第157回 放送と人権等権利に関する委員会

第157回 – 2010年1月

「旅館再生リポート・女将の訴え」事案のヒアリングと審理

「拉致被害者家族からの訴え」事案の審理 ……など

「旅館再生リポート・女将の訴え」事案の当事者に対するヒアリングと審理が行われた。「拉致被害者家族からの訴え」事案の「委員会決定」案について審理し、内容を一部手直しのうえ来月の委員会で再度検討することになった。このほか、「割り箸事故・医療裁判判決報道」事案で「勧告」を受けたTBSから、「委員会決定」後の対応報告が提出された。

議事の詳細

日時
2010年 1月19日(火) 午後3時~8時
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
堀野委員長、樺山委員長代行、三宅委員長代行、大石委員、小山委員、坂井委員、武田委員、田中委員、山田委員

「旅館再生リポート・女将の訴え」事案のヒアリングと審理

この事案は2009年7月17日のフジテレビ『FNNスーパーニュース』の放送内容をめぐって、宮城県の温泉旅館の女将が申し立てたもの。放送は不況下での旅館の女将さんたちの奮闘ぶりを紹介したが、申立人は売り上げが伸びない旅館という負のイメージを視聴者に与え、温泉街も暗いシーンばかりが編集されるなど事実に反する内容だったとして、謝罪などを求めている。これに対してフジテレビは「当番組はニュース・報道番組であり、取材に基く事実を伝えたものです」と主張している。
今月の委員会ではヒアリングとその後の審理を行った。
ヒアリングで申立人は「最初から最後まで『元気ある温泉地を撮らせてもらいたい、頑張っているところを撮らせてもらいたい』ということだけで、一言も『再生』という言葉は聞かなかった。あるひとつのストーリーがあって、それに私たちが話したことの部分、部分をつなぎ合わせて当てはめたような形の放送になっていると思った。報道番組に結果的に傷つけられた。バラエティー番組とは違ってきちんとしたことを伝えるべき報道番組で、そういう放送をしていいのか」などと述べた。
フジテレビからは報道局の担当者3人が出席し「口頭の説明や文書によって、企画の意図が正確に伝わっていたことは明らかだと考える。不況に立ち向かい、再生に向かって頑張っている姿を描くという当初の企画意図は放送まで一切変わっていない。頑張った結果、温泉街が活気に溢れているか、宿泊客数が伸びているかについては実際に取材した印象やデータなどをそのまま放送した。ただ、結果的に取材に協力していただいた方々に不愉快な思いをさせてしまったのは残念で、今後より細かい神経の遣い方をしていきたい」などと述べた。
ヒアリングのあと審理したが、次回2月の委員会でもさらに審理を続けることになった。

「拉致被害者家族からの訴え」事案の審理

前回の委員会で「委員会決定」の方向が固まったのを受け、起草委員が「委員会決定」案をまとめた。これを1月7日の起草委員会で検討しこの日の委員会に提出した。
審理の結果、「委員会決定」案に大筋では異論は出なかったものの、一部内容と表現の手直しが必要との結論となり、来月の委員会で再度修正案を検討することになった。
本事案は、2009年4月24日のテレビ朝日『朝まで生テレビ!』で司会者のジャーナリスト田原総一朗氏が拉致被害者の横田めぐみさんと有本恵子さんの名前を挙げ、「生きていないことは外務省も分っている」などと発言したことについて、「北朝鮮による拉致被害者家族連絡会」から「最も重大な人権侵害である」として申立てがあったもの。

「上田・隣人トラブル殺人事件報道」事案の審理

テレビ朝日が2008年12月23日の『報道ステーション』で、「特集 身近に潜む境界トラブルの悲劇・住宅地の惨劇はなぜ起きた」を放送したのに対し、被害者遺族から申立てがあり、先月の委員会で審理入りが決まった。
この日の委員会では、これまでに提出された申立人側の「申立書」と被申立人側(テレビ朝日)の「答弁書」に基づいて、本事案の主な論点について整理した。次回委員会以降、本格的な審理を行う。
放送は、2008年11月に長野県上田市で老夫婦が隣人に殺害された事件を取り上げ、狭い私道を挟んで住む被害者と加害者の、車による通行をめぐるトラブルが直接の原因となったが、そもそもは明治時代に行われた精度の低い測量に基づく公図の境界線が曖昧で複雑なことも一因ではないかとしている。
この放送について申立人は「両親の長年に亘る嫌がらせが殺害の動機との内容は事実ではない。放送は両親の社会的評価を著しく低下させるものであり、両親に対する敬愛追慕の情を著しく侵害された。さらに子供である申立人本人の名誉も侵害された」と主張している。
これに対しテレビ朝日は、「番組は決して被害者を貶めるつもりで放送したものではなくまた、謝罪、訂正が必要な事実誤認もなかった」と反論している。

「割り箸事故・医療裁判判決報道」事案でTBSから対応報告

本事案で重大な放送倫理違反があったとして昨年10月30日に勧告を受けたTBSは、「委員会決定」後の対応と取り組みをまとめ、1月12日に委員会に提出した。事務局からその内容について報告し了承された。
(TBSの報告内容は、ホームページの「放送人権委員会委員会決定第41号」にある「当該局の対応」の項をご参照下さい。)

12月の苦情概要

12月中に BPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・・・3件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・・・・50件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

  • 来年度の委員会日程について事務局より報告し、定例の委員会を本年度と同じく毎月第3火曜日に開催することで了承された。
  • 3月25日にBPO年次報告会が開かれることになり事務局より報告した。
  • 次回委員会は2 月16 日(火)に開かれることになった。

以上

第156回 放送と人権等権利に関する委員会

第156回 – 2009年12月

「拉致被害者家族からの訴え」事案のヒアリングと審理

「旅館再生リポート・女将の訴え」事案の審理 ……など

「拉致被害者家族からの訴え」事案のヒアリングと審理が行われ、「委員会決定」案の起草に入ることになった。「旅館再生リポート・女将の訴え」事案の審理の結果、1月の委員会で当事者へのヒアリングを行うことが決まった。審理要請案件について審議し、審理入りが決まった。

議事の詳細

日時
2009年 12月15日(火) 午後3時~7時50分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
堀野委員長、樺山委員長代行、三宅委員長代行、大石委員、小山委員、坂井委員、武田委員、田中委員、山田委員

「拉致被害者家族からの訴え」事案のヒアリングと審理

本事案は、2009年4月24日のテレビ朝日『朝まで生テレビ!』で司会者のジャーナリスト田原総一朗氏が横田めぐみさんと有本恵子さんの名前を挙げ、「生きていないことは外務省も分っている」と発言したことについて「北朝鮮による拉致被害者家族連絡会」から最も重大な人権侵害と申立てがあったもの。
この日は双方の当事者に対するヒアリングとその後の審理が行われた。ヒアリングは午後3時過ぎからBPO内会議室で行われた。申立人である家族会側から4名、被申立人のテレビ朝日側からは3名がそれぞれ出席し、申立人側、被申立人側の順で約1時間ずつ行われた。
申立人は質問に対し「大事な命が連れ去られ、何も分らない日々が20年続いた。親としてはどこかで必ず生きていると信じて命がけで頑張ってきた。そういう中で田原さんの発言があった」、「田原氏の発言は公共の電波を使って被害者が生きていないと印象付けるもので救出運動への妨害であり、被害者の帰国を妨げることによって彼らの人権をも傷つけるものだ」などと述べた。
これに対し、被申立人は「生放送中の事前に想定していない発言であり直ちには判断がつきかねた。発言内容の事実関係や経緯を確認するため、放送後、田原氏から複数回にわたり聞き取りを行うなどした。そのうえでテレビ朝日として確認できていないことが放送されたとの認識の下、5月29日の当該番組でお詫びした」と述べた。
ヒアリング後も審理を行った結果、「委員会決定」の方向が大筋で固まった。起草委員が決定案をまとめ、次回委員会でその内容を検討することになった。

「旅館再生リポート・女将の訴え」事案の審理

この事案は本年7月17日のフジテレビ『FNNスーパーニュース』の放送内容をめぐって、宮城県の温泉旅館の女将が申し立てたもの。放送は不況下での旅館の女将さんたちの奮闘ぶりを紹介したが、申立人は売り上げが伸びない旅館という負のイメージを視聴者に与え、温泉街も暗いシーンばかりが編集されるなど事実に反する内容だったとして、謝罪などを求めている。これに対してフジテレビは「当番組はニュース・報道番組であり、取材に基く事実を伝えたものです」と主張している。
前回11月の委員会で審理入りして今月も審理を続行し、申立人の旅館の温泉街ともう一方の温泉地の旅館の取り上げ方などをめぐって意見を交わした。そして、1月の委員会でヒアリングを実施することになった。

審理要請案件

テレビ朝日が2008年12月23日の『報道ステーション』で、「特集 身近に潜む境界トラブルの悲劇・住宅地の惨劇はなぜ起きた」を放送したのに対し、被害者遺族から申立てがあった。
申立人は「両親の長年にわたる嫌がらせが、殺害の動機との放送内容は事実ではない。また、本件放送は、両親を”嫌がらせを行った人物””常識のない人物”としてその社会的評価を著しく低下させるものであり、両親への敬愛追慕の情を著しく侵害された。さらにそのような両親の子供として、申立人本人の名誉も侵害された」と主張している。
委員会は申立人から提出された「申立書」及び「関連資料」、被申立人から出された「交渉経緯と見解」「同録DVD」等をもとに審理入りするかどうかについて協議した結果、次回委員会から実質審理に入ることとした。
放送は、2008年11月に長野県上田市で老夫婦が隣人に殺害された事件を取り上げたもの。被害者と加害者は狭い私道を挟んで住んでおり、車による通行をめぐるトラブルが原因となったが、そもそもは明治時代に行われた精度の低い測量公図によって曖昧で複雑な境界線を生じさせたことも一因ではないかと伝えた。
テレビ朝日は上記申立て内容に対し、「番組は決して被害者を貶めるつもりで放送したものではなく、また、謝罪、訂正放送が必要な事実誤認もなかった」と反論している。

仲介・斡旋解決事案

事務局より下記の仲介・斡旋解決事案について報告し、了承された。

「夫の死亡ニュースに際し、息子の名前をスーパーされた」との訴え

四国のテレビ局が2009年7月、ニュース番組で元参議院議員の死亡ニュースを報じた際、画面に息子(現職衆議院議員)の名前を40秒間スーパーで入れるというミスを犯し、4分後に同じ番組内で訂正・お詫びを放送した。
この放送について、死亡した議員の家族から、「訂正放送をすればそれで放送局の責任は免れるのか、葬式を前に悲嘆にくれている家族に多大な精神的ショックと混乱を与えておきながら何の説明もお詫びもない」との苦情が放送人権委員会に寄せられた。
委員会では、当事者に対する謝罪のあり方が問題とされているケースであることから、当該局に対して、まず家族に誠意を持って説明するなど当事者間での話し合いを勧めた。
その後、当該局が家族へ話し合いを申し入れたところ、対応の遅れなどの経過説明を求められたため、ミスの発生から訂正にいたるまでの経緯と「関係者への連絡が遅かったという批判を謙虚に受け止めたい」とのお詫びを記した文書を役員名で送付した。
これに対し、家族は丁寧な説明を受けたとして、この「説明・お詫び」を受けいれることにし、その旨当該局に伝えた。また、放送人権委員会堀野委員長宛てに手紙を寄せ、問題が解決したことを連絡するとともに、被害者の立場から「誤報の影響が予想される場合は少しでも早く当事者に連絡していただくことを放送局側に要望したい」と述べている。

(放送2009年7月 解決12月)

11月の苦情概要

11月中に BPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・・15件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・・・ 92件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

  • 12月2日福岡で開かれた「放送人権委員会委員との意見交換会」について事務局より報告した。
    当日は9人の委員全員と事務局からも9名が出席、九州・沖縄地区の各局からは31社・86名が参加し、意見交換会では過去最高の参加者数となった。また、取材も8社8名の記者とテレビカメラ4台が入り、当日夕方から夜にかけてのテレビ各局の地元ニュースや翌朝の新聞で会の模様が報道された。
    参加者への事後アンケートでは、多くが委員との直接の意見交換を有意義だったとしているが、ディスカッションにもう少し時間が欲しかったとの声もあった。個別のテーマでは、モザイクや顔なしなど最近の「匿名映像」の多用について、報道の信頼性の観点からあくまでも実名報道・モザイクなしを原則とすべきだとする委員の意見に励まされた、議論が有益だったとする声が相次いだ。
    また、この種の会合をもっと頻繁に、各地で開いてほしいとの要望もあった。
    なお、予想を越える参加者数となったため、会場が狭かったとの声も多く聞かれた。
  • 事務局より以下の件について報告した。
    12月11日にTBSで「委員会決定」についての研修会が行われ、堀野委員長が「保育園イモ畑」事案と「割り箸」事案の決定内容について説明し、制作・報道の現場スタッフなどと意見を交換した。局側から200名近くが参加した。
  • 11月26日に東京で開かれた「BPO第1回事例研究会」について事務局より報告した。
  • 次回委員会は2010年1月19日(火)に開かれることになった。

以上

第155回 放送と人権等権利に関する委員会

第155回 – 2009年11月

「拉致被害者家族からの訴え」事案の審理

「旅館再生リポート・女将の訴え」事案の審理 ……など

「拉致被害者家族からの訴え」事案の審理が行われ、来月の委員会で当事者へのヒアリングを実施することが決まった。「旅館再生リポート・女将の訴え」事案の実質審理が始まった。このほか、「保育園イモ畑の行政代執行をめぐる訴え」事案で勧告を受けたTBSから「委員会決定に対する対応と取り組み」が提出され、事務局から報告した。

議事の詳細

日時
2009 年 11月17日(火) 午後4時~7時45分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
堀野委員長、樺山委員長代行、三宅委員長代行、小山委員、坂井委員、武田委員、山田委員

「拉致被害者家族からの訴え」事案の審理

この事案は2009年4月24日深夜と5月29日深夜のテレビ朝日『朝まで生テレビ!』において、番組司会者・田原総一朗氏の発言に重大な人権侵害と放送倫理違反があったとして、拉致被害者の家族で組織する「北朝鮮による拉致被害者家族連絡会」から申立てがあったもの。田原氏は4月24日放送の上記番組で横田めぐみさんと有本恵子さんの名前を挙げ、「生きていないことは外務省も分かっている」などと発言した。
この日の委員会では先月に続き、 (1)田原氏の発言内容についてどう判断するか、(2)放送局側の対応と責任についてはどう考えるか、の2点を中心に各委員が意見を述べ、突っ込んだやり取りを交わした。この結果、来月の委員会で申立人、被申立人の双方に対するヒアリングを実施し、それぞれの主張について詳しく尋ねた上でさらに議論を深めることとなった。

「旅館再生リポート・女将の訴え」事案の審理

この事案は本年7月17日のフジテレビ『FNNスーパーニュース』の放送内容をめぐって、宮城県の温泉旅館の女将が申し立てたもの。前回10月の委員会で審理入りが決まり、今月から審理を開始した。
放送は不況下での旅館の女将さんたちの奮闘ぶりを紹介したが、申立人は売り上げが伸びない旅館という負のイメージを視聴者に与え、温泉街も暗いシーンばかりが編集されるなど事実に反する内容だったとして、謝罪などを求めている。これに対してフジテレビは「当番組はニュース・報道番組であり、取材に基く事実を伝えたものです」と主張している。
委員会では、事務局が双方から提出された書面をもとにまとめた論点を説明した後、番組の趣旨と放送内容をめぐって意見を出し合った。
次回の委員会も審理を続ける。

「保育園イモ畑の行政代執行をめぐる訴え」事案でTBSから対応報告書

本事案で重大な放送倫理違反があったとして今年8月7日に勧告を受けたTBSは、「委員会決定」後の対応と取り組みをまとめ、通知から3か月後の11月6日に委員会に提出した。事務局からその内容について報告し了承された。

(TBSの報告内容は、ホームページの「放送人権委員会委員会決定第40号」にある「当該局の対応」の項をご参照下さい。)

「委員会決定」の通知・公表についての報告

(1) 「割り箸事故・医療裁判判決報道」事案

10月30日に行われた上記事案の「委員会決定」の通知・公表について、事務局から、その概要とTBSをはじめとしたテレビの放送対応及び新聞記事の資料を配布し、報告を行った。またTBSが『みのもんたの朝ズバッ!』(当該番組)で決定内容の報告とお詫びを放送した同録DVDを視聴した。

(2) 「派遣法・登録型導入報道」事案

11月9日に行われた上記事案の通知・公表について、事務局から、その概要を次のとおり報告し、これを受けたテレビ各局の放送内容及び新聞記事をまとめた資料を配付した。

通知の席で今回の決定について申立人は、「派遣切りなど現状の雇用不安については、1985年の派遣法成立には何も問題がなかった。今日の事態を招くことになったのは、その後の99年の原則自由化、2004年の製造業への解禁などによる。自分たちの主張を認められなかったのは残念だ」と述べた。
これに対し堀野委員長は、「公の立場にある人への判断であり、本人にとってはきついものになったとは思う。しかし、決定についての批判・論争は大いにやって然るべきだと思う」と語り、委員会決定は決して一方的なものでなく、意見交換することが大切だとの考えを示した。

またこの決定を受け、当該番組のテレビ朝日・朝日放送の『サンデープロジェクト』は、11月15日の番組の最後の部分で、これについて約2分間伝えたが、委員会ではこの同録DVDを視聴した。

10 月の苦情概要

10 月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・・ 5件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・・ 77件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

  • 事務局より下記のとおり報告し了承された。
    九州・沖縄地区のBPO加盟各社を対象に12月2日福岡で開かれる「放送人権委員会委員との意見交換会」への出席者が32社・86名となった。当日は放送人権委員会の活動と役割について堀野委員長が基調スピーチを行うほか、取材・放送に係わる人権や放送倫理上の問題について、各局報道・制作現場関係者と放送人権委員との間で討議を行う。
  • 次回委員会は12 月15 日(火)に開かれることになった。

以上

第154回 放送と人権等権利に関する委員会

第154回 – 2009年10月

「割り箸事故・医療裁判判決報道」事案の審理

「派遣法・登録型導入報道」事案のヒアリングと審理 ……など

「割り箸」事案の「委員会決定」の内容が固まり、10月30日に当事者へ通知し、会見で公表することが決まった。「派遣法」事案の「委員会決定」案について審理し、大筋で了承された。「拉致被害者家族からの訴え」事案の実質的な審理が始まった。このほか、審理要請案件の審理入りが決まった。

議事の詳細

日時
2009年10 月20 日(火) 午後3時 ~8時
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
堀野委員長、樺山委員長代行、三宅委員長代行、大石委員、小山委員、坂井委員、武田委員、田中委員、山田委員

「割り箸事故・医療裁判判決報道」事案の審理

東京在住の勤務医とその家族から申立てのあった「割り箸事故・医療裁判判決報道」事案は、10月7日に開かれた2回目の起草委員会で検討された「委員会決定」案について、その内容が報告され、取りまとめに向けての意見が交わされた。その結果、若干の修正はあるものの、大筋として了承を得たのを受け、10月30日に申立人、被申立人双方に対する通知及び公表を行うことを決定した。
この申立ては、TBSのニュース情報番組『みのもんたの朝ズバッ!』で2008年2月12日に放送された割り箸事故を巡る判決報道が、事実誤認及び捏造を含む内容で、医師としての社会的評価を低下させるものであり、名誉を侵害し、不公平な報道であると訴えてきたものである。

「派遣法・登録型導入報道」事案のヒアリングと審理

テレビ朝日・朝日放送の『サンデープロジェクト』の特集、「派遣法制定、登録型導入報道」(2009年2月1日および8日放送)により名誉侵害などを受けたとの訴えについて、起草委員会が策定した「委員会決定案」をめぐって、審理が行われた。 この番組は、昨年秋以降の派遣切り・雇用不安の拡大を受け、「派遣法」の問題点、特に「登録型」に焦点を当てて2回にわたって特集したもので、「登録型」を入れるに当たって主導的役割を果たしたのが、元労働次官と労働問題専門の経済学者の2人であったと、多くの関係者や本人のインタビューを積み重ねて伝えたもの。
これについて、元労働次官と経済学者、当時の労働省事務官の3人が「インタビューの質問と答えを勝手に切り貼りして、局の都合良い内容に捏造された。派遣法に登録型を『ひっそりと』盛り込んだなどの表現を多用し、派遣切りなどの雇用不安を産みだした犯人だと攻撃され、名誉を侵害された」として、局に対し訂正と謝罪の放送を求めている。
これまで4回の委員会では、双方から出された文書や放送同録、当時の資料などで審理を続け、先月には申立人・被申立人を呼んで、個々に事情を聴取するヒアリングを行った。 これら審理を通じて、この事案の判断について各委員が意見を述べ、それをもとに起草委員会が「委員会決定案」をまとめ、この日の委員会に提出した。
委員会では、この「委員会決定案」を巡り審理を続けた結果、大枠では了承されることとなった。しかし一部に文章の加筆・修正も提案されたことから、これらを踏まえた「第2次決定案」を起草委員会がまとめ、今後持ち回りの委員会で了承を得る運びとなった。
なお、持ち回り委員会で了承が得られた場合は、11月上旬にも、この「決定」の通知・公表を行う方針も決めた。

「拉致被害者家族からの訴え」事案の審理

8月の委員会で審理入りが決まっていたものの、事案が重なったことなどから実質審理が延びていた。今月の委員会から本格的な審理に入った。
申立人である「北朝鮮による拉致被害者家族連絡会」は、2009年4月24日深夜のテレビ朝日『朝まで生テレビ!』において、番組司会者・田原総一朗氏が拉致被害者の横田めぐみさんと有本恵子さんの名前を挙げ、「生きていないことは外務省も分かっている」と発言したことについて、「人の生死に関する安易な発言は、名誉毀損以上に最も重大な人権侵害である」とし、テレビ朝日に田原発言の撤回と謝罪などを求めている。これに対し、テレビ朝日は「社として確認できていない内容が生放送され、家族や関係者にご不快の念を抱かせ、視聴者の方々の誤解を招いた」として5月29日の上記番組内で謝罪している。
この日の委員会では、改めて本事案の主な論点について確認した後、(1)田原氏の発言内容についてどう判断するか、(2)局側の対応と責任についてはどう考えるか、の2点を中心に各委員がひとりひとり意見を述べた。
次回の委員会では、さらに突っ込んだ議論を交わすことになった。

審理要請案件

本年7月17日のフジテレビ「FNNスーパーニュース」の放送をめぐって宮城県の温泉旅館の女将が事実に反する内容だったと申し立てた。委員会は審理入りするかどうかについて審議した結果、申立ては運営規則が定める要件を充たしているとして審理に入ることを決めた。
放送は、不況下での旅館の女将さんたちの奮闘ぶりを紹介したが、申立人は売上げが伸びない旅館という負のイメージを視聴者に与え、温泉街も暗いシーンばかりが編集されるなど事実に反する内容だったとして、フジテレビに対し謝罪などを求めている。これに対してフジテレビは「当番組はニュース・報道番組であり、取材に基づく事実を伝えたものです」と主張している。
来月の委員会から審理が開始される。

仲介・斡旋解決事案

事務局より以下の件について報告し、了承された。

「インタビューの編集により誤解を招いたとの訴え」事案

在京テレビ・キー局が2009年6月、ニュース番組で放送した”地方空港の開港”をめぐるニュース特集で、取材を受けた地元企業の社長が、インタビューの肝心な部分が削除されたことにより、名誉を侵害されたとしてその回復を訴え、放送人権委員会に苦情を寄せた。
訴えの内容は、「国内線が決まっていないのは残念だ。しかし、国際線の乗り入れが決まっているので心配していない」とインタビューで答えたが、その前半部分だけ放送され、開港を期待している地元企業の仲間に対し、自分があたかも開港に悲観的な意見の持ち主のように放送され誤解を招いたというもので、当該局に対し、名誉回復措置をとるよう要望していた。
委員会では、当該局に対し、被取材者と誠意を持って話し合うよう勧めていたところ、9月末になって、報道局長名で「説明とお詫び」の文書を出すこととなり、話し合いで決着することになった。
この文書の中で当該局は、「被取材者の考えを十分に汲み取った放送をできなかったことを申し訳なく思っています」と述べている。

9月の苦情概要

9月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・・0件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・ 64件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

  • BPO加盟各社を対象に11月26日に開かれる第1回「BPO事例研究会」のテーマが決まった。当日は、「事実確認のあり方」と「訂正放送のあり方」をテーマに2件の事案を取り上げる。事務局より報告し了承された。
  • 次回委員会は11月17日(火)に開かれることになった。

以上

第153回 放送と人権等権利に関する委員会

第153回 – 2009年9月

「派遣法・登録型導入報道」事案のヒアリングと審理

「割り箸事故・医療裁判判決報道」事案の審理 ……など

「派遣法」事案の当事者に対するヒアリングと詰めの審理を行った。「割り箸」事案の審理では「委員会決定」案の内容について検討した。また、「拉致被害者家族からの訴え」事案については本格的な審理に向け、論点の整理を行った。このほか仲介・斡旋解決事案についての報告があった。

議事の詳細

日時
2009年 9月15日(火) 午後3時20分~7時20分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
堀野委員長、樺山委員長代行、三宅委員長代行、大石委員、 小山委員、坂井委員、武田委員、田中委員、山田委員

「派遣法・登録型導入報道」事案のヒアリングと審理

テレビ朝日・朝日放送の『サンデープロジェクト』の特集、「派遣法制定、登録型導入報道」(2009年2月1日および8日放送)により名誉侵害などを受けたとの訴えについて、申立人・被申立人からのヒアリング(事情聴取)を個々に行い、これを受けての4回目の審理が行われた。
この番組は、昨年秋以降の派遣切り・雇用不安の拡大を受け、「派遣法」の問題点、特に「登録型」に焦点を当てて2回にわたって特集したもので、「登録型」を入れるに当たって主導的役割を果たしたのが、元労働次官と労働問題専門の経済学者の2人であったと、多くの関係者や本人のインタビューを積み重ねて伝えたもの。
これについて、元労働次官と経済学者、当時の労働省事務官の3人が「インタビューの質問と答えを勝手に切り貼りして、局の都合良い内容に捏造された。派遣法に登録型を『ひっそりと盛り込んだ』などの表現を多用し、派遣切りなどの雇用不安を生みだした犯人だと攻撃され、名誉を侵害された」として、局に対し訂正と謝罪の放送を求めている。
これまで3回の委員会では、双方から出された文書や放送同録、当時の資料などにより審理を続けて来たが、9月15日には申立人・被申立人を呼んで、個々に事情を聴取するヒアリングを行った。
ヒアリングではまず申立人の3人が出席、「インタビューの切り貼りなどによる捏造」と「『ひっそりと盛り込んだ』などの表現で、元労働次官と経済学者の2人を個人攻撃した」という2点を中心に主張した。
一方、被申立人のテレビ朝日・朝日放送からは、番組プロデューサーやチーフディレクターら4人が出席した。そして「申立人ら多くの関係者の取材を通じ、多角的に検証し事実を基に放送したもので、インタビューの切り貼りという指摘も当たらず、事実の捏造などは行っていない。また「登録型」がいつの間にか派遣法に盛り込まれた様子を『ひっそりと』と表現したもので、申立人を個人攻撃しているものではなく、論評の範囲内と考える」と主張した。
委員会はヒアリングの後、最終判断の方向付けを協議、「委員会決定」案の作成作業に入ることを決めた。次回委員会ではこの「委員会決定」案について検討される見込み。

「割り箸事故・医療裁判判決報道」事案の審理

9月1日の起草委員会でまとめられた「委員会決定」案が提示され、審理を行った結果、数カ所にわたって修正を加える必要があるとの結論に達し、再度、次回委員会で「委員会決定」修正案を基に審理を行うこととなった。
この申立ては、東京都在住の勤務医とその家族から、TBSのニュース情報番組『みのもんたの朝ズバッ!』で2008年2月13日に放送された、割り箸事故を巡る判決報道が、事実誤認及び捏造を含む内容で、医師としての社会的評価を低下させるものであり、名誉を侵害し、不公平な報道であると訴えてきたものである。

「拉致被害者家族からの訴え」事案の審理

この事案は、2009年4月24日深夜と5月29日深夜に放送されたテレビ朝日『朝まで生テレビ!』において、番組司会者・田原総一朗氏の発言に人権侵害と放送倫理違反があったとして、「北朝鮮による拉致被害者家族連絡会」から申立てがあったもの。
申立人側の「申立書」と被申立人側(テレビ朝日)の「答弁書」は既に提出されていたが、前回の委員会の後、「答弁書」に対する申立人側の「反論書」と、「反論書」に対する被申立人側の「再答弁書」が提出され、双方の主張が出揃った。
これを受け、この日の委員会では本事案の主な論点について整理した。次回委員会以降、本格的な審理を行う。

仲介・斡旋解決事案

事務局より下記の仲介・斡旋解決事案について報告し、了承された。
「匿名を要求したのに実名放送された」との訴え 在京テレビ・キー局が2009年4月に放送した”介護保険”をめぐる報道番組で、取材された人(東京在住)から、「匿名を求めたのに実名が放送されたため、世間に知られたくなかった母親の病状が明るみに出てしまった」とテレビ局に抗議があった。
テレビ局は、「母親の映像を出さないことを了解した時点で、顔出し取材に応じ介護の実態を話してくれた長女の実名を出すことは、承認されたものと思って放送した」と釈明した。しかし長女は納得せず、謝罪と再放送の際は匿名にするよう求めた。
テレビ局は3日後に再放送を行ったが、その際、名前の部分を平仮名に変えただけで放送したため、長女はさらに憤慨し、誠意ある謝罪と、映像を再び使用しない約束を求め、放送人権委員会に訴えた。 放送人権委員会では、テレビ局に対し、被取材者を傷つける意図がなかったことや、その取材のあり方、放送のあり方について誠意を持って説明し、納得してもらうよう話し合いを勧めていた。この結果、9月に入って、テレビ局から相手方に対し下記の内容の文書が示され、長女もこれを納得、この事案は解決した。
文書で示された内容は、このような問題の再発防止のため、1)取材協力者に対し、撮影取材が始まる前に番組の趣旨を十分説明する。2)実名か匿名かの事前確認を徹底する。3)苦情に対しては取材担当者レベルでなく、速やかに責任者を集めて真摯に検討し、責任者が直接誠意を持って説明する。の3点となっている。また、テレビ局は、番組の再放送に当たっては、取材協力者の了解なしには行わないことも約束した。

(放送2009年4月 解決9月)

8月の苦情概要

8月中に BPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・・11件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・ 103件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

事務局から以下の報告が行われた。

  • BPOの各委員会が公表した「見解」や「勧告」の内容について、テレビ・ラジオ会員各社に理解を深めてもらい、日々の放送活動に生かしてもらうことを目的に、新たに「BPO事例研究会」がスタートすることになり、事務局より報告した。 11月26日に第1回が開かれる予定。
  • 次回委員会は10月20日(火)に開かれることになった。

以上

第152回 放送と人権等権利に関する委員会

第152回 – 2009年8月

「割り箸事故・医療裁判判決報道」事案のヒアリングと審理

「派遣法・登録型導入報道」事案の審理 ……など

「割り箸」事案の当事者に対するヒアリングと詰めの審理を行った。「派遣法」事案は論点を絞り込んで審理し、次回委員会でヒアリングを実施することになった。このほか、「拉致被害者家族からの訴え」事案については事務局から資料説明を行った。

議事の詳細

日時
2009年8月18日(火) 午後3時~8時10分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
堀野委員長、樺山委員長代行、三宅委員長代行、大石委員、小山委員、坂井委員、武田委員、田中委員、山田委員

「割り箸事故・医療裁判判決報道」事案のヒアリングと審理

この申立ては、東京在住の勤務医とその家族から訴えてきたもの。TBSのニュース情報番組『みのもんたの朝ズバッ!』で2008年2月13日に放送された割り箸事故をめぐる判決報道が、事実誤認及び捏造を含む内容で、医師としての社会的評価を低下させるものであり、名誉を侵害し、不公平な報道であると主張している。
審理入りしてから6回目となる8月18日の委員会において、申立人、被申立人(TBS)から直接意見を聞くヒアリングを行った。申立人側は、医師本人は事情があって出席せず、家族3人が出席した。一方、TBS側は担当プロデユーサーら3名が出席した。
席上、申立人は「本番組でTBSが設定した事実関係は、民事裁判の判決の事実認定と著しく齟齬するので不正確である。このことは判決要旨をよく読んでいないことに起因する事実誤認、もしくは担当医師や病院を痛めつけるための一部捏造である」と述べた。これに対し、TBSは「今回の放送は医療現場と、患者が求めている医療について、いろいろな問題を抱えている中、その一端をしめす例として割り箸事故を取り上げた。裁判の対象となった医師あるいは病院に対して、何らかの攻撃をする意図は元々ない。また申立人が指摘している事実認定の部分については、判決要旨をベースにVTRを構成したもので誤りはない」と主張した。
ヒアリング終了後、審理を行い、「委員会決定」案の作成作業に入ることとした。次回委員会では、「委員会決定」起草案を基にさらに審理を重ねる予定である。

「派遣法・登録型導入報道」事案の審理

テレビ朝日・朝日放送の『サンデープロジェクト』の特集、「派遣法制定、登録型導入報道」(2009年2月1日および8日放送)により名誉侵害などを受けたとの訴えについての3回目の実質審理が行われた。
この番組は、昨年秋以降の派遣切り・雇用不安の拡大を受け、「派遣法」の問題点、特に「登録型」に焦点を当てて2回にわたって特集したが、「登録型」を入れるに当たって主導的役割を果たしたのが、元労働次官と労働問題専門の経済学者の2人であったと、多くの関係者や本人のインタビューを積み重ねて伝えたもの。
これについて、当の元労働次官と経済学者らが「インタビューの質問と答えを勝手に切り貼りして、局の都合良い内容に捏造された。派遣法に登録型を『ひっそりと』盛り込んだなどの表現を多用し、2人が派遣切りなどの雇用不安を生みだした犯人だと攻撃され、名誉を侵害された」として、局に対し訂正と謝罪の放送を求めている。
これまで2回の審理で、各委員の意見がほぼ出そろったことから、この日の審理では、起草委員がまとめた「論点整理」に基づき、申立人が強く主張している、「インタビューの質問と答えを勝手に切り貼りした捏造報道であり、派遣法に登録型を『ひっそりと』盛り込み、派遣切りなどの雇用不安を生みだした犯人だと攻撃された」という点などについて検討した。 この結果、次回委員会で双方へのヒアリングを行い、問題点を詰めることになり、起草委員によってヒアリング項目の策定を急ぐことになった。

「拉致被害者家族からの訴え」事案の審理

2009年4月24日深夜と5月29日深夜に放送されたテレビ朝日『朝まで生テレビ!』において、番組司会者・田原総一朗氏の発言に人権侵害と放送倫理違反があったとして、「北朝鮮による拉致被害者家族連絡会」(以下、「家族会」)から申立てがあり、8月4日の委員会で審理入りが決まった。18日の委員会までにテレビ朝日より「答弁書」が提出されたが、この日は他事案の審理もあり、事務局からの資料説明のみとし、実質審理を次回に持ち越した。
4月24日の上記番組で、田原氏は拉致被害者の横田めぐみさんと有本恵子さんの名前を挙げ、「生きていないことは外務省も分かっている」などと発言した。この発言について、家族会は「根拠なく2人を生きていないと発言した。人の生死についての安易な発言は、名誉毀損やプライバシーの侵害以上に重大な人権侵害である」などと主張し、田原発言の放送での撤回と謝罪などをテレビ朝日に求めている。
これに対し、テレビ朝日は「答弁書」で、「社として確認できていない内容が生放送され、拉致被害者のご家族や関係者にご不快の念を抱かせたこと、視聴者の方々の誤解を招いたことをまことに申し訳なく存じている。そのため、5月29日深夜に、当社、および田原氏の謝罪を放送した」としている。

「保育園イモ畑の行政代執行をめぐる訴え」事案の通知・公表

上記事案の「委員会決定」を8月7日に通知・公表したが、その概要とテレビ対応および新聞記事についての資料を事務局が配付し、当該局であるTBSが決定内容を伝えたニュース番組と『サンデージャポン』(当該番組)のビデオを視聴した。堀野委員長は「TBSの放送は大変ていねいだった。記者会見では熱心な質問が出て、新聞でも多くのスペースを割いて報道された。4月から新体制になった委員会の最初の決定として、良かったのではないか」と述べた。

その他

次回委員会は9月15日(火)に開かれることになった。

以上

第151回 放送と人権等権利に関する委員会

第151回 – 2009年8月

「保育園イモ畑の行政代執行をめぐる訴え」事案の審理

「割り箸事故・医療裁判判決報道」事案の審理 ……など

6月29日に続いて臨時の委員会開催となった。8月7日に通知・公表が行われる「保育園」事案の「委員会決定」について最終確認が行われた。「割り箸」事案と「派遣法」事案の実質審理が行われ、「割り箸」事案では次回委員会でヒアリングが行われることになった。また、審理要請案件「拉致被害者家族からの訴え」について審理入りが決まった。

議事の詳細

日時
2009年8月4日(火) 午後3時~8時
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
堀野委員長、樺山委員長代行、三宅委員長代行、大石委員、小山委員、坂井委員、武田委員、田中委員、山田委員

「保育園イモ畑の行政代執行をめぐる訴え」事案の審理

本事案の「委員会決定」の通知・公表が8月7日に行われることになり、その最終確認が行われた。
本事案は、大阪府の保育園の理事が、道路建設のため保育園の野菜畑が行政代執行によって強制収用された当日、園児たちを現場に動員して並ばせたなどと事実に反することを、2008年10月19日のTBS『サンデージャポン』で放送され、名誉を侵害されたと申し立てたもの。
* 8月7日、TBSに対し、重大な放送倫理違反があったとして、「勧告」が通知された。「委員会決定」の全文はこちらへ。)

「割り箸事故・医療裁判判決報道」事案の審理

本事案は、東京都在住の勤務医とその家族から、2008年2月13日にTBSのニュース情報番組『みのもんたの朝ズバッ!』で放送された、割り箸事故を巡る判決報道の内容が、事実誤認及び捏造を含む内容で、医師としての社会的評価を低下させるものであり、名誉を侵害されたと申し立てられたもの。
8月4日の委員会では、番組の同録DVDを改めて視聴し、起草委員から提出された論点整理を基に、特に放送倫理上の問題点などについて審理を行った。次回、8月18日の委員会では、申立人、TBS双方に対するヒアリングを行い、直接意見を聞き、さらに審理を進めることとした。

「派遣法・登録型導入報道」事案の審理

テレビ朝日・朝日放送の『サンデープロジェクト』の特集、「派遣法制定、登録型導入報道」(2009年2月1日および8日放送)により名誉侵害などを受けたとの訴えが出され、この事案の審理入りが5月の委員会で決まっていた。この間、審理事案が多いことや申立人の都合などにより当事案の審理が遅れていたが、この日は6月委員会に次ぐ2回目の実質審理を行った。
この中では、申立人が強く主張している、「インタビューの質問と答えを勝手に切り貼りした捏造報道であり、派遣法に登録型を『ひっそりと』盛り込み、派遣切りなどの雇用不安を産みだした犯人だと攻撃された」という点などについて検討した。
この結果9月15日の委員会で双方へのヒアリングを行い、問題点を詰めることになった。

審理要請案件~拉致被害者家族らからの訴え

この案件は、2009年4月24日と5月29日に放送されたテレビ朝日『朝まで生テレビ!』において、番組司会者・田原総一朗氏の拉致問題についての発言に人権侵害と放送倫理違反があったとして、「北朝鮮による拉致被害者家族連絡会」(以下、「家族会」)と、その支援団体である「北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会」(以下、「救う会」)から申立てがあったもの。
8月4日の委員会では、申立人から提出された「申立書」および「関連資料」、テレビ朝日から提出された「交渉の経緯と局の見解」、「関連資料」ならびに「番組同録DVD」をもとに、本件申立ての審理に入るかどうかを慎重に検討した。この結果、本件を家族会からの申立てとして審理に入ることを決定した。
4月24日放送の上記番組で、田原氏は北朝鮮による拉致被害者の横田めぐみさんと有本恵子さんの名前を挙げ、「二人が生きていないことは外務省も分かっている」などと発言した。これに対し、家族会と救う会はテレビ朝日と田原氏に対し、「何の根拠もなく2人を生きていないと発言した。人の生死についての安易な発言は、名誉毀損やプライバシーの侵害以上に重大な人権侵害である」と抗議した。テレビ朝日と田原氏は文書と5月29日放送の上記番組とで謝罪し釈明したが、申立人らは納得せず、その後も双方の間で話し合いの場が持たれたが決着がつかなかった。

7月の苦情概要

7月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・1件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・・45件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

  • 放送人権委員会では、放送人権委員とBPO加盟各局との間での意見交換会を、毎年各地区で開いているが、今年は九州・沖縄地区の放送局を対象に、福岡で12月2日に開くことが決まった。事務局より報告し、了承された。
  • 『放送人権委員会判断基準 追補2009』がこのほど発行され、事務局より報告した。去年6月に発行された『BRC判断基準2008』に続くもので、2008年4月から2009年3月までに審理した4事案について示した判断基準をまとめた。サイズはB6変型版で71ページ。新たに「テレビ番組の文字情報によるインターネット配信」などの判断基準が盛り込まれている。加盟各社に配布するほか、入手希望の方には郵送料実費負担で頒布する。 (詳しくはトピックスへ)
  • 次回委員会は8月18日(火)に開かれることになった。

以上

第150回 放送と人権等権利に関する委員会

第150回 – 2009年7月

「保育園イモ畑の行政代執行をめぐる訴え」事案の審理

「割り箸事故・医療裁判判決報道」事案の審理 ……など

「保育園」事案の審理の結果、本事案の「委員会決定」が大筋で固まった。また、「割り箸」事案の実質審理が行われたほか、「徳島・土地改良区横領事件報道」事案で、今年3月に勧告を受けたテレビ朝日のその後の対応について報告があった。「派遣法」事案の審理は、次回委員会に持ち越しとなった。

議事の詳細

日時
2009年7月21日(火) 午後3時~8時
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
堀野委員長、樺山委員長代行、三宅委員長代行、大石委員、小山委員、坂井委員、武田委員、田中委員、山田委員

「保育園イモ畑の行政代執行をめぐる訴え」事案の審理

6月29日のヒアリング後に発足した起草委員会での検討を経た「委員会決定」案が提案された。審理の結果、大筋で了承され、委員長と起草委員で一部修正のうえ、持ち回り委員会によって最終決定することになった。また、一部委員は決定理由などについて補足意見を書く意向を示した。
本事案は、大阪府の保育園の理事が、道路建設のため保育園の野菜畑が行政代執行によって強制収用された当日、園児たちを現場に動員して並ばせたなどと事実に反することを、2008年10月19日のTBS『サンデージャポン』で放送され、名誉を侵害されたと申し立てたもの。

「割り箸事故・医療裁判判決報道」事案の審理

本事案は、東京都在住の勤務医とその家族から、2008年2月13日にTBSのニュース情報番組『みのもんたの朝ズバッ!』で放送された、割り箸事故を巡る判決報道の内容が、事実誤認及び捏造を含む内容で、医師としての社会的評価を低下させるものであり、名誉を侵害されたと申し立てられたもので、7月の委員会では申立人からの「反論書」「反論書補充書」、TBSからの「再答弁書」を受けて、5月の委員会に引き続き、判決報道のやり方として適切であったかどうか、公正さに欠ける点があるのかどうか、などについて実質審理を重ねた。
次回委員会では、さらに論点をまとめて審理を進めることとした。

「徳島・土地改良区横領事件報道」事案の当該局対応

上記事案で重大な放送倫理違反があったとして、今年3月30日に「勧告」を受けたテレビ朝日は、その後の対応と取り組みを取りまとめた報告書を委員会に提出した。事務局より報告し、了承された。
(テレビ朝日の報告内容は、ホームページの「放送人権委員会委員会決定第39号」にある「当該局の対応」の項をご参照下さい。)

仲介・斡旋解決事案の報告

事務局より下記案件について報告し、了承された。

「引ったくり事件の被害者が取材を拒否したのに実名報道された」と抗議

2009年5月24日、在阪の民放テレビ局が、ニュース番組の中で、引ったくり事件の被害者を実名で報道した。この放送内容について、被害にあった女性は、「事件後、取材に来た記者に対して”プライバシーに関することなので取材はお断りします”とはっきり言ったのに、ニュースで、実名、職業、年齢などのプライバシーが報道され、多大な精神的苦痛を受けた。犯人はなお、逃走中だ」と局に訴えた。 
これに対し、当該局は、「取材拒否を実名報道拒否とは受け止めなかった。事件報道では実名報道が原則」と説明したが、女性は納得せず、局側の謝罪を求めて放送人権委員会に苦情を申し立ててきた。事務局では、当該局に対し、女性に納得してもらえるよう説明するなど話し合いでの解決を勧めた。
双方で話し合った結果、7月13日に当該局担当者が女性宅を訪ね、「お詫び」の文書を提出した。これにより問題は解決を見た。「お詫び」の内容は、(1)取材を拒否した被害者の真意を汲み取り、実名報道の適否についてより慎重に対応すべきだった。(2)今後は、被害者から匿名を希望された場合には、その理由と事件の重大性などを比較考量し判断していくなどというもの。
事務局からの問い合わせに対し、女性は、「プライバシーを侵された怒りは消えませんが、改善策を含めたお詫びがあったことを前向きに受け止め、これで解決とします」と述べている。

その他

次回委員会は8月4日(火)に臨時で開かれることになった。

以上

第149回 放送と人権等権利に関する委員会

第149回 – 2009年6月

「保育園イモ畑の行政代執行をめぐる訴え」事案のヒアリングと審理

「派遣法・登録型報道」事案の審理 ……など

当面する事案の審理を迅速・的確に行うため、10年ぶりに臨時の委員会が開かれ、「保育園」事案のヒアリングと審理が行われた。この結果、「委員会決定」の起草の方向がほぼ固まった。また、「派遣法・登録型導入報道」事案の論点整理、審理要請案件についての審議等が行われた。

議事の詳細

日時
2009年 6月29日(月) 午後3時~7時
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
堀野委員長、樺山委員長代行、三宅委員長代行、大石委員、小山委員、坂井委員、武田委員、田中委員、山田委員

「保育園イモ畑の行政代執行をめぐる訴え」事案のヒアリングと審理

本事案の当事者に対するヒアリングを実施した。
この事案は、大阪府の保育園の理事が、道路建設のため保育園の野菜畑が行政代執行によって強制収用された当日、園児たちを現場に動員して並ばせたなどと事実に反することを放送され、名誉を侵害されたと申し立てたもの。
番組は2008年10月19日放送のTBS『サンデージャポン』。ヒアリングには申立人と、被申立人であるTBSから担当プロデューサーら3人が出席し、それぞれ1時間ずつ実施した。
申立人は「次から次へ事実と異なることを放送された。園児たちの映像は前日に撮影されたのに、あたかも行政代執行の当日、私が現場に並べさせ盾にして抵抗したかのような放送だった。『せめて保育園なら子どもを第一に考えて欲しかった』というコメンテーターの発言は、子どもたちをあずかる私たちの仕事に対する最大の侮辱だ。訂正放送はされたが、私の意向はまったく無視された。」と述べた。
TBS側は「初めて映像を見たコメンテーターが間違った認識で議論を展開してしまった。ナレーションやテロップで日付を明示し、コメンテーターや一般視聴者が勘違いしないようにすべきだった。また、コメンテーターとの事前の打ち合わせが足りず、発言の間違いに気づかなかった放送中の進行管理体制にも問題があった。訂正放送では申立人の要望に沿って訂正・お詫びし、名誉は回復されたと考える」と述べた。
ヒアリング終了後は審理を続け、「委員会決定」の方向がほぼ固まった。3名の起草委員が決定案を起草し、次回の委員会で検討することになった。

「派遣法・登録型報道」事案の審理

テレビ朝日・朝日放送の『サンデープロジェクト』の特集、「派遣法制定、登録型導入報道」(2009年2月1日および8日放送)により名誉侵害などを受けたとの訴えが出され、4月の委員会で審理入りが決まった。
この日の委員会では2回目の審理を予定していたが、他事案の審理や申立人の事情もあり、今回は実質審理を見送った。このため委員会は、事務局からの簡単な「論点整理」の報告と、今後のスケジュールの検討に止めた。
この結果、次回の7月委員会で本格的な審理を行い、8月の委員会でヒアリングという方向で進めることになった。

審理要請案件について審議

「宗教団体からの訴え」について審議した結果、審理対象外と決定した。
この申立ては、「在京の民間放送局が2009年1月29日のニュース番組で、事実ではない事項を放送し、当団体の名誉・信用を不当に毀損したので、放送法に基づき視聴要請をしたにもかかわらず、当該局は何も対応をせず、事実上拒否している。委員会で、当該局に対し視聴させるよう勧告して欲しい」というもの。
委員会では、委員会運営規則の第5条(苦情の取り扱い基準)は、放送された番組の内容を審理対象とすると規定していることから、本件のような視聴請求は審理の対象外であると結論付け、この旨、申立人に通知することになった。

その他

次回委員会は7月21日(火)に開かれることになった。

以上

第148回 放送と人権等権利に関する委員会

第148回 – 2009年6月

「保育園イモ畑の行政代執行をめぐる訴え」事案の審理

「派遣法・登録型報道」事案の審理 ……など

先月に引き続き、「保育園イモ畑の行政代執行をめぐる訴え」事案の審理を行った。また、「派遣法・登録型導入報道」事案の実質審理が始まった。

議事の詳細

日時
2009年 6月16日(火)  午後3時~6時20分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
堀野委員長、樺山委員長代行、三宅委員長代行、大石委員、小山委員、坂井委員、武田委員、田中委員、山田委員

「保育園イモ畑の行政代執行をめぐる訴え」事案の審理

前回に引き続き審理を行った。この事案は、大阪の保育園の理事が、道路建設のため保育園の野菜畑が行政代執行によって強制収用された当日、園児たちを現場に動員して並ばせたなどと事実に反することを情報バラエティー番組で放送され、名誉を侵害されたと申し立てたもの。番組は2008年10月19日放送のTBS「サンデージャポン」。
この日の委員会には、申立人の「反論書」とTBSの「再答弁書」が提出された。前回の審理をふまえ、名誉毀損はあったか、番組の性格を考慮すべきか、訂正放送は十分だったかなどの各点について、意見の集約に向けて審理した。
次回6月29日の委員会では、申立人、TBS側双方に対してヒアリングを実施することになった。

「派遣法・登録型報道」事案の審理

テレビ朝日・朝日放送の「サンデープロジェクト」の特集、「派遣法制定、登録型導入報道」(2009年2月1日および8日放送)により名誉侵害などを受けたとの訴えが出され、この事案の審理入りが4月の委員会で決まり、今回の委員会で初めて実質審理を行った。
はじめに、申立人・被申立人双方の主張をまとめた論点整理を行い、その後各委員がこの事案についての大まかな感想や意見を述べた。
その中では、「番組は熱心な調査報道である」という感想の一方、「言葉の使い方や映像の出し方はどうだったか」と言った声もあり、これらの意見を受け、次回委員会では議論の筋道を立て、委員会決定に向けて更なる審理を進めることになった。

「割り箸事故・医療裁判判決報道」事案の審理について

本事案は、東京都在住の勤務医らから、08年2月にTBSのニュース情報番組「みのもんたの朝ズバッ!」で放送された、割り箸事故を巡る判決報道の内容が医師の名誉を侵害したなどとして申立てがあったもの。申立人から提出される「反論書」、これに対するTBS側の「再答弁書」の提出を受け、6月の委員会で審理を続ける予定であったが、「再答弁書」が6月末に提出されることから、今回の委員会では実質審理は行わず、7月の委員会より審理を再開することとした。

5月の苦情概要

5月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・ 2件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・・83件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

次回委員会は6月29日(月)に開催し、「保育園イモ畑の行政代執行をめぐる訴え」事案の当事者に対するヒアリングが行うこととした。

以上

第147回 放送と人権等権利に関する委員会

第147回 – 2009年5月

「保育園イモ畑の行政代執行をめぐる訴え」事案の審理

「割り箸事故・医療裁判判決報道」事案の審理 ……など

3件の審理事案のうち、「保育園イモ畑の行政代執行をめぐる訴え」事案と「割り箸事故・医療裁判判決報道」事案の実質審理が始まった。「派遣法・登録型導入報道」事案については、事情により今月は審理を見送った。

議事の詳細

日時
2009年5月19日(火) 午後4時~7時
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
堀野委員長、樺山委員長代行、三宅委員長代行、大石委員、小山委員、坂井委員、武田委員、田中委員、山田委員

「保育園イモ畑の行政代執行をめぐる訴え」事案の審理

先月の委員会で審理入りが決まり、今月から実質審理が始まった。
この事案は、大阪の保育園の理事が、道路建設のため保育園の野菜畑が行政代執行によって強制収用された当日、園児たちを現場に動員して並ばせたなどと事実に反することを情報バラエティー番組で放送され、名誉を侵害されたと申し立てたもの。
番組は2008年10月19日放送のTBS「サンデージャポン」。「申立書」によると、子どもたちが並んでいる映像は行政代執行前日の記者会見で撮影されたもので、この映像をもとにコメンテーターらが「無理やり並べさせられてかわいそう」などとストーリーを展開させており、ねつ造以外のなにものでもなく、訂正放送も全くおざなりだとしている。そして、具体的な事実誤認とコメンテーターの誤った発言に触れた訂正放送と名誉毀損の具体的内容に触れた謝罪の放送などを求めている。
TBSは審理入りの決定を受けて「答弁書」を提出し、この中で「理事に直接謝罪し、事実誤認に関しては、訂正・お詫び放送を行ったことから当社としては意を尽くしたつもりでおります。」としている。当日の委員会では、同録ビデオを改めて視聴したあと、各委員がビデオ部分とコメンテーターによるスタジオトーク、訂正放送について意見や感想を述べあった。
委員会は、申立人の「反論書」とTBSの「再答弁書」の提出を受けて、6月の委員会も審理を続行し、その次の委員会でヒアリングを行うことを決めた。

「割り箸事故・医療裁判判決報道」事案の審理

先月の委員会で審理入りが決まり、今月から実質審理が始まった。
申立ては、東京都在住の勤務医らから、2008年2月13日にTBSのニュース情報番組『みのもんたの朝ズバッ!』で放送された、割り箸事故をめぐる判決報道の内容が、事実誤認及び捏造を含む内容で、医師としての社会的評価を低下させるものであり、名誉を侵害し、信用を失墜した。さらに申立人本人及びその関係者に事前に取材することもなく、一方に偏った不公平な報道であると訴えてきたもの。これに対しTBSは、医療事件をめぐる刑事判決と民事判決を比較しながら、医療機関には「最善の注意」を果たしてもらいたいとの観点から放送したもので、名誉を毀損したとの認識はない。また、医師側への「事前取材」がなかったとの指摘については、刑事と民事の判決を比較するに際しては必要不可欠なものとは考えてはいないと反論している。
委員会では、まずTBSから提出された同録ビデオを視聴した上、医師側から提出された「申立書」とTBS側から出された「答弁書」をもとに論点を整理し、議論に移った。この日の議論では、番組全体の内容と論調、スタジオでのゲストやコメンテーターの論評などについて意見が交わされた。この結果、申立人側から提出される予定の「反論書」、これに対する被申立人側からの「再答弁書」の提出を待ち、次回委員会でさらに論点を絞って審理を進めることとなった。

「派遣法・登録型報道」事案 審理日程の検討

この事案については先月の委員会で審理入りが決まったが、申立人側の事情を考慮して今月は審理を見送ることとし、今後のスケジュールについてのみ検討した。
なお、「サンデープロジェクト」はテレビ朝日と朝日放送の共同制作であることから、この事案の当該局はテレビ朝日と朝日放送の2局とすることになった。

4月の苦情概要

4月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・4件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・71件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

  • 「徳島・土地改良区横領事件報道」事案で、「重大な放送倫理違反」という「委員会決定」(3月30日に通知・公表)を受けたテレビ朝日で、5月14日に決定内容についての研修会が行われ、講師を務めた三宅委員長代行及び事務局より報告があった。
    この研修会は「委員会決定」に対する局側の理解を深めてもらうとともに、局の現場の声を聞いて意思疎通を図る目的で開かれた。当該番組である『報道ステーション』のスタッフなど約80人が参加し、三宅委員長代行がパワーポイントによるレジュメを示しながらわかりやすく解説し、質問や疑問に答えた。三宅代行は「新しい試みであり今後の参考にしてほしい」と報告した。
    報告を受けて堀野委員長は「『委員会決定』は局が姿勢を変えたり、考えたりしていく始まりであり、今後はこうして欲しいという趣旨からも、この試みを続けていく意味があると思う」と語った。
  • 次回委員会は6月16日に開かれることとなった。また、6月29日に臨時の委員会を開くことを決めた。

以上

第146回 放送と人権等権利に関する委員会

第146回 – 2009年4月

委員長代行の指名

審理要請案件 ……など

堀野新委員長の下で初の定例委員会が開かれ、委員長代行に樺山、三宅の両委員が指名された。続いて、3件の審理要請案件について協議し、いずれも審理入りが決った。次回委員会から実質的な審理に入る。

議事の詳細

日時
2009(平成21)年4月21日(火)午後4時~6時40分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
堀野委員長、樺山委員長代行、三宅委員長代行、大石委員、 小山委員、坂井委員、武田委員、田中委員、山田委員

委員長代行の指名

冒頭、堀野委員長が、委員長代行に樺山委員(印刷博物館館長・新任委員)と三宅委員(弁護士・再任委員)を指名し、2人もこれを受諾した。堀野委員長は「再任委員と新任委員、法律家と非法律家という観点で選ばせていただいた」と語った。
この後、新体制のスタートに伴う委員会冒頭の撮影取材が行われ、新聞・テレビ各社から計14社・26名が集まり、スチールカメラ9台、テレビカメラ7台が入った。

審理要請案件

3件の審理要請案件について、それぞれ「申立書」と、局側から提出された「交渉の経緯と見解」及び「番組同録ビデオ」をもとに協議した。この結果、3件とも審理入りが決定し、次回委員会から実質的な審理に入ることとなった。

  • 「派遣法・登録型導入報道」事案

    この事案は、テレビ朝日『サンデープロジェクト』が、2009年2月1日および8日の2回にわたって特集した「派遣法誕生」の放送内容をめぐるもので、委員会で協議の結果、申立ての要件を充たしているとして、5月の委員会から実質審理に入ることを決定した。
    この特集では、最近の雇用破壊・派遣切りの原点が「派遣法」の制定にあり、特に「登録型」導入に問題があったとしているが、この番組の中で、「法制定を積極的に進めたのは元労働事務次官と元大学教授の2人であると名指しで個人攻撃され、名誉・信用を侵害された」として、両名らが訂正及び謝罪の放送を求めて申し立てた。
    これに対しテレビ朝日は、「特集は、不安定雇用の原因とされる『労働者派遣法』を検証する企画であった。特に見直しの検討も言われる「登録型」について、その成立の過程と問題点を指摘したもので、この問題を放置してきた「行政の不作為」についても検証している。決して、当時、法の制定に関わった方々を個人的に糾弾するものではない」と反論している。

  • 「割り箸事故・医療裁判判決報道」事案

    東京在住の勤務医らから申立てのあった「割り箸事故・医療裁判判決報道」事案について協議した結果、申立ての要件を充たしているとして、5月の委員会から実質審理に入ることを決定した。
    申立ては、2008年2月にTBSのニュース情報番組『みのもんたの朝ズバッ!』で放送された、割り箸事故を巡る判決報道が、事実誤認及び捏造を含む内容で、医師としての社会的評価を低下させるものであり、名誉を侵害し、不公平な報道であると訴えてきたもの。
    これに対しTBSは、医療事件を巡る刑事判決と民事判決を比較しながら、医療機関には「最善の注意」を果たしてもらいたいとの観点から放送したもので、名誉を毀損したとの認識はないと反論している。

  • 「保育園イモ畑の行政代執行をめぐる訴え」事案

    この事案は、大阪の保育園の理事が、道路建設のため保育園の野菜畑が行政代執行によって強制収用された当日、園児たちを現場に動員して並ばせたなどと事実に反することを情報バラエティー番組で放送され、名誉を侵害されたと申し立てたもの。委員会で協議の結果、本件についてはBPOの放送倫理検証委員会で討議された経緯があるものの、申立ては要件を充たしているとして審理入りを決めた。
    番組は2008年10月19日放送のTBS『サンデージャポン』。「申立書」によると、子ども達が並んでいる映像は行政代執行前日に撮影されたもので、この映像をもとにコメンテーターらが「無理やり並べさせられてかわいそう」などとストーリーを展開させており、ねつ造以外のなにものでもなく、訂正放送も全くおざなりだとしている。そして、具体的な事実誤認とコメンテーターの誤った発言に触れた訂正放送と名誉毀損の具体的内容に触れた謝罪の放送などを求めている。
    TBSは「理事に直接謝罪し、説明不足はあるものの、事実誤認に関しては訂正・お詫び放送を行ったことから当社としては意を尽くしたつもりでおります」としている。

3月の苦情概要

3月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・5件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・149件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

  • 3月30日に行われた「徳島・土地改良区横領事件報道」事案の「委員会決定」の通知と公表について、決定を受けての当該局・テレビ朝日『報道ステーション』での報道や新聞各紙での記事掲載について、事務局より報告があった。
  • 次回委員会は5月19日(火)に開かれることとなった。また、事案が重なっていることから、迅速・的確に審理を行うため、6月以降、定例委員会に加え、必要に応じて臨時の委員会を開くことを決めた。

以上

第145回 放送と人権等権利に関する委員会

第145回 – 2009年3月

「徳島・土地改良区横領事件報道」事案の審理

2月の苦情概要 ……など

全国土地改良事業団体連合会の会長、野中広務氏が名誉権の侵害等を訴えている「徳島・土地改良区横領事件報道」事案の審理を行い、「委員会決定」(案)を大筋で了承した。同事案の通知・公表は3月30日に行われることとなった。

議事の詳細

日時
2009(平成21)年3月17日(火)午後4時~7時
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
竹田委員長、堀野委員長代行、五代委員長代行、右崎委員、崔委員、武田委員、中沢委員、三宅委員、山田委員

「徳島・土地改良区横領事件報道」事案の審理

徳島県で起きた土地改良区の横領事件を伝えた昨年7月のテレビ朝日「報道ステーション」の放送で、名誉・信用を毀損されたと全国土地改良事業団体連合会(全土連)の会長、野中広務氏が申し立てている事案の審理を先月に引き続き行い、起草委員会が起草した「委員会決定」(案)を一部修正のうえ、大筋で了承した。後日、持ち回り委員会で文案を確認し、最終的に了承・決定することとなった。また、「委員会決定」(案)の結論についてその理由を追加・補足する「補足意見」と、結論も理由も異なる「少数意見」とが盛り込まれることも合わせて了承された。
これに伴い、「委員会決定」の当事者に対する通知と、通知の後の記者発表(公表)は、3月30日(月)午後に行われることとなった。
野中氏は「申立人が政治力で膨大かつ不要の事業を持ってきて、その投入された莫大な補助金が犯罪発生の原因となったかのような作為的な構成の報道内容である」などとして名誉と信用を毀損されたとし、訂正と謝罪の放送を求めている。これに対し、テレビ朝日は、「報道内容に基本的な間違いはなく、放送により野中会長の名誉・信用を毀損したとまで言えるものではない」と反論している。(3月30日に通知・公表された「委員会決定」第39号の全文についてはこちらから)。

2月の苦情概要

2月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・・14件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・・37件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

  • 竹田委員長、五代委員長代行、右崎委員、崔委員、中沢委員の5人の委員は、3月度の委員会をもって任期満了により退任することが事務局より報告された。
  • 次回委員会は4月21日(火)に開かれることとなった。

以上

第144回 放送と人権等権利に関する委員会

第144回 – 2009年2月

「徳島・土地改良区横領事件報道」事案の審理

1月の苦情概要 ……など

全国土地改良事業団体連合会の会長、野中広務氏が名誉権の侵害等を訴えている「徳島・土地改良区横領事件報道」事案の審理が行われ、「委員会決定」を取りまとめるための起草委員を決めた。

議事の詳細

日時
2009(平成21)年2月17日(火) 午後4時~5時45分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
竹田委員長、堀野委員長代行、五代委員長代行、右崎委員、崔委員、武田委員、中沢委員、三宅委員、山田委員

「徳島・土地改良区横領事件報道」事案の審理

徳島県で起きた土地改良区の横領事件を伝えた昨年7月のテレビ朝日「報道ステーション」の放送で、名誉・信用を毀損されたと全国土地改良事業団体連合会(全土連)の会長、野中広務氏が申し立てている事案の審理を、先月に引き続き行った。

「申立書」で野中氏は「申立人が政治力で膨大かつ不要の事業を持ってきて、その投入された莫大な補助金が犯罪発生の原因となったかのような作為的な構成の報道内容である」などとして、訂正と謝罪の放送を求めている。これに対し、テレビ朝日は、「報道内容に基本的な間違いはなく、放送により野中会長の名誉・信用を毀損したとまで言えるものではない」としている。

当日は、前回の委員会で実施した野中氏とテレビ朝日に対するヒアリングをふまえ、報道によって野中氏の名誉が毀損されたかどうかについて各委員が意見を出し合い、詰めの審理を行った。

その結果、起草委員を決め、次回委員会では、起草委員会がまとめた「委員会決定(案)」について検討することとなった。

1月の苦情概要

1月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・・9件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・・28件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

次回委員会は3月17日(火)に開かれることとなった

以上

第143回 放送と人権等権利に関する委員会

第143回 – 2009年1月

「徳島・土地改良区横領事件報道」事案のヒアリング

「女性国際戦犯法廷 番組出演者の申立て」事案について ……など

全国土地改良事業団体連合会の会長、野中広務氏が名誉権の侵害等を訴えている「徳島・土地改良区横領事件報道」事案について、申立人、被申立人双方に対するヒアリングが行われた。

議事の詳細

日時
2009(平成21)年1月20日(火)午後3時~7時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
竹田委員長、堀野委員長代行、五代委員長代行、右崎委員、崔委員、武田委員、三宅委員、山田委員

「徳島・土地改良区横領事件報道」事案のヒアリング

徳島県で起きた土地改良区の横領事件を伝えたテレビ朝日「報道ステーション」の放送で、名誉・信用を毀損されたと全国土地改良事業団体連合会(全土連)の会長、野中広務氏が申し立てている事案の審理で、ヒアリングを実施した。

「申立書」で野中氏は「申立人が政治力で膨大かつ不要の事業を持ってきて、その投入された莫大な補助金が犯罪発生の原因となったかのような作為的な構成の報道内容」などとして訂正と謝罪の放送を求めている。これに対しテレビ朝日は、「報道内容に基本的な間違いはなく、放送により野中会長の名誉・信用を毀損したとまで言えるものではない」としている。

ヒアリングは野中氏、テレビ朝日双方に対して各1時間行われた。この中で野中氏は「横領されたのは、土地改良の補助金ではなく河川改修の土地代金だった。しかし、報道は私の映像をわざと出して、全土連が土地改良の予算獲得に努力した結果、横領事件が起きたかのように受け止められる内容だった。視聴者に分かるように名誉回復を図るため審理をお願いした。」と述べた。テレビ朝日側は「農業関連の公金の一部が横領されたという報道事実について、特段問題はなかったと認識している。政治と農業の関わりについても問題提起をしたかった。横領事件と野中会長個人を関連づけようとしたものではなく、野中会長の名誉・信用と肖像権を侵害したとは考えていない。」と述べた。

ヒアリングを受けて審理を続行し、放送によって申立人の社会的評価が低下したかどうか、補助金について十分な取材・報道がされたかどうかなどを中心に意見を出し合った。
次回の委員会も審理を続ける。

「女性国際戦犯法廷 番組出演者の申立て」事案について

2003年3月に決定が出された「女性国際戦犯法廷・番組出演者の申立て」事案について、2009年1月7日、被申立人NHKから申立人米山リサ氏にどう対応したかについての報告書が当委員会に提出された。 一方米山氏からは、裁判の過程において重要情報が提示されたとして、委員会でどのような対応をとられるのか考えを聞かせてほしい等の要望が書かれた書面が委員会に届き、委員会で意見交換した。

NHKは2008年6月、この番組についての訴訟が最高裁判決で終結したのを待って、同月、「委員会決定」で指摘された編集の行き過ぎ等について米山氏に謝罪したことなどを報告書で述べている。なお、NHKは、2003年8月に「委員会の決定に対する取り組み状況」の報告をしていたが、米山氏への対応は、裁判が継続中であることを理由に保留していた。

なお米山氏が、本申立ての審理の際、欠かせない重要情報が提示されていなかったとして、委員会に新たな対応をする考えがあるかと尋ねている点について協議したが、当委員会では、既に申立てに対する決定をした事案であり、現段階では、これ以上本件に関与しないとの結論に達した。

「広島県知事選裏金疑惑報道」事案の当該局からの報告

昨年12月3日に「委員会決定」の通知・公表が行われた「広島県知事選裏金疑惑報道」事案の当該局である中国放送(RCC)からその後の取り組みについて報告があった。
本事案の「委員会決定」は、当該局に対して決定を受けての改善や対応等を求めたものではないが、RCCからは1月15日付で「委員会決定後の取り組みについて」と題する以下の書面が寄せられた。
事務局より報告し、了承された。

平成21年1月15日

放送と人権等権利に関する委員会
委員長 竹田 稔 様

株式会社中国放送
執行役員総務局長 原森 勝成

「委員会決定」後の取り組みについて(報告)

この度、貴委員会から12月3日付け「委員会決定」通知を受け、当社では下記の取り組みを行いましたのでご報告いたします。

2008年12月3日(水)

  • BPOでの決定を受けて 夕方のテレビ番組「イブニング・ニュース広島」で決定内容についてニュース報道しました。
  • 東京で決定文書を受け取った報道センター長が、現地から報道センター社員全員に対し、「今後も県民の知る権利に応えるために、権力の監視を続け、公正、公平、正確に、そして放送倫理に即して、当社報道に関わるもの全員で報道にさらなる力を注いでいきましょう」(要旨)とのメールを送りました。
  • 報道センターのキャップ会議にてニュースデスクがニュースキャスターおよび記者クラブキャップに上記メール内容等を伝えて、今後も引き続き、人権に配慮しつつも政治に対する取材、特に調査報道に力を注ぐことを確認しました。

12月4日(木)

  • 当社部長以上が出席する幹部会(「一木会」)にてBPOの決定内容について報道センター長が報告。今後も取材にあたっては人権に配慮しつつ、報道機関として権力の監視を続けること等を報告。これに対し、社長から、これまで通りの報道姿勢を継続するよう激励を受けました。
  • 報道センターで働く社内外の全スタッフにBPOの決定の全文をメールに添付して送付し、今後の取材にあたっての糧にするように伝えました。

12月9日(火)

  • 放送倫理向上委員会(委員長 取締役テレビ局長)を開催。今回の決定を受け、ホームページ上での配信期間に問題はないのか、社員や番組のブログが人権に配慮した表現になっているかなど、さらなるチェック体制の必要性について議論しました。

12月11日(木)

  • 広報部長から全社員に一斉メールで放送人権委員会の委員会決定のアドレスを送り、全社員に閲覧を促しました。

以上

12月の苦情概要

12月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・・2件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・・60件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

  • 意見交換会[中部]のアンケート結果を報告
    昨年11月11日、名古屋で開催された放送人権委員会委員との意見交換会[中部]に関するアンケート結果について事務局から報告した。

    アンケートは、意見交換会に出席した52名全員を対象に行ったが、そのうち約6割に当たる31名から回答が寄せられた。

    主な内容としては、「掘り下げた内容の議論がなされ有意義であった」、あるいは「有益であった」との感想が23件、「毎年開催してもらいたい」「開催回数をもっと増やして欲しい」との積極的な意見が4件、また、「具体的なニュース映像等を利用すればさらに分かりやすかったのではないか」との意見も6件寄せられた。

  • 次回委員会は2月17日(火)に開かれることとなった。
  • BPO年次報告会が3月26日(木)に開かれることが決まり、事務局長から報告した。

以上

第142回 放送と人権等権利に関する委員会

第142回 – 2008年12月

「広島県知事選裏金疑惑報道」事案の通知・公表についての報告

「徳島・土地改良区横領事件報道」事案の審理開始 ……など

12月3日に行われた「広島県知事選裏金疑惑報道」事案の通知・公表に関する報告が事務局よりあった。また、野中広務氏が名誉権の侵害等を訴えた「徳島・土地改良区横領事件報道」事案の審理が始まった。

議事の詳細

日時
2008 (平成) 年12 月16 日(火) 午後4時~6時
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
竹田委員長、堀野委員長代行、五代委員長代行、右崎委員、崔委員、武田委員、三宅委員、山田委員

「広島県知事選裏金疑惑報道」事案の通知・公表についての報告

放送人権委員会が、委員会発足後初めて、「放送と通信」をテーマに審理を行い、また、公人の疑惑追及報道についても検討した上記事案の「委員会決定」の通知・公表が12月3日(水)に行われ、事務局より以下のような報告があった。(委員会決定の内容はこちら)

「委員会決定」の通知は12月3日午後、申立人と被申立人が同席して行われた。申立人である元広島県議会議員3名のうち2名が広島より上京し、一方の被申立人側も中国放送報道センター長ら2名が出席した。
本事案では、中国放送によるテレビ実名報道のインターネット配信を「放送と同視できるか、どうか」について審理が行われたが、竹田委員長は、「本件報道の動画・音声配信が停止され、文字情報のみの配信となった時点において放送と同視できる状態ではなくなった。したがって、名誉権の侵害を訴えた本事案の実質審理には入らない」とする決定内容を通知した。

通知を受けて申立人は「事実上の門前払いで残念だ。実質審理に入ってほしかった。局は文字情報による配信についても責任を負うべきだ」とする感想を述べた。一方、被申立人は「弊社の主張が認められたものと思う。今後とも国民の知る権利のために尽力していきたい」とするコメントを出した。

通知終了後、午後3時から竹田委員長のほか、起草委員を務めた堀野委員長代行と三宅委員、及び多数意見と同じ結論ながら、理由が異なるとして「意見」を執筆した山田委員の4名が出席して記者会見を行い、「委員会決定」の内容を公表した。会見には27社・53名の記者が集まり、テレビカメラ6台が入った。
記者との質疑では、「文字だから同視しないとのことだが、本件ネット配信で伝えている事実はテレビ放送と同じではないのか」、「放送がネットに掲載された場合、BPOとしては今後も個別にやっていくのか」等の質問が出た。これに対し各委員は、「本件においてはもともと動画と音声を伴うテレビ放送が、文字のみの配信となったことから同視できないという結論になった。あくまでもオリジナルであるかどうか、その違いがポイントだ」、「今回の事案は、問題提起のケースだった。当委員会としては、放送と通信の現状を踏まえながら運営規則の弾力的な運用を具体的な事案によって判断していきたい。BPO全体としてどう対応するかは今後の課題だ」等と答えた。

会見を受け、当該局である中国放送は、当日夕方のローカルニュース番組「イブニングニュース広島」内で、決定内容と双方の当事者のコメントを伝えた。在京民放テレビキー局は、いずれも当日夕方から翌朝にかけてのニュース番組や情報番組内で全国ニュースとして伝えた。
また、新聞各紙は地元・広島を含め、翌日の朝刊社会面等で一斉に報じた。

「徳島・土地改良区横領事件報道」事案の審理開始

徳島県で起きた土地改良区の横領事件を伝えた今年7月23日のテレビ朝日「報道ステーション」の放送により、名誉・信用を毀損されたと、全国土地改良事業団体連合会の会長、野中広務氏が申し立てた事案の審理を開始した。

「申立書」で野中氏は「申立人が政治力で膨大かつ不要の事業を持ってきて、その投入された莫大な補助金が犯罪発生の原因となったかのような作為的な構成の報道内容である」などとして、テレビ朝日に対し訂正と謝罪の放送を求めている。これに対し、テレビ朝日は「見解」で「報道内容に基本的な間違いはなく、報道内容は野中会長の名誉・信用を毀損したとまで言えるものではない」としている。

前回の委員会後、テレビ朝日の「答弁書」、野中氏の「反論書」とこれに対するテレビ朝日の「再答弁書」が提出された。

この日の委員会では事務局が双方の主張の概要を説明した後、補助金の実態が正確に取材・報道されているかどうかや、放送によって申立人の社会的評価が低下したかどうかを中心に意見を出し合った。
次回1月20日(火)の委員会では、双方からヒアリングを実施することになった。

11月の苦情概要

11月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・・5件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・・・61件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

次回委員会は2009年1月20日(火)に開かれることとなった。

以上

第141回 放送と人権等権利に関する委員会

第141回 – 2008年11月

「広島県知事選裏金疑惑報道」事案の審理

審理要請案件「徳島・土地改良区横領事件報道」 審理入り決定 ……など

「広島県知事選裏金疑惑報道」事案の「委員会決定」起草案が了承され、来る12月3日(水)に決定の通知・公表が行われることとなった。 また、野中広務氏が名誉侵害等を訴えた「徳島・土地改良区横領事件報道」の審理入りが決まった。

議事の詳細

日時
2008 (平成20) 年11 月18 日(火) 午後4時~6時半
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
竹田委員長、堀野委員長代行、五代委員長代行、右崎委員、崔委員、武田委員、中沢委員、三宅委員、山田委員

「広島県知事選裏金疑惑報道」事案の審理

1997年の広島県知事選挙において藤田知事の後援会組織等から裏金を受け取ったとの疑いを持たれ、中国放送(RCC)のニュース番組で実名報道された元県議会議員3名が、『事実無根の報道により大きな被害を受けた』として、名誉権の侵害を訴えた「広島県知事選裏金疑惑報道」事案の「委員会決定」起草案について審理を行った。
その結果、内容を一部修正のうえ了承し、来る12月3日(水)に、申立人、被申立人の双方に対し「委員会決定」を通知した後、記者会見を行い、その内容を公表することとなった。
本事案では、RCCが上記テレビ報道の内容を文字情報として自社ホームページ上に掲載し、申立人らがこれによる被害の継続を訴えたことから、「インターネットでの文字情報による配信行為を、テレビ報道と同視し得るかどうか」を判断の対象として慎重に審理が行われてきた。当委員会が、「放送と通信」というテーマを俎上に審理した初めてのケースとなった。

審理要請案件「徳島・土地改良区横領事件報道」 審理入り決定

徳島県で起きた土地改良区の横領事件を伝えたニュース報道で、名誉・信用を毀損されたとする全国土地改良事業団体連合会会長の野中広務氏からの申立書を10月20日に受理した。今年7月23日のテレビ朝日「報道ステーション」での放送で、これまで当事者間で話し合いが重ねられてきたが、決着しなかった。
委員会は、野中氏の「申立書」とテレビ朝日から提出された「交渉経過と見解」および放送同録ビデオをもとに検討した結果、審理入りすることを決定した。
野中氏は「申立書」で「横領事件の対象が補助金であったという前提が基本的に間違っている誤報」であり、「申立人が政治力で膨大かつ不要な事業を持ってきて、その投入された莫大な補助金が犯罪発生の原因となったかのような作為的な構成の報道内容」などとして訂正と謝罪の放送を求めている。これに対して、テレビ朝日は「見解」で「日本の農政の構造上の問題はないのか、問題提起をしようとしたのが放送の趣旨である」、「報道内容に基本的な間違いはなく、報道内容は野中会長の名誉・信用を毀損したとまで言えるものではない」としている。次回12月16日(火)の委員会から審理に入る。

10月の苦情概要

10月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・・9件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・121件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

  • 中部地区「意見交換会」について事務局から報告
    11月11日に名古屋で開催された「放送人権委員会委員との意見交換会[中部]」について事務局から、その概要等について報告を行った。
    意見交換会には中部地区のラジオ、テレビ局26社から、報道・制作現場の関係者を中心に52名の出席があった。取材も新聞社4社、テレビカメラ6台が入った。
    冒頭、竹田委員長が「放送倫理について」と題する基調講演を行い、続いて上野統括調査役が、最近の放送人権委員会の活動報告を行った。この後、今回のテーマである「取材放送のあり方」、特に「隠し撮り」「匿名映像等の多用」の問題について意見交換を行った内容を報告し、最後に、名古屋の局のニュースで放送された「意見交換会」の模様を視聴した
  • 次回委員会は12月16日(火)に開くことを決め、閉会した。

以上

第140回 放送と人権等権利に関する委員会

第140回 – 2008年10月

「広島県知事選裏金疑惑報道」事案の審理

審理要請案件「元祖いちご大福報道をめぐる名誉・信用毀損」の訴え ……など

「広島県知事選裏金疑惑報道」事案について、「委員会決定」起草案の検討、協議が行われた。 また、「元祖いちご大福報道」をめぐる審理要請案件は、討議の結果、審理対象外となった。

議事の詳細

日時
2008 (平成20) 年 10月21 日(火) 午後4時~7時半
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
竹田委員長、堀野委員長代行、五代委員長代行、右崎委員、崔委員、武田委員、
中沢委員、三宅委員、山田委員

「広島県知事選裏金疑惑報道」事案の審理

1997年の広島県知事選挙に絡んで裏金を受け取ったとの疑いを持たれ、中国放送(RCC)のニュース番組で実名報道された元県議3名が、『事実無根の報道により大きな被害を受けた』として、名誉権の侵害を訴えた「広島県知事選裏金疑惑報道」について、先月に引き続き審理が行われた。
本事案については先月、起草委員会が発足し「委員会決定」をとりまとめるための作業が進められてきたが、今月の委員会では、委員会決定起草案についての検討、協議が行われた。その結果、起草案の内容をさらに吟味したうえ、来月の委員会で改めて検討することとなった。
本件審理では、RCCが上記テレビ報道の内容を文字情報として自社ホームページ上に掲載し、申立人らがこれによる被害の継続を訴えているところから、「文字情報による配信行為を、テレビ報道と同視し得るかどうか」を審理の対象として、これまで長時間にわたり熱心な議論が交わされてきた。

審理要請案件「元祖いちご大福報道をめぐる名誉・信用毀損」の訴え

『元祖いちご大福』報道に関する案件について、2回にわたって審議を行った結果、当案件を審理対象外と決定した。この案件は、「いちご大福」の考案者を自認する人とその人が経営する東京の和菓子屋が申立人となり大阪のテレビ局を訴えているもの。申立人は、「2008年3月放送のバラエティー番組で、”いちご大福の元祖は三重県の和菓子屋”と紹介されたため、考案者としての名誉・信用を著しく害された。また、元祖の店としての信用・営業権を侵害された」と主張し、訂正・謝罪放送を要求していた。
委員会では、双方から提出された文書・資料をもとに討議したが、多数の和菓子業者が元祖を名乗っている現状の中で、限られた資料に基づいて誰がいちご大福の元祖であるかを認定するのは困難であり、このような事案について当委員会が審理し、人権侵害の有無を判断することは相当ではないなどとして、審理の対象とはしないことを決定した。

「喫茶店廃業報道」事案の申立人が起した裁判の高裁判決報告

「喫茶店廃業報道」事案の申立人が、毎日放送を相手取って損害賠償を求めた裁判の控訴審判決(大阪高裁9月10日)について、事務局から報告した。
二審では、名誉毀損は認めなかったものの、隠しマイク・カメラによる取材で「みだりに自己の容貌・容態を撮影・公表されない自由と発言を録音・公表されない人格的利益」を侵害されたと認め、10万円の支払いを命じた。
一審では、名誉毀損を認め、人格的利益の侵害も認めており、40万円の支払いを命じていた。なお、放送人権委員会は、2005年10月「名誉毀損には当たらないが、隠しカメラ・隠しマイクの使用が不可欠とは認められない」として、放送倫理違反の見解を出している。(委員会決定第26号をご参照下さい)

9月の苦情概要

9月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・4件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・83件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

  • TBS報道現場視察と番組スタッフとの意見交換会
    放送人権委員会では去る10月14日(火)、TBSの夕方の報道番組「イブニング5」(16:52~18:55放送)の放送現場や報道局内を視察するとともに、番組終了後、委員と番組スタッフとの意見交換会を行った。
    意見交換会では、放送倫理や人権に関わる問題などが活発に話し合われたが、中でも、最近インタビューなどで、いわゆる匿名映像(顔なしやぼかしなど)が多い点について局側から、「取材される側がそうした要望を出すことが多く、これに対し取材者が粘り強く交渉しないまま妥協してしまっている面もある。何とかしなくてはいけないがジレンマを感じている」との声もあった。
  • 次回委員会は11月18日(火)に開かれることとなった。

以上

第139回 放送と人権等権利に関する委員会

第139回 – 2008年9月

「広島県知事選裏金疑惑報道」事案の審理

審理要請案件「元祖いちご大福報道をめぐる名誉・信用毀損」の訴え ……など

中国放送(RCC)の「広島県知事選裏金疑惑報道」をめぐる名誉毀損の訴えで、先月に引き続き、ネット配信とテレビ報道との同視問題をめぐり、審理が行われた。
また、先に放送人権委員会決定が公表された2事案について、 当該局のその後の対応に関する報告があった。

議事の詳細

日時
2008(平成20)年9月16日(火)午後4時~7時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
竹田委員長、堀野委員長代行、右崎委員、崔委員、武田委員、中沢委員、三宅委員、山田委員

「広島県知事選裏金疑惑報道」事案の審理

1997年の広島県知事選挙に絡んで裏金を受け取ったとの疑いを持たれ、中国放送(RCC)のニュース番組で実名報道された元県議3名が、『事実無根の報道により大きな被害を受けた』として、名誉権の侵害を訴えた「広島県知事選裏金疑惑報道」について、先月に引き続き審理が行われた。
本事案については、当委員会運営規則に定められた申立の期間要件(「原則として放送のあった日から3ヶ月以内に放送事業者に申立てられ、かつ、1年以内に委員会に申立てられたもの」)を満たしていないものの、RCCが実名報道の内容を、インターネットの同社ホームページ上に「藤田県政の闇」と題するバナーを置き、本年6月まで文字情報の形で掲載してきた事実があり、申立人らがこれによる被害の継続を訴えていること等から、「文字情報による配信行為をテレビ報道と同視し得るかどうかを審理の対象として判断し、同視し得る場合には申立て内容についても審理の対象とする」こととなったもの。
先月の委員会後に、申立人からは、被申立人(中国放送)の「答弁書」に対する「反論書」、中国放送からは「反論書」に対する「再答弁書」が、それぞれ新たに提出された。
中国放送はこれまで、実名報道の動画に関しては昨年4月に削除し、それ以後は文字情報のみによる配信となっていたと説明してきたが、申立人は「反論書」において、「中国放送ホームページにアクセスして映像データを入手できる状態がその後も継続し、現時点でもその状態が続いている」とし、「テレビ放送とネット配信とを同視できることは当然かと考える」と主張した。
これに対し、中国放送は「これまで述べて来た通り、実名報道した4回分の映像データについては、既に昨年4月の時点で配信を終え削除している。その後、本年6月にバナー、7月には特集ページも削除しており、現在はホームページにアクセスして閲覧することは不可能である」とした上、申立人の主張に対しては、「裏金問題に関心のあると思われる人が、特殊な条件下において当社のサーバーに保存している動画ファイルにアクセスし、閲覧している状態と言わざるを得ない」と反論した。
また、文字情報でのネット配信に関連し、申立人は、「放送と配信との間には、選挙絡みの裏金が県議に授受された事実の有無にかかわる中心的かつ重要な事実内容に同一性が認められる」こと、また、「テレビ放送とネット配信は一体のものとして報道されており、このことはホームページ上のバナーを一連の報道タイトルと同じ『藤田県政の闇』と統一していることからも明らかである」とし、テレビ報道とネット配信とが同視できると主張した。
これに対し、中国放送は、「映像・音声・テロップ・ナレーション・解説等の複合的表現方法で成立しているテレビ報道とまったく同じ情報を、インターネットにアクセスした人が文字情報だけから得ることはできない」とし、さらに、「申立人ら代理人らの指摘の通り、テレビ放送が直接家庭の茶の間に侵入し、即時かつ同時に動画や音声を伴う映像を通じて視聴される点で、他のメディアには見られない強烈なインパクトを及ぼす」のに対し、「インターネットによる配信は、閲覧者が自らの意志でバナー等をクリックして該当ページを開き、内容を閲覧するものであること、その際、内容も十分検討でき、また、何度でもアクセスして内容を確認できることからも、放送とは根本的に異なる」と反論した。
双方の主張を踏まえ、この日の委員会では長時間にわたり各委員の間で突っ込んだ議論が交わされた。最終結論については次回に持ち越しとなったものの、委員会決定を取りまとめる為の起草委員会を発足させることが決まり、今後、起草作業の中でもさらに検討が加えられることとなった。

審理要請案件「元祖いちご大福報道をめぐる名誉・信用毀損」の訴え

『元祖いちご大福』報道に関する案件について、委員会の審理の対象とするか否かについて審議を始めた。
この案件は、「いちご大福」の考案者を自認する人とその人が経営する東京の和菓子店が申立人となり大阪のテレビ局を訴えているもの。申立人は、「2008年3月放送のバラエティー番組の中で、”いちご大福の元祖は東海地方の和菓子屋”との紹介をしたため、考案者としての名誉・信用を著しく害された。また、元祖の店としての信用・営業権を侵害された」と主張している。
委員会では、双方から提出された資料を踏まえて審議した後、次回委員会で議論を集約することになった。

「高裁判決報道の公平・公正問題」事案の当該局対応

去る6月10日に通知・公表された「高裁判決報道の公平・公正問題」事案に関する第36号委員会決定(放送倫理違反)を受け、当該局であるNHKは9月3日、委員会宛に「委員会決定に対するNHKの対応について」と題する文書を提出した。これについて事務局より報告し、了承された。 (NHKの報告内容は、ホームページの「放送人権委員会委員会決定第36号」にある「当該局の対応」の項をご参照下さい。)

「群馬行政書士会幹部不起訴報道」事案の当該局対応

去る7月1日に通知・公表された「群馬行政書士会幹部不起訴報道」事案の第37号委員会決定(放送倫理違反)を受け、当該局であるエフエム群馬は9月16日、委員会宛に「委員会決定の取り組み状況について(ご報告)」と題する文書と、これを機会に新しく製作した「エフエム群馬 報道・編集ハンドブック 2008年版」を提出した。これについて事務局より報告し、了承された。
竹田委員長は、「委員会決定を活かすべく、エフエム群馬は、真摯に、熱心に取り組んでくれている。対応としては申し分ない。」と感想を述べた。
なお9月25日付で、改訂版が寄せられた。
(エフエム群馬の報告内容は、ホームページの「放送人権委員会委員会決定第37号」にある「当該局の対応」の項をご参照下さい。)

8月の苦情概要

8月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・3件
(個人又は直接の関係人からの要請)

人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・65件
(人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

「意見交換会(中部)」を11月に開催
放送人権委員会委員と会員各社との「意見交換会」を、今年は11月11日に、中部地区会員社を対象に名古屋で開くことになった。放送人権委員会委員と各局関係者が、「放送における人権・倫理問題」を論じ合うもので、東京地区での意見交換会を含め、今年で12回目の開催となる。
次回委員会は10月21日(火)に開かれることとなった。

以上

第138回 放送と人権等権利に関する委員会

第138回 – 2008年8月

「広島県知事選裏金疑惑報道」事案の審理 実質審理開始

仲介・斡旋解決事案 ……など

中国放送(RCC)の「広島県知事選裏金疑惑報道」をめぐる名誉毀損の訴えについて、今月から実質審理が始まった。また、九州の民放テレビ局で起きた「誤報」に関する仲介・斡旋解決事案の報告等が行われた。

議事の詳細

日時
2008 年8 月19 日(火) 午後4時~6時
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
竹田委員長、堀野委員長代行、五代委員長代行、右崎委員、 崔委員、武田委員、中沢委員、三宅委員、山田委員

「広島県知事選裏金疑惑報道」事案の審理 実質審理開始

1997年の広島県知事選挙に絡んで裏金を受け取ったとの疑いを持たれ、中国放送(RCC)のニュース番組で実名報道された元県議3名が、『事実無根の報道により大きな被害を受けた』として、名誉権の侵害を訴えた「広島県知事選裏金疑惑報道」についての実質審理が始まった。

本事案については、当委員会運営規則に定められた申立の期間要件(原則として放送のあった日から3ヶ月以内に当該局に申立てられ、かつ、当委員会に対し、1年以内に申立てられたもの)を過ぎているものの、RCCが一連の実名報道の内容をインターネットの同社ホームページ上に本年6月まで文字情報の形で掲載してきた事実があること、自社ホームページでの配信行為はRCCの主体的意思の表明と見られること等から、先月の委員会で、「文字情報による配信行為を、テレビ報道と同視し得るかどうかを審理の対象として判断し、同視し得る場合には申立て内容についても審理の対象とする」ことを決定、今月からその実質的な審理が開始されたもの。

委員会では、申立人から提出された「申立書」「申立補充書」、及び関連資料、被申立人であるRCCから提出された「答弁書」、及び関連資料等をもとに、「同視できるか、どうか」について各委員の間で活発な議論が交わされた。しかし、この日は結論を得るまでには至らなかった。
このため、申立人から8月末に提出される、「答弁書」への「反論書」、及び、反論書に対して、被申立人から「再答弁書」提出の意向があればその提出を待ち、これらをもとに9月の委員会でさらに議論を深めることとなった。

仲介・斡旋解決事案

事務局より下記案件が報告され、了承された。

『亡くなった家族を生きているように間違って放送された』と抗議

九州の民放テレビ局が、「スーパーマーケット前で、じゃんけんで勝つと品物が安く買えるゲーム」(VTR撮影)を行い、夕方の情報番組内で放送した。(08年6月26日) 放送後、ゲームの参加者(申立人)から、「家族構成は祖父母、両親、子供4人」と字幕入りで放送されたため、取引先や知人から「祖父母は、まだ生きているのか」「前に香典をおくったが・・・」などと疑惑の目で見られたり、不審に思われたりして迷惑を受けたとして、局に対し、訂正と謝罪をしてほしいとの抗議がなされた。
実際は、両親に子供6人の8人家族であったのを、取材者が聞き間違えたか、思い込みによって誤報となったもの。

抗議に対し、局側は電話で事実を間違えたことを詫びたが、謝罪文(申立人が知人に説明するため、局側が間違えたことを証明する文書)の提出を拒み、また、自宅へ謝罪に来てほしいとの要請についても断ったため、放送人権委員会への相談となった。

事務局からの事情聴取に対し、申立人は「訂正・謝罪は求めない」「慰謝料等も求めない」と述べていたこともあり、局に対し、「誤報で迷惑を掛けたのは事実であり、電話だけでなく自宅に出向いて謝罪し誠意を示すのもひとつの解決法ではないか」と勧めたところ、部長でもあるプロデュサーが申立人宅に出向いてお詫びした。申立人は「早い段階で誠意を見せてほしかった」と言いつつもこれを了承し、一転解決となった。申立人は、局が誠意を持って謝罪したことを評価し、謝罪文は要求しなかった。

放送から約1ヵ月後の7月に解決となったが、局側は「これまでの対応と今後の対策」を盛り込んだ説明・報告書を放送人権委員会委員長宛て送付、その中で「間違って放送したことは事実であり、直ちに訪問して謝罪すべきだった」と反省している。

7月の苦情概要

審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・9件
(個人又は直接の関係人からの要請)
人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・158件
(人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

次回委員会は9月16日(火)に開かれることとなった。

以上

第137回 放送と人権等権利に関する委員会

第137回 – 2008年7月

審理要請案件「広島県知事選裏金疑惑報道」 審理入り決定

「群馬・行政書士会幹部不起訴報道」事案 通知・公表の報告 ……など

第137回委員会では、中国放送(RCC)の「広島県知事選裏金疑惑報道」をめぐる名誉毀損の訴えについて、審理入りするかどうかを検討した結果、審理入りが決定した。また、7月1日に行われた「群馬・行政書士会幹部不起訴報道」事案の通知・公表についての報告、「アブラボウズをクエとして販売した疑惑追跡報道」についての仲介・斡旋解決の報告等が行われた。

議事の詳細

日時
2008(平成20)年7月15日(火)午後4時~6時半
場所
「放送倫理・番組向上機構〔BPO〕第1会議室
議題
出席者
竹田委員長、堀野委員長代行、五代委員長代行、右崎委員、武田委員、中沢委員、三宅委員、山田委員

審理要請案件「広島県知事選裏金疑惑報道」 審理入り決定

中国放送(RCC)は、2006年10月19日以降、夕方のニュース番組『イブニングニュース広島』内で、「特集 藤田県政の闇 知事選裏金疑惑」と題する特集を継続的に放送し、この中で、「藤田知事後援会の政治資金規正法違反事件に関連し、広島地検の取調べを受けた知事の元秘書が、1997年の県知事選挙の際、15名の県会議員に裏金を渡したと供述、このうち現職議員の名前がRCCの独自取材で判明」として、2006年11月から2007年4月にかけ、4回にわたり、計11名の現職県議(当時)の実名を報道した。また、その放送内容をインターネットの同社ホームページ上に掲載した。

これに対し、実名報道されたうちの元県議A氏は、その放送から6ヵ月後に「事実無根の報道により名誉を毀損された」としてRCCに対し抗議し、謝罪等を要求した。しかし、RCCは「選挙にかかわる金銭授受の問題は大きな社会問題となっていたことから、広く県民に報道することが公益にかなうと判断した。報道は真実であると信じるに足る根拠に基づいてなされたものであり、公平を期すため、実名を公表された本人にも取材し、そのコメントも伝えている」などと回答、謝罪を拒否した。

放送からほぼ1年後の本年4月、実名を公表されたA氏を含む元県議3名が申立人となり、「事実無根の報道により名誉を著しく毀損され、申立人のうちの2名が県議選に落選するなど大きな被害を受けた」として、名誉権侵害を訴える申立書を当委員会に提出した。委員会では本事案について審理入りするかどうかの検討を行った結果、RCCが一連の報道内容をインターネットの同社ホームページ上に本年6月まで継続して掲載してきた事実があること等から、これを放送と同視し得るかどうかを審理の対象として判断し、同視し得る場合には申立て内容についても審理の対象とすることを決定した。

本事案の本格的審理は、8月の第138回委員会より開始される。

「群馬・行政書士会幹部不起訴報道」事案 通知・公表の報告

放送倫理違反との決定されたが承認された「群馬・行政書士会幹部不起訴報道」事案の通知・公表の模様と当該局の対応などについて事務局から次の報告があった。

委員会決定の通知は、7月1日(火)申立人と被申立人のエフエム群馬に対し、個々に行われた。

委員会決定に対し申立人は、「自分の主張をもう少し認めてほしかったが、妥当な内容だと思う」と述べ、被申立人側は「放送倫理違反の指摘を真摯に受け止め、今後取材には十分気を付け、公正・公平な報道を心掛ける。これをきっかけに、ニュースの扱いについて反省し、より信頼される報道を心していきたい」と語った。

続いて15時から、委員会決定の内容を公表した。記者会見には竹田委員長と起草委員が出席、メディア側からは27社40人が集まり、テレビカメラ6台が入った。

記者との質疑では、「書類送検や不起訴のニュースでは、多くの場合、相手の言い分を聞くことなく伝えている。今回のケースでは何が違うのか、なぜこの報道がダメだと言うのか」という質問が多かった。これに対し委員からは、「原則は双方に取材し報道すべきだが、通常の書類送検や起訴なら当事者の言い分を取材しなくても放送倫理違反にならない場合もあるだろう。しかし今回のケースは単純な事件の報道ではない。1年以上も前に不起訴になっているもので、それが県議会という場で取り上げられたということから、群馬県行政書士会内部の複雑な背景事情がうかがわれる。それにもかかわらず、一方の当事者に全く取材をしないまま放送したのは問題だった」との説明があった。

この決定を受けたエフエム群馬の決定日当日の放送対応は次のとおり。

  • 「EVENIN’(イブニン)」内ニュースコーナー 18:03頃(1分15秒)
  • 「特別番組 人権委員会“放送倫理違反”の見解」 19:55(4分45秒)
  • 「特別番組 人権委員会“放送倫理違反”の見解」 20:55(4分45秒)

一方、在京テレビ局は、発表当日の夕方~夜、及び翌日朝のニュース番組で、30秒~1分35秒この決定について放送した。東京では新聞各紙が翌日の社会面で報じた。

以上の説明の後、エフエム群馬より送られてきた、特別番組(上記 3)を委員会で聴取した。

仲介・斡旋解決

事務局より下記案件が報告され、了承された。

「アブラボウズを高級魚クエとして販売した疑惑追跡報道」

在阪のテレビ局が、2007年暮のニュース番組内で、新たな食品疑惑として、高級魚クエと偽ってアブラボウズが販売されているという疑惑を追跡し、検証する企画報道を行った。

流通ルートから“偽クエ”の卸並びに小売をしている会社が突き止められ、社長(匿名)の取材に対する対応ぶりなどが放送された。

放送後、この社長が、「偽クエ疑惑の主犯格として扱われ、暴利を貪っているとの印象を視聴者に持たれた」と主張して、放送局に抗議したが、局側は、高級魚クエでも偽の表示で流通が行われていることを、一般の視聴者に注意喚起するための企画であると反論し、謝罪・訂正放送を拒否した。このような経過を経て、社長が2008年3月、放送人権委員会に苦情を訴えてきた。

放送人権委員会で、双方に更なる話し合いを求めたところ、「二度とこのニュースを取り上げないよう求める」という社長側の要求をめぐって決着が長引いたが、局側が「今後も、適正な報道を行ってまいります」との表現を盛り込んだ文書を出すことで話し合いがまとまり、放送以来半年ぶりに解決した。

6月の苦情概要

6月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・10件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・250件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

次回委員会は8月19日(火)に開かれることとなった。

以上

第136回 放送と人権等権利に関する委員会

第136回 – 2008年6月

「群馬・行政書士会幹部不起訴報道」事案 委員会決定起草案を了承

「高裁判決報道の公平・公正問題」事案の通知・公表を報告 ……など

第136回委員会では、「群馬・行政書士会幹部不起訴報道」事案の、委員会決定起草案を審議し、一部修正のうえ了承、7月1日、通知・公表することが決まった。また去る6月10日に通知・公表された「高裁判決報道の公平・公正問題」事案の委員会決定について報告があった。さらに、バラエティー番組を巡る苦情申立てがあり、当該局との話し合いを勧めた結果、双方が合意した仲介・斡旋事案が報告された。

議事の詳細

日時
2008(平成20)年6月17日(火)午後4時~8時
場所
放送倫理・番組向上機構[BPO]会議室 (千代田放送会館7階)
議題
出席者
竹田委員長、堀野委員長代行、五代委員長代行、右崎委員、武田委員、中沢委員、三宅委員、山田委員

「群馬・行政書士会幹部不起訴報道」事案 委員会決定起草案を了承

群馬県行政書士会の幹部からの「ラジオのニュースにより、自分の名誉が毀損された」との申立てについて、これまで2回の委員会審理が行われたが、今日の委員会ではそのまとめである委員会決定文について、起草委員会が提出した起草案を検討した。

放送は昨年12月12日のエフエム群馬の夕方のニュースで、「行政書士会の幹部が、会の席上発言者に暴行を加え、傷害の疑いで書類送検されたことが、今日の県議会で取り上げられた。しかしこの幹部は不起訴処分になったことから、県は処分を行なわないとの考えを明らかにした」と伝えたもの。

この放送について申立人は、「エフエム群馬の放送内容は事実と全く違う。自分になんの取材をしないまま、自分が傷害犯のように思われる報道を一方的にされたことは納得できない。エフエム群馬に対し、放送法4条に基づく訂正放送と謝罪を求めたい」と主張していた。

これに対しエフエム群馬は、「ニュースは、県議会での質疑応答の過程において明らかになった内容を伝えたものであり、書類送検、不起訴という重要事項については事実確認をして報道しており、真実でない事項の放送はしていない。公の場で、公人が語った内容を伝えたことに問題はないと考える。従って訂正放送などに応じることは出来ない」などと反論していた。

双方のヒアリングも行った結果、先の委員会では、「ニュース放送で伝えられている内容は一応事実であると考えられるから、名誉侵害とまでは言えない。しかし、申立人の名誉に関わる問題であるのに、申立人に対し全く取材をしないまま放送したことは、放送倫理に違反したものと言わざるを得ない」との方向が出されていた。

委員会には、その方向に沿う起草案が示され、表現その他を巡り意見交換が行われた。

「放送倫理違反」の内容をどのように表現するかという議論では、「エフエム群馬に確かに落ち度はあったが、全国のエフエムラジオ局の中でも数少ない報道部を持って取材・報道している局であり、今回の委員会決定で報道活動を萎縮させないような表現にしたい」という趣旨の発言もあった。

また申立人が求める、放送法4条に基づく訂正放送についても議論された。事務局の調べでは、これまで決定を出してきた36件の事案の中で、訂正放送が必要かどうかの判断をしているケースも多いが、訂正放送を勧告した例はなかった。このことから、当委員会は自主的な判断として訂正放送を求める勧告も出せることを前提に審理をしているのであり、あえて放送法4条に基づく訂正放送について検討する必要は無いとの意見で一致した。

以上のような議論を経て、表現や字句の修正などを加えた委員会決定の草案が全会一致で了承され、この決定の通知・公表を7月1日に行うこととなった。

(委員会決定の内容はこちら)

「高裁判決報道の公平・公正問題」事案の通知・公表を報告

「戦争と女性への暴力」日本ネットワークの代表が、「昨年1月放送のNHK総合テレビ『ニュースウオッチ9』で、2001年に放送されたETV2001シリーズ『戦争をどう裁くか』について東京高裁が判決を言い渡したニュースの中で『当事者としてのNHKの言い分』と『報道機関としての報道』を峻別せずに報道したことは、公平原則に照らして許されるものではなく、放送倫理にも違反していた」と申立てていた事案で、委員会は6月10日、午前10時から申立人、被申立人双方に対し決定を通知し、11時記者会見を開き公表した。

(委員会決定の内容はこちら)

この委員会の通知・公表(記者会見)、及びこの決定公表に関するマスコミの対応などについて事務局から次のような報告があった。

この通知について、申立人側は「公平・公正を欠いた放送であったということを認めていただいて、とてもうれしく思います」と表明し、被申立人のNHKは「今回の決定を尊重して、公平・公正な放送に努めてまいります」と述べた。

記者会見では竹田委員長が「委員会決定」について説明し、「昨年7月の運営規則改正後の初めての公平・公正を欠く放送についての判断である。また、この決定は一般的な判決報道の基準を示したものでなく、放送事業者自身が当該裁判の一方の当事者であるという特殊性のある事案であることに留意してもらいたい」と述べた。右崎委員は「公平・公正についての最初の事案であることから、時間をかけ、当事者の意見を良く聞いたうえで慎重に判断したものである」と述べ、武田委員は「今回はあくまでも特殊なケースではあるが、このようなケースを積み重ねることによって、公平・公正の概念が規定されてくるのではないか」と指摘した。

記者からは、「この事案の元となった最高裁の判決が明後日(6/12)に出るが、判決を意識しての今日の決定となったのか。また、この決定が判決に影響を与えるものなのか」との質問があった。これに対して竹田委員長は「判決が6/12に出ることは承知しているが、本事案は通常の手続きにのっとって決定に至ったもので、判決と本日の決定とは直接関係はない。また本件は判決報道に係る報道のあり方についての決定であって、元になった判決に影響を与えるものではない」と答えた。

この記者会見を受け、その直後の昼のニュースでフジテレビが伝えたほか、多くの局は夕方のニュースでこの決定とNHKの反応などを伝えた。また当該局であるNHKは、「NHK7時のニュース」及び当該番組の「ニュースウオッチ9」で伝えた。さらに、新聞も多くがその日の夕刊で、かなりの紙面を割いて伝え、この事案への関心の高さをうかがわせた。

仲介・斡旋解決

事務局より下記の報告をし、了承された。

「離婚した妻の一方的主張を再現したバラエティー番組」に元夫が苦情

中国地方に住む男性から、「4月全国ネットのバラエティー番組で、元妻の一方的な証言に基づいて、私の浮気が離婚の原因と決め付けた過去が紹介され、その場面の再現放送までされた」として、在京の民放局に訂正放送などを求める訴えが、放送人権委員会に寄せられた。

当委員会で、当該局に事実関係の確認ならびに男性との話合いを勧めたところ、数回の交渉で、和解が成立し、5月に全国ネットで同番組の最後でお詫び放送がなされ、また3日後には男性が住む圏域のローカル局(全国ネット外)でも特別編成で同番組の放送が行われた。

当該局では、本件苦情の訴えを重視し、弁護士を交えて番組スタッフから調査を行い、離婚の原因についての説明が一方的だったことを確認し、再現VTRの使用は、男性の名誉を傷つけた恐れが多分にあることなどを認めお詫び放送に踏み切ったもの。

なお、当該局では、上記の調査、お詫びの経緯等について、当委員会に報告書を提出し、その中で、今後の対応および再発防止策として、この放送内容について社内のさまざまなレベルで、研修、勉強会などを開き、反省の共有化、意識啓発を進めることになったとしている。

5月の苦情概要

5月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・1件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・133件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

「BRC」から「放送人権委員会」へ

事務局から下記の件を報告し、了承を得た。

5月のBPO理事会で、「放送と人権等権利に関する委員会」の略称について、7月1日より、略称を「放送人権委員会」とし、BRCは使わないことを決めた。BRCとBPOの区別が分かりにくいなどの意見に配慮したもの。

次回委員会を7月15日に開くことを決め、閉会した。

以上

第135回 放送と人権等権利に関する委員会

第135回 – 2008年5月

「群馬・行政書士会幹部不起訴報道」  ヒアリング及び審理

「高裁判決報道の公平・公正問題」事案  委員会決定案について最終審理 …..など

「群馬・行政書士会幹部不起訴報道」  ヒアリング及び審理

群馬県行政書士会の幹部から、「ラジオのニュースにより、自分の名誉が毀損された」との申立てについて、申立人、被申立人を個々に招いてヒアリングを行い、そのあと審理した。

放送は昨年12月12日のエフエム群馬の夕方のニュースで、「行政書士会の幹部が、会の席上発言者に暴行を加え、傷害の疑いで書類送検されたことが、今日の県議会で取り上げられた。しかしこの幹部は不起訴処分になったことから、県は処分を行わない考えを明らかにした」と伝えたもの。

ヒアリングで、申立人は「エフエム群馬の放送内容は事実とは全く違う。自分になんの取材をしないまま、県議会の委員会で取り上げられたからと言って、自分が傷害犯のように思われる報道を一方的にされたことは納得できない。真実を探る努力を怠ったことから、真実でない放送をされ、名誉侵害を受けたので、放送法4条に基づきエフエム群馬に対し訂正放送と謝罪を求めたい」と主張した。

これに対し被申立人のエフエム群馬は、「ニュースは、県議会での質疑応答の過程において明らかになった内容を伝えたものであり、書類送検、不起訴という重要事項については事実確認をして報道しており、真実でない事項の放送はしていない。公の場で、公人が語った内容を伝えたことに問題はないと考える。従って訂正放送などに応じることは出来ない」と反論した。

ヒアリングを受けて委員会では、この事案を名誉侵害や放送倫理の面などから審理を行い、起草委員にその内容のとりまとめを委託した。次の委員会ではそのとりまとめを受けて最終的な判断を決定する方向となった。

「高裁判決報道の公平・公正問題」事案  委員会決定案について最終審理

本事案は、「戦争と女性への暴力」日本ネットワークの代表が、「昨年1月放送のNHK『ニュースウオッチ9』で、2001年に放送されたNHK教育テレビ・ETV2001シリーズ『戦争をどう裁くか』について東京高裁が判決を言い渡したニュースの中で『当事者としてのNHKの言い分』と『報道機関としての報道』を峻別せずに報道したことは、公平原則に照らして許されるものではないし、放送倫理にも違反していた」と訴えているもの。これに対しNHKは「判決について報じる場合は、裁判所による客観的な判断であるから原告や被告の言い分を付さずとも基本的に公平の観点で問題はない。また、申立人の見解を紹介しなかったとしても、必ずしも公平・公正を欠くというものではないし、放送倫理に違反するようなものではない」と反論している。

5月の委員会では、5月13日に開かれた「起草委員会」で検討された内容が報告され、「委員会決定」原案取りまとめに向けて意見が交わされた。

その結果、「決定」案の細部の文言等について、さらに各委員の意見を集約して6月3日に起草委員会を開き、最終的な取りまとめ作業を行うこととした。

宗教団体からの審理要請案件  審理対象外を通告へ

本案件は、在京の民間放送局が、2007年9月報道番組で宗教団体への潜入取材レポートを行ったことをめぐって、隠しカメラ・隠しマイクの対象となった宗教団体および団体幹部から、名誉毀損等の権利侵害ならびに公平・公正に関する放送倫理違反とする二つの申立てがなされた。

2007年7月放送人権委員会は運営規則を改正し、条件付きながらも「団体からの申立て」も受理することとし、また、「公平・公正の苦情」についても訴えることができることとした。これを受けての団体からの本格的な審理要請案件であり、委員会では、審理入りするかどうかについて慎重な議論を行った。その結果下記のような結論に達し、それぞれの申立人に通知することになった。

まず、個人からの申立てについては、「匿名、モザイクなどの使用により個人を特定できないことから、名誉・プライバシー・肖像に関する権利侵害は認められないし、公平・公正を欠いた放送により著しい不利益を被った者と認めることもできない」などとして、放送人権委員会の運営規則第5条(1)、(2)の規定に定める苦情申立てを受理する基準に該当しないと判断した。

また、団体からの申立てについては、「申立てを受理するかどうかについては、団体としての、規模、組織、社会的性格などを考慮する必要がある。潜入取材に関して申立人が放送中止を求める仮処分申請を東京地方裁判所に出し、却下の決定を受けており、申立人は、本件放送による名誉・信用の侵害については、司法による権利救済を求めることが可能な団体であると解され、司法による救済とは別に、放送人権委員会における救済の必要性が高いなど、審理対象とすることが相当であるとは認められない(放送人権委員会運営規則第5条(6)による)。さらに「匿名、モザイクなどの使用により個人を特定できないことから、名誉・プライバシー・肖像に関する権利侵害は認められないし、公平・公正を欠いた放送により著しい不利益を被った者と認めることもできない」(放送人権委員会運営規則第5条(2)による)などとして、上記とあわせ、本件申立ては審理の対象外とすることと判断した。

* 放送人権委員会の運営規則第5条(苦情の取り扱い基準)

  • 名誉、信用、プライバシー・肖像等の権利侵害、およびこれらに係る放送倫理違反に関するものを原則とする。
  • 公平・公正を欠いた放送により著しい不利益を被った者からの書面による申立てがあった場合は、委員会の判断で取り扱うことができる。
  • 団体からの申立てについては、委員会において、団体の規模、組織、社会的性格等に鑑み、救済の必要性が高いなど相当と認めるときは、取り扱うことができる。

苦情概要

4月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳。

◆人権関連の苦情

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談(個人又は直接の関係人からの要請)・・・8件
  • 人権一般の苦情や批判(人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)・・・144件

* 今年度より、一般視聴者からの苦情や批判の集計に当たっては、従来の人権侵害の枠に止めることなく、放送倫理を問うものまで含めることとした。

『放送人権委員会判断基準2008』 発刊

事務局から、『放送人権委員会判断基準2008』の編集・印刷が完了し、5月16日発刊したことを報告した。全加盟各社等に配布し、さらに購入の要望があるところには、実費の1冊600円で頒布することにしているが、すでに、テレビ局や日弁連等から注文が来ていることを合わせて説明した。

次回委員会を6月17日に開くことを決め、閉会した。

以上

第134回 放送と人権等権利に関する委員会

第134回 – 2008年4月

「高裁判決報道の公平・公正問題」事案  起草委員会が草案作成へ

「群馬・行政書士会幹部不起訴報道」  5月委員会でヒアリング ……など

「高裁判決報道の公平・公正問題」事案  起草委員会が草案作成へ

本事案は、今年1月に「戦争と女性への暴力」日本ネットワークの代表が、「昨年1月放送の『ニュースウオッチ9』で、2001年に放送されたETV2001シリーズ『戦争をどう裁くか』について東京高裁が判決を言い渡したニュースの中で『当事者としてのNHKの言い分』と『報道機関としての報道』を峻別せずに報道したことは、公平原則に照らして到底許されるものではないし、放送倫理にも違反している」と申し立てているもの。

4月の委員会では申立人、被申立人双方から、個別に直接主張を聞くヒアリングを行った。

この席で申立人側は「NHKは報道機関でありながら、裁判の当事者としてのNHKと一体化していて、客観的な報道を行っていない、判決の本質をゆがめて伝えている」と訴えた。

一方、被申立人のNHKは「当事者としての判断はなく、判決についてより淡々と伝えることに気を配ったものである」と述べた。

ヒアリングの後、更に審理を行い、5月13日に起草委員会を開いて、委員会決定の草案作成の作業を進めることにした。

「群馬・行政書士会幹部不起訴報道」  5月委員会でヒアリング

群馬県行政書士会の幹部から、「ラジオのニュースにより、自分の名誉が毀損された」と申立てがあり、委員会で審理された。放送は昨年 12月12日のエフエム群馬の夕方のニュースで、「行政書士会の運営を巡る対立により、この幹部が傷害の疑いで書類送検され、その後不起訴になった」などと伝えたもの。

これについて申立人は、「事実関係は全く違う。自分になんの取材をしないまま、県議会の委員会で取り上げられたからと言って、自分が傷害犯のように思われる報道を一方的にされたことは納得できない」として、エフエム群馬に対し訂正放送と謝罪を求めている。

これに対しエフエム群馬は、「ニュースは、県議会での質疑応答の過程において明らかになった内容を伝えたものであり、重要事項についての事実確認を行ったうえで報道しており、真実でない事項の放送はしていない。従って訂正放送などに応じることは出来ない」と反論している。

委員会では、申立人から提出された「申立書」「反論書」、及びエフエム群馬からの「答弁書」「再答弁書」等の資料を基に審理を行った結果、申立人、被申立人それぞれの言い分を確認する意味でも、次の委員会では双方を招いてヒアリングを行うことにした。

苦情概要

3月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情の内訳は次のとおり

◆人権関連の苦情[9件]

  • 審理・斡旋に関する苦情(特定個人または直接の関係人からの人権関連の苦情)・・・9件
  • 人権一般の苦情(人権関連だが、関係人ではない一般視聴者からの苦情)・・・0件

次回委員会を5月20日に開くことを決め、閉会した。

以上

第133回 放送と人権等権利に関する委員会

第133回 – 2008年3月

「産廃不法投棄業者の隠し撮り報道」事案

「高裁判決報道の公平・公正問題」事案…など

「産廃不法投棄業者の隠し撮り報道」事案

福島県いわき市の木材加工会社の社長が、隠し撮りの放送(2007年12月5日)により人権を侵害されたという申立てについて、133回委員会で、その社長と当該局・福島テレビの関係者から個別にヒアリングを行った。

この中で社長は、「産業廃棄物を自社の敷地に不法投棄していたことは事実で反省もしている。しかし隠しカメラで、雑談と思わせインタビューされ、これを逮捕当日のニュースに使われたのは納得できない」と申立てに至った理由を語った。その上で社長は、「地元の同業者は産業廃棄物の扱いに疎いところがあったが、今回の逮捕によって皆で研究していこうという機運も出ている」と語ると共に、放送人権委員会に申し立てし、このヒアリングに出て話が出来たことで、福島テレビに対する怒りの気持ちも、ずいぶん落ち着いてきたと率直に語った。

一方福島テレビ側は、「悪質な産廃不法投棄事件であるが、社長はインタビューに応じてくれなかった。しかも逮捕も間近であり、なぜ不法投棄を続けていたかを報道するためには隠し撮りもやむを得なかった。従って申立人への人権侵害などに当たるものではない」と主張した。しかし「隠し撮りの放送により社長が不愉快になった気持ちは十分理解できる。その気持ちも重く受け止め、こうした取材については今後も十分慎重に対応したい」という考えを明らかにした。

この考えの表明を受け、委員会で改めて申立人に聞いたところ、「相手の気持ちも分かったので、これ以上争う積もりはない」として苦情申立てを取り下げることとなった。 (解決 2008年3月18日)

委員会審理及びヒアリングを行った上での仲介・斡旋の成立は今回が初めてのケースとなる。

「高裁判決報道の公平・公正問題」事案

本事案は、今年1月に「戦争と女性への暴力」日本ネットワークの代表が、NHKを相手取って申し立てたもので、「昨年1月放送の『ニュースウオッチ9』で、2001年放送されたETV2001シリーズ『戦争をどう裁くか』について東京高裁が判決を言い渡したニュースの中で『当事者としてのNHKの言い分』と『報道機関としての報道』を峻別せずに報道したことは,公平原則に照らして到底許されるものではない。また、公平原則を逸脱した部分は、正確な報道を行うという放送倫理にも違反していた」と申し立てている。

これに対しNHKは、「判決について報じる場合は、裁判所による客観的な判断であるから原告や被告の言い分を付さずとも基本的に公平の観点で問題はない。また、申立人の見解を紹介しなかったとしても、必ずしも公平・公正を欠くというものではないし、放送倫理に違反するようなものではない」と反論している。

3月の委員会では、申立人から提出された「申立書」「反論書」、及びNHKからの「答弁書」「再答弁書」等の資料を基に審理を行った結果、申立人、被申立人それぞれの言い分を確認する意味でも、次の委員会では双方を招いてヒアリングを行うこととした。

審理要請事案「群馬・行政書士会幹部不起訴報道」

群馬県在住の行政書士会幹部から申立てがあった上記事案について、4月の委員会から審理入りすることを決定した。

行政書士会幹部は、昨年12月に放送されたエフエム群馬のニュース番組で、「速報性にとらわれ、十分な取材を行っていない為に『真実』が伝えられず、名誉を毀損された」として、謝罪と訂正放送を求めている。

これに対しエフエム群馬は「報道は県議会の、質疑応答の過程において明らかになった内容を伝えたものである。本件報道は重要事項についての事実確認を行ったうえで報道したものであり、真実でない事項の放送はしていない。従って訂正放送などに応じることは出来ない」と反論している。

委員会では、申立書および当該局の見解、当該ニュース原稿などに基づき検討した結果、審理対象とすることを決定した。

仲介・斡旋解決事案

「無理やりインタビュー・放送に抗議」

事務局から、仲介・斡旋解決事案として下記内容を委員会に報告し、了承を得た。

「取材を拒否したのに無理やりインタビューされた上放送された。テレビ局に抗議し謝罪を求めたが誠意ある対応を示さない」と、宮城県在住の商店従業員が委員会に苦情を訴えてきた。

抗議の内容は、「2月にテレビ局から、深夜番組の恋愛応援企画コーナー(バレンタインデーに女性がチョコレートを渡すのを応援するもの)での取材要請があったが、はっきり断った。にもかかわらずテレビ局は女性と共に待ち伏せし、仕事を終えて店を出たところで無理やりインタビューされ、取材を断っている場面を放送(2008年2月21日)された」というもの。

放送後の抗議に対し、テレビ局は「匿名、モザイクにしたので名誉毀損には当たらない」と釈明し、「迷惑をかけたとしたらすまない」との意向を示したが、商店従業員は「まったく誠意が感じられない対応だ」として、放送人権委員会へ訴えた。

放送人権委員会事務局では、「商店従業員は放送された人の気持ちを考慮した誠意ある謝罪を求めている」とテレビ局に伝え、話し合うよう要請していた。その結果商店従業員から、「2度の話し合いの末、このような取材の再発防止などをテレビ局が約束してくれたので了解した」との連絡を受けた。またテレビ局からも、同日「円満解決した」との報告があった。(解決 2月29日)

苦情概要

2月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情の内訳は次のとおり。

◆人権関連の苦情[10件]

  • 審理・斡旋に関する苦情(特定個人または直接の関係人からの人権関連の苦情)・・・9件
  • 人権一般の苦情(人権関連だが、関係人ではない一般視聴者からの苦情)・・・1件

『放送人権委員会判断基準2008』 第2稿

右崎正博委員の監修を受けた第2稿について、委員会で出された意見・チェック等を加味した上で、今後最終的な第3稿が整理されることとなった。

4月中旬までに発行の予定だが、これまでの10年余りの間に扱った26事案35件の決定の中で打ち出した100項目にも上る判断基準が、企画、取材、編集、放送などのカテゴリーに分類されている。あらたに「政治論評の自由」、「バラエティー番組と人権侵害」などの範疇も加わった。

編集完了後は、4000部を印刷し、BPO加盟各社や放送関係者に一定部数を配布するほか、社員教育などで多めの入手を希望する社には、実費(一冊600円)で購入していただく予定。また、放送研究者や一般視聴者からの購入希望にも応じることにしている。

次回委員会を4月8日に開くことを決め、閉会した。

以上

第132回 放送と人権等権利に関する委員会

第132回 – 2008年2月

「産廃不法投棄業者の隠し撮り報道」

審理要請事案「高裁判決報道の公平・公正問題」…など

「産廃不法投棄業者の隠し撮り報道」

福島県いわき市の木材加工会社の社長から、「07年12月5日、工場から出たオガクズなどの産業廃棄物を工場内敷地に不法に投棄していたとして逮捕されたが、その報道にあたり、事前に隠し撮りされていた自分の映像や音声を使われ人権を侵害された」とする申し立てがあった。

これに対し当該局の福島テレビは、「福島県では産業廃棄物の不法投棄が跡を絶たず、最近は企業ぐるみの犯行が増加傾向にある。今回の事件は企業トップの関与が指摘されたケースで、その実態を報道することは社会的要請も高いと判断した」として、「違法でも人権侵害でもない」と反論している。

放送人権委員会では、提出された「申立書」、及び局側からの「対応の経緯と見解」などの資料、局から提出された放送番組の同録DVDを視聴し検討した結果、本事案について審理に入ることを決めた。

この後、各委員から「隠し撮りの必要性はどの程度あったか」「業者の不法投棄の認識はどうだったのか」など意見が出され、次回3月の委員会で、申立人、被申立人をそれぞれ個別に招いてヒアリングを行うことを決めた。

審理要請事案「高裁判決報道の公平・公正問題」

1月25日、「戦争と女性への暴力」日本ネットワークの代表から 「07年1月29日放送のNHK報道番組 『ニュースウオッチ9 』 で、01年1月放送のETV2001シリーズ 『戦争をどう裁くか』 について東京高裁が判決を言い渡したニュースの中で『当事者としてのNHKの言い分』と『報道機関としての報道』を峻別せずに報道したことは,公平原則に照らして到底許されるものではない。また、公平原則を逸脱した部分は、正確な報道を行うという放送倫理にも違反していた」として、謝罪と訂正放送を求める申し立てがあった。

これに対しNHKは、「本件申立ては『裁判で係争中の事案』に該当し、放送人権委員会運営規則の定めからして、審理の対象にならないことは明らかである。また、判決についての原告側の見解を紹介しなかったとしても、必ずしも公平・公正を欠くというものではないし、放送倫理に違反するようなものではない」と反論している。

放送人権委員会では、申立人から提出された「申立書」、及びNHKからの「回答書」等の資料を慎重に検討し、さらに提出された同録テープを視聴した結果、「争われているのは『ニュースウオッチ9』であって、『裁判で係争中の事案』には該当しない」として、次回3月委員会から実質審理に入ることを決めた。

苦情概要

●人権等に関する苦情

1月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情の内訳は次のとおり。

◆人権関連の苦情[10件]

  • 審理・斡旋に関する苦情(特定個人または直接の関係人からの人権関連の苦情)・・・6件
  • 人権一般の苦情(人権関連だが、関係人ではない一般視聴者からの苦情)・・・4件

「BRC判断基準2008」の編集進捗状況

4月初旬発行の予定で、作業が進められており、右崎委員の監修の下、編集の整理・調整が行われていることが、事務局より報告された。

その他

新年度の委員会開催日について

4月からの新年度の委員会開催日について、各委員のスケジュールや都合等を聞いた結果、「原則、従来どおりの第3火曜日で、午後4時から開会」を申し合わせた。

関係者から事情を聞くヒアリング等が予定される場合は開会時間を早める他、4月の委員会は都合により1週間早めて4月8日開催となった。

次回委員会を3月18日に開くことを決め、閉会した。

以上

第131回 放送と人権等権利に関する委員会

第131回 – 2008年1月

新たな申立て案件

判断基準・改訂版の編集進捗状況…など

新たな申立て案件

1月15日、東北地方の会社社長から事件報道に関して苦情の申立てがあった件について、事務局から報告。

申立人は、ニュース報道で、取材を拒否したにもかかわらず、隠しカメラで撮られた映像や音声が使用され 、権利を侵害されたと訴えている。

委員会では、当該局に事実関係と見解を問い合わせたうえ、次回委員会で本案件を審理事案とするか否 か協議することになった。

人権等に関する苦情

12月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情の内訳は次のとおり。

● 人権関連の苦情[11件]

  • 審理・斡旋に関する苦情(特定個人または直接の関係人からの人権関連の苦情)・・・・・・・ 6件
  • 人権一般の苦情(人権関連だが、関係人ではない一般視聴者からの苦情)・・・・・・・ 5件

判断基準・改訂版の編集進捗状況

事務局から「判断基準2008」の編集作業の進捗状況について、中間報告を行った。「判断基準2005」発行以 来の約3年間に新たに決定が下された10事案の委員会判断からポイントとなる判断部分を抜き出して一覧 にした資料を提出した。政治報道の論評の自由、バラエティー番組における名誉毀損、ラ・テ欄表記の適切 な表現などが新しい判断基準として追加される。

「放送人権委員会判断基準2008」は、1997年の放送人権委員会発足以来の11年間に下された26事案35件の決定で打ち出された 判断を総まとめしたものとなり、取材・編集・放送などのカテゴリー別に分類・整理された判断基準は、あわせ て90項目ほどになると見られる。4月を目途に発刊の予定。

放送人権委員会の運営等について意見交換

委員会運営の問題点や新年度に向けての課題等について意見交換を行った。
まず、事務局から次のような現状と運営上の問題点を提示した。

  • 放送人権委員会が設立されて10年経つが、BPOと放送人権委員会の関係も多くの人は理解していないと思われる。放送人権委員会という名称が分かりづらいという声もある。
  • 委員会決定における人格権侵害に関わる法律的な判断基準は明確でも、放送倫理上の問題に対する判断基準はわかり難いという意見もある。
  • 書面提出を中心とした現在の苦情申立て審理の手続きは、弁護士など代理人を立てない個人の申立人には難しすぎる面がある。

これに対し委員からは、1の現状については

・「たとえば”映倫”の名前は、何をしているかはよく解らなくても、すぐ覚えられるが<放送と人権等権利に関する委員会>では、なかなか覚えられない。放送人権委員会というアルファベットの略称もなんとかならないか」等の意見が出た。

また2の問題については

・「名誉侵害は”救済の論理”であり、放送倫理は”放送のあり方”の問題である。救済の論理と放送のあり方は次元を異にするが、我々はその両方にまたがって議論している。

・「裁判所は権利侵害で終わり。放送人権委員会にもほとんどの人が権利救済を求めてくるが、我々は放送のあり方としてどうかということも考え、局に言うべきことは言わなければならない」等の考えが示された。

さらに3については

・「放送人権委員会の敷居が高いのではないかという問題には、できるだけ苦情申立ての手続きを簡単にするべきではないか」等の考えが出された。

今後も、引き続いて放送人権委員会の運営上改善すべきところ等について議論を続けることになった。

次回委員会を、2月19日に開くことを決め、閉会した。

以上

第130回 放送と人権等権利に関する委員会

第130回 – 2007年12月

メディア・スクラム苦情の対応について意見交換

放送人権委員会10周年フォーラムの報告…など

メディア・スクラム苦情の対応について意見交換

放送人権委員会では、本年7月、運営規則に「集団的過熱取材(メディア・スクラム)」に対応する条項を明文化し、また、このところ事件渦中の人物やその家族から過熱取材による被害の救済を求めてくる例が増えてきているため、12月の委員会にテレビ朝日取締役で民放連報道小委員長の渡辺興二郎氏とNHK報道局社会部長の柳辰哉氏を招き、メディア・スクラムへの対応策等について意見を交換した。

まず渡辺氏が「2001年初頭に集団的過熱取材への批判が急速に強まり、民放連会員各社は、過熱取材による被害防止のために各社共通の留意点を現場取材者に徹底させるなどの対応を取るべきであるとの認識に達し、放送局の枠を超えて解決策を取ってきた」と述べ、在京キー5局が持ち回りで幹事を務める等の対応体制を具体的に説明した。

続いてNHKの柳氏が、取り囲み取材や通夜・葬儀、静穏が求められる場所での取材等についてまとめられた新聞協会編集委員会の見解を説明、また、「メディア・スクラム対応は、しっかり取材するためのものである。人々の信頼を失うと取材がしにくくなるからだ」との考えを示したうえで、対応策として「1.早めの対応、2.現場を見る、3.社会人としてのマナーを守れ、を徹底しようとしている」と述べた。

これに対し委員側からは、「メディア・スクラム発生の可能性にどう対応するか」「公人の場合は対応を区別して考えるとしているが、具体的にはどう区別するのか」等の質問があり、渡辺・柳両氏から「この6年間メディア・スクラム対応をやってきて、今は相当迅速に動けるようになった」「公人は違うというだけで区別するのは危険だと思う」「BPO・放送人権委員会に寄せられる情報をできるだけいただき、それを現場取材に生かしていきたい」等々の発言があった。

放送人権委員会事務局からは、最近の例として、守屋防衛省前次官の家族から「集団的過熱取材による報道被害の訴え」があったことは民放連の対応幹事社とNHKに伝えたが、委員会として善処を要望する事態までには至らなかったことを報告した。

放送人権委員会10周年フォーラムの報告

放送人権委員会事務局から、去る12月5日(水)に開催された「放送人権委員会10周年フォーラム」の概要、反応、アンケート結果などについて報告した。

フォーラムには、民放120名、NHK31名など239名が参加、コンプライアンス担当や編成担当を中心に、報道・情報の制作現場の人も集まった。なお取材のテレビカメラは、5社・6台。

竹田稔放送人権委員会委員長による基調講演「放送による人格権侵害と放送倫理」に続き、三宅弘放送人権委員会委員のコーディネートで「放送倫理」をメインテーマにパネルディスカッションが行われた。ジャーナリストの江川紹子さん、読売新聞の鈴木嘉一さんらをパネリストとし、これまで放送人権委員会が審理して来た事例を中心に、取材・編集・OAのそれぞれの段階での問題を討議、会場からの声もたくさん出され、活発な意見交換が行われた。その中では、取材における隠しカメラ・隠しマイク、編集・OAでのモザイク・顔を映さないインタビューの多用などについて、その妥当性や問題点が指摘され、参加者の関心も高かった。

参加者のアンケート結果では、「具体的な事例をベースにしたフォーラムで、分かりやすく有益だった」と言う声が多く、この種のフォーラムを年に1度は開いて欲しいという要望が多く寄せられた。

なおこの日の委員会で放送人権委員会委員から、「内容的にも充実していて良かった」という声と共に、「視聴者・市民と放送局の間に立つ第三者機関のBPOであるので、フォーラムにも市民が参加しても良かったのではないか」という意見もあった。

「グリーンピア南紀再生事業の報道」事案の通知・公表報告

和歌山県那智勝浦町にあるグリーンピア南紀の再生事業を請け負った香港ボアオのオーナーが、読売テレビの報道番組で事実と異なる報道をされ名誉を毀損され、プライバシーを侵害されたと権利侵害を申立てていた事案で、委員会は「名誉毀損にもプライバシー侵害にもあたらない」という判断を下した。12月4日、その「決定」を申立人、被申立人双方に対し通知し、マスコミに公表した。その模様とその後の放送対応について事務局から下記報告を行った。

  • 通知・公表には、竹田委員長と起草委員を務めた五代委員長代行、三宅委員が出席、記者会見にはメディア側からは24社41人が集まり、テレビカメラ6台が入った。
  • 決定通知を受けた申立人の代理人は「人権尊重の観点からの問題提起に何の配慮もなされていない」と決定に不満を表明する見解を出した。一方、読売テレビは「極めて妥当な見解である」とのコメントを発表した。

また、委員会は、当該局読売テレビの、この決定についての当日夕方のニュースを視聴した。
2007年度に、委員会が「決定」を出した事案はこれで5件で、過去最多となっている。

仲介・斡旋解決事案と苦情概要

●「松茸の産地偽装疑惑報道」事案の仲介・斡旋解決

11月、ある地方の松茸販売業者から「当店は、この地方でただ一店、産地表示して松茸を売っているのに、朝早くからアポイントもなく押しかけてきた記者に最初から結論ありきの態度で長時間取材され、中国・韓国産の松茸をあたかも当地方産と偽装して販売しているように報道された。当該局に抗議すると『間違った放送はしていない』の一点張りだった」と苦情を申し立ててきた。

放送人権委員会事務局では、当該局に対し「申立人は、地元商工会や観光協会との関係を一番問題にしている」と伝えた。

これを受けて局の番組責任者が申立人を訪れて話しあった。その結果、「産地偽装についてはそれぞれ言い分があったが、”アポなし長時間取材”等についてはお詫びした。申立人は当方の誠意を認めて和解に応じ、解決書を取り交わした」との報告があった。

また申立人に確認すると「局の責任者が商工会・観光協会にも事情を説明してくれた。お陰で円満に解決することができた」ということであった。(放送11月 解決12月)

●人権等に関する苦情

11月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情の内訳は次のとおり。

◆人権関連の苦情[11件]

  • 審理・斡旋に関する苦情(特定個人または直接の関係人からの人権関連の苦情)・・・7件
  • 人権一般の苦情(人権関連だが、関係人ではない一般視聴者からの苦情)・・・4件

放送法改正案について

12月11日衆院本会議を通過した放送法改正案について、審議経過などを事務局が報告した。

この中で、12月4日の衆院総務委員会にはBPOの飽戸弘理事長が民放連会長やNHK会長らとともに参考人として招かれ質疑が行われたこと、また13日にはBPOの放送倫理検証委員会の川端和治委員長が参院総務委員会に招致されたことが紹介された。

また、放送法改正案が衆院を通過した際には、BPOに関連して「放送の不偏不党、真実及び自律が十分確保されるよう、BPOの効果的な活動等関係者の不断の取り組みに期待するとともに、政府においては、関係者の意向も踏まえつつ、その取り組みに資する環境の整備について検討を行うこと」という付帯決議が行われているが、この点に関してBPOとして何らかの意思表示をすべきではないかと言う意見があった。

しかし、当面は、参院での審議の成り行きを見守ることになった。

次回委員会を、1月15日に開くことを決め、閉会した。

以上

第129回 放送と人権等権利に関する委員会

第129回 – 2007年11月

守屋前防衛事務次官宅前のメディア・スクラム対応

「”グリーンピア南紀”再生事業の報道」事案の最終審理…など

守屋前防衛事務次官宅前のメディア・スクラム対応

放送人権委員会事務局は、防衛省の守屋前事務次官の家族から、11月14日夕方自宅前での過熱した取材による報道被害の訴えが寄せられたため、緊急に民放連の「集団的過熱取材問題」担当幹事社に対し善処を求めたことを11月の委員会に報告した。

以下報告内容。前事務次官の家族の一人がBPOに訴えてきた苦情は「このところ、テレビ・新聞・雑誌各社の過熱取材により生活を脅かされている。事件には関係のない自分までカメラに追い回される。私道では各社カメラが勝手な場所取りを行うなど、周辺住民にも多大の迷惑を及ぼしており、家族や周辺住民にとって耐えられない状況が続いている。何とかしてもらえないか」というもの。

放送人権委員会の運営規則(07年7月改正)は、第5条3項に【放送関係者による重大な権利侵害等を伴う取材活動・放送がなされ、これが継続中であって、かつ緊急に対応する必要があると認めたときは、本人または利害関係人の申立てにより、委員会は、放送事業者または所属の関係者に対し、その事態を解消するために必要な措置を取るよう要望することができる】と定めている。

放送人権委員会事務局では、上記規則に従い、直ちに民放連の「集団的過熱取材問題」担当幹事社(テレビ朝日)に対し、まずこの家族の苦情申立ての概要を伝え、善処方を要請した。担当幹事社であるテレビ朝日の報道局次長は、14日の午後5時に関係各社に対し、放送人権委員会事務局から受けた家族の苦情概要を伝えるとともに、「改めて節度ある取材について協力されるように」との文書を送信、15日には局次長自身が現場を見回った後、「本日は問題ない」と放送人権委員会に報告してきた。

16日午前に放送人権委員会の調査役が現地を視察したところ、現場は、すでに静かで落ち着いており、ゴミの散乱もなかった。同日昼過ぎには苦情を申し立てていた家族から電話があり、「その後は概ね静かになった。感謝している」旨、伝えてきた。

放送人権委員会では、2006年5月に秋田で起きた「連続児童遺体発見事件」に関して「取材対象者に対するいわゆる集団的過熱取材はいかなる場合にも慎むべきことである。真相の究明を急ぐあまり過熱取材に陥り、取材対象者のプライバシーを侵害することのないよう、節度を持って取材に当るよう要望する」との委員長名の文書を関係各社に送付している。

「”グリーンピア南紀”再生事業の報道」事案の最終審理

和歌山県那智勝浦町にある”グリーンピア南紀”の再生事業を請け負った香港ボアオのオーナーが「読売テレビの報道番組(5月26日、6月2日放送)で事実と異なる報道がなされた結果、自分の名誉が著しく傷つけられ、また、取材・放送によりプライバシーが侵害された」と申し立てた事案の最終審理が行われた。

本事案は、これまでにヒアリングを含め4回の委員会と1回の起草委員会で審理が行われているが、11月の委員会では、起草委員会で検討された「委員会決定」の草案をもとに審理を行い「委員会決定」案が了承された。

申立人・被申立人に対する「委員会決定」の通知とマスコミに対する発表は、12月4日に行われることになった。

「部落解放同盟大阪府連幹部からの訴え」事案の通知・公表の報告

11月12日に行われた標記事案に対する「委員会決定」の通知・公表の模様を11月委員会で事務局から報告した。

また、この委員会決定がメディアにどう扱われたかを調査した「放送対応と関連新聞記事」についても委員会で報告された。被申立人の毎日放送は、通知当日に当該ニュース番組「VOICE」の中で決定要旨を伝えた。委員会で、その録画を視聴した。また在京キー局の中では3局がこのニュースを伝えた。一方新聞報道では、東京地区では3社が、大阪地区では4社が関連記事を掲載した。

苦情概要

10月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情の内訳は次のとおり。

◆人権関連の苦情[5件]

  • 審理・斡旋に関する苦情(特定個人または直接の関係人からの人権関連の苦情) ・・・ 5件
  • 人権一般の苦情(人権関連だが、関係人ではない一般視聴者からの苦情) ・・・ 0件

その他

次回12月18日の委員会では、新たな事案の審理が無い場合には、メディア・スクラムが発生した際のテレビ各局間の対応組織の運用の実情について、NHK、民間放送連盟から担当者を招き説明を聞くことになった。

第128回 放送と人権等権利に関する委員会

第128回 – 2007年10月

「”グリーンピア南紀”再生事業の報道」事案のヒアリングと審理

「部落解放同盟大阪府連幹部からの訴え」事案の審理…など

「”グリーンピア南紀”再生事業の報道」事案のヒアリングと審理

“グリーンピア南紀”の再生事業を請け負った香港ボアオのオーナー蒋暁松氏が「読売テレビの報道により、自分の名誉が著しく傷つけられ、また、取材・放送によりプライバシーが侵害された」と申し立てた事案について、放送人権委員会は10月の定例委員会で、申立人・被申立人の双方を個別に招きヒアリングを行った。

申立人の代理人は、「ボアオは土地・建物の賃貸借期間の10年が過ぎれば、勝手に転売できる」とのキャスター発言や「それを狙っている」とのゲストのコメントは、明らかな誤解であり、名誉を著しく傷つけられたと主張した。また、自宅周辺の撮影取材で、家族のプライバシーが侵害されたと訴えた。
被申立人の読売テレビは、「キャスター、ゲストの発言は、事実関係を踏まえて意見を述べたもので、名誉毀損にはあたらない。撮影した建物は、会社と自宅を兼ねたものであり呼び鈴も同一であった。自宅であることは番組では一切報道していない」と主張した。

委員会は、ヒアリングの後、審理を行い、11月初めに起草委員会を開き起草案を作成し、次回11月の委員会では、その案をもとに更に審理を行うことになった。

「部落解放同盟大阪府連幹部からの訴え」事案の審理

本事案は、部落解放同盟大阪府連書記長らが「大阪市の償還金補助問題を取り上げた毎日放送の報道は、解放同盟やそのリーダー個人の名誉権を著しく侵害している」と訴えているもの。

9月の委員会でのヒアリングを受けて、10月5日には起草委員会が開かれ、「委員会決定」の起草委員会草案作りが行われたが、本委員会では、起草委草案をタタキ台に、「本件報道による名誉権侵害の成否」や「表現の仕方及び取材のあり方」などについて意見を交わした。

その結果、「委員会決定」案について大筋意見がまとまり、構成の修正や字句・文言の手直しなどを経て、11月12日(月)午後に「委員会決定の通知・公表」を行うことになった。

苦情概要

9月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情の内訳は次のとおり。

◆人権関連の苦情[6件]

  • 審理・斡旋に関する苦情(特定個人または直接の関係人からの人権関連の苦情)・・・3件
  • 人権一般の苦情(人権関連だが、関係人ではない一般視聴者からの苦情)・・・3件

その他

放送人権委員会設立10周年記念イベントについて

放送人権委員会は今年、発足10周年を迎えた。これを記念し、12月5日(水)に「放送人権委員会10周年フォーラム」を、全国都市会館(東京千代田区平河町2-4-2)で開催することにしているが、これまでにその内容や出席者の顔ぶれがほぼ固まり、10月の委員会に報告された。

報告内容は下記の通り。

  • タイトルは「放送と人権~放送倫理の確立を目指して~」。
  • フォーラムでは、まず、放送人権委員会の竹田稔委員長による「放送による人格権侵害と放送倫理」をテーマとした基調講演があり、次いでパネルディスカッションとなる。
  • パネリストには、ジャーナリストの江川紹子さん、読売新聞編集委員の鈴木嘉一さんをはじめ、放送局側からも加わって頂く。コーディネーターは放送人権委員会委員でもある弁護士の三宅弘さんが担当する。
  • 放送による人権侵害や放送倫理をめぐる問題については、BPOにも視聴者から多くの意見や批判が寄せられている。このためフォーラムには、全国の放送局のコンプライアンス担当だけでなく制作現場の人達にも出席してもらい、人権を守る放送、放送倫理の確立、放送の自主・自律のため具体的で実りのある意見交換を行う。

10月委員会は、次回委員会を11月20日に開くことを決め閉会した。

以上

第127回 放送と人権等権利に関する委員会

第127回 – 2007年9月

「部落解放同盟大阪府連幹部からの訴え」事案のヒアリングと審理

「”グリーンピア南紀”再生事業の報道」事案の審理…など

「部落解放同盟大阪府連幹部からの訴え」事案のヒアリングと審理

本事案は、部落解放同盟大阪府連書記長らが「大阪市の償還金補助に関する毎日放送の報道は、特定の法人だけが補助金を受給してきたような誤解を視聴者に与える内容で、解放同盟やそのリーダー個人の名誉権を著しく侵害している」と訴えているもの。

委員会では、申立人・被申立人双方から直接言い分を聞くヒアリングが行われた。この席で、申立人の解放同盟大阪府連の書記長は、「この報道によって、市から2倍の補助金を受け取っていると勘違いされ、大学や福祉施設の関係者それに学生らに説明しなければならない状況になった」と被害を被った実態を述べた。

一方、被申立人の毎日放送は、「放送全体を通して市の杜撰さを伝える方法として2倍という表現をとった。大阪府連書記長という肩書きは、代表例として取り上げたもので、公的存在である以上許されるのではないか」と述べた。

ヒアリングの後、更に審理を続け、10月5日に起草委員会を開いて本事案の問題点等を整理し、委員会決定の草案作成に向けて作業を進めることになった。

「”グリーンピア南紀”再生事業の報道」事案の審理

“グリーンピア南紀”の再生事業を請け負った香港ボアオのオーナーが「読売テレビの報道により、自分の名誉が著しく傷つけられ、また、取材・放送によりプライバシーが侵害された」と申し立てた事案について、放送人権委員会は委員会で前回に次いで審理を続けた。

その結果、「報道が事実に基づいて行われたかどうか」、また「自宅周辺での取材がプライバシーの侵害にあたるかどうか」などについて、10月の委員会で申立人・被申立人の双方を個別に招きヒアリングを行うことを決めた。

「エステ店医師法違反事件報道」事案 当該局の改善報告

上記事案の委員会決定(6月26日)を受けて、当該局の日本テレビは8月28日放送人権委員会宛に「委員会決定を受けての取り組みについて」という文書を提出した。

この中で日本テレビは、「取材・報道指針の中の無断撮影・無断録音(隠し撮り)の項において、無断撮影・無断録音(隠し撮り)素材の放送での扱いに関する基準について、素材の使用に際しては十分な検討を行うとの基準を、新たに設ける改定を行った」としている。

苦情概要

8月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情の内訳は次のとおり。

◆人権関連の苦情[14件]

  • 審理・斡旋に関する苦情(特定個人または直接の関係人からの人権関連の苦情)・・・10件
  • 人権一般の苦情(人権関連だが、関係人ではない一般視聴者からの苦情)・・・4件

その他

放送人権委員会設立10周年記念イベントについて

事務局が下記の準備状況を報告し、了承された。

1.「BPO放送法研究会」のスタート

BPOの各委員会の委員有志を核にメンバー構成した放送法研究会の第1回会合を、9月25日に開くことになった。放送評論家の松田浩氏が「電波三法の制定とその変質」をテーマに講演し、そのあと質疑、討論を行うことにしている。20余人の参加を見込んでいる。

2.「放送人権委員会フォーラム」の開催

「放送と人権~放送倫理の確立を目指して~」をテーマに、放送人権委員会10周年を記念するフォーラムを12月5日(水)に開催することになった。会場は東京・千代田区平河町の全国都市会館。全国の放送局の編成・考査・危機管理担当者や制作・報道担当者等300人を対象に、「放送と人権」「放送倫理」について基調講演とパネルディスカッションを予定している。基調講演は、放送人権委員会委員長で弁護士の竹田稔氏による「放送による人格権侵害と放送倫理」、パネルディスカッションでは、取材・編集・OAの各段階での放送倫理などについて具体的な論議を進めたいと考えている。なおパネリストとしては、ジャーナリストの江川紹子氏、読売新聞編集委員の鈴木嘉一氏、それに放送人権委員会委員や放送局側の代表も参加する予定。

3.「放送人権委員会判断基準」改訂版の発行

放送人権委員会は、2005年11月に「放送人権委員会判断基準2005」を発刊したが、その後審理事案も増え、新たな判断内容も加わったことから改訂版を発行することにした。改訂2008年版に掲載される判断基準は、26事案35件となる予定で、2005年版より10事案10件増えることになる。
事務局から「参考資料として、新たなマスコミ関連判例も載せ、より使い勝手の良いものにしたい」と説明し、委員会はこうした編集方針を了承、監修を右崎正博委員が担当することになった。来年3月の発行を目途としている。

9月委員会は、次回委員会を10月16日に開くことを決め閉会した。

以上

第126回 放送と人権等権利に関する委員会

第126回 – 2007年8月

「部落解放同盟大阪府連幹部からの訴え」事案の審理

「広島ドッグパーク関連報道」事案の総括…など

「部落解放同盟大阪府連幹部からの訴え」事案の審理

本事案は、部落解放同盟大阪府連書記長ら2人が「大阪市の民間福祉施設への補助金問題に関する毎日放送の報道は、特定の法人だけが補助金を受給してきたような誤解を視聴者に与える内容で、解放同盟やそのリーダーである個人の名誉権を著しく侵害している」と訴えているもの。

8月の委員会では、申立人から提出された「反論書」とそれに対する毎日放送からの「再答弁書」それに事務局でまとめた「論点対比」などを基に審理を行った。

この中では「当該番組で放送された部落解放同盟幹部の肩書きで、個人名が視聴者に特定されるか」「番組は、解放同盟関係の法人と償還金補助とのかかわりを伝えていて、法人幹部の個人を対象にしていないのではないか」「それなら肩書きを放送する理由はないのではないか」「肩書きによって個人が特定されるか否かは番組が放送された地域との相関関係で捉える必要がある」「大阪市側の手続きの遅れから2年分の補助金が一度に支給されたのを2倍支給されていたと表現した点は妥当だったか」「肩書きまで放送しながら直接取材しなかった点に問題はなかったか」等の意見が交わされた。

放送人権委員会では、更に審理を続ける一方、9月の委員会では申立人と被申立人をそれぞれ個別に招いてヒアリングを行うことを決めた。

「広島ドッグパーク関連報道」事案の総括

上記事案については、8月3日に「委員会決定」を通知・公表した。

8月委員会では、大阪市に出向いて申立人の動物愛護団体代表に「決定」内容を通知した模様を担当調査役から報告した。

また、「委員会決定」の放送対応では、在京キー局の5社が「決定」内容を伝え、新聞3社が翌日の朝刊で記事を掲載したことが報告された。

委員会では、この後、被申立人の朝日放送が「委員会決定」の主旨を伝えたニュースのVTRを視聴した。

「”グリーンピア南紀”再生事業の報道」事案の審理

本事案は、和歌山県那智勝浦町にある”グリーンピア南紀”の再生事業を請け負った香港ボアオのオーナーが「読売テレビの朝の報道番組(5月26日、6月2日放送)で事実と異なる報道がなされた結果、自分の名誉が著しく傷つけられ、また、取材・放送によりプライバシーが侵害された」と申し立てたもので、当該局は、「取材した事実と公的な資料に基づいて公正な報道をしており、名誉権を侵害していないし、プライバシーの侵害もしていない」と反論している。

8月委員会では、申立人から提出された「申立書」、「反論書」、被申立人から提出された「答弁書」、「再答弁書」に基づき、双方の主張を整理して審理を進めた。

次回9月委員会でも引き続き審理を進め、10月委員会で双方から直接事情を聞くヒアリングを行うことを決めた。

苦情概要

7月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情の内訳は次の通り。

◆人権関連の苦情[28件]

  • 審理・斡旋に関する苦情(特定個人または直接の関係人からの人権関連の苦情)・・・12件
  • 人権一般の苦情(人権関連だが、関係人ではない一般視聴者からの苦情)・・・16件

その他

放送人権委員会設立10周年記念イベントについて

1997年にスタートした放送人権委員会は、今年で設立10周年を迎えた。その記念イベント2件が8月の委員会で了承された。

1.「BPO放送法研究会」

総務省が放送法に行政処分条項を新設する動きを見せる一方、総務省の「通信・放送の総合的な法体系に関する研究会」が”放送・通信の法体系の一本化を目指すべき”との中間とりまとめを発表するなど、放送法を巡る動きが顕在化してきたことから、放送活動を包括的に規定している放送法の今日的諸問題を考察・論考していこうとBPOの各委員会の委員有志を核に企画したもので、第1回研究会を9月25日に千代田区紀尾井町の千代田放送会館で開くことになった。事務局としては1~2か月に1回程度の割合で講師を招くなどして研究会を開き、その成果を適当な時期に取りまとめて刊行物にすることなどを考えている。

2.「放送人権委員会フォーラム」

12月上旬を目途に「放送による人権侵害と放送倫理」(仮題)をテーマに、全国の放送局の考査・危機管理担当者や制作・報道担当者等300人を対象にフォーラムを開催する。基調講演とパネルディスカッションを予定していて、パネリストには放送人権委員会委員や放送局側の代表、ジャーナリスト等から人選する考え。

新委員の山田健太氏が初参加となる次回委員会を、9月18日に行うことを決めて、8月委員会は閉会した。

以上

第125回 放送と人権等権利に関する委員会

第125回 – 2007年7月

「広島ドッグパーク関連報道」事案の審理

「エステ店医師法違反事件報道」事案の総括…など

「広島ドッグパーク関連報道」事案の審理

本件事案は、06年12月、大阪の動物愛護団体の代表が、「朝日放送のニュース情報番組『ムーブ!』において、犬たちを救済する我々の活動が、偏見や憶測によって、あたかも募金目当てであるかのように放送され、名誉を毀損された」と申し立てていたもの。

本委員会で、起草委員会でまとめた委員会決定草案について意見を交わした。一部加筆修正を含め、詰めの検討を重ねた結果、「本件番組の一連の放送については、何れも名誉毀損や信用毀損はないし、その放送及びそのための取材活動において、放送倫理違反もない」との「委員会決定」案を全員一致で了承した。

「委員会決定」は、8月3日に申立人、被申立人に「通知」された後、記者会見で「公表」されることになった。

「エステ店医師法違反事件報道」事案の総括

「ラ・テ欄表記等に対する訴え」事案の総括

上記2事案については、6月26日に「委員会決定」を「通知・公表」したが、それに対する当該局を含む放送局側の対応や関連新聞記事について事務局から報告があった。

今回は2事案あわせての公表とあって、放送と新聞の対応は、”放送倫理違反”と指摘された「エステ店」事案については在京テレビ6局が伝え、新聞6社も記事を掲載したが、”問題なし”となった「ラ・テ欄」事案について報道したのはテレビ3局、新聞3社だった。ただ、「ラテ欄の表記についても、放送局は適正な言葉、品位ある表現をすべきだ」との委員会の要望を掲載したところもあった。

委員会では、それぞれ当該局から提出された「委員会決定」に関する当日のニュースの放送内容を視聴した。「エステ店」事案については「通知」から3か月以内に当該局が対応策等や取り組み方を報告する事になっている。

「部落解放同盟大阪府連幹部からの訴え」事案

本事案は、部落解放同盟大阪府連書記長ら2人が「大阪市の民間福祉施設への補助金問題に関する毎日放送の報道は、解放同盟幹部らが理事をしている特定の法人だけが補助金を受給してきたような誤解を視聴者に与える内容で、解放同盟やそのリーダーである個人の名誉権を著しく侵害している」と訴えているもの。

これに対し、毎日放送は「当該報道は、大阪市の予算化されていない一部補助金のあり方に疑問を呈したもので、補助金受給施設の内、解放同盟が関係する法人の占める割合が多かったことから解放同盟の名称を出した。報道には、公益性・公共性があり、また、申立人だけでなく組織としての部落解放同盟の名誉を損なうものではない」と反論している。

放送人権委員会では7月の委員会から本事案について本格的な審理に入り、申立人・被申立人双方から提出された「申立書」と「答弁書」を基に意見を交わした。

次回8月の委員会では、申立・被申立双方に「反論書」と「再答弁書」の提出を求め、それをもとに審理を続けることになった。

審理要請案件

  • 「貸金業協会からの訴え」案件
    関東地区の貸金業協会が「東京キー局の朝番組で誤った事実を報道され著しく不利益を被った」と苦情を申し立てていた案件は、7月の委員会で協議の結果、審理対象外となった。
    当該貸金業協会は、「貸金業者の金利はグレーゾーンではなく違法ゾーンだ、とのコメンテーターの発言は、勝手な思い込みによる情報であり、視聴者に誤った印象を与えた」と主張し、局に対し謝罪と訂正放送を求めていたが、局側は、「今回のコメンテーター(弁護士)の発言は、最高裁判決等を踏まえ法律専門家としての見解を示したもので、訂正すべき必要はない」と反論していた。
    放送人権委員会の運営規則は、「苦情を申し立てることができる者は、放送により権利の侵害を受けた個人またはその直接の利害関係人を原則とする」と定めているが、7月施行の改正で「ただし団体からの申立てについては、委員会において団体の規模、組織、社会的性格等に鑑み、救済の必要性が高いなど相当と認めるときは取り扱うことができる」との条文が新設された。しかしながら本件申立てをしている当該協会は自らその利益擁護のために社会に対し啓蒙・宣伝等の主張をなしうる立場にある団体であることなどから、委員会では「本件申立ては、例外的に審理をする必要性が高いとはいえない」と判断、全会一致で当案件を審理対象外とした。
  • 「”グリーンピア南紀”再生事業の報道」案件
    和歌山県那智勝浦町にある”グリーンピア南紀”の再生事業を請け負った香港ボアオのオーナーから「5月と6月の2回にわたって讀賣テレビの朝の情報番組で事実と異なる報道がなされた結果、自分の名誉が著しく傷つけられ、プライバシーが侵害された」とする申し立てがあった。
    これに対し読売テレビ、「取材した事実と公的な資料に基づいて公正な報道をしており、名誉権を侵害していないし、プライバシーの侵害もしていない」と反論している。
    放送人権委員会では、提出された「申立書」及び局側からの「対応経緯と見解」等の資料を慎重に検討、また局から提出された放送番組の同録DVDを視聴した結果、次回8月委員会から本事案について審理に入ることを決めた。

苦情概要

  • 「”ラジオ番組で誹謗中傷された”との訴え」について
    以前放送局に所属していた元女性アナウンサーが「当該局のラジオ番組で、男性アナウンサーの嘘の発言によって誹謗中傷された」として「局の謝罪と発言したアナウンサー本人の反省のことば」などを求めて、7月放送人権委員会に苦情を申し立てた。
    放送人権委員会事務局では、双方に対し「話し合いの余地があるのではないか」と交渉を続けるよう勧めていたところ、当該局より「話合いの結果、このほど全面的に解決した」との報告があった。
    また、女性のブログにも「すべて解決した」と書かれていたことから、本件は、放送人権委員会の審理をまたず円満解決したものとして委員会に報告、了承された。

6月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情の内訳は次の通り。

◆人権関連の苦情[18件]

  • 斡旋・審理に関連する苦情(特定個人または直接の関係人からの人権関連の苦情)・・・18件
  • 人権一般の苦情(人権関連だが、関係人ではない一般視聴者からの苦情)・・・0件

その他

事務局から、参議院選挙を前に、社民党から選挙報道が公正・公平に行われるよう、BPOでも監視するようにとの申し入れがあったことや、10月をめどに放送人権委員会委員を1名増員できるよう人選を進めていることなどが報告された。次回委員会を8月21日(火)に行うことを決め、閉会した。

以上

第124回 放送と人権等権利に関する委員会

第124回 – 2007年6月

「広島ドッグパーク関連報道」事案のヒアリングと審理

「エステ店医師法違反事件報道」事案の最終審理…など

「広島ドッグパーク関連報道」事案のヒアリングと審理

本件事案は、06年12月、大阪の動物愛護団体の代表が、「11月から12月にかけて放送された朝日放送の報道番組『ムーヴ!』で、犬たちを救済する我々の活動が、偏見や憶測によってあたかも募金目当てであるかのように放送され、名誉を毀損された」と申し立てたもので、これに対し朝日放送は「動物愛護団体の募金と活動実態が整合しているかを検証する報道であり、関係者の人権、プライバシーには十分に配慮している」と主張している。

6月の委員会では、申立人、被申立人双方を個別に招いてヒアリングが行われ、”募金収入の内訳や使途がどのようになっているのか””コメンテーターの発言はどのような根拠に基づいているのか”などについて質疑が行われた。

ヒアリングの後、審理が続けられ、起草委員がこれまでの審理内容を踏まえた素案作りに入ることになった。

「エステ店医師法違反事件報道」事案の最終審理

本事案は、東京都在住のエステ店経営者が「私が医師法違反で送検されたことを伝えた日本テレビのニュースの中で、極悪人の如く報道されて人格が否定され、プライバシーも侵害された」と訴えたもの。

放送人権委員会は本事案の「委員会決定」案について6月の委員会で最終審理を行った。その結果、「本件放送は、記者がその身分を隠して行った隠しカメラ、隠しマイクによる取材を基に放送することが不可欠であったとは言い難いものがあることに加えて、申立人個人の報道に重点を置き過ぎ、行き過ぎた懲罰的内容になってしまった点において、放送倫理違反があったというべきである」との「委員会決定」案を委員全員一致で了承した。

この「委員会決定」は、6月26日に申立人、被申立人双方に「通知」された後、記者会見で「公表」されることになった。

「ラ・テ欄表記等に対する訴え」事案の最終審理

本事案は、ルーマニア人セラピストが、テレビ朝日に対し、「バラエティー番組に出演した際、ラ・テ欄で”バツイチ”と表記されるなど名誉・プライバシーを侵害された。また、子どもに対する過剰な演出もあり、放送倫理に違反している」などと申し立てたもの。

放送人権委員会は、起草委員会での検討結果を踏まえ、6月の委員会で最終審理を行った結果、「番組に家族ぐるみで出演し、自ら離婚の事情を語ったりしており、名誉・プライバシーの違法な侵害があったとは認められない。ラ・テ欄表記や子どもたちに対する演出等についても放送倫理に反するとまではいえないと判断する」との「委員会決定」を全員一致で了承した。

また、放送人権委員会はこの決定の中で、ラ・テ欄の表記も放送内容と一体との判断を示し、放送局に対しいっそう「適正な言葉」と「品位ある表現」を用いるよう要望した。この「決定」も、6月26日に「通知・公表」されることになった。

審理要請案件

「部落解放同盟大阪府連幹部からの訴え」案件

6月、部落解放同盟大阪府連書記長ら2人から連名で下記のような苦情申立があった。

「大阪市の民間福祉施設への補助金問題に関する毎日放送の報道で、部落解放同盟やそのリーダーである個人が関係している福祉法人をことさらに強調して、新たな”闇の補助金支出”の疑いがある、とされた。償還金補助を受けてきた施設は約50あるが、解放同盟や人権協会に関係する者が役員をしているのは、その4分の1に過ぎない。しかし当該報道では解放同盟幹部らが理事をしている特定の法人だけが補助金を受給してきたような誤解を視聴者に与え、解放同盟やそのリーダーである個人の悪いイメージを広め、その名誉権を著しく侵害することになった」

この苦情申立てに対し、毎日放送では「当該報道は、大阪市の予算化されていない一部補助金のあり方に疑問を呈したものであり、補助金を受給した福祉施設の内、解放同盟が関係する法人の占める割合が多かったことから解放同盟の名称を出した。この報道は、公益目的・公共性を有するものであり、また、そもそも申立人だけでなく組織としての部落解放同盟の名誉を損なうものではなかった」と反論している。

放送人権委員会では「苦情申立書」及び局側から提出された「事案の経緯と当社の見解」の2書面を慎重に検討し、また当該報道の同録テープを視聴の上、次回委員会から本事案について本格的に審理を始めることを決めた。

5月の苦情概要

5月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情の内訳は次のとおり。

◆人権関連の苦情[11件]

  • 斡旋・審理に関連する苦情(特定個人または直接の関係人からの人権関連の苦情)・・・6件
  • 人権一般の苦情(人権関連だが、関係人ではない一般視聴者からの苦情)・・・5件

その他

村井専務理事より、放送人権委員会運営規則改正の7月1日から施行に伴い体制強化を図るため、調査役を1名増員することになったこと、新委員の1名増員については10月をめどに実施できるよう人選を進めていることなどが報告された。次回委員会は7月17日(火)に行うことを決め、閉会した。

以上

第123回 放送と人権等権利に関する委員会

第123回 – 2007年5月

「ラ・テ欄表記等に対する訴え」事案のヒアリングと審理

「エステ店医師法違反事件報道」事案の審理…など

「ラ・テ欄表記等に対する訴え」事案のヒアリングと審理

北海道在住のルーマニア人でセラピストの女性から苦情申立てがあった事案は、4月委員会から実質的な審理に入ったが、5月の委員会ではヒアリングを行い、申立人と被申立人・テレビ朝日の双方から直接主張を聞いた。

申立人は、「2月にテレビ朝日のバラエティー番組に一家で出演したが、新聞のラ・テ欄に<バツイチ子連れ美女の・・・>等の表現で家庭の事情が書かれた。放送内容が当初説明を受けた企画意図と違っていた」と苦情を訴えた。これに対し、テレビ朝日は、「前夫との離婚について放送で紹介することは、申立人は事前に了承していた。大自然の中で生活する家族を描くという番組企画は一貫して変わっていない」などと反論した。

ヒアリングの後、さらに審理を行った結果、起草委員会で委員会決定の草案をまとめ、それを基に次回委員会でさらに審理を続けることになった。

「エステ店医師法違反事件報道」事案の審理

本件事案は、東京都町田市のエステ店経営者が「医師法違反で送検されたニュースの中で、極悪人の如く報道されて人格が否定され、プライバシーも侵害された」と訴えているもので、これに対し、被申立人・日本テレビは「報道内容は、公益を図るものであり、事実を誤まりなく伝えている」と反論している。

本件事案について放送人権委員会は、前回の委員会でのヒアリングを受けて、5月7日に起草委員会を開き、委員会決定の草案作成に当たった。

5月の委員会では、この起草委員会での検討作業が報告され、「委員会決定」の原案取りまとめに向けて意見が交わされた。

その結果、「決定」案の細部の文言等について更に検討・修正を図ることになり、6月委員会で最終的な審理を行うことを決めた。

「広島ドッグパーク関連報道」事案の審理

本件事案は、06年12月、大阪の動物愛護団体の代表が、朝日放送に対して苦情を申し立てたもので、申立人は「11月から12月にかけて放送された報道番組『ムーヴ!』において犬たちを救済する我々の活動が、一方的な偏見報道及び憶測報道によって、あたかも募金目当てであるかのように放送され、名誉を毀損された」と訴えている。

これに対し被申立人・朝日放送は「動物愛護団体の募金と活動実態が整合しているのかを検証する報道であり、関係者の人権、プライバシーには十分に配慮している」と主張している。

放送人権委員会は2月の委員会で審理入りを決定した後、3回にわたって実質的な審理を行ってきた。特に5月の委員会では、コメンテーターの発言内容や取材のあり方等、多岐にわたるそれぞれの論点を整理し審理を行った。

その結果、6月の委員会では、申立人、被申立人双方を個別に招いてヒアリングを行い、それぞれの主張を直接聞くことにした。

更に、このヒアリングを受けて6月29日に起草委員会を開き、委員会決定の草案作成に向けて作業を進めることにした。

審理要請案件

「誤表記で人権侵害の訴え」

2月に北朝鮮を訪れた都内の男性から「平壌観光をした際に撮影した映像をキー局に提供したところ、それが<平壌の最新映像>として放送されたが、自分の会話部分に”記者”と誤って字幕表示された。これによって報道関係者との疑惑を持たれ、その後の訪朝が許されなくなるという被害を被った。これは人権侵害・名誉毀損であり、局には謝罪と訂正等を要求しているが、誠意ある回答がないので放送人権委員会に審理を要請したい」との苦情申立てがあった。当該局に問い合わせると「慰謝料を請求されており、話し合いは進んでいない」という。

5月の委員会でこの申立ての取り扱いを協議したところ、「放送人権委員会が法に基づいた強制調査権を持たない自主的苦情処理機関であることに鑑み、金銭要求を伴う案件については本委員会で審理すべきものとは認められない。(現行運営規則には明記されていないが、7月施行の改正運営規則には明記)」ということで委員全員の意見が一致、<審理対象外>と決定した旨を苦情申立人に文書で通知することになった。

4月の苦情概要

4月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情の内訳は次のとおり。

◆人権関連の苦情[12件]

  • 斡旋・審理に関連する苦情(特定個人または直接の関係人からの人権関連の苦情)・・・10件
  • 人権一般の苦情(人権関連だが、関係人ではない一般視聴者からの苦情)・・・2件

その他

村井専務理事より、放送倫理検証委員会の発足に伴い、NHK、民放連から体制強化のため委員・スタッフの人員増を含む予算の増額が認められたこと等の報告があった。

次回委員会は、6月19日(火)に、「広島ドッグパーク関連報道」事案のヒアリングを審理に先立って行うことを決め、閉会した。

以上

第122回 放送と人権等権利に関する委員会

第122回 – 2007年4月

「エステ店医師法違反事件報道」事案のヒアリングと審理

「広島ドッグパーク関連報道」事案の審理…など

「エステ店医師法違反事件報道」事案のヒアリングと審理

本事案は、東京都町田市のエステ店経営者が「医師法違反で送検されたニュースの中で、盗撮映像が使われ、私が極悪人の如く報道された。また、個人の人格が否定され、プライバシーも侵害された」と訴えているもので、これに対し、日本テレビは「報道内容は、医師法違反という重大な犯罪容疑に関する情報であって、公益を図るものであり、事実を誤りなく伝えている」と反論している。

4月の委員会では、申立人・被申立人双方を個別に招いてヒアリングが行われ、”医師法違反で書類送検”という事実の受け止め方や、店内撮影時の許諾の有無などについて質疑が行われた。

ヒアリングの後、当該VTRを再度視聴し審理を続けた。

その結果、この日の審理内容を踏まえて、起草委員が「委員会決定」の素案作りに着手し、5月上旬の連休明けに起草委員会を開いて「決定案」の検討を進めることになった。

「広島ドッグパーク関連報道」事案の審理

本件事案は、06年12月、大阪の動物愛護団体の代表が、朝日放送に対して苦情を申し立てたもので、その内容は、「11月から12月にかけて、11回にわたって放送された報道番組『ムーヴ』において犬たちを救済する我々の活動が、あたかも募金目当てであるかのように放送され、名誉を毀損された」というもの。

これに対し朝日放送は、「募金の集め方、使い方を検証する報道であり、関係者の人権、プライバシーには十分に配慮している」と主張している。

放送人権委員会は2月の委員会で審理入りを決定し3月、4月の委員会で審理を行ってきたが、双方の主張があまりにも多岐にわたっていることから、次回の委員会では、論点を数点にしぼって、さらに検討を重ねることとした。

「ラ・テ欄表記等に対する訴え」事案の審理

北海道在住のルーマニア人でセラピストの女性から苦情申立てがあった事案は、4月委員会から実質的な審理に入った。

この事案で、申立人の女性は、「2月にテレビ朝日のバラエティー番組に一家で出演したが、新聞のラ・テ欄に<バツイチ子連れ美女の・・・>等の表現で家庭の事情が書かれ、また、放送内容が当初企画意図の説明の趣旨と違っていた」と訴えている。

これに対し、テレビ朝日は、「前夫との離婚について紹介することは、事前に了承してもらっていた。現夫もインタビュー取材に応じている。取材前の打合せで番組の企画意図については十分説明している」と反論している。

今回の審理では、申立人から提出された「申立書」「反論書」、テレビ朝日側から提出された「答弁書」「再答弁書」をもとに、論点を整理して検討した。

次回の委員会では、ヒアリングを行い、双方から直接主張を聞くことになった。

審理要請案件

「都知事選候補ドクター・中松氏の苦情申立て」案件

4月2日、都知事選候補であるドクター・中松氏からファックスで「4月1日放送のキー局の情報番組で、吉田・石原・浅野・黒川4氏のみを出演させ、選挙運動に関する放送をした。これは公職選挙法及び放送法違反である。また、申立人ドクター・中松を排除したことにより、視聴者に中松はマイナーであるという誤解を与えた。世間の常識に反する捏造をしたことは”BPO違反”である」と、苦情を申し立ててきた。

この審理要請に対し放送人権委員会では、投票日が迫っていることから、次の委員会を待たずに、委員長起草の回答案を基に持ち回り協議を行った結果、「申立人が提出した文書を検討すると、申立ての内容は、選挙の公正に関するものであり、名誉・プライバシー等の権利侵害に関する苦情ではない。したがって、当委員会の運営規則に照らし、当委員会が審理すべき案件とは認められない」ということで委員全員の意見が一致し、翌3日に中松氏にその旨を文書で通知した。

3月の苦情概要

3月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情の内訳は次のとおり。

◆人権関連の苦情[19件]

  • 斡旋・審理に関連する苦情(特定個人または直接の関係人からの人権関連の苦情)・・・12件
  • 人権一般の苦情(人権関連だが、関係人ではない一般視聴者からの苦情)・・・7件

その他

村井専務理事より、番組委員会を発展的に解消した新委員会を、4月末、遅くとも5月初めに立ち上げるべく作業委員会で準備を進めているとの報告があった。

次回委員会は、5月15日(火)に、「ラ・テ欄表記等に対する訴え」事案のヒアリングを審理に先立って行うことを決め、閉会した。

以上

第121回 放送と人権等権利に関する委員会

第121回 – 2007年3月

「広島ドッグパーク関連報道」の審理

「エステ店医師法違反事件報道」の審理…など

「広島ドッグパーク関連報道」の審理

本事案は、06年11月から12月にかけて朝日放送で11回にわたって放送された報道番組「ムーヴ」に対し、大阪の動物愛護団体の代表が「犬たちを救済する我々の活動が、あたかも募金目当てであるかのように放送され、名誉を毀損された」と申し立てたもので、2月の委員会で審理入りを決定した。

3月の委員会では、申立人から提出された「申立書」、広島ドッグパーク関連の「会計報告書」及び「反論書」と朝日放送から提出された「答弁書」を基に、コメンテーターの発言内容は適切かどうか、取材は十分に行われたのか等について実質的な審理を行った。

その結果、4月の委員会で「再答弁書」の提出を受けて、これまでの双方の主な主張を項目ごとに対比した形で整理してさらに検討を行い、5月の委員会でヒアリングを行う予定にしている。

「エステ店医師法違反事件報道」の審理

本件事案は、今年2月に東京都町田市のエステ店経営者が日本テレビを相手取って申し立てたもので、経営者は「私が医師法違反で送検されたニュースの中で、日本テレビは本事案に関係ない映像を使うなどして捏造放映した。また、盗撮映像を使って極悪人の如く報道され、個人の人格を否定され、プライバシーも侵害された」と訴えている。

これに対し、日本テレビは「本件報道は、以前に撮影されたという映像とは全く関係がない。また、報道内容は、医師法違反という重大な犯罪容疑に関する情報であって、公益を図るものであり、警察によって書類送検された事実を誤りなく伝えている」と反論している。

3月の委員会では、「反論書」や「再答弁書」など出揃った書類に加えて当該ニュースのVTRを視聴し、本事案の審理にあたった。

その結果、申立人・被申立人それぞれの言い分を確認するためにも次の4月の委員会に双方を招いてヒアリングを行い、その後「委員会決定」の作成を始めることになった。

審理要請案件について

1.山中湖村長からの苦情申立て

2月、山梨県山中湖村長から「東京キー局の報道番組において、取材・放映の客観性・中立性の欠如と捏造の疑いがある旨、局の番組審議会及び報道局長らに文書で申し入れたが誠意ある対応がなされない」との苦情申立があった。
問題にされたのは、山中湖村東部地区の洪水事業に関する一連の報道であったが、当該局では「十分な取材に基づく事実をありのままに放送したものであり、客観性・中立性に欠けているものではない」と主張していた。
放送人権委員会では、「申立書の記載事項から見て、本案件は、放送人権委員会の運営規則第5条に定める申立人又はその直接関係人の名誉、信用、プライバシー等の権利侵害に関する苦情に当らない」として審理の対象外と判断、その旨を村長あて文書で通知した。

2.静岡空港関連で県広報室長が苦情申立て

静岡県の広報室長が個人名で「キー局の報道情報番組で、コメンテーターの一人が『静岡空港を推進する知事を連続当選させる静岡県民はバカだ』という趣旨の発言をしたが、これは、静岡県民を公然と侮辱するものであり、県民の一人である自分の名誉が毀損された」と訴えてきた。
当該局では、「広報室長から『番組内での訂正・謝罪について知事から強い指示がある』との電話があったことからも、これは静岡県からの訴えと考える。また、そもそも番組では広報室長を特定した論評はしていないのであるから、不法行為としての名誉毀損又は侮辱は成立しない」との見解を示していた。
放送人権委員会では「申立人の提出した文書を検討すると、申立人は、静岡県庁の職員として県のための広報活動に携わっている者であって、本件申立ては、実質的に地方公共団体の申立てであり、本件放送により直接権利の侵害を受けた個人の申立てとは認められない」ということで委員全員の意見が一致、審理対象外の通知文書を送付した。

3.「出演セラピストからの訴え」

放送人権委員会では、3月委員会で北海道在住のルーマニア人でセラピストの女性から苦情申立があった上記事案について検討した結果、次回委員会から審理入りすることを決めた。
女性は、「2月にテレビ朝日のバラエティー番組に一家で出演したが、新聞のラ・テ欄に<バツイチ子連れ美女の・・・>等と、できるだけ公表して欲しくなかった家庭の事情が書かれ、また、放送内容が当初説明の趣旨と違っていた」と苦情を申し立ててきた。
これに対し、テレビ朝日は、「前夫との離婚について紹介することは、事前に了承してもらっていた。打合せ時からロケ、スタジオ収録時に番組内容と企画内容を十分に説明し、出演同意書にも署名をいただいている」と反論している。

苦情対応状況報告

2月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情の内訳は次のとおり。

◆人権関連の苦情[19件]

  • 斡旋・審理に関連する苦情(特定個人または直接の関係人からの人権関連の苦情)・・・12件
  • 人権一般の苦情(人権関連だが、関係人ではない一般視聴者からの苦情)・・・7件

その他

3月22日開催の2006年度BPO年次報告会と同日夕刻の記者会見で、「放送人権委員会運営規則の改正」について竹田委員長が公表・説明することになったと事務局から報告。

次回委員会は、4月17日(火)に、「エステ店医師法違反事件報道」事案のヒアリングを行うことにしたため、午後3時からの開会を決め、閉会した。

以上

第120回 放送と人権等権利に関する委員会

第120回 – 2007年2月

審理要請案件

「放送人権委員会運営規則」の改正について…など

審理要請案件

「広島ドッグパーク関連報道」審理入り決める

06年12月、大阪の動物愛護団体の代表が「広島ドッグパークが崩壊して取り残された犬たちを救済する我々の活動が、あたかも募金目当てであるかのように朝日放送の番組で何回も報道され、名誉を毀損された」旨の苦情を申し立ててきた。

これに対し、当該局では「募金が犬の治療費などに十分に使われず、まだ5000万円以上を残しているような寄付金の集め方、使い方が妥当なのかを検証する報道であり、関係者の人権・プライバシーには十分に配慮している」と主張している。

放送人権委員会の1月委員会では「事態の推移をもう少し見守ろう」と審理入りを留保していたが、2月の委員会で、申立人には動物愛護団体の募金に関する正確な会計報告書等を、また当該局には答弁書に加えて関連番組の反訳文の提出を求め、次回委員会から本格審理に入ることを決めた。

「エステ店医師法違反事件報道」審理入り決める

07年2月、東京都町田市のエステ店の経営者の夫から「妻がアートメーク(アイラインに色素を入れる施術)について医師法違反で送検された。その事実を日本テレビが、本事案に関係なく以前にインターネット広告用に撮影された映像を使うなどして報道したが、そこではまるで極悪人であるかのように扱われ、妻の名誉が著しく毀損され、プライバシーが侵害された」との苦情申し立てがあった。

この申立てに対し、当該局では「本件報道は、以前に撮影されたという”インターネット用の映像”とは全く関係がなく、また、その報道内容は、医師法違反と言う重大な犯罪容疑に関する情報であって、公益を図るものであり、警察によって摘発され書類送検された事実を誤りなく伝えた」と反論している。

放送人権委員会では、本事案ついても次回委員会から”インターネット用の映像”に関する事実関係を中心に審理を始めることにしている。

「食中毒風評被害の訴え」は審理対象外

07年1月、東京都内の居酒屋から「同じ店名の飲食店が出した集団食中毒の報道によって、同区内にある当店で食中毒が出たとの風評被害にあい、当店の名誉を侵害された。報道の仕方に問題があった」との苦情申し立てがあった。

放送人権委員会では苦情申立書及び当該局から提出されたVTR等を基に慎重に検討したところ、「本案件は、放送人権委員会の運営規則第5条に定める申立人またはその直接の利害関係人の名誉、信用、プライバシー等の権利侵害に関する苦情にあたらない」ということで委員全員の意見が一致し、「審理対象外」として申立人に文書で通知することになった。

「放送人権委員会運営規則」の改正について

放送人権委員会では、昨年5月から議論を続け、この程まとめあげた「放送人権委員会運営規則の一部改正案」を、3月に公表することになった。

これは、2月委員会で決めたもので、3月22日に開催予定の「BPO年次報告会」の席上、放送人権委員会の竹田 稔委員長が加盟各社からの出席者に対し改正点を報告・説明することになっている。

なお、この「改正運営規則」は、周知期間3か月を経た後、7月1日から施行される。

苦情対応状況報告

1月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情の内訳は次のとおり。

◆人権関連の苦情[16件]

  • 斡旋・審理に関連する苦情(特定個人または直接の関係人からの人権関連の苦情)・・・10件
  • 人権一般の苦情(人権関連だが、関係人ではない一般視聴者からの苦情)・・・6件

その他

関西テレビ『あるある大事典?』に関する1月29日の「BPO理事長声明」、2月7日の「放送番組委員会有識者委員声明」が発表された経緯について事務局から説明があった。

放送人権委員会10周年企画について検討を進めることになった。

次回委員会を3月20日に開催することを決め、閉会した。

以上

第119回 放送と人権等権利に関する委員会

第119回 – 2007年1月

審理要請案件

仲介・斡旋事案…など

審理要請案件

「動物愛護団体関連報道」について

動物の救済・愛護の方法をめぐる報道で、関西在住の男性から名誉毀損の訴えと訂正放送を求める申立書が出ている案件について、審理入りするかどうかの討議を行った。その結果、事態が進行中であることから事実関係の推移をもうしばらく見た上で判断することになった。

仲介・斡旋事案

「ひと間違い報道の訴え」について

秋田県在住の女性から、「不審死した幼児の母親と間違われて放送され、仕事に行けなくなった」との苦情申立てがなされた事案について、事務局による仲介・斡旋で解決したことが報告され、委員会で承認された。

この事案は、06年10月、秋田県大仙市の農業用水で不審死した男児の遠縁という若い女性から「葬儀の際に、男児の母親(後に殺人容疑で逮捕)と間違われて、泣いている顔を正面から写されテレビのニュースで放送された」と訴えてきたもの。

さらに当該女性の母親から「番組では”31歳の子持ち”とコメントされたが、娘は20歳代で来年早々に結婚を控えている。娘は興奮し、仕事にもいけない状態だ」と、苦情を申し立ててきた。

当該局からは「すぐに訂正し、担当責任者がお詫びに行き、詫び状を手渡した」との報告があったが、その後、女性は退職を余儀なくされたという。

しかし、12月初めになって、本人の父親から「娘の病状はだいぶ回復した。当該局の番組責任者が3度も秋田に来られ、謝罪をされ、誠意を感じるようになった。いかがすべきだろうか」との相談があった。放送人権委員会事務局から「局の誠意を感じるのであれば、和解されてはどうか」と伝えたところ、まもなく局側から「無事、和解・解決した」との報告があった。

06年度の放送人権委員会による仲介・斡旋解決事案は、これで3件目となった。

苦情対応状況報告

2006年12月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情の内訳は次のとおり。

◆人権関連の苦情(14件)

  • 斡旋・審理に関連する苦情(特定個人または直接の関係人からの人権関連の苦情)・・・9件
  • 人権一般の苦情(人権関連だが、関係人ではない一般視聴者からの苦情)・・・5件

「放送人権委員会運営規則」の改正について

放送人権委員会では、本年5月に迎える設立10周年に合わせ、昨年5月から運営規則の改正論議を続けてきたが、この程ようやくその改正案をまとめ、委員会で改定条文の字句等を最終チェックした。

放送人権委員会の運営規則の一部を改正する主な理由は次の2点である。

  • 放送人権委員会は、この10年間に、人格権を侵害した放送がなされたこと、あるいは放送倫理に反し人格権に対する配慮を欠く放送がなされたことを理由とする数多くの苦情の申立てを処理してきたが、その運営に関する手続きを定めた規則には、10年間の運営の実情に照らし、必ずしも十分でないものが出てきている。
    たとえば、これまで放送人権委員会は、人格権の侵害だけでなく多くの放送倫理上の問題を扱ってきたが、現行運営規則には倫理問題を扱う根拠が明確には規定されていない。また、金銭の賠償を求める審理要請には応じてこなかったが、そのことを明文化した規定はなかった。
    これら諸点に関して、この際、運営規則を実情に適合させるために改正する必要があること。
  • テレビやラジオが国民の「知る権利」の実現に奉仕するに当り、憲法に定められた「表現の自由」のもと放送法の規定を遵守しつつ、公権力による不当な支配を受けることなくその業務を遂行していくためには、第三者機関である放送人権委員会が放送の公平・公正の実現に一定の役割を担うことが適切であり、今後、放送人権委員会が放送の公平・公正をはじめ放送事業が直面する諸問題に対応できる態勢を整えるための規則の整備を行う必要性が強くなってきたこと。

放送人権委員会では、次の委員会でも、さらに運営規則の改正の審議を詰めることにしている。

その他

次回委員会を2月20日に開催することを決め、閉会した。

以上

第118回 放送と人権等権利に関する委員会

第118回 – 2006年12月

「放送人権委員会運営規則」の改正について

「燃費向上グッズ販売会社からの訴え」について…など

「放送人権委員会運営規則」の改正について

放送人権委員会は、10年間の運営の実情に照らし、その運営規則の改正を検討してきたが、先月の委員会に引き続いて改正検討小委員会から出された案をもとに協議をおこなった。

とくに「公平・公正」問題などの扱いについて話し合い、次回も更に詰めた検討を継続することになった。

「改正運営規則」案は、放送人権委員会での議決を経た後、BPO理事会の承認を得て施行されることになる。

「燃費向上グッズ販売会社からの訴え」について

11月、東京の自動車関連部品の製造・販売会社から「ニュース特集で、当社の”燃費向上商品”について、番組独自の測定の結果からほとんど効果がない、と報道された。放送後、番組と同じ測定法で実験したところ、20%の効率アップが認められたが、クライアントからの問合せが殺到し、営業に支障をきたしている」との苦情が文書で寄せられた。

これに対し、当該局では「燃料専門学者にも取材し、また国土交通省が自動車メーカーに義務付けている10・15モードによる試験も行って、グッズの効果を多角的に検証したものであり、報道に問題はない」と反論していた。

放送人権委員会で送付されてきた文書の記載事項を検討した結果、「当案件は、放送人権委員会の運営規則第5条に定める申立人またはその直接の利害関係人の名誉、信用、プライバシー等の権利侵害に関する苦情には当らない」ということで委員全員の意見が一致し、製造・販売会社に対し「今回の申立ては、放送人権委員会の審理の対象外である」旨を委員長名で伝えることを決めた。

苦情対応状況報告[11月]

2006年11月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情の内訳は次のとおり。

◆人権関連の苦情(13件)

  • 斡旋・審理に関連する苦情(特定個人または直接の関係人からの人権関連の苦情)・・・12件
  • 人権一般の苦情(人権関連だが、関係人ではない一般視聴者からの苦情)・・・1件

その他

次回委員会を1月16日に開催することを決め、閉会した。

以上

第117回 放送と人権等権利に関する委員会

第117回 – 2006年11月

「放送人権委員会運営規則」について

苦情対応状況報告…など

「放送人権委員会運営規則」について

設立10周年を来年に控え、放送人権委員会は、その運営規則の改正を検討してきたが、11月の委員会で改正検討小委員会から出された案をもとに慎重に協議を続けた。

現行の放送人権委員会運営規則には、10年間の運営の実情に照らし、必ずしもこれに適合しない規定が出てきており、また「公平・公正」の問題など、放送事業が今後直面するであろう諸問題に対応できる規則の整備が必要となってきている。

「改正運営規則」案は、さらに検討を重ね放送人権委員会での議決を経た後、BPO理事会の承認を得て施行されることになる。

苦情対応状況報告

11月委員会で下記の2件が放送人権委員会による「仲介・斡旋解決事案」として承認された。

1.「疑惑解明に後ろ向きと報道され名誉を傷つけられた」との市議会議員の訴え

9月、ある地方都市の保守系市議会議員が「地元局で放送されたニュース特集で、議員としての名誉を著しく傷つけられた。報道姿勢に問題があると思うので放送人権委員会で審理してもらいたい」と、文書で要請してきた。
このニュース特集は、「福祉と利権の構造」をテーマにしたもので、市の特別養護老人ホームをめぐる贈収賄事件を調査する百条委員会が「選定過程に問題はなかった」との結論を出したことを受け、市議会の不作為を糾弾する内容だった。
苦情を申し立ててきた市議会議員は、「百条委員会で疑惑解明に後ろ向きの言動を取り続けたように描かれた」と主張していたが、当該局では「報じたことはすべて事実であり、また本人に直接取材を申し込んだが拒否された。報道機関としての対応は十分にしている」と反論していた。
放送人権委員会事務局では「名誉を傷つけられたとの主張に具体性がなく、また間違った事実関係が報道されていないので、放送人権委員会への審理要請案件としては無理がある」ことを議員に説明、再考をうながしていたところ、間もなく「事務局の指摘を考慮し、苦情申立てを取り下げる」と伝えてきた。

2.「説明された企画意図とは違い、虚偽の内容を含む形で放送された」との映画製作者の抗議

10月、東京の映画製作会社の代表から「製作した映画の紹介をするという企画意図だったので取材に応じたが、放送では監督個人のことに終始し、虚偽の内容を含む捏造としか思えないものもあった。取材に来たテレビ制作会社に抗議したが、何の回答もない」と強い苦情が寄せられた。当該局に問い合わせたところ、「すぐに社内調査する。事実関係がわかり次第報告する」ということであった。
映画は、在日コリアンである監督自身の家族を10年にわたって追い続けたものだが、映画製作者側が最も問題にしていたのは、監督と朝鮮総連が対立的にあるように扱われたことだという。
しかしその後、映画製作会社の代表から「放送人権委員会の仲介で当該局の番組責任者とようやく会えて話し合うことができた。放送人権委員会から声をかけられて初めて局が動いたということになるが、相手の態度に誠意を感じたので穏便にことを納めようと思う」と伝えてきた。またその翌日、局からも「監督の在日コミュニティーの中での立場が悪くなったとするならば、申し訳ない」旨の当方の反省を理解してもらい、和解した」との報告があった。

人権等に関する苦情[9・10月]

2006年9月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情の内訳は次のとおり

◆人権関連の苦情(11件)

  • 斡旋・審理に関連する苦情(特定個人または直接の関係人からの人権関連の苦情)・・・7件
  • 人権一般の苦情(人権関連だが、関係人ではない一般視聴者からの苦情)・・・4件

2006年10月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情の内訳は次のとおり。

◆人権関連の苦情(19件)

  • 斡旋・審理に関連する苦情(特定個人または直接の関係人からの人権関連の苦情)・・・16件
  • 人権一般の苦情(人権関連だが、関係人ではない一般視聴者からの苦情)・・・3件

近畿地区放送事業者と放送人権委員会委員との意見交換会

11月28日大阪で開かれる近畿地区放送事業者と放送人権委員会委員との意見交換会について、事務局から参加局、人数、スケジュールなどが報告され、テーマとして取り上げる議題等について話し合った。

その他

次回委員会を12月19日に開催することを決め、閉会した。

以上

第116回 放送と人権等権利に関する委員会

第116回 – 2006年9月

「民主党代表選挙の論評問題」事案の総括

「少年法61条と実名報道」意見交換…など

「民主党代表選挙の論評問題」事案の総括

9月13日に「委員会決定」を出した「民主党代表選挙の論評問題」事案について総括を行ない、「委員会決定」発表後の放送局、新聞社の報道対応について、事務局から以下の報告があった。

当該局のテレビ朝日は、当日の夕方のニュースと、当該番組「報道ステーション」で発表内容を伝えた。また、在京の民放各局も、夕方か翌朝のニュースもしくは情報番組で、この「決定」を扱った。新聞社も、全国紙5社が翌日朝刊で報じた。

委員会では、テレビ朝日のニュースをVTRで視聴した。

今回の「委員会決定」について、竹田委員長ら委員からは「放送人権委員会が政治報道の論評問題を取り上げた初めてのケースであり、報道の自由、論評の自由を大きく評価した有意義な判断だった」との感想があった。

また、通知・公表の際の様子について事務局から、次のような報告があった。通知には、申立人の代理人として仙谷由人議員の政策秘書と被申立人のテレビ朝日が出席した。通知後、申立人の代理人は、私見と断った上で「政治家だからといって、一方的な立場からの論評でも、全て甘受しなければいけないのか」との感想を述べたのに対し、テレビ朝日は「今後とも人権や放送倫理に十分配慮した放送に努めてまいります」とのコメントを出した。

「少年法61条と実名報道」意見交換

「高専女子学生殺害事件」で指名手配されていた19歳の少年が遺体で発見された際、日本テレビ テレビ朝日 読売新聞の3社が実名報道に踏み切った。(週刊新潮は遺体発見前から写真付で実名報道した)

上記3社はいずれも、「容疑者が死亡し、少年の保護・更生を前提に規定されている少年法61条の対象外になったこと」を主な理由に実名報道を決断したとしているが、他の新聞・テレビ各社は「少年法の原則を覆す明確な理由はない」「少年法の精神を尊重した」等として、匿名報道を維持し、倫理規定である少年法61条の解釈をめぐって改めて論議を呼んだ。

委員会では「少年法と実名報道」をテーマに意見交換を行った。

各委員の意見は、実名報道の違法性については、逃走中、自殺の恐れ、年齢、家族のプライバシー、事件の重要性など、個々のケースごとに、状況の総合的な判断が必要との意見が多く出された。最後に竹田委員長が、「今回事案は、少年法そのものの理念や規定からしても、実名報道に法律上の違法性があるかどうかではなく、報道倫理・放送倫理のあり方の問題である。よって結論はかなり分かれることになるだろうが、それは表現の自由の問題として考える。議論することは、今後の報道のあり方を考える上で必要だが、軽々に実名報道の是非をここでまとめるべきではないといったところがわれわれの結論ではないか」と述べ、意見交換を締めた。

「放送における公平・公正について」について

放送人権委員会では、5月の委員会から「放送における公平・公正」について議論を重ねてきたが、8月の委員会で[運営規則検討小委員会]を設立することを決めたが、その第1回が、本委員会の後行われることが報告された。

小委員会の委員に竹田放送人権委員会委員長、堀野・五代両委員長代行および右崎委員の4氏が、メンバーとなり、公平・公正問題の扱いを含む「苦情取り扱い基準」の見直しを中心に論議し、11月の委員会に、その結果を報告し、更に議論を深めてもらうことになった。

苦情対応状況報告[8月]

2006年8月の1か月間に寄せられた放送人権委員会関連の苦情の内訳は、次のとおり。

◆人権関連の苦情(8件)

  • 斡旋・審理に関連する苦情(特定個人または直接の関係人からの人権関連の苦情)・・・4件
  • 人権一般の苦情(人権関連だが、関係人ではない一般視聴者からの苦情)・・・4件

地方局との意見交換会について

放送人権委員会委員と近畿地区会員各社との意見交換会は、11月28日午後大阪で開催の予定で、準備が順調に進んでいるとの報告が事務局よりあった。

その他

閉会後に引き続き第1回[運営規則検討小委員会]を開く。

以上

第115回 放送と人権等権利に関する委員会

第115回 – 2006年8月

「民主党代表選挙の論評問題」事案

「若手政治家志望者からの訴え」事案 総括…など

「民主党代表選挙の論評問題」事案

6月の委員会で審理入りが決まった上記事案について、放送人権委員会は8月の委員会で申立人・被申立人双方から、直接言い分等を聞くヒアリングを行った。

この席で、申立人で民主党衆議院議員の仙谷由人氏は、「憶測や思い込みによって、政治的謀略的筋書きで、一方的に、虚偽の事実に基づき、対立構成をつくり、片方を誹謗する選挙放送だった」と、改めて主張した。申立人で民主党衆議院議員の枝野幸男氏は所用のため欠席し、陳述書を提出した。

これに対し、被申立人のテレビ朝日側は「事実ないし真実と信じるに足る相当な理由がある事実に基づいて放送しており、放送の意図も代表選挙の投票前の勢力関係など現状を分かりやすく解説・論評したもので、申立人らの名誉を毀損するものではない」と反論した。

ヒアリング終了後、委員会は、さらに詰めの審理を行った。

「若手政治家志望者からの訴え」事案 総括

本事案は、放送人権委員会第29号事案として7月26日に「委員会決定」し、同日「決定」内容を申立人・被申立人双方に「通知」、その後記者会見を行って「公表」した。

8月の委員会では、岡山市に出向いて申立人に「決定」内容を通知した模様を担当調査役が報告した。

また、「委員会決定」を各放送局がどのように扱ったかと、関連新聞記事について報告があった。放送対応ではキー局4社が委員会決定を伝え、新聞1社が記事を掲載した。

このあと委員会は、当該局(日本テレビ)が伝えたニュース等のVTRを視聴した。

「放送における公平・公正について」意見交換

放送人権委員会では、5月の委員会から「放送における公平・公正」について議論を重ねてきたが、8月の委員会で[運営規則検討小委員会](仮)を設立することを決め、小委員会の委員に竹田放送人権委員会委員長、堀野・五代両委員長代行および右崎委員の4氏を選任した。

第1回小委員会は、9月19日に開かれる予定で、公平・公正問題の扱いを含む「苦情取り扱い基準」の見直しを中心に論議し、11月を目処に【放送人権委員会運営規則】の改定案をまとめることになった。

苦情対応状況報告[7月]

2006年7月の1か月間に寄せられた放送人権委員会関連の苦情の内訳は、次のとおり。

◆人権関連の苦情(8件)

  • 斡旋・審理に関連する苦情(特定個人または直接の関係人からの人権関連の苦情)・・・3件
  • 人権一般の苦情(人権関連だが、関係人ではない一般視聴者からの苦情)・・・5件

地方局との意見交換会について

毎年開催されている放送人権委員会委員と各地区会員各社との「意見交換会」、今年は11月28日午後、大阪で近畿地区会員各社を対象に開くことになった。

この催しは、放送人権委員会委員長をはじめ各委員と局の関係部門代表者らが直接顔をあわせて、「放送における人権・倫理問題」を論じ合うもので、東京地区での意見交換会を含め、今年で11回目の開催となる。

近畿地区会員各社には、場所・議事内容等が決まり次第、案内状を送付することになった。

その他

次回委員会は、9月19日(火)午後4時から開会し、また、閉会後に引き続き[運営規則検討小委員会](仮)を開くことを決めた。

以上

第114回 放送と人権等権利に関する委員会

第114回 – 2006年7月

「若手政治家志望者からの訴え」事案 最終審理

「民主党代表選挙の論評問題」事案 審理…など

「若手政治家志望者からの訴え」事案 最終審理

委員会では、本事案の「委員会決定(案)」について、最終的な文言の修正・手直しを行った後、全員一致でこれを了承した。「委員会決定」の申立人・被申立人双方に対する「通知」は7月26日午前と決まり、この後記者会見で「委員会決定」を「公表」することを決めた。

「民主党代表選挙の論評問題」事案 審理

本事案は、テレビ朝日が4月4日、5日の「報道ステーション」で、民主党代表選挙に関して報道した際に、「政治評論家によって、虚偽の事実を摘示され、著しく名誉を毀損された」と民主党の仙谷由人議員と枝野幸男議員が申立てていたもので、6月の委員会で審理入りが決定していた。

これまでに、申立人から、「申立書」の他に「反論書」、被申立人のテレビ朝日からは「答弁書」「再答弁書」等が提出されており、7月の委員会では、双方の論点を整理して本格的な審理を行なった。

申立人が「謀略的な内容を一方的に放送し、裏づけ取材なく虚偽の放送をした」などと主張しているのに対し、テレビ朝日は「真実ないし真実と信じるに足る相当な理由がある事実に基づいて論評を行なったものだ」と反論している。

放送人権委員会では、さらに審理を深めるため、8月の委員会に、申立人、被申立人の双方を招いて直接意見を聴取するヒアリングを行うことになった。

「放送における公平・公正について」意見交換

5月の委員会から始まった「放送における公平と公正」についての議論が7月の委員会で本格化し、審理対象の拡大につながる放送人権委員会の運営規則の見直し等については、小委員会を設けて具体的対応策を検討することになった。

今回の委員会では、まず竹田委員長が「これまで放送人権委員会は政党等の団体からの苦情申立てについては審理を断ってきたが、しかし否応なしに政治的関わりのある問題についても人権の観点から受け入れざるを得なくなってきているのではないか。これに対応して放送人権委員会の機能を拡充していくことができるのかどうか、委員会の運営規則から具体的に議論する必要がある」と述べた。

委員からは、「(現在は原則個人の苦情のみを審理対象にしているが)団体の苦情申立ても視野に入れてはどうか」「どういう団体の申立てを受け入れるのか、その線引きが難しい」「政党や宗教団体にはどう対応するのか」「申立人の資格をどう限定するのかが問題となろう」「放送人権委員会の目的は基本的には弱者救済であることに変わりはない」等の意見が出された。

放送人権委員会は、来年春に創立10周年を迎える。これを契機に「審理対象の間口を拡げる」という方向で議論がまとめられるかどうか、具体的には小委員会を設けて集中的に対応策を検討しようということになった。

苦情対応状況報告[6月]

2006年6月の1か月間に寄せられた放送人権委員会関連の苦情の内訳は、次のとおり。

◆人権関連の苦情(36件)

  • 斡旋・審理に関連する苦情(特定個人または直接の関係人からの人権関連の苦情)・・・14件
  • 人権一般の苦情(人権関連だが、関係人ではない一般視聴者からの苦情)・・・22件

その他

次回委員会は、お盆のため、定例日より1週間ずらして8月22日(火)に、更に「民主党代表選挙の論評問題」事案のヒアリングを行うことにしたため、時間を繰り上げ午後2時半からの開会を決め、閉会した。

以上

第113回 放送と人権等権利に関する委員会

第113回 – 2006年6月

「若手政治家志望者からの訴え」事案

「民主党代表選挙の論評問題」審理要請案件…など

「若手政治家志望者からの訴え」事案

本件事案は、若手政治家志望者から「日本テレビが05年11月に放送した報道番組で、我々が作った政党と個人の活動について、誤解を与える表現と作為的な編集等によって、名誉が傷つけられた」と申立てがあったもので、4月の委員会で審理入りを決めている。

5月の委員会で本格的な審理を行ったのに次いで、6月の委員会では、申立人・被申立人双方から個別に意見等を聴くヒアリングが行われた。出席した申立人・被申立人は、それぞれ50分余りに亘って意見を述べるとともに、委員の質問に答えた。ヒアリングの後審理に移り、右崎起草委員がまとめた素案を基に意見を交わした。

その結果、7月上旬に起草委員会を開いて起草委員会原案をまとめるなど、「委員会決定」策定に向けての作業を進めることになった。

「民主党代表選挙の論評問題」審理要請案件

5月24日、衆議院議員の仙谷由人・枝野幸男両氏から「4月4日および5日放送の民主党代表選挙に関するテレビ朝日の『報道ステーション』の報道によって、私たちは虚偽の事実を摘示され、著しく名誉を侵害された」との連名の苦情申立書が放送人権委員会に届いた。

申立人は、「民主党において代表選挙を行うこと自体が挙党態勢を崩すという構成のもとに、若手・中堅議員グループの後見人として仙谷氏がいて、小沢氏と対立している、などといったコメンテーターの論評はどのような事実に基づいているのか、申立人両名に対する取材もなく、諸点において報道は事実に反している」と訴えている。

これに対しテレビ朝日は、「民主党の代表選びの行方が視聴者の関心となっている中で、民主党内の勢力関係の現状と代表選挙の見通しを分かりやすく放送した。ゲストとして出演した政治ジャーナリストのコメントは、複数の情報源から取材した情報をもとに解説論評したもので、仙谷氏らが指摘するような虚偽の報道をして名誉を傷つけたものではないと考える」との見解を示している。

放送人権委員会では、苦情申立書とテレビ朝日から提出された経緯説明書等を慎重に検討、また当該番組のVTRを視聴したうえ、本案件を審理事案とすることを決め、次回委員会から本格的審理に入ることになった。

「秋田連続児童遺体発見事件」での要望

上記事件取材について、放送人権委員会が、5月25日に、地元・在京のテレビ・ラジオ放送各社に取材に当たっての「要望」を出し、集団的過熱取材を厳に慎むよう求めた。委員会では、この要望に対するメディア各社の対応や評価などについて話し合った。

そして、この種の要望は「桶川女子大生殺害事件」についで、2度目のことになるが、委員会では、今後もメディアスクラムによる被害者が出ないよう、タイムリーにしっかりと見守っていくことを確認しあった。

「バラエティー番組における人格権侵害の訴え」改善報告

標記事案の委員会決定(3月28日)を受けて、関西テレビから6月13日、「委員会決定後の対応と取組みについて」という文書が委員会宛に提出された。

報告内容は、決定の趣旨の社内各部署への周知徹底などの勧告後の対応と各種研修会の開催チェック体制の強化など再発防止に対する取組みからとなっている。

この報告書の提出を受けて、各委員からは放送人権委員会の委員会決定を受けた放送局に対する最近の総務省の動きを懸念する意見が相次いだ。

苦情対応状況報告[5月]

2006年5月の1か月間に寄せられた放送人権委員会関連の苦情の内訳は、次のとおり。

◆人権関連の苦情(29件)

  • 斡旋・審理に関連する苦情(特定個人または直接の関係人からの人権関連の苦情)・・・9件
  • 人権一般の苦情(人権関連だが、関係人ではない一般視聴者からの苦情)・・・20件

その他

大木圭之介椙山女学園大学教授(前BPO専務理事)が、『月刊民放』6月号に掲載した「”装置”としての第三者機関に-10年目を迎える放送人権委員会」について意見交換した。

次回委員会は、7月18日(火)に開くことを決め、閉会した。

以上

第112回 放送と人権等権利に関する委員会

第112回 – 2006年5月

「若手政治家志望者からの訴え」事案

「放送の公平・公正」の扱いについて協議…など

「若手政治家志望者からの訴え」事案

本件事案は、若手政治家志望者から「日本テレビが05年11月22日に放送した報道番組で、我々が作った政党と個人の活動について誤解を与える表現と作為的な編集、演出が行われ、名誉が傷つけられた」と申し立てがあったもので、06年4月の委員会で審理入りが決まった。

5月の委員会では、反論書や再答弁書など出揃った提出書類に加えて、事務局作成の論点対比表をもとに本格的審理を行った。この中では、「当該放送によって申立人側の社会的評価が低下したか」「政党についての部分を放送人権委員会として判断するかしないか」「苦情に対する当該局の放送後の対応についてはどうか」等について意見が交わされた。

委員会では、双方の意見を更に聴く必要があるとして、次回6月の委員会に申立人・被申立人を個別に招いてヒアリングを行うことを決めた。

「放送の公平・公正」の扱いについて協議

放送人権委員会は、設立10年目に入り、その存在と活動は視聴者・市民に広く認知されてきている。それとともに、第三者機関としての役割も社会的にますます重要視されるようになってきた。

このような状況のもと、4月に委員2人が交代、新委員長に竹田稔委員が選任されて放送人権委員会は新体制になったが、これを機に苦情の取り扱い基準を見直して審理対象をさらに広げるかどうか、特に「放送における公平・公正」を中心に議論することになった。

5月の委員会では、「<政治的に公平であること>等を定めた放送法3条の2については倫理規範的規定であるとみるのが通説だが、実際にはこの法に基づいて”行政指導”が行われている。第三者機関としての放送人権委員会は、今後とも人権・放送倫理の問題に限ってやっていくのか、それとも番組編集への公権力の介入を避ける意味においても、あらたにもう少し審理対象の間口を広げるべきか否か、今一度検討することが求められている」旨の委員長発言を中心に、活発に意見が交換された。

放送の公平・公正、特に政治的公平の問題は、表現の自由・編集の自由などとの兼ね合いや取り扱い基準作りが難しいため、6月以降も具体的な苦情事案の審理に並行して長期的・多角的に議論を重ねていくことになっている。

苦情対応状況[4月]

2006年4月の1か月間に寄せられた放送人権委員会関連の苦情の内訳は、次のとおり。

◆人権関連の苦情(21件)

  • 斡旋・審理に関連する苦情(特定個人または直接の関係人からの人権関連の苦情)・・・4件
  • 人権一般の苦情(人権関連だが、関係人ではない一般視聴者からの苦情)・・・17件

その他

次回委員会は、6月19日(火)に、事案のヒアリングがあるため、通常より1時間早め午後3時から開くことを決め、閉会した。

以上

第111回 放送と人権等権利に関する委員会

第111回 – 2006年4月

新委員長の選任ならびに委員長代行の指名

バラエティー番組における人格権侵害の訴え」事案の総括…など

新委員長の選任ならびに委員長代行の指名

退任した飽戸委員長に代わる新委員長に、互選の結果、竹田稔委員が選出された。また、委員長代行には堀野紀委員と五代利矢子委員が指名された。

この後、竹田委員長の司会で審議に入った。

バラエティー番組における人格権侵害の訴え」事案の総括

本事案は、東京都在住の男性が「2005年6月及び7月に関西テレビで放送されたバラエティー番組で、当時妻だったタレントの発言によって名誉・プライバシー権の侵害を受けた」と申し立てていたもので、3月28日に「委員会決定」の通知・公表が行われた。

この日の委員会では、在京キー局のニュースでの「委員会決定」の扱いや「委員会決定」を掲載した新聞記事等について、事務局から報告した。

また、関西テレビが本事案の「委員会決定」の模様を伝えたニュースと4月1日に放送した当該番組『たかじん胸いっぱい』でのお詫び部分のVTRを視聴した。

委員会としては、後日関西テレビから提出される「委員会決定を受けた後の改善対応策の報告」を見守ることにした。

「新ビジネス”うなずき屋”報道」事案 当該局の改善報告

上記事案の委員会決定(1月17日)を受けて、当該局テレビ東京から3月20日「改善策を含む取組状況についての報告」が委員会宛に提出された。

報告の内容は、委員会決定の趣旨を社内各部局に周知徹底し、報道現場や外部プロダクションなど各部署での研修・勉強会を行ったこと等。

この報告書の提出を受けて、竹田委員長は「本委員会決定の見解を真摯に受け止め、改善の努力をしていることがうかがえる。是非今後同じようなことが起きないよう努めて欲しい」との感想を語った。

審理要請案件「若手政治家志望者からの訴え」

若手政治家志望者から「日本テレビが05年11月22日に放送した報道番組で、我々が作った政党と個人の活動について誤解を与える表現と作為的な編集、演出が行われ、名誉が傷つけられた」との苦情申立てが06年4月9日に放送人権委員会に寄せられた。

これに対し、日本テレビは「当該番組は、作為的な編集を加えることなく事実をありのままに放送したもので、報道内容に問題はなかったと判断している」と反論している。

4月の委員会で、この申立て案件について審理対象とするか否かについて、申立書と当該局から提出された経緯書を検討し、それに放送済みVTRを視聴し協議した。

その結果、当該申立ては若手政治家志望者個人からの訴えとして審理対象とすることを決め、5月の委員会から本格的な審理に入ることになった。

審理要請案件「防災フォーラムによる人権侵害の訴え」

東海豪雨災害の被災者だという男性からの「防災の専門家らが論じ合った番組に、被災者の主張を取り上げなかったのは、被災地住民の人権の一端を侵害するものだ」との苦情申立に対し、「申立書」に基づき、慎重に討議した結果、<審理対象外>との判断を下した。

委員の意見は「記載事項から見て、当案件は、放送人権委員会の運営規則第5条に定める申立人またはその直接の利害関係人の名誉、信用、プライバシー等の権利侵害に関する苦情にあたらない」ということで一致し、審理対象としない旨委員長名の文書で申立人に通知することにした。

苦情対応状況[3月]

2006年3月の1か月間に寄せられた放送人権委員会関連の苦情の内訳は、次のとおり。

◆人権関連の苦情(7件)

  • 斡旋・審理に関連する苦情(特定個人または直接の関係人からの人権関連の苦情)・・・2件
  • 人権一般の苦情(人権関連だが、関係人ではない一般視聴者からの苦情)・・・5件

その他

次回委員会は、5月16日(火) 午後4時から開くことを決め、閉会した。

以上

第110回 放送と人権等権利に関する委員会

第110回 – 2006年3月

「バラエティー番組における人格権侵害の訴え」事案の審理

審理要請案件「歌のルーツを探る番組で人権侵害の訴え」の扱いについて協議…など

「バラエティー番組における人格権侵害の訴え」事案の審理

本事案は、東京都在住の男性が「2005年6月及び7月に関西テレビで放送されたバラエティー番組『たかじん胸いっぱい』で、当時妻だったタレントの発言によって名誉・プライバシー権の侵害を受けた」と申し立てていたもの。

委員会では、申立人、被申立人双方を個別に招いて直接事情を聞くヒアリングを行い、申立人本人も出席した。あわせて1時間45分にわたって行なわれたヒアリングの後、本件事案について詰めの審理を行い、起草委員会がまとめた委員会決定の草案について意見を交わした。

この中で、「トークバラエテイー番組における名誉毀損」や「当時妻だったタレントの発言」などについて検討し、一部加筆修正を行った。

その結果、「委員会決定」をまとめた上で、3月28日に申立人、被申立人双方に通知し、その後記者会見を開いて「委員会決定」を公表することを申し合わせた。

審理要請案件「歌のルーツを探る番組で人権侵害の訴え」の扱いについて協議

本年2月、福岡県大牟田市在住の男性から「05年10月放送の番組で、与論島出身者が侮辱され、名誉を著しく毀損された」という趣旨の申立書が送られてきた。問題のシーンでは、ある歌謡曲のルーツに関して1965年ごろ撮影の資料映像が使われたが、男性は「左右に並ぶ豚小屋に<与論長屋>の字幕がスーパーされていた。これは、『当時大牟田に住んでいた与論島出身者は豚小屋に住んでいた』と公言するものであり、与論出身者を侮辱し名誉を毀損するものである」と主張していた。

委員会では、申立書及び当該局の対応状況を慎重に検討したうえで、本件番組のビデオテープを視聴したところ、「当該放送からは、申立人及びその直接の関係人の名誉が毀損されたと解せる部分は見出せない」ということで委員全員の意見が一致し、委員長名で<審理対象外>の回答書を男性に送付することを決めた。

苦情対応状況[2月]

2006年2月の1か月間に寄せられた放送人権委員会関連の苦情の内訳は、次のとおり。

◆人権関連の苦情(14件)

  • 斡旋・審理に関連する苦情(関係人からの人権関連の苦情で、氏名・連絡先や番組名などが明らかなもの)・・・5件
  • 人権一般の苦情(人権関連だが、関係人ではない視聴者からの苦情、または、氏名・連絡先や番組名などが不明なもの)・・・9件

その他

3月末をもって退任される飽戸弘委員長、渡邊眞次委員より退任の挨拶があった。またBPO村井専務理事は、放送人権委員会発足以来9年間にわたり委員を勤められた両氏に対し、「放送人権委員会の基礎をしっかりと築いていただいた」と、感謝の気持ちを述べた。

最後に、事務局からBPOの年次報告会が、3月23日(木)午後1時半から開かれることが報告された。そして、次回委員会は三宅弘氏(弁護士)、武田徹氏(ジャーナリスト、東京大学先端技術研究センター特任教授)を委員に迎え、新体制で4月18日(火) 午後4時から開くことを決め、閉会した。

以上

第109回 放送と人権等権利に関する委員会

第109回 – 2005年2月

「バラエティー番組における人格権侵害の訴え」事案の審理

審理要請案件「サーカス一座報道で名誉毀損」…など

「バラエティー番組における人格権侵害の訴え」事案の審理

本事案は、東京都在住の男性が「2005年6月及び7月に関西テレビで放送されたバラエティー番組『たかじん胸いっぱい』における元妻の発言によって名誉・プライバシー権を侵害された」と申し立てたもの。

放送人権委員会は、2005年12月の委員会で審理入りを決定し、翌年1月の委員会から「申立書」及び「答弁書」を基に実質審理に入った。その後申立人から「反論書」、関西テレビから「再答弁書」が、それぞれ委員会に提出され、2月の委員会では、これまでの双方の主な主張を項目別に対比した形で整理し、検討を行った。

この日の委員会では、番組内での元妻の発言内容をどう捉えるか、ニュース報道番組とバラエティー番組の違いを踏まえた上で、名誉毀損に当たるかどうかなどについて約1時間30分にわたって意見が交わされた。

3月の委員会では、申立人、被申立人双方に対して直接事情を聞くヒアリングを実施し、さらに審理を進めることとした。

審理要請案件「サーカス一座報道で名誉毀損」

「”故国に帰れないサーカス一座の日々”と題したニュース特集(1月30日放送)で、人格権が著しく侵された」と、イベント企画会社のプロデューサーが苦情を申し立てた案件について、放送人権委員会は、当該局から任意提出されたVTRを視聴した結果、「放送からは名誉・信用を毀損されたとする個人を特定することが出来ない」として、<審理対象外>とした。

この放送に対し申立人は「サーカス一座が帰国できない事情について、出演料の不払い責任の有無や、動物の輸送手続きの難航などの事情を説明したにもかかわらず一方的な判断をされ、何の手当てもしていないように放送されるなど、当方の名誉・信用が著しく毀損された」と訴えていた。

一方、当該局は「契約書上、出演料の支払い義務はあくまで申立人にあり、また動物の搬送などの費用・手続きについても申立人側に負担義務がある。番組は完全に匿名性を維持しており、名誉毀損ないし信用毀損が成立する余地はない」と反論していた。

苦情対応状況[2月]

2006年1月の1か月間に寄せられた放送人権委員会関連の苦情の内訳は、次のとおり。

◆人権関連の苦情(18件)

  • 斡旋・審理に関連する苦情(関係人からの人権関連の苦情で、氏名・連絡先や番組名などが明らかなもの)・・・9件
  • 人権一般の苦情(人権関連だが、関係人ではない視聴者からの苦情、または、氏名・連絡先や番組名などが不明なもの)・・・9件

その他

BPOの村井専務理事より、放送人権委員会の委員の交代が発表された。これは、二人の委員が満期を迎えることに伴う委員の交代。2005年12月8日開かれたBPO評議員会で決定されたもの。

退任する二人の委員は、飽戸弘委員長、渡邊眞次委員
新任の二人の委員は、三宅弘氏(弁護士)、武田徹氏(ジャーナリスト、東京大学先端技術研究センター特任教授)

4月1日より新体制となる。

最後に、次回委員会は3月14日(火)午後2時半から開き、「バラエティー番組における人格権侵害の訴え」事案のヒアリング・審理を行うことを決め、また、事務局からBPOの年次報告会が、3月23日(木)午後1時半から開かれることが報告され、閉会した。

以上

第108回 放送と人権等権利に関する委員会

第108回 – 2006年1月

「新ビジネス”うなずき屋”報道」決定の通知・公表の報告

「バラエティー番組における人格権侵害の訴え」事案の審理…など

「新ビジネス”うなずき屋”報道」決定の通知・公表の報告

本事案については、12月の委員会で「決定(草案)」の了承を受けた後、年明けの持ち回りの委員会で「決定(案)」についての了承を得た。

こうした過程を経て今月の委員会当日、審理に先立って「新ビジネス”うなずき屋”報道」事案の「委員会決定」(見解)を申立人ならびに被申立人の双方に通知し、その後、記者発表を行なって「決定」を公表した旨、飽戸委員長、起草委員と事務局から報告された。

報告の要旨は「決定」を受けた後、申立人は「テレビ東京の当該番組が放送倫理に違反すると委員会に認めていただいた。申立てた意味があった」と述べ、一方、テレビ東京は「放送人権委員会の決定で指摘された点を真摯に受け止め、今後一層放送倫理を遵守した報道に努めてまいります」とのコメントを発表したこと。また記者発表には放送人権委員会から飽戸弘委員長、起草委員の右崎正博委員、崔洋一委員が出席したが、出席した記者から「金銭授受の場面は、まさに”やらせ”ではないか」との質問があったが、右崎委員は「”やらせ”の定義がはっきりしないので、その言葉を使わなかったが、不適切な過剰演出だったと認識している」との判断を示したことなど。

「バラエティー番組における人格権侵害の訴え」事案の審理

この事案は、2005年6月及び7月に関西テレビで放送されたバラエティ―番組「たかじん胸いっぱい」に対し、東京都在住で出演者の元夫が「元妻の発言等によって、名誉・プライバシー権の侵害を受けた」と申し立てていたものである。

放送人権委員会は、12月の委員会で、本件事案の審理入りを決め、当該局に対し「申立書」に対する「答弁書」の提出を求めていた。今月の委員会では、その「申立書」及び「答弁書」を基に1時間以上に亘って審理を行った。 その結果、申立人に対しては「反論書」、当該局には「再答弁書」の提出を求め、2月の委員会で論点整理を行い、3月の委員会では、申立人、被申立人双方に対してヒアリングを実施することで、審理を進めることにした。

「犯罪被害者等基本計画」に関する放送人権委員会声明について

2005年12月27日に閣議決定された「犯罪被害者等基本計画」について、放送人権委員会は同日声明を発表した。この経緯を事務局が以下のように報告した。

「放送人権委員会声明の原案を渡邉眞次委員が作成、それを各委員に送り、修正要望などを加味して、当基本計画が閣議決定された後に放送人権委員会声明を総務省記者クラブや情報通信記者会などを通じて発表した。年末のお忙しいところ、声明作成にご協力いただき有難うございました」

この放送人権委員会声明の骨子は「犯罪被害者の実名開示の可否の問題は、報道関係者が被害者との信頼関係を築きながら自主的に解決すべきであって、警察に判断を委ねることで解決すべき問題ではない。今回の閣議決定は報道の死命を制しかねない重大な問題である」というもの。(第107回放送人権委員会議事録参照)

委員からは「声明を出してよかった」という意見が数多く出ていた。

「喫茶店廃業報道」決定後の毎日放送の改善報告について

2005年10月に当該事案について委員会決定を受けた毎日放送は、3か月後の2006年1月に放送人権委員会委員長宛に、「委員会決定後の当社の取り組みについて」という文書の提出があったことが事務局から報告された。毎日放送は、この改善措置の中で、再発防止の取り組みとして?決定内容を報道局内に徹底すること?デスクのチェック体制の強化?講師を招いての研修会の開催などをあげている。

委員からは、「このところ当該局の対応の仕方はよくなっている」「毎日放送も、かなり前向きに対応している」との意見が出た。

苦情対応状況[12月]

2005年12月の1か月間に寄せられた放送人権委員会関連の苦情の内訳は、次のとおり。

◆人権関連の苦情(18件)

  • 斡旋・審理に関連する苦情(関係人からの人権関連の苦情で、氏名・連絡先や番組名などが明らかなもの)・・・5件
  • 人権一般の苦情(人権関連だが、関係人ではない視聴者からの苦情、または、氏名・連絡先や番組名などが不明なもの)・・・13件

最後に、次回委員会は2月21日(火)午後4時から開くことを決め、閉会した。

以上