議論、話し合いをしている」

  • 「水着や浴衣の今年のトレンドをリポーターが紹介。どうしても女性ものが華やかで、たくさん飾ってある。男物を扱わなくていいの?って誰かが言ったら、ワンカット紹介して。本質的にこれ、どうなのかなって思いながら仕事をしている」

これらの回答に対して、まず岸本委員長代行が作家や番組出演者としての経験を披露し、「共通する大前提は、性別を言う必要がない場面では言わないということだ。エッセイでは、話の流れに支障がなければ、女性店員と書くところを店員、スタッフなどに置き換える。店員の様子を思い浮かべて欲しいときは、女性ということは書かず、例えばつけ睫毛や髪の長さなど外見で表現する。ラジオでは、縁側でおばあさんがネコと日向ぼっこと言うべきところを縁側でお年寄りがとか、おじいさんあるいはおばあさんでしょうかと両論併記的な言い方をしている。テレビには映像があるので、男性、女性と言う必要がないことが多いと感じている。ただ、容疑者が逃走中のときは、男、女と言うのは視聴者にとって重要な情報だと思う」と述べた。
小町谷委員長は参考になればと断ったうえで「女性医師、女性弁護士、女流作家などの言い方があるが、そうしたプロフェッションの人は自身が『女性の~』とは思っていない。プロフェッションの自尊心を傷つけるジェンダーの使い方はやめた方がよいと思う。私は弁護士であり女性弁護士とは思っていない」とコメントした。
また、米倉委員は「放送局はオールドメディアという言われ方をしているが、それは旧来の価値観を保持しているメディアと見られているということだ。どのような表現をするかはケースバイケースで対処せざるを得ないが、考えなければならないのはジェンダーバランスだけではなく、ダイバーシティについて意識的であるということだ。常に変化していく表現については、職場内での議論を含め日常的に試行錯誤していかなければならない時代に来ている」と述べた。
高田委員長代行は「差別問題は特定の言葉を使わなければいいとか、危ない言葉に触れなければいいという発想になりがちだが、虐げられている立場の人、その人がどういう境遇だったかという現実の問題にどれだけ制作者が向き合ってきたかどうかが問われているし、今後も問われる」と発言した。
井桁委員は「放送における小さな言葉の言い間違いやうっかりミスなどと、国や自治体がマイノリティーを虐げるような政策を打ち出したり、政治家が明らかな差別的意識に基づく発言することを一緒くたにして議論することには違和感がある。放送には大きな影響力があり、差別的な用語や表現に注意することは大事だが、どうしてもケアレスミスは残ってしまう。問題のある言葉をゼロにするために、内部で言葉の意味を一つ一つチェックすることを自己目的化させることなく、より本質的に問題のある施策・姿勢をしっかりと検証する方向により注力してほしい」と述べた。

参加者からは、「いわゆる専業主婦の取材をする際、何も考えずに台所仕事の様子を撮影しがちだが、本当にそれでよいのかを考えるようになった。私たちの中には古くからのジェンダーバイアスのようなものがあり、原稿でも映像でも、それをどう払拭していくか考えなければならない時代だと感じている」という意見があった。

最後に参加局を代表して、仙台放送柳沢剛番組審議室長が「放送局の自主・自律を図るため、視聴者の信頼を得るため、できることを突き詰めていきたい。視聴者・スポンサー・放送局の『三方良し』を目指し、今日の議論を宮城・山形の各局が現場にフィードバックしていければと思う」と挨拶した。

終了後参加者から寄せられた感想の一部を以下に紹介する。

  • 今年6月に出された委員長談話が指摘する「視聴率重視から生じる懸念」については、意味は十分理解するが、多くの人が関心を持つ「人」や「事柄」を取り上げることで、政治について関心を持ってもらったり、投票率の向上に寄与したりという効果もあるのではないかと思う。「質的公平性」をどう考え、どう実現していくかが課題だ。

  • 委員から「番組か広告かの問題について、ローカル局がなぜ大騒ぎしたのかわからない」との感想があった。テレビ・ラジオが広告としての媒体価値を落とすなか、ローカル局ではコスト削減を優先し、ともすれば手を抜いた安易な作業に流れがちである。一つ間違えれば自局も同じことになっていたかもしれないという危機感が多くの局にあったと思う。「喉元過ぎれば熱さを忘れる」とならないよう、制作の現場でよく考え大いに悩むことが重要と再認識した。

  • BPOという組織に、あまりポジティブな印象を持っていなかったが、委員の方々の顔を見ることができて正直少し安心した。委員の中にも色んな職業・立場の人がおり、みんなが個々の意見をぶつけながら結論を導き出しているのだと、会話を聞いて改めて認識した。
  • 意見交換会は、BPOが「向こう側」の存在ではなく、「こちら側」で一緒に試行錯誤する存在であるということ、また「こちら側」では、各局がそれぞれ共通の悩みを抱える同志でもあるということを知る大切な機会だと思う。

以上

第178回 放送倫理検証委員会

第178回–2022年12月

NHK BS1 東京五輪に関するドキュメンタリー番組への意見への対応報告を了承

第178回放送倫理検証委員会は12月9日に千代田放送会館で開催された。
委員会が9月9日に通知・公表したNHK BS1 東京五輪に関するドキュメンタリー番組への意見について、当該放送局から再発防止に関する取り組み状況などの対応報告が書面で提出され、その内容を検討した結果、報告を了承して公表することにした。
また、11月にBPOに寄せられた視聴者意見が報告され議論を行った。

議事の詳細

日時
2022年12月9日(金)午後5時~午後6時30分
場所
千代田放送会館
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、
大石委員、大村委員、西土委員、米倉委員

1. NHK BS1 東京五輪に関するドキュメンタリー番組への意見への対応報告を了承

9月9日に通知・公表したNHK BS1 東京五輪に関するドキュメンタリー番組への意見(委員会決定第43号)への対応報告が、当該放送局から委員会に書面で提出された。
報告書には、委員会決定の内容を全国の放送局に周知徹底した上で、再発防止を徹底する勉強会を200回以上実施していることや、放送倫理検証委員会の委員を招いて研修会を開催したことなどが記されている。また再発防止に向けて、全国の放送局に番組やコンテンツの正確さやリスクについてチェックする「コンテンツ品質管理責任者」を新たに配置したこと、「複眼的試写」の対象となる番組を拡大し、より明確なルールを設けたこと、ニュース企画用に「取材・制作の確認シート」のチェック項目を一部変更した「ニュースの確認シート」を新たに導入したこと、職員のジャーナリストとしての再教育にも不断に取り組んでいくことなどが報告されている。
委員からは、再発防止策が充実した内容になっている、ジャーナリスト教育等に触れている点を非常に興味深く拝見したなどの意見が出され、報告を了承し、公表することにした。
NHKの対応報告は、こちら(PDFファイル)

2. 11月に寄せられた視聴者意見を議論

ラジオ番組で俳優の急死を伝える際に違法薬物を使用していたかのような発言をパーソナリティーが繰り返していたこと、バラエティー番組の落とし穴企画の収録中にタレントが腰椎を圧迫骨折したこと、ドキュメンタリー番組で料理店の料理人を店長と紹介するなどの誤りがあったことなどを事務局が報告し、議論した。

以上

第177回 放送倫理検証委員会

第177回–2022年11月

10月に寄せられた視聴者意見を議論

第177回放送倫理検証委員会は11月11日に千代田放送会館で開催され、10月にBPOに寄せられた視聴者意見などが報告され議論を行った。

議事の詳細

日時
2022年11月11日(金)午後5時~午後7時
場所
千代田放送会館
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、
大石委員、大村委員、長嶋委員、西土委員、米倉委員

1. 10月に寄せられた視聴者意見を議論

民放局の報道情報番組に出演するコメンテーターが、安倍晋三元首相の国葬について大手広告代理店が関与したという趣旨の事実でない発言をしたことに対する当該放送局の対応、および他の民放局の報道番組が、同氏への「デジタル献花」に旧統一教会が影響している可能性を報じたことに多数の意見が寄せられたことを事務局が報告し、議論したが、討議に入るべき事案にはあたらないとの意見が大勢を占めた。

以上

第176回 放送倫理検証委員会

第176回–2022年10月

NHK BS1 東京五輪に関するドキュメンタリー番組への意見に対する報道について報告

第176回放送倫理検証委員会は10月14日に千代田放送会館で開催された。
委員会が9月9日に公表したNHK BS1 東京五輪に関するドキュメンタリー番組への意見について、テレビ、新聞がどう報じたのか報告された。
また、9月にBPOに寄せられた視聴者意見が報告され議論を行った。

議事の詳細

日時
2022年10月14日(金)午後5時~午後7時
場所
千代田放送会館
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、
大石委員、大村委員、長嶋委員、西土委員、米倉委員

1. NHK BS1 東京五輪に関するドキュメンタリー番組への意見の公表について報告

委員会は9月9日、NHK BS1 東京五輪に関するドキュメンタリー番組への意見の公表の記者会見(オンライン形式)を行った。今回の委員会では、NHKを含めテレビ、新聞がどのように報じたのかが報告された。これに関連して、総務省がNHKに対して行政指導を行ったことについて議論したところ、多くの委員から行政指導がなされたことについて懸念が示された。委員会は、番組内容に関する行政指導としては、2015年のNHK総合テレビ『クローズアップ現代』"出家詐欺"に対する文書による厳重注意以来の指導になること、委員会は「『クローズアップ現代』"出家詐欺"報道に関する意見」(委員会決定第23号)において、放送法5条は放送事業者が自らを律するための「倫理規範」であり、総務大臣が個々の放送番組の内容に介入する根拠ではなく、「放送局が自律的に番組基準を定め、これを自律的に遵守すべきことを明らかにしたものなのである。したがって、政府がこれらの放送法の規定に依拠して個別番組の内容に介入することは許されない。」との意見を表明していることを再度確認した。その上で、今回の行政指導は、NHKの報告書提出から約半年を経てなされたものであり、放送局が自主的にその原因を調査し再発防止策を検討して問題を是正すること自体が脅かされたとまではいえないこと等を踏まえて、委員会として意見を表明することはしないものの、委員会が議論を行ったことを公表することにより、今後も総務省の行政指導に対しては注視していくことを明らかにすることとした。

2. 9月に寄せられた視聴者意見を議論

9月に寄せられた視聴者意見のうち、安倍元首相の国葬報道・特別番組に対してさまざまな意見があったことや、民放番組のコメンテーターが、国葬に大手広告代理店が関与したという趣旨の事実に基づかない発言をし、訂正・謝罪に至ったことに対する批判的意見が多数寄せられたことなどを事務局が報告した。

以上

第175回 放送倫理検証委員会

第175回–2022年9月

NHK BS1 東京五輪に関するドキュメンタリー番組への意見の通知・公表について報告

第175回放送倫理検証委員会は9月9日にオンライン形式で開催された。
委員会が9月9日に行ったNHK BS1 東京五輪に関するドキュメンタリー番組への意見の通知・公表について、出席した委員長と担当委員から様子が報告された。
山梨放送が第26回参議院選挙期間中の7月2日に候補者が出演する番組『偉人の子孫を徹底リサーチ ハヤシソン!』を放送したこと、およびBS朝日が同選挙期間中の6月24日に『新・科捜研の女3』、7月8日に『暴れん坊将軍Ⅱ』を放送し、それぞれに候補者が出演していたことについて討議を行った。
第26回参議院議員選挙の投票日当日に、フジテレビが、討論番組『日曜報道THE PRIME』で、応援演説中に銃撃を受けて死亡した安倍晋三元首相の追悼番組を放送したことについて討議を行った。

議事の詳細

日時
2022年9月9日(金)午後5時~午後6時15分
場所
オンライン形式
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、
大石委員、大村委員、長嶋委員、西土委員、米倉委員

1. NHKBS1 東京五輪に関するドキュメンタリー番組への意見の通知・公表について報告

NHKは2021年12月26日に放送したBS1スペシャル『河瀨直美が見つめた東京五輪』後編の字幕の一部に不確かな内容があったとして、番組と局のホームページで公表し謝罪した。委員会は放送倫理違反の疑いがあるとして2月の委員会で審議入りを決め、議論を重ねてきた。審議を経て、委員会は次のとおり事実を認定した。①番組は五輪反対デモに参加していない男性を参加したかのように描くものだった。②男性のその他の発言についても事実の確証は得られていない。③別のデモに関する男性の発言を五輪反対デモに関するものであるかのように編集した。④男性に対し適切な説明をしなかった。そして、放送の結果、番組はデモの参加者はお金で動員されており、主催者の主張を繰り返す主体性のない人々であるかのような印象を視聴者に与え、デモの価値をおとしめたという問題も生じた。以上から、放送倫理基本綱領、NHK放送ガイドラインに反しているとして、重大な放送倫理違反があったと判断した。委員会は9月9日、当該局に対し意見書の通知を行い、続いて意見書の公表の記者会見(オンライン形式)を行った。同日に開催された9月の委員会では、委員会決定を伝えたNHKのニュース番組を視聴し、委員長と担当委員が通知・公表の様子について報告した。
通知と公表の概要は、こちら

2. 参議院選挙期間中に立候補者が出演した3番組について討議

委員会は、参議院選挙期間中に立候補者の出演番組を放送した以下の3番組について討議を行った。
① 山梨放送『偉人の子孫を徹底リサーチ ハヤシソン!』
山梨放送は第26回参議院選挙期間中である7月2日、『偉人の子孫を徹底リサーチ ハヤシソン!』を放送し、西郷隆盛の玄孫(やしゃご)である西郷隆太郎氏を取り上げた。同氏は6月6日、日本維新の会から比例代表候補として立候補表明をしていた。当該番組は他系列の放送局が1月8日に放送したものを購入して放送したものだった。
放送後、候補者の宣伝になるような番組を放送するのは山梨放送が応援しているようで大きな問題だという内容の視聴者意見がBPOに寄せられた。これを受けて委員会では、当該局に報告書と番組DVDの提出を求め、討議を行った。
報告書によれば、購入先の放送局から出演者リストを受けとった5月時点では西郷氏は立候補を表明しておらず、リストにもその記載はなかったという。また番組の素材チェックは公示2日前の6月20日に行われたが、同氏がいわゆるタレント候補ではなかったため担当者は立候補表明をしていたことに気づかず、そのまま放送した。
当該放送局は再発防止策として、購入番組は選挙期間中および公示1か月前からこれまでの担当者のほかに編成部員を加え二重の確認を行う、番組購入の際のチェック体制を一層強化することなどを挙げている。
② BS朝日『暴れん坊将軍Ⅱ』
③ BS朝日『新・科捜研の女3』
BS朝日は第26回参議院選挙期間中の6月24日に『新・科捜研の女3』、7月8日に『暴れん坊将軍Ⅱ』をそれぞれ放送した。
いずれも他局から番組を購入して再放送したもので『新・科捜研の女3』には候補者の石井苗子氏(日本維新の会・比例代表)、『暴れん坊将軍Ⅱ』には三原じゅん子氏(自由民主党・神奈川選挙区)がそれぞれ出演していた。
『暴れん坊将軍Ⅱ』は約40年前の1983年制作で、三原氏は素性を隠し市井にまぎれる将軍に、ある出来事を契機に恋心を抱く町娘の役。『新・科捜研の女3』は約15年前の2006年の制作で、石井氏は質店の社長だが、裏で金融業を営んでいて、融資先とのトラブルで殺害されるという役。三原氏および石井氏は、共に準主役であった。
BPOにはBS朝日から「参議院選挙候補者が選挙期間中に出演していた」旨の自主的な報告があり、また、視聴者からも「過去の出演とはいえ、公職選挙法に違反するのではないか」という意見が寄せられたため、委員会は当該局に報告書と番組DVDの提出を求め、討議を行った。
報告書には、出演者チェックやプレビューは購入時の4月のみで、放送直前には再度のプレビューを行わなかったこと、また、三原じゅん子氏は当時「三原順子」で芸能活動していたことをチェックの担当者が認識しておらず名前を見逃したこと、石井氏については番組資料の出演者リストの中に名前がなかったことなどが記載されていた。
また、再発防止策として、番組プレビューを購入時ではなく番組編成2週間前に行うことや、少なくとも選挙の公示・告示の1カ月前から内容・出演者が選挙期間にふさわしい作品かどうかを編成担当らが複数回確認する等が示されている。

上記の3番組は、委員会が過去に公表した3つの意見書で取り上げた問題を含んでいる。委員会は、2012年12月2日決定第9号「参議院議員選挙にかかわる4番組についての意見」において、参議院選挙期間中に再放送された番組に候補者が出演していた1番組について、放送倫理違反があるとは判断しなかったが、原因について出演者のチェックが行き届かなかったという単純なミスであることや選挙に対する関心の低さについて指摘をしている。
また、2013年4月には、知事選挙期間中に現職候補者の映像を放送したフジテレビのバラエティー番組『VS嵐』について、委員長談話を出し、参議院選挙の年であることに注意喚起も行っていたが、直後の参議院議員選挙期間中に再放送された番組に候補者が出演していた1番組があったため、委員会は、事態を重く見て、2014年1月8日第17号決定「2013年参議院議員選挙にかかわる2番組についての意見」において、視聴者に与える印象の程度は、他の候補者との間で公平・公正性が害されるおそれのある程度にまで達していることや選挙に対する全社的な意識づけの不足があった点も踏まえて放送倫理違反があると判断している。
さらに、2017年2月7日 第25号委員会決定「2016年の選挙をめぐるテレビ放送についての意見」においても、再放送された番組に候補者が出演していた1番組について審議を行っている(放送倫理違反とは判断していない)。
以上の意見書を踏まえて今回討議した3番組のうち、番組①は、候補者が番組の中で国のために働きたいなどの発言をし国政に出る気持ちが察せられたものの、放送に至る経緯をみれば、当該局に不注意があり、選挙と結びつける意図があったとは思われないこと、候補者がタレントでなかったことなどの事実が確認でき、番組②と③は選挙とは全く関係のない番組であることを踏まえて、いずれの番組も他の候補者との間で実質的には公平・公正性が害されるおそれがあるという程度にまでは達しているとまではいえないと考えられた。そして、いずれの放送局においても再発防止策がとられていることから、委員会は、その実効性に期待することとして、討議を終了した。
もっとも、参議院議員選挙のたびに、候補者が出演している再放送番組の放送が繰り返されることについて、委員から「いたちごっこ」になっているとして憂慮する声が相次ぎ、担当者のミスで終わらせるのではなく、出演者の名前を会社のシステムに登録しておくなどの仕組みによって防止できる可能性があること、放送番組は出演者にとっては利用価値のあるものであることを留意すべきであること、再放送であってもチェックには念を入れるべきであることなどの意見が出され、議事概要で改めて注意を喚起すべきであるとの結論で一致した。

3. 視聴者から「投票行動に多大な影響を与える」という意見が寄せられたフジテレビ『日曜報道THE PRIME』について討議

フジテレビは、第26回参議院議員選挙の投票日の7月10日(日)7時30分~8時55分に、討論番組『日曜報道THE PRIME』で、7月8日応援演説中に銃撃を受けて死亡した安倍晋三元首相の追悼番組『安倍晋三元首相を悼む…安倍氏の軌跡と日本の今後』を放送した。放送後、同番組について、視聴者からBPOに「実質的に特定の政党に投票を呼びかけるもので、公職選挙法に違反するのではないか」「放送法第4条、政治的に公平であることへの違反だ。投票行動に多大な影響を与える」といった意見が寄せられた。これを受けて委員会は、フジテレビに報告書と番組DVDの提出を求め、番組内容について討議した。
本件番組は、安倍元首相と所縁の深い3人の識者をコメンテーターとしてスタジオに招き、前半は、映像やコメンテーターが語るエピソードを通じて、安倍元首相の安全保障政策や外交政策の成果や功績について伝えた。後半は、銃撃事件の状況と警備上の問題点を専門家の解説を交えて伝え、選挙戦最終日を迎えた各党の同事件の受け止めを紹介し、最後に、コメンテーターが今後の日本はどうあるべきかについて語って終了した。
委員からは「自民党に直接つながることではないにしても、選挙の当日に、安倍元首相の功績や国際社会での評価を伝えることは、特定の政党の功績や評価を放送しているのと同じだと、視聴者に受け取られかねない」「番組の最後で、コメンテーターが、安倍氏の志を継いで憲法改正を岸田政権にやらせましょうと特定の政党へ投票を呼び掛けるに等しい内容の発言をしている。キャスティングの段階で、そういった発言が予期される場合、司会者や局側がどういう風にコントロールするのかを考えておくべきだ。番組制作のあり方に問題があったのではないか」という意見があった。
一方で「安倍元首相の襲撃事件を選挙前に報道した他の番組と比較して偏りがあるといえるだろうか」「特定の政党に投票を促すと認められる明示的な発言があったとまではいえないのではないか」「この番組が実際に投票行動を左右したかどうかを認定することは難しいのではないか」「銃撃事件のインパクトを考えると、週に1回編成されている番組が、その週を逃すと時期を逸するという気持ちになるのは分からなくもない。かなりレアな出来事に関して投票日当日に報道したということであれば、再発性は低いのではないか」という声があがった。
その上で、当該番組のみを取り上げて政治的な内容の番組に踏み込み具体的な判断を示すと、その判断が拡大解釈を招き、今後放送局が政治問題を伝えるにあたっての足かせになる恐れがあることに加え、当該番組が選挙についての報道・評論に関する番組とはいいがたく、他党の代表者の映像も含まれており、放送基準に照らして選挙の公正さや政治的公平性の問題として取り上げることは困難であるとして、本件番組については、委員から厳しい意見が出たことを議事概要に掲載して注意を喚起した上で、今回で討議を終了し、審議の対象とはしないとの結論に至った。

4. 8月に寄せられた視聴者意見を議論

8月に寄せられた視聴者意見のうち、ワイドショー番組などで旧統一教会に関連する様々な報道についての多様な意見や、情報番組で福島原発の処理水放出に関するコメンテーターの発言に対して批判的意見が寄せられたこと、宗教法人による悪質な霊感商法が社会問題となる中、霊能力者を自称する人物を番組出演させるのは不適切ではないかという意見があったことなどを事務局が報告した。

以上

2022年9月9日

NHK BS1 東京五輪に関するドキュメンタリー番組への意見の通知・公表

上記委員会決定の通知は9月9日午後1時30分からBPOで行われた。委員会から小町谷委員長、
高田委員長代行、西土委員、井桁委員の4人が出席し、NHKからは専任局長ら3人が出席した。
まず小町谷委員長から、NHKの報告等は字幕が誤っていたというトーンでまとめられているが、委員会は字幕の付け間違えという考えは取っていない。考えていただきたいのは、本件放送が視聴者に何を伝えたかということだ。五輪反対デモは確固たる信念を持った者が集まって行われているのではなく、主催者が金銭で参加者を組織的に動員し、主催者の意向に沿って行動させているという誤った印象を視聴者に与えることとなったと考える。なぜ、このような事態が起きたのか。委員会は取材、編集、試写の各段階に問題があると判断するに至ったとし、委員会決定に沿って問題点を説明した。
井桁委員は、重大な放送倫理違反と判断した理由について、単なる過失を超えていること、放送の影響が大きかったことの2点を挙げて説明した。コロナ禍での五輪開催という、国民の議論を二分するような大きなイベントに関して、その反対デモという一方当事者の信用や評価を傷つける結果となったことは否定できないと述べた。
高田委員長代行は、男性が五輪反対デモには行かないんだと繰り返して発言しているのにもかかわらず、なぜ、行くかもしれないといったようなことが番組のメインとして扱われることになったのか。一種の思い込みの暴走みたいなものに、なぜストップが掛けられなかったのか、非常に残念であり、疑問だと述べた。
西土委員は、国民が知りたいと思う社会的出来事に対する放送人の関心があって初めて、放送人の行動を規律する放送倫理が活きてくると思う。しかし、本件放送関係者はデモに対する関心が薄く、放送倫理違反に至ったということになる。本件放送は放送倫理の適用の在り方を検討する以前の問題を提起しているのではないか。その意味で、放送倫理を意識する上での条件を見直すべきことを問いかけているように思うと述べた。
これに対してNHKは、「指摘を真摯に受け止める」「取材や制作のあらゆる段階で真実に迫ろうとする放送の基本的な姿勢を再確認し、現在進めている再発防止策を着実に実行して、視聴者の信頼に応えられる番組を制作してまいりたい」と述べた。

その後、午後2時30分からオンライン形式による記者会見を開き、委員会決定を公表した。記者会見には57社118人が参加した。
はじめに小町谷委員長が、本件放送が視聴者に何を伝えたのか、何が問題だったのか、委員会決定に沿って説明し、放送倫理基本綱領及びNHK放送ガイドラインに基づき、重大な放送倫理違反があったと判断したと述べた。そして、従来、委員会が取り上げる事案は経験の少ないスタッフが関わるものが多かったが、最近は他局も含め、中堅スタッフが中心になったケースが散見される。中堅スタッフに何らかの問題があるとすると、若手スタッフの育成を担うことができないということになる。すると、全体として、放送の質が下がっていく可能性があり非常に危惧するところだ。そういうことのないよう、ぜひ、取材の基本である事実確認を改めて徹底していただきたいと述べた。
続いて井桁委員は、本件放送は悪意に基づくものではないかという憶測を呼んでしまったことも否定できない。1つのイベントに対する意見を、一方的におとしめるような悪意があったのかもしれないと思われてしまった。そのように視聴者に誤信させてしまったという影響も無視できないと考えていると述べた。
高田委員長代行は、一番印象に残っているのは、ヒアリングの際に現場スタッフの方のほぼ全員がデモとか、いわゆる社会的活動に関心がないということを、あっけらかんと語っていたことだ。もともと関心がない、だから深く考えなかったと繰り返していた。放送番組を作る側の感度、意識の低さというか、そういう部分も今回の問題の背景にあったのではないかと思うと述べた。
西土委員は、ある研究者の言葉(※)を借りるなら、「あるテーマのための集会に自らの身体を投入するという判断には、相当の決意」が必要なはずだ。五輪反対デモのように、政府の政策に、ある意味で反対する。そのために「自らの身体を人々の前に投入することは、何らかの損害を被るリスクを高める」と私も思う。リスクがあるにも関わらず、あえて声を出している人々の尊厳を傷つける結果となってしまった重大さをNHKは噛みしめていただきたいと述べた。
記者からは、委員会決定の付言:字幕問題に限定されるべきではなかった、について質問が重なった。「NHKが字幕問題に収れんしてしまった原因をどう考えるのか」という問いに対して小町谷委員長は、「まず、委員会は放送局の自律を支援するという立場にある。委員会が報告書の提出を依頼する前からNHKは報告書の準備を進めていた。そういう自律的な動きは尊重したい。ただ、委員会はNHKの報告書とは違う視点で本件を見たということだ。NHKの報告書がどうしてそうなったのか、私たちはそれを追及する立場にはない」と答えた。
「単なる字幕の付け間違いという問題ではないということだが、どういう問題だと認識しているのか」という質問に対して高田委員長代行は、「NHKの報告書と委員会決定を見比べるとわかると思うが、NHKの報告書には、五輪反対デモについての発言ではないものを、五輪反対デモのものとして編集したとか、そういったところは強く書かれていない。あるいは、男性は2時間ほどの取材の中で、カメラが回っている取材の中では、一貫して五輪反対デモには関心がない、自分は行かないということを言い続けたというところはNHKの報告書からは十分に読み取ることができない。しかし、委員会は検証の結果、そういう判断をしたということだ」と述べた。
その他の質問は、事実関係の確認に関するものが多かった。

(※)毛利透「集会の自由―あるいは身体のメッセージ性について」毛利編集『人権Ⅱ』(信山社、2022年)244頁以下

以上

第43号

NHK BS1 東京五輪に関するドキュメンタリー番組への意見

2022年9月9日 放送局:NHK

NHKは2021年12月26日に放送したBS1スペシャル『河瀨直美が見つめた東京五輪』後編の字幕の一部に不確かな内容があったとして、2022年1月9日、番組と局のホームページで公表し謝罪した。番組は、東京五輪の公式映画監督である河瀨直美さんと映画製作チームに密着取材したもの。男性を取材した場面で「五輪反対デモに参加しているという男性」「実はお金をもらって動員されていると打ち明けた」という字幕を付けて伝えた。放送後、視聴者から字幕の内容が事実であるかの問い合わせが相次ぎ、NHKが男性に確認したところ、実際に五輪反対デモに参加していた事実を確認できず、字幕の内容が不確かだったことがわかったという。
委員会は、取材、編集、考査、調査の各段階で問題があるのではないかといった厳しい意見が相次ぎ、放送倫理違反の疑いがあることから、2月の委員会で審議入りを決め、議論を重ねてきた。審議を経て、委員会は次のとおり事実を認定した。①番組は五輪反対デモに参加していない男性を参加したかのように描くものだった。②男性のその他の発言についても事実の確証は得られていない。③別のデモに関する男性の発言を五輪反対デモに関するものであるかのように編集した。④男性に対し適切な説明をしなかった。そして、放送の結果、番組はデモの参加者はお金で動員されており、主催者の主張を繰り返す主体性のない人々であるかのような印象を視聴者に与え、デモの価値をおとしめたという問題も生じた。以上から、放送倫理基本綱領、NHK放送ガイドラインに反しているとして、重大な放送倫理違反があったと判断した。

2022年9月9日 第43号委員会決定

全文はこちら(PDF)pdf

目 次

2022年9月9日 決定の通知と公表

通知は、2022年9月9日午後1時30分からBPOで行われた。
また公表の記者会見は、午後2時30分からオンライン会議システムを使用して行われ、委員長および担当委員が委員会決定の説明と質疑応答を行った。
会見には57社118人の参加があった。詳細はこちら。

2022年12月9日【委員会決定に対するNHKの対応と取り組み】

委員会決定 第43号に対して、当該のNHKから対応と取り組みをまとめた報告書が2022年12月8日付で提出され、委員会はこれを了承した。

NHKの対応

全文pdf

目 次

  • 1) 委員会決定の放送対応
  • 2) 放送現場への周知
  • 3) 経営委員会・放送番組審議会への報告
  • 4) 放送倫理委員会の開催
  • 5) コンテンツ品質管理連絡会の実施
  • 6) BPO 放送倫理検証委員会との研修会
  • 7) 再発防止に向けて

第174回 放送倫理検証委員会

第174回–2022年8月

NHK BS1スペシャル『河瀨直美が見つめた東京五輪』を審議
9月に委員会決定を通知・公表へ

第174放送倫理検証委員会は8月22日にオンライン形式で開催された。
2月の委員会で審議入りしたNHK BS1スペシャル『河瀨直美が見つめた東京五輪』について、担当委員から意見書の修正案が提出された。意見交換の結果、了承が得られたため、9月に当該放送局へ通知して公表することになった。

議事の詳細

日時
2022年8月22日(月)午後5時~午後7時30分
場所
オンライン形式
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、
大石委員、大村委員、長嶋委員、西土委員、米倉委員

1. NHK BS1のドキュメンタリー番組『河瀨直美が見つめた東京五輪』について審議

NHKは2021年12月26日に放送したBS1スペシャル『河瀨直美が見つめた東京五輪』後編の字幕の一部に不確かな内容があったとして、2022年1月9日、番組と局のホームページで公表し謝罪した。番組は、東京五輪の公式映画監督である河瀨直美さんと映画製作チームに密着取材したもの。男性を取材した場面で「五輪反対デモに参加しているという男性」「実はお金をもらって動員されていると打ち明けた」という字幕を付けて伝えた。放送後、視聴者から字幕の内容が事実であるかの問い合わせが相次ぎ、NHKが男性に確認したところ、実際に五輪反対デモに参加していた事実を確認できず、字幕の内容が不確かだったことがわかったという。
2月の委員会では、委員会からの質問に対する回答書、NHKが設置した「BS1スペシャル」報道に関する調査チームがとりまとめた調査報告書が提出され、それらを踏まえて議論を行った。同報告書では、字幕の内容は誤りであったとされている。議論の結果、取材、編集、考査、調査の各段階で問題があるのではないかといった厳しい意見が相次ぎ、放送倫理違反の疑いがあることから、放送に至った経緯等について詳しく検証する必要があるとして審議入りを決めた。
3月から7月までの委員会において、担当委員からヒアリングなどに基づいた意見書が提出され議論を行ってきた。今回の委員会では、前回委員会までの議論を踏まえ担当委員から示された意見書の修正案について意見が交わされた。その結果、合意が得られたため、表現などについて一部手直しの上、9月に当該放送局へ通知して公表することになった。

2. 7月に寄せられた視聴者意見を議論

7月に寄せられた視聴者意見のうち、安倍元首相の銃撃事件を伝えたニュースや特別番組の内容、参院選特番でのコメンテーターと候補者とのやり取り、参院選候補者の出演した番組などについて、批判的な意見が寄せられたことを事務局が報告した。

以上

第173回 放送倫理検証委員会

第173回–2022年7月

NHK BS1スペシャル『河瀨直美が見つめた東京五輪』を審議

第173回放送倫理検証委員会は7月8日に千代田放送会館で開催された。
2月の委員会で審議入りしたNHK BS1スペシャル『河瀨直美が見つめた東京五輪』について、担当委員から意見書の修正案が提出された。

議事の詳細

日時
2022年7月8日(金)午後5時~午後7時30分
場所
千代田放送会館BPO第一会議室
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、
大石委員、大村委員、長嶋委員、西土委員、米倉委員

1. NHK BS1のドキュメンタリー番組『河瀨直美が見つめた東京五輪』について審議

NHKは2021年12月26日に放送したBS1スペシャル『河瀨直美が見つめた東京五輪』後編の字幕の一部に不確かな内容があったとして、2022年1月9日、番組と局のホームページで公表し謝罪した。番組は、東京五輪の公式映画監督である河瀨直美さんと映画製作チームに密着取材したもの。男性を取材した場面で「五輪反対デモに参加しているという男性」「実はお金をもらって動員されていると打ち明けた」という字幕を付けて伝えた。放送後、視聴者から字幕の内容が事実であるかの問い合わせが相次ぎ、NHKが男性に確認したところ、実際に五輪反対デモに参加していた事実を確認できず、字幕の内容が不確かだったことがわかったという。
2月の委員会では、委員会からの質問に対する回答書、NHKが設置した「BS1スペシャル」報道に関する調査チームがとりまとめた調査報告書が提出され、それらを踏まえて議論を行った。同報告書では、字幕の内容は誤りであったとされている。議論の結果、取材、編集、考査、調査の各段階で問題があるのではないかといった厳しい意見が相次ぎ、放送倫理違反の疑いがあることから、放送に至った経緯等について詳しく検証する必要があるとして審議入りを決めた。
3月から6月までの委員会において、担当委員からヒアリングなどに基づいた意見書が提出され議論を行ってきた。今回の委員会では、前回委員会までの議論を踏まえ担当委員から示された意見書の修正案について意見が交わされた。
次回の委員会には、再び、意見書の修正案が提出される予定である。

2. 6月に寄せられた視聴者意見を議論

6月に寄せられた視聴者意見のうち、ニュース番組で参院選に向けた党首討論がなされた際の司会役の進行や、情報番組で前日の緊急地震速報を繰り返し使用したことに批判的意見が多数寄せられたことなどを事務局が報告したが、踏み込んだ検証が必要だという意見はなかった。

以上

第172回 放送倫理検証委員会

第172回–2022年6月

テレビ朝日『大下容子ワイド!スクランブル』視聴者質問の作り上げに関する意見への対応報告を了承

第172回放送倫理検証委員会は6月10日に千代田放送会館で開催された。
毎日放送のバラエティー番組『東野&吉田のほっとけない人』についての委員長談話が6月2日に公表され、その概要が報告された。
委員会が3月9日に通知・公表したテレビ朝日の情報番組『大下容子ワイド!スクランブル』視聴者質問の作り上げに関する意見について、当該放送局から再発防止に関する取り組み状況などの対応報告が書面で提出され、その内容を検討した結果、報告を了承して公表することにした。
2月の委員会で審議入りしたNHK BS1スペシャル『河瀨直美が見つめた東京五輪』について、担当委員から意見書の修正案が提出された。

議事の詳細

日時
2022年6月10日(金)午後5時~午後7時
場所
千代田放送会館BPO第一会議室
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、
大石委員、大村委員、長嶋委員、西土委員、米倉委員

1. 毎日放送『東野&吉田のほっとけない人』についての委員長談話の公表を報告

毎日放送が2022年元日に放送したバラエティー番組『東野&吉田のほっとけない人』について、5月の第171回委員会では、放送局としての自律的な自浄作用が機能しているとの一定の評価を行うとともに、質的公平性について踏み込むことは政治ジャーナリズムの足かせになる可能性があることを考え、紙一重のところで審議入りはしないとの結論に至った。その上で、当該番組に問題がなかったと誤解されるおそれもあることから討議入りとし、6月2日、委員長談話をBPOウェブサイトに公表した。
今回の委員会では、小町谷委員長から公表についての報告が行われ、事務局からは毎日放送のチェック体制の強化策など対応が説明された。

2. テレビ朝日『大下容子ワイド!スクランブル』視聴者質問の作り上げに関する意見への対応報告を了承

3月9日に通知・公表したテレビ朝日『大下容子ワイド!スクランブル』視聴者質問の作り上げに関する意見(委員会決定第42号)への対応報告が、当該放送局から委員会に書面で提出された。
報告書には、委員会決定の内容を社内に周知徹底した上で、社内各部署の危機管理担当者で構成される「放送倫理関連委員会」において、放送倫理違反があった点と、本件放送の5つの問題点についての説明が行われ、全社的な共有をしたことや、検証委員会の委員を招いて勉強会を開催したことなどが記されている。また再発防止に向けて、番組全般の管理の強化や、中堅、ベテラン向けの報道倫理研修を行い、「放送倫理ホットライン」を設置したことと共に、制作会社のテレビ朝日映像における再発防止策などが報告されている。
委員からは、再発防止に向けて「管理の強化」や「徹底的なチェック」などが挙げられているが、それ以前に放送ジャーナリストとしての基本的な確認作業を怠らないようにすべきだとの意見が出されたものの、委員会の意図するところはくまれているとして、報告を了承し、公表することにした。
テレビ朝日の対応報告は、こちら(PDFファイル)

3. NHK BS1『河瀨直美が見つめた東京五輪』について審議

NHKは2021年12月26日に放送したBS1スペシャル『河瀨直美が見つめた東京五輪』後編の字幕の一部に不確かな内容があったとして、2022年1月9日、番組と局のホームページで公表し謝罪した。番組は東京五輪の公式映画監督である河瀨直美さんと映画製作チームに密着取材したもの。男性を取材した場面で「五輪反対デモに参加しているという男性」「実はお金をもらって動員されていると打ち明けた」という字幕を付けて伝えた。放送後、視聴者から字幕の内容が事実であるかの問い合わせが相次ぎ、NHKが男性に確認したところ、実際に五輪反対デモに参加していた事実を確認できず、字幕の内容が不確かだったことがわかったという。
2月の委員会では、委員会からの質問に対する回答書、NHKが設置した「BS1スペシャル」報道に関する調査チームがとりまとめた調査報告書が提出され、それらを踏まえて議論を行った。同報告書では、字幕の内容は誤りであったとされている。議論の結果、取材、編集、考査、調査の各段階で問題があるのではないかといった厳しい意見が出され、放送倫理違反の疑いがあることから、放送に至った経緯等について詳しく検証する必要があるとして審議入りを決めた。
3月から5月までの委員会において、担当委員からヒアリングに関する報告に続き、意見書の原案が提出され議論を行ってきた。今回の委員会では、追加で実施した当該番組の関係者に対するヒアリングの内容が報告された。その上で、前回委員会までの議論を踏まえ担当委員から示された意見書の修正案について意見が交わされた。
次回の委員会には、再度、意見書の修正案が提出される予定である。

4. 5月に寄せられた視聴者意見を議論

5月に寄せられた視聴者意見のうち、知床観光船事故で犠牲になった男性がプロポーズの手紙をしたためていたことを放送したことについてプライバシーの侵害だと指摘する意見や、人気お笑い芸人の死去に関する報道がWHOの「自殺報道ガイドライン」に反していたと指摘する意見が、それぞれ複数あったことについて、事務局から概要が報告されたが、さらに踏み込んだ検証が必要だという意見はなかった。

以上