2011年度 解決事案

「店の信用にかかわる映像使用をされた」との訴え

在京テレビ・キー局が2011年4月に放送した情報バラエテイー番組について、古美術店の経営者から、「『以前に撮影した店の外観映像を風景として使用したい』とのことで許可したのに、あたかも放送で取り上げられた古美術品を私の店で売ったかのように見える使われ方をされた。このため、お客さんからは『放送ではすごい価格だったのに、なぜあんなに安い値段で売ったのか』といわれ、信用問題になっている」として、テレビ局に対し、放送での「お詫び」を求めて抗議が行われた。
テレビ局は、「店の名前を明示しているわけではないのでホームページ上でのお詫び・訂正であれば可能だが、番組内で取り上げることはできない」と回答した。これに対し経営者はあくまでも番組での「お詫び」を求めたが、双方の話し合いは進展せず、経営者から放送人権委員会に訴えが寄せられた。
委員会事務局では、テレビ局に対し、経営者側の意向を伝えるとともに、局として再検討し話し合いを続けるよう要請した。
その結果、6月に入って番組責任者が直接経営者と会って話し合いを行い、外観映像の使用について番組内で説明を行う旨の提案をした。経営者はこれを了承、その後放送された「お詫び」を視聴した結果、最終的に納得し、本案件は解決した。
(放送2011年4月 解決7月)

2009年度 解決事案

「引ったくり事件の被害者が取材を拒否したのに実名報道された」と抗議

2009年5月24日、在阪の民放テレビ局が、ニュース番組の中で、引ったくり事件の被害者を実名で報道した。この放送内容について、被害にあった女性は、「事件後、取材に来た記者に対して”プライバシーに関することなので取材はお断りします”とはっきり言ったのに、ニュースで、実名、職業、年齢などのプライバシーが報道され、多大な精神的苦痛を受けた。犯人はなお、逃走中だ」と局に訴えた。
これに対し、当該局は、「取材拒否を実名報道拒否とは受け止めなかった。事件報道では実名報道が原則」と説明したが、女性は納得せず、局側の謝罪を求めて放送人権委員会に苦情を申し立ててきた。事務局では、当該局に対し、女性に納得してもらえるよう説明するなど話し合いでの解決を勧めた。
双方で話し合った結果、7月13日に当該局担当者が女性宅を訪ね、「お詫び」の文書を提出した。これにより問題は解決を見た。「お詫び」の内容は、(1)取材を拒否した被害者の真意を汲み取り、実名報道の適否についてより慎重に対応すべきだった。(2)今後は、被害者から匿名を希望された場合には、その理由と事件の重大性などを比較考量し判断していくなどというもの。
事務局からの問い合わせに対し、女性は、「プライバシーを侵された怒りは消えませんが、改善策を含めたお詫びがあったことを前向きに受け止め、これで解決とします」と述べている。

(2009年5月放送 7月解決)

「匿名を要求したのに実名放送された」との訴え

在京テレビ・キー局が2009年4月に放送した”介護保険”をめぐる報道番組で、取材された人(東京在住)から、「匿名を求めたのに実名が放送されたため、世間に知られたくなかった母親の病状が明るみに出てしまった」とテレビ局に抗議があった。
テレビ局は、「母親の映像を出さないことを了解した時点で、顔出し取材に応じ介護の実態を話してくれた長女の実名を出すことは、承認されたものと思って放送した」と釈明した。しかし長女は納得せず、謝罪と再放送の際は匿名にするよう求めた。
テレビ局は3日後に再放送を行ったが、その際、名前の部分を平仮名に変えただけで放送したため、長女はさらに憤慨し、誠意ある謝罪と、映像を再び使用しない約束を求め、放送人権委員会に訴えた。 放送人権委員会では、テレビ局に対し、被取材者を傷つける意図がなかったことや、その取材のあり方、放送のあり方について誠意を持って説明し、納得してもらうよう話し合いを勧めていた。この結果、9月に入って、テレビ局から相手方に対し下記の内容の文書が示され、長女もこれを納得、この事案は解決した。
文書で示された内容は、このような問題の再発防止のため、1)取材協力者に対し、撮影取材が始まる前に番組の趣旨を十分説明する。2)実名か匿名かの事前確認を徹底する。3)苦情に対しては取材担当者レベルでなく、速やかに責任者を集めて真摯に検討し、責任者が直接誠意を持って説明する。の3点となっている。また局は、番組の再放送に当たっては、取材協力者の了解なしには行わないことも約束した。

(放送2009年4月 解決9月)

「インタビューの編集により誤解を招いた」との訴え

在京テレビ・キー局が2009年6月、ニュース番組で放送した”地方空港の開港”をめぐるニュース特集で、取材を受けた地元企業の社長が、インタビューの肝心な部分が削除されたことにより、名誉を侵害されたとしてその回復を訴え、放送人権委員会に苦情を寄せた。
訴えの内容は、「国内線が決まっていないのは残念だ。しかし、国際線の乗り入れが決まっているので心配していない」とインタビューで答えたが、その前半部分だけ放送され、開港を期待している地元企業の仲間に対し、自分があたかも開港に悲観的な意見の持ち主のように放送され誤解を招いたというもので、当該局に対し、名誉回復措置をとるよう要望していた。
委員会では、当該局に対し、被取材者と誠意を持って話し合うよう勧めていたところ、9月末になって、報道局長名での「説明とお詫び」の文書を出すこととなり、話し合いで決着することになった。 この文書の中で当該局は、「被取材者の考えを十分に汲み取った放送をできなかったことを申し訳なく思っています」と述べている。

(放送2009年6月 解決9月)

「夫の死亡ニュースに際し、息子の名前をスーパーされた」との訴え

四国のテレビ局が2009年7月、ニュース番組で元参議院議員の死亡ニュースを報じた際、画面に息子(現職衆議院議員)の名前を40秒間スーパーで入れるというミスを犯し、4分後に同じ番組内で訂正・お詫びを放送した。
この放送について、死亡した議員の家族から、「訂正放送をすればそれで放送局の責任は免れるのか、葬式を前に悲嘆にくれている家族に多大な精神的ショックと混乱を与えておきながら何の説明もお詫びもない」との苦情が放送人権委員会に寄せられた。
委員会では、当事者に対する謝罪のあり方が問題とされているケースであることから、当該局に対して、まず家族に誠意を持って説明するなど当事者間での話し合いを勧めた。
その後、当該局が家族へ話し合いを申し入れたところ、対応の遅れなどの経過説明を求められたため、ミスの発生から訂正にいたるまでの経緯と「関係者への連絡が遅かったという批判を謙虚に受け止めたい」とのお詫びを記した文書を役員名で送付した。
これに対し、家族は丁寧な説明を受けたとして、この「説明・お詫び」を受けいれることにし、その旨当該局に伝えた。また、放送人権委員会堀野委員長宛てに手紙を寄せ、問題が解決したことを連絡するとともに、被害者の立場から「誤報の影響が予想される場合は少しでも早く当事者に連絡していただくことを放送局側に要望したい」と述べている。

(放送2009年7月 解決12月)

「旅館再生リポート・女将の訴え」事案  審理入り後の和解斡旋で解決

本事案は、2009年7月17日のフジテレビ『FNNスーパーニュース』の放送内容をめぐって、宮城県の温泉旅館の女将が申し立てたもの。
放送は、不況下での旅館の女将さんたちの奮闘ぶりを紹介したが、申立人は、放送内容は売り上げが伸びない旅館という負のイメージを視聴者に与え、温泉街も暗いシーンばかりが編集されるなど事実に反するものだったとして、謝罪などを求めた。これに対してフジテレビは「当番組はニュース・報道番組であり、取材に基く事実を伝えたものです」と主張した。
同年11月に審理入りし、2010年1月までヒアリングを含め3回の審理を行ったが、堀野委員長は本件事案は人権侵害を訴えるものでなく放送上の表現や編集の仕方が問題になっていた事案であることから、和解による解決が望ましいとして2月の委員会に提案し了承を得た。
委員会による和解斡旋の結果、2月18日にBPO会議室で委員長と申立人、フジテレビの責任者が出席して和解の手続きが取られた。フジテレビは、視聴者に誤解を与えかねない表現があったとしてお詫びし、今後取材先との信頼関係を大切にして報道に取り組むという内容の書面を申立人に手渡した。これを受けて申立人は委員会への申立てを取り下げ、双方が譲歩する形で本件は解決した。

審理入り後の委員会斡旋による和解解決は、2008年3月の「産廃不法投棄業者の隠し撮り報道」事案に次いで2件目である。

(放送2009年7月 解決2010年2月18日)

2008年度 解決事案

「離婚した妻の一方的主張を再現したバラエティー番組」に元夫が苦情

中国地方に住む男性から「全国ネットのバラエティー番組で、元妻の一方的な証言に基づいて、私の浮気が離婚の原因と決め付けた過去が紹介され、その場面の再現放送までされた」として、在京の民放局に訂正放送などを求める訴えが、放送人権委員会に寄せられた。
当委員会で、当該局に事実関係の確認と、男性との話合いを勧めたところ、数回の交渉で和解が成立し、5月の同番組(全国ネット)の最後でお詫び放送がなされ、また3日後には男性が住む県域のローカル局(全国ネット外)でも特別編成で同番組の放送が行われた。
当該局では、本件苦情の訴えを重視し、弁護士を交えて番組スタッフから調査を行い、離婚の原因についての説明が一方的だったことを確認し、再現VTRの使用は、男性の名誉を傷つけた恐れが多分にあることなどを認め、お詫び放送に踏み切ったもの。
なお、当該局では、上記の調査、お詫びの経緯等について、当委員会に報告書を提出し、その中で、今後の対応および再発防止策として、この放送内容について社内のさまざまなレベルで、研修、勉強会などを開き、反省の共有化、意識啓発を進めることになったとしている。

(2008年4月放送 6月解決)

アブラボウズを高級魚クエとして販売した疑惑追跡報道

在阪のテレビ局が、2007年暮のニュース番組内で、新たな食品疑惑として、高級魚クエと偽ってアブラボウズが販売されているという疑惑を追跡し、検証する企画報道を行った。
流通ルートから”偽クエ”の卸並びに小売をしている会社が突き止められ、社長(匿名)の取材に対する対応ぶりなどが放送された。
放送後、この社長が、「偽クエ疑惑の主犯格として扱われ、暴利を貪っているとの印象を視聴者に持たれた」と主張して、放送局に抗議したが、局側は、高級魚クエでも偽の表示で流通が行われていることを、一般の視聴者に注意喚起するための企画であると反論し、謝罪・訂正放送を拒否した。このような経過を経て、社長が2008年3月、放送人権委員会に苦情を訴えてきた。
放送人権委員会で、双方に更なる話し合いを求めたところ、「二度とこのニュースを取り上げないよう求める」という社長側の要求をめぐって決着が長引いたが、局側が「今後も、適正な報道を行ってまいります」との表現を盛り込んだ文書を出すことで話し合いがまとまり、放送以来半年ぶりに解決した。

(2007年12月放送 2008年6月解決)

「亡くなった家族を生きているように間違って放送された」と抗議

九州の民放テレビ局が、「スーパーマーケットの前で、じゃんけんで勝つと品物が安く買えるゲーム」(VTR撮影)を行い、夕方の情報番組内で放送した。(08年6月26日)
放送後、ゲームの参加者(申立人)から、「家族構成は祖父母、両親、子供4人」と字幕入りで放送されたため、取引先や知人から「祖父母は、まだ生きているのか」「前に香典をおくったが・・・」などと疑惑の目で見られたり、不審に思われたりして迷惑を受けたと、局に対し、訂正と謝罪をしてほしいとの抗議がなされた。
実際は、両親に子供6人の8人家族であったのを、取材者が聞き間違えたか、思い込みによって誤報となったもの。
抗議に対し、局側は電話で事実を間違えたことを詫びたが、謝罪文(申立人が知人に説明するため、局側が間違えたことを証明する文書)の提出を拒み、また、自宅へ謝罪に来てほしいとの要請についても断ったため、放送人権委員会への相談となった。
事務局からの事情聴取に対し、申立人は「訂正・謝罪は求めない」「慰謝料等も求めない」と述べていたこともあり、局に対し、誤報で迷惑を掛けたのは事実であり、電話だけでなく自宅に出向いて謝罪し誠意を示すのもひとつの解決法ではないかと勧めたところ、部長でもあるプロデュサーが申立人宅に出向き、お詫びした。申立人は「早い段階で誠意を見せてほしかった」と言いつつもこれを了承し、一転解決となった。申立人は、局が誠意を持って謝罪したことを評価し、謝罪文は要求しなかった。
放送から約1ヵ月後の7月に解決となったが、局側は「これまでの対応と今後の対策」を盛り込んだ説明・報告書を放送人権委員会委員長宛て送付、その中で「間違って放送したことは事実であり、直ちに訪問して謝罪すべきだった」と反省している。

(2008年6月放送 7月解決)

2007年度 解決事案

「ラジオ番組で誹謗中傷された」との元局アナからの苦情

以前放送局に所属していた元女性アナウンサーが「当該局のラジオ番組で、男性アナウンサーの嘘の発言によって誹謗中傷された」として「局の謝罪と発言したアナウンサー本人の反省のことば」などを求めて7月放送人権委員会に苦情を申立てた。
放送人権委員会事務局では、双方に対し「話し合いの余地があるのではないか」と交渉を続けるよう勧めていたところ、当該局より「話合いの結果、このほど全面的に解決した」との報告があった。
事務局で女性のブログを確認したところ、女性も「尊敬する方々から謝罪を頂き、(発言した)本人からも誠意ある言葉を貰ってすべて解決した」とブログに書いており、本件は、放送人権委員会の審理をまたず円満解決したものとして委員会に報告、了承された。

(2007年6月放送、2007年7月解決)

「松茸の産地偽装疑惑報道」への苦情

11月、某地方の松茸販売業者から「当店は、この地方でただ一店、産地表示して松茸を売っているのに、朝早くからアポイントもなく押しかけてきた記者に最初から結論ありきの態度で長時間取材され、中国・韓国産の松茸をあたかも当地方産と偽装して販売しているように報道された。局に抗議すると『間違った放送はしていない』の一点張りだった」と苦情を申立ててきた。
放送人権委員会事務局では、当該局に対し「申立人は、地元商工会や観光協会との関係を一番問題にしている」と伝えた。これを受けて局の番組責任者が申立人を訪れて話しあった。その結果、「産地偽装についてはそれぞれ言い分があったが、“アポなし長時間取材”等についてはお詫びした。申立人は当方の誠意を認めてくれて和解に応じ、解決書を取り交わした」との報告があった。
また申立人に確認すると「局の責任者が商工会・観光協会にも事情を説明してくれた。お陰で円満に解決することができた」ということであった。

(2007年11月放送  2007年12月解決)

「無理やりインタビュー・放送に抗議」

事務局から、仲介・斡旋解決事案として下記内容を委員会に報告し、了承を得た。
「取材を拒否したのに無理やりインタビューされた上放送(2008年2月21日)された。テレビ局に抗議し謝罪を求めたが誠意ある対応を示さない」と、宮城県在住の商店従業員が委員会に苦情を訴えてきた。
抗議の内容は、「2月にテレビ局から、深夜番組の恋愛応援企画コーナー(バレンタインデーに女性がチョコレートを渡すのを応援するもの)での取材要請があったが、はっきり断った。にもかかわらずテレビ局は女性と共に待ち伏せし、仕事を終えて店を出たところで無理やりインタビューされ、取材を断っている場面を放送された」というもの。
放送後の抗議に対し、テレビ局は「匿名、モザイクにしたので名誉毀損には当たらない」と釈明し、「迷惑をかけたとしたらすまない」との意向を示したが、商店従業員は「まったく誠意が感じられない対応だ」として、BRCへ訴えた。
BRC事務局では、「商店従業員は放送された人の気持ちを考慮した誠意ある謝罪を求めている」とテレビ局に伝え、話し合うよう要請していた。その結果商店従業員から、「2度の話し合いの末、このような取材の再発防止などをテレビ局が約束してくれたので了解した」との連絡を受けた。またテレビ局からも、同日「円満解決した」との報告があった。

(解決 2008年2月29日)

「産廃不法投棄業者の隠し撮り報道」委員会審理を経て仲介・斡旋解決

福島県いわき市の木材加工会社の社長が、隠し撮りの放送(2007年12月12日)により人権を侵害されたという申立てについて、133回委員会で、その社長と当該局・福島テレビの関係者から個別にヒアリングを行った。
この中で社長は、「産業廃棄物を自社の敷地に不法投棄していたことは事実で反省もしている。しかし隠しカメラで、雑談と思わせインタビューされ、これを逮捕当日のニュースに使われたのは納得できない」と申立てに至った理由を語った。その上で社長は、「地元の同業者は産業廃棄物の扱いに疎いところがあったが、今回の逮捕によって皆で研究していこうという機運も出ている」と語ると共に、BRCに申し立てし、このヒアリングに出て話が出来たことで、福島テレビに対する怒りの気持ちも、ずいぶん落ち着いてきたと率直に語った。
一方福島テレビ側は、「悪質な産廃不法投棄事件であるが、社長はインタビューに応じてくれなかった。しかも逮捕も間近であり、なぜ不法投棄を続けていたかを報道するためには隠し撮りもやむを得なかった。従って申立人への人権侵害などに当たるものではない」と主張した。しかし「隠し撮りの放送により社長が不愉快になった気持ちは十分理解できる。その気持ちも重く受け止め、こうした取材については今後も十分慎重に対応したい」という考えを明らかにした。
この考えの表明を受け、委員会で改めて申立人に聞いたところ、「相手の気持ちも分かったので、これ以上争う積もりはない」として苦情申立てを取り下げることとなった。

(解決 2008年3月18日)

2006年度 解決事案

「疑惑解明に後ろ向きと報道され名誉を傷つけられた」との苦情

9月、ある地方都市の保守系市議会議員が「地元局で放送されたニュース特集で、議員としての名誉を著しく傷つけられた。報道姿勢に問題があると思うので放送人権委員会で審理してもらいたい」と、前触れなく文書で要請してきた。
このニュース特集は、「福祉と利権の構造」をテーマにしたもので、市の特別養護老人ホームを巡る贈収賄事件を調査する百条委員会が「選定過程に問題はなかった」との結論を出したことを受け、市議会の不作為を糾弾する内容だった。
苦情を申立ててきた市議会議員は、「百条委員会で疑惑解明に後ろ向きの言動を取り続けたように描かれた」と主張していたが、当該局では「報じたことはすべて事実であり、また本人に直接取材を申し込んだが拒否された。報道機関としての対応は十分にしている」と反論していた。
放送人権委員会事務局では「名誉を傷つけられたとの主張に具体性がなく、また間違った事実関係が報道されていないので、放送人権委員会への審理要請案件としては無理がある」ことを議員に説明、再考をうながしていたところ、2週間後「事務局の指摘を考慮し、苦情申立を取り下げる」と伝えてきた。

(2006.10.5放送 06.11.10解決)

「説明された企画意図とは違い、虚偽の内容を含む形で放送された」との苦情

10月、東京の映画製作会社の代表から「製作した映画の紹介をするという企画意図だったので取材に応じたが、放送では監督個人のことに終始し、虚偽の内容を含む捏造としか思えないものもあった。取材に来たテレビ制作会社に抗議したが、何の回答もない」と強い抗議が寄せられた 当該局に問い合わせたところ、「すぐに社内調査する。事実関係がわかり次第報告する」ということであった。
映画は、在日コリアンである監督自身の家族を10年にわたって追い続けたものだが、映画製作者側が最も問題にしていたのは、監督と朝鮮総連が対立的にあるように扱われたことだという。
しかし10日後、映画製作会社の代表から「放送人権委員会の仲介で当該局の番組責任者とようやく会えて話し合うことができた。放送人権委員会から声をかけられて初めて局が動いたということになるが、相手の態度に誠意を感じたので穏便にことを納めようと思う」と伝えてきた。またその翌日、局からも「監督の在日コミュニティーの中での立場が悪くなったとするならば、申し訳ない」旨の当方の反省を理解してもらい、和解した」との報告があった。

(2006.10.27放送 06.12.20解決)

「不審死幼児の母親と間違って報道され、退職を余儀なくされた」との訴え

10月、秋田県大仙市の浅い農業用水で不審死した4歳男児の遠縁という若い女性から「葬儀の際に、男児の母親(後に殺人容疑で逮捕)と間違われて、泣いている顔を正面から写されテレビのニュースで放送された」と訴えてきた。さらに当該女性の母親から「番組では“31歳の子持ち”とコメントされたが、娘は20歳代で来年早々に結婚を控えている。娘は興奮し、仕事にもいけない状態だ」と、苦情を申し立ててきた。
局側からは「すぐに訂正し、担当責任者がお詫びに行き、詫び状を手渡した」との報告があったが、その後、女性は退職を余儀なくされたという。
しかし、12月はじめになって、本人の父親から「娘の病状はだいぶ回復した。当該局の番組責任者が3度も秋田に来られ、謝罪をされ、誠意を感じるようになった。いかがすべきだろうか」との相談があった。BRC事務局から「局の誠意を感じるのであれば、和解されてはどうか」と伝えたところ、まもなく局側から「無事、和解・解決した」との報告があった。

(2006.10.00放送 06.12.00解決)

2005年度 解決事案

「プライバシーを侵害された」との苦情

8月中旬に放送人権委員会事務局に寄せられた訴えの概要は「居酒屋を今も営む85才の義母の半生を描いて<世のお年寄りに勇気を与える>という趣旨を説明され、それに賛同して家族はドキュメンタリー番組の取材をOKしたのに、放送では本人の奮闘だけでなく、自分たち子供夫婦や孫たちの他人様には知られたくない事実も描かれた」というもので、家族の一人が苦情を訴えてきた。
申立人は、「謝罪と再放送中止の確約」を求めるとともに、「自分たちが映っているテープの引渡し」を強く要求していたが、放送人権委員会事務局では「報道機関として、放送局が取材テープを局外に出すことはない」と説明し、テープ引渡しにこだわらずに話し合いを続けるよう勧めた。
その結果、局側も誠実に対応し「再放送や二次利用での番組販売等を行なわない」、10月末に当該番組の中で「事実関係において一部誤解を生じさせる表現があった」とする旨の字幕スーパーを放送することで双方が合意し、事案は和解・解決した。

(2005.8.14放送 05.10.19解決)

2004年度 解決事案

「盲導犬の世話を巡り、名誉を傷つけられた」との苦情

沖縄県のペット美容室経営者(男性)から、「ラジオ番組で、取材にも来ずに、自分がリタイアした盲導犬の世話をしていることについて、『それを“目玉”にして商売している』といった趣旨で紹介・放送された。犬の世話はあくまで純粋ボランティアでやっているのであり、出演者のこの発言は、自分の名誉・信用を傷つけるものであった。出演者から真意を聞きたい」との苦情があった。
この苦情を当該放送局に連絡したところ、「番組では、この経営者の活動を美談として放送したもので、経営者を誹謗・中傷する内容ではない。放送の責任はすべて放送局にあり、出演者は出せない」との報告があったが、放送人権委員会担当調査役から「誠意を持って話し合いを続けてほしい」旨を要請。
その後、再度、双方による話し合いが行われ、同経営者から「当該局幹部と出演者本人が家に来て弁解した。納得できない部分もあるが、出演者本人が来てくれたこともあり、これで矛を収めようと思う。ご面倒をおかけした」と放送人権委員会担当調査役に連絡してきたため、当該局にも確認し、斡旋解決事案とした。

(2004.10.2放送、04.10.19解決)

「被虐待児ドキュメントで子どもを無断撮影」との母親からの苦情

2004年8月に山形県の女性から、「ドキュメンタリーの番組宣伝を見て、児童施設に預けている4歳の長男が被虐待児の一人として撮影されたことを知った。あわてて当該放送局に放送をやめるように求めたが、映像処理を少し施されて結局、放送されてしまった」との苦情があった。
当該局は、「学園長に企画意図を理解してもらった上で撮影許可を得た。当該児童は2カットしか映っていないが、苦情に応えてモザイクを大きくした。放送後は何も言ってきていない」としていたが、女性はその後も、放送人権委員会事務局に対し「納得できない」と不満を訴えてきていた。
放送人権委員会担当調査役から再度、当該局に問い合わせたところ、9月に入って、当該局幹部が申立人と直接面談し、改めて企画意図を説明して了解を求めた。これに対し女性は「学園長の許可だけで、親の許可なく撮影したことは問題だ」と重ねて主張したが、新たに具体的なことは何も求めなかったという。
当該局から「この話し合いの段階で一件落着したものと考えられる」との報告がある一方、その後数か月間、抗議がないことから、12月21日開催の放送人権委員会に諮った結果、委員会としても落着したと判断することにした。

(2004.08.16放送)

「ヘリコプター・オーナーから“名誉毀損”」との苦情

2004年10月に大阪府の男性から、「ヘリコプターのオーナーとして取材要請に応じたが、虚偽の内容を放送され、名誉・信用を毀損された」との苦情があった。
当該放送局は、番組を紹介するホームページの中で、内容を訂正する措置をとったが、男性は納得しなかった。
放送人権委員会事務局から双方に話し合いを要請したところ、再度の話し合いが行われ、その中で局側が、内容を修正した番組を男性の出身地などで放送することを提案し、男性もこれを了承、解決した。

(2004.10.2放送、04.10.19解決)

「強引な取材でキスを強要された」との苦情

2004年12月に愛知県の女性から、「駐車していたところ、2人組のお笑いタレントの一人が無断で乗り込んできて、無理やりキスしょうとした。しかも、この一部始終をテレビカメラに撮影された。局側に抗議したら、放送しないと答えたが、問題の本質がわかっていない。こんな取材・撮影は絶対許せない。」との苦情があった。
放送人権委員会事務局から双方に話し合いを要請した結果、再度の話し合いが行われ、局側から「取材の行き過ぎ」を認め、謝罪するとともに、問題となったコーナー企画を即時打ち切る事などを提示した。女性側も「局が誠実に対応してくれたので了解した。放送人権委員会に感謝する」ということで、解決した。

(2005.1.6解決)

2011年 10月

中国・四国地区各局との意見交換会

今年度の「放送人権委員会委員との意見交換会」は、中国・四国地区のBPO加盟放送事業社を対象に10月4日広島で開かれた。広島では2005年5月以来6年ぶりの開催となり、前回の35人を大幅に上回る加盟14社・63人が出席した。委員会側は委員9人全員と事務局が出席した。また記者7人が取材に訪れ、テレビカメラ5台が入った。
当日は午後2時に開会し午後5時に終了の予定だったが、震災報道をめぐって議論が白熱したことから予定を延長して議論を続けた。このため、午後5時30分まで3時間半におよぶ長丁場の会議となった。

◆前半◆

  • 委員長冒頭挨拶
    堀野委員長は冒頭挨拶で東日本大震災と福島第一原発の事故に触れ、66年前に広島で起きたことが別の形で繰り返されたことは大きな悲しみだと述べた。この後、「放送人権委員会が発足して間もなく15年になる。この間39の事案で決定を出してきた。上記の震災など世の中の大きな変動の中で一人一人の人権を扱うことはミクロでマイナーなことと思われるかもしれない。しかし、報道は大局を正確に把握するとともに一瞬たりとも気を緩めてはならず、どんなに小さなことでも正しく公平・公正に伝え、国民に考える素材として価値あるものを提供していくことが任務だ」と指摘した。そして「我々が厳しい決定を出すことで放送局が自粛したり萎縮するとすれば、それは本意ではない。報道は日々の取材でもプライバシーや肖像権の問題が生じるし、不正や疑惑に切り込む調査報道では対象者の社会的評価を下げ、名誉にかかわる問題が生じることもある。それらを含め局は過ちを犯すことがある。しかしそれでも自粛してはならず、問題と正面から向き合い、自らの意図を正確に発信し、国民から支持を得るよう努めてほしい」と呼びかけた。
  • 東日本大震災報道について
    3人の委員が東日本大震災報道についてスピーチした。

    (1) 大石委員「被災地から考える~私が見て、感じたこと」
    私が最初に広島で取材を始めたのは1984年だった。86年にチェルノブイリの事故が起き90年に現地に入った。広島の被爆者たちはチェルノブイリの被災者を自分のことのように心配していた。当時、クレムリンは情報を伝えなかったため避難しない人が多かった。これまで何度か現地を訪れているが、病気の人は本当に増えているし、若い人が指で数えられないほど亡くなったという話も聞いた。
    いま福島で感じるのは報道が本当のことを伝えてくれていないのではないかという地元の苛立ちだ。なかには不安とストレスで眠れず自殺に追い込まれる人もいる。福島の人たちは見捨てられ棄民となっているのではないか。水俣でも感じ、広島や長崎の被爆者にも感じたのと同じことを福島でも強く感じる。
    ジャーナリズムで一番大切なことはどの立場に立って報道するかということだ。私は弱者の立場に立って伝えてほしいと思う。それは福島の人たちの立場に立つということだ。東電や政府の取材においても福島の人たちがどう思うかを常に考えながら伝えてほしい。
    報道の皆さんが寝泊りするところもない中で取材を重ねてきたことは本当にすごいと思う。目の前の悲惨な現実に何をどう伝えていいのか悩まれることもあると思う。その中で一番大事なことは被災した人の立場に立ち、その思いを共有していくことではないか。私も自分自身に何ができるかを考えながらそのことを深く突き詰めていきたい。

    (2) 山田委員「放送メディアの震災報道と被災者」
    ジャーナリズムは現実から逃げずに現実を直視し伝えることであり、想像力を働かせて番組を作ることだ。それが今テレビ・ラジオに問われている。
    テレビやラジオ、新聞等の伝統的なメディアは、最初は速報や一定の安心感の醸成、支援力の形成という点で大きな力を発揮したと思う。但しその後は政府等の公的機関の情報に頼らざるを得ず、”大本営発表”という批判を受けることになった。そこに従来型の取材報道体制への懐疑や批判が含まれていることが重要だ。
    たとえばあやふやな情報や凄惨な画像を流すとパニックになるので放送しなかったといわれている。アメリカの9・11の後にもエリートパニックという話があったが、視聴者は本当にテレビの情報を鵜呑みにしてパニックを起こすのか。それは局の驕りではないのか。改めて考え直してもよいと思う。また放送法第4条にある視聴者への多角的な論点の提示はできているか。たとえば政府は安心だとPRするが、それに対して安心と安全の違いを峻別し検証し伝えることが報道機関の役割ではないか。さらに被災者に寄り添う報道とはなにか。その言葉に放送局の自己満足はないか。最も困っている人、最も弱い人、あるいは東京発の情報に対抗できる地元の見方や意見をどう発信していくかが問われている。
    いま陸前高田市に行くと瓦礫の山は片付けられ、現地はきれいな草原となっている。その中でどう息切れせず、忘却せずに伝え続けていくか。そのためには覚悟が必要だ。中には被災者にとって不愉快で不都合な情報も入ってくるだろう。それも報道し切るという覚悟を持たなければ本当の意味で被災者に寄り添う報道はできないと思う。

    (3) 武田委員「原発報道とメディアへの一視点」
    私は事故の後は現地に行っていない。事故の後にしか行かないジャーナリズムに不満がある。ジャーナリズムは事故の前に現地に行くべきだった。たとえば事故直後、再臨界という言葉が飛び交ったが、知識を踏まえてその危険を伝えるものではなく、圧倒的に事故前の蓄積が欠けていた。いわば事故という抜き打ちテストに日本の報道は合格できなかった。
    地元と原発との関係、原発推進と反原発についても考えておくべきだった。両者の不幸な向き合い方が日本の原子力のリスクをむしろ高め、原発の事故率を高めてしまった側面がある。大本営発表等の批判についての検討も必要だが、事故前に日本の原子力をめぐる構造を分析し報道することができなかった、それがあの事故を招いたという意味でジャーナリズムには責任がある。この問題を考えないと後につながらないと私は思う。
    3・11以後の原発報道もいわば「東京目線」で行われてきたのではないか。たとえば原発の敷地外からプルトニウムが発見されれば大ニュースになる。しかし地元にとっては核種の如何以上に被曝するかしないか、これから生きていけるかが大事だし、避難すること自体がリスクになる人もいる。寄り添うとすれば、そうしたリスクを総合体として伝えないと原発報道は被災者のためにならない。そのあたりは反省すべき点が多い。
    日本のジャーナリズムには速報主義、事実主義、中立公正原則がある。しかし単に早ければよいわけではなく、戦前の原爆開発計画が報道され、原発と原爆の連続性が理解されていれば、日本の原子力史は変っていたかもしれない。またプルトニウムが検出されたという事実を報道するだけでよいのかという問題もある。中立公正原則をあえて踏み越えて寄り添い型の報道が必要な場合もある。
    3・11を経てこの3点を再検証すべき時を迎えていると思う。

◆後半◆

15分間の休憩を挟み、後半は「顔なし、モザイク映像の多用と報道の信頼性」「不正や疑惑の追及とその課題」、「東日本大震災報道」をテーマに委員と放送局出席者との間で意見を交わした。
このうち「東日本大震災報道」では、遺体映像について「日本のテレビでは遺体映像は出ていないが外国のメディアでは海に浮かぶ遺体の映像が流れたと聞く。どう考えるか」との質問が出た。
委員からは、「最初の3か月、半年という範囲では遺体映像を出す必要はないと思う。遺体映像がなくても今回は悲惨な状態についての情報の共有や共感できる絵作りはできたと思う」という意見に対し、「牛や豚が死んでいる映像だけでは真実は伝わらない。次世代にまで伝えるという点では、迫真のある映像を残すことをベースに且つ人間の尊厳を守っていくという観点からまず撮影し、そのうえでボカシを入れるかどうかを議論し、出すべきものは出すという方向性で行かないとメディアとしての意義はない」とする意見が出た。
また「欧米のメディアでは遺体を含むはるかに凄惨な画像が通常放送されている。それと日本での扱いとの間にあまりの段差がある。その理由は明確にし検証していく必要があると思うが、名前が特定できるとか親族には分ってしまう等の場合は別として、遺体であるから放送しないという一般的な原則が果たして有効かどうか、いま少し議論する必要があると考える」とする意見や、「広島の原爆の時も遺体写真がほとんどなかった。いま話を聞いていると66年前と全然変わらない、何を考えて私たちはここまで来たのだろうかと愕然とした思いだ。やはり撮らなければいけない、記録しなければいけない。それを記憶させていかなければいけないというのが私たちの仕事の宿命というか使命だ。そういう映像を撮らなくて済むようになることは大事だが、やはり記録のために撮っておくことは大事だと思う」という意見も出された。
堀野委員長は「原爆の時の黒焦げになったモノクロ写真や東京大空襲の際のおびただしい遺体のモノクロ写真は残っている。もう二度と戦争はいやだという思いはそのような写真を見ることでも継承されていく。災害でも同じことだと思う。特に人災が含まれる災害での死は後世に伝えるべき極めて大きな問題だ。それこそメディアの責任ではないかと思う」と述べた。

2010年 9月 

在京地区各社との意見交換会

放送人権委員会は、9月21日の委員会終了後、在京局のBPO連絡責任者との意見交換会を千代田放送会館会議室で開催した。相互理解を深め委員会活動に資する目的で、在京のテレビ、ラジオキー局とNHKから11人、委員会側から9人の委員全員と事務局メンバーが出席した。

堀野委員長は席上、放送倫理と委員会の決定について次のように述べた。
「放送人は、人の心の痛みに対する配慮が基本になければいけないと感じている。放送人に驕りがあってはいけない。放送倫理とは、つき詰めれば、うその放送で人を傷つけてはいけない、表現の仕方で傷つけてはいけないということだ。放送倫理がすべてどこかに書いてあるわけではない。例えば放送倫理基本綱領があるが、あらゆる場面に適用されるような放送倫理はない。聴く人、見る人、取材を受けた人、放送に参加した人たちの心の痛みを思いやる気持ちがあるかどうか、これが放送倫理だと思う。 委員会の決定を受けた局は現場を含めてもっとディスカッションしてほしい。決定のこの点が不満だ、もう少し突っ込んで議論したいといっていただければ、私どもも議論に応じたい」。

この後、事務局から、今後の委員会活動として、毎年開いている各地区別の意見交換会を、今年は北海道の局を対象に12月初めに札幌で開催すること、これまで出された36事案・45件の「委員会決定」を網羅した新しい『判断基準2010』の編集を進めており、11月に発行するので活用してほしいこと等を説明した。
また、本人の知らぬ間に本人の映った映像が放送で流れ、それにより権利侵害を受けた可能性があるので局に放送の視聴を求めたところ断られたとの相談が事務局に寄せられることを紹介し、こういう場合はできるだけ視聴させることが望ましいという委員会の見解が出ている(2001年2月20日)ので、系列局にも伝えてほしい旨要請した。

意見交換では、「委員会決定」を公表する記者会見の場で、当該番組の映像を公開できないかどうかについて意見を出し合った。
局出席者からは「事案を理解してもらうために見てもらった方がいい。各局の合意が必要だが、個人的にはそう思う」、「出さないのが大原則だが、客観的に判断するには見ないと分からないものもある」、「放送目的外の使用には絶対反対だ」、「人権を侵害されたという申立人は、世の中に二度と出してくれるなという気持ちだ」などの意見があった。

委員からは「テレビは見た感覚が大事だ。『委員会決定』の先例を文書で扱うだけでなく、例えば映像ライブラリーにストックして関係者が検証できるようにするなど検討すべきだ」、「年一回程度の研究会でみんなで勉強しようというときに、提供してもらえる映像素材があればいい」等の意見があった。

このほか、委員会審理の進め方や決定文の書き方、各局での決定の周知法などをめぐって意見を交わした。
在京局のBPO連絡責任者との意見交換会は2004年以来で、今回が5回目となったが、約2時間にわたって自由かつ活発な意見交換が行われた。

2009年 12月

九州・沖縄地区各社との意見交換会(開催地:福岡)

12月2日 、福岡市内のホテルにおいて、「放送と人権・放送倫理」をテーマに、放送人権委員会の全委員が出席して、九州・沖縄地区の放送局との意見交換会を行った。
委員会は年に1度、地方ブロック単位で意見交換会を実施しているが、九州ブロックの開催は2002年以来7年ぶり2回目。各局からは、これまでの意見交換会参加者を大幅に上回る31 局 86人が集まった。

局とBPOは”辛口の友人”で

意見交換会では、はじめに堀野紀委員長が基調講演した。
この中で委員長は、「報道・情報番組は真実に切り込む勇気と気概を持って欲しい、また同時に正しい意味での緊張感を持って制作して欲しい。委員会にあがってくる問題を見ると、報道が病気にかかっているのではないかと思う。そうでなくても、放送局が “未病 “、健康でない状況にあると感じる。 報道が病気にかかると国家が介入しようと出てくる ことになる。表現の自由を守り、政治の介入を招かないことが大事であり、番組の正確性と人権に関しては厳しい自覚を持って制作して欲しい。
BPOは局に対し厳しい意見を言うこともあるが、これについてはどんどん局も発言して欲しい。お互いが”辛口の友人”の関係でありたいと思う」と語った。
続いてこの1年間に出された5件の「委員会決定」について事務局からその概要を説明し、「決定」を起草した委員を中心に、そのポイントや問題点などを具体的に紹介した。その中で、この1年間はとくに事案が多く寄せられ、すでに5件の委員会決定が出されたが、 「勧告」という厳しい決定が相次いでおり、放送局側が真剣な対応を迫られているとの説明があった。この後は、現在の放送の抱える問題から、「裏付け取材の必要性」「訂正放送のあり方」「匿名映像の多用」にテーマを絞って、委員と参加者の間で活発な意見交換を行った。

「裏付け取材」=複数の確認を

まず「裏付け取材の必要性」では、今年7月30日、放送倫理検証委員会が勧告を出した、日本テレビ『真相報道バンキシャ!』を例にあげた。勧告では裏付け取材に関して、「募集サイトであれ、電話やメールや手紙によるものであれ、本来視聴者からの情報は、取材調査の入り口に過ぎない。そこをきっかけに、当事者や関係者を直接取材し、裏付けを取り、可能な限り確実な事実を描いて行くことが、制作スタッフの仕事であろう」と厳しく指摘している。
これについては参加局から、「『バンキシャ!』のような取材の し かたは考えられない」「複数人の確認が基本だ」「裏付けのとれないものを報道することへの”怖さ”を大事にすべき」といった声が出された。
また、裏付け取材の不足による問題として、「隣人トラブル」などの放送について事務局から報告した。とかく被害・迷惑を受けたという人からの情報に偏り、相手の話を聞かないまま放送し、その人から「一方的な放送だ」と訴えられるケースが多く、放送人権委員会の33件の事案の内5件もが、こうしたケースだったと説明された。これに対し委員から、「ある問題についての解釈とか評価を行うと、当然のことながら、それとは異なった物の見方、あるいは解釈があり得るはずだ。そのことは局の中でオンエアする前に、 十分議論していただきたい」との注文があった。

「訂正放送」も番組の一部

続いて、『バンキシャ!』やTBS『サンジャポ!』の「保育園事案」でも大きなテーマになった「訂正放送のあり方」について話が移った。両番組とも、誤った内容を報道された当事者から求められて訂正放送を行ったが、「何を誤ったのか、正しくは何だったのか」がよく分からず、「お詫び」としても不足で、結果的に当事者を納得させられていない。
こうしたことから「保育園事案」の決定では「訂正放送の趣旨」として、以下の4条件をあげた。

(1) 視聴者一般に対し、放送の誤りを知らせ、正しい事実を伝える。
(2) 視聴者一般に対し、誤報があったことをお詫びする。

そして、その放送によって被害を受けた者がある場合には、

(3) これらを通じ、当事者に対し、お詫びの気持ちを伝える。
(4) 同時に、当事者が受けた被害(例えば名誉毀損や名誉感情の侵害等)について社会的に回復する効果を生む。

これについて、放送局側に「(3)(4)を条件とされると、当事者とのやりとりがたいへん難しくなる」と心配する声があることから、この決定を起草した委員は、「その当事者に対し、放送外も含め何らかの補償をするとか、直接会いに行ってお詫びをするとか、いろんなことをされるだろう。その中の1つとして、訂正放送を通じて、その当事者の気持ちの回復が図られればよりプラスになる。訂正放送の際には、基本の2条件にプラスして、(3)(4)により、当事者に放送を通じてお詫びの気持ちが伝わり、名誉感情が回復されるならばベストだろうと思う。このことをもう一度局内で話し合って欲しい」と語った。
また、現状の訂正放送のやり方について複数の委員から、「往々にして、番組終了直前に局アナの顔出しだけで放送されることが多い。フリップやVTRなども使って、普通の番組と同じように工夫して出してはどうか」「訂正放送の価値を積極的に捉えるような姿勢も必要」といった提案もあった。

「匿名映像」の多用にブレーキを

最後に、最近インタビューなどの際に 使われている「匿名映像」( 顔無し、モザイクなど)の問題が話し合われた。
過去の「委員会決定」では、「匿名やモザイクの使用は、重要な証人や、重大な事件現場で、被害が及ぶ危険がある時や、関係者の名誉、プライバシー等を著しく侵害する恐れがある場合などでは、必要な方法の1つである」ということを言っている。しかし、「取材不足を補う便法として、これを安易に用いることは、調査報道の本質に反し、ジャーナリズムとしての姿勢が疑問視されかねない」などとも指摘している。
この「匿名映像」が増えている現状についてある委員は、「たとえば公園で子どもがいて、かわいいから撮ろうと思っても、どこかからお母さんが飛んで来て、”撮らないでください!”と言われること をよく経験する。取材される人が顔を出すことを拒否することが多く、モザイクも首なしも、当たり前という現状になっている。これは行くところまで行って、『これじゃあ伝わらない』と皆が気づき、 はじめてやめようということになるのではないか」との認識を語った。
これに対し局側からは、「現場には、何とか説得して顔出しでインタビューをとるよう指示しているが、一般の人の意識も変わって来ていて、なかなか歯止めが効かない」
「『取材対象者との対話・説得には絶対手を抜くな』 というのを 持っておかないといけない」といった声 があった。
さらに委員からは、「放送は公益的なもの、公共的なものである。そういう放送に協力することで、ある種の社会的使命を果たすという認識を被取材者が共有すれば、状況は変わ る 。それが共有されていない現実があること を、作り手側はある程度問題意識として持たなくてはいけない 」「よほど合理的な理由がない限り、個人の名前と顔は、きちんと表に出してメッセージを発すべきものだという理解を、国民的なレベルで持つことが大事で、それを強調するのが、テレビの役目ではないだろうか」といった声が出された。
また「名誉毀損することは普通は違法だが、名誉を毀損する事実を報道しても、その報道に価値があれば許されることが、憲法的価値として認められている。せっかく認められているのに、メディアの側が安易にモザイクや首なしの映像にすることは、事実を事実として流さなくても良いと言っていることにもつながる。だから、『目撃証言では顔を出してもらわないと価値がない』と被取材者に一生懸命説得して欲しい。安易に首なしやモザイクにしたら、『 別に出さなくていいですね』と裁判所も思うことになる。そう なると 永遠に後退する から、 メディアの方にがんばっていただきたい」などと、局に対する激励の言葉が続いた。

2008月 11日

中部地区各社との意見交換会(開催地:名古屋)

11月11日、放送人権委員会委員と中部地区会員各社の報道・制作責任者等との意見交換会が名古屋で開催された。
今回の意見交換会は地方開催としては8回目、東京開催を含めると12回目となる。意見交換会には、中部地区のラジオ、テレビ44社のうち26社が参加し、BPOの連絡責任者のほか報道、制作現場の責任者等これまでの意見交換会では最も多い52名が出席した。放送人権委員会からは、竹田委員長、堀野委員長代行、五代委員長代行、右崎委員、武田委員、中沢委員、三宅委員、山田委員の8名が出席し、また事務局から役員2人を含む9名が参加した。
今回は特に最近の報道、制作現場が抱える放送倫理上の問題点や課題について、具体的なテーマに沿って意見交換を行った。
冒頭、竹田委員長が「放送倫理について」と題する基調講演を行い、続いて上野統括調査役が、最近の放送人権委員会の活動報告を行った。
この後、今回のテーマのひとつである「隠し撮り」の問題に入り、局の参加者からは、「隠しカメラは原則として使用してはならないとあるが、重大事件における強制捜査の前の、被疑者の映像取材を行うことはよくあるし、また最近の『振り込め詐欺事件』など対象に接近していかないと、実態を描けないものまで原則として使用すべきでないと言うことなのか」との質問があった。これに対し、堀野委員長代行は、「一般にえげつないとされている取材方法について、その取材によっていかなる真実が明らかにされ、その真実が社会的にどの程度重要な問題であるか、公共性、公益性においてどれだけ明らかにする必要があるかなどとの相関関係で考慮していくべき」との考えを示した。
次に「匿名映像」のテーマに移り、インタビューで、首から下の映像や、顔にボカシをかけた映像が増えていることについて意見を交わした。委員からは、「人権への配慮でそうしなくてはならないケースがあることは分かるが、極力顔を出して話してもらわないと、証言の信頼性を損なう」などと改善を求める意見が出された。これに対し局側からは「匿名映像は、事故関係ではあまりないが、学校関係の不祥事などではよくある」、「顔出し映像によるその後のトラブルを避けたいという意識が進んでいるのでは」、「できるだけ顔出しでの放送をと心がけているが、取材現場では顔出しでは応じてもらえないことがあり、放送までの時間的制約もあって匿名映像となることもある」などの報告が出された。また撮影後に、「顔を出して放送しても良いですか?」と局の人間が確認するケースもあるという声もあった。

2008月 10日

テレビ局の現場視察と意見交換会(訪問局:TBS)

放送人権委員会では10月14日、TBSの夕方の報道番組「イブニング5」(16:52~18:55放送)の放送現場や報道局内を視察するとともに、番組終了後、委員と番組スタッフとの意見交換会を行った。
委員9名のうち8名が参加し、生放送中のスタジオ、報道セクション、編集ルーム等を見学・視察したあと、放送を終えたばかりの「イブニング5」キャスター三雲孝江さん、コメンテイター杉尾秀哉さん、番組制作スタッフとの間で意見交換の場を持った。
意見交換会では、放送倫理や人権に関わる問題などが活発に話し合われたが、中でも、最近インタビューなどで、いわゆる匿名映像(顔なしやぼかしなど)が多い点について局側から、「取材される側がそうした要望を出すことが多く、これに対し、取材者が粘り強く交渉しないまま妥協してしまっている面もある。何とかしなくてはいけないがジレンマを感じている」との声もあった。

2007年 12月

『放送人権委員会10周年フォーラム』(開催地:東京)

放送人権委員会は、1997年5月の委員会発足から丸10年を記念して「放送と人権~放送倫理の確立を目指して」をテーマに、『放送人権委員会10周年フォーラム』を12月5日、東京・千代田区の全国都市会館で開催した。全国の民放・NHKの放送関係者を中心に約250人が集まった。
第1部は竹田稔委員長による基調講演「放送による人格権侵害と放送倫理」。
竹田委員長は、特に表現の自由と名誉権やプライバシー侵害との調整について、「その報道が公共の利害に係り、公益を図る目的でなされ、報道された事実が真実であると証明されるか、もしくは真実と信ずるについて相当の理由がある場合は故意・過失はなく、不法行為は成立しない」とした昭和41年の最高裁判決が、表現の自由と人格権侵害の調整の法理として指導的に機能してきており、その意義は大きいと述べた。そのうえで、「放送はいまや国民にとって最も身近なメディアであり、その社会的影響力は極めて大きい。放送事業者は民主主義社会の基盤である表現の自由の担い手として、自ら社会的責任を全うするため、放送のあり方を問われている」と述べ、関係者の自覚を強く促した。
第2部は、「放送は市民を傷つけていないか」「取材・編集・OAに当たっての放送倫理」というテーマでのパネルディスカッション。読売新聞編集委員で長らく放送を担当している鈴木嘉一さん、ジャーナリスト江川紹子さん、NHK及び在京民放テレビの関係者らがパネリストとして出席し、放送人権委員会の三宅弘委員をコーディネーターに活発な意見交換を行った。
討議では、隠しカメラ・隠しマイクによる隠し撮りと、モザイクや顔なしインタビューの多用が大きな話題となった。この内、隠しカメラ・隠しマイクについては、原則的には使用すべきでないとしながらも、毎日新聞の「旧石器発掘捏造報道」や、大阪MBSによる「大阪市役所のカラ残業報道」のように、隠し撮りの効用を評価する声も多かった。そして、隠し撮りが不可欠なケースもあるのだから、「一切ダメ」というのではなく、取材をした上で、それをどう出すかをしっかり考えるなどフォローが重要だとする意見もあった。
また、最近は、事件や事故現場でのインタビューでも、モザイクや顔のない映像が多用されていることが問題となった。放送人権委員会は過去の事案で、対象者が被害を受ける可能性のある場合などは必要な手法の一つだが、安易な使用は報道の真実性を疑われることになり、原則としては避けるべきであるとする判断を示してきた。これについて、パネリストの間から「取材する側もされる側も安易にこの手法を受け入れており、いわば覚えてしまった状況にある」と現状を指摘する声があった。そして、NHKの「ワーキングプア」のように、顔出しの放送に結びつける取材者の努力が改めて求められるとの結論となった。

2006年 11月

関西地区各社との意見交換会(開催地:大阪)

11月28日、放送人権委員会委員と近畿地区会員各社のBPO連絡責任者等との意見交換会が大阪で開かれた。今回の意見交換会は地方開催としては7回目で、東京での開催を含めると11回目となる。
「意見交換会」には、近畿地区のテレビ、ラジオ局12局からBPOの連絡責任者、あるいは報道・制作現場の責任者等、これまでの意見交換会では最も多い40名が参加した。一方放送人権委員会側からは、竹田稔委員長、堀野紀、五代利矢子両委員長代行、右崎正博委員、中沢けい委員、三宅弘委員の6名と事務局から6名が出席し、最近の制作現場が抱える放送倫理上の問題点や課題等について意見を交わした。
冒頭、竹田委員長から、10年間近くにわたってこれまで果たしてきた放送人権委員会の役割と今後の課題について基調報告があった。この中で竹田委員長は、「見解」、「勧告」を受けた後の当該局の対応について「これまでの対応は、満足出来るものであったが、一方で何度も審理対象になっている局があることも事実である。今後一層どのように改善策をとったら良いか、各局で考えて実行していって欲しい」と述べた。また放送人権委員会事務局からは、最近の苦情傾向として「メディアスクラム状況に対する抗議」や「モザイクがかけられていたが地域社会ではすぐに特定された」「隠しカメラで無断撮影された」等の苦情が増えているとの報告があった。
この後、意見交換に移り、まず委員会決定を受けた当該局から、その後の対応等について報告があった。その中で局側の担当者は「隠しカメラ、マイクの運用面について現実の問題としてどのように考えていったら良いか、頭を悩ましている」と実情を述べた。これに対し委員からは「隠しカメラ、マイクは原則として使用すべきではない。場合によって公共性、公益性との比較衡量上例外的に認められるというものではないか」との説明があった。
最後に放送局側から、放送人権委員会の審理と裁判との関係について、「これまで放送人権委員会で審理した後、裁判になる事例がある。止むを得ないと思うが、なにか腑に落ちない。歯止め的なものはないのか」との質問があった。これについて竹田委員長は、「裁判制度と放送人権委員会の制度自体が存在基盤を異にするものであり、運営規則第5条の『裁判で係争中の事案は取り扱わない』との規定が、今のところ放送人権委員会として出来る限度だ。放送局側の言わんとすることは重々わかるが、放送人権委員会の存在意義を理解して頂き、協力をお願いしたい」と述べ、大阪での意見交換会を終えた。

2005年 11月

東北地区各社との意見交換会(開催地:仙台)

放送人権委員会委員と東北地区会員各社のBPO連絡責任者等との意見交換会が11月29日、仙台で開催された。今回の意見交換会は、大阪、名古屋、福岡、札幌、中・四国地区に次いで地方での開催としては6回目、東京での開催を含めると10回目となる。
意見交換会には、東北地区のテレビ・ラジオ局18局(NHKは仙台局と東京から出席)から、BPOの連絡責任者、あるいは制作現場の責任者等32名が参加した。一方放送人権委員会側からは、飽戸弘委員長、竹田稔・堀野紀両委員長代行、五代利矢子・右崎正博・中沢けい・渡邊真次各委員と事務局が出席し、昨今の制作現場が抱える放送倫理上の問題点や課題等について意見を交わした。
冒頭、飽戸委員長から、これまで9年間に亘って放送人権委員会が果たしてきた役割と、放送人権委員会が抱える課題について基調報告があった。この中で飽戸委員長は、特に放送局への期待として、「放送人権委員会は報道の自由を守る機関であって、その放送人権委員会の決定をきっかけに反省と改革の出発点としてもらいたい」と強調した。
続いて、「放送人権委員会判断基準2005」の発刊について、監修をつとめた右崎委員が内容と利用方法について説明し、「放送局の皆さんにはこの『判断基準2005』を人権問題に関する重要指針として受けとめて頂きたい」と述べた。また放送人権委員会事務局からは、最近の苦情傾向として、「幼児、児童、学園内の取材と撮影に関する保護者からの抗議」や「性的少数者や難病患者の扱いに対する苦情」、「警察発表に基づく報道への抗議及び訂正要求」等が増えてきているとの報告があった。
この後、意見交換に移り、放送局側から、「福知山線の脱線事故でみられたように、個人情報に関連して取材側と取材される側とが実名公表をめぐってもろにぶつかった場面が見られたが、このような場合、報道現場ではどのように対応していったらいいか」という質問があった。
放送人権委員会委員側からは、「基本的には実名報道が望ましいが、事故報道の場合、被害者あるいは家族の心の痛みに配慮した報道も必要ではないか」、「事件事故によって被害を受けている人が報道によって更に被害を受けることは避ける必要があるが、現在は警察まで実名を発表しなくなってきているように行き過ぎた状態になっている。このような中、報道する側はどこにポイントを置いて報道するのか考える必要がある」等と答えた。
最後に、委員から放送局側に対して「テレビが大きい力を持っていることを自覚するとともに、放送される側への思いやりを持って欲しい。放送のプロとして自覚と誇りを持ってがんばってもらいたい」との激励の言葉があり、仙台での意見交換会を終えた。

2003年度 解決事案

「白装束集団とは無関係」との苦情

情報番組に対して、宗教法人「GLA」から苦情申立てがありました。内容は、「白装束集団に関して報道した際に、白装束集団の代表者がかつてGLAに所属していたなどと報道したが、そのような事実は全くない。GLAが白装束集団と根本において同一であるかのごとき印象を与えるのは、まことに迷惑であり、事実無根の報道に対して訂正・謝罪を求める」というものです。
これに対して当該局は、「放送中にGLAから訂正要求の電話があったが、事実に間違いはない」としています。双方に話し合いを求めた結果、当該局から、「GLAの広報担当者と話し合った結果、白装束集団の代表者が、過去にGLAにいたことが事実だとしても、現在は何の関係もなく、今後この問題を取り上げる際には十分注意することを約束し解決した」との連絡があり、事務局でGLA側にもこの旨を確認し解決しました。

(2003.05.03.放送、05.09解決)

「リフォーム番組で悪質業者の烙印」との苦情

岐阜県の建築業者から苦情申立てがありました。内容は、「悪質リフォーム業者の特集番組の中で、自分の父親がリフォームした家が『欠陥住宅』として取り上げられた。放送に当たって当方への取材は全くなく、相手方の主張だけで番組が作られてしまった。番組を放送した局に抗議したところ、制作したのは東京のキー局だと言われ、制作局に抗議したが、『欠陥住宅だから放送しただけ』との回答であった。この放送で父は「悪質業者」の烙印を押されてしまい、仕事にも支障をきたしている」というものでした。
当該局との話し合いがほとんど行われていないため、事務局から当該局に苦情の趣旨を伝え、対応を要請しました。
当該局プロデューサーが苦情申立人に、放送内容と放送意図をあらためて説明、遺憾の意を表明し、今後、当該番組で、同じ映像を使用しないなどで合意しました。

(2003.05.26放送、07.02解決)

「ドラマの台詞で、ショートステイを”姨捨山”に喩えた」との苦情

栃木県の男性(53)から苦情申立てがありました。内容は、「ドラマの台詞で、介護を受けている老人が刑事からアリバイを問われて、『おれは、ショートステイ(老人ホーム)という姨捨山にいた』という表現があったが、これは差別ではないか。当該局に抗議したが『問題ない』とのこと。なんとかならないものか」というものです。
事務局が当該局に苦情の趣旨などを伝えたところ、後日苦情申立人から、「担当プロデューサーとの話し合いで、その台詞の部分は事実上再放送しないなど納得できる回答があった」との連絡があり解決しました。

(2003.06.24放送、07.03解決)

「写真が無断で使用された」との苦情

大阪の男性からの苦情で、「6月に放送された、精神障害者の社会復帰を目指す番組の中で、仲間と一緒に私が写っている8年前の写真が断りもなく使われた。その後仲間とは、立場や考えが変わり、一緒の写真を使われて非常に迷惑している」というものです。
当方から、当該局に苦情の趣旨を記した文書送る一方、苦情申立て人の相談に応えて、放送局側との話し合いを勧めました。その結果、局側が、無断での写真使用を陳謝する謝罪文を出し、決着しました。

(2003.06.07放送、08.29解決)

「話の内容をねじ曲げられた」との苦情

神奈川の女性から、「情報番組のインタビューに応えて、娘とのトラブルを話したところ、話の内容を再現映像でねじ曲げて放送され、私自身も悪者扱いされた。放送での謝罪や訂正を求めたい」との苦情がありました。
当該局に「苦情連絡票」を送り、対応を求めた結果、番組担当者との話し合いで苦情を申し出ていた女性は、「怒りも収まった」ということで、決着しました。
今年度5件目の斡旋解決です。

(2003.10.23放送、11.11解決)

「一方的な取材で・ドクハラ・として放送された」との苦情

精神科医(苦情申立人の代理人)から報道番組への苦情で、「精神科医がドクター・ハラスメントで取り上げられた。患者からの一方的な取材によるもので、当該放送局に抗議をしたが、納得できる回答は得られていない」というもの。
上記代理人から、放送人権委員会に「斡旋」をお願いしたいとの申入れがあったので、当方が当該局にその旨「苦情連絡票」を送付。話し合いが2度ほど行われ、その結果「精神科医療特有の治療の難しさを理解するためにも、今後も懇談の機会を設ける」ことで双方合意した。

(2003.5.20放送、12.1解決)

「自分は欠陥住宅とは判断していない」との苦情

大阪の男性から情報番組への苦情で、「11月の初め、プロダクションのディレクターとの打ち合わせで、報道番組で欠陥住宅の論評をし、警鐘を鳴らしてもらいたいということだったので、番組に出演した。当該局の担当者は立ち会っておらず、当初の話と違うので、収録部分の削除などを要求したが、連絡もなくそのまま放送された。住宅の検査結果には法的なミスはなかったにもかかわらず、放送では欠陥まみれと言われ、私にも多数の電話があり迷惑している。当該局に抗議したところ、『時間的余裕がなく削除できなかった』というFaxが来た。訂正を求めたい」というもの。
当方が、当該局に話し合い解決を求めたところ、当該局のプロデューサーが、苦情申立人を訪ね(大阪)話し合い、「欠陥住宅」についての認識に差異があり、事前にその溝を埋めておくべきだったことを双方が確認、当該局が、今後、同様の企画の際に協力要請をすることを約束して解決しました。

(2003.12.1放送、04.2.12解決)

2002年度 解決事案

「娘を暴行被害者と誤認報道」母親からの苦情

「強盗傷害事件の被告に対する論告求刑(懲役12年)を伝えたニュースの中で、自分の娘が暴行事件の被害者であるかのように放送された。このような報道で、また、娘や家族が大きなショックを受けている」との苦情。
当該放送局は訂正放送を実施したが、母親の了解を得られず話し合いが続けられた。2002年6月になって、今後、被害者の立場、気持ちに最大限配慮した報道をすることを約束する合意書を交わし解決した。(山梨)

(2001.11.08 放送、2002.06.05 解決)

バラエティー番組出演者から 放送中止の訴え

「美容整形をテーマにしたバラエティー番組に、パニック症候群で通院している娘が出演することになったが、番組の予告を見て娘の病気への影響が心配になった。放送を中止してほしい」という両親からの訴えがあった。番組責任者と本人、両親が話し合った結果、放送局側が、本人や家族の気持ちを配慮して出演部分を全面的にカットすることを決め、解決した。(東京)

(2002.06.28 放送予定、06.26 解決)

「約束無視の放送」と情報番組に苦情

営業担当の会社員から「仕事を終えてからゲームセンターで遊んでいるところを撮影され、『顔は出さない』との約束を無視して放送された。自分は放送を見ていないが、得意先などで『放送に出ていた』などと言われ、仕事をサボって遊んでいるかのように受け取られ迷惑している」との苦情があった。本人が放送テープを確認したところ、本人が考えていたほどの明確な映像でなかったこと、局側が改めて迷惑をかけたことを謝罪する文書を出すことで解決した。(大阪)

(2002.04.26 放送、07.05 解決)

「不登校児ドキュメント」保護者からの苦情

「不登校になった小学校5年の娘が通っているフリースクールを取材したドキュメンタリー番組が放送された。スクール側は生徒の実名、顔などは出さないよう要求したが、放送では自分の娘だけが何の映像処理もされずに、悪いイメージで放送された。このため放送後、子供は登校しなくなってしまった」との苦情が保護者からあった。保護者と放送局の責任者が会い、局側が家族を傷つけたことを謝罪、今後、不登校問題を番組で継続的に取り上げて行くことを約束し解決した。(大阪)

(2002.05.31 放送、07.12 解決)

「レズビアンは怖い」発言でトーク番組に苦情

「男女のタレントが司会するトーク番組で、女性が”最近、私にレズ説があるの。女の子に誘われて行ったら、大変怖い思いをした”と発言、それを受けて男性が”怖いなー、そんな人おるで、この頃。ちょっと隠さなあかんのとちゃうの、あんなん”とレズを冒涜する発言をした」との苦情があった。当該局に連絡し対応を要請した結果、1月10日に当該局から、「性的マイノリティーの人権、心情に配慮が足りなかったことを認め、再放送に当たっては不適切な部分を削除することを約束し解決した」との報告があった。(大阪)

(2002.12.20 放送、2003.01.10 解決)

「バラエティー番組でプライバシーの侵害」との苦情

「6~7年前に19歳の息子が交通事故で死亡した。死んだ息子の恋人が、バラエティー番組の霊能企画に出演し、息子の写真、墓などの映像を映しながら、息子との関係、現在の気持ちなどを話した。この中で霊能者が『交通事故で死亡したのは親の愛情が足りなかったからだ』などと無責任なことを話した。この放送に妻が怒り、テレビ局に抗議した。放送に当たって放送局から何の連絡もなく家族のプライバシーが侵害された」との苦情があった。当該局に連絡し対応を要請した結果、2月5日に当該局から、「1月に同じ番組で謝罪放送を行い解決した」との連絡があった。

(2002.11.27 放送、2003.02.05 解決)

「トークバラエティー番組で名誉毀損」との苦情

「番組で作家募集をしていたので応募した。オーディションを受けて、自宅などを撮影された上で、11月28日に放送された。この放送はひどいもので、私の顔と部屋が映し出される中(3分)で、応募した短編の説明をしだすと、司会者らが”おたくだ””危ない”などと連呼し、自分を笑いものにした。当該テレビ局の担当者に会って抗議したが、司会者らの謝罪には応じられないということだった。作品を読んだ感想もなく、番組の中でただ袋叩きにされたようなもので、これは個人に対する中傷、侮辱であり人権侵害である」との苦情があった。
当該局に連絡し対応を要請、当事者間の話し合いが行われた結果、2月初めに当該局から「謝罪放送を実施し解決した」との連絡があった。(札幌)

(2002.11.27 放送、2003.02.05 解決)

「無断撮影・放送で名誉毀損」の苦情

昨年8月24日に放送された在阪テレビ局のバラエティー番組に対する大阪の主婦からの抗議は、今年3月に当該局が謝罪放送を実施し解決しました。
抗議の内容は「スーパーで買い物をして出てきたところを、女性アナウンサーに声をかけられたが、急いでいたので断った。このとき撮られた映像が、断りもなくバラエティー番組で放送され、『大阪のおばちゃんはこんなに怒っている』という音声とともに、アップにした顔に”怒りマーク”が付けられていた。放送局に抗議したところ、局は今年1月の検証番組で一方的に謝罪放送を行ったが、自分としては同じ番組での謝罪を要求しており納得できない」というものでした。
事務局から当該局に苦情の趣旨を伝え対応を要請した結果、この3月に当該番組で謝罪放送が行われ解決しました。今年度8件目の斡旋解決事案になりました。

(2002.08.24 放送、2003.03.25 解決)

2005年 3月

中国・四国地区各社との意見交換会(開催地:広島)

放送人権委員会委員と中国・四国地区の放送局のBPO連絡責任者等との意見交換会が3月7日、広島市で開催された。地方での開催は、大阪、名古屋、福岡、札幌に続いて5回目で、東京を含めると9回目となる。
意見交換会には、両地区のラジオ・テレビ22放送局(民放20局、NHKは広島と東京)から、BPO登録代表者や連絡責任者ら32人が参加。飽戸弘委員長、竹田稔・堀野紀両委員長代行のほか、右崎正博、五代利矢子、中沢けい、渡邊眞次の各委員、それに事務局が出席して、報道・制作現場が抱える人権や放送倫理上の課題について意見交換した。
冒頭のスピーチで飽戸委員長は、最近のテレビメディアを巡る社会環境の変化を具体的に指摘した上で、「今こそ、放送局側が”自主・自律”を成功させなければならない。放送人権委員会は、そのための”報道の自由を守る機関”である」と強調した。
この後、放送人権委員会事務局から最近の苦情の傾向として、「顔出しやモザイクを巡る人権侵害の訴え」や「取材不足や構成・演出・編集によって事実を歪曲されたとの抗議」、「児童施設等の取材・撮影に関する保護者からの抗議」が増えていることなどを報告し、これを受けて参加者との意見交換に入った。
意見交換ではまず、広島県のテレビ局から、「女子高生殺人事件で集団的過熱取材を避けるため、地元の編集責任者会議で協議したが、代表取材で真実追求ができるのか」などの悩みや苛立ちが報告された。また、愛媛県のテレビ局から、「キー局に素材送りした映像が不適切な編集によりネット放送され、地元市民から慰謝料を要求されたトラブルでの苦情対応の難しさ」が紹介されるなど、具体的事例に沿って委員との間で活発な質疑応答が行われた。
さらに委員側から、「真実でない放送によって権利を侵害された場合の放送法に基づく訂正放送請求権は私法上の権利とは認められない、とする最高裁判決があった。これにより今後、放送局は、放送法上の訂正放送をするか否か、自律的・自主的に対応することが求められることになり、その責任はますます重くなった」との指摘があった。
最後に、飽戸委員長ら各委員が、「現場の人たちから、具体例を挙げて取材・報道上の悩みや苦情対応の難しさに関する話が聞けて、大いに参考になった。
また、参加各局には放送人権委員会の機能・役割をより理解してもらえたと思う」と感想を述べた。

2004年 11月

在京地区各社との意見交換会(開催地:東京)

放送人権委員会委員と在京テレビ・ラジオ局のBPO連絡責任者との意見交換会が11月16日、東京で開催された。昨年4月に委員長と5人の委員が交代して以来、初めてとなる会合には、飽戸弘委員長はじめ8人の委員全員と、在京各局から10人の連絡責任者(代理を含む)が出席した。
冒頭、飽戸委員長が、「放送人権委員会は判決を下す裁判所ではない。皆さん放送事業者が自ら設置した、自主自律のための機関であって、(表現の自由に対する)権力の介入を防ごうとする機関だ」と、改めて放送人権委員会の基本的な機能を強調。あわせて、「放送人権委員会から『委員会決定』という形で問題が提起された際は、当該局だけでなく、全局の皆さんがそれに関心を持ち、問題について議論してほしい」と要望した。
意見交換では局側から、「今、裁判所では個人の名誉やプライバシーを重視している。苦情申立人は、表現の自由を尊重する放送人権委員会よりも、裁判所を頼りにしようという傾向になりはしないか」と、第三者機関としての立場の難しさを問いかける意見が出された。
これに対し委員からは、「放送人権委員会は司法でも行政でもない。委員会は、放送局の倫理性を問う方向に行くべきだと考えている」、「我々の役割は基本的には人権侵害と放送倫理上の問題からの救済だが、判断が難しいのは”放送倫理とは”ということ。法的責任でないため、そこに幅があるのはやむを得ない」、「厳しい勧告も出したが、局に求められるのは自律性だ」といった考えが述べられた。
また、「申立人の資格が『当分の間、個人』となっているが、”当分”はいつ頃までであり、団体の扱いはどうなるのか」との質問があった。これに対し、委員や事務局からは、「団体すべてが対象外ではなく、個人に近い団体は扱っている」、「放送人権委員会発足後8年になるので、『当分の間』や『個人・団体』について今後、議論が必要になってくる」との説明が行われた。
最後に委員から、「案件や事案を見てきて思うが、取材・編集過程でもう少し注意すれば、人を傷つけるような大きな問題にはならなかったはず」、「表現者は、何故そういう表現をするのかを常に考えるべきで、機械的な自主規制だけでは困る」、「放送局側から、番組を企画した際の志の高さを聞くとホッとする」といった感想が述べられ、意見交換会を締めくくった。

2003年 10月

北海道地区各社との意見交換会(開催地:札幌)

放送人権委員会委員と北海道地区放送事業者との意見交換会が10月24日、札幌市で開催された。東京以外での開催は、大阪・名古屋・福岡に続き4回目となる。
意見交換会には、北海道地区の全ラジオ・テレビ9局から、BPO登録代表者やBPO連絡責任者ら35人が参加。放送人権委員会側からは、飽戸弘委員長、竹田稔委員長代行、堀野紀委員長代行、五代利矢子委員、中沢けい委員、それに事務局の合わせて10人が出席した。
まず、飽戸委員長が「放送人権委員会6年と放送局への期待」と題して、名誉毀損に対して司法判断が厳しくなるなどの情勢の中で放送人権委員会が報道の自由を守るために放送界の第三者機関として設立された経緯、6年間の足跡、今後の課題等について講演。特に取材面では、メディアスクラム対応問題や、取材依頼の曖昧さがトラブルの原因になっていること、また番組制作上では、放送局のカルチャーと市民のカルチャーの差がもたらす対応のまずさがトラブルの元になっていること等を指摘した。その上で、「放送人権委員会は裁判所でも統制機関でもない、放送界の皆さんが作った『報道の自由を守っていくための機関』。自主・自律を成功させるためにも放送人権委員会の決定を有効に活用してほしい」と締めくくった。
この後、各委員が挨拶し、その中で、「最高裁の所沢ダイオキシン報道に関する差し戻し判決により、今後、裁判所は”一般視聴者が放送全体から受ける印象”という判断基準を採用して行くだろう。テレビ報道にとっては厳しい時代となる」、「人権擁護法案は仕切り直しとなったが、放送人権委員会を育てないと、また国家権力がやって来る」などの考えが表明された。
意見交換会では、放送局側から、メディアスクラム対応の申し合わせは「解除」が難しい、雑観シーンの映像で通行人や店にいて撮影された人からのクレームの増加、カメラアングルとモザイク処理の難しさといった悩みや、被害者報道、特に死者の人権をどう考えればよいのか、さらに、再現シーンの過剰演出や、取材対象者への説明不足によるトラブルなど、事例を含めて質問や問題提起が多数あった。
これに対して各委員からは、判例や法的見解、肖像権侵害の具体例等の説明やアドバイスがあり、視聴者の意識の大きな変化と放送局側の常識・認識のズレによるトラブルが増えている現状への警鐘、苦情対応のまずさなどの指摘があった。討議は所定の時間では足りないほどで、熱心な議論が続いた。

2002年度仲介・斡旋解決事案

「娘を暴行被害者と誤認報道」母親からの苦情

「強盗傷害事件の被告に対する論告求刑(懲役12年)を伝えたニュースの中で、自分の娘が暴行事件の被害者であるかのように放送された。このような報道で、また、娘や家族が大きなショックを受けている」との苦情。
当該放送局は訂正放送を実施したが、母親の了解を得られず話し合いが続けられた。2002年6月になって、今後、被害者の立場、気持ちに最大限配慮した報道をすることを約束する合意書を交わし解決した。(山梨)

(2001.11.08 放送、2002.06.05 解決)

バラエティー番組出演者から 放送中止の訴え

「美容整形をテーマにしたバラエティー番組に、パニック症候群で通院している娘が出演することになったが、番組の予告を見て娘の病気への影響が心配になった。放送を中止してほしい」という両親からの訴えがあった。番組責任者と本人、両親が話し合った結果、放送局側が、本人や家族の気持ちを配慮して出演部分を全面的にカットすることを決め、解決した。(東京)

(2002.06.28 放送予定、06.26 解決)

「約束無視の放送」と情報番組に苦情

営業担当の会社員から「仕事を終えてからゲームセンターで遊んでいるところを撮影され、『顔は出さない』との約束を無視して放送された。自分は放送を見ていないが、得意先などで『放送に出ていた』などと言われ、仕事をサボって遊んでいるかのように受け取られ迷惑している」との苦情があった。本人が放送テープを確認したところ、本人が考えていたほどの明確な映像でなかったこと、局側が改めて迷惑をかけたことを謝罪する文書を出すことで解決した。(大阪)

(2002.04.26 放送、07.05 解決)

「不登校児ドキュメント」保護者からの苦情

「不登校になった小学校5年の娘が通っているフリースクールを取材したドキュメンタリー番組が放送された。スクール側は生徒の実名、顔などは出さないよう要求したが、放送では自分の娘だけが何の映像処理もされずに、悪いイメージで放送された。このため放送後、子供は登校しなくなってしまった」との苦情が保護者からあった。保護者と放送局の責任者が会い、局側が家族を傷つけたことを謝罪、今後、不登校問題を番組で継続的に取り上げて行くことを約束し解決した。(大阪)

(2002.05.31 放送、07.12 解決)

「レズビアンは怖い」発言でトーク番組に苦情

「男女のタレントが司会するトーク番組で、女性が”最近、私にレズ説があるの。女の子に誘われて行ったら、大変怖い思いをした”と発言、それを受けて男性が”怖いなー、そんな人おるで、この頃。ちょっと隠さなあかんのとちゃうの、あんなん”とレズを冒涜する発言をした」との苦情があった。当該局に連絡し対応を要請した結果、1月10日に当該局から、「性的マイノリティーの人権、心情に配慮が足りなかったことを認め、再放送に当たっては不適切な部分を削除することを約束し解決した」との報告があった。(大阪)

(2002.12.20 放送、2003.01.10 解決)

「バラエティー番組でプライバシーの侵害」との苦情

「6~7年前に19歳の息子が交通事故で死亡した。死んだ息子の恋人が、バラエティー番組の霊能企画に出演し、息子の写真、墓などの映像を映しながら、息子との関係、現在の気持ちなどを話した。この中で霊能者が『交通事故で死亡したのは親の愛情が足りなかったからだ』などと無責任なことを話した。この放送に妻が怒り、テレビ局に抗議した。放送に当たって放送局から何の連絡もなく家族のプライバシーが侵害された」との苦情があった。当該局に連絡し対応を要請した結果、2月5日に当該局から、「1月に同じ番組で謝罪放送を行い解決した」との連絡があった。

(2002.11.27 放送、2003.02.05 解決)

「トークバラエティー番組で名誉毀損」との苦情

「番組で作家募集をしていたので応募した。オーディションを受けて、自宅などを撮影された上で、11月28日に放送された。この放送はひどいもので、私の顔と部屋が映し出される中(3分)で、応募した短編の説明をしだすと、司会者らが”おたくだ””危ない”などと連呼し、自分を笑いものにした。当該テレビ局の担当者に会って抗議したが、司会者らの謝罪には応じられないということだった。作品を読んだ感想もなく、番組の中でただ袋叩きにされたようなもので、これは個人に対する中傷、侮辱であり人権侵害である」との苦情があった。
当該局に連絡し対応を要請、当事者間の話し合いが行われた結果、2月初めに当該局から「謝罪放送を実施し解決した」との連絡があった。(札幌)

(2002.11.27 放送、2003.02.05 解決)

「無断撮影・放送で名誉毀損」の苦情

昨年8月24日に放送された在阪テレビ局のバラエティー番組に対する大阪の主婦からの抗議は、今年3月に当該局が謝罪放送を実施し解決しました。
抗議の内容は「スーパーで買い物をして出てきたところを、女性アナウンサーに声をかけられたが、急いでいたので断った。このとき撮られた映像が、断りもなくバラエティー番組で放送され、『大阪のおばちゃんはこんなに怒っている』という音声とともに、アップにした顔に”怒りマーク”が付けられていた。放送局に抗議したところ、局は今年1月の検証番組で一方的に謝罪放送を行ったが、自分としては同じ番組での謝罪を要求しており納得できない」というものでした。
事務局から当該局に苦情の趣旨を伝え対応を要請した結果、この3月に当該番組で謝罪放送が行われ解決しました。今年度8件目の斡旋解決事案になりました。

(2002.08.24 放送、2003.03.25 解決)

第186回 放送と人権等権利に関する委員会

第186回 – 2012年8月

ストローアート事案和解解決
イレッサ報道事案の審理
審理要請案件:「国家試験の元試験委員からの申立て」事案~審理入り決定…など

「ストローアート作家からの申立て」事案は、委員会の仲介斡旋で和解合意に至り、解決したことが委員長から報告された。先月審理入りした「肺がん治療薬イレッサ報道への申立て」事案、「無許可スナック摘発報道への申立て」事案の実質審理が、それぞれ始まった。審理要請案件について審議し、審理入りが決まった。

議事の詳細

日時
2012年8月21日(火) 午後4時~7時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
三宅委員長、坂井委員長代行、市川委員、大石委員、小山委員、田中委員、林委員、山田委員

「ストローアート作家からの申立て」事案、和解合意により解決を報告

本事案については、先月の委員会におけるヒアリング後、委員会が申立人と被申立人であるフジテレビに対し、和解合意に向けての仲介斡旋作業を進めてきた。その結果、最終的に双方の間で合意に至り、8月21日午後、委員会開催に先立って和解合意書が取り交わされ、解決した。
委員会では、三宅委員長が作業経緯を報告するとともに、今回の和解について委員会の考えを示した「委員会コメント」を付し、ホームページ等において公表することを決めた(詳しくは仲介・斡旋解決事案の項をご参照ください)。

「肺がん治療薬イレッサ報道への申立て」事案の審理

前回委員会で審理入りが決定した後、被申立人から「答弁書」の提出を受け、実質的な審理に入った。
本事案は、フジテレビ『ニュースJAPAN』が昨年10月5日と6日の2回にわたって放送した企画「イレッサの真実」に対し、長期取材を受けて番組にも登場した男性が「放送はイレッサの危険性を過小評価し有効性を過剰に強調する偏頗な内容で、客観性、正確性、公正さに欠け、放送倫理に抵触している。こうした放送や、申立人の主義主張とは反する発言の使われ方、取材休憩中の撮影とその映像の放送などによって名誉とプライバシーを侵害された」として、謝罪と放送内容の訂正を求め申し立てたもの。
これに対しフジテレビは、答弁書において「本番組は肺がん治療に関し、様々な立場から多様な意見があることを新薬イレッサを例に報道したもので、客観性、正確性、公正さに欠けるところはなく、放送倫理に抵触する部分はない。申立人に対する名誉、プライバシーの侵害もない。従って、謝罪や放送内容の訂正は受け入れられない」と主張し、全面的に反論している。
この日の委員会ではまず、本件放送が客観性・正確性・公正さに欠けているとする申立人主張の根拠のひとつにもなっているイレッサ訴訟東京地裁判決の判決内容について、起草担当の委員がレジュメをもとに説明した。続いて事務局が双方の主張を整理した後、各委員が意見を述べた。次回審理に向け、申立人の「反論書」と、被申立人の「再答弁書」において、より詳しく説明を求めたいこと等についても話し合った。
次回は「反論書」と「再答弁書」の提出を受け、さらに審理を重ねることにしている。

「無許可スナック摘発報道への申立て」事案の審理

上記事案の実質審理が始まった。
審理しているのは、テレビ神奈川が本年4月11日夜放送した『tvkNEWS930』で、番組では、神奈川県警が無許可営業のスナックを風営法違反容疑で摘発する現場を取材し、1分強のニュースとして放送した。この報道に対し、スナックの女性経営者と家族から「略式命令の軽微な罰金刑にもかかわらず、映像では顔のアップ、実名と年齢、店と自宅の住所まで放送したのはプライバシーをあまりにも公開し過ぎ」など人権侵害を訴える申立書が提出された。申立人は、放送から1カ月以上もの間、ネット上でこのニュースの動画が再生できる環境にあったとし、この点でもプライバシーや名誉毀損になると主張している。
これに対しテレビ神奈川は答弁書で、「通常の実名報道原則に基づき放送した」としたうえ、「報道される側の基本的人権についても十分慎重に検討した。無届け営業を現場で否定しなかったため、当人の顔のボカシは入れずに放送した」と主張している。
この日の委員会では、報道内容にプライバシーの侵害等の人権侵害はあったか、カメラ取材は適切に行われたか、報道の仕方・取り上げ方に行き過ぎはなかったか、インターネット展開における放送局の管理体制は十分だったか、等をめぐって意見を交わした。
次回、9月の委員会では申立人とテレビ神奈川の双方にヒアリングを行い、そのうえでさらに議論を深めることになった。

審理要請案件:「国家試験の元試験委員からの申立て」事案~審理入り決定

国家試験の元試験委員からの申立てについて審理入りが決定した。
対象となった番組はTBSテレビの『報道特集』。本年2月25日に「国家資格の試験めぐり不平等が?疑念招いた1冊の書籍」と題した特集を放送、大学教授で社会福祉士試験委員会副委員長を務めていた申立人が、その著書で社会福祉士資格試験の過去問題を解説し、大学の授業でこれをテキストとして用い、期末試験でも社会福祉士の試験問題と同じ形式で出題していたこと、厚生労働省の調査を受け申立人が試験委員を辞任したこと等を報道した。
申立人はこの報道に対し、申立書において「本件番組は申立人がいかにも国家試験の試験問題を漏洩したかのように報道する等、申立人が試験委員としての職責に背く行為をしたかのように視聴者に印象付け、その名誉と信用を著しく毀損した」としており、TBSに謝罪と放送の訂正等を求めている。
これに対しTBSは、「本放送の主旨は、申立人に国家試験の試験委員としてふさわしくない行為があり、社会福祉士試験の公平性・公正性に疑念を招いたのではないかと問いかけたものである。申立人に問題漏洩等があったとはいささかも言及していない」と局の見解において反論している。
委員会は、委員会運営規則第5条の規定に照らし、本件申立ては要件を充たしているとして審理に入ることを決めた。
次回委員会以降、実質審理に入る。

7月の苦情概要

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・4件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・・・20件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

  • 事案数の増加に伴い、審理を迅速かつ的確に行うため、10月9日(火)に臨時で委員会を開催することになった。
  • 次回委員会は9月18日(火)に開かれることになった。

以上

第185回 放送と人権等権利に関する委員会

第185回 – 2012年7月

「ストローアート作家からの申立て」事案のヒアリングと審理

「南三陸町津波被災遺族からの申立て」事案~申立て取り下げ

「肺がん治療薬イレッサ報道への申立て」~審理入り決定

「無許可スナック摘発報道への申立て」~審理入り決定

「ストローアート作家からの申立て」事案のヒアリングと審理が行われ、委員会からの和解による解決の打診について、双方とも受け入れる意向を示した。2件の審理要請案件について審議し、いずれも審理入りが決まった。

議事の詳細

日時
2012年7月17日(火) 午後3時~7時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
三宅委員長、奥委員長代行、坂井委員長代行、市川委員、大石委員、小山委員、田中委員、林委員、山田委員

「ストローアート作家からの申立て」事案のヒアリングと審理

本事案はフジテレビが1月9日(月・祝)の『情報プレゼンター とくダネ!』で放送した企画『ブーム発掘!エピソード・ゼロ(2)身近なモノが…知られざる街の芸術家編』について、番組に登場したストローアートの作家が「過剰で誤った演出とキャスターコメントにより、独自の工夫と創作で育ててきたストローアートと私に対する間違ったイメージを視聴者に与え、私の活動と人権を侵害した」として謝罪などを求めているもの。フジテレビは「演出方法を明確に説明せず、申立人に不快な思いをさせたことは真摯に反省し申し訳ないと考えている」として、放送でのお詫び案を示しメールで交渉を重ねてきたが、決着しなかった。
今月の委員会では、申立人、フジテレビ双方に個別にヒアリングを行った。
申立人は「スタッフにストローアートの作品を預けたら、放送では、生け花のように数本でひとつの作品として見せるヤシの木がバラバラにされ飲み物に挿して出されていた。作品を勝手に崩すのは人権侵害と思う。趣味の域というスタジオでのキャスター発言は、趣味を芸術より下のものと軽視するような発言だ。私にとってストローアートは芸術でもあり趣味でもあり、作りやすくする工夫とオリジナルな作品に一生懸命取り組んできた。情報番組として残念で、もっと入念に取材、調査をして番組作りをしてほしい」などと述べた。
フジテレビからは情報制作局の担当者ら5人が出席し、「企画には申立人からの要望も盛り込んでいるが、ヤシの木に関する演出については申立人の了解を得ておらず不適切だったと考える。不快な思いをさせたことは反省しており、お詫びしたい。スタジオで気に入った作品を選んでもらった演出は、作品についての様々な評価や価値観を提供し視聴者と共有できる有効な手法で、キャスター発言を含め申立人やストローアートを軽んじたり、評価を下げる不適切なものとは考えていない。企画全体から受ける印象としては、ストローアート本来の魅力を十分伝えていると考える」などと述べた。
ヒアリングを受けて委員会は、フジテレビがお詫びの意思を表明し、これまで数度にわたり謝罪案を提示してきた経緯等を踏まえ、双方に対し和解による解決を打診した。これに対し申立人は、委員会が仲介してくれるなら、と提案を受け入れ、フジテレビも和解に応じる意向を示した。
これにより委員会は今後、和解による解決に向け具体的な作業を進めることになった。

「南三陸町津波被災遺族からの申立て」事案~申立て取り下げ

本事案は、NHKが本年3月10日に放送した『NHKスペシャル「もっと高いところへ~高台移転南三陸町の苦闘~」』に対し、津波の犠牲となった町職員の遺族から「番組で肉親の最期の姿を見て大きな衝撃と苦痛を受けた。亡くなる直前の写真であれば全遺族の了解を得るか、得られなければモザイクをかける等の配慮が当然ではないか」として、NHKに謝罪等を求め申立てがあったもの。6月の委員会で審理入りが決まった。
その後、申立人とNHKとの間で話し合いが行われ、その結果、申立人より申立てを取り下げたいとする書面が、実質審理前の7月5日付で委員会宛て提出された。
この日の委員会で申立ての取り下げを了承し、本事案の実質審理を行わないことを決めた。

審理要請案件2件~審理入り決定

1.「肺がん治療薬イレッサ報道への申立て」

上記申立てについて審理入りが決まった。
対象となった番組は、フジテレビの『ニュースJAPAN』。昨年10月5日と6日の2回にわたって「イレッサの真実」と題し、肺がん治療薬イレッサをめぐる問題について報道した。
この報道に対し、番組で長期取材を受けその発言も紹介されている男性から、人権を侵害されたとの申立書が本年5月に提出された。申立書の中で申立人は、「放送はイレッサの危険性を過小評価し有効性を過剰に強調する偏頗な内容で、客観性、正確性、公正さに欠け、放送倫理基本綱領に抵触している。こうした放送や、申立人の主義主張とは反する発言の使われ方、取材休憩中の撮影とその映像の放送などによって名誉とプライバシー等を侵害された」として、フジテレビに対し謝罪と放送内容の訂正を求めている。
これに対しフジテレビは、「番組は肺がん治療に関し、様々な立場から多様な意見が存在することを、新薬イレッサを例に報道したもので、客観性、正確性、公正さに欠けるところはない。放送倫理に抵触する部分もなく、申立人に対する名誉、プライバシーの侵害もない」との見解を示し、全面的に反論している。
委員会では、双方から出された書面、番組同録DVD及び関連資料をもとに審議した結果、本件申立ては委員会運営規則第5条に照らし、要件を満たしているとして審理に入ることを決めた。
次回委員会より実質審理を行う。

2.「無許可スナック摘発報道への申立て」

上記申立てについて審理入りが決まった。
対象となった番組は、テレビ神奈川が本年4月11日夜放送した『tvkNEWS930』。番組では、神奈川県警が無許可営業のスナックを風営法違反容疑で摘発する現場を取材し、1分強のニュースとして放送した。
この報道に対し女性経営者と家族から人権侵害を訴える申立書が提出された。申立人は「略式命令の軽微な罰金刑にもかかわらず、映像では顔のアップ、実名と年齢、店と自宅の住所まで放送したのはプライバシーをあまりにも公開し過ぎ」と主張している。また放送から1か月以上もの間、ネット上でこのニュースの動画が再生できる環境にあったとし、この点でもプライバシーや肖像権の侵害、名誉毀損にもなるとしており、テレビ神奈川に対して謝罪放送とそのホームページへの掲載を求めている。
これに対しテレビ神奈川は、局の見解で「通常の実名報道原則に基づき放送した」としたうえ、「報道される側の基本的人権についても十分慎重に検討した。無届け営業を現場で否定しなかったため、当人の顔のボカシは入れずに放送した」と主張している。また動画の取扱いについては、5月18日の申立人からの電話により、Facebook動画及びtwitterテキストが削除されていないことに気付き、動画ファイル自体及び元データを削除したとしている。
委員会では、双方から出された書面、番組同録DVD及び関連資料をもとに審議した結果、本件申立ては委員会運営規則第5条に照らし、要件を満たしているとして審理に入ることを決めた。
次回委員会から実質審理に入る。

6月の苦情概要

6月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・6件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・・・14件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

次回委員会は8月21日(火)に開かれることになった。

以上

第184回 放送と人権等権利に関する委員会

第184回 – 2012年6月

「ストローアート作家からの申立て」事案の審理

審理要請案件~審理入り決定 ……など

「ストローアート作家からの申立て」事案の実質審理が始まった。宮城県南三陸町の津波被災遺族から申立てがあった審理要請案件について審議し、審理入りが決まった。来月から実質審理に入る。

議事の詳細

日時
2012年6月19日(火) 午後4時~6時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
三宅委員長、奥委員長代行、坂井委員長代行、市川委員、大石委員、小山委員、田中委員、林委員、山田委員

「ストローアート作家からの申立て」事案の審理

審理しているのは、フジテレビが本年1月9日(祝)の『情報プレゼンター とくダネ!』で放送した企画『ブーム発掘!エピソード・ゼロ(2) 身近なモノが…知られざる街の芸術家編』。番組に登場したストローアートの作家が「過剰で誤った演出とキャスターコメントにより、独自の工夫と創作で育ててきたストローアートと私に対する間違ったイメージを視聴者に与え、私の活動と人権を侵害した」として謝罪などを求めているもの。フジテレビは「申立人に不快な思いをさせたことは真摯に反省し申し訳ないと考えている」として、放送でのお詫び案を示しメールで交渉を重ねてきたが、決着しなかった。
前回委員会での審理入り決定後に双方から書面や参考資料の提出を受け、それらをもとに実質的な審理に入った。局側には番組の編集権があるが、演出や構成を事前に出演者にどこまで説明すべきか、ストローアートの組作品をばらし飲み物に挿して客の反応を撮影した演出や「趣味の域」というキャスター発言を人権や放送倫理との関係においてどのように評価するか、などをめぐって意見を交わした。
次回、7月の委員会では、申立人とフジテレビの双方にヒアリングを行い、さらに審理を進めることになった。

審理要請案件~審理入り決定

宮城県南三陸町の津波被災遺族から申し立てられた審理要請案件について審議し、審理入りが決まった。
対象となった番組は、NHKが本年3月10日に放送した『NHKスペシャル「もっと高いところへ~高台移転 南三陸町の苦闘~」』。昨年3月11日の東日本大震災の際、町の防災対策庁舎屋上に避難した人たちのうち42人が津波の犠牲となった宮城県南三陸町の事例を取り上げ、屋上での様子を撮った写真、町長や住民へのインタビュー取材等を交え、当時を振り返るとともに、町の高台移転の現状と難しさ、今後の課題について伝えた。
この放送に対し、番組で使われた屋上での写真に顔と姿が写っていた職員の遺族から「肉親の最期の姿を見て大きな衝撃と苦痛を受けた、亡くなる直前の写真であれば全遺族の了解を得るか、得られなければモザイクをかける等の配慮が当然ではないか」として、NHKに謝罪等を求め申立てがあったもの。
申立てに対しNHKは、「遺族に対しては、事前の説明も含め可能なかぎり配慮したうえで放送した。映像を加工することは、なぜ数人だけ隠すのかと視聴者の疑念を招く。また少なからぬ遺族が肉親の最期の姿に誇りを持っており、特段の事情のない限り最期の姿を加工することは失礼にあたると考えた」等と局側の見解で述べている。
委員会は、双方から提出された書面、番組同録DVD、及び関連資料をもとに審議した結果、委員会運営規則第5条の規定に照らし本件申立ては審理の要件を充たしているとして審理入りが決まった。しかし、申立人2人のうち1人については、番組で使われた写真に肉親の姿と顔は写っていないことから直接、申立人としての適格性があるとはいえないとして審理の対象外とした。
委員会は、双方からさらに書面・資料等の提出を求め、来月から実質審理に入る。

5月の苦情概要

5月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・4件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・・・18件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

  • 9月14日に広島市で、広島地区のBPO加盟放送事業者を対象に、放送人権委員と放送局現場スタッフとの意見交換会を行うことになった。事務局より報告し了承された。
  • 次回委員会は7月17日(火)に開かれることになった。

以上

第183回 放送と人権等権利に関する委員会

第183回 – 2012年5月

審理要請案件:「ストローアート作家からの申立て」~審理入り決定
放送倫理上の問題に関する判断…など

審理要請案件について審議し、審理入りを決定した。来月から実質審理に入る。放送倫理上の問題に関する判断について議論し、「放送倫理違反」と「放送倫理上問題あり」という判断を一本化すること等を決定した。

議事の詳細

日時
2012年5月15日(火) 午後4時~6時40分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
三宅委員長、奥委員長代行、坂井委員長代行、市川委員、大石委員、小山委員、田中委員、林委員、山田委員

審理要請案件:「ストローアート作家からの申立て」~審理入り決定

ストローなど身近な素材で作られた作品を紹介したフジテレビの番組で、作品の取り扱いや演出、出演者の発言によって人権を侵害されたという申立てがあり、審理を開始することが決まった。
番組は『情報プレゼンター とくダネ!』。本年1月9日(祝)放送の「ブーム発掘!エピソード・ゼロ② 身近なモノが…知られざる街の芸術家編」と題した企画で、ストロー、バナナ、海苔、それに石を素材とした4種類の作品と作者による制作の様子などを紹介した。
申立人は、ストローを素材にした作品(ストローアート)の作家。申立書によると、数本のストローで作り小瓶に活けた組作品の椰子を1本ずつに崩し、本来飲み物に挿すためのものではないにもかかわらず、飲み物に挿して喫茶店の客に出し反応を撮影・放送したこと、出演者に4作品の人気投票をさせた上、キャスターが「石以外は芸術ではなく趣味の域だ」とコメントしたことについて、「過剰で誤った演出とキャスターコメントにより、独自の工夫と創作で育ててきたストローアートと私に対する間違ったイメージを視聴者に与え、私の活動と人権を侵害した」と訴えている。
放送後、メールでフジテレビと交渉を続けてきたが、フジ側から提示された謝罪放送の文案に承諾しかねるとし、やり取りを重ねても話が通じないとして4月3日、申立てに至った。視聴者への謝罪とイメージの回復、及び申立人への謝罪などを求めている。
これに対して、フジテレビは、「申立てに関する経緯および見解」の中で、「申立人に不快な思いをさせたことは真摯に反省し申し訳ないと考えている。演出方法を事前に明確に伝えなかったという落ち度も認め、放送でのお詫び案を5回示して誠意をもって対応してきたつもりだが、理解を得られていない」、「現在に至るまで十分なコミュニケーションは取れていないが、実質的な話し合いに向けてメールでやり取りしている最中との認識でおり、引き続き誠心誠意話し合いを続けたいと考えている」としている。
委員会では、双方から提出された書面及び資料をもとに審議した結果、本件申立ては審理の対象となる苦情に該当し、かつ双方の話し合いは相容れない状況になっていると判断でき、運営規則第5条の苦情の取り扱い基準を満たしているとして審理に入ることを決定した。
次回委員会から実質審理に入る。

放送倫理上の問題に関する判断

前回に引き続いて、放送倫理上の問題に関する判断のグラデーションについて意見を交わした。
委員会は当初は、「放送倫理上問題あり」で統一されていたが、近年、個別事案ごとの性格の違いを踏まえた判断の微妙な差異を示すため、「重大な放送倫理違反」、「放送倫理違反」、「放送倫理上問題あり」というキメの細かなグラデーションを設けてきた経緯がある。しかし、昨年行われた放送局への聞き取り調査では、「放送倫理違反」と「放送倫理上問題あり」の違いが分かりにくい等の声が出された。こうした指摘を受け、申立人と放送局の双方にとってより分かりやすく理解しやすい決定とするため、本年2月以降、判断のグラデーションをよりシンプルにする方向で検討を重ねてきた。
この日の委員会では、グラデーションの見直し案について事務局から説明し、これを受けて詰めの議論を行った。この結果、従前の決定等をふまえつつ、「放送倫理違反」と「放送倫理上問題あり」という判断を一本化することで最終的に意見がまとまった。表現については、放送倫理の内容が法規範とは異なり必ずしも確定的なものではないこと、放送倫理については放送局が定めた自主的倫理規範に反しているかどうかを判断の拠り所としていること、さらに放送倫理上の問題点を違反事例に限定することなくより広く具体的に捉えられるとの観点から、「違反」ではなく「問題あり」に統一することとした。これに伴い、わかりやすさという観点から、「重大な放送倫理違反」も「放送倫理上重大な問題あり」に修正されることとなった。
委員会決定における判断は下表の通りとなり、以後の事案から適用される。

「勧 告」 人権侵害
放送倫理上重大な問題あり
「見 解」 放送倫理上問題あり
要望
問題なし

なお、決定における判断内容をより簡単に把握してもらうため、決定文の表題に「勧告」もしくは「見解」という表示を付け加えることになった。「勧告」と「見解」の区別についてはさらに細かな区別も検討したが、わかりやすさという観点から従前のとおりとした。

4月の苦情概要

4月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・3件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・・・20件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

次回委員会は6月19日(火)に開かれることになった。

以上

第182回 放送と人権等権利に関する委員会

第182回 – 2012年4月

委員長代行の指名
放送倫理上の判断…など

三宅委員長の下で初の委員会となり、奥委員と坂井委員の2人が委員長代行に指名された。引き続き報道機関による資料用撮影が行われ、撮影終了後、放送倫理上の判断について議論した。

議事の詳細

日時
2012年4月17日(火) 午後3時40分~7時
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
三宅委員長、奥委員長代行、坂井委員長代行、市川委員、大石委員、小山委員、田中委員、林委員、山田委員

委員長代行の指名

4月1日に就任した三宅委員長の下での初の委員会では、冒頭、新委員長による委員長代行の指名が行われた。委員長代行は、「委員長を補佐し、委員長を欠くときまたは委員長に事故あるときは、その職務を代行する」存在で、「委員長により2人が指名」されることになっている。(BPO規約第30条)
三宅委員長は奥武則委員と坂井眞委員を指名し、2人もこれを受諾した。奥委員は毎日新聞論説副委員長を経て、現在、法政大学社会学部教授。坂井委員は弁護士で、日弁連人権と報道に関する特別部会部会長を務めている。
三宅委員長は「法律家の観点から坂井委員を、またジャーナリズム論の観点から奥委員を指名した」と述べた。
引き続き報道機関による資料用撮影が行われ、テレビ・新聞各社から9社が取材に訪れ、テレビカメラ6台が入った。

放送倫理上の判断

今月の委員会では、まず事務局から、放送局への聞き取り調査を受けて2月と3月の委員会で行われた放送倫理をめぐる議論の了解事項について報告した。即ち、放送人権委員会が人権に関係する放送倫理上の問題を扱うことは、放送によって人権を侵害された人の救済を目的とする第三者委員会の務めであり、BPO規約等で定められた当然の使命であること、放送倫理上の問題を判断する基準としては、民放連とNHKで作った「放送倫理基本綱領」や民放連の「放送基準」、NHKの「国内番組基準」、さらには各放送局が独自に作成した番組基準等のガイドラインがあり、できるだけこれらを引用しながら問題の所在を明確に伝えるよう努力すること、ただし、必ずしもすべてのケースで既存のガイドラインを引用して判断するとは限らないこと等が確認された。
またこれまでの決定では「人権侵害を来たしかねない重大な放送倫理違反」等の表現がしばしば使われてきたが、「人権侵害」がより深刻であるとは限らず、「放送倫理違反」が重い場合もあり得るので、決定文の中できちんと表現すること、さらに判断のグラデーションについてはなるべくシンプルにしていくことも確認された。
関連してこの日の委員会では、「放送倫理違反」や「放送倫理上問題あり」、また「勧告」や「見解」等、判断のグラデーションやカテゴリーをどう整理していくのかについて、事務局から問題点等が説明された。
さらに、放送倫理検証委員会が公表している14件の決定の中で、「放送倫理」が具体的にどのように言及されてきたかについても事務局から報告した。
この後、議論に移り、委員会の決定文は申立人や放送局に理解してもらうため、できるだけシンプルにし噛み砕いて伝えるべきだとする意見や、放送倫理基本綱領等の条文だけを示しても余り意味はなく、委員会判断の実質的な理由づけをこれまで以上に具体的に示していく必要があるといった意見が出された。
また「放送倫理」という言葉の使い方や判断のグラデーションが、放送倫理検証委員会とは必ずしも一致しない点については、両委員会の目的や性格の違いから、その整合性に腐心するよりもむしろ、広報活動等を通じて理解を促進するよう努めるべきだという意見が出された。
こうした点を踏まえ、次回委員会では、判断のグラデーションのシンプル化に向けさらに議論を深めることになった。

3月の苦情概要

3月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・2件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・・・20件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

  • 委員会は7月にフジテレビを訪問し、番組作りの現場を視察・見学するとともにスタッフと意見交換することになった。2月のNHK訪問に続くもの。事務局より報告し了承された。
  • 次回委員会は5月15日(火)に開かれることになった。

以上

第181回 放送と人権等権利に関する委員会

第181回 – 2012年3月

委員会に対する放送局からの要望~放送倫理上の判断について

2月の苦情概要 ……など

在京・在阪放送局への聞き取り調査を受け、「放送倫理上の問題に関する判断」について議論を続行した。

議事の詳細

日時
2012年3月13日(火) 午後4時~6時
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
堀野委員長、樺山委員長代行、三宅委員長代行、大石委員、小山委員、坂井委員、武田委員、田中委員、山田委員

委員会に対する放送局からの要望~放送倫理上の判断について

在京・在阪放送局への聞き取り調査を受け、「放送倫理上の問題に関する判断」について議論を続行した。
今月の委員会では、放送倫理上の問題について、放送倫理基本綱領等の自主的規範を事実認定や判断の拠り所とすることについて改めて意見を交わした。
委員からは「基本綱領や民放連の放送基準、NHKの国内番組基準等、放送局が自らの手で定めた自主規範に拠ることで作り手にも理解を得られやすいのではないか」とする一方、「基本綱領や番組基準等が放送倫理のすべてではない。広く社会通念に照らしての判断もあり得るので、委員会として、判断の枠組みについてはフリーハンドで広くしておくべきだ」という意見も出された。
また、人権侵害と放送倫理違反の関係、両者の軽重については「一般的には人権侵害は違法だから重く感じられるだろう。しかし名誉毀損としては大した嘘はついていないが事実を捏造して報道した場合、申立人からすればあってはならないことだ。どちらが1番、2番と順位付けすることはむずかしく、そう簡単ではない」「名誉毀損の成否では公共性、公益性の観点から番組の意義や目的等も勘案されるが、放送倫理についてはどうか。例え社会的に意義のある番組であっても間違ったことで心を痛める人が生じたなら、やはりその間違いは許されない。いい番組だからということにはならない」等の意見が出た。
これらの意見を踏まえ堀野委員長は、「倫理の海があるとすれば人権侵害はその中を倫理と重なり合って動いている。だから、まず放送倫理上の問題から取り上げ最高度に重いものは一番上に置く。判断のグラデーションをどう表現するかという問題はあるが、重さの軽重はやはりある。その上で人権侵害とは放送倫理と別次元の法規範に照らした判断であり、両者が重なり合う場合は、放送倫理上問題があると言いつつ、その問題は名誉毀損にも該当しかねないという判断を示し、そのことを決定の中できちんと表現すれば整理できるのではないか」と述べた。
この日の議論を通じ、放送倫理上の判断のグラデーションについては、事案ごとに性質が異なるところから、今後、よりシンプルにする方向で大筋の合意を見た。放送局から問題提起のある「放送倫理違反」と「放送倫理上問題あり」という判断を具体的にどう見直すか等、詳しくは新年度の委員会の課題として持ち越されることになった。

2月の苦情概要

2月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・1件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・・14件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

  • 堀野紀委員長、樺山委員長代行、武田委員の3委員は今月をもって任期満了となり、退任することになった。堀野委員長は委員長代行時代を含め3期9年、樺山代行は1期3年、武田委員は2期6年をそれぞれ務めた。
  • 次回委員会は4月17日(火)に開かれることになった。

以上

第180回 放送と人権等権利に関する委員会

第180回 – 2012年2月

委員会に対する放送局からの要望~放送倫理上の判断について

1月の苦情概要 ……など

在京・在阪放送局に対する聞き取り調査で出た放送人権委員会への要望や意見について議論した。今月は「放送倫理上の問題に関する判断」を取り上げた。

議事の詳細

日時
2012年 2月21日(火) 午後4時~6時40分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
堀野委員長、樺山委員長代行、三宅委員長代行、小山委員、坂井委員、武田委員、田中委員、山田委員

委員会に対する放送局からの要望~放送倫理上の判断について

先月に続いて、在京・在阪放送局への聞き取り調査で出た委員会への要望や意見について議論した。今月は「放送倫理上の問題に関する判断」を取り上げた。聞き取り調査では、直接には名誉やプライバシー等人格権の侵害を扱う放送人権委員会が、人権侵害に係る放送倫理上の問題についても判断することに、「違和感はない」とする意見に対し「疑問だ」とする意見も出された。また「放送倫理違反」と「放送倫理上問題あり」という判断の違いが分かりにくいという声もあった。この日の委員会では、事務局による資料説明の後、委員のひとりが「放送倫理違反とは何か」について問題提起した。その中で、放送局が守るべき倫理を自らの手で明文化したものが「放送倫理基本綱領」(民放連及びNHKが1996年制定)等の規範であり、第三者である委員会はこうした自主ルールの遵守状況をチェックするという考え方を基に、「倫理違反」ではなく「ルール違反」と呼んではどうかと述べた。また「放送倫理」という言葉を使うとしても、法と倫理は別途存在するものであること、放送倫理やジャーナリズムの倫理が確定的なものではないこと、倫理とは自律的な規範であること等を踏まえ、「違反」ではなく「問題あり」という表現に止めてはどうかとも述べた。
問題提起を受けて各委員が意見を述べた。
堀野委員長は「申し立てられた苦情が人権侵害には当たらない場合でも、放送局側になんらかの問題点があれば、委員会として申立人の救済という観点から局の責任を問い、これを放送倫理上の問題として指摘してきた。そこに不満があるのかもしれない」と述べた。
委員からは「法律には反していないが、放送のあり方としてはひどいという意見はありうる。人権侵害にならないから軽いとは簡単に整理できない。被害を受けて救済を求めてきた人たちを救うためには、法律違反にならないけれど放送倫理上問題があるというのも第三者機関としての重要な役割ではないか。裁判所と同じである必要はない」、「報道がどうあるべきかは法規範に基づく判断だけでは済まない。やはり法と倫理の2つの軸でやっていくべきだ。法律家だけでなく一般有識者が委員として加わっている意味もそこにある」、「我々は人権侵害ではなく倫理違反に過ぎないと言ってきたわけではない。倫理という言葉が、実はことによると人権侵害よりも重大な問題を指摘しているのだということを、申立人にも局にも分かってもらう決定文にするにはどうしたらいいかということではないか」等の意見が出された。
また「委員会としてはきめ細かくきちっと類型化を考えてやってきたと思う。名誉毀損において黒ではないもののグレーだという場合、グレーが黒にかかるものと、ほとんど白いグレーとがある。その微妙な差異を出そうとしてきた。検証委員会では放送倫理に反しているものが取り上げられ黒となる。申立てによる救済機関である人権委員会とは自ずから違いがあるのではないか」という意見も出た。
議論の結果、委員会としては今後も人権侵害とそれに係る放送倫理上の判断を二本の柱としていくこと、しかし、法と倫理は別概念であり人権侵害と放送倫理上の判断の書き分けには一層神経を配る必要があること等を確認した。
次回は、決定文における具体的な書き分けや、「放送倫理違反」と「放送倫理上問題あり」という判断のカテゴリーの問題等について検討を行う。

1月の苦情概要

1月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・2件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・・23件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

  • 2月14日に行われた東京・渋谷のNHK放送センターへの訪問について、事務局より報告した後、各委員が感想を述べた。
    当日は、まず東日本大震災の報道について、テレビ報道の責任者から発災当日の対応と原発事故を含めたその後の取り組みを聞いた。2万人近い死者・不明者が出たことを教訓に、地震・津波の緊急報道の放送画面や避難を呼びかけるコメントの改善に取り組んでいること、膨大な震災映像のアーカイブス化を進めることなどの説明があった。
    このあとニュースセンターに移動し、大きな地震が発生すると直ちにアナウンサーが地震情報を伝える態勢や仕組みの説明を受け、全国に設置しているロボットカメラの運用や操作、津波の速報画面の送出を見学した。続いて、夕方のニュース情報番組『首都圏ネットワーク』のスタジオを見学し、企画ニュースの提案から取材、編集、放送までの流れや放送内容のチェック体制の説明を聞いた。そして、午後6時10分から始まった放送本番に立ち会い、送出の様子を見守った。
    委員からは、ニュースの制作・送出に大勢の職員やスタッフが携わっていることに驚いたという声が多く聞かれた。そのほか、「ニュースの取材と制作にはたいへんな人手と費用がかかっていることを、視聴者や出来上がったニュースを配信するサイト運営会社の人に理解してもらわないといけない」、「震災報道については報道現場で問題意識が共有され、きちんと取り組んでいることがよくわかった」、「ニュースを分かりやすく伝える努力をされているが、受信料で支えられているNHKだけにしかできない問題の発掘、取材にもっと力を入れて欲しい」などの感想があった。
    委員会では、来年度もテレビ局への訪問を予定している。
  • 次回委員会は3月13日(火)に開かれることになった。

以上

第179回 放送と人権等権利に関する委員会

第179回 – 2011年1月

委員会運営上の課題

委員会に対する放送局からの要望 ……など

先月に引き続き、苦情申立書の受理について検討し、とりまとめを行った。在京・在阪放送局に対する聞き取り調査で出た放送人権委員会への意見や要望について議論した。

議事の詳細

日時
2011年 1月17日(火) 午後4時~6時45分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
堀野委員長、樺山委員長代行、三宅委員長代行、大石委員、小山委員、坂井委員、武田委員、山田委員

委員会運営上の課題

前回の委員会に続いて申立書の受理に関する検討を行い、苦情や申立書が事務局に寄せられた場合の対応の仕方を取りまとめた。これによって、申立書の受理からヒアリングを含めた審理、決定の通知・公表に至る委員会運営全般にわたる検討作業をひと通り終えることになった。
一連の作業を通じ、委員会審理における(1)ヒアリングの改善、(2)事務局による資料収集と委員会の判断に基づく当事者への開示、等が固まった。
なお、苦情申立てを簡便化する一環として、BPOホームページより申立書の書式をダウンロードできるよう作業を進めている。

委員会に対する放送局からの要望

BPO事務局が行った在京・在阪放送局への聞き取り調査(「2011年12月議事概要」を参照)で、放送局側から出された「委員会決定」に関する要望について議論した。
「委員会決定」について局からは、決定文の長さや表現の難しさを指摘する声があがった。また決定のポイントをまとめた要約を出してほしいという要望も出された。一方、申立人と局とが対立関係に立ち、名誉毀損等の権利侵害を扱う委員会としての性格上、法的な用語の使用や、表現の難しさはやむを得ないとする声もあった。
この日の委員会では、事務局がまとめた資料をもとに決定文の「長さ」、「表現上の特徴」、「全体の構成」、「放送への視点」等の論点について各委員が意見を述べた。そのうえで、申立人の苦情にはきっちり答えるという委員会の任務を改めて確認すると共に、決定文の分かりやすさについては改善の余地があるという認識の下、表現上の工夫や論点の整理・絞り込みに、より留意することで一致し、具体的には次の案件からそのような問題意識を持って対処していく中で改善を図っていくことになった。また委員会が要約を出すかどうかについては意見が分かれた。
来月は放送倫理をテーマに議論し、放送倫理上の問題に関する判断のカテゴリーについても検討を行う。

12月の苦情概要

12月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・3件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・・・21件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

  • 一般視聴者対象のBPO認知度調査の結果について事務局より報告した。
  • 来月行われるNHKへの訪問について事務局より実施の概要を説明した。
  • 次回委員会は2月21日(火)に開かれることになった。

以上

第178回 放送と人権等権利に関する委員会

第178回 – 2011年12月

委員会運営上の検討課題

在京・在阪放送局への聞き取り調査 ……など

審理において当事者から直接事情を聞くヒアリングを改善するための具体案がまとまった。BPO事務局が行った在京・在阪の放送局への聞き取り調査の報告をもとに意見を交わした。

議事の詳細

日時
2011年12月20日(火) 午後4時~6時25分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
堀野委員長、樺山委員長代行、三宅委員長代行、大石委員、小山委員、坂井委員、武田委員、田中委員

委員会運営上の検討課題

審理において申立人と被申立人(放送局)の双方から直接事情を聞くヒアリングの改善について、前回委員会の議論のまとめをもとに詰めの検討を行った。
この結果、書面審理で明らかになった論点や申立人が明確に主張していない点を含め、委員会が問題意識を持つに至った放送倫理上の問題点についてヒアリング前に書面で送付することや、ヒアリング終了後に書面で回答の追加、補足ができること等の改善を講じることでまとまった。
また、苦情申立ての受理から「委員会決定」の通知・公表に至る委員会運営のあり方全般についてもこれまでの検討をもとに最終的なとりまとめをしたが、申立ての受理をめぐって議論となり、次回、さらに検討することとなった。

在京・在阪放送局への聞き取り調査

BPO事務局では2011年9月から10月にかけ在京・在阪の民放テレビ局およびNHK計12局と在京のAM民放ラジオ3局を対象に、BPOの活動について聞き取り調査を実施した。調査はスタッフが各局に出向き、BPOを担当する部門や報道・制作現場の関係者に直接面談して尋ねた。
この日の委員会では、調査結果を(1)BPOの委員会決定や意見書の局内での周知等、BPOの活動全般について局がどう受け止め対応しているか、(2)放送人権委員会に対する局からの意見・要望、の二つに分けてそれぞれ事務局担当者から報告し、これを受けて各委員が全体的な感想や意見を述べた。
次回から、放送人権委員会への意見・要望について議論することにしている。

11月の苦情概要

11月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・2件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・・・15件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

  • 放送人権委員会では2月にNHKを訪問することになった。放送現場を視察した後、関係スタッフとの意見交換を予定している。
  • 次回委員会は2012年1月17日(火)に開かれることになった。

以上

第177回 放送と人権等権利に関する委員会

第177回 – 2011年11月

委員会運営上の検討課題

10月の苦情概要 ……など

先月に引き続き委員会運営上の課題について検討し、事案審理において双方の当事者から直接事情を聞くヒアリングのあり方について議論した。

議事の詳細

日時
2011年11月15日(火) 午後4時~6時15分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
堀野委員長、樺山委員長代行、三宅委員長代行、大石委員、小山委員、坂井委員、武田委員、田中委員、山田委員

委員会運営上の検討課題

委員会運営上の課題の一つであるヒアリングについて検討した。ヒアリングは書面と資料による審理を踏まえ、申立人と被申立人である放送局の双方から直接、詳しい事実関係や主張の内容を尋ねるもので、同じ日に個別に行われている。
この日の委員会では、過去の事案審理を通じて当事者から出されたヒアリングに関する意見や要望について事務局から報告した後、堀野委員長が「双方に納得感を持ってもらうことと迅速な審理との調和をどう図るかだ」と問題提起し、各委員が自由に意見を述べ提案を出し合った。
この結果、事案によっては、書面審理の際に委員会で明らかになった論点を示すなど委員会の問題意識がより明確に伝わるよう改善を図る方向になった。
このあと、BPOホームページからダウンロードできるようにする新しい苦情申立書の書式について検討した。前回の委員会で受けた指摘に基づく修正案を事務局から提示したが、申立書に記入してもらう苦情内容について名誉毀損だけでなくプライバシーの侵害など複数例を示したほうがよいとの意見があり、さらに検討することになった。

10月の苦情概要

10月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・1件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・・・19件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

次回は12月20日(火)に開かれることになった。

以上

第176回 放送と人権等権利に関する委員会

第176回 – 2011年10月

広島での意見交換会

委員会運営上の検討課題 ……など

10月4日に広島で開かれた放送人権委員と中国・四国地区のBPO加盟放送事業者との意見交換会について、事務局からの報告をもとに意見を交わした。委員会運営上の課題について議論を続行した。関連で苦情申立て書の新しい書式とBPOホームページからのダウンロード方式について検討し、実施に向けて細部を詰めることになった。

議事の詳細

日時
2011年10月18日(火) 午後4時~5時50分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
堀野委員長、樺山委員長代行、三宅委員長代行、大石委員、小山委員、坂井委員、武田委員、田中委員、山田委員

広島での意見交換会

放送人権委員会は10月4日、広島で中国・四国地区のBPO加盟放送事業者との意見交換会を行った。毎年1回、各地区毎に順次開かれているもので、広島では6年ぶりの開催となった。当日は放送局側から14社・63人、委員会側からは9人の委員全員と事務局が出席し、「東日本大震災報道」や「顔なし、モザイク映像の多用と報道の信頼性」等のテーマについて3時間半にわたって意見交換した。またテレビカメラ5台が入り記者7人が取材に訪れた。
この日の委員会では、地元の各テレビ局が意見交換会について報じた当日のニュースの録画DVDを全員で視聴し、出席者への事後アンケート調査の結果を事務局から報告した後、各委員が感想や意見を述べた。
アンケートには「伝えるべきは伝えるというメディアとしての気概を持てという委員の皆さんの意見を重く受け止める」等の回答と合わせ、若手がより多く出席できる場の設定、意見交換会の回数増への要望等が寄せられた。
委員からは「放送倫理の向上というBPOの大きな目的からは意義ある会だったのではないか」とする意見や、事後アンケートで出た要望を受けての提案も出された。来年度の課題として事務局で検討することにしている。(意見交換会の内容については後日掲載)

委員会運営上の検討課題

今月の委員会では、これまでの検討結果をふまえ、苦情の申立てから、審理、「委員会決定」の通知・公表に至るまでの委員会運営のあり方について取りまとめをした。また、関連で苦情申立書の新しい書式とBPOホームページから申立て書式をダウンロードする方法について、事務局からの説明をもとに検討した。その結果、実施に向けて今後、細部を詰めることになった。
事案審理において申立人と放送局の両当事者から直接話を聞くヒアリングについての検討は、次回委員会に持ち越した。

9月の苦情概要

9月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・2件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・‥14件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

  • 東日本大震災報道に関するBPO意見交換会を、11月25日に仙台で開催することを事務局より報告した。当日は地元局現場記者からの報告をもとに災害報道について議論を深め、全国の放送局が生かせる点を学ぶことにしている。
  • 次回は11月15日(火)に開かれることになった。

以上

第175回 放送と人権等権利に関する委員会

第175回 – 2011年9月

委員会運営上の検討課題

「大学病院教授~」事案に関連する要望の取り扱い …….など

委員会運営上の課題について検討を重ねた。「大学病院教授からの訴え」事案に関連して寄せられた要望の取り扱いについて協議し、委員会としての見解を通知することになった。

議事の詳細

日時
2011年 9月20日(火) 午後4時~7時20分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
堀野委員長、樺山委員長代行、三宅委員長代行、大石委員、小山委員、坂井委員、武田委員、田中委員、山田委員

委員会運営上の検討課題

事務局による資料の収集・調査のあり方を手始めに2月の委員会から継続的に検討を行い、その後、苦情申立ての受理から委員会での審理、「委員会決定」の通知・公表に至る委員会運営の全般にわたって議論を重ねている。
今月の委員会では、申立人と当該放送局から提出される書面と資料の取り扱い等を中心に意見を交わした。両当事者から事情を聞くヒアリングについても、次回以降検討することにしている。

「大学病院教授~」事案に関連する要望の取り扱い

「大学病院教授からの訴え」事案に関連して、医療問題にかかわる或る団体から寄せられた文書の取り扱いについて協議した。
文書は「委員会決定」の内容について異論を述べ、訂正を求めるとともに、議事録の公開を要求するものであった。
これについて委員会では、当委員会が放送事業者が自ら設置した第三者機関であって、放送によって人権侵害を受けたとする当事者からの申立てに基づいて当該放送事業者との間の具体的紛争を処理するという性格上、当事者以外の団体や個人からの質問や批判に対して見解を示したり、回答することは適当ではないとの見解で一致、また議事録については、インターネットのホームページに掲載している議事概要をもって議事録としていることを確認した。
委員会では上記趣旨の文書をこの団体に送付し、理解を求めることになった。

8月の苦情概要

8月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・5件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・‥73件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

  • 10月4日に広島で開かれる中国・四国地区のBPO加盟放送事業者との意見交換会について事務局より報告した。当日は9人の委員全員が出席し、放送局側との間で人権や放送倫理上の課題について意見を交わすことにしている。(追記:BPO加盟14社・63人が出席して予定通り開催された)
  • 次回は10月18日(火)に開かれることになった。

以上

第174回 放送と人権等権利に関する委員会

第174回 – 2011年7月

委員会運営上の検討課題

仲介・斡旋解決事案の報告 ……など

先月に引き続き、委員会の指示に基づいて事務局が独自に調査・収集する資料の取り扱いの明文化について検討した。その関連で、苦情の受理と審理の手続き全般に及ぶ議論が交わされた。

議事の詳細

日時
2011年 7月19日(火) 午後4時~6時20分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
堀野委員長、樺山委員長代行、三宅委員長代行、大石委員、小山委員、坂井委員、武田委員、田中委員、山田委員

委員会運営上の検討課題

先月の議論を受け、委員会審理において、申立人、被申立人の双方から提出される書面および資料とは別に、委員会の指示に基づき事務局が独自に調査・収集する資料の取り扱いの明文化について検討した。
この日の委員会ではこれに関連してさらに、苦情の受理と審理の手続き全般にまで間口を広げた議論が行われ、双方の当事者から提出される苦情申立書や答弁書等の書面および関係資料の取り扱い、当事者に直接事情を聞くヒアリングのあり方等についても意見が交わされた。
次回もさらに検討を続ける。

仲介・斡旋解決事案の報告

事務局から下記案件について報告し、了承された。

「店の信用にかかわる映像使用をされた」との訴え

在京テレビ・キー局が2011年4月に放送した情報バラエテイー番組について、古美術店の経営者から、「『以前に撮影した店の外観映像を風景として使用したい』とのことで許可したのに、あたかも放送で取り上げられた古美術品を私の店で売ったかのように見える使われ方をされた。このため、お客さんからは『放送ではすごい価格だったのに、なぜあんなに安い値段で売ったのか』といわれ、信用問題になっている」として、テレビ局に対し、放送での「お詫び」を求めて抗議が行われた。
テレビ局は、「店の名前を明示しているわけではないのでホームページ上でのお詫び・訂正であれば可能だが、番組内で取り上げることはできない」と回答した。これに対し経営者はあくまでも番組での「お詫び」を求めたが、双方の話し合いは進展せず、経営者から放送人権委員会に訴えが寄せられた。
委員会事務局では、テレビ局に対し、経営者側の意向を伝えるとともに、局として再検討し話し合いを続けるよう要請した。
その結果、6月に入って番組責任者が直接経営者と会って話し合いを行い、外観映像の使用について番組内で説明を行う旨の提案をした。経営者はこれを了承、その後放送された「お詫び」を視聴した結果、最終的に納得し、本案件は解決した。
(放送2011年4月 解決7月)

6月の苦情概要

6月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・1件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・‥29件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

8月の委員会は休会とし、次回は9月20日(火)に開かれることになった。

以上

第173回 放送と人権等権利に関する委員会

第173回 – 2011年6月

「大学病院教授からの訴え」事案の当該局報告

委員会運営上の検討課題 ……など

今年2月に通知・公表した「大学病院教授からの訴え」事案の当該局であるテレビ朝日・朝日放送より、「委員会決定」を受けての対応報告が再提出された。議論の結果、委員会としての意見を付した上でこれを公表することとなった。

議事の詳細

日時
2011年 6月21日(火) 午後4時~6時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
堀野委員長、樺山委員長代行、三宅委員長代行、大石委員、小山委員、武田委員、田中委員、山田委員

「大学病院教授からの訴え」事案の当該局報告

今年2月に通知・公表した「大学病院教授からの訴え」事案について、当該局であるテレビ朝日・朝日放送から、通知後の対応をまとめた報告書「委員会決定を受けての取り組み」が6月20日付けで再提出され、事務局より報告した。5月にいったん提出されたが、参考として別の文書が添付されていたことから、委員会では再考を求めていた。
提出された対応報告は本事案の決定について、「放送における人権侵害を否定し、直撃取材の正当性も認めるなど、報道の意義を高く評価していただいたものと考える」としつつも、「判決内容の紹介が正確性を欠いているとして放送倫理上問題ありとされた点など、決定内容の一部になお違和感が拭えない部分がある」と述べている。
この日の委員会では、対応報告の内容について改めて議論した。その結果、日本民間放送連盟の「放送倫理・番組向上機構への対応に関する申し合わせ」(2003年6月19日付)に基づき、委員会の意見を付してこれを公表することとした。(局の対応報告と委員会の意見はこちらから)。

委員会運営上の検討課題

委員会運営上の検討課題の一つである「事務局による資料の収集・調査」について議論した。2月の委員会で出た意見を事務局が書面にまとめて配付・報告し、さらに議論を深めた。
放送人権委員会は、申立人、被申立人から提出された書面、資料等に基づく審理を原則としているが、一方で審理の参考とするために、委員会の指示に基づき事務局が資料収集や調査を行うケースもある。
この日の委員会では、事務局による資料の収集や調査が、現行の運営規則で認められていることを改めて確認した上で、事務局が集めた資料の委員会での取り扱いや、申立人と被申立人への開示のあり方等をめぐって意見を交わした。そして、これらの点を今後、明文化する方向で検討することになった。

5月の苦情概要

5月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・4件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・‥22件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

  • 第4回BPO事例研究会を開催
    BPO加盟放送事業社を対象とした第4回事例研究会を、8月2日に千代田放送会館ホールで開催することが決まり、事務局から報告した。
    当日は、放送倫理検証委員会が2010年12月に出した「参議院議員選挙にかかわる4番組についての意見」、および放送人権委員会が今年2月に通知・公表した「大学病院教授からの訴え」事案をもとに、各委員会委員と各局出席者との間で意見を交わすことにしている。
  • 次回委員会は7月19日(火)に開かれることになった。

以上

第172回 放送と人権等権利に関する委員会

第172回 – 2011年5月

「ブランドバッグ販売をめぐる輸入業者からの訴え」事案の審理

「大学病院教授からの訴え」事案の決定について ……など

先月の委員会で審理入りが決まった「ブランドバッグ販売をめぐる輸入業者からの訴え」事案について、実質審理の開始を前に申立人から申立てを取り下げたいとの書面が提出された。委員会で協議した結果、本事案については審理を行わないことを決めた。

議事の詳細

日時
2011年 5月17日(火) 午後3時~6時20分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
堀野委員長、樺山委員長代行、三宅委員長代行、大石委員、小山委員、坂井委員、武田委員、田中委員、山田委員

「ブランドバッグ販売をめぐる輸入業者からの訴え」事案の審理

本事案は、TBSテレビが2010年4月9日に放送した『芸人記者VS超犯罪現場体当たりスクープSP』における、「若い女性に人気があるアメリカのブランドの偽造バッグ販売店を取材し、ブランド品の模倣品販売の実態を視聴者に知ってもらう」という企画について申し立てられたもの。
衣類・雑貨の輸入・卸と販売を手がける申立人は、その行為は法に触れるものではなく、放送により名誉と信用を毀損されたとしてTBSに対し謝罪等を求めて申立てを行い、先月の委員会で審理入りが決まった。
これを受け、申立人の「申立書」に対するTBS側の「答弁書」および関連資料が提出され、今月の委員会から実質審理が開始される運びとなっていた。しかし「答弁書」提出後、申立人より本件申立てを取り下げたいとの意思表示があり、5月12日付で書面が提出された。
委員会で取り扱いについて協議した結果、申立人側にこれ以上争う意思がないものと判断し、本事案については審理を行わないことを決めた。審理入り決定後の申立て取り下げは初のケースとなる。

「大学病院教授からの訴え」事案の決定について

(1)テレビ朝日・朝日放送から対応報告

今年2月に通知・公表した「大学病院教授からの訴え」事案の「委員会決定」で、当該局であるテレビ朝日・朝日放送から報告書「委員会決定を受けての取り組み」(5月2日付け)が委員会に提出され、事務局より報告した。
今回の報告書には参考として別の文書が添付されていた。これの取り扱いをめぐって委員会で意見を交わしたが、この添付書面については局側にも検討を求め、次回の委員会で改めて話し合うことになった。

(2)通知書へ回答

本事案の「委員会決定」に関連して、番組に登場する大学病院医師から弁護士を通じてBPO宛「通知書」が届いた。
「通知書」では、番組前半で取り上げられた直腸がん患者の遺族による裁判で、医師が具体的にこの裁判に関わった事実はないとして、決定の「放送内容の概要」のうち当該部分を訂正するよう求めている。
委員会で検討した結果、当該部分は放送内容の要約に過ぎず、委員会の判断として医師が裁判に関わったかどうかを事実認定したものではないし、要約としても放送内容に反していないので、訂正の必要性は認めないものの、医師から訂正の申し入れがあった事実を決定の「放送内容の概要(3ページ)」に「注記」することとした。(「委員会決定46号」はこちらから)
また「通知書」では、「委員会決定」が、医師の勤める大学病院で起きた医療事件の民事裁判高裁判決を誤って解釈しているとして、この点についても訂正を求めているが、委員会の判断に変わりがないことを改めて確認し、その旨回答することとした。

4月の苦情概要

4月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・1件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・・16件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

  • 毎年、各地区のBPO加盟放送事業者との間で開かれている放送人権委員会との意見交換会を10月4日(火)、中国・四国ブロック地区加盟社を対象に広島で開催することが決まった。
  • 次回委員会は6月21日(火)に開かれることになった。

以上

第171回 放送と人権等権利に関する委員会

第171回 – 2011年4月

審理要請案件「ブランドバッグ販売をめぐる輸入業者からの訴え」~審理入り決定

2月および3月の苦情概要 ……など

3月の定例委員会が東日本大震災の影響により中止となったため、2か月ぶりの開催となった。この日の委員会では、偽造ブランドバッグを販売したとの放送によって名誉と信用を毀損されたと申し立てられた審理要請案件について審議し、審理入りが決まった。

議事の詳細

日時
2011年 4 月19 日(火) 午後4時 ~5時45分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
堀野委員長、樺山委員長代行、三宅委員長代行、大石委員、小山委員、坂井委員、武田委員、田中委員、山田委員

審理要請案件「ブランドバッグ販売をめぐる輸入業者からの訴え」~審理入り決定

偽造ブランドバッグを販売したとの放送によって名誉と信用を毀損されたと申し立てられた審理要請案件について審議し、審理入りが決まった。
番組はTBSテレビが2010年4月9日に放送した『芸人記者VS超犯罪現場体当たりスクープSP』。申立ての対象となったのは、「若い女性に人気があるアメリカのブランドの偽造バッグ販売店を取材し、ブランド品の模倣品販売の実態を視聴者に知ってもらう」という企画。予め店でバッグを購入しアメリカの本部に鑑定を依頼、偽物との鑑定結果を得てレポーター役の女性お笑い芸人らが駅ビル内にある販売店を直撃取材し、その模様等をVTR映像で流した。またゲスト出演した弁護士らが、当該バッグの販売は「法に抵触する恐れがある」等とコメントした。
この放送に対し申立人は「バッグは偽物ではなく違法性もないのに『悪徳ショップ』『違法ショップ』等の罵詈雑言をあびせ、偽物と断定し、販売に違法性があると決め付け、申立人の名誉と信用を毀損した。放送により店員が誹謗中傷を受けて退職し、放送された店が閉鎖に追い込まれるなど営業的にも多大な影響を受けた」等と主張、TBSに謝罪等を求めて交渉を続けてきた。
これに対しTBSは「番組の目的はブランド品の模倣品販売の実態を視聴者に知ってもらうことであり、具体的な店舗名や関係者の特定や告発ではない。したがって、店員の姿、ビル概観や店舗内の映像はモザイク処理等を施し、音声も加工するなど慎重に配慮した。申立人はアメリカの本社がバッグを本物と認めたという証明をしていないし、偽物と判定したことへの反証もしておらず、一般の人々が受け入れられる主張ではない」等と反論。
双方の話し合いは進まず、申立人は今年3月、申立人が代表取締役を務める会社名で委員会に申立書を提出した。
この日の委員会では、申立人から提出された「申立書」および「関連資料」、TBSから提出された「交渉の経緯と局の見解」「関連資料」「番組同録DVD」等をもとに審理入りするかどうかを審議した。この結果、本件申立ては委員会運営規則に定められた審理の対象となる苦情に該当し、且つ団体としての申立て要件も充たしているとして審理入りを決めた。
次回委員会から実質審理が行われる。

2月および3月の苦情概要

2月および3月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・22件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・・102件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

  • 事務局より以下について報告した。
    今年2月に通知・公表が行われた「大学病院教授からの訴え」事案の当該局であるテレビ朝日が4月12日、堀野委員長と本事案の起草主査を務めた小山委員の2人を講師に招き、局内研修会を開催した。同局報道局員ら約50人が出席し、決定の概要について説明を聞いた後、委員との間で意見を交換した。率直で活発なやり取りが続き、研修会は予定の2時間を越えて行われた。
  • 次回委員会は5 月17 日(火)に開かれることになった。

以上

第170回 放送と人権等権利に関する委員会

第170回 – 2011年2月

「大学病院教授からの訴え」事案の通知・公表の報告

委員会運営上の検討課題 ……など

2月8日に行われた「大学病院教授からの訴え」事案の決定通知と公表の模様について事務局より報告した。
放送人権委員会の委員会運営上の課題について検討した。今月は、事案審理に関連した事務局による資料収集とその取り扱いについて実質的な議論を行った。

議事の詳細

日時
2011年 2 月15 日(火) 午後4時~6時25分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
堀野委員長、樺山委員長代行、三宅委員長代行、大石委員、小山委員、坂井委員、武田委員、田中委員、山田委員

「大学病院教授からの訴え」事案の通知・公表の報告

2月8日に行われた本事案の決定通知と記者会見での公表の模様について、事務局がまとめた資料をもとに報告した。また当該局であるテレビ朝日が決定について報じた番組同録DVDを視聴した。
決定通知は8日午後1時30分より行われた。申立人が大学の職務の都合上、上京できなかったため、申立人に対する通知は担当調査役が現地まで出向いて行った。東京では、千代田放送会館7階のBPO第1会議室で、堀野委員長と起草委員である小山委員、武田委員の3人が出席し、被申立人であるテレビ朝日および朝日放送からは4人が出席して通知が行われた。
堀野委員長は「番組の意義は評価するものの、申立人のインタビュー映像の使い方と民事裁判の経緯についての紹介の仕方に放送倫理上の問題があった。また表現上配慮に欠ける部分があった」とする決定内容を伝えた。ただし人格権の侵害については否定した。
通知を受けて申立人は「人格権の侵害が認められなかった点には不満が残るが、放送倫理上の問題があるとの決定には満足している」と感想を述べた。
一方被申立人は、番組制作担当者が「7か月にわたる丁寧な審理にお礼を申し上げる。しかし、決定は判決の解釈や臨床試験という表現の問題など編集権にまで踏み込んでおり、制作者個人としては受け入れがたい」と述べた。
これに対して堀野委員長は「正確に伝えているかどうかであり編集権の問題ではない。編集権があるから誤ったことを伝えていいということにはならない」と述べた。
この後、午後3時前から千代田放送会館2階ホールで記者会見を行い、決定内容を公表した。テレビ、新聞等から25社・44人が取材に訪れ、テレビカメラ5台が入った。
会見では堀野委員長が決定の概要を説明し、「社会的事象に切り込もうとした番組の意図は高く評価したい。しかし、裁判所の判断を裏付けとするなら判決の紹介は正確であるべきだ。また申立人のインタビューの使い方には取材目的との間にズレがある。これらの点で放送倫理上問題ありとなった」と述べた。
起草主査を務めた小山委員は「申立人が主張していた実名と映像の使用による人格権の侵害については、申立人が準公人という立場にあること、本件報道は過去の出来事を取り上げているが、現在につながる公共性・公益性があること等から人格権の侵害はないと判断した。また申立人に対する直撃取材の問題についても人格権の侵害はなく放送倫理上の問題もないと判断した」と補足した。
武田委員は「医療という専門家集団を監視することもマスメディアの役割であり、やらなければならない仕事だ。しかし、番組の正義を貫くためにはもう少し方法論を考えてほしい」とコメントした。
記者から、予定より会見が遅れたのは反論等があったからかと質問が出た。
堀野委員長は「編集権にまで口を挟んでいるという意見もあった。われわれは、編集権があっても伝えることは正確に伝えるべきだと述べた」と答えた。
直撃取材の問題点について質問が出た。
堀野委員長は「直撃取材そのものには問題はなかったが、映像が局側の説明する意図とは違った使い方をされているところに問題があった」と述べた。
記者からさらに「直撃取材は最後の手段であり、アリバイ的取材に陥る危険性もある。本件では直撃によって教授の言い分については尽くされた取材ができていたのか」と質問が出た。
堀野委員長は「詳しいやり取りは聞いていないが、放送では教授は身のあることを答えていない」と述べた。

委員会運営上の検討課題

放送人権委員会の委員会運営上の課題について検討した。今月は当面の課題として、事務局による資料の収集・調査について実質的な議論を行った。
放送人権委員会は、申立人、被申立人から提出された書面、資料等に基づく審理を原則としているが、一方で審理の参考とするために、委員会の指示に基づき事務局が資料収集をするケースもある。
この日の委員会では、インターネットや情報公開制度を使った資料収集が容易になった現状において、こうした事務局の資料収集や調査のあり方、委員会審理における用い方等について各委員が様々な角度から意見を述べた。
これらを整理したうえ、次回委員会でさらに議論を深めることになった。

1月の苦情概要

1月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・2件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・・39件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

  • 2月4日に開かれた第3回BPO事例研究会について、事務局がまとめた資料をもとに報告した。当日はBPO加盟30社89人が出席し、「上田・隣人トラブル殺人事件報道」事案の委員会決定をもとに、犯罪被害者とその遺族に対する取材と放送上の配慮について議論した。また昨年秋刊行された『判断ガイド2010』で、放送倫理上の問題を考える目安として示された「事実の正確性」など5項目についての説明が行なわれた。このあと、最近目立って増えている顔なしインタビューの問題についても意見を交わした。
  • 次回委員会は3月15日(火)に開かれることになった。

以上

第169回 放送と人権等権利に関する委員会

第169回 – 2011年1月

「大学病院教授からの訴え」事案の審理

委員会運営上の検討課題 ……など

「大学病院教授からの訴え」事案の「委員会決定」第二次案について審理した。この結果、決定案は大筋で了承され、一部表現上の手直しをしたうえで持ち回りによる委員会を開き、最終了承される見通しとなった。

議事の詳細

日時
2011年 1月18日(火) 午後4時 ~7時
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
堀野委員長、樺山委員長代行、三宅委員長代行、小山委員、坂井委員、武田委員、田中委員、山田委員

「大学病院教授からの訴え」事案の審理

本事案は、テレビ朝日・朝日放送が2010年2月28日に放送した『サンデープロジェクト』の特集コーナー「隠蔽体質を変える~大学病院医師の孤独な闘い~」について、大学病院教授から、不当な直撃取材をされたことや放送の内容が偏向し人権を侵害されたと申立てがあったもの。
今月の委員会では、12月の審理を受けて修正された「委員会決定」第二次案について審理し、内容や表現について改めて時間をかけて詳細な検討を行った。この結果、決定案は大筋で了承され、一部表現の手直しをしたうえで持ち回りによる委員会を開き、最終了承される見通しとなった。

委員会運営上の検討課題

放送人権委員会の委員会運営上の検討課題について事務局より説明した。
インターネット社会の到来や放送と通信との連携、放送に対する視聴者意識の変化等に伴い、委員会運営において新たな検討課題が生じている。
委員会は2007年7月に運営規則の改正を行っているが、こうした状況の変化を受け、改めて運営上の課題について検討を始めることになったもの。
この日は、委員会の指示を受けて事務局がとりまとめた検討事項について説明した。実質的な議論は来月から行われる。

12月の苦情概要

12月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・0件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・・64件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

  • BPO加盟各社を対象に2月4日に開かれる「第3回BPO事例研究会」について事務局より説明した。
    当日は、「上田・隣人トラブル殺人事件報道」事案をもとに「犯罪被害者とその家族への取材と放送における配慮の必要性」について山田委員が説明し、各局出席者との間で意見を交換する。また三宅委員長代行が、先ごろ発刊された『判断ガイド2010』で、放送倫理について考える目安として設けられた「事実の正確性」、「客観性、公平・公正」など5つの分類項目について説明するほか、激増する「顔なしインタビュー」の問題についても議論することにしている。
  • 次回委員会は2 月15 日(火)に開かれることになった。

以上

第168回 放送と人権等権利に関する委員会

第168回 – 2010年12月

「大学病院教授からの訴え」事案の審理

2件の審理要請案件~いずれも審理対象外と決定 ……など

「大学病院教授からの訴え」事案の「委員会決定」案について審理した。原案を修正して第二次案を作成し、次回委員会でさらに審理のうえ最終決定としてまとめることとなった。2件の審理要請案件について審議した結果、いずれも審理対象外との結論となった。

議事の詳細

日時
2010年12 月21 日(火) 午後3時 ~7時00分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
堀野委員長、樺山委員長代行、三宅委員長代行、小山委員、坂井委員、武田委員、田中委員、山田委員

「大学病院教授からの訴え」事案の審理

この事案は、テレビ朝日・朝日放送が2010年2月28日に放送した『サンデープロジェクト』の特集コーナー「隠蔽体質を変える~大学病院医師の孤独な闘い~」について、大学病院教授から、不当な直撃取材をされたことや放送の内容が偏向し人権を侵害されたと申立てがあったもの。
今月の委員会では、12月14日の起草委員会を経て提出された「委員会決定」案について審理した。
まず決定の対象となる範囲を整理した後、過去の裁判等を取り上げて申立人の実名や映像を出したことが申立人の人格権に触れるかどうか、申立人への直撃取材や収録したインタビュー素材の扱い方に問題はなかったかどうか、さらに裁判についてのコメントなどに偏った点がなかったかどうかなど、本事案の主な論点について決定内容を詳細に検討した。
この結果、起草委員が原案を修正して第二次案を作成し、次回委員会でさらに審理のうえ最終決定としてまとめることになった。

2件の審理要請案件~いずれも審理対象外と決定

  • 鹿児島県阿久根前市長らからの人権侵害の訴え

    申立人らは、2010年8月29日に放送された在京テレビ局の報道番組において、当時阿久根市長であった竹原申立人が市長の立場で行った専決処分について、リポーターから「専決処分が極めて例外的なこと」「これは明らかに違法です」との発言がなされたことは、重大な人権侵害にあたるとして、局に対して謝罪と訂正を求めた。しかし、話し合いはつかず、委員会に対し苦情を申し立て、審理を要請した。
    委員会では、双方から提出された文書等をもとに審議した結果、「放送倫理・番組向上機構の目的や当委員会の任務に鑑み、市長による専決処分という公職者による公権力の行使そのものを対象とした放送部分についての苦情は、委員会が審理対象として取り扱うべき苦情に含まれない」として、委員全員の意見が一致した。
    これにより本案件は審理対象外と決定した。

  • 県知事選立候補予定者からの公平・公正に関する訴え

    沖縄県知事選挙の立候補予定者であった申立人は、沖縄のテレビ局が2010年11月1日に放送した「沖縄県知事選公開討論会」において、同じく立候補予定者であった他の2名を討論者として招き、申立人を招かなかったことについて、申立人を他の2名の立候補予定者と同様に番組に出演させなかったことは、選挙の公正さを害する不公平な取扱いであったとして、委員会に対し苦情を申し立て、審理を要請した。
    委員会は、当該局に対して局側の見解提出を要請し、双方から出された文書・資料等をもとに審議した。
    この結果、「当該局が3名の立候補予定者の中から公開討論に招く立候補予定者を絞り込んだ基準そのものは不合理とは認められず、かつ、基準へのあてはめが平等を欠いたことをうかがわせる事情も格別見当たらない。したがって、本件申立ては、『名誉、信用、プライバシー・肖像等の権利侵害、およびこれらに係る放送倫理違反に関する』苦情(委員会運営規則第5条1項)には当たらず、かつ、委員会が『公平・公正を欠いた放送により著しい不利益を被った者』(同条2項)からの申立てとして取り扱うべきものとも判断されない」として、委員全員の意見が一致した。
    これにより本案件は審理対象外と決定した。

11月の苦情概要

11月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・1件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・・23件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

  • 12月7日に札幌で開かれた放送人権委員と北海道地区のBPO加盟放送事業者との意見交換会について、事務局がまとめた資料を配布し報告するとともに、会の模様を放送した地元テレビ局の番組同録DVDを視聴した。
    札幌での開催は2003年10月以来7年ぶり2回目で、加盟9社から62人、一方、委員会側からは委員7人と事務局が出席し、「ジャーナリズムへの信頼向上のために~現場の困難をどう乗り越えるか」を全体テーマに、約3時間にわたってやり取りを交わした。
    また記者7人が取材に訪れ、テレビカメラ5台が入った。
    堀野委員長は基調スピーチで、「キバを抜かれたジャーナリズムは無力だが、優しさを欠いたジャーナリズムは凶器と化す」という清水英夫氏の言葉を引用しつつ、「放送はもっと事実を突っ込んでほしい。一方で、視聴者や被取材者との緊張感を欠いて優しさを失くした放送は凶器と化して人権を侵害する。その両面を自覚して仕事をしてほしい」と要望した。
    個別テーマの議論では、特に顔なしやモザイクなど匿名化手法の問題で、各局から顔出しでのインタビューが難しくなっている現状が次々と報告された。記者の若年化に伴い、”顔は個人情報でしょう”といって、対象者と向き合う前に顔を切って撮影して来てしまうという悩みも聞かれた。
    これに対して委員からは「内部告発者の人権擁護やプライバシーの観点から顔を隠す必要がある場合はある。しかし、なんとなく成り行きで隠してしまう場合もあるのではないか。本当に顔なしの必要性や必然性があるケースなのか真剣に議論してほしい」という要望や、「個人情報の保護は万能ではない。事実報道の価値は間違いなくあり、すべてが匿名化したら民主主義社会は成り立たない。両方の価値があってこそバランスが取れるし、どちらが優先するかはケースバイケースだということをちゃんと考えてほしい」とする意見が出された。
  • 今後のICT(情報通信)分野における国民の権利保障のあり方について検討してきた総務省ICTフォーラムの最終会合が12月14日に開かれ、報告書が採択された。そのBPOに関連する事項について事務局より報告した。
  • 次回委員会は2011年1月18日(火)に開かれることになった。

以上

第167回 放送と人権等権利に関する委員会

第167回 – 2010年11月

「大学病院教授からの訴え」事案の審理

「上田・隣人トラブル殺人事件報道」事案でテレビ朝日から対応報告書 ……など

「大学病院教授からの訴え」事案の審理が行われ、「委員会決定」案の起草に入ることが決まった。「上田・隣人トラブル殺人事件報道」事案で「放送倫理上問題あり」とされたテレビ朝日から、委員会決定を受けた後の対応報告書が提出された。

議事の詳細

日時
2010年11月16日(火) 午後4時 ~7時45分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
堀野委員長、樺山委員長代行、三宅委員長代行、大石委員、小山委員、坂井委員、武田委員、田中委員、山田委員

「大学病院教授からの訴え」事案の審理

この事案は、テレビ朝日・朝日放送が2010年2月28日に放送した『サンデープロジェクト』の特集コーナー「隠蔽体質を変える~大学病院医師の孤独な闘い~」について、大学病院教授から、不当な直撃取材をされたことや放送の内容が偏向し人権を侵害されたと申立てがあったもの。
今月の委員会では、先月のヒアリング結果等をもとに、教授への直撃取材やインタビューの扱いについて問題があったかどうか、民事裁判結果や刑事処分についてのコメントに偏りがなかったかどうかを中心に、突っ込んだ意見が交わされた。また教授側に、取材に応じて説明すべき責任がなかったのかどうかについても話し合われた。
審理の結果、起草委員会を開いて「委員会決定」案を作成し、来月の委員会ではこれをもとに詰めの審理を行うことになった。

「上田・隣人トラブル殺人事件報道」事案でテレビ朝日から対応報告書

「上田・隣人トラブル殺人事件報道」事案で、8月5日に放送倫理上問題あり(見解)の「委員会決定」を受けたテレビ朝日は、決定への対応と取り組みをまとめた報告書を11月4日に委員会に提出した。事務局より報告し了承された。
(報告書全文は、当ホームページ「委員会決定第44号」の「当該局の対応」をご覧ください。)

10月の苦情概要

10月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・1件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・・53件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

  • 11月10日に開かれた総務省ICTフォーラムでBPOに対するヒアリングが行われ、今後の取り組みについて説明したことを事務局より報告した。
    ヒアリングにはBPO飽戸理事長らが出席、「放送の自由を守る力は視聴者の信頼にある」という認識の下、放送界の自主的な第三者機関として公平な判断に努め、BPOの活動について一般への周知拡大を図るとともに、放送局に対しても、様々なレベルでの取り組みを通じてより浸透を深めていく考えであると表明した。
  • 次回委員会は12 月21 日(火)に開かれることになった。

以上

第166回 放送と人権等権利に関する委員会

第166回 – 2010年10月

「大学病院教授からの訴え」事案のヒアリング

9月の苦情概要 ……など

「大学病院教授からの訴え」事案のヒアリングが行われた。申立人である教授への直撃取材の経緯や医療裁判の判決内容と放送での表現等、本事案の論点について通常よりも長い時間をかけ、双方から詳細な聞き取りを行った。来月の委員会ではこれをもとにさらに議論を深めることになった。

議事の詳細

日時
2010年10月19日(火) 午後3時~7時25分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
堀野委員長、樺山委員長代行、三宅委員長代行、大石委員、小山委員、坂井委員、武田委員、田中委員、山田委員

「大学病院教授からの訴え」事案のヒアリング

この事案は、テレビ朝日・朝日放送が2010年2月28日に放送した『サンデープロジェクト』の特集コーナー「隠蔽体質を変える~大学病院医師の孤独な闘い~」について、大学病院教授から不当な直撃取材をされたことや放送の内容が偏向していたとして申立てがあったもの。
今月の委員会では申立人とテレビ朝日・朝日放送に対するヒアリングが行われた。
ヒアリングで申立人の教授は、番組内で取り上げられたケースは5年前に裁判で決着しており、しかも自分はその当事者でもなかったことや、出勤前に自宅近くで強引なインタビューを受けたと述べ、番組内容や取材姿勢を批判した。
これに対して局側は、教授は医師の上司で臨床試験の責任者でもあり、当事者として取材に応じるべき立場にあったことや、インタビューの際もきちんと名乗って行い、取材に問題があったとは考えていないと述べた。また裁判結果等のコメントに関しても、視聴者に少しでも分かり易い表現を選んだ結果、と主張した。
委員会ではこの日のヒアリング内容を整理し、来月の委員会でさらに議論を深めることになった。

9月の苦情概要

9月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・4件
    (個人又は直接の関係人からの要請
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・・26件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判

その他

  • 9月16日に行われた「機能訓練士からの訴え」事案の「委員会決定」の通知・公表について報じた、当該局であるTBSテレビの当該番組『報道特集NEXT』など2番組の同録DVDを視聴した。
  • 「上田・隣人トラブル殺人事件報道」事案で、放送倫理上問題ありの「見解」を受けたテレビ朝日が、10月8日に社内勉強会を開いたことを事務局より報告した。起草委員を務めた山田健太委員を招き、山田委員の報告をもとに決定内容や事件取材のあり方等をめぐって熱心な意見交換が行われた。
  • 次回委員会は11月16日(火)に開かれることになった。

以上

第165回 放送と人権等権利に関する委員会

第165回 – 2010年9月

「大学病院教授からの訴え」事案の審理

「機能訓練士からの訴え」事案の通知・公表の報告 ……など

「大学病院教授からの訴え」事案の審理が行われ、番組で取り上げられた民事裁判の判決や教授への取材方法について、担当委員からの説明とそれに基づく議論が行われた。9月16日に行われた「機能訓練士からの訴え」事案の「委員会決定」の通知・公表について、事務局より報告した。委員会終了後、在京地区各社との意見交換会が開かれた。(意見交換会の詳細はシンポジウム・意見交換会の項をご覧ください)

議事の詳細

日時
2010年 9月21日(火) 午後3時~5時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
堀野委員長、樺山委員長代行、三宅委員長代行、大石委員、小山委員、坂井委員、武田委員、田中委員、山田委員

「大学病院教授からの訴え」事案の審理

この事案は、テレビ朝日・朝日放送が2010年2月28日に放送した『サンデープロジェクト』の特集コーナー「隠蔽体質を変える~大学病院医師の孤独な闘い~」について、大学病院教授から不当な直撃取材をされたことや放送の内容が偏向していたとして申立てがあったもの。
2回目の実質審理となった今回は、番組で取り上げられた民事裁判での地裁と高裁の判決について、症例登録票の扱いや患者に対する説明義務の有無などの争点と判決の解釈について、担当委員から説明が行われた。また取材担当の委員からは、教授への取材方法をめぐって問題点があったかどうか、報告が行われた。さらに「委員会決定」案の起草を行うことになった委員からは、全体的な観点から検討すべき問題点が指摘された。本事案の審理では、メディアの取材行為や医療裁判に関する的確な理解と判断が欠かせないため、このように委員が専門にかかわる分野について分担して問題点の整理を行う、これまでにない方法がとられた。
この日の委員会では、申立人、被申立人から詳しい事情を聞いたうえでさらに議論を深める必要があると判断され、次回委員会でヒアリングを行うことになった。

「機能訓練士からの訴え」事案の通知・公表の報告

9月16日に行われた本事案の「委員会決定」の通知・公表の概要、および通知・公表を受けての各局の放送対応をまとめた資料を事務局より配付し、報告した。
(決定全文はホームページの「委員会決定」の項、第45号をご覧ください)
通知・公表の概要は以下の通りである。通知は、9月16日午後1時30分よりBPO会議室で、堀野委員長および起草委員を務めた坂井委員と田中委員が出席し、申立人、被申立人が同席する形で行われた。
堀野委員長はまず、「本件放送に名誉や肖像権等の権利侵害はなく、放送倫理違反に当たる点も認められない」とする見解を通知し、「決定の概要」を読み上げた。そのうえで、権利侵害がないと委員会が判断した理由を説明するとともに、「補助的映像であっても、重要なものとして扱う以上は、そこに映されている人たちの肖像や気持ちに事前に十分に配慮してほしかった」と、被申立人に対して要望を述べた。
通知の後、個別に意見や感想を聞いた。
申立人は委員会での審理にお礼を述べた後、「事実関係の認定に不満はない。しかし、それをどう判断するかについては加害者側と被害者側で溝があるというのが率直な感想だ。委員会は社会的に許容される範囲内と判断されたのだと理解した。ただ、11月の放送で、自分たちの活動理念と全く立場を異にする例と一緒に放送されたことは大いに不満である。また、委員会で指摘していただいたが、これだけ映像を使用しながら事前に何の連絡もなかったことは、公共放送としておかしいのではないか」などと述べた。
被申立人は、「事実関係については主張を認めてもらえてありがたく思う。今回の映像使用に関しては、提供映像であったため権利処理に軽率な点があったことは指摘されたとおりである。提供映像を使用する場合、報道だけでなく制作も含め教訓として活かしていきたい」などと述べた。
午後3時から千代田放送会館2階ホールで記者会見を開き、決定内容を公表した。26社52名が取材に訪れ、テレビカメラ6台が入った。
まず堀野委員長が決定の概要を説明した後、坂井委員から「委員会決定」の流れに沿って詳しく説明した。坂井委員は「企画の意図はよかったが、映像に用いられている人たちの考え方に事前にもっと思いをいたしていれば、申立てを防ぐことも可能だったかもしれない」とコメントした。
田中委員は「テレビで取り上げられる側の期待と公平・公正でありたいと思う局側とのスタンスにはギャップがあるものだが、肖像権処理に問題があって双方のやり取りが増え、複雑になった。全体としてはよい番組だった」と述べた。
記者との質疑応答では、申立人からTBS宛て2010年1月15日付けのFAX文書について質問があった。申立人による番組の企画提案であった旨を答えると、「申立てにある『善意をふみにじる行為』の中にこのことも含まれているのか」と質問が続いた。
坂井委員と堀野委員長が回答し、TBSがこの企画案を断ったことを契機に申立てが行われたこと、素材となる一般の人の期待と現実の番組との間の「ずれ」や、放送される側の期待と局側の考えの「ずれ」が申立ての背景にはあると思われるが、編集権はあくまでも局側にあると判断したこと、企画についての具体的な合意が双方にあれば別だがそれはなかったことなどを説明した。
「TBSはこの機能訓練士に取材をしたのか」という質問が出た。取材をしていない旨を答えると、「なぜ取材をしなかったのか」と重ねて質問があった。
堀野委員長は、「番組のテーマは障害を持つ少女がなぜ普通中学校に進学できないのかを問題提起することにあり、少女の機能獲得のプロセスや方法がメインストリームではないということだった。企画意図を考えると、委員会は機能訓練士を取材しなかったこと自体に問題があるとは判断しなかった。しかし、映像の使用に関連して事前に挨拶はするべきであったと考えた」などと答えた。

8月の苦情概要

8月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・3件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・41件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

  • 8月25日に開かれた総務省ICTフォーラムで、BPOの活動についてのヒアリングが行われた。当日のやり取りの概要を事務局より報告した。
  • 毎年開かれている放送人権委員と各地のBPO加盟放送事業者との意見交換会を、今年は12月7日に札幌で北海道地区の放送事業者を対象に開くことになり、事務局より報告した。
  • 次回委員会は10月19日(火)に開かれることになった。

以上

第164回 放送と人権等権利に関する委員会

第164回 – 2010年8月

「機能訓練士からの訴え」事案の審理

「大学病院教授からの訴え」事案の審理 ……など

「機能訓練士からの訴え」事案の「委員会決定」案について審理し、大筋で了承した。先月の委員会で審理入りが決まった「大学病院教授からの訴え」事案の実質審理が始まった。「上田・隣人トラブル殺人事件報道」事案の「委員会決定」の通知・公表について、事務局より報告した。

議事の詳細

日時
2010年 8 月17 日(火) 午後3時 ~6時40分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
堀野委員長、樺山委員長代行、三宅委員長代行、大石委員、小山委員、坂井委員、武田委員、田中委員、山田委員

「機能訓練士からの訴え」事案の審理

本事案は、2009年4月11日にTBSテレビが『報道特集NEXT』で放送した「車イスの少女が入学できない訳」に対し、少女に幼い頃から機能訓練を行っている機能訓練士が肖像権の侵害等を申立てたもの。
今月の委員会では、8月4日の起草委員会を経て提出された「委員会決定」案について審理した。
時間をかけて詳細に検討した結果、決定案は大筋で了承され、起草委員による一部修正作業を経て、持ち回り委員会で検討のうえ最終了承される見通しとなった。

「大学病院教授からの訴え」事案の審理

この事案は、テレビ朝日・朝日放送が2010年2月28日に放送した『サンデープロジェクト』の特集コーナー「隠蔽体質を変える~大学病院医師の孤独な闘い~」について、大学病院教授から、不当なインタビュー取材をされたことや放送の内容が偏向していたとして申立てがあったもの。
委員会は今月から実質審理に入り、教授へのインタビューや番組のコメント等の適切さ、公平・公正性等について議論が交わされた。本事案は番組内容が医療や裁判の専門的な分野に関わっていることから、担当の委員を決めてポイントを整理し、来月さらに本格的な審理を進めていくことになった。
申立人は、「自宅前でのいきなりインタビューは著しい人権侵害であり、内容も一方的な偏向報道である。放送後に自分に対する誹謗中傷の電話やFAXが寄せられ人権を侵害された」として、局側に謝罪と再発防止策の提示を求めている。
これに対してテレビ朝日・朝日放送は、「番組は医療過誤裁判の背景にある医療界の問題を浮かび上がらそうとして企画されたものである」とし、番組内で取り上げられた教授について、「批判への受忍限度を超えるものではない」と謝罪や防止策の提示を否定している。

「上田・隣人トラブル殺人事件報道」事案の通知・公表の報告

8月5日に行われた本事案の「委員会決定」の通知・公表の概要、および通知・公表を受けての各局の放送対応や新聞等での反響をまとめた資料を事務局より配付し、報告した。あわせて、テレビ朝日の当該番組『報道ステーション』が決定内容を報じた当日夜の番組同録DVDを視聴した。
(決定内容の詳細は「委員会決定」の項、決定第44号をご参照ください。)
通知・公表の概要は以下のとおりである。
通知は、堀野委員長と起草委員を務めた三宅委員長代行、山田委員が出席して、午後1時30分からBPO会議室で、申立人と被申立人が同席する形で行われた。
堀野委員長は先ず、「放送内容に名誉毀損や敬愛追慕の情の侵害という法的な権利侵害があったとは認められない、しかし、取材、放送のあり方に放送倫理上の問題があった」と述べ、「委員会決定」に沿ってポイントを説明した。決定には山田委員ら2人による「意見」が付けられており、山田委員はその趣旨を説明した。
通知の後、申立人とテレビ朝日から個別に意見や感想を聞いた。
申立人は「事件が起きてから警察への対応などで忙しく、悲しんでいる暇もなかったが、放送を見て、これが倫理的に人間的に正しいのかと感じて怒りがおさまらなかった。倫理面で問題があったという判断をいただけて本当に良かったと思っている」と述べた。
テレビ朝日の報道担当者は「決定は真摯に受け止めたい。この場を借りて、申立人と関係者に対し改めてお詫びしたい。ただ、遺族へのアプローチ、取材は非常に難しい側面があることもご理解いただきたい。これから改めて、犯罪被害者、その遺族の取材にもっと真摯に向き合わなければいけないと思っている」などと述べた。
公表の記者会見は、午後2時30分から千代田放送会館2階ホールで行い、21社48人の出席があった。
まず堀野委員長が決定の概要を伝えた。
続いて、三宅委員長代行は「決定文の『放送倫理上の問題』において、『犯罪被害者報道に関する報道指針等』という1項目を立てた。『事件・事故・災害の被害者、家族、関係者に節度をもった姿勢で接する』という民放連の報道指針と、犯罪被害者等基本法が求めている『事件の被害者等の名誉または生活の平穏を害することのないよう、十分配慮すること』という努力義務、この視点が放送倫理上問題ありという判断の根拠になっていることを補足しておきたい」と述べた。
山田委員は「意見」について説明し、「1つは被害者遺族の思いと実際の報道にズレがある。放送内容におおよそ間違いはないが、細かい部分で違いがある。もう少し丁寧な取材や報道ができたのではないか。2つ目は、取材段階では張り紙等を見て被害者遺族に対する配慮の姿勢を示しながら、放送では悪者イメージを一方的に作っている。この取材と報道とのギャップを認めざるを得ない。今回の事例をもとに被害者の取材、報道のあり方をさらに検討していただきたい」と述べた。
このあと記者から質問を受けた。
「遺族は、近所の噂、悪口に対する弁明の機会を奪われたと思ったのではないか」という質問が出た。
堀野委員長は「取材で得た内容は、被害者側の積み重ねてきた行動をいくつも具体的に述べている。それに対する被害者遺族側からの弁明は一切聞かれていない。明らかに不公平だったと言わざるを得ない。必ず遺族を取材せよ、と言っているのではない。この事件で、こういう取材の内容を、こういう番組に使うという念頭であれば、当然被害者遺族に対する接触は試みるべきだったろうと、私どもはそう判断した」と答えた。
本件申立ての期間制限に関する質問が出た。
委員長は「『広島県知事選裏金疑惑報道』事案の審理において、放送内容が動画と音声を伴ってネット上で継続して流れている場合には、放送された日から3か月以内に局に申し立てられた苦情を取り扱うとした運営規則は少々きつすぎるのではないか、柔軟に対処しようということで、動画・音声による配信が終わってから3か月以内というような形に初めて解釈し直した。本件の場合も、局に申立てがあった7月時点まで動画・音声を伴って流れていたので、3か月要件は満たしていると判断して審理入りした」と説明した。
「そもそも境界問題の企画の頭に、なぜこの事件を持ってこなければならなかったのか、テレビ朝日には尋ねたのか」という質問があった。
委員長は「広い意味での境界に関するトラブルだから、別に不自然には感じなかったということだった。私どもは、境界線そのものに関する争いでないのに、なぜこの事件を持ってくる必要があったのかと、しかも、その持ってき方が不公平だと。ただ、この点に正面から踏み込むことは番組の作り方に介入することになり、編集の自由の範囲内ということで倫理上の問題は問わなかった」と答えた。

7月の苦情概要

7月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・・・・0件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・・・・45件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判

その他

次回委員会は9 月21 日(火)に開かれることになった。

以上

第163回 放送と人権等権利に関する委員会

第163回 – 2010年7月

「機能訓練士からの訴え」事案のヒアリングと審理

「上田・隣人トラブル殺人事件報道」事案の審理 ……など

「機能訓練士からの訴え」事案のヒアリングと審理が行われ、「委員会決定」の方向が固まった。「上田・隣人トラブル殺人事件報道」事案の「委員会決定」修正案について審理し、大筋で了承を得た。このほか、審理要請案件について審議し、審理入りが決まった。

議事の詳細

日時
2010年 7 月20日(火) 午後3時~8時15分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
堀野委員長、樺山委員長代行、三宅委員長代行、大石委員、小山委員、坂井委員、武田委員、田中委員、山田委員

「機能訓練士からの訴え」事案のヒアリングと審理

本事案は、2009年4月11日にTBSテレビが『報道特集NEXT』で放送した「車イスの少女が入学できない訳」に対し、少女が幼い頃から機能訓練を受けている機能訓練士が肖像権の侵害等を申立てたもの。
今月の委員会では、申立人および被申立人であるTBSに対するヒアリングと、ヒアリングを受けての審理を行った。
申立人は、最も訴えたいこととして「TBSは1回目の放送では申立人らに無断で、申立人らが登場する少女の機能訓練の映像を長々と使用した。2回目の放送では、申立人らにとっては不本意な字幕表記を映像に加えただけだった。しかも、そのように多くの映像を使用しながら、申立人らに対し何ら取材も行わないなど、番組に登場した他の人物と比較すると扱いが軽んじられた」と述べた。
一方、TBSへのヒアリングには報道局の番組担当者ら計4名が出席し、「番組の目的や趣旨から機能訓練の映像は欠かせないものであり、少女の親が撮影した映像であること等から、申立人らが登場しても特に問題はないと判断した。とは言え、申立人からの苦情を受けて、やはり配慮が足りなかった面もあったことは認めて謝罪した。その後のやり取りでは、報道番組である当番組において申立人らの活動の宣伝にならないよう、その点に特に注意して対応した」などと述べた。
ヒアリングの後の審理では、本件報道において申立人が主張している肖像権の侵害があったかどうかを中心に議論した。その結果、「委員会決定」の方向性がほぼ固まり、起草委員が決定案をまとめることになった。
次回8月の委員会で、起草委員会を経て提出される「委員会決定」案の審理を行う。

「上田・隣人トラブル殺人事件報道」事案の審理

この事案は、テレビ朝日が2008年12月23日の『報道ステーション』で放送した「特集 身近に潜む境界トラブルの悲劇・住宅地の惨劇はなぜ起きた」について、被害者の遺族が申し立てたもの。
今月の委員会では、2回目の起草委員会を経て修正された決定案が審理され、大筋で了承された。若干の手直しのうえ、持ち回り委員会により最終了承される運びとなった。また、一部の委員は決定案を支持する立場で「意見」を書く意向を示した。 本事案で申立人は、事実に反する放送内容によって両親に対する敬愛追慕の情や名誉を侵害されたなどとして、謝罪と訂正を求めている。
これに対し、テレビ朝日は、放送内容は虚偽ではなく名誉侵害などの不法行為はないと反論している。

審理要請案件「大学病院教授からの訴え」、審理入り決定

テレビ朝日・朝日放送は2010年2月28日の『サンデープロジェクト』の特集コーナーで「隠蔽体質を変える~大学病院医師の孤独な闘い~」を放送した。この番組に対して大学病院の教授から人権侵害等の申立てがあった。
番組は、医療をめぐる裁判では、原告側(患者側)が勝つ割合が一般の民事裁判に比べてはるかに少ないが、これは医療界に根強い隠蔽体質にも原因があるとして、これを告発し続けるある大学病院医師の活動を通して医療界の現状を浮き彫りにしようとするものであった。そして、医師の勤める大学でも、かつて患者が薬の臨床試験をめぐって起こした裁判で、医師の探し出した記録がもとで患者側が勝訴したことや、こうしたことがもとで医師が上司である教授からパワーハラスメントを受けたことを取り上げ、教授に対して直撃インタビューを行っている。
これに対して教授は「拒否したにも関わらず、自宅前でいきなりインタビューされたのは自分に対する著しい人権侵害であり、番組自体も一方的な偏向報道である」として3月にテレビ朝日に対して抗議した。
抗議の後、テレビ朝日と教授との間で2回にわたり文書や電話によるやり取りが交わされたが、話し合いは進展せず、教授は5月末に申立てを行った。直接交渉は申立て後も継続されたものの、結局、解決には至らなかった。
このため、委員会は今月の委員会で双方から提出された文書や番組DVDを基に審議した結果、本案件は運営規則に定められた要件を満たしているとして審理入りすることを決めた。実質審理は8月の委員会から開始される。
申立人の主張に対して、テレビ朝日・朝日放送は「教授は裁判や医師に対するパワーハラスメントの当事者であり、取材に応じるべき立場にあった。また番組は多角的な取材に基づいた中立・公正なもので、医療界の体質改善に資する方策を提示する目的だった」と主張している。

6月の苦情概要

6月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・・・・2件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・・・・35件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

次回委員会は8 月17 日(火)に開かれることになった。

以上

第162回 放送と人権等権利に関する委員会

第162回 – 2010年6月

「上田・隣人トラブル殺人事件報道」事案の審理

「機能訓練士からの訴え」事案の審理 ……など

「上田・隣人トラブル殺人事件報道」事案の審理が行われ、起草委員会から提出された「委員会決定」案について検討した。先月の委員会で審理入りが決まった「機能訓練士からの訴え」事案の実質審理が始まった。このほか、3月に「拉致被害者家族からの訴え」事案で「委員会決定」の通知を受けたテレビ朝日より、その後の取り組みをまとめた報告書が提出された。

議事の詳細

日時
2010年 6月15 日(火)午後4時~8時20分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
堀野委員長、樺山委員長代行、三宅委員長代行、大石委員、小山委員、坂井委員、武田委員、田中委員、山田委員

「上田・隣人トラブル殺人事件報道」事案の審理

この事案は、テレビ朝日が2008年12月23日の『報道ステーション』で放送した「特集 身近に潜む境界トラブルの悲劇・住宅地の惨劇はなぜ起きた」について、被害者の遺族が申し立てたもの。
先月の委員会で「委員会決定」の方向性が決まったのを受け、起草委員会が起草した決定案について審理した。その結果、内容に一部修正が必要との結論となり、起草委員会が修正案を起草したうえで、あらためて来月の委員会に諮ることになった。
本事案で申立人は、事実に反する放送内容によって両親に対する敬愛追慕の情や名誉を侵害されたなどとして、局に対し謝罪と訂正を求めている。
これに対し、テレビ朝日は、放送内容は虚偽ではなく名誉侵害などの不法行為はなかったと反論している。

「機能訓練士からの訴え」事案の審理

本事案は、2009年4月11日にTBSテレビが『報道特集NEXT』で放送した「車イスの少女が入学できない訳」に対し、少女が幼い頃から機能訓練を受けている機能訓練士が申し立てたもの。先月の委員会で審理入りが決定し、今月から実質審理に入った。
既に提出されている申立人からの「申立書」に加え、この日の委員会までに新たにTBSからの「答弁書」、「答弁書」に対する申立人からの「反論書」、「反論書」に対する「再答弁書」が提出され、双方の書面が出揃った。
委員会では、提出された書面と資料を基に改めて双方の主張を整理した後、申立人の主張している肖像権の侵害があったかどうか、名誉・信用の毀損についてはどうかなど本事案の主な論点について議論した。
その結果、来月の委員会で申立人および被申立人(TBS)に対するヒアリングを行い、それぞれの主張内容や事実関係について詳しく聞いたうえで、さらに議論を深めることとなった。

「拉致」事案でテレビ朝日から対応報告

「拉致被害者家族からの訴え」事案で去る3月10日、「放送倫理上問題あり」との決定を受けたテレビ朝日は6月9日、「委員会決定」後の対応と取り組みをまとめた報告書を委員会宛て提出した。(報告書全文はホームページの「委員会決定第43号」にある「当該局の対応」の項をご参照ください。)
また、同局では5月28日に坂井眞委員を講師に招き、上記決定についての社内セミナーを開催した。報道局を中心に約70人が出席し、坂井委員による「委員会決定」の説明や局側スタッフとのパネルディスカッションなど、約2時間にわたり率直で活発なやり取りが交わされた。
以上について事務局より報告し、了承された。
委員会の席上、坂井委員は「セミナーでは局の皆さんと本音の議論ができ、大変よかった」と感想を述べた。

5月の苦情概要

5月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・・・・2件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・・・・26件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

次回委員会は7月20日(火)に開かれることになった。

以上

第161回 放送と人権等権利に関する委員会

第161回 – 2010年5月

「上田・隣人トラブル殺人事件報道」事案の審理

審理要請案件「機能訓練士からの訴え」~審理入り決定 ……など

「上田・隣人トラブル殺人事件報道」事案のヒアリングと審理が行われた。障害を持つ少女の中学入学問題を取り上げたTBSテレビの報道番組について、機能訓練士から肖像権や名誉権等の侵害を訴える申立てがあり、審議の結果、審理入りが決まった。

議事の詳細

日時
2010年 5月18日(火) 午後3時~7時55分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
堀野委員長、樺山委員長代行、三宅委員長代行、大石委員、小山委員、坂井委員、武田委員、田中委員、山田委員

「上田・隣人トラブル殺人事件報道」事案の審理

この事案は、テレビ朝日が2008年12月23日の『報道ステーション』で放送した「特集 身近に潜む境界トラブルの悲劇・住宅地の惨劇はなぜ起きた」について、被害者遺族が申し立てたもの。
今月の委員会では、まず申立人とテレビ朝日に対するヒアリングを実施した。
申立人側は本人と姉とが出席し、「放送内容は、被害者が加害者に嫌がらせともとれる行為をしていたかのように受け取れるものばかりで、事実でない内容もあった。番組のためなら、だれが傷ついても、たとえ多少の虚偽があっても、それは関係ないことだと言えるのか。今回の事件は、番組で取り上げた境界線問題とは何の関係もなく、ましてや明治時代に作られた公図などは無縁のものである。なぜ私たちの両親が悪者のようにストーリーを作られ、全国的に否定されなければならないのか」と述べた。
一方、テレビ朝日からは『報道ステーション』の担当者ら3人が出席し、「刑事裁判の判決は、被害者が被告人の車の通行妨害をしていたと認め、嫌がらせ行為と言われても仕方がないものだったと指摘している。その点で、放送内容の真実性はある程度裏付けられたと考える。境界トラブルは明治時代に測量された精度の低い公図に一因があるが、放送では相談に応じる第3者機関があることを提示した。ご遺族が精神的苦痛をさらに患ったというのであれば申し訳なく思うが、境界トラブルはあらゆるところで起きていて、悩んでいる人には多少なりとも一助になりえた内容だったと考える」と述べた。
ヒアリングを受けて審理を行い、「委員会決定」の方向性を決めた。起草委員会を開いて決定案を検討し、6月の委員会に諮ることになった。

審理要請案件「機能訓練士からの訴え」~審理入り決定

TBSテレビ(以下、TBS)は2009年4月11日の『報道特集NEXT』で、「車イスの少女が入学できない訳」を放送した。この放送に対し、少女が幼い頃から機能訓練を受けている機能訓練士から申立てがあった。
番組は、脳性まひの少女が様々な困難を乗り越えながら普通小学校を卒業したものの、普通中学校への入学を拒否されたことに対し問題提起を行ったもの。
申立人は、「少女の機能訓練の様子を紹介したビデオ映像は、申立人に無断で使用されたもので、肖像権の侵害である。また、リハビリという用語を使ったことで申立人らが医師法違反にも問われかねない。さらに、悪意のある編集により今後の活動に障害を生じ、精神的苦痛や誹謗中傷を受け、名誉を毀損された」と主張している。放送後、局との数回にわたるやり取りを経ても解決しないとして今年3月に申立てを行った。
TBS側も話し合いの余地はないとしたため、委員会は、TBSに対し「交渉の経緯と局の見解」および番組同録DVDの提出を要請し、双方から提出された文書および資料、番組DVDをもとに審理入りするかどうかについて審議した。その結果、本案件は運営規則に定められた要件を満たしているとして審理入りすることを決めた。6月の委員会から実質審理を開始する。
申立人の主張に対し、TBSは「機能訓練のビデオ映像は少女の両親が申立人の了解を得て撮影したもので、放送に際しては両親の許諾を得た。申立人に断りなく使った点については、放送直後に配慮が足りなかったことを謝罪し、表記や表現については、少女の普通中学校への入学が実現した過程を追跡した2009年11月の放送で訂正している。これらの点については申立人も了解しており、解決済みであると理解している。また、悪意ある編集との主張は、主張の内容自体が判然としない」と反論している。

4 月の苦情概要

4月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・・・・2件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・・・・47件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

次回委員会は6 月15 日(火)に開かれることになった。

以上

第160回 放送と人権等権利に関する委員会

第160回 – 2010年4月

「上田・隣人トラブル殺人事件報道」事案の審理

3月の苦情概要 ……など

「上田・隣人トラブル殺人事件報道」事案の審理が行われ、来月の委員会で当事者へのヒアリングを行うことになった。

議事の詳細

日時
2010年 4 月20 日(火) 午後4時~6時15分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
堀野委員長、樺山委員長代行、三宅委員長代行、大石委員、小山委員、坂井委員、武田委員、田中委員、山田委員

「上田・隣人トラブル殺人事件報道」事案の審理

この事案は、テレビ朝日が2008年12月23日の『報道ステーション』で放送した「特集 身近に潜む境界トラブルの悲劇・住宅地の惨劇はなぜ起きた」について、被害者遺族が申し立てたもの。前回の委員会に引き続いて、審理を行った。
申立人は「両親の長年の嫌がらせが殺害の動機を形成したかのような放送内容は、事実に反する。両親の社会的評価を著しく低下させるものであり、両親に対する敬愛追慕の情を著しく侵害された。子供である申立人の名誉も侵害された」と主張し、謝罪と訂正を求めている。これに対し、テレビ朝日は「被害者と加害者の間にトラブルが存在していた。被害者の社会的評価を低下させるとしても放送内容は虚偽ではなく、申立人の両親に対する敬愛追慕の情侵害の不法行為にあたらず、また申立人の名誉侵害もない。謝罪、訂正放送が必要な事実誤認はない」と反論している。
4月の委員会では、犯行の動機などを伝えた放送内容が真実かどうか、申立人側の取材をしなかったことが適切だったかどうかを中心に意見を交わした。また、この特集は前半で事件を取り上げ、後半では境界トラブルが各地で起きているとして、その原因や解決策を伝えているが、こうした構成の仕方をめぐっても意見が出た。
次回、5月の委員会では申立人とテレビ朝日に対するヒアリングを実施し、さらに審理を重ねることになった。

3月の苦情概要

3月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・・・・4件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・・・・42件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

  • 事務局より以下の点について報告した。
    BPO飽戸理事長は、3月29日に開かれた総務省の「今後のICT分野における国民の権利保障等の在り方を考えるフォーラム」の関係者ヒアリングに出席し、BPOの理念や活動内容について説明した。また委員からの質問にも答えた。
  • 次回委員会は5月18日(火)に開かれることになった。

以上

第159回 放送と人権等権利に関する委員会

第159回 – 2010年3月

「上田・隣人トラブル殺人事件報道」事案の審理

「旅館再生リポート・女将の訴え」事案の和解報告 ……など

「上田・隣人トラブル殺人事件報道」事案の実質審理が始まった。「旅館再生リポート・女将の訴え」事案の和解について事務局より報告した。3月10日に行われた「拉致被害者家族からの訴え」事案の通知・公表について事務局より報告した。

議事の詳細

日時
2010年 3月16 日(火) 午後4時~6時
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
堀野委員長、樺山委員長代行、三宅委員長代行、小山委員、坂井委員、武田委員、田中委員、山田委員

「上田・隣人トラブル殺人事件報道」事案の審理

長野県在住の被害者遺族から申立てのあった本事案の実質審理に入った。
申立ては、テレビ朝日が、2008年12月23日に『報道ステーション』で放送した、特集「身近に潜む境界トラブルの悲劇・住宅地の惨劇はなぜ起きた」に対して行われたもの。
申立人は、「両親の嫌がらせが殺害動機であるとの放送内容は事実ではない。また、放送は『嫌がらせを行った人物』『常識のない人物』として、両親の社会的評価を著しく低下させるもので、両親に対する敬愛追慕の情を著しく侵害された。さらに、子供である申立人本人の名誉も侵害された」と主張している。
これに対しテレビ朝日は、「決して被害者を貶めるつもりで放送したものではなく、謝罪、訂正放送が必要な事実誤認もなかった」と反論している。
委員会では、テレビ朝日から提出された放送同録を再度視聴した後、取材や番組の構成等について意見を交わした結果、次回委員会においても、さらに審理を重ねることとした。

「旅館再生リポート・女将の訴え」事案の和解報告

本事案は2月18日にBPO会議室で堀野委員長立ち会いのもと、申立人と被申立人のフジテレビが出席して和解の手続きがとられ解決した。
事務局が当日の様子とホームページやBPO報告で和解成立を伝えたことを報告した。
(和解内容の詳細は2009年度 仲介・斡旋解決事案をご参照ください)。

「拉致被害者家族からの訴え」事案の通知・公表の報告

本事案の「委員会決定」の通知と公表が3月10日に行われた。
事務局よりその概要とテレビ各社の放送対応および新聞記事をまとめた資料を配付し、以下のとおり報告した。また、当該局であるテレビ朝日が報じた当日夕方のニュース番組の同録DVDを視聴した。

通知には堀野委員長と、起草委員を務めた樺山委員長代行および坂井委員の3人が出席し、申立人である「北朝鮮による拉致被害者家族連絡会」と被申立人であるテレビ朝日とが同席する形で行われた。
(決定内容の詳細は「委員会決定」の項、決定第43号をご参照ください)。
通知の後、両当事者から個別に質問を受け、意見や感想を尋ねた。
家族会の飯塚代表は「謝罪が不適切と判断していただいたが、国民に分るような謝罪の仕方とはどういうものか、もっとやっていただきたかった」と述べた。増元事務局長は、田原発言全体については「言論の自由の範囲内」とした判断を「残念だ」と述べた。一方、テレビ朝日は「決定を真摯に受け止め、今後に生かしていきたい」と述べた。
この後、記者会見で「委員会決定」の内容を公表した。会見には26社64人が集まり、テレビカメラ6台が入った。
昨年6月に申立書を受理してから通知・公表までに9か月を要した点について、堀野委員長は「申立て内容が重大であり、また『名誉毀損やプライバシーの侵害以上に、最も重大な人権侵害』という主張をどう理解するかなど、論点についての意見統一にも時間がかかった」と説明した。
樺山委員長代行は、「BPOで扱ってきた事案の中でも極めて難解で、被害者の救済と言論の自由とが正面衝突したケースだった。それだけに長い時間をかけて議論した」と述べた。
坂井委員はポイントを3点挙げ、「1つ目は言論の自由の大切さであり、異論を受け入れる寛容さが必要だという点だ。2つ目は言論の自由を前提としても他人を傷つける言い方はまずいということだ。それは表現の自由を足元から崩す行為になる。3つ目は謝罪の問題だ。商品に欠陥があった場合、マスメディアは企業の社会的責任を厳しく問うが、メディアで誤りがあった場合も同じで、謝罪の気持ちはちゃんと伝わるようにやるべきだ」と述べた。
記者からは「特に難しかった点はどこか」という質問が出た。
堀野委員長は「生死不明の家族について『生きていない』と言われて精神的苦痛を受けた時、どのような権利がどの程度害されたといえるのか。名誉やプライバシーの侵害などとは次元の違う問題だったことだ。この点については名誉毀損等の余地ありとした三宅委員の補足意見がある。もう1点は政府の方針に疑念を生じさせたとか、救出運動を妨害したなどの申立てが、直接、人権に係る問題ではなかったことだ。所轄外といえば終わる話だが、ひいては拉致被害者の生命にもかかわる重大な人権侵害という主張なので、きっちり答えようということになった」と答えた。
通知と会見を受け、当該局であるテレビ朝日は夕方のニュース番組『スーパーJチャンネル』で、全国ネット枠で決定内容を報じるとともに、改めて社としてお詫びした。(当該番組の『朝まで生テレビ!』では、3月26日の放送で決定内容を詳しく伝え、「決定を真摯に受け止め、今後も放送倫理に十分配慮した放送に努めて参ります」と述べるとともに、重ねて社としてのお詫びを放送した。)
このほかの在京民放テレビキー局およびNHKは、10日夕方から夜にかけてのニュース番組や翌11日朝の生活情報ワイド番組で、全国ネット枠で伝えた。
新聞各紙は自社サイトで速報したのをはじめ、11日付けの朝刊紙面で一斉に報道した。

2 月の苦情概要

2 月中にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・・・・3件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・・・・52件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

  • 事務局から、(1)総務省が在京民放テレビ5局を対象に女子中学生自殺報道について調査しようとした問題、(2)総務省の「今後のICT分野における国民の権利保障等のあり方に関するフォーラム」の動向、(3)3月5日に国会に提出された放送法改正案の概要――の3点について報告した。
  • 次回委員会は4月20日(火)に開かれることになった。

以上

第158回 放送と人権等権利に関する委員会

第158回 – 2010年2月

「拉致被害者家族からの訴え」事案の審理

「旅館再生リポート・女将の訴え」事案の審理 ……など

「拉致被害者家族からの訴え」事案の「委員会決定」修正案について審理した。「旅館再生リポート・女将の訴え」事案の 審理が行われ、本事案の和解に向けた動きについて堀野委員長より報告があり了承された。「上田・隣人トラブル殺人事件報道」事案の本格的な審理は次回以降に持ち越された。

議事の詳細

日時
2010年 2月16日(火) 午後4時~8時15分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
堀野委員長、樺山委員長代行、三宅委員長代行、大石委員、小山委員、坂井委員、武田委員、田中委員、山田委員

「拉致被害者家族からの訴え」事案の審理

前回の委員会審理を受けて起草委員が手直しした「委員会決定」修正案が、2月11日の第2回起草委員会での検討を経てこの日の委員会に提出された。
委員会では時間をかけて詳細な検討が行われた。この結果、修正案は基本的に了承され、一部表現の手直しをしたうえで持ち回り委員会により最終了承される見通しとなった。また、委員のひとりが補足意見を書くことになった。
本事案は2009年4月24日深夜のテレビ朝日『朝まで生テレビ!』において、番組司会者でジャーナリストの田原総一朗氏が拉致被害者の横田めぐみさんと有本恵子さんの名前を挙げ「生きていないことは外務省も分っている」などと発言し、「北朝鮮による拉致被害者家族連絡会」から「最も重大な人権侵害」との申立てがあったもの。

「旅館再生リポート・女将の訴え」事案の審理

本事案は2009年7月17日のフジテレビ「FNNスーパーニュース」の放送内容をめぐって、宮城県の温泉旅館の女将が申し立てたもの。
同年11月に審理入りし本年1月までヒアリングを含め3回の審理を行ったが、堀野委員長は、本件事案は人権侵害を訴えるものでなく 放送上の表現や編集の仕方が問題になっていた事案である ことから、和解による解決が望ましいとして今月の委員会に提案し了承を得た。これによって、本件は委員会の和解斡旋で解決する運びになった。
放送は不況下での旅館の女将さんたちの奮闘ぶりを紹介したものだが、申立人は、放送内容は売り上げが伸びない旅館という負のイメージを視聴者に与え、温泉街も暗いシーンばかりが編集されるなど事実に反するものだったとして、謝罪などを求めてきた。これに対してフジテレビは、「当番組はニュース・報道番組であり、取材に基く事実を伝えたものです」と主張してきた。
(2月18日に申立人と被申立人の間で和解の手続きがとられ、本件は解決した。詳しくは仲介・斡旋解決事案の項をご参照ください)

「上田・隣人トラブル殺人事件報道」事案の審理

テレビ朝日が2008年12月23日の『報道ステーション』で、「特集 身近に潜む境界トラブルの悲劇・住宅地の惨劇はなぜ起きた」を放送したのに対し、被害者遺族から、放送内容が事実に反し、亡くなった両親への敬愛追慕の情を侵害され、申立人自身の名誉も毀損されたと申立てがあった。
昨年12月の委員会で審理入りを決定、今月の委員会では他の事案との関係もあって、申立人から提出された「申立書」および「反論書」、被申立人から出された「答弁書」および「再答弁書」等の書面についての説明にとどめた。
次回の委員会以降、本格的な審理を行う予定である。

1月の苦情概要

1月中に BPOに寄せられた視聴者意見のうち、放送人権委員会関連の苦情・相談・批判の内訳は以下の通り。

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・・・・0件
    (個人又は直接の関係人からの要請
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・・・・39件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

  • 放送法の研究を目的として2007年9月にスタートしたBPO放送法研究会での討議の成果が、このほど『放送法と表現の自由~BPO放送法研究会報告書』としてまとまった。事務局より報告した。
    なお、同研究会は所期の目的を果たし既に解散している。
  • 次回委員会は3 月16 日(火)に開かれることになった。

以上