第107回 放送と人権等権利に関する委員会

第107回 – 2005年12月

「新ビジネス”うなずき屋”報道」事案の審理

審理要請案件「バラエティー番組における人格権侵害の訴え」…など

「新ビジネス”うなずき屋”報道」事案の審理

本事案は、テレビ東京の〈消える高齢者の財産〉というタイトルのドキュメンタリー(2005年6月14日放送)の中で”孤独老人相手の新商売”(うなずくだけで2時間1万円)として紹介された東京在住の男性が、この放送により名誉を毀損されたと苦情を申し立てているもの。

これまで双方から提出された申立書や答弁書等をもとに3回にわたり審理(ヒアリングを含む)を行ってきたが、12月の委員会では、起草委員会でまとめた委員会決定の草案について意見を交わし、「現金の受け渡しシーン」や「番組の趣旨と構成上の問題」等について一部加筆修正を含め、詰めの検討を行なった。

その結果、年末年始をはさんで「委員会決定」を最終的に作成し、次の定例委員会当日の2006年1月17日に申立人・被申立人双方に通知し、その後記者会見を開いて同決定を公表することになった。

審理要請案件「バラエティー番組における人格権侵害の訴え」

有名タレントである妻と2005年8月に離婚した東京在住の男性が「バラエティー番組における元妻の発言等によって、名誉・プライバシー権の侵害を受けた」と放送人権委員会に苦情を申し立てていた事案に対し、協議の結果、2006年1月から「審理入り」することが委員会決定された。

当該番組は、関西テレビ制作の<たかじんの胸いっぱい>で、申立書によれば、2005年6月25日の放送にはタレントである妻本人がゲスト出演し、夫の性格や性癖について赤裸々に語り、また離婚直前の7月9日の同番組では、妻は出演していなかったものの、他の出演者たちが先の妻の発言にもとづいて、夫の性癖等について再びトークを繰り広げた。

これらの発言に対し、申立人は「話されたことは、全くの虚偽であるか、あるいは面白おかしく事実関係を歪曲しており、いずれも自分の社会的評価を低下させ、名誉を著しく毀損・侮辱するものである」と主張、局に対し「取り消して謝罪する旨の放送」を求めた。

これに対し、局側は「放送法4条1項は、権利侵害を受けた本人が事業者に対し、訂正又は取消しの放送を求める私法上の請求権を付与するものではない」とした最高裁判例を引用、「本件内容からして、取消し・謝罪の放送を行う必要はない。また、指摘された発言は、申立人の妻が離婚報道の前に自ら話したものであって、司会者や制作者らの恣意的なリードによってなされたものではないことからしても、申立人の要求には一切応じられない」としている。

「犯罪被害者等基本計画案」について

事件・事故の被害者の報道で、実名か匿名かの発表判断を警察に委ねるという政府の「犯罪被害者等基本計画案」について12月の委員会で意見を交わした。

主な意見は次のとおり。

  • 実名か匿名かの判断主体は報道機関で、警察が発表権限を持ってしまうのは危険だ。
  • 実名はイヤだという「個人的感情」と知りたいという「公の利益」の対峙だが、後者が優先すべきと思う。
  • 放送人権委員会は第3者機関であって、メディア・報道機関ではない。その放送人権委員会にこの問題で何が出来るか。

活発な意見交換を経て、放送人権委員会としてはこの問題について何らかの意思表示が必要ということで一致し、近々に「声明」ないし「要望」を出すことになった。

注記:この「犯罪被害者等基本計画」の閣議決定が12月27日にあった。放送人権委員会では同日この問題について
「声明」を発表した。(「声明」は後掲)

苦情対応状況[11月]

2005年11月の1か月間に寄せられた放送人権委員会関連の苦情の内訳は、次のとおり。

◆人権関連の苦情(27件)

  • 斡旋・審理に関連する苦情(関係人からの人権関連の苦情で、氏名・連絡先や番組名などが明らかなもの)・・・13件
  • 人権一般の苦情(人権関連だが、関係人ではない視聴者からの苦情、または、氏名・連絡先や番組名などが不明なもの)・・・14件

最後に、次回は「新ビジネス”うなずき屋”報道」事案について2006年1月17日午後2時半からの通知、午後3時半からの記者発表し、その後定例の委員会を午後4時から開くことを決め、閉会した。

以上

平成17年12月27日
「犯罪被害者等基本計画」に関する放送人権委員会声明
放送倫理・番組向上機構
放送と人権等権利に関する委員会(放送人権委員会)
委員長  飽戸 弘

急激な社会の変化の中で、人々は内外の複雑困難な問題に直面し、とまどいと混迷を深めている。平和で安全な日々の暮らしを守るためには、生起する事態についてその真実を究明し、原因や問題点を明らかにすることが何よりも必要である。人々はこうした情報の提供を受けて自ら意見を形成し、それを自由に表明することを通じて、自らの生活を守り、社会をよりよい方向へ導くことができる。

そのためには、メディアにより、人々への必要かつ有益な情報が十分に提供されなければならない。メディアはこの点で重要な役割を担っており、人々の知る権利に十分に応えるべき責務がある。

本日、内閣は犯罪被害者等基本計画を閣議決定し、犯罪被害者の氏名を実名で発表するか否かを警察の判断に委ねることとした。

しかし、犯罪被害者の氏名は事実の確認や検証のための取材の出発点であるから、今回の措置は情報の流れを事前に警察当局が封鎖することに等しく、メディアによる情報収集を困難にし、人々がメディアを通じてその情報を受け取る自由を制約する結果を惹起することを否定しがたい。

これまで、メディアの側において犯罪被害者らに対し、無神経な取材や行き過ぎた報道がなされたことは事実であり、真摯な反省が求められているところである。しかし、現在メディアはその反省に立って、取材については平成14年4月、日本新聞協会が「集団的過熱取材対策小委員会」を設置し被害防止を図ってきている。また、行き過ぎた放送による被害については、平成9年5月NHKと民間放送各社において第三者機関としての「放送と人権等権利に関する委員会」を設立し、多くの苦情を受け付け、被害を訴える者と当該放送局との間の斡旋解決を図るとともに、現在までに17事案26件について決定を出して放送被害の救済に努めてきている。今回の措置は、当委員会のこうした努力やその果たしている役割を軽視するものと言わざるを得ない。

犯罪被害者の実名開示の可否の問題は、被害者間でも意見が分かれているところである。これに対する対応は、報道関係者が取材の際に被害者との信頼関係を築きながら、事件の社会的性格への配慮と被害者の希望を尊重・配慮することにより自主的に解決すべきであって、犯罪捜査に直接関わる警察に判断を委ねることで解決すべき問題ではないと考える。

以上のとおり、民主主義社会を根底から支える報道の自由の見地から、警察が情報の流れを事前に抑制することとなる今回の閣議決定は報道の死命を制しかねない重大な問題であることを広く訴えるとともに、内閣に対しては同措置を早急に改めるよう強く要望する。

第106回 放送と人権等権利に関する委員会

第106回 – 2005年11月

「新ビジネス”うなずき屋”報道」事案のヒアリング・審理

「喫茶店廃業報道」事案委員会決定後の放送対応等…など

「新ビジネス”うなずき屋”報道」事案のヒアリング・審理

本事案は、〈消える高齢者の財産〉というタイトルのドキュメンタリーの中で”孤独老人相手の新商売”(ただうなずくだけで2時間1万円)として紹介された東京在住の男性が、この放送(2005年6月14日・テレビ東京)により名誉を毀損されたと苦情を申し立てたもので、これまで双方から提出された申立書や答弁書等をもとに2回にわたり審理が行なわれてきた。

今回のヒアリングは双方の意見、主張を直接質すために行なわれたもので、申立人に対しては約1時間、また被申立人のテレビ東京に対しては、引き続き約50分にわたって進められた。 双方に対するヒアリングでの質疑とも、「番組の前半で取り上げた悪徳ビジネスのケースに影響されて申立人の新ビジネスもあざとい事業との印象を視聴者に与えたかどうか」「1万円の受け渡しの場面の実相はどうだったのか」などが焦点となった。

ヒアリングの後審理を行い、「委員会決定」の草案をまとめる起草委員を決め、12月中旬に起草委員会を開き、次回委員会では起草委員の草案を基に詰めた議論を行なうことになった。

「喫茶店廃業報道」事案委員会決定後の放送対応等

10月18日に「委員会決定」を通知・公表した「喫茶店廃業報道」事案について、当日の放送対応や翌日の関連新聞記事について事務局から報告があった。

この席で、当該局の毎日放送が「委員会決定」の内容を伝えた当日の二本のニュースと後日の検証番組の放送VTRを視聴した。委員からは「検証番組は丁寧に作られている」との声が出た。

事務局では、当該局から提出される改善対応策を待って年明けにも本事案のブックレットを作成する予定。

審理要請「プライバシー侵害の訴え」斡旋解決

苦情の概要は、「居酒屋を今も営む85才の義母の半生を描いて<世のお年寄りに勇気を与える>という趣旨を説明され、それに賛同して家族はドキュメンタリー番組の取材をOKしたのに、放送では本人の奮闘だけでなく、自分たち子供夫婦や孫たちの他人には知られたくない事実も描かれた」というもので、8月家族の一人から放送人権委員会に訴えがあった。

申立人は、「謝罪と再放送中止の確約」を求めるとともに、「自分たちが映っているテープの引渡し」を強く要求していたが、放送人権委員会事務局では「報道機関として、放送局が取材テープを局外に出すことはない」と説明し、テープ引渡しにこだわらずに話し合いを続けるよう勧めた。

その結果、局側も誠実に対応し、再放送や番組販売等を行なわないこと、10月末に当該番組の中で「事実関係において一部誤解を生じさせる表現があった」とする旨の字幕スーパーを放送することで双方が合意し、事案は和解・解決した。

本件は、今年度初めての斡旋解決事案。

苦情対応状況[10月]

2005年10月の1か月間に寄せられた放送人権委員会関連の苦情の内訳は、次のとおり。

◆人権関連の苦情(23件)

  • 斡旋・審理に関連する苦情(関係人からの人権関連の苦情で、氏名・連絡先や番組名などが明らかなもの)・・・7件
  • 人権一般の苦情(人権関連だが、関係人ではない視聴者からの苦情、または、氏名・連絡先や番組名などが不明なもの)・・・16件

その他 「意見交換会(東北)」について

11月29日(火)に仙台で開催される放送人権委員会委員との意見交換会について、事務局から当日のスケジュールなどについて相談、ならびに委員会参加者が最終的に18局30数人となることが報告された。最後に、次回12月20日の委員会は、午後4時から開くことを決め、閉会した。

以上

第105回 放送と人権等権利に関する委員会

第105回 – 2005年10月

「喫茶店廃業報道」事案の委員会決定の通知・公表について

審理事案「新ビジネス”うなずき屋”報道」の審理…など

「喫茶店廃業報道」事案の委員会決定の通知・公表について

本委員会前に行なわれた標記事案・委員会決定の通知・公表の模様を事務局から以下の様に報告した。 ?本日午後2時から申立人、被申立人双方を個別に招いて『委員会決定』をそれぞれ通知した。『決定』を受けた後、申立人は「誰も私の言うことなど聞いてくれないのではないかと思っていたが、私の言い分を判って頂いてうれしいです」と述べ、一方、毎日放送は「放送人権委員会の『委員会決定』で指摘された点を真摯にうけとめ、放送倫理を遵守し、今後の取材や報道に反映させるよう努めます」とのコメントを出した。

午後3時からは記者発表を行い、『委員会決定』の内容を公表した。記者会見には放送人権委員会から飽戸弘委員長、起草委員の竹田稔委員長代行と五代利矢子委員が出席、メディア側からは23社38人が集まり、テレビカメラが7台入った?

委員会では、通知公表に立ち会った各委員が感想を述べたが、この中で竹田委員長代行は「この事案は、裁判では人格権侵害の成否で終わってしまうケースだ。放送人権委員会では、放送倫理の問題と捉え、裁判で解決できない問題についても積極的に判断を示すことが出来た。意義のある決定だ」と述べた。

審理事案「新ビジネス”うなずき屋”報道」の審理

本事案は、〈消える高齢者の財産〉というタイトルのドキュメンタリー番組の中で”孤独老人相手の新商売”(ただうなずくだけで2時間1万円)として紹介された東京在住の男性が、この放送(2005年6月14日・テレビ東京)により名誉を毀損されたと苦情を申し立てたもの。

9月の委員会から本格的審理に入り、その後、申立人から「反論書」、被申立人から「再答弁書」が委員会に提出されたのを受けて、10月の委員会では、これまでの双方の言い分を対比的にまとめて検討した。特に<消える高齢者の財産>とのタイトルで放送された番組全体の中で、「2時間うなずくだけで1万円」と放送された”うなずき屋”の部分がどのように視聴者に評価されるか等の点をめぐって意見が交わした。

放送人権委員会では、さらに審理を深めるため、次回11月の委員会で、申立人、被申立人双方を招いてヒアリングを行なうことになった。

「産婦人科医院・行政指導報道」委員会決定について当該局の改善対応報告

今年7月28日に委員会決定を受けたNHK名古屋放送局から、放送と人権等権利に関する委員会〔放送人権委員会〕宛に、10月18日に「改善策と取組状況」をまとめた報告の提出があった。

委員会では、7ページにわたるこの報告(グループ討議や研修、チェック体制の見直しなどの改善措置等)を受けて意見を交わした。この中で、同局内で行なわれた職場研修に招かれた渡邊委員からは「60名程の報道部員が集まり、予定の時間を超えても質問するなど非常に熱心でした」との報告があり、他の委員からは「委員会決定を受けた当該局としては今までで一番丁寧な対応といえる」「申立人に直ちに会うなど取り組み方はきめ細かい」などNHK名古屋局が、具体的改善策を講じ、誠意ある対応をしたことを高く評価する意見が出された。

『放送人権委員会判断基準2005』発刊・公表について

上記冊子の発刊について、本委員会直前の記者会見で内容の公表がなされたことが、事務局より報告された。 記者発表では飽戸委員長が「委員会の決定は、いわば裁判の判例のようなものであるが、この判断基準は法律だけでなく放送倫理も踏まえたうえで打ち出されたものであることを考え、今後の実際の放送に役立てて欲しい」と述べた。

また、監修にあたった右崎正博委員は「この冊子は放送界はもとより、ひろく一般市民にも読んでもらい放送界の在り方について考える参考にしていただきたい」と語った。

放送人権委員会事務局から、予算上の制約もあることから、加盟社に一定部数を配布するとともに、追加の申し込みについては、実費500円(送料別)で、頒布することにしている旨報告があった。

「意見交換会(東北)」について

11月29日(火)に仙台で開催される放送人権委員会委員との意見交換会について、崔洋一委員を除き他の7人の委員が参加できることが確認された。事務局から当日のスケジュールなどについて報告があった。

苦情対応状況[9月]

2005年9月の1か月間に寄せられた放送人権委員会関連の苦情の内訳は、次のとおり。

◆人権関連の苦情(5件)

  • 斡旋・審理に関連する苦情(関係人からの人権関連の苦情で、氏名・連絡先や番組名などが明らかなもの)・・・5件
  • 人権一般の苦情(人権関連だが、関係人ではない視聴者からの苦情、または、氏名・連絡先や番組名などが不明なもの)・・・0件

その他

最後に、次回11月15日の委員会は、審理事案「新ビジネス”うなずき屋”報道」のヒアリング行うことから、通常より1時間早め午後3時から開くことを決め、閉会した。

以上

第104回 放送と人権等権利に関する委員会

第104回 – 2005年9月

審理事案「喫茶店廃業報道」のヒアリングと審理

審理事案「新ビジネス”うなずき屋”報道」の審理…など

審理事案「喫茶店廃業報道」のヒアリングと審理

事案は、兵庫県内でたこ焼き屋を営んでいた女性からの申立てで、「本年5月9日放送の毎日放送のニュース番組で、私の嫌がらせで喫茶店が潰れたと放送された。一方的取材で構成された番組で、はなから私を犯罪者扱いにしている」というもの。9月の委員会では申立人・被申立人双方を東京に招いてそれぞれ別個にヒアリングを行った。

申立人は意見陳述の中で「このトラブルは(喫茶店主と私の)路上駐車枠の取り合いが原因と思う。放送後、毎日放送に抗議したが全く取り合ってくれなかった。私にも落度があったが、私の言い分を直接聞こうとはせず隠しカメラや隠しテープを使うなど陰険なやり方で許せない。この番組は放送局と喫茶店主による私に対する魔女裁判だ」と訴えた。

一方、被申立人の毎日放送は「喫茶店主から当番組宛にメールを貰い、取材を始めた。県警や行政機関、付近住民などを1か月余りかけて取材した。毎日放送としては十分にきちんと取材して放送したと思っている。通常なら当事者から直接話しを聞くのが原則だが、今回は本人のナマの声・本音を聞くために隠し撮り等の手段をとった。ケースによっては許される手法ではないか。喫茶店が廃業したのは経営者が(申立人の言動に)恐怖を感じたことが一番の原因だと思う」と述べた。

ヒアリングの後審理に移り、起草委員会がまとめた草案を中心に意見を交わした。その結果「決定」原案を10月初旬を目途にまとめ、本事案の「委員会決定」の通知・公表を10月18日の委員会開催日に行なうことになった。

審理事案「新ビジネス”うなずき屋”報道」の審理

本事案は、〈消える高齢者の財産〉というタイトルのドキュメンタリーの中で”孤独老人相手の新商売”(ただうなずくだけで2時間1万円)として紹介された東京在住の男性が、この放送(2005年6月14日・テレビ東京)により名誉を毀損されたと苦情を申し立てたもの。前回の委員会で審理入りが決まった。

9月の委員会では、申立人からの申立書、被申立人からの答弁書をもとに、実質審理に入り、各委員からこの新商売の実態や、放送による申立人への影響等について意見交換がなされた。

申立人が被申立人による答弁書の事実関係について反論書を提出したいと言っていることから、委員会では、反論書とそれに対する再答弁書の提出を待って、次回再度審理を重ねることになった。

『放送人権委員会判断基準2005』の編集作業について

放送人権委員会事務局から制作中の『放送人権委員会判断基準2005』の編集状況について説明があった。

本委員会前に配布した第一稿について、監修の右崎正博委員をはじめ各委員から意見等がよせられ、事務局ではこれを受けて、9月末までに再度のチェックを依頼した。

この新しい『放送人権委員会判断基準2005』については、10月上旬に第2稿を作成し、さらに検討を加えた上で、中旬を目途に製本化することになった。

「意見交換会(地方)」について

事務局から、年内に予定されている「放送人権委員会委員と東北地区の放送局のBPO連絡責任者等との意見交換会」の開催について説明。開催日について各委員のスケジュール等を調整した結果、11月29日(火)に仙台で開催することになった。

地方での開催は、大阪、名古屋、福岡、札幌、広島に続いて6回目で、東京での開催を含めると10回目となる。

苦情対応状況報告[8月]

2005年8月の1か月間に寄せられた放送人権委員会関連の苦情の内訳は、次のとおり。

◆人権関連の苦情(21件)

  • 斡旋・審理に関連する苦情(関係人からの人権関連の苦情で、氏名・連絡先や番組名などが明らかなもの)・・・16件
  • 人権一般の苦情(人権関連だが、関係人ではない視聴者からの苦情、または、氏名・連絡先や番組名などが不明なもの)・・・5件

その他

最後に、次回放送人権委員会は、事案「喫茶店廃業報道」の「委員会決定」の通知を10月18日の委員会開催日の午後2時から行うこととし、また、その公表の記者会見で『放送人権委員会判断基準2005』刊行の発表もあわせて行なうことになった。その後の午後4時から通常の委員会を開くことを決め、閉会した。

以上

第103回 放送と人権等権利に関する委員会

第103回 – 2005年8月

審理事案「喫茶店廃業報道」の審理

審理要請案件…など

審理事案「喫茶店廃業報道」の審理

兵庫県内の駅前でたこ焼き屋を営んでいた女性店主からの訴えで、申立ての概要は、「本年5月9日放送の毎日放送のニュース番組<VOICE>で、私の嫌がらせで喫茶店を潰したと放送された。喫茶店主からの一方的取材で構成された番組で、はなから私を犯罪者扱いにしている。公平な取材報道と謝罪を望む」というものです。7月の委員会で審理入りを決めたもので、今委員会から実質的な審理入りとなった。

申立人・被申立人双方から提出された「答弁書」や「反論書」「再答弁書」等に基づいて、双方の主張や言い分などについて意見を交わした結果、直接当事者から話を聞くことになり、次回9月の定例の委員会で、申立人・被申立人双方を招いてヒアリングを行うことになった。また、本事案の起草委員2名も決めた。

審理要請案件

◆「新ビジネス”うなずき屋”報道」

本事案は、保育園やベビーシッター派遣業を営む東京都内在住の39歳の男性からの申立て。  申立ての概要は、「新しい業務の一つとして、お年寄りらの話し相手になる模様を取材され、今年6月14日テレビ東京の報道番組『ガイアの夜明け』で放送された。”孤独老人相手の新ビジネス”として、<2時間うなずくだけで1万円>と断定的に描かれたが、これは事実と違う。 放送での印象が悪かったことにより、顧客からの契約解消やインターネットで誹謗中傷される等の被害に苦しんでいる。訂正放送と謝罪を求める」というもの。

当該局は「話し合いを続けたい」としていたが、男性の訴えは、放送人権委員会の苦情取り扱い基準(運営規則第5条)の諸要件を充たしていることから、委員会では本事案の審理入りを決め、男性にあらためて正式の「申立書」を、当該局に対してはそれに対する「答弁書」等の提出を求め、双方の主張を基に9月委員会から本格審理に入ることになった。

「産婦人科医院・行政指導報道」事案の総括

7月28日に通知・公表した標記事案についての総括が行われた。

各キー局のニュースにおける「委員会決定」の扱いや、「委員会決定」を掲載した新聞記事が事務局から紹介された。

また、当該局のNHKが本事案の「委員会決定」の模様を伝えたニュースのVTRも視聴した。

委員会としては後日NHKから提出される「委員会決定を受けた後の対応方や改善策」を見守ることにしている。

苦情対応状況[7月]

2005年7月の1か月間に寄せられた放送人権委員会関連の苦情の内訳は、次のとおり。

◆人権関連の苦情(10件)

  • 斡旋・審理に関連する苦情(関係人からの人権関連の苦情で、氏名・連絡先や番組名などが明らかなもの)・・・8件
  • 人権一般の苦情(人権関連だが、関係人ではない視聴者からの苦情、または、氏名・連絡先や番組名などが不明なもの)・・・2件

「判断基準2005」の編集作業について

『放送人権委員会の判断~2003』の改訂版と位置づけられる『放送人権委員会判断基準2005』の事務局案が、委員会に提出された。これは、これまで8年半の間に審理されてきた16事案25件の委員会決定の中で示された個々の判断基準を系列的にまとめたもの。事務局案では、60の判断基準が示されており、『~2003』の17判断基準と比べ、具体的基準がより詳細に摘示されている。各委員に事務局案についての検討、意見を求め、右崎正博委員に監修を依頼して編集作業を進め、10月発行を目指すことになった。

その他

事務局から東北地区の会員社との意見交換会を11月下旬に仙台で開催することを検討しているとの報告があった。最後に、次回放送人権委員会は、9月20日午後3時から開くことを決め、閉会した。

以上

第102回 放送と人権等権利に関する委員会

第102回 – 2005年7月

「産婦人科医院・行政指導報道」事案の審理

審理要請案件…など

「産婦人科医院・行政指導報道」事案の審理

愛知県の産婦人科医院院長が申立てていた本事案について放送人権委員会は、今年2月の委員会で審理入りを決めた後、4回にわたって審理を行ってきた。

「委員会決定」の要旨は、「当委員会としては、本事案において、報道による人格権侵害を認めるか否かについては意見の一致を見ることはできなかったものの、正確性を欠いて深刻な結果を招いたことを重視し、名誉毀損をきたしかねない重大な放送倫理違反があったと認定する。委員会はNHK名古屋放送局に対し、本決定の主旨を放送するとともに、再発防止のため放送倫理に一層配慮するよう勧告する」というもの。

放送人権委員会では、7月28日に「委員会決定」の通知・公表を行う事を決めた。 なお、本「委員会決定」は16事案、25件目となる。

審理要請案件

◆「たこ焼き屋店主からの訴え」

本件事案は、兵庫県内で駅前に車を止め、移動販売のたこ焼き屋を営んでいた女性店主から、5月半ばから放送人権委員会事務局に苦情が寄せられていたが、当該局との話し合いがつかず、7月11日付けで申立書が届き、7月の委員会で審理するか否かを検討した。

申立ての概要は、「2005年5月9日放送の毎日放送のニュース番組「ボイス」で、盗撮映像や誘導的会話などをつなぎ合せて、私の嫌がらせで喫茶店を潰したと放送された。喫茶店主からの一方的取材で構成された番組で、私を犯罪者扱いにしている。公平な取材報道と謝罪を望む」というもの。

委員会では、申立書に対する当該局の答弁書やそれに対する申立人の反論書などを提出してもらい、来月8月の委員会で本格的な審理をおこなうことになった。なお、事案の標記を今後「喫茶店廃業報道」とすることにした。

◆「リサイクル業者からの訴え」

埼玉県内のプラスチックリサイクル関連業者から、弁護士名で、7月12日付で紛争処理申立書が届けられた。苦情の概要は、6月の報道番組で、廃棄物処理事業をめぐり不正行為が行われていると放送されたとして訂正放送をもとめたもの。委員会で検討した結果、本事案と直接関連事案が当該テレビ局との間で裁判中であることなどから、審理対象とするには申立て資格の点で問題があることが指摘された。

苦情対応状況[6月]

2005年6月の1か月間に寄せられた放送人権委員会関連の苦情の内訳は、次のとおり。

◆人権関連の苦情〔23件〕

  • 斡旋・審理に関連する苦情(関係人からの人権関連の苦情で、氏名・連絡先や番組名などが明らかなもの)・・・14件
  • 人権一般の苦情(人権関連だが、関係人ではない視聴者からの苦情、または、氏名・連絡先や番組名などが不明なもの)・・・9件

その他

事務局から「放送人権委員会判断基準・改訂版」の作業の進捗状況が報告され、次回までにたたき台的なものをまとめて、委員会の指示を仰ぐことになった。最後に、次回放送人権委員会は、8月23日午後4時から開くことを決め、閉会した。

以上

第101回 放送と人権等権利に関する委員会

第101回 – 2005年6月

「産婦人科医院・行政指導報道」事案の審理

人権に関する苦情対応状況…など

「産婦人科医院・行政指導報道」事案の審理

本事案は、愛知県の産婦人科医院長が2005年1月にNHK名古屋放送局で放送されたニュース番組で、「2003年10月に助産師資格のない看護師、准看護師に内診等の助産行為をさせていたとして行政指導をうけたことを、あたかも現在も違法行為を行っているかのように報道されたことにより、人権を侵害された」と申し立てたもの。

今年2月の委員会で審理入りを決めた後、放送人権委員会では3月の委員会以来ヒアリングを含め3回にわたって審理を行ってきた。

委員会では、3人の委員から新たに提出されたそれぞれの見解について1時間50分に及ぶ協議を行った。その検討の結果、起草委員2名を決めて、7月上旬にも起草委員会を開いて、委員会決定の草案作成作業を進めることになった。

人権に関する苦情対応状況

◆「美術館運営会社社長の申立て」について

名古屋市の不動産会社の社長から、松江市に誘致された美術館の運営をめぐり、5年前にニュース番組で「当方に取材もなく一方的に悪者にされた。最近放送人権委員会の存在を知ったので、苦情申立をしたい」との訴えが5月末にあった。

これに対し当該局では「一貫して市の対応に問題があったことを伝えたのだ」と反論していた。

委員会では、「審理対象は放送から1年以内に申立てられたもの」という運営規則を著しく超えており、事情を斟酌しても、審理対象外と判断せざるを得ないとの結論に至り、この結論を文書にして委員長名で、苦情申立人に送ることになった。

◆ 苦情対応状況[5月]

2005年5月の1か月間に寄せられた放送人権委員会関連の苦情の内訳は、次のとおり。

◆人権関連の苦情〔10件〕

  • 斡旋・審理に関連する苦情(関係人からの人権関連の苦情で、氏名・連絡先や番組名などが明らかなもの)・・・7件
  • 人権一般の苦情(人権関連だが、関係人ではない視聴者からの苦情、または、氏名・連絡先や番組名などが不明なもの)・・・3件

その他

最後に、次回放送人権委員会は、7月19日午後4時から開くことを決め、閉会した。

以上

第100回 放送と人権等権利に関する委員会

第100回 – 2005年5月

「産婦人科医院・行政指導報道」事案のヒアリング・審理

人権に関する苦情対応状況(4月)…など

「産婦人科医院・行政指導報道」事案のヒアリング・審理

愛知県の産婦人科医院長が2005年1月にNHK名古屋放送局で放送された「ニュース番組」において、「2003年10月に助産師資格のない看護師、准看護師に内診等の助産行為をさせていたとして行政指導を受けたことを実名で報道され、現在も違法行為を行っているかのように伝えられたことにより、名誉と信用を毀損され、人権を侵害された」と申し立てている事案で、5月の委員会では、申立人、被申立人双方を招いてヒアリングを行った。

ヒアリングで申立人側は、「行政指導を受けた2003年10月以降、当医院では厚生労働省の指導の通りに診療を行っている。今回の実名によるニュース報道の必要性は全くない。またニュースで行政指導が何時行われたのか、時期を明示していないことは誤報である。翌日(1月26日)の修正報道についても満足していない。本件報道によって当医院は多大な報道被害を受けており、NHKにはきちっとお詫びして頂きたい。また今回の全てのニュースを取り消してもらいたい」と主張した。

一方、NHK側は「今回のニュースは十分な裏付け取材に基づいて、行政指導が行われたと言う事実を伝えたものであって内容に誤りはない。また、報道した内容には公益性、公共性があり、権利侵害には当たらないと考える。行政指導の時期を明示しなかった点については、今回の報道目的からして、必ずしも指導の時期まで明示する必要はないと判断した。また、報道では、改善の指導が行われた事実を過去のことだとわかるように伝えている。ただ、今から考えれば、最初から時期を明示したほうがより正確に内容を伝えることができたと思う」と述べた。

双方に対し、各委員からは事実関係などについて質問があった。2時間近くに及ぶヒアリングのあと、審理に移り意見を交わしたが、6月の委員会で更に審理を継続することになった。

人権に関する苦情対応状況(4月)

2005年4月の1か月間に寄せられた放送人権委員会関連の苦情の内訳は、次のとおり。

◆人権関連の苦情〔14件〕

  • 斡旋・審理に関連する苦情(関係人からの人権関連の苦情で、氏名・連絡先や番組名などが明らかなもの)・・・7件
  • 人権一般の苦情(人権関連だが、関係人ではない視聴者からの苦情、または、氏名・連絡先や番組名などが不明なもの)・・・7件

その他

審理要請案件「宝石販売報道」について

この案件については、前回の委員会で、審理対象としないことを決めた(BPO報告23参照)ことに伴い、飽戸委員長名で審理対象外とした理由を添えて、申立人に送った回答書を事務局から委員会に提出した。

「放送人権委員会判断基準」改訂作業を報告

放送人権委員会事務局から、下記の「放送人権委員会判断基準集2005年版」(仮題)編集方針を報告し、委員会の了承を得た。

放送人権委員会では、03年5月に「放送人権委員会の判断~6年間の記録」を発行した。これは、1997年の発足から03年まで6年間に扱った11事案20件に及ぶ「委員会決定」で打ち出された判断基準を系統的にまとめたもの。今回の「放送人権委員会判断基準集2005年版」は、その改訂版で、05年8月までの16事案25件の委員会決定で出された判断基準を網羅したものとなる。委員会の指導・了承のもとに編集作業を進め、9月末の発行を目指している。

最後に、次回放送人権委員会は6月21日午後4時から開くことを決め、閉会した。

以上

第99回 放送と人権等権利に関する委員会

第099回 – 2005年4月

「産婦人科医院・行政指導報道」事案の審理

審理要請案件「宝石販売報道」について…など

「産婦人科医院・行政指導報道」事案の審理

愛知県の産婦人科医院の院長が、2005年1月のNHK名古屋放送局のニュースで、「助産師資格のない看護師、准看護師に助産行為をさせていたとして03年10月に行政指導を受けたことを実名で報道された。すでに改善措置を講じているにもかかわらず、現在も違法行為を行っているかのように報道されたことにより、名誉と信用を毀損され、人権を侵害された」と申し立てている事案。

NHK名古屋放送局は、「無資格者による助産行為は重大な社会的問題であり、愛知県内でも行政指導の事例があったことを啓発することが重要だと判断して、報道したものだ」と反論している。

委員会では、前回3月の委員会を所用で欠席した竹田委員長代行が、本件事案についての見解を表明、ついで、「名誉権侵害(名誉毀損)の有無」「このニュースが視聴者にどう伝わったか」などについて意見を交わした。

今回は、委員会としての方向性を決めずに、次回5月の委員会で申立人、被申立人双方を呼んでヒアリングを行い、引き続き審理を続けることになった。

審理要請案件「宝石販売報道」について

京都府の男性が、2005年2月のニュース番組で「宝石販売を悪質デート商法と取り上げられ、違法行為をしていないのに行なったかのような報道で精神的苦痛を受けた。また記者の不適切な取材方法によって、店舗外での商談を禁止する会社の内規に違反するに至り降格処分を受けるなど、権利を侵害された」として、4月5日付けで申し立ててきた案件。

当初この案件は、3月10日付けで男性が勤める宝石販売会社名で申立書が送られてきたが、その後、申立人を会社から個人に代えて申請し直したもの。

再度の申立てを受けて、委員会では、本案件を審理対象とするか否か検討するため、当該局から自主的に提出された放送済みVTRを委員全員で視聴し、更に申立書と当該局の見解等を踏まえて意見を交わした。

その結果、「潜入取材や隠し撮りなど取材方法については検討する点はあろうが、申立人が番組の画面からは特定できない。特定できない以上当該番組で申立人の名誉が毀損されたとは言えない」とする意見が大勢を占め、本件は審理しないことに決めた。

委員会では、上記内容を文書化した「放送人権委員会の回答」を、飽戸委員長名で申立人に送付することにした。

総務省の行政指導について

総務省は2005年3月23日付けで熊本県民テレビ、テレビ東京と日本テレビの3社に対し”厳重注意”の行政指導を行なった。今回の行政指導は、昨年6月の山形テレビとテレビ朝日に次ぐもので、この行政指導に対してBPOは04年11月11日、「総務省は通達の中で放送人権委員会の事実認定や判断を引用するなどしたが、これは第三者機関に対する信頼を危うくする恐れが極めて強い」などとする『三委員長声明』を公表している。

今回の総務省の行政指導を重く見たBPOは、3委員会それぞれで意見を集約することになり、放送人権委員会では4月の委員会で議題として取り上げた。

委員会で出された主な意見は次の通り。

  • 放送局が自主的に訂正ないし謝罪をした後に、監督官庁が行政指導するのは、放送局の自主・自律をそいでしまうおそれがある。
  • 総務省がこういうケースで行政指導できる法的根拠はどこにあるのか。
  • 日本テレビに対する厳重注意では、「同社の番組基準に反し、放送法第3条の3第1項[番組基準]に抵触」となっているが、局側が自主的に設けた番組基準を行政指導の根拠に持ち出すのは如何か。
  • 今回は「放送人権委員会決定」等が引用されていないので、通達とBPOの間で直裁的な関連はなく、3委員長声明などの対応は難しいと思う。しかし、メディアの自律との関係で、どこかがきちんと意見を表明すべきだろう。
  • 民放3局への行政指導について、民放連が総務省に対し、指導を出す根拠や番組基準引用の是非などを問うよう働きかけてはどうか。

人権に関する苦情対応状況(3月)

2005年3月の1か月間に寄せられた放送人権委員会関連の苦情の内訳は、次のとおり。

◆人権関連の苦情〔13件〕

  • 斡旋・審理に関連する苦情(関係人からの人権関連の苦情で、氏名・連絡先や番組名などが明らかなもの)・・・4件
  • 人権一般の苦情(人権関連だが、関係人ではない視聴者からの苦情、または、氏名・連絡先や番組名などが不明なもの)・・・9件

1の案件のうち、「宝石販売報道」(2005年2月3日放送)の苦情申立ては、不適切な取材による誤った報道として、放送人権委員会に「苦情申立書」(3月10日付)が届いたもの。申立人が、法人(株式会社)となっていることから、委員会では協議の結果、放送人権委員会運営規則に基づき、このままでは受理できない旨、申立人に通知することになった。

その他

最後に、次回放送人権委員会はヒアリングがあるため、定例より1時間早め、5月17日午後3時から開くことを決め、閉会した。

以上

第98回 放送と人権等権利に関する委員会

第098回 – 2005年3月

「産婦人科医院・行政指導報道」事案の審理

[事例研究]:テレビ東京による「訂正放送」を視聴…など

「産婦人科医院・行政指導報道」事案の審理

NHK名古屋放送局のニュース番組(2005年1月25日放送)について、愛知県の産婦人科医院長から苦情申立てがあった事案。

申立人は「2003年10月に助産師資格のない看護師、准看護師に助産行為をさせていたとして行政指導を受けたことを実名で報道された。既に改善措置を講じているにもかかわらず、現在も違法行為を行っているかのように報道されたことにより、名誉・信用を毀損され、人権を侵害された」と主張。救済措置として”訂正放送と、公表を前提とした謝罪文”を当該局に要求してる。

これに対し、NHK名古屋放送局は、「無資格者による助産行為は重大な社会的問題として認識し、県内でも行政指導の事例があったことを啓発することが重要だと判断して報道した。また、NHKとしては院長から抗議を受けた『コメント内容の間違い』と『改善指導を受けた時期の明示』については、翌26日に修正放送をし、放送上の対応については理解を得られたと認識している。要求については応じられない」としている。

2月の委員会で審理入りが決定された後、申立人から提出された「当該局への要求を明記した『権利侵害申立の補充書』」、これに対する当該局からの「答弁書」、さらに申立人からの「反論書」を基に意見交換した。また、当該局から提出された放送済みテープを視聴し、1時間20分にわたって審理した。

委員会では、「放送の1年2か月前になされた行政指導を時期を明示せずニュース報道で取り上げたことの是非」「医院名を上げての報道と、その公共性・公益性」などが、主な論点となった。

審理の結果、当該局に対し「再答弁書」の提出を求め、4月の委員会で論点整理を行い、5月の委員会で双方にヒアリングを実施する方向で、今後の審理を進めることになった。

[事例研究]:テレビ東京による「訂正放送」を視聴

テレビ東京は、情報バラエティー番組[『教えて!ウルトラ実験隊』(2005年1月25日放送)で取り上げた花粉症治療法の企画コーナーで、過剰演出があったとして、自主的に2月1日の同番組内で「訂正・お詫び」の放送をした。

委員会では、放送人権委員会に関わる苦情案件ではないものの、この番組の録画テープを当該局から借り受けて視聴し、訂正放送のあり方について事例研究を行った。

人権に関する苦情対応状況(2月)

2005年2月の1か月間に寄せられた放送人権委員会関連の苦情の内訳は、次のとおり。

◆人権関連の苦情〔11件〕

  • 斡旋・審理に関連する苦情(関係人からの人権関連の苦情で、氏名・連絡先や番組名などが明らかなもの)・・・4件
  • 人権一般の苦情(人権関連だが、関係人ではない視聴者からの苦情、または、氏名・連絡先や番組名などが不明なもの)・・・7件

1の案件のうち、「宝石販売報道」(2005年2月3日放送)の苦情申立ては、不適切な取材による誤った報道として、放送人権委員会に「苦情申立書」(3月10日付)が届いたもの。申立人が、法人(株式会社)となっていることから、委員会では協議の結果、放送人権委員会運営規則に基づき、このままでは受理できない旨、申立人に通知することになった。

その他

「けん銃密輸事件報道」案件(2004年10月放送)については、2月の委員会で、放送人権委員会運営規則に基づき、審理対象外とすることを決定したが、事務局から、2月23日付で申立人に対し、飽戸委員長名で「審理対象外決定の回答文」を送付したと報告。

また、3月7日に広島で催した「放送人権委員会委員との意見交換会[中・四国]」について、中国・四国地区の放送局から22局32人が参加し、飽戸委員長をはじめとする7人の放送人権委員会委員と、「放送と人権」「取材のあり方」などをテーマに、具体的な事例を基に、活発な意見交換が行われたことを事務局から報告。参加委員から「有意義であった」との高い評価があった。

最後に、3月24日に開催される「BPO年次報告会」のスケジュールなどを確認、次回放送人権委員会を4月19日午後4時から開くことを決め、閉会した。

以上

第97回 放送と人権等権利に関する委員会

第097回 – 2005年2月

「産婦人科医院・行政指導報道」案件について協議

「けん銃密輸事件報道」案件について協議…など

「産婦人科医院・行政指導報道」案件について協議

愛知県の産婦人科開業医院長からNHKのニュース番組(2005年1月25日放送)について、1月31日事務局に、下記の苦情申立てがあり、2月8日に「申立書」が提出された。委員会では、この案件について審理入りするどうかについて検討した。

申し立てた院長は、NHKの記者から、「助産師不足の実態を調べ現状の改善に役立つ番組を企画したい」と番組企画を持ち出して協力要請があったので、取材に応じた。しかし、その日の夕方のニュースで、2003年10月に助産師の資格がない看護師、准看護師に助産行為をさせていたとして行政指導を受けたことを取り上げ、実名で報道された。2年も前のことを今になって取り上げた、この放送によって、名誉と信用を毀損され人権を侵害された、としている。

これに対し、NHK名古屋放送局は、「無資格者による助産行為は重大な社会的問題と認識し、愛知県内でも行政指導の事例があったことを啓発することが重要だと判断して報道したのであって、特定の意図を持って報道したものではない」「記者は最初から事実関係を確認したいと告げて取材した」と反論している。

また、NHKとしては、「院長から抗議を受けた『コメント内容の間違い』と『改善指導をうけた時期の明示』については、翌日修正放送などをし、放送上の対応については理解を得られたと認識している。今後も誠意を持って話し合いを続け、要求に対しては誠意をもって対応したい」としている。

委員会では、院長からの「申立書」とNHKからの「対応報告」を基にこの件を審理対象とするかどうか協議した結果、申立人が放送人権委員会での審理を強く求めていることや、当該局とこれ以上の話し合いを拒否していることから、審理事案とすることを決めた。

放送人権委員会では、「申立書」に当該局への要求が明確に記載されていないなど不備があるため、次回3月の委員会までに補正した「権利侵害申立書」を提出してもらうとともに、それに対する当該局の「答弁書」などの提出を求め、それを基に実質審理に入ることにした。

「けん銃密輸事件報道」案件について協議

奈良県の女性から、ニュース番組の特集(2004年10月放送)について、事務局に12月24日抗議文が送付され、1月28日「申立書」が届いた。内容は、「『けん銃密輸事件』を伝えた特集で、虚偽の報道をされて精神的打撃を被るとともに、けん銃密輸入グループの一員として犯人視され、人権が侵害された」と申し立ててきたもの。

委員会では、申立書や当該局の見解を検討する一方、当該局から提出された放送済みVTRを視聴し協議した。

放送人権委員会の運営規則第5条(2)には、苦情の取り扱い基準として、「放送されていない事項は原則として取り扱わない」と規定されているが、報道された首謀者に関する放送内容に誤りや歪曲があった場合には、共犯とされる者からの申立てであっても例外的に審理対象とするのが公平ではないかとの視点からも、慎重に検討した。

しかし、当該番組を視聴し判断したところ、申立人を特定して共犯者とうかがわせる事実は見出せなかった。したがって、本件報道による被報道者としての申立人資格を認めることは困難であり、このようなケースまで審理対象の範囲を拡大すると、報道を萎縮させるおそれがあるという意見が大勢を占めた。

こうした理由から、委員会は本件申立ては審理対象外として、審理しないことを決め、事由を記載した委員長名による文書を、申立人に送付することにした。

「委員会決定」に関する名古屋テレビの対応について検討

2004年12月に委員会決定を通知・公表した「警察官ストーカー被害者報道」事案(放送人権委員会決定24号)に関して、名古屋テレビから「対応報告」が提出されたことを、事務局から報告した。この委員会決定は、”問題なし”とする見解であり、委員会は当該放送局に決定通知後の対応・改善報告を求めていなかったが、05年1月末に名古屋テレビから自主的に提出された。

名古屋テレビの取り組みの概要は、「以前から同局が運用している『人権・プライバシーの尊重、報道被害の防止、名誉毀損の防止等にかかわる留意事項』を、全社員・スタッフで再確認した」とし、具体的には、「どのようなニュースでも取材・放送の是非、対応の仕方等で疑問がある場合は、複数の階層に多岐にわたって判断を仰ぐこと」や、「事案を担当した第一次取材者は取材内容や関係者の発言内容等を詳細な記録として文書化すること」などを改めて確認した、というもの。

委員会では、名古屋テレビから自主的に対応報告が提出されたことを評価するとともに、報告内容を了承した。

人権に関する苦情対応状況(1月)

2005年1月の1か月間に寄せられた放送人権委員会関連の苦情の内訳は、次のとおり。

◆人権関連の苦情〔12件〕

  • 斡旋・審理に関連する苦情(関係人からの人権関連の苦情で、氏名・連絡先や番組名などが明らかなもの)・・・7件
  • 人権一般の苦情(人権関連だが、関係人ではない視聴者からの苦情、または、氏名・連絡先や番組名などが不明なもの)・・・5件

「視聴率調査に関わる検証会」報告

飽戸委員長から、民放連と広告主協会、広告業協会で構成する「視聴率調査に関わる検証会」の発足について報告があった。飽戸委員長は「この検証会の発足は、『視聴率に関するBPO三委員長の見解と提言』に基づいて、民放連会長直属の「視聴率等のあり方に関する調査研究会」(座長=清水英夫BPO理事長)が設置を決めたもので、私も委員として参加することになった。視聴率調査の監査を外国のようにきちんとやろうということで、検証活動を積極的に進めていくことになる」と経過を語った。

その他

事務局より、3月7日(月)広島市で開かれる「放送人権委員会委員との意見交換会[中・四国]」について、スケジュール案などを報告し、調整・相談。

次回放送人権委員会を3月15日午後4時から開くことを決め、閉会した。

以上

第96回 放送と人権等権利に関する委員会

第096回 – 2005年1月

「文化財遺跡発掘関連報道」案件の報告について

斡旋解決事案「キス強要バラエティー番組に抗議」の報告…など

「文化財遺跡発掘関連報道」案件の報告について

2004年8月に大阪府の男性から「文化財遺跡の発掘について取材を受けたが、応えた内容と放送された内容が違っていて、闇の事件屋扱いされた」との苦情が寄せられた案件。

前回12月の委員会で、申立人が問うている番組の制作姿勢や営業上の損失等は放送人権委員会運営規則の〔苦情の取り扱い基準〕になじまず、本件申立ては審理対象外と決まったのを受けて、委員長名でその旨を文書で申立人に通知したことを事務局から報告した。

年明け後も、申立人から特に反応はなく、委員会はこの件の審理を終了することにした。

斡旋解決事案「キス強要バラエティー番組に抗議」の報告

12月に愛知県の女性から、「駐車していたところ、お笑いコンビの一人が無断で乗り込んできて無理やりキスをしようとした。しかも、この一部始終をテレビカメラに撮影された。局側に抗議したら放送しないと答えたが、問題の本質がわかっていない。こんな取材・撮影は絶対許せない」と強い苦情がBPOに寄せられた。

BPOの要請で双方が話し合った結果、当該局が「深く謝罪するとともに、問題となったコーナー企画を即時打ち切る」ことなどで女性と合意した。

事務局からこの件を本委員会に報告、承認された。これで本年度の斡旋解決は4件となった。

人権に関する苦情対応状況(12月)

2004年12月の1か月間に寄せられた放送人権委員会関連の苦情の内訳は、次のとおり。

◆人権関連の苦情〔14件〕

  • 斡旋・審理に関連する苦情(関係人からの人権関連の苦情で,氏名・連絡先や番組名などが明らかなもの)・・・10件
  • 人権一般の苦情(人権関連だが、関係人ではない視聴者からの苦情)・・・4件

また、BPO発足2003年7月以降、2004年12月までの、苦情・斡旋・決定の累積件数は、次のとおり。

03.7 ~04.12 斡旋・審理関連 人権一般 斡旋解決/決定
189 168 357 8/3

(注)
2004年「決定」事案    3件
「中学校教諭・懲戒処分修正裁決報道」(北海道文化放送)
「国会・不規則発言編集問題」(テレビ朝日)
「警察官ストーカー被害者報道」(名古屋テレビ)

2004年「斡旋解決」案件  3件

「リタイア盲導犬の世話を巡り名誉毀損」とのペット美容室経営者の訴え
「取材協力したのに虚偽の放送をされ、名誉・信用毀損」とのヘリコプター・オーナーからの苦情
「被虐待児ドキュメントで子供を無断撮影し放送された」との母親からの抗議

“訂正放送請求事件”の最高裁判決について意見交換

1996年6月にNHKが放送した中高年の離婚を考える番組『生活ほっとモーニング~妻からの離縁状・突然の別れに戸惑う夫たち』で、離婚した夫の一方的な話を放送されたとして名誉毀損・プライバシー侵害を訴えていた埼玉県の女性が、NHKに訂正放送などを求めた訴訟の上告審判決が、2004年11月25日に最高裁第一小法廷であった。

この判決内容は、今後の放送人権委員会の役割や審理に深く関わってくると見られることから、委員会で右崎正博委員に解説してもらい、意見交換した。

右崎委員はレジュメに基づき、判決内容を解説。論点として、この最高裁判決は、「?放送法4条1項について、放送内容の真実性の保障及び他からの干渉を排除することによる表現の自由の確保の観点から、放送事業者に対し、自律的に訂正放送等を行うことを国民全体に対する公法上の義務として定めたものであって、被害者に対して訂正放送等を求める私法上の請求権を付与する趣旨の規定ではないとしている」「今後、放送事業者は訂正放送等について自律的・自主的に対応することが求められるが、その際には、放送事業者によって自主的に設立された第三者機関としての放送人権委員会が、大きな役割を果たすことが期待されるのではないか」「放送人権委員会が権利侵害の認定をした場合は、謝罪放送や訂正放送を求める申立てに対して、委員会決定の中で、そういうことを示すことが必要になるかもしれない。その是非も含め検討が必要だ」と問題提起した。

また、「?民法第723条に基づく謝罪放送については、この請求部分についての上告がなされなかったので、最高裁での審理判断の対象にならなかった。しかし、放送法第4条に基づく訂正放送請求権が私法上の権利として認められないことになった一方で、民法第723条に基づく名誉回復措置としての謝罪放送・訂正放送の請求の可否については未解決のまま残された」と解説した。

この後意見交換を行ったが、主な意見は以下の通り。

  • 今後は放送法に代わって民法第723条に基づいて訂正放送請求等が行われることになるが、この条文は名誉回復措置だけが対象だ。プライバシー侵害等は対象外で、局側は名誉毀損以外はフリーハンドになる。このあたりが問題になりそうだ。
  • 裁判で、民法第723条を活用するより放送人権委員会に申立てたほうが、もっと幅広い対応が可能ではないかという流れが出てくることも予想される。
  • 放送局側も謝罪・訂正放送を求められた場合、自分の判断で決めないで、放送人権委員会でいったん判断してもらい、その上で、「放送人権委員会が求めるのだからやりましょう」というスタンスになるのではないか。放送人権委員会もそういう役割を期待されると思う。
  • 基本的には放送局の自主・自律的な決定が一番大事で、放送人権委員会に全面委任してくるケースはないと思う。

“番組に政治介入”との報道について意見交換

2005年1月12日付の朝日新聞(朝刊)が、「NHKが2001年1月に教育テレビで放送した、慰安婦問題などを取り上げた民間法廷を素材とした特集番組『ETV2001戦争をどう裁くか~問われる戦時性暴力』(4回シリーズの第2回)について、自民党の国会議員2人が”偏った内容だ”などと介入し、NHKは、その後番組内容を改変した」と報道し、NHKと、名指しされた議員2人は「朝日の取材は最初から意図的で、歪曲・誘導されたものだ」などと反発、抗議している問題について委員会で話し合った。

報道された番組については、出演者がNHKを相手取って申し立て、放送人権委員会が2003年3月に委員会決定を出した事案でもあり、事務局から当時の放送人権委員会の審理概要について説明した。放送人権委員会としても、「番組への政治介入があったのかどうか」について、今後も事実関係の解明を注意深く見守っていくことにした。

その他

事務局より、3月7日(月)広島市で開かれる「放送人権委員会委員と中・四国地区担当者との意見交換会」について、スケジュールなどを相談。また、今年度の「BPO年次報告会」を、3月24日(木)に開催することを報告した。

平成17年度の放送人権委員会の委員会の日程について協議し、原則第3火曜日午後4時からとし、例外として、8月は第4火曜日の23日、18年3月は第2火曜日の14日に開催することとした。

次回放送人権委員会を2月15日午後4時から開くことを決め、閉会した。

以上

第95回 放送と人権等権利に関する委員会

第095回 – 2004年12月

審理要請案件「文化財遺跡発掘関連報道」の取り扱いについて

「警察官ストーカー被害者報道」事案の総括…など

審理要請案件「文化財遺跡発掘関連報道」の取り扱いについて

8月に大阪府の男性から、「文化財遺跡発掘について取材を受けたが、対応した内容と放送された内容が違っていて、事実関係を捏造され、事件屋扱いされた」と苦情が寄せられた案件。放送人権委員会では9月に双方へ話し合いを要請したが不調に終わったため、10月に「申立書」の提出を求め、11の委員会で「申立書」を基に協議したが、内容に不備があり、苦情申立人に申立書の補足を提出要請していた。

12月の放送人権委員会では、再提出された「申立書」、および、申立書に対する当該放送局の「見解」、放送局から提出された当該番組のVTRを視聴して、審理入りするかどうかを協議した。

その結果、「申立人は当該番組の制作姿勢や制作のあり方を厳しく問うているが、放送人権委員会は番組の企画や姿勢などを審理対象としていない」こと、また、「当該番組によって営業上の損失を受けたことを問題にしているが、放送人権委員会では経済的損失等は把握できない」ことなどの事由により、本件申立ては、運営規則第5条の1〔苦情の取扱基準〕に照らして”審理対象外”と判断することに決定した。

なお、同決定は放送人権委員会委員長名の文書で、申立人に審理対象外とした事由を記して通知し、あわせて当該放送局にその旨を連絡することとした。

「警察官ストーカー被害者報道」事案の総括

愛知県の女性から申立てがあった「警察官ストーカー被害者報道」事案に関する「委員会決定」(見解)の通知・公表と記者発表の模様について、事務局から以下のとおり報告した。

「委員会決定は12月10日午前10時30分に、申立人・被申立人双方に通知した。被申立人の名古屋テレビ放送にはBPO会議室で飽戸委員長から委員会決定文を手交し、申立人には調査役が名古屋に出向いて直接、同決定文を手渡し、内容を説明した。

申立人は、この決定について『取材・放送に不慣れな一般市民にインタビューする際、特に好奇の対象となりやすい事件の時には、その人が顔出しで放送されるとどのような影響が出るかを慎重に配慮してほしい。その影響や配慮の内容を取材される側にも説明し、了承を取ってほしい』と述べた。

一方、被申立人の名古屋テレビは、『決定は、人権侵害等は無かったとされていますが、肖像の使用にあたっては慎重な配慮が必要であるとしています。名古屋テレビでは、自社の放送基準を遵守し、今後も人権と放送倫理に充分な配慮をした報道活動に努めてまいります』とのコメントを公表した。

この後、午前11時から東京・千代田区紀尾井町の千代田放送会館内で記者発表を行い、『委員会決定』の内容を公表した。記者会見には、放送人権委員会から飽戸委員長と、起草委員の右崎委員と五代委員、それに渡邊委員が出席。メディア側からは記者22社32人が集まり、カメラ6台が入った。

会見では、まず飽戸委員長が『委員会決定』の概要を説明し、『今回の決定は少数意見がなく全員一致でした』と述べた。次いで右崎委員が、申立人・被申立人双方の主張が食い違った”申立人からの情報提供の有無”と”顔出し放送の諾否”の2点について説明した後、『審理全体を通して申立人の立場にも充分な配慮を払い公平な判断をしたと思う』と述べた。渡邊委員は、『素人にインタビューに応じてもらう際、どこまで説明し理解してもらえるか、放送従事者のプロとしての心構えが今後、問われることになる』と補足した。

最後に飽戸委員長が、『今回の委員会決定は”問題なし”と判断して被申立人側に対応措置の要請はしていない。しかし当該放送局も含め各局は、この放送人権委員会の決定を素材として活用し、(顔出し放送を含むインタビュー取材等における配慮のあり方についての)議論を深めてもらいたい』と述べた」。

以上の事務局からの報告の後、当該放送局が通知当日に放送した「委員会決定の主旨」を伝えるニュースのVTRを視聴。また、関連の新聞記事も資料として配付した。

飽戸委員長は、「記者会見では質問は殆ど出なかったが、会見終了後に記者達からいろいろ聞かれた。この中で『新聞記事についても肖像権に充分配慮しなければならないですね』という記者もいた」と当日の模様と感想を述べた。

斡旋解決事案の報告

事務局から以下の3件の苦情案件について、その後の経緯を報告した。

  • 「ヘリコプター・オーナーから名誉毀損」との苦情案件
    10月に大阪府の男性から寄せられた、「ヘリコプターのオーナーとして取材要請に応じたが、虚偽の内容を放送され、名誉・信用を毀損された」との苦情案件。当該放送局は、番組を紹介するHPの中で内容を訂正する措置をとったが、男性は納得せず、放送人権委員会に苦情を訴えてきた。
    放送人権委員会で話し合いを斡旋した結果、再度の話し合い結果に基づいて局側が、内容を修正した番組を男性の出身地などで放送することを提案し、男性もこれを了承し解決した。
  • 「ドキュメントで子どもを無断撮影し放送」との苦情案件
    8月に山形県の女性から寄せられた、「児童施設に預けている4歳の長男がドキュメンタリー番組で被虐待児の一人として撮影されたことを知った。局に放送をやめるように求めたが、映像処理を少し施されて結局、放送されてしまった」との苦情案件。局側は「学園長から撮影許可を得た。苦情に応えてモザイクを大きくした」と説明したが、女性は納得せず、話し合いは膠着状況になった。
    放送人権委員会は双方に重ねて話し合いを要請し、それに応えて放送局幹部が申立人と直接面談。改めて企画意図を説明して了解を求めた。女性は「親の承諾がないまま子どもを撮影したことは問題だ」と重ねて主張したが、新たな要求等はなく、その後数か月間、当該女性からの抗議・苦情もないことから、放送人権委員会では落着したものと判断した。

以上2件が斡旋解決として委員会で承認され、2004年度の斡旋解決事案は合わせて3件になった。

人権に関する苦情対応状況(11月)

11月の1か月間にBPOへ寄せられた、放送人権委員会関連の苦情の内訳は次のとおり。

◆人権関連の苦情〔25件〕

  • 斡旋・審理に関連する苦情(関係人からの人権関連の苦情で,氏名・連絡先や番組名などが明らかなもの)・・・21件
  • 人権一般の苦情(人権関連だが、関係人ではない視聴者からの苦情)・・・4件

その他

飽戸委員長から、「11月25日に『NHKに対する訂正放送要求裁判』の最高裁判決があったが、今後の放送人権委員会審理にも関係するところがあると思うので勉強会をしたい」との提案がなされ、来月の委員会で意見を交わすことを申し合わせた。

事務局から、「中・四国地区のBPO連絡責任者と放送人権委員会委員との意見交換会」を、2005年3月7日(月)の午後、広島市において開催する準備を進めていること、並びに、3月下旬に「BPO年次報告会」を開く予定であることが報告された。

次回放送人権委員会を1月18日午後4時から開催することを確認し、閉会した。

以上

第94回 放送と人権等権利に関する委員会

第094回 – 2004年11月

「警察官ストーカー被害者報道」事案の審理

放送人権委員会審理に関連する苦情の検討…など

「警察官ストーカー被害者報道」事案の審理

10月の委員会で実施した申立人・被申立人に対するヒアリングを受けて起草委員会がまとめた「委員会決定案」を基に、最終の審理を行った。

協議の結果、原案に微修正を加えて「委員会決定」がまとまり、12月10日に双方へ通知、その後、記者会見で公表することを決めた。

なお、本件事案の性格を踏まえ、公表にあたっては、申立人を匿名にすることも併せて了承した。

放送人権委員会審理に関連する苦情の検討

事務局から以下の3件の苦情案件について、その後の経緯を報告した。

  • 「文化財遺跡発掘関連報道」案件
    8月に大阪府の男性から、「取材に対応した内容と放送された内容が違っていて、事件屋扱いされた」との苦情が寄せられた案件。当該放送局との間で話し合いが続けられていたが、なお双方の主張には隔たりがあったため、申立書の提出を求めることにしていた。
    11月の放送人権委員会では、11月9日付で提出された「申立書」を基に協議したが、当該放送局に対する具体的な要求が記されていないなど記載内容に不備があることから、申立書の補足を要請することにした。
  • 「セミナー運営団体立ち入り調査報道」案件
    「児童虐待があったかのように報道され、人権や名誉を傷つけられた」とする、栃木県のセミナー運営団体関係者からの苦情案件。
    事務局から、その後の状況として、「当該放送局は『いつでも話し合う用意がある』としているが、代理人からはその後、全く動きがない」旨を報告した。
  • 「ヘリコプター・オーナーから名誉毀損」との苦情案件
    「虚偽の内容を放送され、名誉・信用を毀損された」として大阪府のヘリコプター・オーナーが苦情を申し立てている案件。
    事務局から、その後の動きとして、「10月末に双方の話し合いが行われ、申立人は当該放送局に対し、『大掛かりな謝罪は要求しない。(自分の親族や関係者がいる)地方の放送局か新聞で謝罪してくれればいい。期限はつけない、ゆっくり考えてくれ』と求めたと聞いている」と報告した。

人権に関する苦情対応状況(10月)

2004年10月中にBPOへ寄せられた、放送人権委員会関連の苦情の内訳は次のとおり。

◆人権関連の苦情〔22件〕

  • 斡旋・審理に関連する苦情(関係人からの人権関連の苦情で,氏名・連絡先や番組名などが明らかなもの)・・・15件
  • 人権一般の苦情(人権関連だが、関係人ではない視聴者からの苦情)・・・7件

「地方局・BPO連絡責任者と放送人権委員会委員との意見交換会」の開催について

在京局と放送人権委員会委員との意見交換会(本日)に続いて、「地方局・BPO連絡責任者と放送人権委員会委員との意見交換会」を開催することとし、2005年2~3月の広島市開催を目指し、委員のスケジュール等を確認した。

次回の委員会を12月21日(火)午後4時から開催することを確認し、閉会した。

以上

第93回 放送と人権等権利に関する委員会

第093回 – 2004年10月

「警察官ストーカー被害者報道」事案のヒアリングと審理

放送人権委員会審理に関連する苦情の検討…など

「警察官ストーカー被害者報道」事案のヒアリングと審理

◆ 申立人側ヒアリング

(出席者)申立人 愛知県在住の女性

冒頭、申立人が、持参したメモに基づいて「メディアは、表現の自由を前提にあげさえすれば、一市民の生活を犠牲にすることが許されるのか、はなはだ疑問に思う。犯罪被害者という特異な立場において侵害された権利をあえて主張することは、社会全体の利益につながるのではないか」と述べ、その後、委員との質疑応答に入った。

◆ 被申立人側ヒアリング

(出席者)被申立人 名古屋テレビ放送 3人

冒頭、被申立人側から「申立人との間で見解が異なっている点について、改めて意見を述べたい」として、次のような陳述があった。

「提出した補強資料に記したとおり、3月5日の深夜に申立人本人が情報提供の電話をしてきたことは間違いない。本人からの連絡がなければ、本件を当社が知ることはできなかった。

顔出し放送の了解に関しても、記者とカメラマンの記憶に不自然な点はなく、当社の主張は妥当なものであり、警察という権力を持つものが重大な犯罪行為をなしたということを、申立人が勇気を持って糾弾するという、その真摯さを担保する意味からも、顔出しの放送が相応しいと判断した」。

この意見陳述後、委員との質疑応答を行った。

■ ヒアリング後の審理

申立人・被申立人双方へのヒアリング終了後、審理に入った。

前回(9月)の委員会までの審理および前記ヒアリングの結果を踏まえ、まず起草委員が申立人の主張3点(人格権侵害、放送倫理違反、過剰取材)について、「委員会の判断」部分の原案を説明した。

この原案に対し、委員から、一部表現の追加・訂正意見が出され、各委員は概ねこれに賛同。さらに、モザイク使用の是非、映像の使用量、”2ちゃんねる被害”の扱いなどについて意見が交わされた。

協議の結果、もう一度、次回委員会で最終的な詰めを行った上で「委員会決定」を決定し、12月上旬に通知・公表することを決めた。

放送人権委員会審理に関連する苦情の検討

事務局から、以下の3件の苦情案件について、その後の経緯を報告した。

1.「セミナー運営団体立ち入り調査報道」案件

栃木県のセミナー運営団体から、「犯罪行為があったことを前提にするような報道をされ、人権や名誉を傷つけられた」とする苦情申立てが6月にあったが、9月になって、内容を一部手直しした申立書が再送付されてきた。9月の委員会で検討し、新たな申立内容での双方の話し合いを要請していたが、その後、申立人と当該放送局の間で話し合いが行われているようだ。
放送人権委員会では、暫くの間、その推移を見守ることにした。

2.「文化財遺跡発掘関連報道」案件

大阪府の男性から、「文化財遺跡の発掘について取材を受けたが、答えた内容と放送された内容が違い、事実関係を捏造され、事件屋扱いされた」との苦情が8月に寄せられた案件で、9月の委員会で検討し、双方に話し合いを要請していた。その後、10月に入って申立人と当該放送局との間で話し合いが行われたが、双方の主張に隔たりがあり、不調に終わっている。
放送人権委員会として「申立書」の提出を求め、それを待って、審理入りするか否かの検討を行うことにした。

3.「ヘリコプター・オーナーから名誉毀損」との苦情案件

大阪府の会社社長(男性)から、「ヘリコプターのオーナーとして取材要請に応じたが、虚偽の内容を放送され、名誉・信用を毀損された」との苦情が10月に届いた。当該放送局では、番組を紹介するインターネットのHPで訂正する措置を採ったが、この訂正の仕方に苦情申立人は納得していない。
放送人権委員会では、双方に対し、さらに話し合いを続けるよう要請することにした。

斡旋解決事案の報告

事務局から、10月初旬に苦情があった「盲導犬の世話を巡り、名誉を傷つけられた」という沖縄県のペット美容室経営者(男性)からの苦情について、事務局が誠意を持って話し合いを要請したところ、再度、双方による話し合いが行われ、解決したものと認められると報告した。
放送人権委員会ではこれを了承し、今年度初の斡旋解決事案とした。

「総務省の行政指導に関する三委員長声明」について

委員長から、「9月21日に『三委員長・理事長 会談』を開き、放送人権委員会の委員会決定が引用された総務省の行政指導に関して”BPO三委員長声明”の形で意思表示を行うことを決めた。放送人権委員会各委員の意見は、その場で詳しく紹介した。それらの意見をベースに声明原案を作成している」と、その後の経緯を紹介。続いて事務局が、「この”三委員長声明”案を基に各委員会で再度議論し、その結果をまとめ、最終的に11月11日に『三委員長・理事長 会談』を開催して声明内容を確定し、公表する段取りになっている」と説明した。

委員長と各委員からは、「中身の大部分に放送人権委員会委員の意見が反映されている。あとは表現やワーディングの問題だけだ」などの意見が出され、結局、「特別なことがあれば後日、事務局宛にメモで提出いただくとして、原則的に三委員長・理事長の判断に一任する」ことで了承した。

人権に関する苦情対応状況(9月)

  • 斡旋・審理に関連する苦情(関係人からの人権関連の苦情で,氏名・連絡先や番組名などが明らかなもの)・・・14件
  • 人権一般の苦情(人権関連だが、関係人ではない視聴者からの苦情)・・・5件

放送人権委員会委員との意見交換会の開催について

懸案となっていた「在京局・BPO連絡責任者と放送人権委員会委員との意見交換会」を11月16日午後4時から、千代田放送会館7階会議室で開催することに決定。したがって、次回委員会は、この意見交換会に引き続いて、同日午後5時30分から開催することとし、閉会した。

以上

第92回 放送と人権等権利に関する委員会

第092回 – 2004年9月

「警察官ストーカー被害者報道」事案の審理

「セミナー運営団体立ち入り調査報道」案件について検討…など

「警察官ストーカー被害者報道」事案の審理

警察官からストーカー行為を受けた愛知県の女性が、「警察に被害届を出した際、名古屋テレビからインタビュー取材を受けたが、意に反して顔出し放送(3月)され、権利侵害された」と訴えている事案。名古屋テレビは、「申立人の意思を確認した上で顔出し放送に踏み切った」と主張している。

委員会では、申立人からの「申立書」「反論書」や、それに対する当該局からの「答弁書」「再答弁書」などを踏まえて、実質的な審理に入った。また、本事案の基本的な論点となる「申立人から事前に取材要請があったかどうか」や「放送での顔出しの応諾に関する事実認識」の双方の主張について意見交換した。

検討の結果、委員会では、申立人・被申立人双方の主張に隔たりが大きいことから、10月の委員会で双方を個別に招いて事情聴取することが必要と判断し、ヒアリングを行うことを決めた。

「セミナー運営団体立ち入り調査報道」案件について検討

この案件は、6月に栃木県のセミナー運営団体から、「犯罪行為があったことを前提とするような断定的な報道をされ、人権や名誉を著しく傷つけられた」として苦情申立てがあったもの。

放送人権委員会では、7月の委員会で協議した結果、「申立書の記載内容に不明な点がある」として不受理と決定。その旨を7月末に申立人代理人に伝えるとともに、申立人の意向を確認していたところ、9月、一部手直しした申立書が新たに送られてきた。

これを受けて、委員会で取り扱いを検討した結果、当該申立内容について放送局と一度も話し合っていないことから、まずは申立人側に局側との話し合いを行うよう要請することにした。

放送人権委員会審理に関連する苦情について

  • 「文化財遺跡発掘関連報道」に関する苦情
    「文化財遺跡発掘についての取材を受けたが、答えた内容と放送が違っていた。放送では事実関係を捏造され事件屋扱いされた」との苦情が、大阪府の男性から8月、放送人権委員会に寄せられた。苦情申立人と当該局との間では、苦情申立て以前に文書でのやり取りが行われていたが、双方の主張は対立したままである。
    委員会としては再度、双方に話し合いを要請し、その結果によっては「申立書」の提出を求めることにした。
  • 「親に無断で施設児童取材」との苦情
    8月に放送された”被虐待児童が児童施設で養育されている様子を描いたドキュメンタリー”に対し、山形県在住の児童の母親が苦情を寄せた。「施設に預けている子どもが自分に無断で取材され放送された。放送前に番組を視聴させてもらったが、モザイクを掛けてあるとはいえ、明らかに自分の子どもとわかる。放送をやめるようディレクターに話したが、取り合ってくれない」と当該局に抗議。
    これに対し、当該局は「親権を代行している施設の長に許可を得ており問題はない。モザイクも掛けており、人権上の配慮もしてある」として、放送に踏み切った。
    放送後、放送人権委員会に対して電話で苦情の訴えがあったものの、母親から当該局に直接訴えがなされていないことなどから、放送人権委員会では、両者にさらなる話し合いを要請していた。
    9月に当該局の報道担当役員らが苦情申立人宅を訪れ、取材意図や配慮などを説明した。これに対し申立人は、「親の許可なしでの取材・放送は遺憾である」と主張したが、それ以上の要求はなく経過してきており、当該局側は、これで一応決着したものと判断している。

人権に関する苦情対応(8月)

  • 斡旋・審理に関連する苦情(関係人からの人権関連の苦情で,氏名・連絡先や番組名などが明らかなもの)・・・13件
  • 人権一般の苦情(人権関連だが、関係人ではない視聴者からの苦情)・・・2件

その他

「放送人権委員会委員と在京局の放送人権委員会担当者との意見交換会」を、早ければ11月の委員会当日に開催することにした。

また、「放送人権委員会委員と地方の放送事業者との意見交換会」は、年を越えた今年度内を目途に広島で実施することにした。

次回放送人権委員会を10月19日(火)午後3時30分から開くことを決め、閉会した。

以上

第91回 放送と人権等権利に関する委員会

第091回 – 2004年8月

審理要請案件

委員会決定を受けてのテレビ朝日の「改善報告」について…など

審理要請案件

1.「警察官ストーカー被害者報道」

愛知県の女性から6月に申立書が提出された案件で、内容は「3月6日に警察に被害届を出した際に名古屋テレビからインタビュー取材を受けたが、『放送では顔は出さないでほしい』と言ったにもかかわらず顔出しでニュースなどで放送され、権利侵害された」というもの。これに対し名古屋テレビは、「申立人から積極的な事前の接触があって取材したもので、取材過程で警察官の不当行為を決然と告発するという強い意志を感じ、本人の意思を確認した上で顔出し放送に踏み切った」と主張している。
放送人権委員会は7月の委員会で、当該局に話し合い継続の意向がなお残されていたことから、双方にさらなる話し合いを斡旋していたが、その後のやり取りでも”顔出し放送”応諾の事実認識に関する双方の主張に大きな隔たりがあることなどから、委員会では話し合いがつかない状況にあると判断し、審理に入ることを決めた。

2.「セミナー運営団体立ち入り調査報道」

この案件は、6月に栃木県のセミナー運営団体から、「4月に放送された報道番組で、犯罪行為があったことを前提とするような断定的もしくは誘導的な報道をされたために、人権や名誉を著しく傷つけられた。当該局に報道の訂正と取消・謝罪を求めたが、当該局からは『十分な取材に基づくもので、問題はない』と回答された」というもの。
7月の委員会で、「申立人と放送内容の具体的な関係がはっきりせず、また人権や名誉を傷つけられた具体的な記載がなく、申立内容が不明」として、本案件を不受理と決定し、その旨を委員長名の文面(7月27日付)で申立人代理人に送付していた。
委員会で今後の取り扱いについて協議した結果、申立書不受理の通知後も申立人からなんら意思表示もないことから、次回委員会までに、新たな申立てを行う意向があるかどうか申立人に確認することにした。

3.「政治的公平を求める民主党の申立て」

7月に民主党から、山形テレビが3月に放送した自民党山形県連制作の持ち込み番組『どうなる山形!~地方の時代の危機~』に対して「”政治的公平”を定めた放送法に反し、民主党の権利を侵害したものだ」とする申立てがあり、7月の委員会で検討した結果、「委員会の苦情取扱基準(申立人資格の適格性および苦情取扱対象)に照らし、本案件を審理対象外とする」ことを決定し、その旨を委員長名の文面(7月26日付)で申立人側に送付している。
委員会では、事務局から「その後申立人代理人に問い合わせたが、特に反応がなかった」との報告を受けて協議し、当該案件はこれで一件落着と判断して検討を終えることにした。

委員会決定を受けてのテレビ朝日の「改善報告」について

6月4日に委員会決定を通知・公表した「国会・不規則発言編集問題」(放送人権委員会決定 第23号)に対して、テレビ朝日から飽戸弘委員長宛に8月11日付文書で、改善策と具体的な取り組みに関する報告があった。

放送人権委員会は報告内容を検討した結果、委員会が指摘した”視聴者への説明対応”に加え、7項目にわたる”改善策”を講じたことを評価し、了承した。

なお、委員会では、この当該局の改善報告とそれに対する委員会の評価、了承についてBPO報告に掲載することにした。

「政治的公平を求める民主党の申立て」

総務省は情報通信政策局長名で6月22日、テレビ朝日と山形テレビに行政指導、民放連に協力要請をし、この中で、テレビ朝日『ビートたけしのTVタックル』(2003年9月15日放送分)に関して、総務省が、同社からの報告とともに、当該番組に対する放送人権委員会「委員会決定」(6月4日に通知・公表)の主要部分を引用し、それを根拠に厳重注意と再発防止措置を要請したことについて、放送人権委員会として重大な問題との認識の基に、委員間で意見交換をした。

最後に、飽戸委員長が、「これは放送人権委員会、BPOの活動にとって重要な問題であるので、各委員の意見を事務局で整理・集約し、清水委員長に報告、今後『三委員長・理事長会談』などしかるべき場で検討をお願いすることにしたい」と発言、これを了承した。

人権に関する苦情対応(7月)

  • 斡旋・審理に関連する苦情(関係人からの人権関連の苦情で,氏名・連絡先や番組名などが明らかなもの)・・・13件
  • 人権一般の苦情(人権関連だが、関係人ではない視聴者からの苦情)・・・2件

その他

「次回放送人権委員会を9月21日午後4時から開くことを決め閉会した。

以上

第90回 放送と人権等権利に関する委員会

第090回 – 2004年7月

審理要請案件

委員会決定についての北海道文化放送の「改善報告」…など

審理要請案件

1.「警察官ストーカー被害者報道」

この案件の申立人は愛知県の女性で、内容は「警察官からストーカー行為を受け3月6日被害届を出したところ、当該局からインタビューを受けた。『放送では顔は出さないで欲しい』と依頼したにもかかわらず、ニュース番組で放送された。抗議したところ、『顔出しの了解は得ていたはず』と言われ、謝罪を求めたが断られた」というもの。
審理入りするかどうかについて意見が交換されたが、当該局になお話し合いの意図があることを考慮し当面話し合いを継続するよう要請することになった。

2.「セミナー運営団体立ち入り調査報道」

この案件の申立人は、栃木県のセミナー運営団体と個人2人で、内容は「犯罪的行為があったことを前提とするような断定的な報道をされたために、人権や名誉を著しく傷つけられた。当該局に報道の訂正及び取消・謝罪を求めたが、当該局からは『十分な取材に基づくもので、問題はない』と回答された」というもの。
各委員から、「申立書の内容では、組織の名誉を侵害されたのか個人の名誉を侵害されたのか定かでない」「申立人2人についても直接放送では取上げられていない」「権利侵害の具体的内容がはっきりしない」などの意見が出された。
上記の意見を踏まえ、本件は受理されるまでには至らず、その旨を申立人側に伝えることにした。

3.「政治的公平を求める民主党の申立て」

7月6日付けで民主党代表の岡田克也氏を申立人とする申立書が提出されたのをうけて協議した。
申立書の内容は「山形テレビが3月20日に放送した『どうなる山形!~地方の時代の危機~』は、自民党山形県連制作の持ち込み番組で、”政治的公平”を定めた放送法の規定に反するものだ。本件番組は、自民党との関係で政治的に公平な取り扱いを求めることが出来る民主党の権利を侵害したものだ」というもの。
委員会で取り扱いを協議した結果、1.苦情の取り扱い基準を定めた放送人権委員会運営規則第5条第1項の(5)において、「苦情を申し立てることが出来る者は、当分の間、その放送により権利の侵害を受けた個人またはその直接の利害関係人を原則とする」と定めていて、政党等団体は申立人資格の適格性を欠くこと、2.本件申立ては本質的に見て、人権侵害というよりむしろ政治的公平性に関する問題を対象にしていると考えられるが、同運営規則同条同項の(1)において、苦情の取り扱い対象は、「名誉、信用、プライバシー等の権利侵害に関するものを原則とする」と定めていて、直ちに政治的公平に関する問題を審理することは困難であること、との見解で一致し、本件申立ては受理されないことになった。
以上の見解は、2003年12月に自由民主党の幹事長安倍晋三氏から「テレビ朝日が『ニュースステーション』で放送した『”菅政権”閣僚名簿発表』コーナーは不公平・不均衡」とする申立てが、BPO=放送倫理・番組向上機構宛にあった際、審理対象外として処理した事由と同内容である。

委員会決定についての北海道文化放送の「改善報告」

北海道文化放送(UHB)から委員長宛に6月21日付で、先の当該局に対する委員会決定(勧告)に関する「改善報告」があった。

委員会では、この報告内容を検討した結果、UHBが委員会決定を真摯に受け止め、誠意ある対応をしていることを高く評価した。

民放連加盟各局は、BPOの発足にあたり、「各委員会から放送倫理上の問題を指摘された場合、具体的な改善策を含めた取り組み状況を3か月以内に委員会に報告し、委員会はその報告に対して意見を述べ、BPOが報告と意見を公表することを了承する」と申し合わせていることから、この申し合わせに基づき、北海道文化放送の改善報告ならびに委員会の意見をホームページならびに「BPO報告」で公表することを確認した。

放送人権委員会への苦情(6月)

6月に寄せられた放送人権委員会関連の苦情について、下記の報告が事務局よりあった。

◆人権関連の苦情〔21件〕

  • 斡旋・審理に関連する苦情(関係人からの人権関連の苦情で、氏名・連絡先番組名などが明らかなもの)・・・5件
  • 人権一般の苦情 (人権関連だが、関係人・当事者ではない視聴者からの苦情、または、氏名・連絡先や番組名などが不明なもの)・・・16件
    その他、放送人権委員会についての問い合わせ等・・・1件

その他

次回放送人権委員会を8月17日午後2時から開くことを決め閉会した。

以上

第89回 放送と人権等権利に関する委員会

第089回 – 2004年6月

「国会・不規則発言編集問題」の総括

苦情対応について…など

「国会・不規則発言編集問題」の総括

6月4日に行われた申立人・被申立人双方に対する委員会決定の通知と記者会見の模様を事務局が説明した。説明内容は以下の通り。申立人藤井孝男議員は国会の都合で出席できなかったが、代わりに代理人弁護士が出席し通知を受け取った。被申立人側はテレビ朝日編成制作局専任局次長らが通知を受けた。この後、決定についての記者発表が行われた。通知後申立人・被申立人双方からコメントが出された。

次に、テレビ朝日から提供された「委員会決定」の主旨を伝える同局のニュース並びに当該番組「たけしのTVタックル」等のVTRを視聴した。(当日の夕方のニュース「ニュースステーション」をはじめ、あわせて4日間6回の放送)

委員からは、「既にお詫び放送により名誉が回復されているからそれでいいということにはならない。視聴者に対する説明責任が大切だ」「公人であっても人格権の侵害があれば取上げるべし。公人だから手厚くしているとの印象をもたれるのは心外」「視聴者に対する説明責任を命じたのは今回が初めて。テレビ朝日の今後の対応を注目したい」などの意見があった。

委員会は、3か月以内にテレビ朝日から出されることになっている社内体制の整備など放送倫理に対する今後の取り組み方についての報告を見守ることにした。

苦情対応について

「放送人権委員会が出来てから7年余りの間に、14の決定が出たが、うち3件がBPO発足以降のこの1年間に出たということなる。また、これまで勧告は4件。それがこのわずか2か月間に2件の勧告が出たことになる」と事務局より報告。

5月の苦情対応概要

BPOに寄せられた5月1か月間の苦情のうち人権関連は次のとおり。

◆人権関連の苦情〔20件〕

  • 斡旋・審理に関連する苦情(関係人からの人権関連の苦情で、氏名や連絡先 番組名などが明らかなもの)・・・11件
  • 人権一般の苦情 (人権関連だが、関係人・当事者ではない視聴者からの苦情、または、氏名・連絡先や番組名などが不明なもの)・・・9件

次の斡旋中事案について現状が報告された。

「ストーカー被害者として顔出しで放送された」との苦情

6月8日苦情申立人の愛知の女性から「ストーカーの被害者として報道された際顔出しでニュースなどで放送された(3月)。訴訟をするつもりだったが、放送人権委員会に申し立てることにした。」との電話があった。委員会では次回までに当該テレビ局に当該番組の同録テープ並びに対応経緯等を送ってもらい委員会で審理対象にするかどうかを決めることになった。

その他

民放連の「視聴率等のあり方に関する調査委員会」(座長清水BPO理事長、有識者委員として飽戸放送人権委員会委員長が参加)の報告書について三好事務局長より報告。

飽戸委員長より「視聴率だけでなく視聴質というようなものをきちんとみんなで研究して、それによっていい番組を作る努力するということは提言の最初の柱に入っていたが、放送局側がすぐにやることは難しいということで最後は取り下げた。替わりにいい番組を表彰する新しい賞揚システムを考えようということになった。実現可能性の非常に高い現実的な提言となったと思う」との説明があった。

次回の定例委員会を7月20日(火)に行うこときめ、議事を終了した。

以上

第88回 放送と人権等権利に関する委員会

第088回 – 2004年5月

「国会・不規則発言編集問題」ヒアリング

「中学校教諭・懲戒処分修正裁決報道」委員会決定の総括…など

「国会・不規則発言編集問題」ヒアリング

◆ 申立人側ヒアリング

(出席者)申立人 自民党衆議院議員 藤井 孝男 氏
外2名

冒頭、申立人が持参した「意見要旨」に基づいて申立人が下記のような心情を陳述した。

「自分は、従前より北朝鮮問題について消極的な姿勢を示したことはなく、特に拉致被害者の救済に関する問題について妨害をするような態度をとったことはない。しかるに『ビートたけしのTVタックル』(03年9月15日放送)においては、横田めぐみさんの実名を公表した野党議員に対し、あたかも自分がその発言を妨害するために不規則発言を繰り返したかのような印象を与える編集映像が流された。

これによって自分の名誉が毀損されたことは明らかであり、政治的信条・政策に関わる本件のような虚偽の報道をされることは、まさに政治的生命を絶たれかねないほどの衝撃がある。

テレビ朝日は、ダイジェスト保存版テープから編集したことによる、全くの思い違いから犯した『誤った編集』であったと弁解しているが、「確定的な意図」に基づいた捏造編集であるとの疑いは未だ払拭できない」

この本人陳述に続いて質疑が行われた。委員からの主な質問は以下のとおり。

  • テレビ朝日は、申立人に発言の機会を番組で与えたり、謝罪番組を2回放送したり、さらには社長が系列社長会で謝罪したりと、局側としてはおそらく最大限の対応をしていると思うが、この点はどうか。
  • 具体的に編集のどういう経緯を明らかにされればよいと考えるか。
  • 今、テレビ朝日に一番求めることはなにか。
  • 申立人のいう「確定的な意図」とは何か。

(申立人側ヒアリング約50分間)

◆被申立人側ヒアリング

(出席者)被申立人 テレビ朝日 編成制作局編成専任局次長
外2名

冒頭、テレビ朝日側から「なぜ『誤った乱暴な編集』がおこなわれたか」について下記のような説明があった。  「『TVタックル』は制作会社との共同制作で、具体的な番組制作は制作会社で、内容チェック・放送責任はテレビ朝日が負っている。

昨年9月放送の当該番組は3部構成で、その第1部が『自民党総裁選の4候補と北朝鮮問題への取り組み視点について』をテーマとしていた。

この日ゲストの西村真悟委員が1997年(当時新進党)国会ではじめて横田めぐみさん拉致の問題を取り上げたが、当時内閣・国会がどういう空気でこれを捉えていたかということを認識してもらうために、そのときのビデオテープを使った。この時、番組で保存していたダイジェスト版テープから抜き出して、西村発言と(10分後の藤井議員の)不規則発言を直接つなぐという乱暴な編集をしてしまったのである。尺を短くするというディレクターの判断だったが、藤井議員はじめ視聴者にも誤解を与える表現をしたことは、本当に申し訳なく思っている。

藤井議員の指摘を受けて、調査結果等について話し合いをしようとしたが、藤井氏が『この問題は自民党の問題で、党に全て任せてある』という立場だったので、直接の話し合いの場は全くといっていいほど持てなかった。当時の幹事長・幹事長代理には謝罪放送の話はしたが、藤井氏とは意思の疎通が得られなかったことは非常に残念に思う」

この意見陳述に続いて質疑が行なわれた。委員からの主な質問は以下のとおり。

  • 「保存テープ」とか「ダイジェスト版」といった言葉が出てくるが、どういう意味か。
  • このダイジェスト版というのは、横田さん拉致問題、加藤幹事長北朝鮮へのコメ支援問題、不規則発言の3か所のダイジェスト保存版からの編集としているが。
  • それがどうしてあのような編集になったのか。
  • 一貫性があるとしたら、コメ支援を推進した加藤幹事長の問題についての部分を入れた上で不規則発言が入るならば言われた意味はわかるが、コメ支援問題が全部ドロップしてしまったのはなぜか。
  • これまでのお詫びや謝罪でテレビ朝日側の責任は果たせたと考えるか。

(被申立人側ヒアリング約70分)

(休憩後審理再開)

委員長からまず、「今日のヒアリングを通じて若干新しい情報として伝わったものはあった。全く新しい事実が出てきたというようなことではないが、ヒアリングを終えて改めて考えるべきことがあれば述べて欲しい」との要請があり、各委員が次のような意見を述べた。

「『誤って編集した』とするテレビ朝日の弁明は歯切れが悪いが、根拠はないとはいえないし、ましてや故意に『藤井議員が拉致の事実に消極的であるという印象を視聴者に与える』という意図の下に編集したとまでは認められないようだ」

「テレビ朝日側が(誤りを)明確に認めているのであれば、放送人権委員会で改めて認定する必要はなく、テレビ朝日がそれを認めているという事実だけを記述すればよいという意見を前回の委員会で申し上げたが、その点今日聞いた限りではどうもはっきりしない」

以上のような議論の後に、もう一度持ち回り委員会で最終的な詰めを行ったうえで「委員会決定」を完成させ、6月4日に通知・公表することを決めた。

「中学校教諭・懲戒処分修正裁決報道」委員会決定の総括

委員長が、「5月14日に(上記表題の)委員会決定を通知・公表した」と述べ、続いて事務局から次のように経過報告した。

「5月14日、委員長以下4人の委員が出席のもと、『委員会決定』を北海道文化放送(UHB)に通知、その後記者会見をして『委員会決定』の内容を公表した。北海道在住で、当日授業のため上京できなかった申立人には、放送人権委員会担当調査役が札幌に赴き、『委員会決定』を手渡し、委員会判断部分を朗読した。これに対し申立人は、『委員の先生方が自分の事案のために多くの時間を割いていただいたことに感謝する。自分自身もこの委員会決定をいろいろな意味で重く受け止めている』と話した。

また、UHBからは本日、『委員会決定』に対する『見解』と『委員会決定』の主旨を伝えるニュースのビデオテープが届いた。その見解は、『今回の決定を受けて、今後、取材・編集体制を強化するとともに、スタッフに対する人権教育をさらに徹底し、放送倫理と人権に一層配慮する』というものであった」 (委員会決定と当該放送局の「見解」を伝えるビデオテープを視聴の後、事務局から以下のとおり説明を補足)

「UHBの報道は、コンパクトではあるが、よく『委員会決定』の主旨を伝えているのではないか。今後、UHBは、民放連の申し合わせ通り、勧告に対する対応と改善策を3か月以内に放送人権委員会に報告することになるが、真摯に対応していただけるだろうと思う」

4月の苦情対応

◆人権関連の苦情〔12件〕

  • 斡旋・審理に関連する苦情(関係人からの人権関連の苦情で、氏名や連絡先 番組名などが明らかなもの)・・・6件
  • 人権一般の苦情 (人権関連だが、関係人・当事者ではない視聴者からの苦情、または、氏名・連絡先や番組名などが不明なもの)・・・6件

◆その他、放送人権委員会への問い合わせなど・・・0件

◆事務局から検討事項の報告があり、検討した。

「すでに4月20日の委員会で『審理対象外』としたドキュメンタリー番組事案の申立人から、『お礼と要望及び質問について』とする文書が届いた(5月6日)。そこでは『真の開発者たちの誇りを傷つけた道義上の責任はもとより、違法行為とも思われるような他人や他社を登場させた放送局の行為は、人権救済を目的とした放送人権委員会の審理対象とはならないのか』といった質問への回答を求めている」と報告。これに対し、委員からは「(この事案は)取り上げることはしないということを、前回の委員会で了解を得て、すでに委員長名で『ご連絡』として申立人に送付しているが、さらに何か最終的な通告をすべきかどうか」「前回文書が委員会からの最終文書のはずであるから、その必要はないのではないか」などといった意見が出されたが、検討の結果、事務局名で前回委員会の結論である『審理対象外とすることに変更がない』旨の文書を送付することが了承された。

その他

事務局内の異動について紹介があり、当事者が挨拶。

続いて事務局から、BPOの存在と意義を広く知ってもらうために、放送人権委員会と青少年委員会のそれぞれが個別の告知スポットCFを現在製作中で、7月から全国の放送局で放送してもらうことになっていることなどについて報告した。

(閉会 19時10分)

以上

第87回 放送と人権等権利に関する委員会

第087回 – 2004年4月

「中学校教諭・懲戒処分修正裁決報道」

「国会・不規則発言編集問題」審理…など

「中学校教諭・懲戒処分修正裁決報道」

3月31日の起草委員会を受けてまとめられた委員会決定案について、起草委員から説明があった。また申立人の名誉が回復されているかどうかという視点で、改めて昨年12月17日に放送された続報ビデオテープを視聴した。それを受けて意見交換が行われ、委員会決定案の表現について数か所の修正を確認し、少数意見は後日提出してもらうことにして本件審理を終了した。

このあと、委員会決定の通知・公表について、5月14日(金)午後1時から申立人と被申立人双方に通知,2時から公表記者会見することを決めた。

以下、意見交換の主な内容。

  • 多岐にわたる申立ての論点を4つに大きく絞って判断することにした。
  • 当該放送局が軽率だった点、全体から受ける印象からも問題があること、また取材対象者との意思疎通が不十分であったために余分にトラブルを招いたこと、以上の点は全て賛成だが、権利侵害とまではいえないのではないか。放送倫理上は問題だが。
  • もう少し権利侵害だとはっきり表現したほうが委員会の判断としてわかりやすい。
  • 12月のビデオテープを見ても本人に対するお詫びになっていない。
  • 続報という形で本件番組に誤りがあったものを正しく知らせるというのも訂正の1つのあり方ではないか。
  • 人権侵害の部分については「訂正します」とは一言も言っていない。

「国会・不規則発言編集問題」審理

前回の審理以後、各委員が文書で提出した意見をもとに起草委員会が作成した第一次草案が提示され、起草委員から説明があった。またテレビ朝日がなぜ本件放送のような内容になったかを検証した番組のビデオテープを視聴した。それを受けて、特に謝罪についての双方の主張をどのように「委員会決定」に反映させるのか、処分の要求をどう判断するか、オリジナルテープの「ダイジェスト保存版」を基にした編集の問題点を具体的に取り上げるのかなどについて意見が交わされた。

また申立人からのテレビ朝日「再答弁書」閲覧要求について検討した。その結果「新しい重要な部分が記載されている場合は委員会で検討してケースバイケースで見せてもよい。ただし反論は1回限りに限定すべきで、今回はヒアリングの場で反論して欲しいとの条件を付けたい」との考えで一致した。

委員会は、起草委員会を連休明けに開くこと、次回委員会(5月18日)でヒアリング(事情聴取)を行うことと決めた。

以下、意見交換の主な内容。

  • テレビ局の対応には一般人に対するものと大きな差がある。
  • 処分要求について委員会が答える必要があるのか。
  • 人権救済と放送のあり方という視点に絞った姿勢で臨むべきだ。

苦情対応(3月)

◆人権関連の苦情〔22件〕

  • 斡旋・審理に関連する苦情(関係人からの人権関連の苦情で、氏名や連絡先 番組名などが明らかなもの)・・・15件
  • 人権一般の苦情 (人権関連だが、関係人・当事者ではない視聴者からの苦情、または、氏名・連絡先や番組名などが不明なもの)・・・7件

◆その他、放送人権委員会への問い合わせなど・・・1件
事務局から個別苦情申立てについて報告され、対応について検討した。

  • ストーカー被害者として顔出しで放送されたとの苦情
    すでに苦情として前回の委員会で受理して斡旋に入っており、2度ほど話し合いが行われたが、申立人は裁判を考えているようなので、当分、推移を見守ることにした。
  • 幼稚園児へのインタビューが父親を傷つけたとの苦情
    事務局が苦情申立人の夫人と連絡を取り、申立人の要求である「放送による謝罪」は何を詫びるかということを具体的に触れなければならないので、本件の場合はかえってお子さんのためにならないのではないかと伝えたところ、やや怒りもおさまったようだとのこと。当該放送局はすでに「謝罪文」を申立人に手交しており、新たな動きがなければ一応解決したと判断したいとの事務局の報告があった。
  • 自動改札機誕生をめぐるドキュメンタリー番組で審理申立て
    04年4月5日付けで、審理の申立てがあった事案で、申立人の主張は、「他人や他社が開発者に成りすまして番組に登場し、真の開発者達の誇りを傷つけた」というもの。
    上記事案について当委員会は、放送人権委員会の審理事案とするか否かについて審議した。以下、意見交換の主な内容。
  • 申立人の主張は、放送による人権侵害とは別の次元のものだ。
  • 人権侵害には当たらないのではないか。放送人権委員会では事実認定ができない。
  • 番組では、申立人が出演しているわけではなく言及もされていない。人権侵害と認定するのは困難だ。
  • 審理対象外とすることに異存はない。放送人権委員会運営規則第5条(5)に定める「放送による権利侵害」に当たらないということでいいのではないか。
  • 放送人権委員会の審理事案と性格をことにすると同時に、当委員会の限界をはるかに越えているので正しい判断ができない。

以上に基づき、当委員会は、委員全員(8名)の一致で、本事案を「審理対象外」とすることを決定、上記意見を集約して文書化し、委員長名で申立人に「連絡」することとした。

業務報告会の報告・その他

事務局から、3月23日に行われた業務報告会についての説明と、放送人権委員会運営規則の中で「議決の方法」について改訂が行われ4月から実施されたことの報告があった。

以上

第86回 放送と人権等権利に関する委員会

第86回 – 2004年3月

「中学校教諭・懲戒処分修正裁決報道」

「国会・不規則発言編集問題」審理…など

「中学校教諭・懲戒処分修正裁決報道」

委員長が起草委員を指名し、ヒアリングに入る。

◆申立人側ヒアリング:出席者 申立人、および申立人代理人

まず、申立人が「事実と全く違うセクハラ教師を印象付けるために生贄的な構成にして貶めた放送であり、憤りを感じている」と述べ、ヒアリングに入った。

委員からの主な質問は以下のとおり。

  • 申立人側の主張が全く取り上げられなかった理由として局側は、申立人代理人が匿名を希望したので出さないほうが良いと思ったと言っているが、何故匿名を希望したのか。
  • 番組のどの部分が名誉毀損なのか
  • この番組で申立人が誰か判ってしまったか
  • 現在は復職しているのか
  • 停職6か月の裁決についてどう思っているか。
  • 教壇復帰が実現していないのは、この放送があったからか。等々。

最後に申立人代理人から「何故14日の放送の直前になって、10月10日に申立人に取材を申し込み、13日になって代理人弁護士に電話取材がきたのかについて、局からはいまだに説明が無い。説明責任を果たして欲しいと思う」との意見陳述があった。

◆被申立人側ヒアリング:出席者 北海道文化放送 報道局長、報道部長

冒頭、UHBが「事実経過で誤った点、申立人側の主張を最初の放送で十分伝えられなかった事などに対し、非常に残念に思う。しかし10月14日の放送は名誉毀損、人権・プライバシーを侵したとは思っていない。道教委、人事委にUHBが文書で働きかけをせよという要求は絶対のめない」と述べ、ヒアリングに入った。

委員からの主な質問は次のとおり。

  • ワイセツ教師をなくそうというキャンペーンの素材としてこの件を取り上げたことに問題があったのではないか。
  • 申立人側の主張が、取材には応じているが、全然放送されなかった。誤解と混乱があったからとのことだが、申立人側の主張を入れると番組が成り立たなくなったのか。
  • 制作日数はどのくらいか
  • 人事委の裁決を批判し、教育委員会の決定を支持するのが正しいという視点で作ったのか
  • 頬にキスはセクハラにも刑罰法規にも抵触しないなど人事委員会の裁決内容を報道したか。
  • コーナータイトルや最初の事例映像、それにキスというコメントなどでセクハラ的行為をしているという印象を視聴者に与えるとは考えなかったか。
  • 教育委員会の処分から人事委員会の裁決までの期間を間違えて放送したが、訂正が遅れた理由は何か。

ヒアリング終了後委員長から各委員に「ヒアリングの結果を踏まえて最終的なご意見を伺いたい」との要請があり、それぞれが意見を述べた。

以上の審理を踏まえ、起草委員に論点を整理してまとめて貰うことになった。

「国会・不規則発言編集問題」審理

最初に当該番組の問題個所と、テレビ朝日のお詫びのビデオを視聴したあと、事務局から論点整理の説明があった。

「編集」について、申立人は意図的捏造だと主張、テレビ朝日はあくまで思い違いによる誤りであった、オリジナルテープではなくダイジェスト保存版を基に編集したのが原因だと主張。

「謝罪」について、テレビ朝日はニュースステーションで藤井議員に反論の場を提供したのをはじめとして何度も丁寧にお詫びしており、さらに社内処分もしたと主張、一方申立人は「一方的な謝罪は納得出来ない」としている。

以上の説明の後審理を行った。そして起草委員を選出し4月の委員会でもう一度議論を行い、5月にヒアリングを行う予定とした。

苦情対応(2月)

◆人権関連の苦情〔19件〕

  • 斡旋・審理に関連する苦情(関係人からの人権関連の苦情で、氏名や連絡先 番組名などが明らかなもの)・・・8件
  • 人権一般の苦情 (人権関連だが、関係人・当事者ではない視聴者からの苦情、または、氏名・連絡先や番組名などが不明なもの)・・・11件

◆その他、放送人権委員会への問い合わせなど・・・0件

事務局から業務報告会に提出する報告書内容の説明があり、続いて個別苦情の対応が報告された。

  • 幼稚園児インタビューに対する苦情
    前回委員会で検討した結論「もう少し話し合いの余地があるのではないか」との内容を双方に伝えた。しかし局側から「すでに誠意を持って交渉に当り、その結果謝罪文を受理してもらったと受け止めている」との返事が来た。申立人側からもその後動きが無いので見守ることにする。
  • ストーカー事件被害者のインタビューを顔出しで放送されたとの苦情
    愛知の女性からの苦情。警察官のストーカー行為の被害者が取材された際に「顔を出さないで下さい」とお願いしたにもかかわらず、顔出しで放送された。局側は「そのように聞いていない」としており話が食い違っている。両者の話し合いが行われたがまだ結論は出ていない。

以上につき放送人権委員会として「斡旋」としたいと事務局が提案、委員会はこれを了承した。

理事会報告

事務局から2回行われた理事会の内容が報告された。 2月の理事会では、藤井議員の案件を含む自民党からの2件の審理申立てについてのBPOの回答書をまとめ、理事長名で自民党幹事長宛てに出した。その後自民党からの動きは無い。

3月の理事会では、16年度のBPOの事業計画と予算、BPO規約と3委員会の運営規則の改訂、それに青少年委員会の委員の交代が議題だった。放送人権委員会の運営規則では、議決方法の改正が認められ4月1日から実施となった。しかし、他の提案部分についてはもう少し議論をしてということで継続審議となった。

その他

事務局内の異動について紹介があり、挨拶があった。また事務局から業務報告会の予定、当委員会の来年度の開催日はこれまで通り第三火曜日であること、青少年委員会が19日「子供向け番組に対する提言」を発表し会見するという予定が報告された。6時45分閉会。

以上

第85回 放送と人権等権利に関する委員会

第85回 – 2004年2月

「国会・不規則発言編集問題」

中学校教諭修正処分報道…など

国会・不規則発言編集問題」

まず、事務局からこの1か月間の経緯が報告された。内容は、「テレビ朝日と藤井議員との間で話し合いはなかった。事務局に藤井議員の代理人弁護士から『もう信頼関係が崩れているので話し合いは無理。審理を要望したい』との意思表示があった。この点をテレビ朝日に伝えたところ,答弁書を提出する旨の回答があり、2月17日に答弁書が提出された」

これを受けて委員会は、両者の話し合いは相容れない状況になっていることが確認されたとして審理入りする事を決めた。次回委員会では、当該番組等のビデオ再視聴や、論点について意見を交わすなど本格的な審理を行うことにした。

中学校教諭修正処分報道

双方から反論書・再答弁書など双方の文書が出揃い、事務局が主な論点について以下のように説明した。

申立人は、「自分の主張が全く取り上げられず、また裁決を曲解し予断と偏見に満ちた報道で名誉が毀損され、職場復帰が妨げられる恐れがある。 誤って報道した部分について取り消し放送をし、その旨を処分者である教育委員会などに文書で提出せよ」と要求している。

これに対して被申立人の北海道文化放送(UHB)は、「本質的に本件報道が申立人の名誉毀損や人権侵害に当るとは考えていない。申立人が指摘した部分については、教育委員会の再審請求が却下されたニュースを扱った12月の放送でほとんど修正できたと考える」と答えている。

更に申立人は反論書で「放送内容は新聞のラテ欄とホームページ等からして、セクハラ教師と印象付けたことは明らかだ。リポーターが学校の建物前でコメントしており、学校が特定出来てしまう。女性キャスターのコメント『やっていることも処分も許しがたい気がしますね』、『被害者の心の傷が癒えないまま,あと半年でこの教諭は教壇に戻ってきます』等が職場復帰を許さないという局の決意表明だ」などと主張。

これに対しUHBは、再答弁書で「新聞ラテ欄やホームページと放送内容は矛盾していない。建物をぼかして特定できないようにしている。停職6か月の処分は確定しており、匿名を前提に教師としてあるまじき行為と論評することは報道の範囲内である。女性キャスターのコメントは女性の観点から意見を述べているもので、女性の感想なり意見を封殺するつもりはない。市民の知る権利に答える企画であった」と主張している。

事務局からの説明を受けて、審理に入ったが、各委員の判断を明確化するまでには至らなかった。そこで事務局が問題点を整理した一覧を各委員に送り判断を求め、その結果を踏まえて起草委員の選任を委員長一任とした。また次回委員会では双方を招いてヒアリングを行うことになった。

テレビ山口からの「改善策」報告

民放連加盟各社はBPO発足に当り「BPO各委員会から問題を指摘された場合、具体的な改善策を含めた取り組み状況を3か月以内に委員会に報告し、委員会が報告に対して意見を述べ、BPOが報告と意見を公表することを了承する」との申し合わせをしている。これに基づき昨年12月の「山口県議選事前報道」の委員会決定を受けたテレビ山口から報告書が提出された。

事務局から報告書内容について説明を受けて議論した。その結果委員会は報告書内容を高く評価することで一致した。その旨を文書でテレビ山口に通知するとともにBPO報告にも掲載することを確認した。

検討案件

前回「放送人権委員会運営規則」について議論した内容を事務局が整理し、その内容を確認した。

委員会の考え方を理事会に提案し検討してもらう。

苦情対応

◆人権関連の苦情〔22件〕

  • 斡旋・審理に関連する苦情(関係人からの人権関連の苦情で、氏名や連絡先 番組名などが明らかなもの)・・・10件
  • 人権一般の苦情 (人権関連だが、関係人・当事者ではない視聴者からの苦情、または、氏名・連絡先や番組名などが不明なもの)・・・12件

◆その他、放送人権委員会への問い合わせなど・・・2件

この中で以下の苦情への対応を事務局が報告した。

  • 「自分は欠陥住宅とは判断していない」との苦情・・・今年度7件目の斡旋解決
    双方がようやく直接会って話し合った結果、欠陥住宅についての認識の差異があり、事前にその溝を埋めておくべきだったことを双方が確認、局側が今後の企画に協力要請を約束して解決した。
  • 「幼稚園児インタビュー番組」への苦情の申立て
    『お父さん、お母さんにやめてほしいこと何だ』という質問に幼稚園児の娘が『お父さんとお母さんの喧嘩。お父さんが叩くの。(お母さんは?)泣いた』と答えそのまま実名入りで放送された親から苦情申立てがあった。
    放送局側は「すでにお詫びの文書を出しており、これ以上話し合いは出来ないので放送人権委員会で判断してほしい」とビデオを送ってきた。
    ビデオを視聴し意見を交わした結果、「もう少し話し合って欲しい」と当該局に伝えることになった。

その他

事務局から「放送人権委員会運営規則については理事会で議論する予定で,その結果は次回の委員会で報告すること、また1月25日の東京新聞の記事に対してBPOが抗議したこと」などの報告があった。

最後に次回3月16日の委員会はヒアリングを行うので1時間早め午後3時開始を決めて議事を終了した。

以上

第84回 放送と人権等権利に関する委員会

第084回 – 2004年1月

「国会・不規則発言編集問題」

「人事委員会教諭修正処分報道」審理開始を決定…など

「国会・不規則発言編集問題」

12月の委員会で審理対象事案として受理したものの、当該局側に「話し合いを継続したい意向」が強くあったため、様子を見ることにしていた本事案について、当該局から「先月以降の交渉経緯」が提出された。内容は次の通り。

「局の面会要請に自民党側はなかなか応えなかったが、1月14日に局側と党幹部が面会した。しかし、党側からはっきりした回答や意向は示されなかった」

これを受けて協議した結果、双方に話し合い継続の可能性があるかないか意思確認を行い、その結果次第では2月の委員会で審理入りを決めることになった。

「人事委員会教諭修正処分報道」審理開始を決定

北海道の教育公務員が、代理人の弁護士を通じて申立ててきた事案について、審理事案とするかどうか検討した。まず、事務局が事案の概要を報告。その内容は、以下の通り。

当時15歳の女生徒の頬にキスをしたほか、二人でドライブや食事に行き、合鍵も渡して自宅に生徒を招くなどしたとして、懲戒免職処分を受けた元中学校教諭が、人事委員会に処分が重過ぎると不服を申立て、人事委員会は「教育公務員としてふさわしくない行為だが、事情を調べてみるといわゆるセクハラではなく、処分も重すぎる」として停職6か月に修正する裁決を下した。これに対して教育委員会は再審を請求した。

この件を03年10月北海道文化放送がローカルニュースの特集で取り上げた。新聞のテレビ欄は「生徒にキスを迫った教師の信じられない行為に親も激怒。処分は妥当か。スクールセクハラの驚くべき実態」となっていた。 番組を見た申立人は「人事委員会の裁決はおかしいという論調であり、私的制裁を加える放送である。事実関係も間違っており、申立人の主張が全く取り上げられていない。名誉を毀損され、職場復帰を妨害された」として取り消し放送と、取り消したことを人事委員会、教育委員会に文書で告知するよう要求した。

これに対して北海道文化放送は「教育委員会が再審申立てをするのは極めて異例なことで、ニュース価値があると判断した。決してこの処分を不当なものとして放送したのではない。申立人の主張を出さなかったのは、代理人弁護士に取材した際『放送で自分の名前を出さないで欲しい』という極めて稀な申し入れがあったためである。本件放送によって傷つかれたとするなら大変遺憾なことで、話し合いで解決を図りたい。また再審請求に対して結論が出た段階で修正放送するという考えを伝えた。そして12月17日再審請求が却下された時のニュースでは、明らかな間違いの訂正と、申立人側の主張などを十分反映した放送をしており、ほとんどが修正出来たと考える。しかし、放送局が教育委員会、人事委員会に放送に影響されないようにと求める文書を送れという要求はのめない」と主張している。

以上の概要報告の後、当該局から提出された放送ビデオを視聴し、この事案を審理するかどうか検討した。その結果、話し合いはすでに決裂しており本事案を審理することを決定した。

これにより、本事案は、2月の委員会から本格的な審理に入ることになった。

規約・運営規則について

事務局から「昨年7月BPOになって以来懸案となっている規約・運営規則等の見直しについて、検討し来年度から新しい運営規則にして行きたい」との説明があった。これを受けて委員会では問題提起されている「政治的公正・公平」といったテーマが放送人権委員会として裁定できる問題なのかという点も含め、運営規則の見直しについて議論した。来月の委員会でも引き続き検討を続けることになった。

12月の苦情対応概要

BPOに寄せられた12月の苦情のうち人権関連は次のとおり。

◆人権関連の苦情〔20件〕

  • 斡旋・審理に関連する苦情(関係人からの人権関連の苦情で、氏名や連絡先 番組名などが明らかなもの)・・・13件
  • 人権一般の苦情 (人権関連だが、関係人・当事者ではない視聴者からの苦情、または、氏名・連絡先や番組名などが不明なもの)・・・7件

◆その他、放送人権委員会への問い合わせなど・・・0件

この中で以下の苦情への対応を事務局が報告した。

  • ニュース番組で、「家族の脱北を放送されたため、残る家族の脱北に失敗した」との苦情
  • 情報番組で、「自分は欠陥住宅とは判断していない」との苦情
  • 教養番組で、「成績表などがテレビで放送され、息子が不登校になった」との苦情
  • バラエティー番組で「・ゴミ屋敷・を取り上げたコーナー」への苦情

以上の報告、について委員会は了承した。

その他

事務局から今後の予定として、BPOの理事会、評議員会や年次報告会などの日程や内容が報告され、議事を終了した。

以上

第83回 放送と人権等権利に関する委員会

第083回 – 2003年12月

「山口県議選事前報道」の総括

「視聴率問題」三委員長・理事長会見の報告…など

「山口県議選事前報道」の総括

12月12日に行われた申立人・被申立人双方に対する委員会決定の通知と記者会見の模様について事務局から説明があり、この中で、下関市在住の申立人宅に出向いて通知した調査役から次のような報告があった。 「決定を伝えた後、申立人は『委員会の皆さんがこぞって決定して頂いたので大切に承ります』と言っていたが、『当該局は、決定内容を放送するだけで回復措置は取らないのか』と問うなどだいぶ不満のようだった」

次に、テレビ山口から提供された「委員会決定」の主旨を伝える同局のニュースのVTRを視聴した。委員からは、「当該局の対応は”放送倫理上問題”と見出しに取るなど、かなりきちっとしている」「裁判所の判決ニュースなら放送されないケースもあるが、放送人権委員会決定はニュースなどで各局がその内容を放送する。これは重要なことだ」などの意見があった。

委員会は、3か月後に当該局から報告を求めるなど放送倫理に対する今後の取り組み方を見守ることにした。

「視聴率問題」三委員長・理事長会見の報告

12月11日に行われた「視聴率問題」に関する三委員長・理事長による記者会見の模様について事務局から次のような報告があった。

「記者会見では、まず、青少年委員会の原寿雄委員長が『この視聴率操作事件を個人的な問題に終わらせずに、放送界の構造的な問題と捉え、これを契機に視聴率についての改善・改革への要求を起こしてもらいたい』と述べた。また飽戸委員長は『視聴率は本来の役割を越えて使われていて、それが視聴率競争や番組の劣悪化ひいては放送倫理の問題に繋がっている。視聴率の使い方が間違っている』と述べた。清水理事長は『BPO三委員会の21人の有識者委員が、視聴率についてどういう意見を持つかを踏まえて、三委員長による見解と提言という形で意見の集約が可能となった。各委員会のどこにも属さない重要な問題について今回初めてこういう形で具体化できた』と経緯を説明した。

また質疑に応えて『提言の相手は、広告界・代理店・制作会社・視聴者のほか新聞・雑誌など他メディアも含むなど多方面にわたっている』『視聴質については、各局・各番組で共通するものがあればそれが一番だ』『誤差を無視するなど視聴率の使い方が間違っている』などと三委員長が答えた」

この後、民放連が会長の諮問機関として設置した「視聴率等のあり方に関する調査研究会」について、委員として参加した飽戸委員長が12月15日の初会合の模様などを説明した。

検討案件

12月11日に自民党からBPO事務局にFAXで送られてきた2件の審理要請案件を事務局が説明、審理対象とするかどうか検討した。また、”ゴミ屋敷番組”に対する苦情申立人からの再要望についても検討した。

  • 「不規則発言を恣意的に編集」との申立について
    03年9月15日放送のテレビ番組で、同月20日の自民党総裁選挙に立候補した藤井孝男議員が97年2月の衆院予算委員会で不規則発言、いわゆるヤジを飛ばしている資料映像が使われたが、「恣意的な編集作業で『拉致問題に消極的』との印象を一般視聴者に与えるもので、悪質な選挙妨害であるとともに名誉も毀損された」と同議員が代理人弁護士を通じてBPO=放送倫理・番組向上機構に申し立ててきた。
    当該局は、10月6日の同番組の中で「誤った印象を視聴者に与える結果となり、お詫び申し上げます」という趣旨のコメントを放送したが、申立人側は「一方的な釈明放送で、承知できない」としている。
    本件を当該局に連絡したところ、局側からこれまでの交渉経緯概要と併せて当該VTRが事務局に寄せられ、委員会で当該部分を視聴した。
    この後、本事案を審理対象にするか否かについて検討した結果、申立人は公人とはいえ個人であること、また係争中ではないことなどから審理要請を断わる理由はないという意見が大勢を占め、この申立てを受理することとした。
    しかし、放送局側に話し合いの意向もあることから、双方の間で交渉が可能かどうかを見守り、次の委員会(04年1月20日開催予定)で審理入りについての最終結論を出すことになった。
  • 「政治的公正・公平に反する番組」との申立てについて
    申立ての内容は「03年11月4日のニュース番組で、『民主党菅政権の閣僚名簿』と民主党が選挙戦術として打ち出している『マニフェスト』について約30分間にわたって放送したが、これは放送法の”政治的に公平であること”や自社の番組基準に違反することは明らかだ。しかも当該放送は、選挙期間中に民主党一党だけのPRを行うものであり、申立人の権利を侵害している」というもの。
    委員会で検討した結果、本件申立ては自民党の安倍晋三幹事長名でなされ、”党”が主体であることがはっきりしていることから、放送人権委員会運営規則の「苦情申立人は、その放送により権利の侵害を受けた個人またはその直接の利害関係人」に該当せず、放送人権委員会の審理事案にはならないという結論に達し、審理対象外とすることとした。
    これを受けて、飽戸委員長は「本件申立てについては、BPOとして検討することになるだろう」と述べた。
  • 「”ゴミ屋敷番組”への対応に再要請」
    大阪の精神科医が、”ゴミ屋敷番組”には「人権侵害の疑いがある」と抗議していた問題で、放送人権委員会はこれまでの検討内容と考え方をまとめた文書を10月22日付で精神科医と当該局に送ったが、その後、同精神科医から11月20日付けで「意見と要望」という文書が送られてきたため、これについて検討した。この中で精神科医は、申立てを審理対象とするよう再度検討してほしいと要望する一方、放送人権委員会での審理対象を当該本人のみに限定しないよう提言している。
    委員会で検討した結果、10月22日付けの送付文書で述べた「苦情申立人が直接の関係人でないため審理対象とならない」との結論が放送人権委員会の最終決定であることを再確認した。
    ただ、審理対象の基準についての提言については、本件も一つの契機になって運営規則の改正も視野に入れながら議論を始めようとしていることなどを事務局が精神科医に伝えることにした。

11月の苦情対応概要

BPOに寄せられた11月1か月間の苦情のうち人権関連は次のとおり。

◆人権関連の苦情〔13件〕

  • 斡旋・審理に関連する苦情(関係人からの人権関連の苦情で、氏名や連絡先 番組名などが明らかなもの)・・・8件
  • 人権一般の苦情 (人権関連だが、関係人・当事者ではない視聴者からの苦情、または、氏名・連絡先や番組名などが不明なもの)・・・5件

◆その他、放送人権委員会への問い合わせなど・・・0件

この中で、次の斡旋解決事案を報告した。

7月に大阪にある精神科の医療団体から事務局に寄せられた苦情で、その内容は「ドクター・ハラスメントを扱った報道番組に会員の精神科医が取り上げられたが、患者からの一方的な取材によるものだった」というもの。

医療団体と放送局側が話し合った結果、今後、精神科医療について懇談の場を設けることなどで合意した。

今年度6件目の斡旋解決である。

その他

12月11日に開かれたBPOの評議員会の模様を事務局が説明した。

また、次回の定例委員会を1月20日(火)に行うことを確認し、議事を終了した。

以上

第82回 放送と人権等権利に関する委員会

第082回 – 2003年11月

「山口県議選事前報道」の審理

三委員長・理事長会談の報告…など

「山口県議選事前報道」の審理

全委員から本事案に対する見解を文書などで出してもらい、それを基に起草委員会がまとめた「委員会決定」の最終原案を委員会に提出、この内「委員会の判断」部分を事務局が読み上げた後、意見を交換した。

その結果、文言や字句を手直しした最終案を作成し、全委員の承認を得た上で、12月12日に申立人と被申立人に通知し、記者発表して公表することになった。

また、委員会決定に関する少数意見の掲載方法について、今回は委員名を明示することとし、今後はその都度、検討することに決めた。

三委員長・理事長会談の報告

10月30日に開催したBPO発足後初の三委員長・理事長会談で、BPO全体の活動のあり方について意見交換し確認したことについて事務局から次のような報告があった。

同会談では「3委員会のどこの審議にもそぐわない苦情・意見などが多く寄せられている。放送人権委員会と青少年委員会は、扱うテーマが特化していて審理の幅に自ずと限界があるが、この2委員会になじまないものはすべて放送番組委員会というのも無理がある」という見方が大勢を占めた。その上で、今後「放送倫理の根幹に触れる問題については、できるだけ各委員会が現行の枠にあまりとらわれずに議論し、それを各委員長が取りまとめて三委員長・理事長会談で話し合う。そこでBPO全体としてどう対応するかを決めていく」ことを確認した。

これに関連して、飽戸委員長が「放送人権委員会が扱うことができる事案・案件の範囲は、その性格から、かなり限定されている。今後放送人権委員会で審理するテーマを広げたほうがいいか、広げなくてもいいか、また広げるとするとどういう形で広げたらいいかなどについても議論して頂きたい」と述べた。

日本テレビ”視聴率操作問題”で意見交換

まず事件の概要について事務局から説明があった。報道された事件の概要は次のとおり。

「41歳のプロデュ-サ-が、調査会社に依頼してビデオリサ-チ社のモニタ-世帯を特定し、日本テレビの番組、特に自分の番組を見てくれるよう工作した。工作資金は番組制作費の水増しなどで捻出、使われた費用は875万円だった。当該プロデューサーは、視聴率獲得を重視する会社の方針を取り違え、視聴率獲得のためには何をやってもよいとの独断の下に行った」

この問題が、前記2の三委員長・理事長会談で取り上げられ、BPOとしても各委員会できちんと議論するなどして対応することになり、本委員会でも意見を交わした。

委員からは以下のような意見等が出た。

  • 番組を評価する場合の最も重要な唯一の指標が視聴率だが、その意味を超えて使われすぎている。
  • 関東地区のサンプル数600で、視聴率20%の場合誤差は±3%という実態を無視した使われ方をしている。
  • 広告会社の肥大化や制作会社いじめが、問題の背景にあるのではないか。
  • 人権問題が絡んでいるわけではないから、放送人権委員会としては拡大解釈しても検討しようがない。
  • 視聴率を上げようとセンセーショナルな番組を作ろうとして、人権侵害が起こったりするという観点で、放送人権委員会につながって来るのではないか。
  • 視聴率は、放送会社の業績に直結するなど経済問題と密接につながっているため、「放送倫理」で判断したり捉えたりしにくい。
  • 視聴率問題にテレビ局自身が危機感を持たない限り、新しい方策は出てこない。かなり悲観的だ。
  • せめて、視聴率と視聴質の2本立てで対応できないものか。
  • 放送メディア全体、特に民放連が中心になって防止方策を講ずるべきだ。
  • 個人の行為云々と言うより、テレビ界の構造的問題がこういう形で出てきたと思う。基本的には、放送界が自分たちで改善策を作り、公表すべきだ。

こうした意見を事務局でまとめ、飽戸委員長から上記会談に報告していただき、BPO全体としてどう対応していくかを検討することになった。

札幌・意見交換会 報告

10月24日に札幌で開催した「放送人権委員会委員と放送事業者との意見交換会」について、事務局から「具体的な事例等を題材に活発で有意義な意見交換ができ、ありがとうございました」と報告があった。  
この意見交換会の模様を放送した地元局のニュースを視聴した。

10月の苦情概要

BPOに寄せられた10月1か月間の苦情のうち人権関連は次のとおり。

◆人権関連の苦情〔15件〕

  • 斡旋・審理に関連する苦情(関係人からの人権関連の苦情で、氏名や連絡先 番組名などが明らかなもの)・・・10件
  • 人権一般の苦情 (人権関連だが、関係人・当事者ではない視聴者からの苦情、または、氏名・連絡先や番組名などが不明なもの)・・・5件

◆その他、放送人権委員会への問い合わせなど・・・3件

この中で、次の斡旋解決案件が事務局から報告された。 「インタビューに応えて、娘とのトラブルを話したところ、再現映像で話の内容をねじ曲げられ、私自身も悪者にされた」という苦情が寄せられた。 苦情申立人は、当初謝罪や番組での訂正を要求していたが、放送局側の担当者と話し合った結果、「怒りも収まった」と言う事で決着した。

今年度5件目の斡旋解決である。

その他

次回の定例委員会を12月16日(火)に行うことを確認し、議事を終了した。

以上

第81回 放送と人権等権利に関する委員会

第081回 – 2003年10月

「山口県議選事前報道」のヒアリングと審理

斡旋事案等について…など

「山口県議選事前報道」のヒアリングと審理

被申立人のテレビ山口から、報道制作局報道部長と業務局編成業務部長の二人がヒアリングに出席した。冒頭、テレビ山口側は「選挙報道ということで公益性もあり、まじめに選挙を捉えて報道したつもりだ。そうした姿勢で取り組んだという点をご理解いただきたい」と述べ、ヒアリングに入った。

主な質疑応答は以下のとおり。

Q: 「いずれも落選」というスーパーは申立人にとっては厳しい表現だ。このスーパーを出す必要があったのか。

A: 普段からコメント内容はできるだけスーパーで補足している。その際、文字数は極力短く、見てすぐわかるようにという観点から「当選に至らず」ではなく「落選」を選んだ。

Q: 告示直前の時期ということで、マイナスの影響を及ぼすという可能性は考えなかったか。

A: マイナスの可能性は考えなかった。

Q: 最後に写真が出て、「落選」とのスーパーがかかると何らかの制作意図があるように感じるがどうか。

A: 意図はない。最多立候補と紹介したのでその結果も伝えるのが当然と考えた。

Q: 「当選に至らなかった」と「落選」の意味は同じと捉えていたのか。

A: 社会通念上は同じと捉えていた。

Q: 青い矢印をつけて「落選」という強調の仕方はどうか。

A: 絶対必要とは思わないが、私どもが通常採っている表現手法だ。

Q: 撮影した写真の使用目的について十分説明したかどうか。

A: 個別の番組名までは説明していないが、「選挙報道に使うため撮影させてください」とお願いした。

Q: 番組の最後にこの話題を持ってきたのは、制作者として視聴者を楽しませたいとの思いがあったのではないか。

A: 視聴者を楽しませるなら別の作り方をした。この企画は純粋にデータを提供したいというものだった。

(ヒアリング所要時間は約50分、被申立人側が退席した後、審理を続行)

10月3日に開かれた起草委員会の検討概要を飽戸委員長が報告し、起草委員が検討内容を説明した。

起草委員会の検討内容やヒアリングの結果などについて、各委員が意見を述べ合うなど1時間半にわたって本事案を審理し、次回委員会までに詰めの作業を行うことになった。

斡旋事案等について

事務局から、対応した3事案について報告があり検討した。

  • 「息子の学校生活が取材報道され不登校に」との苦情を検討
    高校生の母親から寄せられた案件について事務局から説明があった。内容は、「息子の学校生活などが放送され、その影響で不登校になった」というもの。当該局の対応を含めて検討した結果、委員会として、息子さんへの影響も十分考慮しながら解決を目指して、双方に働きかけていくことになった。
  • 「”ドクハラ”報道に精神科医から斡旋の申し入れ」を検討
    精神科診療所団体の幹部から、「ドクター・ハラスメントに関する報道番組で、会員の医師が取り上げられたが、患者からの一方的な取材によるもので納得できない。今後このような問題が再発しないよう、放送人権委員会に、当該局との話し合いを斡旋してほしい」との申し入れがあった。検討した結果、委員会は斡旋に入ることに問題はないと判断し、当該局に「苦情連絡票」を送付し、対応を求めることにした。
  • “ゴミ屋敷”番組に関する送付文書を決定
    精神科医が、ゴミをため込んだ家の住人にゴミを片付けるよう働きかける番組に対して「人権侵害の疑いがある」と抗議していた標記案件については、前回の委員会で検討した結果、これまでの委員会の検討内容と考え方をまとめた文書を苦情申立人と当該局双方に送付することにしたが、その文案を了承し、委員長名で出す事にした。
    送付文書の概要は、まず結論として「委員会は、苦情申立人が直接の関係人でないため審理対象とならないと最終的に決定した」ことを伝えた上で、「精神科医の問題提起は、放送と人権、特に精神障害の可能性のある人々への人権侵害の問題に示唆を与えるもの」として重く受け止め、「精神障害の可能性のある人々を笑い者にしていないかという点についても慎重に検討した」。また「放送人権委員会としては、苦情申立ての間口を広げようとしたが、この案件によってそこまではいかなかった」というもの。

9月の苦情概要

BPOに寄せられた9月1か月間の苦情のうち人権関連は次のとおり。

◆人権関連の苦情〔17件〕

  • 斡旋・審理に関連する苦情(関係人からの人権関連の苦情で、氏名や連絡先 番組名などが明らかなもの)・・・13件
  • 人権一般の苦情 (人権関連だが、関係人・当事者ではない視聴者からの苦情、または、氏名・連絡先や番組名などが不明なもの)・・・4件

◆その他、放送人権委員会への問い合わせなど・・・0件

札幌・意見交換会について

10月24日に札幌で開かれる「放送人権委員会委員と北海道地区放送事業者との意見交換会」の詳細等について事務局から説明があった。

放送人権委員会からは飽戸委員長ら5名の委員が、また、地元放送局からは8局35人が参加する予定で、地元局の報道現場などから寄せられた具体的なテーマについて意見を交換することになっている。

その他

最後に、次回の定例委員会を11月18日(火)に行うことを確認し、議事を終了した。

以上

第80回 放送と人権等権利に関する委員会

第080回 – 2003年9月

「山口県議選事前報道で名誉毀損」審理

「ゴミ屋敷番組に精神科医が抗議」について…など

「山口県議選事前報道で名誉毀損」審理

事務局から、申立人と被申立人(テレビ山口)双方のこれまでの主張対比の説明があり、次いで論点別に各委員が意見を述べあった。主な意見は以下のとおり。

■肖像権の侵害について

  • 本人が無理やりその意思に反して写真を撮られたとは考えられない。
  • 当人は、開票速報などに使う写真と理解していたところ、自分が意図していなかった番組で使われた点を問題にしているのではないか。

■「落選」は虚偽報道か、放送時期に問題はなかったか?

  • 社会通念上、当選者以外は「落選」と報道され、誰もそれに疑念を持たず、社会も受け入れている。
  • 「繰り上げ当選資格者を落選というのは虚偽報道」との主張は誤認であり、社会通念に反する。
  • 放送時期が問題。「当選に至らなかった」は事実の報道として受け取れるが、「落選」というのはマイナスイメージだ。

■その他

  • 「名誉感情」の問題として本人が受け止めるのはもっともなことだが、名誉感情に対する不法行為責任まで問えるかとなると難しい。
  • 番組構成上、最後に「いずれも落選」を持ってきたのは意図的であり、本人を貶めているという印象は否めない。
  • 法律違反や不法行為の問題ではないが、「もう少し報道というのは気を付けたほう がいい」ということではないか。
  • 選挙報道でこのような表現までも放送倫理上問題があるとなると、「政見放送」のような窮屈な放送しかできなくなるのではないか。
  • 選挙の情報はできるだけ多角的に提供されるべきで、立候補した結果の情報も有権者の関心に応えるものであろう。
  • 人身攻撃を目的とした報道であれば、公益性を欠くことになる。本人は「この番組は私を標的に作られたものだ」と主張しているが、そう認定できるかが鍵だ。

この後、起草委員2名を決め、次回までに「委員会決定」の草案を作成することになった。また、次回10月の委員会では、関係者を呼んでヒアリングを行うことを決めた。

「ゴミ屋敷番組に精神科医が抗議」について

ゴミをため込んだ家を訪れ、片付けるように働きかける番組に、大阪の精神科医が抗議している件を先月に次いで検討した。

この件について委員会は、現行の放送人権委員会運営規則上、精神科医には申立人としての適格性に問題があること、住人が精神障害者か否か確認しにくいこと等を指摘していた。

この日の委員会では、人権侵害の可能性がある番組の場合、申立人がいなかったり申立人としての適格性を欠いていても、従来より間口を少し広げて、放送人権委員会の審理対象になり得る方向を探れないかという観点から、改めて検討を加えた。

その結果、ゴミ屋敷の住人を笑いの対象にしているとの指摘はあるが、当該番組はバラエティ-番組なりに全体的に公益性を踏まえた演出がなされていることなどから、この事案をもっていきなり放送人権委員会審理の間口を広げるには難しいとの意見が大勢を占めた。

委員会では、これまでの検討過程で出た意見などをまとめて、抗議してきた精神科医と当該放送局に送り、理解を求めることとした。

“苦情・権利侵害申立ての手続き”について

「苦情申立て」から「権利侵害申立て」までの手続きマニュアルを事務局が説明。 概要は次のとおり。

まず、BPOに寄せられる苦情等の中から、名誉・信用・プライバシー等の権利侵害と思われる苦情を放送人権委員会関連苦情として取り出す。

その苦情を、(1)審理を求めているのか、(2)話し合いを斡旋してほしいのか、(3)単に放送局に伝えてほしいのか、(4)それ以外の単なる相談かに分類。

次に、前記(1)(2)については、ア:局側の対応が不誠実または不十分の場合、イ:話し合いが継続中の場合、ウ:局側への接触がない場合に分けて、アとイのケースは当該局に「苦情連絡票」を送り、”苦情受理”とする。双方に話し合いを勧め、話し合いがついたケースを”斡旋解決”とする。話し合いが相容れない状況と判断した段階で、「権利侵害申立書」を提出してもらい、審理事案とするかどうか委員会に諮る――という段取り。審理入り以外に話し合い(斡旋)継続、審理対象外との判断もある。

以上の説明を委員会も了承した。

委員会決定についてNHKからの報告

放送人権委員会が今年の3月に委員会決定した「女性国際戦犯法廷・番組出演者の申立て」に関して、8月26日NHKから「委員会決定に対する取組状況」について報告があった。

この報告を受けた飽戸委員長が概要を説明。 委員会で飽戸委員長は、「一番肝心な点は、放送人権委員会決定を受けてNHKが申立人に最終的にどう対応したかということだが、NHKは『当該番組に関して別途進行中の裁判に放送人権委員会決定の内容が利用される可能性があり、申立人に対する最終的な対応は裁判の進行をもう少し見たうえで決めたい』としている」と補足、委員会も了承した。

8月の苦情概要

BPOに寄せられた8月1か月間の苦情のうち人権関連は次のとおり。

◆人権関連の苦情〔21件〕

  • 斡旋・審理に関連する苦情(関係人からの人権関連の苦情で、氏名や連絡先 番組名などが明らかなもの)・・・3件
  • 人権一般の苦情 (人権関連だが、関係人・当事者ではない視聴者からの苦情、または、氏名・連絡先や番組名などが不明なもの)・・・18件

◆その他、放送人権委員会への問い合わせなど・・・0件

人権関連の苦情の中で次の案件が事務局より報告された。

▽「自動改札機の開発を取り上げた番組」への抗議

京都の元会社員から、自動改札機誕生を取り上げた教養・ドキュメンタリー番組に対し抗議があった。その概要は次のとおり。

「磁気切符開発(磁気記録の技術開発)の経過を描く番組中で、真実が歪曲された。真の開発者の名誉を守るために、当該放送局らに訂正と再発防止を求めたが誠意ある回答は得られなかった」

この案件について委員会は、当該局に元会社員との話し合いを求めることにした。

(当該局に「苦情連絡票」を送付)

その他

事務局から、放送人権委員会委員と北海道地区放送事業者との意見交換会を10月24日(金)札幌で開催することになった旨の報告があった。

最後に、次回の定例委員会を10月21日(火)とし、最初に「山口県議選事前報道」事案のヒアリングを行うことを申し合わせ、議事を終了した。

以上

第79回 放送と人権等権利に関する委員会

第079回 – 2003年8月

7月の苦情対応状況

「山口県議選事前報道で名誉毀損」審理要請申立て…など

7月の苦情対応状況

7月1日のBPO発足から、6月までと比べて、寄せられた苦情等の集約の仕方が変わった点を事務局が説明した。

BPOに寄せられた7月1か月間の苦情・意見は次のとおり。

◆件数 1215件=内訳

  • 人権関連の苦情 55件
  • 番組関連の苦情  319件
  • 青少年関連の苦情  239件
  • BPOへの問い合わせ  92件
  • その他(心因性含む)  510件

◆人権関連の苦情〔55件〕

  • 斡旋・審理に関連する苦情(関係人からの人権関連の苦情で、氏名や連絡先 番組名などが明らかなもの)・・・17件
  • 人権一般の苦情 (人権関連だが、関係人・当事者ではない視聴者からの苦情、または、氏名・連絡先や番組名などが不明なもの)・・・38件

◆その他、放送人権委員会への問い合わせなど・・・3件

この後、個別の苦情内容の概要が説明され、その中で、「患者からの一方的な取材のみに基づく放送で、医師が非難された」という苦情が紹介されたが、このケースは、本人の医師が”表面に出たくない”という事で、”相談”という段階に留まっているとの説明があった。

「山口県議選事前報道で名誉毀損」審理要請申立て

まず、事務局から本件事案の概要が報告された。その内容は、以下のとおり。

今年4月の山口県議会議員選挙に立候補した男性が申し立ててきた対象番組は、テレビ山口が3月25日に放送した夕方のローカルニュース番組の中の「統一地方選挙企画シリーズ・県議選なんでも一番」。これまでの県議選のデータの中から最年少当選者や最年長当選者、最多当選回数者、最多得票者など何でも1番を伝えた後に、申立人が最多立候補者として実名・顔写真付きで紹介された。その時の放送コメントは「合わせて12回出馬していますが、いずれも当選にいたっていません」で、また画面スーパーで「いずれも落選」と表示された。

この報道に対し、申立人は「選挙前に落選12回との報道は、”この人は投票しても役立ちそうにない”と選挙民を誘導することになり、選挙妨害である。 自分は繰上げ当選資格者であり断じて落選者ではない。虚偽報道で名誉を毀損された。

また、放送された写真は、自宅の外壁前で故意に撮ったもので、それを無断で使われ、肖像権の侵害だ」と主張している。

これに対しテレビ山口は、「落選12回という表現は事実に基づいた内容で、申立人の選挙ポスターなどにも記載されており、本人が隠したかった内容とは思えない。申立人が訴えた山口地方法務局人権擁護課からは『今回の報道は名誉毀損や人権を侵害したとまでは言えない』との見解が出ており、違法性はない」と主張している。また写真については「選挙用の顔写真を各社一緒に撮影した時に当社の担当が休みでいなかった為、後日、本人の了解を得て自宅前で撮ったもの」と説明している。

この後、当該局から委員会に提出された放送済みビデオを視聴し、この事案を審理するかどうか検討した。その結果、双方の主張は相容れない状況になっていると判断できることなどから放送人権委員会運営規則第5条の「苦情の取り扱い基準」に該当しているとして、本事案を審理することを決めた。

なお、この日の委員会では以下のような意見があった。

  • 法定得票数を確保しているから落選ではないと申立人が主張している点はいかがか
  • このケースは、申立人の名誉感情を害されたという問題と、報道によって選挙結果に不利に作用したかという問題の二つに大別されるのではないか。
  • 選挙情報を伝えることは、国民の知る権利に報道機関が応える当然の責務であり、これと名誉感情が害されたかどうかのどちらが優先するか吟味する必要がある。
  • 告示前という時期の放送としてはどうか。

本事案については、次回委員会で論点整理を行うなど、本格的な審理に入ることになった。

苦情対応事案について

事務局から、斡旋解決事案と審理等再検討要請への対応、それに苦情申し入れ案件についての報告があり、意見交換した。

  • 「写真の無断使用に苦情」=斡旋解決
    8月1日に大阪の男性からBPOに寄せられた苦情で、その内容は「6月に放送された、精神障害者の社会復帰を目指す番組の中で、仲間と一緒に自分が写っている8年前の写真が断りもなく使われた。その後、仲間とは立場や考えが変わり、一緒の写真を使われて非常に迷惑している」というもの。
    事務局では、当該局に「苦情連絡表」を送る一方、苦情申立人に放送局側との話し合いを勧めた。
    その結果、局側が、無断での写真使用を陳謝する謝罪文を出し、決着した。
    本件は、今年度4件目の斡旋解決事案となった。
    なお、委員から「このケースを含めて斡旋解決事案を今後の教訓として生かし、蓄積していく為にも、謝罪文や合意文書を、出来れば当事者から取り寄せておくことが望ましい」という意見が出、今後検討していくことになった。
  • 審理等再検討要請に理事長名文書=報告
    去年6月に高校教諭が痴漢容疑で逮捕されたニュースで、学校名を実名で放送されたことに対して、当時のPTA会長が「教育的配慮に欠ける」と放送人権委員会に申し立てたが、放送人権委員会は審理対象外とした件で、今年7月元PTA会長から新組織BPOで再検討してほしいとの要請があった。BPOで検討した結果、理事長名の文書を元PTA会長に送り、理解を求めた。
    文書の概要は、「再検討要請を7月の放送人権委員会に報告し、BPO内にある放送番組委員会で扱えないかなどを検討した。しかし、番組委員会は苦情処理機関としての性格付けがなされていないので、直ちにこの問題を検討・審理するのは難しい。また、指摘された匿名か実名かの問題も、今、BPOが一つの方向を放送局側に押し付けるわけにもいかない。今後、各委員会のあり方などを検討していく中で、こうした問題にも取り組んでいくので、ご理解願いたい」というもの。
    委員会は以上の報告を了承した。
  • 「”ゴミ屋敷”番組に精神科医が抗議」=報告
    ゴミをため込んだ家を訪れ片付けるよう働きかける番組に、大阪の精神科医が抗議し、「放送人権委員会で検討して欲しい」と要請してきたケース。精神科医が指摘する点は、「取材対象の屋敷の住人は精神障害の可能性があるが、そういう人達を了解を得ずに取り上げると、人権侵害につながったり、障害者差別を助長する恐れがある」、また「こうしたゴミ屋敷問題の解決は、行政など公的機関が当たるべきで、何の権限もないテレビ局が直接解決に当たるのは許されるのか」という内容で、「番組は生活の奇妙さや異質さを強調して笑いを取ろうとしており、問題だ」としている。
    これに対し、精神科医が事務局に送ってきた当該局の返答文書によると、放送局側は「ゴミ屋敷問題を取り上げ放送することには、公共性・公益性がある。住民が精神障害者である可能性を前提にした議論は差し控えたい」と述べている。
    このケースは、現行の放送人権委員会運営規則では、精神科医に申立人の資格がないこと、住人が障害者か否か確認しにくいことなどから、放送人権委員会の審理対象にはなりにくいものの、テレビ番組の本来あるべき姿を考える素材を有していることから、引き続き委員会で検討することになった。

そ の 他

事務局から以下の3点について説明・報告があった。

  • 法律専門調査役を採用
    放送人権委員会の機能強化等を目的に、若手弁護士(30歳)を法律専門調査役(非常勤)として9月1日から採用する。苦情・審理事案などについて法律面でのアドバイスを求め、委員会にも出席してもらうことになる。
  • BPO事務局と在京放送事業者との意見交換会
    9月中にも開催して、今抱えている課題などについて意見交換し、BPO事務局からの要望も伝えたい。
  • 放送人権委員会委員と北海道地区担当者との意見交換会
    委員が現地に出かけて、その地域の放送局の担当者等と意見交換を行う。
    今回は10月下旬に札幌で行う予定。

最後に、次回の定例委員会の開催予定を9月16日(火)午後4時からと申し合わせ、議事を終了した。

以上

第78回 放送と人権等権利に関する委員会

第078回 – 2003年7月

BPO(放送倫理・番組向上機構)発足とその後の状況について

苦情対応について…など

BPO(放送倫理・番組向上機構)発足とその後の状況について

7月1日のBPO発足後の状況等について事務局から以下のような説明があった。 「BPOがスタートして約2週間、視聴者からの意見・苦情はかなり増えている。放送について何かを言う場が出来たと受け止められているのではないか。BPOは、苦情処理等に当たって、放送局寄りとか反放送局の姿勢とかではなく、第三者性を追求していく必要があると考えている。来年3月を目途に各委員会のあり方を考えていくが、清水理事長も1日の記者会見で『テーマによって特別委員会の設置なども検討する必要がある』と話していた」

これに関連して委員から「放送人権委員会の審理で、放送倫理に比重をという方向性が議論されているが、一方、放送番組委員会の目的は”放送倫理のあり方について見解の発表、提言を行う”となっている。委員会相互の調整等も検討事項として踏まえておく必要がある」という意見があった。

苦情対応について

6月の放送人権委員会としての苦情対応について事務局から以下のとおり報告があった

◆件数 293件=内訳

  • 人権侵害に関連する対応  6件
  • 番組や局への苦情に対する対応  87件
  • 業務や資料請求への対応  42件
  • その他(一般苦情18件など)  158件

次に、7月の新体制(BPO)になってからの苦情対応について次のような説明があった。

「7月1日から委員会前日の14日までの苦情件数は770件、中でも2日は160件の苦情等が寄せられ、電話を取りきれない状態だった。この内、人権関係は一般的ケースも含めて33件だった。また、長崎の少年による幼児殺害事件については、『加害者少年の顔写真にモザイクをかけてまで放送する必要があるのか』といった意見や抗議が複数あった」

また、新たにまとまった斡旋解決2事案と苦情受理事案が報告された。

  • 「リフォーム番組で悪質業者の烙印」との抗議=斡旋解決
    前回の委員会で説明した事案。その後、当該局のプロデューサーと苦情申立人が話し合った結果、放送局が遺憾の意を表明、この映像は再使用しないことで合意した。本年度2件目の斡旋解決事案。
  • 「ドラマの台詞で、ショートステイを”姥捨山”に喩えた」苦情=斡旋解決
    父親を老人ホームで介護してもらっている男性から、「ドラマの台詞の中に”ショートステイ(老人ホーム)は姥捨山”という表現があった。放送局に差別ではないかと抗議したが、問題はないとの返事だった。放送人権委員会で何とかならないか」との苦情があった。当該局に苦情内容を伝えたところ、後日、苦情申立人から「担当プロデューサーとの話し合いで、その台詞の部分は再放送しないなど納得できる回答があった」と連絡してきた。当該局に確認した上で、本年度3件目の斡旋解決事案。
  • 「離婚した前妻だけへの一方的取材で事実無根」の抗議=苦情受理
    男性から「離婚した前妻が取材を受け、放送では離婚理由はドメスティック・バイオレンスと伝えていた。事実無根で、私への取材は一切なかった。局側に抗議したら『迷惑がかかったのなら申し訳ない』という程度の回答で納得できない」という苦情が寄せられた。当該局に内容を伝え、本年度5件目の苦情受理事案とした。

こうした報告に対し、委員から「放送人権委員会に苦情が伝えられると、それを知った当該局が苦情申立人との話し合いを促進する場合があるようだが、それはいいことなのか疑問だ」という意見があった。

苦情申立て検討案件

最近、事務局に寄せられた苦情・要望の中からいくつかを選んで検討・意見交換した。

ア)「性同一性障害」報道

性同一性障害を取り上げた番組に対し複数の苦情・抗議が寄せられた。「番組における不適切な表現によって、性同一性障害者として生きている自分たちの生活空間を根底から揺るがされた。障害当事者の人権を無視した放送に抗議する」と訴えている。

こうしたケースでは、申立ての資格はあるのかなどについて意見を交わした。主な意見は以下のとおり。

  • 直接の当事者ではないが、広い意味では当事者か。
  • 放送内容が性同一性障害者の社会的評価を低下させるようなものであったかどうかに関わってくる。そういう趣旨で申し立ててきたら、資格はないとは言えないと思う。
  • 取材に応じた人は苦情を言っていないようだが、そのずれはどう考えたらいいのか。
  • 差別一般は固定しづらいところがあると思うが、そういう意識がなくても結果としてその差別、そしてその集積としての構造が出来上がってきたというのは、社会の事実だから、そこには気を付けねばいけないと思う。
  • これは、差別問題というより表現に対する不満ではないか。

イ)再検討要請案件

去年6月、高校教諭が痴漢容疑で逮捕されたニュースで、「学校名を実名で放送したのは生徒に対する教育的配慮に欠ける」と同校PTA会長から放送人権委員会に申し立てたがあったが、放送人権委員会は、”申立人は直接の利害関係人”との運営規則から判断して、PTA会長は申立人としての要件を欠くとして審理入りしなかった。この件に関連して、7月に新組織BPOの発足を新聞記事で知った当時のPTA会長から、「新組織では、この案件について何らかの対応が可能か再検討してほしい」との要請があった。

  • あちこちで問題になっているケースだ。匿名だったらいいのかとなると、匿名は匿名でよその学校と間違えて噂が流れてしまうということもある。
  • 放送局は、公共性とか事件の重大性などをすべて考慮に入れて判断し、実名か匿名かを決めている。それでもなおかつ問題が起こってくるということだ。
  • 生徒のためにどう配慮するかは正に倫理の問題だ。各放送局が考えながらやっているとは思うが、局任せにしていて外れるところがあったら、こういう第三者機関が意見を表明することが必要かなと感じる。
    この件については清水理事長と事務局で対応方を考え、後日委員会に報告することとした。

このほか、新聞等で報道された放送局の”やらせ問題”について事務局から説明があり、意見を交換した。

そ の 他

事務局からBPO規約と改訂放送人権委員会運営規則について説明・報告があった。 変更点は、「委員長と委員長代行の選び方を、従前の委員の互選から代行は委員長の指名に変えた」ことで、運営規則については大きな変更はない。

最後に、次回の定例委員会の開催予定を8月19日(火)午後4時からと申し合わせ、議事を終了した。

以上

第77回 放送と人権等権利に関する委員会

第077回 – 2003年6月

「放送倫理・番組向上機構」設立について

「放送人権委員会の判断~6年間の記録」の配付について…など

「放送倫理・番組向上機構」設立について

7月1日発足のBPOについて事務局から概略以下のように説明があった。

「3委員会の機能は変らない。変るのはこれまで放送人権委員会と青少年委員会に分かれていた視聴者窓口を1本化したこと。また、委員会に指摘されたことが放送現場の中でどういう形で生かされたかを放送局が委員会に報告することになった」

これについて委員から次のような質問や意見があった。

  • 「改善策を含めた取り組み状況を委員会に報告する」という点だが、何か月以内に報告するなどの大筋は決まっているのか、それとも局側におまかせか
  • 特に決めてはないが、委員会で指摘・要望すればそれに沿う形になるのではないか
  • 「委員会決定」をただ放送して終わってしまうだけでなく、「決定」を現場に周知徹底してもらい、さらに現場や関係者が勉強会や討論会を開いて「今後こういうふうにしていこう」というような合意を得るところまで進めてほしい
  • 放送人権委員会は苦情・紛争の処理機関か、それ以上の紛争のあり方について社会的使命を果たす役割も負うのか
  • 苦情処理、紛争解決以外のところで、社会的弱者を虐げる放送がなされている時、人権侵害だから申立てがあろうがなかろうが、遺族がどう考えていようが、そこまで踏み込んでいくことも委員会の使命の1つなのか
  • 基本的には苦情処理に徹することだが、新機構に対する視聴者の声の量と質を見ながら委員会の性格や事務局の機能を考えていく必要はあると思う
  • 重大な人権侵害や社会的に放置できない案件の場合、取り上げるかどうかについて弾力的に議論していくことも必要ではないか
  • 具体的なケースが出てきたら、その時点で対象枠を少し広げられそうか否か議論していただければと思う

「放送人権委員会の判断~6年間の記録」の配付について

出来上がった『放送人権委員会の判断~6年間の記録』を6月中旬にBROの会員各社を中心に配付したことが事務局から報告されるとともに、「委員会審理事案の積み重ねに合わせて改訂版を出す事になるが、何時頃になるかについては未定」との説明があった。

委員から、「表現の自由等を扱う弁護士グループの人権委員会の部会に、早速この冊子を配ったところ、非常に好評だった」との報告があった。

苦情対応について

5月の苦情対応について事務局から以下のとおり報告があった。

◆件数  250件=内訳

  • 人権侵害関連と思われるものへの対応  4件
  • 番組や局への苦情に対する対応  60件
  • BRO業務や資料請求への対応  29件
  • その他(一般苦情11件など)  157件

このうち、内規に基づく「人権侵害関連事案」の対応と処理は次のとおり。

  • 「リフォーム番組で悪質業者の烙印」との抗議 ‥受理
    抗議は、放送された当事者の息子からで「悪質リフォーム業者の特集番組で、父がリフォームした家が『欠陥住宅』として取り上げられた。放送に当って父への取材は一切なく、住宅の持ち主の話だけで番組は作られていた。番組を放送した局に抗議したら、制作したのは東京のキー局だと言われ、制作局に抗議したが、『欠陥住宅だから放送しただけ』との回答に留まっている。この放送で父は悪質業者の烙印を押されてしまい、仕事にも支障をきたしている」というもの。
    具体的な話し合いがまだ行われていないこともあって、この事案を今年度3番目の受理事案として、双方の話し合いを見守ることとした。
  • 「県議選前の不公正な報道で名誉毀損」との抗議 ‥既受理
    前回5月の委員会で報告した事案。その後、抗議者と放送局側の間で文書のやり取り等が続いており、もうしばらく様子を見ることとした。
    これに関連して、前回、委員から「選挙前の公正な報道について以前、郵政省から文書・通達が出ていたはずだが・・」との質問があった。これについて「調べた結果『当落報道はきちんと正しく放送すること』との通知はあったが、選挙前の報道についての通知・通達等は確認できなかった」と事務局から説明があった。

次に、受理事案や今後の審理の進め方等について委員から以下のような意見があった。

  • 「リフォーム番組」のケースを審理するした場合、放送人権委員会として、欠陥住宅かそうでないかの調査をすることになるのか
  • 証拠による事実認定が委員会の査能力から見て難しい場合は、審理対象にはならないのか
  • 委員会には調査・捜査権がな、事実認定は難しいが、事実確認できなければ審理対象として取り上げないというケースはなかった
  • 事実を判断するのではなく、番の印象の方を判断する場合もあるのか
  • それもあるし、番組の作り方、送の仕方が対象になることもある
  • 当該番組の視聴や関係者の話どから判断して、申立人の主張を評価できる根拠があれば、審理に入ることができるのではないか
  • 審理のスピードアップのために、早めに当該放送テープを視聴できないか
  • 放送テープの取り扱いにつては、審理入りを決める段階の前に、放送テープの提供を求めるのは行き過ぎではないか
  • 放送テープの提出を早めるよう要請することは、どうしても「検閲」というような意識が生まれる恐れがあるのではないか
  • 第三者機関の設置は、言論の自由を守ることになるのか、逆に制約することになるのか見極めは難しいが、視聴者からも放送事業者からも等距離でいくことが、適度の信頼を得て上手く機能すると思う

そ の 他

事務局から以下の項目について説明・報告があった。

  • 6月18日開催の新機構設立準備会と理事会、あわせて新理事長記者会見について
  • 7月1日、BPO発足と理事長・3委員長記者会見等について

最後に、次回の定例委員会を7月15日(火)午後4時から開催することを確認し、議事を終了した。

以上

第76回 放送と人権等権利に関する委員会

第076回 – 2003年5月

苦情対応について

「放送人権委員会の判断~6年間の記録」について…など

苦情対応について

事務局から以下のとおり報告があった。

◆件数  230件=内訳

  • 人権侵害関連と思われるものへの対応  5件
  • 番組や局への苦情に対する対応  64件
  • BRO業務や資料請求への対応  24件
  • その他(一般苦情19件など)  137件

このうち、内規に基づく「人権侵害関連事案」の対応と処理は次のとおり。

  • 「白装束集団とは無関係」との宗教法人からの抗議 ‥斡旋解決(今年度第一号)
    宗教法人GLAの代理人弁護士から「白装束集団と関係あるような放送をされたが無関係、申立てをしたい」という要請があった。当該局にこの内容を伝え、双方が話し合った結果、「今後の報道に当っては最大限注意する」ということで決着した。
  • 「県議選前の不公正な報道で名誉毀損」との抗議 ‥受理
    県議選告示前のニュースで、最多当選者や最高得票者が紹介されたが、この中で最多落選者として実名、写真入で放送された立候補者から「選挙の公平さが害されただけでなく、名誉・信用が毀損された。場合によっては放送人権委員会に申立てたい」との抗議があった。
    抗議者は、選挙管理委員会や人権擁護委員会にも問題提起しており、当面は、受理事案として今後の当該局との話し合いで解決する余地があるかどうか見守ることになった。これについて委員から「選挙前の公正な報道について以前、郵政省から文書・通達が出ていたはずだ。事務局で調べておいて欲しい」との要望があった。
  • 「待ち伏せ取材で人権侵害」朝鮮総連元幹部からの抗議 ‥未受理
  • 「ナンパ隠し撮り」に16歳少女が抗議 ‥未受理
  • 「詐欺まがい商法」の報道で人権侵害の抗議 ‥未受理

以上3件については、当該局との話し合いがなされていなかったり継続中であることなどから未受理としているとの現況報告があった

「放送人権委員会の判断~6年間の記録」について

前回に次いで、事務局から、取りまとめの経緯と掲載内容の一部手直しなどが報告され、次いで

この冊子の取り扱い方などを協議した。

委員の主な発言は以下のとおり。

  • 冊子の後段に、これまで放送人権委員会が判断を下した事案の概要と委員会判断の要旨を付けた方が判りやすい
  • 当該局が○○と伏字になっているが、実名又は放送局A等としたほうがいいのではないか
  • 局名をそのまま出すと、事例集としては強すぎるのではないか
  • 放送現場にいる人にこの記録を是非読んでほしい。積極的に公開、配付すべきだ

協議の結果、今回の「放送人権委員会の判断~6年間の記録」は、局名は原案通り○○と伏字にし、後半部分の事案の概要と委員会判断の要旨を付記することになった。また、各放送局に広くいきわたるよう積極的に配付することになった。

そ の 他

事務局から以下の項目について説明・報告があった。

  • 2003年5月発行のBROとしては最後の「BRO年次報告書」の内容
  • 4月23日のBRO主催シンポジウムと録画放送(NHK教育テレビ)について
  • BRO告知スポットの2002年度放送実績調査結果

最後に、次回の定例委員会を7月15日(火)午後4時から開催することを確認し、議事を終了した。

以上

第75回 放送と人権等権利に関する委員会

第075回 – 2003年4月

委員長、委員長代行の決定

「女性国際戦犯法廷・番組出演者の申立て」委員会決定の総括…など

委員長、委員長代行の決定

大木専務理事から、「去る2月27日の初会合で、新委員長に飽戸弘委員、同委員長代行には竹田稔委員と堀野紀委員が互選され内定している」ことを報告・確認した上で委員に諮ったところ、全会一致でこれを承認。正式決定した。

その後、新委員全員による記者会見を別室で開催し、午後5時、飽戸弘委員長の司会で委員会を再開。

「女性国際戦犯法廷・番組出演者の申立て」委員会決定の総括

事務局から、標記「委員会決定」の概要と通知・公表(記者発表)の模様、および、「委員会決定」を報じた放送・新聞の対応を報告するとともに、NHK広報局が発表した「放送人権委員会決定に対するコメント」を紹介。NHKが「委員会決定」の主旨を放送したVTRを視聴し、委員間で意見交換した。

意見交換ではまず、この事案の審理にあたった飽戸委員長と、五代、渡邊両委員から、それぞれ「委員会決定」に関する説明があった後、委員から次のような意見が出された。

  • この委員会決定を受けて、今後、NHKは具体的にどのような取り組みをするのか。
  • NHKの受け止め方は、”自浄努力はいたしますけれども”と言って切り抜けているような感じで、少し虚しさを感じる。
  • 委員会決定の受け止め方や後の処理について、当該放送局に対して委員会としてコメントできるのか。

「放送人権委員会判断基準」について

事務局から、前委員会からの申し送り事項である「放送人権委員会の判断 ~ 6年間の記録」に関する、取りまとめの経緯と掲載内容などを報告。続いて、委員長と、原案作成を担当した渡邊委員から説明があった後、今後の取り扱いについて検討した。

その結果、次回(5月)の委員会で再度、委員の意見を確認した上で、今後の取り扱いを決定することとした。

苦情対応について

事務局から、3月の苦情対応件数と対応概要について、以下のとおり報告した。

◆件数  258件=内訳

  • 人権侵害関連と思われるものへの対応  3件
  • 番組や局への苦情に対する対応  53件
  • BRO業務や資料請求への対応  33件
  • その他(一般苦情22件など)  169件

このうち、内規に基づく「人権侵害関連事案」の対応と処理は次のとおり。

■ 「女性国際戦犯法廷・番組出演者の申立て」

〔議題2参照、3月31日に委員会決定を通知・公表〕

  • 「バラエティー番組で無断撮影・放送され名誉毀損」との抗議、斡旋解決・・・昨(2002)年8月に放送された大阪のテレビ局のバラエティー番組に対して、大阪在住の主婦から、「スーパーで買い物をして出てきたところを女性アナウンサーに声をかけられたが、急いでいたので断った。しかし、この時に撮られた映像が断りもなく、『大阪のおばちゃんはこんなに怒っている』という音声とともに、アップにした顔に”怒りマーク”が付けられて放送された。放送局に抗議したところ、放送局は今年1月の検証番組で一方的に謝罪放送をしたが、自分としては同じ番組での謝罪を要求しており、納得できない」と抗議があった。当該テレビ局に抗議の趣旨を連絡し対応を要請した結果、3月22日に当該番組内で謝罪放送が行われ、解決した。

[昨年度8件目の斡旋解決]

続いて事務局から、「2002年度の事務局対応件数と人権侵害関連20事案の処理状況」について報告・説明し、若干の意見交換を行った。

そ の 他

事務局から以下の項目について説明・報告した。

  • 第3回BROシンポジウム”放送の自由と自律 ~ 放送倫理確立への道”を開催〔4月23日(水)13:30~17:00、千代田放送会館2階ホール。シンポジウムの模様は5月3日のNHK『土曜フォーラム』で放送される予定〕

最後に、次回の定例委員会は5月20日(火)午後4時から開催することを確認し、議事を終了した。

以上