第252回 放送と青少年に関する委員会

第252回-2022年12月

ドイツの自主規制機関FSFとオンラインで国際交流…など

2022年12月19日、第252回青少年委員会を千代田放送会館会議室で開催し、榊原洋一委員長をはじめ8人の委員全員が出席しました。うち1人はオンラインによる出席でした。
定例の委員会に先立って、青少年委員会とドイツの放送番組に関する自主規制機関FSFとのオンライン交流会が開かれ、それぞれの青少年保護への取り組みが紹介され、意見交換しました。
11月後半から12月前半までの1か月の間に寄せられた視聴者意見には、バラエティー番組のドッキリ企画で男性芸人に本人にだけ聞こえる合図の音を聞かせて池に背広のまま5回も飛び込ませたことについて「本人が憔悴するまで追い詰める内容はいじめそのものであり、非常に不愉快極まりない」などがありました。
12月の中高生モニターリポートのテーマは「最近見たニュース・報道・情報番組について」でした。モニターからは朝の情報番組を取り上げた報告が多く、いくつかの番組の伝え方について比較した報告が複数寄せられました。
委員会ではこれらの視聴者意見やモニターリポートについて議論しました。また2月に開催予定の岡山・高松地区の放送局との意見交換会について、事務局から経過報告がありました。

議事の詳細

日時
2022年12月19日(月)午後4時30分~午後7時30分
場所
千代田放送会館会議室
議題
ドイツの放送番組に関する自主規制機関FSFとのオンライン交流会
視聴者からの意見について
中高生モニター報告について
意見交換会について
今後の予定について
出席者
榊原洋一委員長、緑川由香副委員長、飯田豊委員、佐々木輝美委員、
沢井佳子委員、髙橋聡美委員、吉永みち子委員
オンライン出席:山縣文治委員

ドイツの放送番組に関する自主規制機関FSFとのオンライン交流会

青少年委員会とドイツの放送番組に関する自主規制機関FSFとの交流会が約1時間40分、現地とオンラインで結んで行われ、それぞれの青少年保護への取り組みが紹介され、意見交換しました。
交流会はBPO大日向理事長の「お互いに直面する課題や経験について現場レベルで交流し、ともに目指す放送の自主自律に役立つことを期待します」というメッセージとともに和やかにに始まりました。
まず、榊原委員長が青少年委員会の役割と「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」に関する見解について英語でプレゼンテーションを行いました。FSFから見解の発表について質問があり、榊原委員長と緑川副委員長は「見解の発表のみならず、制作者らに委員会の考えを理解してもらうため、意見交換の場を作った」と紹介し、「私たちの考えは制作現場にも伝わり、番組作りにも反映され始めているように感じる」と回答しました。
FSFからはドイツの放送で青少年保護の課題となっている犯罪記録ドラマ「True Crime」への取り組みが紹介されました。衝撃的なシーンが多く、子どもたちには刺激が強い内容で、FSFではこれをどのようにレーティングに反映するべきか検討しており、実際に12~15歳の子どもたちの意見を聞く調査を実施したとの報告がありました。榊原委員長からの「調査結果をどのように生かすのか」との質問に対し、FSFは「検証を行うための要素を洗い出すためにも、True Crimeドラマがどのような害を及ぼしうるのか学ばなければならない」と答えました。また、緑川副委員長からの「放送を規制してもネットで視聴できてしまうのではないか」との質問には、「ネットコンテンツに対する自主規制もあって、今のところネットの方が抑制的だ」との回答がありました。別室で議論を聞いていた委員からは「BPOの中高生モニターには18歳の人までいる。番組を視聴できる世代にも意見を聞くとよいのではないか」といった調査検討の進め方に対する意見も出るなど交流会らしい内容が続きました。
最後に榊原委員長が「実りの多い交流でした。是非また行いたい」と述べると、FSFのミカット所長も「大変興味深い内容でした。ぜひ続けましょう」と応じて時間となりました。

視聴者からの意見について

11月後半から12月前半までの1カ月の間に寄せられた視聴者意見について担当委員から報告がありました。
バラエティー番組のドッキリ企画でにせの刑事ドラマの撮影現場を設けて大御所俳優と共演した男性ピン芸人に本人にだけ聞こえる合図の音を聞かせて、背広のまま池に5回も飛び込むNGを出させたことについて「本人が大御所俳優に恐縮して憔悴するまで追い詰める内容はいじめそのものであり、非常に不愉快極まりない」「子どもが見ている時間帯の番組なので、いじめを助長するのではないか」などの意見が寄せられました。担当委員から「本当のドッキリに見える子どもがいるかもしれないが、大人の目から見ると出演者はみんな(ドッキリの演出だと)わかっているように作られている感じがする。大御所俳優も最後には『さっきは怒って悪かったね』とフォローをしていた」として、全体としてみるとこれ以上の検討を要するとは考えないとの報告がありました。
報道番組の女性リポーターがマンホール内爆発事故の現場近くにある保育園で退園してきた子どもに対し母親の前で短いインタビューをしたことが「不適切だ」と視聴者意見で指摘された点について、担当委員は「迎えの母親にインタビューの承諾を得ており、子どもへの質問にも相当性があった」として「とくに問題にはならない」との見方を示しました。
また、バラエティー番組全般に対して、「番組の中で『いじめ』ではなく、『いじる』という言葉が使われるようになった。しかし、『いじる』と言いながら、いじめているように見える場合がある。こうした言葉の言い換えは子どもたちに悪影響がある」という視聴者意見がありました。担当委員は「たしかに、いじめと『いじる』の言葉の境界が曖昧になり、鈍感になっていくおそれがあるように思う」として、「テレビ制作者は言葉の使い方にしっかりとアンテナを張って敏感であることが大切だと思う」と指摘しました。
その他に、大きな議論はなく「討論」に進むものはありませんでした。

中高生モニター報告について

12月のテーマは「最近見たニュース・報道・情報番組について」で、合わせて17番組(テレビ16・ラジオ1)への報告がありました。朝の情報番組を取り上げたモニターが多く、いくつかの番組の伝え方を比較した報告も複数寄せられました。
このうち、『めざましテレビ』(フジテレビ)には「番組で知ったエンタメのことを学校などで話題にする」という感想が、『報道ステーション』(テレビ朝日)には「ひとつひとつのニュースを深く掘り下げていてとてもわかりやすい」といった感想が寄せられていました。
「自由記述」では、「何も知らないとテレビの内容をそのまま事実だと思ってしまうので、自分でもファクトチェックをすることが大切だ」、「ネット配信の番組を見ることが多くなったが、テレビは家族とコミュニケーションをとる良い機会になる」などの声が寄せられています。
「青少年へのおすすめ番組」では、『BS1スペシャル 脱北ユーチューバー』(NHK BS1)に3人が、『アイ・アム・冒険少年』(TBSテレビ)、『サザエさん』(フジテレビ)にそれぞれ2人が感想を寄せています。

◆モニター報告より◆

【最近見たニュース・報道・情報番組について】

  • 『めざましテレビ』(フジテレビ)
    • 毎朝見ている番組です。毎日の国内・海外のニュースも見ていますが、エンタメのニュースや最新のトレンド特集、人気俳優の出演などが多く、どちらかというとこちらをメインに見ることも多いです。周りでこの番組を見ている人が多く、番組で知ったエンタメのことを学校などで話題にすることもよくあります。朝から暗いニュースばかりでニュース番組を見るのもつらいこともあるので、エンタメ要素が強く少しでも明るいニュースを見られるのはとても嬉しいです。この番組のMCやアナウンサーは笑顔も多く、朝から元気をもらえるように思えます。(高校2年・女子・広島)
    • 朝はおもにこの番組を見ていて、とても良いニュース番組だと思う。6時半頃、7時頃の最新のニュースコーナーについては見出しを見ただけで内容が推測しやすく、「もっと詳しく知りたい」と思わせるような工夫をしているなと思った。報道以外にも「めざましじゃんけん」や「占い」、グルメや化粧品の紹介など、視聴者が楽しんで見られるようなコーナーを多く設けていると思う。(中学2年・女子・鹿児島)
  • 『news every.』(日本テレビ)
    • この番組では、その日のニュースがスライドで図やイラストなどを用いながら詳しく紹介されています。毎日番組の全部を見ているわけではなく、「気になるミダシ」や「今日コレ」などのコーナーごとに視聴しています。Twitterを使うことが多くなり、テレビでニュースをチェックすることが以前よりも少なくなりました。あえて報道番組を視聴しているのは、幅広いジャンルのニュースを知ることができるというメリットに加えて、アナウンサーやコメンテーターの掛け合いや人間味のあるコメントを聞くことができるからです。とくに私が『news every.』を選んで視聴しているのは、番組の分かりやすさや扱うニュースジャンルの広さに加えて、メインキャスターの藤井貴彦アナウンサーの存在も大きいです。(高校2年・女子・東京)
    • コロナの感染者数などが以前より報道されなくなったと思います。感染者が増えているのも事実なので報道するべきところは今後もきちんと報道してほしいですが、明るいニュースも積極的に報道してほしいなと思いました。地方の伝統的なものを紹介するコーナーがあり、意識的に調べなければ知ることができないようなものを紹介していて面白かったです。今はいつでも知りたいことを調べられますが、自分が関心を持って見ていないジャンルのものは知りにくくなったなと感じていたので、こうしてテレビで知ることができる機会があるのはいいなと思いました。(中学3年・女子・群馬)
  • 『情報7daysニュースキャスター』(TBSテレビ)
    毎週コメンテーターが変わる番組は、取材内容や企画の趣旨に沿ってキャスティングされることが多いので、より専門性の高い内容になっていると思う。ファスト映画を取り上げた回では、司会の三谷幸喜さんが映画監督をしているということもあり面白い見解を聞くことができた。(中学3年・女子・千葉)

  • 『おはよう日本』(NHK総合)
    小学生の頃から毎朝ごはんを食べながら見ている。小学生では7時台、中学生では6時台、高校生になってからは5時台と、見る時間が生活に合わせて早まっていることに気がついた。以前見ていたコーナーは、今は全く見る機会がないし、高校生になったばかりのときは「こんなコーナーあったかな?」と思うことがあった。それは制作側がその時間帯に起きて見ている人が多い世代に向けて番組を構成しているということだ、というのを実感するきっかけだった。(高校2年・女子・埼玉)

  • 『newsイット!』(フジテレビ)
    • 祖父といつも見ているのでこの番組にした。意外と色々な種類のニュースを扱っているし、分かりやすいまとめ方で放送されていたと思う。見ているだけでは分からないこともあり、せっかくスタジオに専門家がいるのであれば、TwitterやLINE、インスタグラムなどを活用して直接質問できるようにしたほうがいいと思った。誹謗中傷されているサッカー選手がいるというニュースは、ニュースとして出す必要があるか気になった。(中学2年・女子・山形)
    • 水泳教室の送迎バスの車内に男子児童が取り残されたニュースで、GPSを活用することで命を落とさず児童を守ることができると示してくれたと思います。悲しいニュースが多い中で、悲しいニュースがあったという事実だけを報道するのではなく、そのような悲しいニュースが二度と起こらないようにするための対策方法などを多く報道するほうが大切なのではないかと考えます。「そんなことがあったのか」「悲しいな」と思うのではなく、ニュースを見て「自分たちもこうしよう」「自分の仕事場で提案してみよう」と考えられるようなニュースが増えることを願います。(高校3年・女子・茨城)
  • 『ゴゴスマ』(CBCテレビ)
    朝と夜とのニュースの取り扱い、番組の進め方の違いに気づくことが出来ました。①~見出しの力~取り上げるニュースがコロコロと変化する情報番組では見出しは必須です。画面右上を見るだけでどのようなニュースを取り上げているのか理解することができます。情報番組は同じニュースを扱っていてもテロップ、字幕の使い方で大きく印象が異なります。ニュースを日常的に見ていたら、学校の新聞を書く時などに大いに活用できると思いました。 ②~昼は朝よりもVTRが少なめ?~各ニュースを10 分程でまとめていますが、朝よりもVTRが少ない気がします。朝の情報番組はVTRで番組が進んでいるような気がしますが、昼の番組はどちらかというとコメンテーターの話の流れで進んでいるように思いました。速報が入りやすいため放送内容を変更しやすいようVTRを少なめにしているのかなと思いました。ニュースの内容だけでなく、取り上げ方や仕組みを考えられたため、またこうして番組 を視聴したいと思いました。(高校2年・女子・千葉)

  • 『ワールドビジネスサテライト』(テレビ東京)
    全体的にわかりやすくニュースが紹介されていていました。専門的な用語も丁寧に説明されていて面白かったです。ただ、表題となっているニュース(アリババ創業者に関するもの)について、経済において重要な人物であっても住居を報道するほどの価値があるようには感じませんでした。モザイクをかけてまで家の周辺を撮影する必要はあるのかなと思いました。(高校1年・男子・埼玉)

  • 『ZIP!』(日本テレビ)
    サッカーワールドカップのシーズンで、日本の選手のすごさや日本の強さがサッカーのルールを知らない私でも理解できるくらい分かりやすく解説されていて、今大会のサッカー観戦をさらに楽しむことができました。一方でその話題ばかりで日常のニュースが少なく、その内容があまり深く掘り下げられなかったことが気になりました。4年に一回の特別な時期で注目度が高かったからこそ長い時間を使って取り上げられたと思いますが、朝の忙しい支度時間の合間にニュースを見ている私は、前日に起きた出来事や注目されている事をある程度詳しく知りたかったです。(高校2年・女子・岩手)

  • 『THE TIME,』(TBSテレビ)、『おはよう朝日です』(朝日放送テレビ)、『ZIP!』(日本テレビ)、『めざましテレビ』(フジテレビ)
    『THE TIME,』は、特に6時台は次々と項目が切り替わり、短い時間でたくさんの情報を得られます。ニュースの取り上げ方は、出来事を端的に分かりやすく伝えていると感じました。内容に応じてナレーションの抑揚が強くつけられていたり、テロップがバラエティー番組並みに凝られていたりと、頭がよく働いていない状態でも視聴者に情報が入りやすいようにしている工夫がみられ、朝に見るニュースとしては良い取り組みだなと思いました。『おはよう朝日です』は、テレビの向こう側でニュースを話題に出演者同士で会話しているような印象を受けました。全体を通して口調が柔らかく、緩く、楽しく、ゆったりと情報を伝えているなと感じ、ニュースを身近な視点で考えられるような工夫がされていると思いました。『ZIP!』は、ニュース・報道・情報番組というよりほぼバラエティー番組で、ところどころフラッシュニュースが入っている印象を受けました。6時半台のニュースの解説的なコーナーでは、新聞の活字をベースにそのニュースが日常生活にどう影響するのかをたっぷり時間をかけて伝えていて、しっかりとテレビの前に座って目と耳を傾けて理解しようとすればたくさんの情報を得られると思いました。『めざましテレビ』はVTR中心の構成で淡々と情報を伝えているという印象を受けました。この4つの番組のなかでは画面やナレーションが最も分かりやすく、それぞれの情報の中で何が重要なのかがしっかり分かるようになっていると思いました。(高校1年・男子・兵庫)

  • 『報道ステーション』(テレビ朝日)
    2~3項目のニュースと特集という、報道するトピックとしては少なめでした。しかし、一つ一つのニュースを深く掘り下げていてとてもわかりやすかったです。特に羽生善治九段のインタビューでは、将棋界とAIの関わり方の歴史のようなものにもふれていて、単に個人のインタビューではなく将棋界まで話を広げていて面白かったです。政府が防衛費を増税によって増額しようとしている内容に関して、どうして防衛費を増やす必要があるのか知りたかったです。(高校2年・男子・福岡)

  • 『石塚元章 ニュースマン!!』(CBCラジオ)
    ラジオでニュース番組を聴くことはあまりなかったが、この番組では意外とわかりやすくニュースを理解することができ、このような形態の番組もとても面白いなと感じた。この番組のパーソナリティーの石塚さんをたまにお昼の情報番組で見るが、そこで見せる顔とは少し違うよりおちゃめな一面も聴くことができて驚いた。また途中のコーナーの内容も教養系ではあるものの、硬すぎず柔らかすぎずといったちょうどいい塩梅で上手に作っているなと感じた。AMラジオで朝番組ということもあってか放送内容がかなり高齢者向けに作られているように感じ、若者からは聴かれづらいのではと感じた。このような楽しみながらニュースに接することができる番組が増えるといいと思った。(高校1年・男子・愛知)

  • 『サンデーステーション』(テレビ朝日)
    日曜夜9時からの放送となっているが、日曜日はもともとニュース番組が少ないということも相まって、家族で夜のバラエティーを見てからその日の出来事をさっと一時間で振り返るという流れができるよい番組だと思う。今回は物価高で苦労する学校給食現場などが特集されていた。これもそうだが、せっかく家族で集まって見ることができる時間のため、食卓で話題に上るようなテーマを増やしてもよいのではと思う。(高校1年・男子・東京)

  • 『スッキリ』(日本テレビ)
    番組が終わってしまうと聞いて、とても残念に思いました。これからの3カ月間で見たい『スッキリ』として、ニュースを今まで通り深く濃く取り上げてほしいです。『スッキリ』の良いところはニュースの質だと思います。番組の終わりになるとエンタメ系のコーナーが多くなるのではないかと思うのですが、最後までニュースコーナーできちんと深く議論し視聴者に届けてほしいです。2つ目は、今までの司会のアナウンサーやコメンテーターに出演していただきたいです。(中学2年・女子・東京)

  • 『Nスタ』(TBSテレビ)
    番組が始まってすぐにニュースを紹介していて、気になる情報をたっぷりと報道していると感じました。また、CM明けからすぐにニュースに入っているところも、続けて見やすい工夫がなされていると思いました。さらに、全体の半分以上が明るいニュースであることも強みではないかと思います。一方で、ニュースを表示するときなどに使われる細かい演出(動き)が多く、シンプルにしたほうが見やすいと感じました。また、VTR受けのスタジオや専門家の解説がもっとあると共感しやすいと思います。(中学1年・男子・山形)

【自由記述】

  • 最近テレビを見る機会が減り、代わりにネットで配信されている番組を見ることが多くなりました。このレポートのためにテレビを見ると、やはりネットの番組にはないテレビの魅力を感じることができた気がします。テレビをつけていると、家族とコミュニケーションをとる良い機会になるなと思いました。(高校2年・女子・広島)

  • 偏向報道についてSNSでも様々な議論が飛び交っているが、何も知らないとテレビの内容をそのまま事実だと思ってしまうので、自分でもファクトチェックをすることが大切だと思った。(中学3年・女子・千葉)

  • 近年いじめなどの問題が深刻になって、バラエティー番組などのコメントが非常につまらない。確かにひどいコメントはどうかと思うが、人を傷つけないコメントをしようとして思ってもいないコメントをするのではうそをついたことになってしまう。こんな偽りだらけの世界になってもいいものか、と思った。(中学2年・男子・山形)

  • テレビで放送されたものがYouTubeで見られることで、現代の情報入手の簡単さを改めて認識しました。昔放映されたものもテレビ各局が公式に配信していているため調べものも便利で、テレビ離れが進んでいると言われる若者がテレビに関心を持つきっかけになると思います。(中学1年・女子・千葉)

  • バラエティー番組の企画は面白いのに、罰ゲームの内容がひどいと思ってしまった。けがをした人もいるので、まずは出演者を気遣うことが大切だと思った。(中学2年・女子・山形)

  • 小学生のときに見た『ピカイア!』というNHKEテレのアニメのおかげで古生代の生物に興味を持つようになり、高校生になって学校の勉強に役立って助かっています。あまり話したことのなかった同級生ともそのアニメを見ていた共通点のおかげで話がはずみました。小さいころに見たテレビ番組が与える影響は大きいと思うし、子どもの興味を自然に惹きつけ、プラスで学びになる番組がこれからも放送されると良いなと思いました。(高校2年・女子・岩手)

【青少年へのおすすめ番組】

  • 『アイ・アム・冒険少年』(TBSテレビ)
    芸人の方が持ち前の芸を披露しながら楽しく過ごしている姿といかだ作りなどの場面で必死になっている姿のギャップが魅力的だなと思いました。(高校1年・男子・兵庫)

  • 『BS1スペシャル 脱北ユーチューバー』(NHK BS1)
    • 一人一人が自分の出身国の自由を求め、偏見をなくしてほしいという思いのもと活動しているのがわかった。YouTubeという自分の考えを世界に発信できる機関を利用し、脱北者の自由を訴える人々の存在に驚き、関心をもった。(中学2年・女子・鹿児島)
    • 個人のドキュメンタリーとしての側面が強く、敷居が低くて楽しく見ることができました。ユーチューバーというポップな存在から脱北者を描いているのがとても新鮮で興味深かったです。(高校1年・男子・埼玉)

◆委員のコメント◆

【最近見たニュース・報道・情報番組について】

  • Twitterを使うようになってテレビでニュースをチェックすることが少なくなったという声があった。SNSのお知らせからニュースに飛ぶということはあり、確かにそうだなと改めて思った。ただモニターはSNSで早く情報を得ることができる一方で、ジャンルが偏ってしまうとも書いていて、そうしたメリットとデメリットをきちんと考えているのだなと思った。

  • テレビをつけていると家族とコミュニケーションをとるよい機会になるという感想があったが、やはりネットは一人で見てしまうことが多く、家でテレビがついていると家族と話すことができるという利点もあるのかなと思った。

  • ニュースというと今は主にストレートニュースのことを指すようで、ニュース番組はほとんどが情報番組という位置付けになり、報道と情報が一体化しているように思う。また、報道する視点やトーンというものが、放送局や番組によって以前よりはっきりしてきたように感じている。

意見交換会について

2月9日(木)開催予定の岡山・高松地区の放送局との意見交換会について、当日話し合うテーマを再度、検討しました。

今後の予定について

次回は1月24日(火)に定例委員会を開催します。

以上

2022年12月26日

2022年 12月26日

年末年始のBPO業務について

BPOでは、2022年度年末年始の業務対応を次のとおりといたしますので、お知らせいたします。

  • 通常業務は、年内は12月28日(水)まで、新年は1月4日(水)からといたします。
  • 12月29日(木)~1月3日(火)は、視聴者応対電話、放送人権委員会の相談電話を含め、
    業務を休止します。
  • 業務休止期間中、郵便物の受領と、メール、ファクスの受信は行いますが、対応は原則として業務再開後となります。

2022年11月2日

宮城・山形地区テレビ・ラジオ各局と意見交換会を開催

宮城・山形地区のテレビ・ラジオ12局と放送倫理検証委員会との意見交換会が、2022年11月2日、仙台市内で開催された。放送局側の参加者は12局40人、委員会からは小町谷育子委員長、岸本葉子委員長代行、高田昌幸委員長代行、井桁大介委員、大石裕委員、長嶋甲兵委員、西土彰一郎委員、米倉律委員の8人が出席した。放送倫理検証委員会が新型コロナ感染拡大のため開催を控えていた地方での意見交換会を開くのは、2020年2月の大阪地区での開催以来2年9か月ぶりのことである。

開会にあたり、小町谷委員長が「意見交換会は研修会でも勉強会でもなく、参加者が互いに意見を活発に交換していただく会であり、BPOをよく知ってもらう機会だ。委員にとっては、地方局が抱えている問題点や悩みを教えていただく会でもある。実りの多い意義のある会にしたい」と挨拶した。

意見交換会の前半では、これまでに公表した委員会決定を踏まえ、「政治的公平性」と「番組と広告の境目」の2つのテーマについて、担当委員が説明するとともに質疑応答を行った。

「政治的公平性~委員長談話から」

冒頭、小町谷委員長がBPOおよび放送倫理検証委員会の設立の経緯や「審理」と「審議」の違いなどについて解説した。その上で「BPO放送倫理検証委員会とは何かと思ったときには、『委員会決定第1号』を読んでもらうと理解が進む。そこには『倫理は、外部から押しつけられるものではなく、内発的に生まれ、自律的に実践することによって鍛えられるものである』とあり、委員会の役割として『放送界が放送倫理と番組の質的向上のたゆまぬ努力をかさね、多様・多彩な放送活動をより自由に行うよう促すこと――委員会がめざすのは、この一点である』」と宣言していることに改めて言及した。
その上で小町谷委員長は、2022年6月に出された毎日放送『東野&吉田のほっとけない人』についての委員長談話を踏まえ「政治的公平性」について講演を行った。この中で委員長は、同番組には日本維新の会の橋下元代表、松井大阪市長、吉村大阪府知事の3人がそろって出演し、会の政策については多く語られたが、異なる視点があまり示されておらず、委員会は政治的公平性を損なっていると判断したと、経緯を説明した。一方で、政治的公平性についての意見書を公表すると、放送局が政治問題を伝えるにあたって質的公平性を追求する足かせになるのではないかということを懸念し、また放送後、(当該放送局の)番組審議会で厳しい意見が出され、社内チームによる調査がきちんとなされるなど、自主・自律的に事後対応が行われたことも考慮し、審理・審議入りはしなかったと述べた。
また視聴率を重視して、話題性のある面白い発言をする政治家がキャスティングされると、党派的に偏りが生じ、情報にも偏りが出る恐れがあること、異なる視点が提示されないと、1党派の政策が一方的、肯定的に放送されるきらいがあるなどの問題点が垣間見えたと述べ、政治的公平性を真剣に議論する努力を欠いた番組によって一番不利益を受けるのは、偏った情報を受け取ることになる視聴者であることを懸念し、委員長談話を公表したと述べた。
続いてこれまでに公表された選挙報道に関する委員会決定などに触れ、「特に参議院選挙では、その地域の候補者だけを取り上げたために、地方局の番組が審議入りすることが多い。放送局が独断で比例代表制の設定している選挙区域とは異なる区切りを設定して放送することは、選挙の公平・公正性を害し、選挙制度そのものをゆがめることになる」として注意を促した。
最後に小町谷委員長は、「放送倫理検証委員会は放送法改正の問題をきっかけに設立された。このため政府の動きは常に意識し、政治に向き合うことを余儀なくされている。だからこそ政治的公平性や選挙報道のような民主主義に直結する報道、放送については敏感にならざるを得ない。一方で政治についての意見を表明すればするほど、放送現場を窮屈にさせることになることも懸念している。多様な放送、よい番組が生まれるためにも、委員会は常に抑制的でなければならないと考えている」と締めくくった。
参加者からは「知事や市長等政治家の発言については、一方的にならないよう、公平・公正のバランスを考えているが、例えば、告示1か月を切ったあたりに、対立候補との接戦が見込まれるようなタイミングでコロナウイルスの感染爆発が起きたり、行政側の対応を追及しなければならない場合には、(現職の)出演自体を相当悩むと思う」という意見があった。
これに対し大石委員は「選挙とそれ以外の時は区分する必要があるが、すべて平等に取り上げるのではなく、その問題が重要だという強い認識があれば、掘り下げて報道することこそ放送ジャーナリズムの役割だ。それが『質的公正』である。選挙期間中でも、選挙関連報道が常に優先されるべきというわけではない。緊急事態が生じた場合には、関連情報を伝え、地域の人達の安全を優先するという判断を行うべき」と答えた。
また、長嶋委員は「放送局側は自ら忖度したり、萎縮したりして、党の政策などに切り込むことを怠っているのではないか。もっと党の主張などについては深く伝えないと視聴者は選択することもできない。メディアの役割を自覚し、外部からのさまざまな圧力は局側がポリシーをもって突っぱねてほしい」と述べた。
他の参加者からは、民放連放送基準(12)に関連し、「社員アナウンサーが参議院選挙に向けて立候補の準備をしていたが、出馬宣言前に他のテレビ局で報道されてしまったため、民放連等にも確認しながら、そのアナウンサーの録音番組・生放送を急遽差し替えたり取りやめた。予定していたお別れの挨拶番組もできず、結構大変だった。その後は、フリーの出演者でも選挙に出るかもしれないという報道が出た時点で本人の出演を止めるということにしている」という事例が報告された。

「番組と広告の境目について」

番組と広告をめぐる問題についてこれまで委員会が公表した2つの委員会決定(第30号、第36号)および委員長談話(2020年)を振り返り、事案の問題点と教訓、番組と広告の境目をめぐる問題を判断するための枠組み、枠組みの中で留意すべき視点などについて西土委員が講演した。
同委員は、放送倫理検証委員会の役割はガイドラインの策定を行うことではなく、民放連放送基準や各局の番組基準などを判断基準として、第三者としての視点から番組を検証し、判断することにあると強調した。
そして、番組と広告の境目を検証するための基準は、民放連放送基準(92)「広告放送はコマーシャルによって、広告放送であることを明らかにしなければならない」と民放連の「番組内で商品・サービスなどを取り扱う場合の考査上の留意事項」(2017年)であり、特に後者は番組と広告の境目を判断するための枠組みを示していると述べた。「留意事項」では特に留意すべき事項として3点を挙げているが、これはあくまで例示であり、実際の運用にあたっては視聴者に広告放送であると誤解を招くような内容・演出になっていないかを総合的に判断する必要があり、そのための視点の一つは局による番組の位置づけが視聴者に理解されているかどうかであると指摘した。また、番組内の個別の要素・場面をとりあげて倫理違反を見出すのではなく、視聴後感において番組全体が広告放送であるとの印象を残すか否かがより重要だと述べた。その上で、総合的判断を行うためのポイントは、なぜ視聴者に広告放送であるとの誤解を招いてはならないかということを常に考えることだと述べ、番組と広告の線引きの判断に迷ったら、委員長談話「番組内容が広告放送と誤解される問題について」に記されている「『番組』は視聴者からの信頼を前提として放送されている。ところが『番組』の中に『広告』の要素が混在し、『番組』と『広告』の識別が困難になれば、視聴者の商品・サービスに対する判断を誤らせ、ひいては放送事業者に対する信頼や、番組の内容に対する信頼が損なわれてしまうのではないか」という原点に立ち戻ってほしいと訴えた。そして、緊張感をもって一線を画す日々の作業を記録し、検証することを積み重ねていけば、問題が起きた場合にも説明することができ、何よりも視聴者の信頼に応えることができると述べた。
続いて、高田委員長代行は「番組はあらゆるものから独立して、放送局、放送人が自らの判断で、役に立つ、有益である情報を視聴者に対して伝えることだ。その意味で、番組制作者が忠誠を第一に誓っているのは視聴者。広告は広告主から対価を得て作られており、第一に忠誠を誓うのは広告主。民放番組では両方とも必要であり、だからこそ、これは広告、これは番組だときちんとわかるように放送すること、視聴者目線に立って考えるというシンプルなことが強く求められているのではないか」と述べた。
参加局からは「ローカル局にとって、1社提供の番組は(営業的に)非常に大きい。長野放送の問題などが立て続けにあったとき、一時的に1社提供の番組を自粛した時期もあった。しかし制作現場と営業の間を編成、考査などがつないで何ができるかを詰める作業を繰り返し行うことで色々な問題を克服し、1社提供の番組が実現できた」という報告もあった。

後半は「委員と語ろう」と題して、参加局に対する事前アンケートで関心の高かったジェンダー表現について意見を交わした。

「ジェンダー表現」

アンケートには以下のような回答が寄せられた。

  • 「原稿で、どこまで性別に言及するのかいつも悩んでいる。30代の女性医師、容疑者の男・・・。絶えずデスクと記者が議論、話し合いをしている」

  • 「水着や浴衣の今年のトレンドをリポーターが紹介。どうしても女性ものが華やかで、たくさん飾ってある。男物を扱わなくていいの?って誰かが言ったら、ワンカット紹介して。本質的にこれ、どうなのかなって思いながら仕事をしている」

これらの回答に対して、まず岸本委員長代行が作家や番組出演者としての経験を披露し、「共通する大前提は、性別を言う必要がない場面では言わないということだ。エッセイでは、話の流れに支障がなければ、女性店員と書くところを店員、スタッフなどに置き換える。店員の様子を思い浮かべて欲しいときは、女性ということは書かず、例えばつけ睫毛や髪の長さなど外見で表現する。ラジオでは、縁側でおばあさんがネコと日向ぼっこと言うべきところを縁側でお年寄りがとか、おじいさんあるいはおばあさんでしょうかと両論併記的な言い方をしている。テレビには映像があるので、男性、女性と言う必要がないことが多いと感じている。ただ、容疑者が逃走中のときは、男、女と言うのは視聴者にとって重要な情報だと思う」と述べた。
小町谷委員長は参考になればと断ったうえで「女性医師、女性弁護士、女流作家などの言い方があるが、そうしたプロフェッションの人は自身が『女性の~』とは思っていない。プロフェッションの自尊心を傷つけるジェンダーの使い方はやめた方がよいと思う。私は弁護士であり女性弁護士とは思っていない」とコメントした。
また、米倉委員は「放送局はオールドメディアという言われ方をしているが、それは旧来の価値観を保持しているメディアと見られているということだ。どのような表現をするかはケースバイケースで対処せざるを得ないが、考えなければならないのはジェンダーバランスだけではなく、ダイバーシティについて意識的であるということだ。常に変化していく表現については、職場内での議論を含め日常的に試行錯誤していかなければならない時代に来ている」と述べた。
高田委員長代行は「差別問題は特定の言葉を使わなければいいとか、危ない言葉に触れなければいいという発想になりがちだが、虐げられている立場の人、その人がどういう境遇だったかという現実の問題にどれだけ制作者が向き合ってきたかどうかが問われているし、今後も問われる」と発言した。
井桁委員は「放送における小さな言葉の言い間違いやうっかりミスなどと、国や自治体がマイノリティーを虐げるような政策を打ち出したり、政治家が明らかな差別的意識に基づく発言することを一緒くたにして議論することには違和感がある。放送には大きな影響力があり、差別的な用語や表現に注意することは大事だが、どうしてもケアレスミスは残ってしまう。問題のある言葉をゼロにするために、内部で言葉の意味を一つ一つチェックすることを自己目的化させることなく、より本質的に問題のある施策・姿勢をしっかりと検証する方向により注力してほしい」と述べた。

参加者からは、「いわゆる専業主婦の取材をする際、何も考えずに台所仕事の様子を撮影しがちだが、本当にそれでよいのかを考えるようになった。私たちの中には古くからのジェンダーバイアスのようなものがあり、原稿でも映像でも、それをどう払拭していくか考えなければならない時代だと感じている」という意見があった。

最後に参加局を代表して、仙台放送柳沢剛番組審議室長が「放送局の自主・自律を図るため、視聴者の信頼を得るため、できることを突き詰めていきたい。視聴者・スポンサー・放送局の『三方良し』を目指し、今日の議論を宮城・山形の各局が現場にフィードバックしていければと思う」と挨拶した。

終了後参加者から寄せられた感想の一部を以下に紹介する。

  • 今年6月に出された委員長談話が指摘する「視聴率重視から生じる懸念」については、意味は十分理解するが、多くの人が関心を持つ「人」や「事柄」を取り上げることで、政治について関心を持ってもらったり、投票率の向上に寄与したりという効果もあるのではないかと思う。「質的公平性」をどう考え、どう実現していくかが課題だ。

  • 委員から「番組か広告かの問題について、ローカル局がなぜ大騒ぎしたのかわからない」との感想があった。テレビ・ラジオが広告としての媒体価値を落とすなか、ローカル局ではコスト削減を優先し、ともすれば手を抜いた安易な作業に流れがちである。一つ間違えれば自局も同じことになっていたかもしれないという危機感が多くの局にあったと思う。「喉元過ぎれば熱さを忘れる」とならないよう、制作の現場でよく考え大いに悩むことが重要と再認識した。

  • BPOという組織に、あまりポジティブな印象を持っていなかったが、委員の方々の顔を見ることができて正直少し安心した。委員の中にも色んな職業・立場の人がおり、みんなが個々の意見をぶつけながら結論を導き出しているのだと、会話を聞いて改めて認識した。
  • 意見交換会は、BPOが「向こう側」の存在ではなく、「こちら側」で一緒に試行錯誤する存在であるということ、また「こちら側」では、各局がそれぞれ共通の悩みを抱える同志でもあるということを知る大切な機会だと思う。

以上

第311回放送と人権等権利に関する委員会

第311回 – 2022年12月

「ローカル深夜番組女性出演者からの申立て」審理…など

議事の詳細

日時
2022年12月20日(火)午後3時~午後6時
場所
千代田放送会館会議室
議題
出席者
曽我部委員長、鈴木委員長代行、二関委員長代行、國森委員、斉藤委員、
野村委員、丹羽委員、廣田委員、松田委員、水野委員

1.「ペットサロン経営者からの申立て」審理

日本テレビは、2021年1月28日午前8時からの『スッキリ』で、「独自 愛犬急死 “押さえつけシャンプー”ペットサロン従業員ら証言」とサイドスーパーを出しながら、ペットサロンに預けられていたシェパード犬がシャンプー後に死亡した問題を放送した。放送は、犬の飼い主やペットサロン従業員など複数の関係者の証言を基に構成されていた。
この放送に対して、ペットサロン経営者の申立人は、「同番組内で申立人が、お客さんから預かっていた犬を虐待して死亡させたなどと、虚偽事実」を放送したと主張し、「字幕付きの放送をしたことで、申立人が預かっていた犬を虐待死させたかのように印象付け、事実に反する放送をすることで申立人の名誉を侵害した」として、BPO放送人権委員会に申し立てた。
これに対して日本テレビは、放送内容は真実であり、また「当社は事前に十分な取材を行っており、真実であると信じるにつき相当な理由」があり、「私たちの取材・放送によって人権と名誉が侵害されたという申立人の主張はいずれも根拠が無く、受け入れられません」と反論している。
今回の委員会では、再修正された決定文草案について各委員が意見を述べ、概ね意見の一致をみた。次回委員会で最終的に文案を点検することになった。

2.「ローカル深夜番組女性出演者からの申立て」審理

申立ての対象となったのは、あいテレビ(愛媛県)が2022年3月まで放送していた深夜のローカルバラエティー番組『鶴ツル』。この番組は男性タレント、愛媛県在住の住職とフリーアナウンサーである申立人の3人を出演者として、2016年4月に放送が開始された。3人が飲酒しながらトークを行う番組だが、申立人が、番組中での他の出演者からの度重なるセクハラ発言などによって精神的な苦痛を受けたとして申し立てた。
申立書によると、番組開始当初から苦痛、改善を訴えていたにもかかわらず、放送された他の出演者のトークが、申立人自身に対するものも含めてしばしば性的な内容に関することに及んで申立人に羞恥心を抱かせることで、また、そのような内容の番組の放送によって申立人のイメージが損なわれたことで、人権侵害を受け、放送倫理上の問題が生じたと主張している。
被申立人のあいテレビは、申立人は番組の趣旨を十分に理解した上で出演しており、申立人からの苦情も2021年11月が初めてで、また、番組の内容も社会通念上相当な範囲を逸脱しておらず、人権侵害や放送倫理上の問題はない、と主張している。
今回の委員会では、ヒアリングに向けて論点や質問項目を検討した。また、社会通念上許容できる範囲を探るため、BPOに寄せられたバラエティー番組での下ネタやセクハラについての視聴者意見を情報共有した。

3. 最新申立て状況

事務局から最新の申立て状況を報告した。

4. その他

12月2日に札幌で開催された北海道意見交換会の事後アンケートなどについて事務局から報告した。

以上

2023年度「中高生モニター」募集のお知らせ

2023年度「中高生モニター」募集のお知らせ

募集は締切ました。

BPO・放送と青少年に関する委員会[青少年委員会]では、2023年度「中高生モニター」を下記の要領で募集します。モニターには、毎月1回、様々なジャンル(バラエティー・ニュース報道・ドラマなど)の番組をテーマに、率直な意見や感想を送ってもらいます。報告は、青少年委員会の議論の参考となり、各放送局にも送られます。任期は1年です。

 応募要領

  • 【任期】 2023年4月~2024年3月

  • 【応募条件】

    • (1) 上記の任期中、中学1年生から、高校3年生までであること

    • (2) 保護者の同意を得ていること

    • (3) テレビやラジオに関心があり、月1回放送に関する意見を報告できること

  • 【募集人員】 30人程度

  • 【応募方法】
    • 専用の応募用紙に氏名・住所・年齢・学校名・電話番号・メールアドレス(ある方)・「モニター応募の理由」など必要事項をお書きいただき、必ず保護者が署名および押印を行ったうえで、以下の宛先までご郵送ください。
      応募用紙(PDF形式)は、ここをクリックしてプリントアウトしてください。

    • ※いただいた個人情報は、モニター申し込みに関する受付確認やモニター運営業務のために利用いたします。ご本人の同意なく目的外で利用したり、第三者に開示したりすることはありません。

  • 【応募締切】 2023年1月25日(水)※当日消印有効

  • 【あて先】

    〒102-0094 東京都千代田区紀尾井町1-1 千代田放送会館7階
    BPO・青少年委員会 中高生モニター係

  • 【採用決定】
    採否については、2023年3月下旬までにご連絡します。

  • 【報告への謝礼】
    月々のリポート提出者には、毎月図書カード1000円分をお送りします。

  • 【報告の公表】
    毎月送っていただくモニター報告は、BPO会員の各放送局に送られるとともに、『BPO報告』ならびにBPOウェブサイトに概要を公表します。


以上

「中高生モニター制度」について

このたび、2023年度「中高生モニター」を募集するにあたり、制度のご説明をさせていただきます。

放送倫理・番組向上機構[BPO]の放送と青少年に関する委員会[青少年委員会]では、青少年の育成に資する放送の在り方について、一般視聴者から寄せられる意見などをもとに話し合いをしています。しかし、一般視聴者から寄せられる意見を年代別に分類すると、青少年からの意見が大変少ないのが現状です。そこで、青少年のテレビ・ラジオに関する考え方や、番組に対する意見を知り、より良い番組作りにつなげるため、2006年4月「中高生モニター制度」を設けました。
毎年、全国の中高生30人前後をモニターに選出し、月に一度、様々なジャンル(バラエティー・ニュース報道・ドラマなど)の番組について、率直な意見や感想を報告してもらっています。中高生モニターのみなさんの「声」は、概要をBPO報告等に掲載するほか、当該放送局にもお送りし、制作現場に伝えられ、番組作りの参考にしていただいています。

つきましては、上記趣旨をご理解の上、ご協力をお願いいたします。

第178回 放送倫理検証委員会

第178回–2022年12月

NHK BS1 東京五輪に関するドキュメンタリー番組への意見への対応報告を了承

第178回放送倫理検証委員会は12月9日に千代田放送会館で開催された。
委員会が9月9日に通知・公表したNHK BS1 東京五輪に関するドキュメンタリー番組への意見について、当該放送局から再発防止に関する取り組み状況などの対応報告が書面で提出され、その内容を検討した結果、報告を了承して公表することにした。
また、11月にBPOに寄せられた視聴者意見が報告され議論を行った。

議事の詳細

日時
2022年12月9日(金)午後5時~午後6時30分
場所
千代田放送会館
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、
大石委員、大村委員、西土委員、米倉委員

1. NHK BS1 東京五輪に関するドキュメンタリー番組への意見への対応報告を了承

9月9日に通知・公表したNHK BS1 東京五輪に関するドキュメンタリー番組への意見(委員会決定第43号)への対応報告が、当該放送局から委員会に書面で提出された。
報告書には、委員会決定の内容を全国の放送局に周知徹底した上で、再発防止を徹底する勉強会を200回以上実施していることや、放送倫理検証委員会の委員を招いて研修会を開催したことなどが記されている。また再発防止に向けて、全国の放送局に番組やコンテンツの正確さやリスクについてチェックする「コンテンツ品質管理責任者」を新たに配置したこと、「複眼的試写」の対象となる番組を拡大し、より明確なルールを設けたこと、ニュース企画用に「取材・制作の確認シート」のチェック項目を一部変更した「ニュースの確認シート」を新たに導入したこと、職員のジャーナリストとしての再教育にも不断に取り組んでいくことなどが報告されている。
委員からは、再発防止策が充実した内容になっている、ジャーナリスト教育等に触れている点を非常に興味深く拝見したなどの意見が出され、報告を了承し、公表することにした。
NHKの対応報告は、こちら(PDFファイル)

2. 11月に寄せられた視聴者意見を議論

ラジオ番組で俳優の急死を伝える際に違法薬物を使用していたかのような発言をパーソナリティーが繰り返していたこと、バラエティー番組の落とし穴企画の収録中にタレントが腰椎を圧迫骨折したこと、ドキュメンタリー番組で料理店の料理人を店長と紹介するなどの誤りがあったことなどを事務局が報告し、議論した。

以上

2022年11月に視聴者から寄せられた意見

2022年11月に視聴者から寄せられた意見

著名な料理人たちがファミリーレストランの現行メニューの「合否」を判定するバラエティー番組の企画などに多くの意見が寄せられました。

2022年11月にBPOに寄せられた意見は1,471件で、先月から558件減少しました。
意見のアクセス方法の割合は、メール83%、電話16%、郵便・FAX1%。
男女別は男性41%、女性15%で、世代別では40歳代28%、30歳代22%、50歳代18%、60歳以上13%、20歳代13%、10歳代2%。
視聴者の意見や苦情のうち、特定の番組や放送事業者に対するものは各事業者に送付、11月の送付件数は532件、37事業者でした。
また、それ以外の放送全般への意見の中から13件を選び、その抜粋をNHKと日本民間放送連盟の全ての会員社に送りました。

意見概要

番組全般にわたる意見

著名な料理人たちがファミリーレストランの現行メニューの「合否」を判定する企画、出演タレントが腰椎を圧迫骨折したという落とし穴企画などに多くの意見が寄せられました。
ラジオに関する意見は40件、CMについては11件でした。

青少年に関する意見

11月中に青少年委員会に寄せられた意見は62件で、前月から61件減少しました。
今月は「表現・演出」が26件、「いじめ・虐待」が13件、それに「性的表現」が6件、「言葉」が4件と続きました。

意見抜粋

番組全般

【報道・情報】

  • ラジオ番組で女優の訃報を伝える際、あたかも彼女が違法薬物を使用していたかのような発言をパーソナリティーが繰り返していた。明確な根拠は一切示されず、憶測の域を出ない内容。こんなことが許されるのか大変疑問。

  • 違法薬物の使用を疑うような発言から5日たって、パーソナリティーから「新聞記事の意味を取り違えていた」との釈明があった。故人が犯罪者であったかのような発言がこの説明で許されるのか。

  • 給食時の黙食廃止について「黙食には慣れた。廃止は感染拡大に繋がらないか心配」と答えた男子中学生の静止画像をスタジオで示し、出演者が「こういう慎重な人がいるから普通の生活に戻らない」と発言。この男子生徒がいじめに遭わないか心配になった。軽率な番組制作だと思う。

  • 情報番組で「学校健診での上半身脱衣」を取り上げていた。医師による盗撮の事例などを挙げ、出演者たちはおおむね「脱衣に反対」。「健診での脱衣は不必要なのに行われている」との印象を受ける内容だった。しかし着衣だと、聴診器に服が擦れる音で心疾患のサインを聴き逃したり、側弯症の発見が遅れたりする可能性がある。病気や虐待の兆候を見逃さないためには脱衣が最善のはず。医師の意見もきちんと放送するべきだと思う。

  • 報道での効果音やBGMは芸能やスポーツ以外では禁止してほしい。事実を正確に伝えるべきなのに、効果音やBGMを多用することで視聴者に与える印象を著しく左右していることは間違いないと思う。

【バラエティー・教養】

  • タレントがバラエティー番組の落とし穴企画で腰椎を圧迫骨折したとのこと。建築業界では「1メートルは一命取る」と言われる。「落下は1メートルであっても死ぬ可能性があるから油断するな」という意味だ。今回、落とし穴は1メートル以上だったそうで危機管理が全然ダメだ。落とし穴企画は各局でやっている。他人事だと思わず対策を考えるべき。

  • 落とし穴企画は事故防止の専門家などが監修した上で撮影しているのだろうか。

  • ファミリーレストランのロングセラー人気メニューを著名な料理人たちが「不合格」と判定。出演した料理人がネットで「批判を誇張する演出は残念」と書いている。事実を歪曲する恣意的な編集がされたのではないだろうか。

  • 番組でファミリーレストランのロングセラー人気メニューを「不合格」と判定した料理人たちがネット上で批判されている。専門家の意見が視聴者の感情によってねじ伏せられかねない状況に危機感を覚える。プロの評価が素人と異なるのは仕方のないことだ。番組側は料理人たちをこの状況から守ってほしい。

  • 偽の刑事ドラマ撮影現場で超指向性スピーカーからターゲットにだけ誤った合図が聞こえてNGを連発、"大御所俳優"がいら立つというドッキリ。体を張るお笑い芸人とはいえ、理由も分からず何度も池に飛び込まされ、"大御所俳優"に叱られる様子を見るのは気分が良いものではない。肉体的にも精神的にも出演者にもっと配慮するべきだと思う。

  • 長時間にわたって人を苦しめて、スタジオ出演者やスタッフがそれを見て笑うような番組を流すことはやめてほしい。人が苦しんでいる姿を面白いと思うような子どもが出てくるのではないかと心配。

  • バラエティー番組で、アゴが長いことをネタにしているタレント専用のマウスシールドを作り、その形や大きさを笑っていた。これを笑いにする制作者の「いじめの香り」を感じ不快になる。私は顎変形症で手術するまで彼と同じような顔の形だった。この病気の人は多くが好奇の目にさらされ、辛い思いをしている。病名のつくような外見を笑いにしないでほしい。

  • ドキュメンタリー番組を見て素晴らしい話だと感銘を受けたが、他のメディアの報道によって番組の内容がうそで自分がだまされていたと知り、憤りを感じる。「誤り」にしては不自然。美談をねつ造したのではないのか。問い合わせても曖昧な内容の返信しかない。

  • 物価高で生活が苦しい人、食べ物にありつけない人がたくさんいる。それでも大食い番組を放送するのはどんな神経なのか。「政府は貧困対策を」などとどの口が言っているのか。

  • 悪路、野生動物の襲撃など命の危険がある通学路を通る海外の子どもたちのドキュメントを見た出演者が「なんだ、ただ学校に行っただけじゃないか」などとコメント。実際の感想なのか演出なのか知らないが、こんな発言は絶対に良くないと思う。「教育をみんなに」などテレビ業界の"SDGs"のアピールはやっぱりうわべだけだったんだなと思った。

  • 温泉盗撮組織を取り上げた際、イメージ映像の女性が温泉の湯船に長い髪を浸して入浴していた。髪を縛るなどしてお湯に髪をつけない衛生的な配慮がなく不快だ。このような公衆道徳に反する表現を許さないでほしい。昨今、温泉や公衆浴場でこうした行為を見かけることが増えたと感じる。今回の映像はそうした行為を肯定することになってしまう。

  • タレントたちに時事問題を解説する番組で「日本の税収が減った」と伝えていたが、税収は増えていて2022年度の一般会計税収は68兆円余りと過去最高の見通し。きちんとファクトチェックしているのか。

  • バラエティー番組で山中の川のそばにローションと入浴剤を混ぜて偽物の露天風呂を作り、タレントが入浴していた。この溶液が周辺の環境に拡散しないように防いでいる様子はなく、また収録後にこの溶液をどう処理したのか説明はなかった。番組内で説明が必要だったと思う。

  • 番組で過去のテレビドラマを扱った際、放送当時は大手芸能事務所に所属していて後に退所した主演タレントの映像だけが一切放送されなかった。事情は分からないが視聴者としては大きな違和感を覚え、まだこんなことをあからさまにするのかと落胆した。

  • 私は視覚障がい者。点字での投稿が可能だという文芸のラジオ番組に、啓発の意味であえて点字での投稿を続けていたところ、1年近くたってから番組担当者から連絡があり「点字の翻訳が締め切りに間に合わない。点字で投稿するならば、誰かに訳してもらい点字に添えて投稿してほしい」と言われた。そうであれば「点字投稿不可」と明記すべきだし、1年も放置せずすぐに連絡すべきではないか。このような対応は納得しかねる。

  • コンプライアンスが厳しくてやりたいことが表現できないと話す芸能人がいるが、コンプライアンスを言い訳にして放送する側・演じる側が自主規制をしているようにしか思えない。テレビは影響力が大きいのである程度の規制は仕方がない。しかし、本当に表現したいことがあるなら多少の批判は受け入れて放送すればいいと思う。賛同する視聴者もたくさんいるだろう。時代に合わなくなった自分の芸を自覚せず、コンプライアンスのせいにしているのは見苦しい。

青少年に関する意見

【「表現・演出」に関する意見】

  • バラエティー番組で、男性芸人の体の大事なところにドッジボールを投げて、わざと当てるドッキリをやっていた。これはけがをするし、大変な痛みだろう。何より子どもがまねたら大変なことになると思う。

  • バラエティー番組の罰ゲームで、男性芸人を4歳の子どもたちが取り囲んで、たたいたり蹴ったりするものがあった。演出する大人が子どもたちに指示して暴力を振るわせるのは心理的な虐待だろう。やめてもらいたい。

  • 子ども向け特撮ドラマで、出演者がほかの出演者に向けて消火器を噴射していたが、子どもがまねをしたら危険ではないのか。

  • バラエティー番組のドッキリ企画で、女性芸人の30歳の誕生日を祝うと称して、背後から大声で急に「コラッ」と叫ぶことを合計30回続けた。リラックスした状態や食事中にも怒鳴っていて、本人は「食べているものが一瞬、のどに張り付いた」という。かなり危険な行為で、子どもがまねしたら窒息につながりかねない。

【「いじめ・虐待」に関する意見】

  • 偽の刑事ドラマ撮影で男性芸人に、共演する大御所俳優の前で5回連続してNGを出させるドッキリがあった。仕掛けた側は成功するたびに喜んでいたが、ゴールデン帯の番組で子どもが見ているので、いじめを助長するのではないか。

  • このドッキリは超音波を使ってにせの合図を男性芸人だけに送り、5回も誤って池に飛び込ませたもの。本人が憔悴するまで追い詰める内容はいじめそのものであり、非常に不快極まりない。「ここまで人を追い詰めて笑ってもよいのだ」と考える若者や子どもが出てしまうことが懸念される。

【「性的表現」に関する意見】

  • 人気女性俳優が主演する連続ドラマで、男性俳優とのかなり濃厚なラブシーンがあった。夜10時台の放送なので中高生も見ている。彼らには、刺激が強すぎるのではないか。

【「言葉」に関する意見】

  • クイズバラエティー番組で出演者が、「歩く辞書」という本来、ほめ言葉についてばかにした発言をした。知識を提供する番組が「歩く辞書」をばかにするのはよくない。若い人が「歩く辞書」を格好の悪いものだと誤解してしまう。

第251回 放送と青少年に関する委員会

第251回-2022年11月

中高生モニターからのリポートについて…など

2022年11月22日、第251回青少年委員会を千代田放送会館会議室で開催し、榊原洋一委員長をはじめ8人の委員全員が出席しました。うち2人はオンラインによる出席でした。
10月後半から11月前半までの1か月の間に寄せられた視聴者意見には、子ども向け特撮ドラマについて「警察の留置場で主人公がけんかするなど、こんなにひどい正義のヒーローは見たことない」「ラーメンを手づかみで食べるなど、食べ物を粗末に扱う行為がある」などがありました。
11月の中高生モニターリポートのテーマは、「最近聴いたラジオ番組について」でした。
深夜の人気長寿番組について多くの報告があり、「親近感が持てて、とても聴きやすかった」などの好意的な意見がありました。
委員会ではこれらの視聴者意見やモニターリポートについて議論しました。
また岡山・高松地区の放送局との意見交換会や中高生モニター会議の開催について、事務局から報告がありました。
最後に今後の予定について話し合いました。

議事の詳細

日時
2022年11月22日(火)午後4時30分~午後6時30分
場所
千代田放送会館会議室
議題
視聴者からの意見について
中高生モニター報告について
岡山・高松地区の放送局との意見交換会について
中高生モニター会議の開催について
今後の予定について
出席者
榊原洋一委員長、緑川由香副委員長、飯田豊委員、佐々木輝美委員、山縣文治委員、吉永みち子委員
オンライン出席:沢井佳子委員、髙橋聡美委員

視聴者からの意見について

10月後半から11月前半までの1か月の間に寄せられた視聴者意見について担当委員から報告がありました。
子ども向け特撮ドラマに対して視聴者から、「警察の留置場で主人公がけんかするなど、こんなひどい正義のヒーローは見たことない」「ピーナッツは誤嚥の危険性があるのに、飛ばして口でキャッチするゲームのシーンがある」「ラーメンを手づかみで食べるなど、食べ物を粗末に扱う行為がある」などの意見が寄せられました。
担当委員から、「けんかは留置場での言い争いで、ピーナッツを飛ばすのも、よくある遊びのひとつだと思う。手づかみでラーメンを食べたのは、人格を乗っ取られた状態での行為を表わしたもので、表現や演出の範囲内だろう」として「いずれも問題ない」と報告がありました。
バラエティー番組のドッキリ企画で、男性芸人を背後から動けないようにして、彼の股間にドッジボールを投げて当てたことに視聴者から、「体の大事なところに故意に球を当てて笑いをとるのはいかがなものか。笑えれば暴力が許されるのか」などの意見がありました。担当委員は「見ていて気持ちのよい映像ではないが、いままでもあった演出なのでは」との見方を示しました。
また、深夜帯のアニメで残虐なシーンや性的なシーンが見られることに視聴者から意見が寄せられたことについて別の委員から、「制作者側が放送時間帯を遅くしており、(子どもや青少年が視聴しにくいよう)それなりの配慮をしているといえるのではないか」、「テレビ局は時間帯に配慮し、つぎの段階として、家庭ではルールを作って子どもにテレビ視聴させるという方向を進めてもらうのがよい」という意見が出されました。
その他に、大きな議論はなく「討論」に進むものはありませんでした。

中高生モニター報告について

11月のテーマは「最近聴いたラジオ番組について」で、全部で15番組への報告がありました。このうち複数のモニターが取り上げたのはいずれもニッポン放送の番組で、『オールナイトニッポン』と『SixTONESのオールナイトニッポンサタデースペシャル』にそれぞれ3人が、『オールナイトニッポン0』に2人が感想を寄せています。聴き方はリアルタイムが5人で、そのほかはタイムフリーアプリなどを利用していました。
「自由記述」では、普段あまりラジオを聴かないというモニターから「テレビにはない良さを発見した」「親近感があり新鮮だった」などの声が多く寄せられました。
「青少年へのおすすめ番組」では、『チコちゃんに叱られる!』(NHK総合)を6人が、『ニンチド調査ショー』(テレビ朝日)と『太田光のつぶやき英語』(NHK Eテレ)をそれぞれ3人が取り上げています。

◆モニター報告より◆

【最近聴いたラジオ番組について】

  • 『世界の快適音楽セレクション』(NHK FM)
    両親がラジオ好きなので家や車の中でよくラジオは流れているけれど、自分では全くと言っていいほど聴かないのですすめられた番組を聴いてみた。流れてきたのはどれも聴いたことのなかった曲で、J-POPからジャズ、民族系の音楽とジャンルも幅広く、とても面白かった。今はスマホが普及して音楽ストリーミングサービスで音楽を楽しむことができる。でも、それでは新たなジャンルの音楽と出会ったり、普段聴かない音楽を聴いて改めて自分の“好き”を再確認したりする機会はとても少なくなってしまうのかなと思った。音楽ストリーミングサービスが当たり前な今だからこそ、ラジオはとても新鮮に思えるし面白いものだと思った。きっと同年代の人たちも同じように感じる人は少なくないと思ったので、学校の友達にもラジオについて話してみようと思った。(高校2年・女子・埼玉)

  • 『ヒコロヒーのオールナイトニッポン0』(ニッポン放送)
    この番組の良かった点として第一に挙げられるのは、ヒコロヒーさんのしゃべり方の良さだと思いました。彼女の声質はとても低く落ち着いていて、しゃべりのテンポは少し早めの小気味よい速さで、聴いていてとても落ち着く良いしゃべりだなと思いました。近年ラジオは人気が少し復調してきたと聞いたことがありますが、依然、私の周りでは日常的に聴いている人は少なく、地元のラジオ局の名前を知らないという人もいます。深夜ラジオはよく怖いという印象を聞くこともあります。より若手の芸人さんなどを起用して若者のリスナーが増えるといいと思います。(高校1年・男子・愛知)

  • 『朝井リョウと加藤千恵のオールナイトニッポン0』(ニッポン放送)
    胃腸の弱い朝井さんと純粋キャラの加藤さん。6年前の放送が蘇るようなスタートに、復活ラジオの面白さを感じた。人として分かると共感してしまうような、クリエイターだからこそ話せる話ばかりで面白かった。人間くさい飾らない部分が2人のトークには詰まっていた。(高校3年・男子・千葉)

  • 『ミルクボーイの火曜日やないか!』(ABCラジオ)
    パーソナリティとリスナーの距離がかなり近い印象を最初に受けました。普段、動画ばかりを見ているのですが、ラジオはラジオなりの魅力があると思いました。ミルクボーイがリスナーからのコメントを拾い、そこからいろんなお話を展開する構成でした。そこでの話の広げ方が本当にリスナーとミルクボーイが会話をしているようなやりとりで、とても親近感が湧きました。ミルクボーイをテレビとネットでしか見たことがなく、漫才をしたり他の芸人の方とトークをしたりしているイメージしかなかったので、ある意味“ミルクボーイ”とは別の、“駒場さんと内海さんの人間味”を感じられたと思います。久しぶりに人の作ったコンテンツで親近感を覚える不思議な感覚になったので、今後もradikoなどでラジオを聴いていきたいと思います。(高校1年・男子・兵庫)

  • 『クリエイターズ・スタジオ with ボカコレ』(エフエム山形)
    普段からよく聴いている番組なのですが、月曜から木曜まで個性豊かなパーソナリティで、飽きずにとても楽しめる番組だと思います。ボーカロイドを重視しているのですが、あまりボカロ曲を聴かない自分にもとても聴きやすく、工夫されていると思います。流す曲はボカロ中心なのですが、ボカロに関係のないコーナーも多く、どの世代でも聴きやすいです。(中学1年・男子・山形)

  • 『安住紳一郎の日曜天国』(TBSラジオ)
    テレビにはないラジオの良さを発見することができました。映像がない分、人の声に注目し、感情やその場の雰囲気を注意深く読み取ることができる。リスナーからのメッセージについてのトークが多く、親近感を得ることができる。そして、テレビであまり取り上げられないマイナーな情報もニュースもいいとこ取りで聴くことができることです。(中学1年・千葉・女子)

  • 『オードリーのオールナイトニッポン』(ニッポン放送)
    • オードリーの2人のトーク力のすごさを改めて感じる番組だと思います。2時間あるのですが、2人のトークは毎週ひたすら聴いていても全く飽きないです。深夜ラジオ独特の、深夜だからこそ笑えるというようなテンションが色濃く出ていてとても好きです。他の曜日のオールナイトニッポンもよく聴くのですが、パーソナリティによってコーナーやお便りの感じも全く違い、どの曜日の番組もとても楽しみにしています。(高校2年・女子・広島)
    • オードリーの2人がひたすら話していて面白かったです。普段、ボケ役が春日さんでツッコミ役が若林さんなのですが、ラジオでは役割が逆になっているところが新鮮で面白いです。テレビでは話さないようなマネージャーの話だったり最近の趣味や家族の話だったりと、プライベートな話を聴くことができてよかったです。(高校2年・男子・福岡)
  • 『星野源のオールナイトニッポン』(ニッポン放送)
    あまりラジオを聴く習慣がなくて家にもラジオがなく、今はアプリ等でスマホで聴くことはできますが、なかなか聴くタイミングがありませんでした。いざ聴いてみると、むしろテレビよりも近い距離感でびっくりしました。他愛のない話やおすすめ映画の話を聴いたりと、どこか友達のような感覚でとても聴きやすかったです。今回は選んで聴きましたが、流したままにして聴いてみるのも楽しそうだなと思いました。またラジオを聴いてみたいです。(中学3年・女子・群馬)

  • 『クリープパイプ 尾崎世界観 声にしがみついて』(エフエム山形)
    レポートを書くにあたって初めて聴いたのですが、番組の雰囲気がゆるく、トークが面白かったのでこれからも聴こうと思います。放送時間が30分と短めで聴きやすかったです。「芸能人だとこういうところで困る」というエピソードでは、意外なところで支障が出ていることに驚きました。(中学2年・山形・女子)

  • 『宮下草薙の15分』(文化放送)
    ラジオをしっかり聴くのは初めてだったので少し抵抗感がありましたが、いざ聴いてみると音声だけというのは想像をするのでテレビとは違う楽しみ方ができました。宮下さんと草薙さんの会話に間がないので飽きもこなかったです。(中学2年・女子・東京)

  • 『中学生の基礎英語 レベル2』(NHKラジオ第2、NHK FM)
    この番組はいくつものコーナーに分けて確実に表現をマスターできるように構成されていると思う。1日15分ずつという短くても充実した時間で英語を学べるのでとてもよい。出演者の方の発音もすごく聞き取りやすく、1日ごとに変わるストーリーは設定が細かくて場面の情景や雰囲気までがしっかりと読み取れる。楽しみながら確実に英語表現を習得できる効率的なこの番組をこれからも聴き続けたいと思う。(中学2年・鹿児島・女子)

  • 『JET STREAM』(エフエム東京)
    福山さんの語りや選曲が深夜にぴったりだと思いました。「作家が描く世界への旅」というエッセイを福山さんが朗読し、その内容に関係する音楽を流すコーナーがあるのですが、個人的には朗読ではなく番組オリジナルの語り(その土地を旅する内容)のほうがタイムリーな上に「旅している」イメージが強く湧くような気がします。例えば、世界各地の絶景を収めた写真集や旅行記を、文字と写真ではなく声と音楽で表現している、そんな番組になってほしいと思います。(高校1年・男子・滋賀)

  • 『yamaman presents MUSIC SaLaD』(ベイエフエム)
    2年半ほど聴き続けているが、リスナーの世代が幅広い番組だと思う。昼12時から1時間という聴きやすさからか、メッセージテーマがいつもフリーだからなのか、祝日になると10代からのメールがたくさん寄せられる。「ひとことメッセージ」のようなDJとリスナーを近づける内容が、さまざまな世代に愛される理由だと思った。(高校1年・男子・東京)

  • 『HiHiJetsのラジオだじぇっつ!』(InterFM897)
    グループの平均年齢が20歳と普段話す機会がない年代のため、自分の世界観が広がることが番組の魅力です。語彙力豊かなメンバーが、言葉にできない想いを代わりに言葉にしてくれるため、一人でイライラするよりも効果的なストレス発散方法です。ペアが変わると同じコーナーでも雰囲気や流れている空気感が変化します。価値観や面白いと感じるポイントが自分と同じ人を探すのも楽しみです。ジャニーズ内の曲に限らずメンバーが好きな曲が流れるところも魅力です。このコーナーで紹介されて大好きな曲になったものも数多くあります。この番組は私だけでなく母も楽しく聴いています。年代、性別関係なく、これから伝説になるHiHi Jetsの初冠ラジオ番組が多くの人に届くことを願います。(高校2年・女子・千葉)

  • 『飯田浩司のOK! CoZy up!』(ニッポン放送)
    ラジオに関してはあまり頻繁に聴く訳ではないが、このラジオ番組は父親の影響もあり、少なくない頻度で聴いている。印象としては、ラジオならではで、比較的制約のない中、出演者が気軽に意見を話している。一方その弊害として番組内で偏った意見が多くなりやすくなっている印象も受ける。この番組もゲストは保守色が強いコメンテーターがほとんどである。そうなると当然番組内で扱われる話題にも偏りが生まれる訳であり、そこがラジオの欠点なのかもしれないと考える。(高校3年・男子・東京)

  • 『鈴木愛理のEasy To Smile』(エフエム岩手)
    モデルとして活躍している姿、歌って踊っているアーティストとしての姿が印象的な方でした。ラジオでしゃべっている姿は想像ができなくて、こんなに明るくてポジティブな方なんだなと驚いたし、女友達と話しているような感覚になりました。いつもラジオの最後にする深呼吸の時間と「たくさん笑えますように」というおまじないのような言葉が、笑っている姿が素敵な彼女を表しているようで好きな部分です。(高校2年・女子・岩手)

  • 『SixTONESのオールナイトニッポン サタデースペシャル』(ニッポン放送)
    • 音声しか聞こえないラジオで「シガーボックス」にチャレンジするという企画は前代未聞でしたが、後日インスタグラムのストーリーで実際に「シガーボックス」にチャレンジしていた1回目の挑戦の姿を見ることができたので、映像がないと伝わらない部分も解決されていたように思います。様々なSNSを活用しながら楽しめるという面では、今回の企画はとても面白かったです。私はSixTONESの音楽やメンバーの皆さんの唯一無二の関係性に魅了されたファンでもあるので、SixTONESの音楽もメンバーの皆さんの軽やかな会話も楽しむことができるラジオをこれからも楽しみにしています。リアルタイムで聴くことがラジオ番組の醍醐味であることはもちろんですが、アーカイブで聴いても楽しめる番組という作り方も、新たな、ひとつのラジオの形として良いのではないかと思いました。(高校2年・女子・東京)
    • シングル発売とかけた企画が意外と共感できた。話の内容の濃さとスピード感が聴く人を飽きさせないのだと思った。くだけている感じが深夜ラジオという感じで、聴いていてとても楽しい気持ちになった。近況を話してくれるので、メンバーが近くにいるように感じた。(中学2年・女子・山形)

【自由記述】

  • 聴いてみてラジオの良さを改めて認識することができました。映像がないので作業の片手間に聴くことができたり生放送の番組が多かったりと、テレビにはない良さを持っているなと思いました。(高校2年・女子・広島)

  • ラジオ初心者のためお門違いかもしれないのですが、完全にラジオ(放送)の様子が見えないのは少し寂しいので、YouTubeやニコニコ動画などでその様子を見せてほしいなと思いました。(中学2年・女子・東京)

  • 最近の番組はドッキリや罰ゲームなどの内容が少なく、全体的にマイルドな企画が増えていると感じます。ただ、それでテレビの面白さが失われてしまうと意味がないので、新しい楽しさがあればいいいと思います。(中学1年・男子・山形)

  • 拷問や残虐な殺人、尺の長い暴力シーンがある場合は、視聴者が事前に「視聴しない判断」ができるようにするべきだと思います。放送前にテロップをいれたり、番組の概要を紹介する文章の中に注意喚起の文言を入れたりする配慮があるとより安心して視聴することができるのではないでしょうか。(高校2年・女子・東京)

  • ハロウィーンの報道の中で、記者が顔などの外見のみで「外国人」と断定しているような様子が見受けられました。日本での多民族への排他性や人種差別を問題視する報道をするのであれば、こうした表現は分断を起こすのみで不適切だと思います。(高校1年・男子・埼玉)

【青少年へのおすすめ番組】

  • 『世界は教科書でできている』(NHK総合)
    学校の教科書に載っていることや習ったことを身の回りに生かせるようになっていて、とても良い番組だと思いました。(中学1年・男子・岩手)

  • 『ニンチド調査ショー』(テレビ朝日)
    • 知らなかった昭和や平成の常識を知ることができて、とても勉強になりました。昔の常識や今昔比べなどが多かったので、もっと専門的なランキングや調査もしてほしいです。(中学1年・男子・山形)
    • 最近見た中で最も夢中になった番組です。普段、周りの大人に理解してもらえないことや、自分が周りの大人を理解できずにもやもやしていることを楽しくデータで紹介していて、ギスギスしがちな世代間ギャップを理解するきっかけになりそうだと思いました。(高校1年・男子・兵庫)
    • 家族で一緒に楽しむことができました。母の若い頃の話やエピソードを聞くきっかけにもなりました。今は「Z世代」などと若者だけを括って取り上げることが多いですが、両親が生きてきた時代がどんな時代だったのかを知り、今の時代とのギャップがどれほど大きいのかを知ること、家族でこの番組を視聴して世代間のギャップを少しでも埋めることは、これからいろいろな世代と触れ合うことになる10代の学生にとってとても大切だと思います。(高校2年・女子・東京)
  • 太田光のつぶやき英語』(NHK Eテレ)
    この番組の強みは、私たちのような中高生が国際的な時事問題を太田光さんのコミカルな会話や番組中の洗練されたBGM、SNSを多用した分かりやすい解説によって肩肘張らずに学べる点にあると思います。気になった点としては、番組中に説明される英単語に専門的なものも多く、中高生が英語を学ぶ上ではレベルが高すぎるものがあるのではと思った点です。(高校1年・男子・愛知)

  • 『ボクらの時代』(フジテレビ)
    映画の原作者と出演している俳優がしっかり話しているのがすごく新鮮でした。私がよく見るような座談会などの番組は大体進行の方がいますが、この番組にはいないので、ある程度テーマはありますが自由に話されている感じも新鮮で面白かったです。(中学3年・女子・群馬)

  • 『チコちゃんに叱られる!』(NHK 総合)
    身近にあるものの意外な秘密に驚かされています。知らなかったものの意外な正体やなぜそうなのかという理由が分かるのはもちろん、VTRやゲストの会話がとても面白くてよい番組なので、ご長寿番組になればいいなと思います。(中学2年・女子・山形)

◆委員のコメント◆

【最近聴いたラジオ番組について】

  • ラジオの放送中の様子を動画で見てみたいという感想があったが、この世代の人たちはやはり映像を見たい世代なのかなという印象を持った。

  • ラジオは身近に感じられるというモニターが多いが、パーソナリティとリスナーとの間の相互的なメッセージのやりとりが、そうした親近感を生むのだろうと思う。

  • 若い世代の人たちは、動画サイトの切り抜きやSNSをセットで見ながらといような、私たちが考えている音声トークだけのラジオとは違った楽しみ方をしているのだろうと思った。

  • ジャニーズファンのリスナーは、ラジオで彼らの話を聴くことでより親近感を覚えているようで、テレビで見るのとは違う距離感を楽しんでいるのだろう。

  • ラジオ番組への感想を尋ねると、パーソナリティへの共感や感想、テレビと比較した媒体の評価になりがちなところがある。パーソナリティが身近に感じられるだけに、その背景にある番組の構成や番組がどう作られているかを想像しにくいのかもしれないと思った。

  • ストリーミングサービスだと好きなものしかお薦めされないという意見があったが、最近は大学生もそうしたテーマを研究する人が多く、同じような気づきをモニターが持っているのは興味深い。ラジオ番組の制作者は、まさしくこうした気づきを若い人に持ってもらいたいのだと思う。各ラジオ放送局は学校への出前授業などに力を入れており、必ずしもラジオが身近でない若者にどうやって気づきを持ってもらうかが、ラジオの大きな課題だと思う。

  • 親からすすめられた番組を聴いたというモニターが目立つが、親の影響はかなり大きいと感じた。ラジオほどではないがテレビにもその傾向はあり、テレビの将来をも予見しているのかもしれないと思った。

【自由記述について】

  • ニュースについて、外見だけで外国人と断定するのはどうかという意見があったが、確かに一見しただけで外国人などと言ってしまうこともあり、自分の反省を込めて考えさせられる指摘だった。

岡山・高松地区の放送局との意見交換会について

岡山・高松地区の放送局との意見交換会について、当日話し合うテーマの候補について検討しました。

中高生モニター会議について

中高生モニター会議を今年度内にオンラインで開催することが事務局から報告されました。

今後の予定について

次回は、12月19日(月)に定例委員会を開催します。

以上

第177回 放送倫理検証委員会

第177回–2022年11月

10月に寄せられた視聴者意見を議論

第177回放送倫理検証委員会は11月11日に千代田放送会館で開催され、10月にBPOに寄せられた視聴者意見などが報告され議論を行った。

議事の詳細

日時
2022年11月11日(金)午後5時~午後7時
場所
千代田放送会館
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、
大石委員、大村委員、長嶋委員、西土委員、米倉委員

1. 10月に寄せられた視聴者意見を議論

民放局の報道情報番組に出演するコメンテーターが、安倍晋三元首相の国葬について大手広告代理店が関与したという趣旨の事実でない発言をしたことに対する当該放送局の対応、および他の民放局の報道番組が、同氏への「デジタル献花」に旧統一教会が影響している可能性を報じたことに多数の意見が寄せられたことを事務局が報告し、議論したが、討議に入るべき事案にはあたらないとの意見が大勢を占めた。

以上

第310回放送と人権等権利に関する委員会

第310回 – 2022年11月

「ローカル深夜番組女性出演者からの申立て」審理…など

議事の詳細

日時
2022年11月15日(火)午後4時~午後9時15分
場所
千代田放送会館会議室
議題
出席者
曽我部委員長、鈴木委員長代行、二関委員長代行、國森委員、斉藤委員、
野村委員、丹羽委員、廣田委員、松田委員、水野委員

1.「ペットサロン経営者からの申立て」審理

日本テレビは、2021年1月28日午前8時からの『スッキリ』で、「独自 愛犬急死 “押さえつけシャンプー” ペットサロン従業員ら証言」とサイドスーパーを出しながら、ペットサロンに預けられていたシェパード犬がシャンプー後に死亡した問題を放送した。放送は、犬の飼い主やペットサロン従業員など複数の関係者の証言を基に構成されていた。
この放送に対して、ペットサロン経営者の申立人は、「同番組内で申立人が、お客さんから預かっていた犬を虐待して死亡させたなどと、虚偽の事実」を放送したと主張し、「字幕付きの放送をしたことで、申立人が預かっていた犬を虐待死させたかのように印象付け、事実に反する放送をすることで申立人の名誉を侵害した」として、BPO放送人権委員会に申し立てた。
これに対して日本テレビは、放送内容は真実であり、また「当社は事前に十分な取材を行っており、真実であると信じるにつき相当な理由」があり、「私たちの取材・放送によって人権と名誉が侵害されたという申立人の主張はいずれも根拠が無く、受け入れられません」と反論している。
今回の委員会では、修正された決定文草案について各委員が意見を述べ、白熱した議論が展開された。次回委員会でさらに文案を練り検討していくことになった。

2.「ローカル深夜番組女性出演者からの申立て」審理

申立ての対象となったのは、あいテレビ(愛媛県)が2022年3月まで放送していた深夜のローカルバラエティー番組『鶴ツル』。この番組は男性タレント、愛媛県在住の住職とフリーアナウンサーである申立人の3人を出演者として、2016年4月に放送が開始された。3人が飲酒しながらトークを行う番組だが、申立人が、番組中での他の出演者からの度重なるセクハラ発言などによって精神的な苦痛を受けたとして申し立てた。
申立書によると、番組開始当初から苦痛、改善を訴えていたにもかかわらず、放送された他の出演者のトークが、申立人自身に対するものも含めてしばしば性的な内容に関することに及んで申立人に羞恥心を抱かせることで、また、そのような内容の番組の放送によって申立人のイメージが損なわれたことで、人権侵害を受け、放送倫理上の問題が生じたと主張している。
被申立人のあいテレビは、申立人は番組の趣旨を十分に理解した上で出演しており、申立人からの苦情も2021年11月が初めてで、また、番組の内容も社会通念上相当な範囲を逸脱しておらず、人権侵害や放送倫理上の問題はない、と主張している。
今回の委員会では、厚労省指針や裁判例からハラスメント認定方法を委員会として情報共有した上で、審理の進め方や判断方法についての基本的な考え方を議論した。

3.「判断ガイド2023」進捗状況報告

来年発行予定の「判断ガイド2023」について事務局から進捗状況を報告した。

4. 最新申立て状況

事務局から最新の申立て状況を報告した。

5. その他

12月に札幌で開催される意見交換会の進行など細かい点について、事務局から説明した。

以上

2022年10月に視聴者から寄せられた意見

2022年10月に視聴者から寄せられた意見

国葬についての情報番組コメンテーターの発言、元首相へのデジタル献花と統一教会の関係についての報道番組の伝え方、ドラマでの残酷な"拷問"の描写などに多くの意見が寄せられました。

2022年10月にBPOに寄せられた意見は2,029件で、先月から162件増加しました。
意見のアクセス方法の割合は、メール82%、電話16%、郵便1%、FAX1%。
男女別は男性45%、女性17%で、世代別では40歳代27%、30歳代22%、50歳代20%、60歳以上16%、20歳代10%、10歳代1%。
視聴者の意見や苦情のうち、特定の番組や放送事業者に対するものは各事業者に送付、10月の送付件数は988件、43事業者でした。
また、それ以外の放送全般への意見の中から19件を選び、その抜粋をNHKと日本民間放送連盟の全ての会員社に送りました。

意見概要

番組全般にわたる意見

9月に引き続いて、元首相の国葬についての情報番組コメンテーターの発言に関して多くの意見が寄せられました。また、元首相へのデジタル献花に旧統一教会が関与しているかのような報道番組の報じ方についての疑問の声もありました。ドラマの"拷問"の描写が残酷という意見も目立ちました。
ラジオに関する意見は26件、CMについては16件でした。

青少年に関する意見

10月中に青少年委員会に寄せられた意見は123件で、前月から61件増加しました。
今月は「暴力・殺人・残虐シーン」が51件、「性的表現」が33件、それに「表現・演出」が19件と続きました。

意見抜粋

番組全般

【報道・情報】

  • 国葬についての情報番組コメンテーターの発言に関して。メディアは公人の失言は厳しく批判しておきながら、身内の場合は処分が甘く納得しがたい。コメンテーターも公人ではないのか。

  • 問題視すべきは「政治的意図がにおわないように制作者としては考える」という部分。制作者が政治的意図を持って制作することが日常的に行われているのではないのか。放送法違反ではないのか。

  • このコメンテーターの歯切れ良い公平かつ平等なコメントが大好きで毎朝楽しみにしていた。間違ったコメントは残念だったが、放送での謝罪と反省コメントは立派だったと思う。

  • 元首相へのデジタル献花を特集した報道番組で、あたかも、旧統一教会が組織的にデジタル献花に関わっているかのような見出しテロップが出ていたが、最終的には「関係は確認できない」という内容だった。であればそもそも報じる必要がなかったのではないか。

  • ソウルの群集事故で亡くなった方の出身地などの情報を報じ、さらに遺族にも取材。遺族の気持ちを考えるといたたまれない。また、放送を見てしまったことで自分までもがそうした行為に加担してしまったようで、非常に心苦しい。

  • 情報番組で夫婦間のモラハラ問題を特集していたが、夫によるモラハラにばかり焦点が当てられ、偏っているように感じた。妻によるモラハラや子どもの"連れ去り"があることについても伝えるなど、バランスに配慮してほしかった。

  • 報道番組が、地元・静岡県の台風被害のフェイク画像を作成してインターネットに投稿した人物のインタビューを放送した。出演者は「悪意のないケース」とコメント。AIを用いたフェイク画像の作り方を実演して紹介し、模倣犯への意識が低いように見受けられる。熊本地震の際にデマを拡散した人物が逮捕されたケースなどに触れることもなし。なぜこれを企画して放送したのか理解に苦しむ。

  • 納骨堂の経営破綻のニュースが各局で大きく扱われたことで、無関係の自分の会社に不安になった顧客らからの問合せが続いて業務に支障をきたしている。室内墓の経営・管理に関わる寺や会社は少なくない。他社がとばっちりを受けないように、また顧客らが余計な心配をしなくて済むように、今回のケースはその特異性を説明しつつ伝えるべきだったと思う。

  • マイナンバーカードへの一本化に反対している人についてコメンテーターが「所得隠しとかやましいことがある人」などと決めつけていて、発言が偏っていると感じた。証明写真を撮りに行ったり暗証番号を更新したりなど、数年ごとに必要な手続きが難しい病人、高齢者、認知症の人たちのことも理解すべき。

  • たまたま地元のラジオ番組で聞いた"育児特集"。リスナーから寄せられた悩みについて専門家とパーソナリティーが考え提言するという趣旨で、私も深く考えさせられる内容だった。なるべく多くのリスナーの声を聞くという姿勢もうかがわれ、地元びいきかもしれないが地域に寄り添った内容で「こころ」が温かくなった。

【バラエティー・教養】

  • 北関東から東北地方で広く食べられている、生の味噌を塗ったおにぎりを番組で取り上げた際に、「気持ちわるい」「食べたくない」などという否定的なインタビューやコメントが紹介され、スタジオの出演者によるフォローも不十分だったと感じた。故郷の食文化を否定されたようで悲しい気持ちになった。

  • 番組内のDIY企画で、崖上の家のベランダのフェンス際に収納付きのベンチを設置した。子どもがベンチに立って転落するおそれがあり、とても危険だと思った。テレビ番組ではむしろ事故を防ぐためにフェンスのそばに足がかりとなる物を置かないよう呼びかけるべきだと思う。

  • 大食い番組には呆れる。食べるものに困っている人がいて、子ども食堂を開いて応援している人もいる。食べ物をムダ食いしていばれる時代だと思っているのか。大食いは芸なのか。

【ドラマ】

  • 残虐な"拷問"シーンを放送するのであれば、注意喚起のテロップなどで事前に告知して、子どもや見たくない人への衝撃を回避すべきだ。

  • 私は中途失聴者。ドラマで描かれている中途失聴者のケースであれば全く歪みのない発音で普通に話せるはず。中途失聴者は明瞭な発音で話せるため「本当は聞こえているのでは」などと誤解され、サポートを得られにくい。このドラマは現実の中途失聴者の生きにくさにつながる誤解を広げている。

【その他】

  • 深夜アニメで銃による大量殺人のシーンをアップテンポの曲に合わせてショーのように描いていた。殺す側、殺される側ともダンスを踊っているかのように動き、大勢が血を吹き出しながら死んでいく。人の死を軽視した演出は、多くの人間が見るテレビというメディアには合わないと思う。

  • CMになると急にテレビの音量が上がるので慌ててリモコンを操作する。CMが終わり番組になると音量が下がり聞きづらくなる。1時間に何度も音量を上げ下げしなければならず煩わしい。何とか改善できないだろうか。

  • いまだに、「結果はCMのあとで」というような昔ながらの演出手法が使われている。こうした手法に対して若い人は「テレビはかったるい時代遅れのメディア」という印象を抱くのではないだろうか。制作者の発想が古き良き時代のままで、時代に合っていないように感じる。

青少年に関する意見

【「暴力・殺人・残虐シーン」に関する意見】

  • 平日夜10時から放送の男性アイドルグループのメンバーが主役のサスペンスドラマは、内容がグロテスクで子どもには見せたくない。正直、気分の悪くなるドラマだ。描写がとても見ていられない。

  • このサスペンスドラマは番組冒頭から残虐なシーンが出てきて、その後も何度か残虐な拷問シーンがあり、見ていられなかった。子どもに見せられるものではないし、模倣犯が出たり、犯罪につながったりしてしまうのではないか心配だ。

  • このサスペンスドラマには損壊された遺体のシーンが登場する。残忍な拷問によって惨殺された遺体の損壊部分をはっきりと表現していて、大人の私が見ても吐き気を催す描写だった。主役である男性アイドルのファンたちなど青少年が見た場合、心的外傷を受けるレベルといってもいいだろう。

【「性的表現」に関する意見】

  • 女性高校教師が男子生徒に言い寄るシーンがある連続ドラマで、この生徒役の俳優の実年齢が17歳であるのに濡れ場を想起させるシーンが撮影されていた。未成年者を撮影することに配慮がまったく見られない印象だ。現実と虚構の区別をつけ、現実で問題となる行為は慎むべきだと思う。

  • 連続ドラマで主役の少年と女性高校教師のベッドシーンがあった。そのシーン自体に問題となる描写はなかったが、少年役の俳優は未成年で、このようなシーンのある作品に起用するドラマ制作会社や放送局には放送倫理上の問題があると思う。

  • 深夜のアニメ番組で、モザイクがかけられているが、女性登場人物が性的にいたぶられているシーンを放送していた。深夜なら何を流してもよいというのだろうか。青少年に非常に有害な番組だ。

【「表現・演出」に関する意見】

  • 日曜日のバラエティー番組を子どもと楽しく見ていたら、サンタクロースの正体をバラしていた。夜中で幼い子どもが寝ている時間帯ならわかるが、クリスマスやサンタについては世界中の大人がデリケートに話しているものだ。配慮に欠けているのではないか。

  • ヒーローものの特撮ドラマで、主人公たちが犯罪を起こして警察に捕まったり、独房でけんかしたりしていた。こんなひどい正義の味方は見たことがない。こんなヒーローが子どもたちに受けているのだろうか。ふざけすぎで不愉快だ。

第250回 放送と青少年に関する委員会

第250回-2022年10月

視聴者からの意見について…など

2022年10月25日、第250回青少年委員会を千代田放送会館会議室で開催し、榊原洋一委員長をはじめ8人の委員全員が出席しました。
9月前半から10月中旬までの1か月半の間に寄せられた視聴者意見には、男性アイドルグループのメンバーが主役のサスペンスドラマについて、「内容がグロテスクで子どもには見せたくない」「残酷なシーンを想像させ、見ていて不愉快だ」などがありました。
中高生モニターリポートは9月と10月の2か月分を扱いました。
9月のテーマは「今年4月から9月までで最も印象に残った番組について」で、記者が主役の報道バラエティー番組に「ニュースの取材をする記者に焦点を当てた新しい形のバラエティーだと思いました」などの報告がありました。
10月のテーマは「最近見たドラマについて」で、音のない世界で再会した男女が織りなす切なくも温かいラブストーリーのドラマを6人の中高生モニターが取り上げ、「メッセージ性のあるドラマだ」「“音”へのこだわりが感じられた」などの感想が寄せられました
委員会ではこれらの視聴者意見やモニターリポートについて議論しました。
また岡山・高松地区の放送局との意見交換会開催予定について、事務局から経過報告がありました。
最後に今後の予定について話し合いました。

議事の詳細

日時
2022年10月25日(火)午後4時30分~午後6時45分
場所
千代田放送会館会議室
議題
視聴者からの意見について
中高生モニター報告について
岡山・高松地区の放送局との意見交換会について
今後の予定について
出席者
榊原洋一委員長、緑川由香副委員長、飯田豊委員、佐々木輝美委員、
沢井佳子委員、髙橋聡美委員、山縣文治委員、吉永みち子委員

視聴者からの意見について

9月前半から10月中旬までの1か月半の間に寄せられた視聴者意見について担当委員から報告がありました。
男性アイドルグループのメンバーが主役のサスペンスドラマに対して視聴者から、「内容がグロテスクで子どもには見せたくない。気分の悪くなるドラマだ」「残酷なシーンを想像させるところが多くあり、見ていて不愉快だし、犯罪を誘発や挑発させるドラマのように思う」などの厳しい意見が寄せられました。
これについて担当委員から「初回放送の開始直後に、下着姿の女性が椅子にくくりつけられて脅かされ、拷問の恐怖におののく場面が1分ぐらい続いた。猟奇殺人がテーマなので、演出家からすると猟奇性とか怪奇性を出すための手法ということだと思う。カメラワークやライトの使い方も同様で、恐ろしさを誇示するような効果をもたらしている」と報告がありました。
別の委員からは「これを嫌だと思う人がたくさんいるが、好きな人もいるわけで、いろいろな受け止め方があってもいいのではないかなという気がする」という意見や、「拷問のシーンの表現は恐怖感を掻き立てる間接的な手法によっており、また、猟奇的な殺人を肯定的に描いているのではなく、そのシーンに関わっていく主人公の心の動きや苦しさなどの原因のひとつとしての位置づけとなっていることなどを考えると、ただちに問題性を指摘するところまではいかないのではないかと思う」という意見が出されました。
また、別の連続ドラマについて視聴者から、「17歳の男性俳優が成人女優との性行為を思わせるシーンを撮影されている。未成年である17歳には不適切な内容ではないか」「児童ポルノに該当するのではないか、未成年に対する性加害ではないかなど非常に不安になる」などの意見が出されたことについて、担当委員から「強烈な性行為が行われているということはなく、布団の中で2人がいろいろな会話をやりとりしていた場面だった」という報告がありました。
バラエティー番組のドッキリ企画で、CMビデオ撮影中の男性アイドルグループのメンバーに水に溶ける衣装を着せ、頭上から大量の水を落として全裸にしたことに対して、視聴者から「公衆の面前で全裸にさせられるのは人間の尊厳を損なうものだ」「子どもの教育の面やこの男性へのセクハラの面でとても許される行為とは思えず不快だった」などの意見がありました。
担当委員からは「下品なことは間違いない」としながらも、本人はドッキリ企画として承知し了解をした上での反応だと考えられるので、「とくに強く意見すべきものではない」との意見がありました。
その他に、大きな議論はなく「討論」に進むものはありませんでした。

中高生モニター報告について

10月の委員会では、9月と10月の2カ月分のモニター報告について話し合いました。
9月のテーマは「今年4月から9月までで最も印象に残った番組について」で、モニターからはジャンルも様々なすべて異なる合計20番組(テレビ19・ラジオ1)の報告がありました。
『有働由美子とフカボリ記者』(日本テレビ)に「ニュースの取材をする記者に焦点を当てた新しい形のバラエティーだと思いました。」、『美輪明宏 愛のモヤモヤ相談室』(NHK Eテレ)に「この番組を視聴すると『悩んでいるのは自分だけではない。精一杯生きている人がいるのなら、強く生きよう』と自分の心に炎がともります。」、『SCHOOL OF LOCK!』(エフエム東京)に「私と同じくらいの年齢のリスナーばかりで、悩みの内容はどれもこれも『あ、すごく分かる』と共感できる。」など、印象に残った理由についての報告がありました。
「自由記述」では、「事件を伝えるニュースで、衝撃的なシーンばかりが強調されていて疑問を感じる」という意見が複数寄せられました。

◆モニター報告(9月分)より◆

  • 【今年4月から9月までで最も印象に残った番組について】

    • 『はなしちゃお!~性と生の学問~』(NHK Eテレ)
      性的な内容をまじめに取り上げているのが衝撃的でした。テレビで扱うのはタブーのように感じていたので新鮮でした。ラジオでは積極的に取り上げられているテーマなので、こうした番組を通してラジオとテレビの表現の不自由さの差が埋まっていけばいいなと思います。内容も学問として面白いものでした。(高校1年・男子・埼玉)

    • 『有働由美子とフカボリ記者』(日本テレビ)
      ニュースの取材をする「記者」に焦点を当てた新しい形のバラエティーだと思いました。現地で取材をしていてわかったこと、気づいたこと、感じ取ったことなど取材のプロだからこそ発見できることもありました。なぜ今までこのような番組が少なかったのだろうと思うほど内容が非常に興味深く、普段のニュースでは腑に落ちなかった「なぜ?どうして?」という部分がより詳しく理解できました。(高校2年・女子・岩手)

    • 『日曜劇場「オールドルーキー」』(TBSテレビ)
      これまでスポーツ選手が引退したあとのことなど全く考えたことがありませんでした。このドラマを見て、すべての人の人生がうまくいってるわけではないのだなと痛感しました。なりたい仕事がたくさんあって絞り込むことができませんが、今無理に決めずゆっくり考えていいのだと、将来のことを考えるきっかけにもなりました。(中学2年・男子・山形)

    • 『美輪明宏 愛のモヤモヤ相談室』(NHK Eテレ)
      日々のモヤモヤに寄り添ってくれる番組として視聴しています。美輪さんは相談者のお話に耳を傾け、思いを受け取ったうえで愛のあることばをおっしゃっていました。テレビの前の私までホッと腑に落ちた感覚になりました。この番組を視聴すると「悩んでいるのは自分だけではない。精一杯生きている人がいるのなら、強く生きよう」と自分の心に炎がともります。(高校2年・女子・千葉)

    • 『24時間テレビ45 ~愛は地球を救う~』(日本テレビ)
      24時間テレビの良いところは、番組で取り上げる話題の中に災害・戦争・病気などといった重いものが含まれていても、その中にエンターテインメント要素を入れることで見やすくし、より多くの人に情報を届けようとしているところです。扱われている内容が同じでも、ふだん放送されている報道番組やドキュメンタリー番組は見ようと思わないと見ないため、視聴者が最初に抱く「見たい」という気持ちをエンターテインメント要素の方に向けているのはとても良いなと思います。(高校1年・男子・兵庫)

    • 『日曜劇場「マイファミリー」』(TBSテレビ)
      ドラマ全体を通してさまざまな「ファミリー」を感じました。家族はもちろん、友人、自分の会社などすべてに絆や思い入れがあって大切にしていくべきであり、それらに愛情を持てるようになりたいと思いました。役者のみなさんの細かい表情や映像の美しさもすばらしく、夢中で見てしまいました。(高校2年・男子・福岡)

    • 『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日)
      最もほこるべき点は、幅広い立場の人々が意見を表明できる点であると思う。出演者の幅が広い欠点としては、議論の土台となる部分に意見の食い違いがあって堂々巡りになることや、議論というより口げんかの延長線上のような事態が挙げられると思う。しかし、このような幅広い意見の人々がいないと左右の立場を超えて取り組まないといけない問題を考えることができないので必要だと思う。ただ、もう少しストレスなく見られるようにならないものかと思う。(高校1年・男子・愛知)

    • 『SCHOOL OF LOCK!』(エフエム東京)
      私と同じくらいの年齢のリスナーばかりで、悩みの内容はどれもこれも「あ、すごく分かる」と共感できる。日頃のちょっとしたモヤモヤに対処する方法を教えてくれるので、とてもありがたい番組だと思う。豪華なゲストの方々がよく出演するので、毎日どんな話が聞けるかわくわくしながら聴いている。(中学2年・女子・山形)

    • 『週刊フジテレビ批評』(フジテレビ)
      自分が見ているドラマについて専門家の感想や意見が聞けるのがとても面白く、勉強にもなっています。自分とは別の視点からの意見が聞けたときは、より発見があります。もう少し出演者の年代の幅を広げると、もっと面白くなるのではないかと思います。自分と同世代の学生などはどう感じているのか、いま出ている方々と若い世代との対談を聞いてみたいです。(中学2年・女子・東京)

    • 『世界一受けたい授業』(日本テレビ)
      さまざまなジャンルを取り上げて講義してくれるので、たくさんの情報が得られてためになる。大切なポイントをクイズ形式にして楽しむ要素を加えたり、イラストを用いたりしてわかりやすく説明していて良いと思った。日本における貧困問題やヤングケアラーの実態など、今起きているさまざまな問題を新しく知ることができた。(中学2年・女子・鹿児島)

    • 『土曜プレミアム・まっちゃんねる「IPPON女子グランプリ」』(フジテレビ)
      女性出演者だけということもあって男性回答者には答えられないお題ばかりだったが、ふだん見ることができない雰囲気で面白かった。しかし、審査員のコメントには「女性らしい」という文言が多く、違和感があった。“女性”を強調されると、女性の中では大喜利が得意だけど男性にはかなわない、という印象を持ってしまう。(中学3年・女子・千葉)

    • 『ブリティッシュ・ベイクオフ』(NHK Eテレ)
      いちばんの魅力はコンテストに挑戦するアマチュアベイカーの方が非常に多彩であることだと思います。人種、年代、バックグラウンド、職業などが全員バラバラで見ていてとても面白いです。アクシデントが起こった際に審査員が挑戦者に手を差し伸べる場面もあり、審査員のジャッジを楽しむだけではない温かな雰囲気も魅力だと思います。挑戦者が焼いていたマカロンがくっついてしまったとき、司会の方が「きっと味は文句なしよ」と軽やかに話していたシーンは、とても記憶に残っています。(高校2年・女子・東京)

  • 【自由記述】

    • 最近、事件のニュースで物々しい犯行の映像が流されることが多いと思います。私より年下の子はかなり怖さを感じるのではないかと思う映像もあり、少し配慮されるようになってほしいと思います。(中学3年・女子・群馬)

    • 渋谷で母娘が刺されてけがをした事件の報道で、ニュースの概要を知りたいのに衝撃的なシーンばかりが強調されることには疑問を感じ、被害者の母娘にも配慮がされていないように思います。「モザイクをかけて音声を加工したから流しても大丈夫」ではなく、「モザイクをかけて音声を加工してまで流さなければならない映像なのか」を考えていただきたいです。(高校2年・女子・東京)

    • 最近のテレビ番組はSNSで”いいね”が多かった動物の動画を集めた番組やカラオケ番組など、一般の人を頼る企画が多いように感じる。「視聴者参加型」ではなく「視聴者に頼りきり」なのは問題だと思う。(中学3年・女子・千葉)

    • 最近テレビで「これはSDGsに関連する」という話が多く出てきます。SDGsを意識することはいいことだと思いますが、何もかもSDGsに関連させていてはTVやラジオが面白くありません。何もかもSDGsに当てはめるのはいかがなものかと思います。(中学2年・男子・山形)

    • 最近、妹とテレビのリモコンを奪いあうケンカがなくなったことに気づきました。見逃し配信アプリでリアルタイム配信が始まってスマホがテレビと同じ役割を果たすようになり、家族それぞれが見たい番組をスマホでみるようになりました。アプリで見たほうがCMなどの広告もテレビより短く、倍速視聴もできるので私たちの世代のニーズに合っているのかもしれません。(高校2年・女子・岩手)

  • 【青少年へのおすすめ番組】

    • 『歴史デリバリー』(NHK Eテレ)
      ・歴史上の資料をもとに考えながら見ることができるので、楽しみながら勉強できます。クラスメイトにもすすめたところ「面白かった」という感想をもらいました。(中学1年・女子・千葉)
      ・コントも混ぜて歴史が紹介されるので覚えやすくて良かった。授業で前に習ったところだったが、なぜそうなったのかがよく分からなかったので、この番組だと楽しく学べて良いと思った。(中学2年・女子・山形)

    • 『ザ・ドキュメント「もやい 福島に吹く風」』(関西テレビ)
      福島での原発事故を自分や仲間の「表現」によって伝承している人を取り上げていました。自分たちの表現が社会にどんな影響を与えるのか、どんな変化を起こすのかを深く考えて行動している人がいる中で、私たちもその思いを受け取りにいく必要性を感じました。(高校1年・男子・兵庫)

    • 『知ってる!!知らない!? 愛知おやつ100菓』(テレビ愛知)
      このような地元への大量の取材の蓄積をもとに作られる番組は、ユーチューバーの動画や世界同時の動画配信サービスでは実現しえないと思うので、テレビ局にはその強みを生かした番組作りを大切にしてほしいなと思いました。(高校1年・男子・愛知)

    • 『THE 無人島 未知の離島で〇〇見つけました!』(テレビ東京)
      その島で実際に生活していた人がいたというリアルさを画面越しに目撃できて面白かったです。とくに歴史的な発見は、教科書に載っていた出来事をより生々しく「実際にあった出来事」として感じるきっかけになりました。ひとつの島の紹介が終わるごとに文字で「まとめ」が表示されたところも、とても分かりやすかったです。(高校2年・女子・東京)

    • 『アイ・アム・冒険少年 2時間スペシャル』(TBSテレビ)
      芸人さんたちが楽しみながら一生懸命汗を流して汚れを落とし、落としづらい汚れには四苦八苦しながらも工夫を凝らして最後まであきらめずきれいにしている姿がかっこよかったです。終始、掃除はかっこよくやりがいがあることだと思わせてくれる番組だったと思います(高校2年・女子・岩手)

◆委員のコメント◆

  • 【今年4月から9月までで最も印象に残った番組について】

    • 性をテーマにしたNHK Eテレの番組を挙げたモニターは自由記述で「民放には性に開放的なイメージがありません」と書いていた。テレビで性を扱うことについて比較的おとなは、民放がとても配慮してNHKは攻めているという印象を持つが、今は若い人たちも同様な捉え方をするのだなと新鮮な驚きがあった。

    • 何もかもSDGsに当てはめるのはいかがなものかという意見があったが、なるほどと思う指摘だった。

    • 女性出演者だけで行われた大喜利で、審査員から「女性らしい」というコメントが多く違和感があったという指摘があった。まさに今のジェンダーの問題に関心をもって疑問を示した意見だと思う。

  • 【自由記述について】

    • 渋谷で母親と娘が少女に刺された事件の報道について意見があった。モニターは、モザイクをかけて音声を加工してまで流さなければならない映像だったのだろうかと、社会にも自分にも問いかけていて、しっかり考えてくれていることが印象に残った。

  • 【青少年へのおすすめ番組について】

    • 地元のお菓子を90分間で100個紹介する番組について、テレビの強みを生かした番組だと評価する感想があった。確かにあまりYouTubeにはないタイプの番組で、このようなすみ分けは重要だし、テレビに愛着がある若い人たちはそうした点を意識して評価しているのだろう。

10月のテーマは「最近見たドラマについて」で、モニターからは合わせて11番組の報告がありました。
このうち6人が取り上げた『silent』(フジテレビ)には「メッセージ性のあるドラマだ」「“音”へのこだわりが感じられた」などの感想が寄せられました。  
そのほか、複数のモニターが『連続テレビ小説「舞いあがれ!」』(NHK総合)と『監察医 朝顔 2022スペシャル』(フジテレビ)を挙げています。
「自由記述」では、「ふだんドラマを見ないが、ドラマのよさを再認識した」という声が複数寄せられました。
「青少年へのおすすめ番組」の『ゲームゲノム』(NHK総合)には、複数のモニターから「ゲームに対する見方が変わった」といった感想が届いています。

◆モニター報告(10月分)より◆

  • 【最近見たドラマについて】

    • 『日曜劇場「アトムの童」』(TBSテレビ)
      ゲームに焦点を当てているのが新鮮だと思いました。親しみやすいテーマと、大企業と中小企業の技術とプライドという対比が極めてシンプルで、全体を通して分かりやすかったです。身近なテーマだからこそ、作品内のゲームや製品が物語の展開や設定のリアリティーを左右してしまうと思うので、今後の流れが気になります。(高校1年・男子・埼玉)

    • 『監察医 朝顔 2022スペシャル』(フジテレビ)
      ・数ある医療系のドラマでも監察医というのが珍しく、「こんな職業もあるんだ!」と、今まで全然知らなかった職業のことを知るきっかけにもなりました。亡くなった方の想いや家族の愛が丁寧に描かれていて、とても優しい気持ちになれるドラマでした。(高校2年・女子・広島)
      ・温かい涙がこぼれるような素敵なドラマでした。コミカルなシーンとシリアスなシーンのバランスが良く、子ども目線で描かれるからこそ現れるリアリティーや認知症患者の家族が抱える葛藤、痛みが感じられました。解剖のシーンも臓器や血液などが生々しく映されず、視聴しやすかったです。ヒューマンドラマ、ホームドラマの側面も強く、法医学教室や刑事の面々もコミカルなキャラクターが多いので安心して楽しむことができました。(高校2年・女子・東京)

    • 『よるおびドラマ「差出人は、誰ですか?」』(TBSテレビ)
      第一話の15分だけの放送でこんなにもハラハラドキドキさせられたのは驚きでした。主人公を演じている女優はオーディションで選ばれた方で、とても学生のようでナチュラルで尊敬します。一目見た瞬間からとりこになりました。(中学1年・女子・千葉)

    • 『silent』(フジテレビ)
      ・すごく「音」へのこだわりが感じられ、聞こえないということがより一層重く感じました。音楽の使い方や演出が映画のようで、一話見ただけで満足感がありました。当事者にならないかぎり全部理解することはできないだろうけど、エンタメとして楽しめるだけではなく、ドラマを通して何か自分にとってプラスの学びがある作品になるとうれしいです。(中学3年・女子・群馬)
      ・とても感動したというのが率直な感想です。最も印象的だったのは、手話教室の講師が「人が良さそうですもんね」と言われたことに対して「(略)やさしい、思いやりがある、絶対いい人なんだろうなって勝手に思い込むんですよ」と発言したことです。障がい者をかわいそうと思うのも健常者の勝手なことで、同じ一個人として接する必要性を改めて感じました。(高校2年・男子・福岡)
      ・この物語は音がテーマで、重要なポイントになっているのだと思いました。有線イヤホンを片方ずつ分け合ってスピッツ(の曲)を聴くなど、主人公たちの高校生活が今の高校生とは少し違うので憧れました。登場人物の苦悩、葛藤がたくさん描かれていて全体的に重く暗い雰囲気のある演出・内容なので、登場人物が少しでも希望を持てる明るい終わり方になるといいなと思いました。手話教室の先生のシーンのように、障がい者や、関わる人への偏見についても伝えていて、ただのラブストーリーではなくメッセージ性もあるドラマだと思いました。(高校2年・女子・岩手)

    • 『星新一の不思議な不思議な短編ドラマ』(NHK 総合)
      星新一の作品が好きで小学生の時から読んでいたのですが、映像で見てみると現実の残酷さや人間の愚かさなどが鮮明に映し出されていて面白かったです。
      誰も見ていないところで何かをしたら、たとえそれが良いことであれ誰も知らないのですから皮肉なものだなと思いました。(中学2年・女子・山形)

    • 『親愛なる僕へ殺意を込めて』(フジテレビ)
      登場人物同士の関係性が気になるドラマでした。緊迫感のある音楽やホラーの要素が入っているからこそ、早く次が見たくなります。ナレーションがたくさん入っているので細かい状況が分かり、ドラマの中に入ったような感じで視聴できました。(中学2年・女子・山形)

  • 【自由記述】

    • めったにドラマを見ることはありませんが、このリポートをきっかけにドラマを見ました。ドラマには続きを早く見たくなってしまうほど自分にハマるものがあるのだと初めて気づきました。自分の中に新しいエンターテインメントができたぐらいの感動を覚えています。(高校1年・男子・兵庫)

    • 最近ドラマを全然見ておらず、久しぶりにドラマを見ました。本や漫画では感じられない登場人物の表情、感情を感じることができ、改めてドラマの良さを感じることが出来ました。(高校2年・女子・広島)

    • 何となく(NHKの)朝ドラに出てくる主人公が女性であることが多い気がする。男性が主人公の作品が少ないので、もう少し増やしてほしいと思う。(中学2年・女子・鹿児島)

    • 視聴率を基準に番組を評価する風潮が早く変わってほしいです。私を含めて周りの多くの人がリアルタイムでテレビを見ていなくても、見逃し配信やリアルタイム配信で見たりしています。見逃し配信はたまたま見ている人が含まれる視聴率とは違い、意識してその番組を見るので、そうした見逃し配信も加味して評価されてほしいです。(中学3年・女子・群馬)

    • ドラマを見ていて制作している裏側がとても気になります。メイキングや放送直前番組で撮影の裏側などが流れることがありますが、裏側がピックアップされているものはないと思います。放送できる範囲で構いませんが、どのようにドラマが完成していくのか(原作、脚本の決定から撮影の日程、ロケ場所の確保など)を知りたいです。(高校2年・女子・千葉)

    • NHK Eテレには英語番組が多く、見ていてとても楽しいです。特に、日本人に足りていないナチュラルな英語のフレーズが紹介されている『太田光のつぶやき英語』や『キソ英語を学んでみたら世界とつながった。』などの番組がお気に入りです。このような番組がもっと増えてほしいです。(中学1年・女子・千葉)

    • 埼玉県の美味しいうどんを紹介する情報番組のコーナーで、お店のうどんをキャンピングカーで食べ、撮影するという方法がとられていました。ありそうだけどこれまでになかった新しい方法で良いなと思いました。(高校2年・女子・岩手)

    • 最近はドラマが似たジャンルのものばかり放送されているように感じます。話の展開が一気にひっくり返るような、意外性のあるドラマを見てみたいです。(中学2年・女子・山形)

  • 【青少年へのおすすめ番組】

    • 『ゲームゲノム』(NHK総合)
      ・この番組を見て、ゲームもすばらしい文化のひとつであることがよく分かりました。今回取り上げられたゲームだけをみても、その内容から受け取ってほしい願いや制作者が伝えたいメッセージがあることを知り、ゲームの世界は深いなと感じました。ゲームに対する見方が変わりました。(高校1年・男子・兵庫)
      ・ゲームをすることは教育的によくないと言われることがありますが逆で、人間について考えるきっかけとなったり、人生の糧になったりするものもあると思いました。(高校2年・男子・福岡)

    • 『60秒で学べるNews』(テレビ東京)
      普段のニュースだと分からない出来事を専門家が60秒で専門家が説明し、議論する形でまた60秒で説明していくという流れが、とてもスピーディーでありながら、簡潔で分かりやすいです。(中学2年・女子・東京)

    • 『理想的本箱 君だけのブックガイド』(NHK Eテレ)
      あらすじからもう一歩内容に踏み込んで紹介されていますが、ネタバレになり過ぎることもなく「読んでみたい」と思わせる絶妙なあんばいでした。視聴者の好みにもよると思いますが、個人的には出演者の方が話されたことばの中でキーワードになるところをテロップで文字に起こしても良いのかなと思いました。(高校2年・女子・東京)

    • 『こどもスマイルテレビ~こども記者編~』(TOKYO MX)
      小学生が浄水場やダムを取材してVTRにまとめていたが、撮影・編集・ナレーションまで子どもたちがやっていてすごいと思った。また、うらやましくも思った。東京の水はもちろん、テレビ番組がどう作られているかを体感できるよい経験だと思う。(高校1年・男子・東京)

    • 『サスティな!』(フジテレビ)
      SDGsについて紹介するバラエティーというのは新鮮な感じがしました。内容も面白く、ふだんの生活に新しい視点を取り入れさせてくれるものでしたが、「SDGsってとっつきにくそう」という印象をどう払拭(ふっしょく)するか難しいところだと思います。(高校1年・男子・滋賀)

◆委員のコメント◆

  • 【最近見たドラマについて】

    • 『silent』(フジテレビ)への感想が多かったが、ストーリーそのものへの感動とともに、実生活の中で障害がある人のことを理解したいという気持ちが相まって、とても興味深く見られているのではないかと思った。

    • 視聴率を基準に評価する風潮に疑問を呈する意見があった。確かに、今放送中の人気ドラマが何百万回もオンデマンドで再生されていることを考えると、視聴率が示すリアルタイムの視聴と(実際の見られ方は)違うのだろうと思う。

  • 【自由記述について】

    • 番組制作の裏側が知りたいという声があった。最近の若い人たちは制作者への関心や制作の裏側を知りたいというニーズがとても強いと感じる。映画監督が映画の公開後に撮影日記を出版して情報公開をするように、そうしたニーズにネットなどで応えることがテレビの魅力を高め、テレビに関心を持つ若年層を増やすことにつながるのではないか。

    • NHK Eテレで放送される英語番組が楽しいので増えてほしいという声があった。英語が得意ではないお笑い芸人が少しずつうまくなっていくようなところが視聴者には共感できるのだろうと思う。

  • 【青少年へのおすすめ番組について】

    • 最近の話題について専門家がスピーディーに解説する番組に「分かりやすい」という感想があった。別のモニターも朝ドラの一週間のまとめ放送を評価していたが、やはり最近の若い人たちは長い番組より短いものが見やすいのだろうと思った。

意見交換会について

岡山・高松地区の放送局との意見交換会について事務局から、来年(2023年)2月9日(木)に岡山市内の会場で開催する予定であることが報告されました。

今後の予定について

次回は、11月22日(火)に定例委員会を開催します。

以上

第309回放送と人権等権利に関する委員会

第309回 – 2022年10月

「ペットサロン経営者からの申立て」審理…など

議事の詳細

日時
2022年10月18日(火)午後4時~午後8時
場所
千代田放送会館会議室
議題
出席者
曽我部委員長、鈴木委員長代行、二関委員長代行、國森委員、斉藤委員、
野村委員、丹羽委員、廣田委員、松田委員、水野委員

1.「ペットサロン経営者からの申立て」審理

日本テレビは、2021年1月28日午前8時からの『スッキリ』で、「独自 愛犬急死 “押さえつけシャンプー” ペットサロン従業員ら証言」とサイドスーパーを出しながら、ペットサロンに預けられていたシェパード犬がシャンプー後に死亡した問題を放送した。放送は、犬の飼い主やペットサロン従業員など複数の関係者の証言を基に構成されていた。
この放送に対して、ペットサロン経営者の申立人は、「同番組内で申立人が、お客さんから預かっていた犬を虐待して死亡させたなどと、虚偽事実」を放送したと主張し、「字幕付きの放送をしたことで、申立人が預かっていた犬を虐待死させたかのように印象付け、事実に反する放送をすることで申立人の名誉を侵害した」として、BPO放送人権委員会に申し立てた。
これに対して日本テレビは、放送内容は真実であり、また「当社は事前に十分な取材を行っており、真実であると信じるにつき相当な理由」があり、「私たちの取材・放送によって人権と名誉が侵害されたという申立人の主張はいずれも根拠が無く、受け入れられません」と反論している。
今回の委員会では、申立人・被申立人双方へのヒアリングを踏まえた決定文草案を受けて、活発に議論が行われた。次回委員会でさらに文案を検討していくこととなった。

2.「ローカル深夜番組女性出演者からの申立て」審理

申立ての対象となったのは、あいテレビ(愛媛県)が2022年3月まで放送していた深夜のローカルバラエティー番組『鶴ツル』。この番組は男性タレント、愛媛県在住の住職とフリーアナウンサーである申立人の3人を出演者として、2016年4月に放送が開始された。3人が飲酒しながらトークを行う番組だが、申立人が、番組中での他の出演者からの度重なるセクハラ発言などによって精神的な苦痛を受けたとして申し立てた。
申立書によると、番組開始当初から苦痛、改善を訴えていたにもかかわらず、放送された他の出演者のトークが、申立人自身に対するものも含めてしばしば性的な内容に関することに及んで申立人に羞恥心を抱かせることで、また、そのような内容の番組の放送によって申立人のイメージが損なわれたことで、人権侵害を受け、放送倫理上の問題が生じたと主張している。
被申立人のあいテレビは、申立人は番組の趣旨を十分に理解した上で出演しており、申立人からの苦情も2021年11月が初めてで、また、番組の内容も社会通念上相当な範囲を逸脱しておらず、人権侵害や放送倫理上の問題はない、と主張している。
今回の委員会では、提出された書面を確認し、委員から質問が出された。今後の方向性などを議論していくこととなった。

3. 最新申立て状況

事務局から最新の申立て状況が報告された。

4. その他

12月に札幌で開催される意見交換会の内容について、事務局から報告した。

以上

第176回 放送倫理検証委員会

第176回–2022年10月

NHK BS1 東京五輪に関するドキュメンタリー番組への意見に対する報道について報告

第176回放送倫理検証委員会は10月14日に千代田放送会館で開催された。
委員会が9月9日に公表したNHK BS1 東京五輪に関するドキュメンタリー番組への意見について、テレビ、新聞がどう報じたのか報告された。
また、9月にBPOに寄せられた視聴者意見が報告され議論を行った。

議事の詳細

日時
2022年10月14日(金)午後5時~午後7時
場所
千代田放送会館
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、
大石委員、大村委員、長嶋委員、西土委員、米倉委員

1. NHK BS1 東京五輪に関するドキュメンタリー番組への意見の公表について報告

委員会は9月9日、NHK BS1 東京五輪に関するドキュメンタリー番組への意見の公表の記者会見(オンライン形式)を行った。今回の委員会では、NHKを含めテレビ、新聞がどのように報じたのかが報告された。これに関連して、総務省がNHKに対して行政指導を行ったことについて議論したところ、多くの委員から行政指導がなされたことについて懸念が示された。委員会は、番組内容に関する行政指導としては、2015年のNHK総合テレビ『クローズアップ現代』"出家詐欺"に対する文書による厳重注意以来の指導になること、委員会は「『クローズアップ現代』"出家詐欺"報道に関する意見」(委員会決定第23号)において、放送法5条は放送事業者が自らを律するための「倫理規範」であり、総務大臣が個々の放送番組の内容に介入する根拠ではなく、「放送局が自律的に番組基準を定め、これを自律的に遵守すべきことを明らかにしたものなのである。したがって、政府がこれらの放送法の規定に依拠して個別番組の内容に介入することは許されない。」との意見を表明していることを再度確認した。その上で、今回の行政指導は、NHKの報告書提出から約半年を経てなされたものであり、放送局が自主的にその原因を調査し再発防止策を検討して問題を是正すること自体が脅かされたとまではいえないこと等を踏まえて、委員会として意見を表明することはしないものの、委員会が議論を行ったことを公表することにより、今後も総務省の行政指導に対しては注視していくことを明らかにすることとした。

2. 9月に寄せられた視聴者意見を議論

9月に寄せられた視聴者意見のうち、安倍元首相の国葬報道・特別番組に対してさまざまな意見があったことや、民放番組のコメンテーターが、国葬に大手広告代理店が関与したという趣旨の事実に基づかない発言をし、訂正・謝罪に至ったことに対する批判的意見が多数寄せられたことなどを事務局が報告した。

以上

2022年9月に視聴者から寄せられた意見

2022年9月に視聴者から寄せられた意見

情報番組でコメンテーターが元首相の国葬に関連して、「大手広告代理店が入っている」と発言、翌日「事実ではなかった」と訂正して謝罪。両放送回に多くの意見が寄せられました。

9月にBPOに寄せられた意見は1,867件で、先月から319件増加しました。
意見のアクセス方法の割合は、メール82%、電話16%、郵便1%、FAX1%。
男女別は男性42%、女性19%で、世代別では40歳代25%、50歳代22%、30歳代20%、60歳以上15%、20歳代12%、10歳代2%。
視聴者の意見や苦情のうち、特定の番組や放送事業者に対するものは各事業者に送付、9月の送付件数は944件、59事業者でした。
また、それ以外の放送全般への意見の中から28件を選び、その抜粋をNHKと日本民間放送連盟の全ての会員社に送りました。

意見概要

番組全般にわたる意見

情報番組でコメンテーターが元首相の国葬に関連して、政治的意図を持って演出された可能性を指摘し、ある大手広告代理店が関与していたと発言。しかし翌日「同広告代理店は関わっていなかった」と訂正、謝罪しました。この発言と訂正に多くの意見が寄せられました。
ラジオに関する意見は37件、CMについては20件でした。

青少年に関する意見

9月中に青少年委員会に寄せられた意見は62件で、前月から9件減少しました。
今月は「表現・演出」が16件、「要望・提言」が11件、「性的表現」が9件、それに「報道・情報」が6件と続きました。

意見抜粋

番組全般

【報道・情報】

  • 情報番組でコメンテーターが元首相の国葬に関連して、政治的意図を持って演出された可能性を指摘し、ある大手広告代理店が関与していたと発言。会場で故人を悼んだ人の尊厳を著しく傷つけるような発言だ。国葬には反対意見も多かったので個人の意見を封じる必要はないとは思うが、誤った情報を発信するような番組には再発防止を強く求める必要があると思う。

  • 元首相の国葬に大手広告代理店が関わっているという発言について、翌日、当該情報番組で「関わっていなかった」と訂正、謝罪した。公にデマを拡散したのに「一言謝罪して終わり」では、ネットで陰謀論を発言したり誹謗中傷したりしている人たちと変わらない。テレビの影響力は大きい。訂正を見逃してデマを信じたままの視聴者もいる。厳しく対応すべきだと思う。

  • 元首相の国葬に大手広告代理店が関わっているという発言について。内容に責任を持つことが前提での「報道の自由」ではないのか。それ相応の責任を取ってもらいたい。

  • 日本武道館での国葬の司会者が放送局のアナウンサー。報道機関の職員が国の側に立って仕事をすべきではないと思う。

  • テレビ全局が国葬反対の意見ばかり放送している。私は違った意見も知りたい。多方面からの意見を知って自身の考えを見つめたいからだ。それが放送の役目ではないだろうか。

  • 2世信者も含めて旧統一教会の被害者は今もたくさんいる。メディアが報じなかった「空白の30年」がなければ被害に遭わなかったかもしれない人がいる。メディアの責任は重大。継続して報道する義務がある。「政治家を責め過ぎている」という意見もあるが、政治家が広告塔になったことは重大。

  • 私たち家族は世界平和統一家庭連合の現役信者。普通に納税し生活している。番組で元信者の証言などが取り上げられ、教団の解散を求められているように感じた。教団がすべて否定されることで、自分たちが国家から否定され人権もないと感じる。番組は元信者の精神的苦痛を伝えているが、普通に信仰している私や子どもたちも人間関係が難しくなるといった状況に追い込まれていることを知ってほしい。子どもたちの未来は平等。公平な報道をお願いしたい。

  • 園児バス置き去り事件で、幼稚園全体を責める報道が多いのが心配。幼稚園は財政的に厳しく人手不足を解消できない。労働条件の改善も難しく優秀な人材からどんどんやめていく。事件の背景としてこの点を指摘する番組は皆無。テレビは正しい報道ができる、信用に値するメディアなのか。園長、園の責任だけを問うていては、いつまでたっても問題は解決しない。

  • 政治討論番組での与党幹部の「左翼的な過激団体と共産党との関係がずっと言われてきた」という発言について、放送局はきちんと検証し対応すべきだと思う。根拠に乏しい内容を放送してしまうことを厳に避けるべき。そうしなければ「言った者勝ち」になってしまう。

  • 近隣トラブルの果てに男が隣家の住民男性と殴り合い、刃物で刺した事件。防犯カメラに記録された「殴る」「刺す」動作、衣服についた血などの鮮明な映像が放送された。こうした映像を、子どもも見るテレビで流さなくてはいけないのか。とても不適切だと思う。

【バラエティー・教養】

  • 今問題になっている旧統一教会への入信のきっかけは、占い、霊視などによって不安をあおったりだましたりすること。心霊番組や占い番組は、ありもしない霊や予知などに市民権を与えていて問題だ。

  • バラエティー番組で芸人に企画内容を伝えずに目隠しをし、身体を拘束して鍵をかけ、通りかかった人(娯楽施設の入場者)に助けてもらえるまで長時間放置。人権を侵害していると思う。

  • ラジオのトーク番組で男性タレントが裸になり、陰部に墨汁をつけて視聴者プレゼントのTシャツに文字を書く様子を女性タレントが細かく説明していた。内容も表現も下品極まりない。途中で気分が悪くなり聴くのをやめた。ラジオ番組を汚さないでほしい。

  • 番組で大家族の夕食の風景を紹介していた。家族9人分の夕食をパートから帰宅した母親が一人で用意し、夫や子どもは一切手伝わない。こうした状況が一般的なことであるかのようにテレビで扱われると「女性が家族のために奉仕するのは当たり前」という印象を与え、男女共同参画やダイバーシティの推進が阻害される。これを見た子どもの教育にも良くない影響を与えると思う。

  • 出演した芸能人が、"猫島"で猫を管理する女性に独身かどうかたずね、独身と分かると、猫より自分の人生の管理をという主旨の発言。結婚は個人の自由、こんな発言はありえないと思う。制作側が「面白い」と思ってカットしなかったのであれば、その倫理観も疑う。クセのある芸能人の魅力があってこその番組であることは理解しているが、この発言はあまりにもデリカシーに欠ける。

  • 「中毒性のある食品」と紹介していた料理の名前が「麻薬卵」。軽々しい名前のつけ方、紹介の仕方で非常に残念。このネーミングの妥当性を問うような報道なら理解できるが、メディア側がこの名前を積極的に使うのはいかがか。

【その他】

  • テレビで放送した映画に、児童相談所の対応ルールを誤解させ、現実の虐待などの問題の解決を困難にしかねない内容があった。劇場公開時にすでに指摘されて分かっていた問題。放送時に、誤解を広めないような対応をすべきだった。

  • 点描で原画が作成されたアニメの映像を見た直後、目がチカチカし、目の奥の痛み、頭痛がしばらく続いた。強い光の点滅はないが“光感受性発作”と同じようなことが起きたのだと思う。テレビで放送する場合は注意してほしい。

青少年に関する意見

【「表現・演出」に関する意見】

  • バラエティー番組で、素人の成人男女が無人島でサバイバル生活する外国のリアリティー番組を紹介したが、仲違いした女性が男性に「あんた、身体が臭いわ!」との暴言を吐き、それが日本語音声と字幕で出た。視聴者で、とくに体臭が気になる若者が傷つくのでは、と思った。

  • バラエティー番組の企画で、お笑い芸人が目隠しされた状態で、お化け屋敷に長時間放置された。これはパニック障害の発症を誘発するもので、見ているだけでつらくなった。

【「要望・提言」】

  • 過去の性加害が問題化した男性俳優が連続ドラマに引き続き出演している。示談で済んだといっても加害者本人が認めていることだ。子供たちになぜ出演を続けているのか説明できない人物は、降板させるべきだ。

【「性的表現」に関する意見】

  • バラエティー番組で、人気男性アイドルにCMビデオ撮影と偽り、水に溶ける衣装を着せて、頭上から大量の水を落として全裸にしてしまうドッキリがあった。正直、ドッキリとは思えず笑えなかった。不快で嫌な気持ちになった。

  • 男性アイドルがドッキリと称して全裸にさせられたが、公衆の面前で秘部(局部)を無理やりさらさせる行為は、人間の尊厳を損なうものではないだろうか。子供が学校などで真似たら、直ちにいじめと認定されるような行為だろう。

  • 男性アイドルが全裸にされるドッキリは、教育的な面や男性へのセクハラの面からみても、とても許される行為とは思えず、不快でした。全裸で笑いを取るというのは理解できません。

【「報道・情報」に関する意見】

  • 通園バスの中に置き去りにされた園児が死亡した幼稚園(認定こども園)の近隣住民で、小学生の親です。過熱した報道に、子供たちが不安がっています。子供たちへの取材のせいで、保護者が下校時の小学生に付き添っているのを知っていますか。園長の自宅を報道したために、ユーチューバーが訪れたことを知っていますか。園長や園の関係者でない親族に何かあったら、責任を取れるのでしょうか。

2022年10月3日

2022年 10月3日

BPO事務局の対応について

BPOは、新型コロナウイルスの感染防止対策に留意しつつ、視聴者電話の受付時間を通常に戻しました。
電話の受付時間は、平日、10時から12時までと13時から17時までです。
なお、今後の感染状況によっては、受付時間の短縮や受付の休止をすることがあります。

第249回 放送と青少年に関する委員会

第249回-2022年9月

視聴者からの意見について…など

2022年9月13日、第249回青少年委員会を千代田放送会館会議室で開催し、榊原委員長をはじめ8人の委員全員が出席しました(うち2人はオンラインによる出席)。
7月後半から8月末までの1カ月半の間に寄せられた視聴者意見には、1歳8カ月の幼児に初めて「おつかい」を体験させた番組について、「1歳や2歳の子をひとりで出歩かせるべきではない」「出演する子どもには(年齢の下限に)制限を設けてほしい」などがありました。
8月の中高生モニターリポートのテーマは「終戦関連番組(ドラマ・ドキュメンタリーなど)について」でした。、モニターからは戦争関連番組の視聴により、ロシアによるウクライナ侵攻が続く中、戦争への恐怖と平和の尊さを再認識したなどの意見が寄せられました。
委員会ではこれらの視聴者意見やモニターリポートについて議論しました。
また事務局から、民放連の「放送基準」の改正(2023年4月施行予定)について説明がありました。
最後に今後の予定について話し合いました。
次回は、10月25日(火)に定例委員会を開催します。

議事の詳細

日時
2022年9月13日(火)午後4時30分~午後6時30分
場所
千代田放送会館会議室(オンライン併用)
議題
視聴者からの意見について
中高生モニター報告について
民放連「放送基準」の改正について
今後の予定について
出席者
榊原洋一委員長、緑川由香副委員長、飯田豊委員、佐々木輝美委員、
沢井佳子委員、髙橋聡美委員、山縣文治委員、吉永みち子委員

視聴者からの意見について

7月後半から8月末までに寄せられた視聴者意見について担当委員から報告がありました。
幼児が初めて「おつかい」を体験する様子を紹介するバラエティー番組で「(最年少)記録更新」と題し、母親らが見守る中、1歳8カ月の男児に、少し離れた隣家に回覧板、また別の家には菓子を届けさせたことについて、視聴者から「1歳や2歳の子をひとりで出歩かせるべきでない。真似をして子どもに行かせる親御さんがいると思う」「出演する子どもには(年齢の下限に)制限を設けてほしい」などの意見が寄せられました。
委員からは「1回だけでなく何度も行かせたことが、視聴者には不評だったかもしれない」「最年少記録という視聴者を煽るようなタイトルもどうかなと思われる」との意見があり、一方で別の委員からは「幼児の周辺で大人のスタッフが見守っていることが分かるように放送されており、安全に配慮していることを視聴者に見せる演出になっていた」と評価する声もありました。
別のバラエティー番組のコーナー企画で、浴槽内に電流を流すサービスを提供している香川県の銭湯に男性アイドルグループのメンバーらを入れ、電流を流したところ、視聴者から「電気を流されて痛がる様子が、いじめに見える」「子どもが見ていて、番組の真似をする可能性が高いので、とても笑えない」などの意見がありました。
委員からは「電気ビリビリ風呂は、通常の浴場で使われているものなので倫理的には問題ないと思ったが、繰り返し笑いを取ろうとしているところが、視聴者には不快だったのだろう」との意見がありました。
また、心霊現象などの体験談をドラマ化して構成したバラエティー番組のスタジオパートに子どもたちを出演させたことに、視聴者から「発育過程の子どもにオカルト現象を現実のものとして信用させるのは控えるべきだ」との指摘がありました。
委員からは「出演した子どもはみな、実績のある子役たちで、怖がっている顔も演技であるのは明らかだ」として問題にはならない旨の考えが示されました。
その他に、大きな議論はなく「討論」に進むものはありませんでした。

中高生モニター報告について

8月のテーマは「終戦関連番組(ドラマ・ドキュメンタリーなど)について」で、モニターからは合わせて15の番組について報告がありました。
このうち『僕たちは戦争を知らない~1945年を生きた子どもたち~』(テレビ朝日)を6人が取り上げ、「戦争体験者の話は実感を持って聞くことができた」「人を恐ろしい方向に変えてしまう戦争は二度とやってはいけないと強く思った」といった感想が寄せられました。
そのほかの番組にも「被爆者の高齢化が進んでいるので次は私たちが伝えていく番だと思う」「私たち若い世代ができることを考える良い機会になった」などの声が届きました。
ロシアによるウクライナ侵攻が続く中、番組を通して平和のありがたさを改めて感じたというモニターが多く、「当たり前のように過ごしている今の生活が当たり前ではないと実感した」「”戦争は遠い過去の話ではない”という制作者のメッセージが伝わってきた」などの感想が寄せられています。

◆モニター報告より◆

  • 【終戦関連番組(ドラマ・ドキュメンタリー)について】

    • 『僕たちは戦争を知らない~1945年を生きた子どもたち~』(テレビ朝日)
      ・番組を見終わって戦争の恐ろしさ、悲しさを感じた。戦禍を生き抜く大変さを知ったと同時に、今がどれだけ幸せかを知った。戦禍の人々は自分のことしか考えられなくなり、人が変わってしまったという。人を恐ろしい方向に変えてしまう戦争は二度とやってはいけないと強く思った。もう誰もつらい思いをしないよう、戦争の記憶を若い世代に伝え続けることが大切だと思う。(高校1年・女子・栃木)
      ・戦争体験者の家族や生活といった背景をじっくりと伝えていたので実感を持って話を聞くことができました。一番心に残ったのは「戦争が人の心を変えた」という戦争体験者の声です。戦争体験者を悲しく見るだけではなく、たくましく生きてきたことを伝えていたのも良かったです。(高校1年・男子・兵庫)
      ・普段当たり前のように過ごしている生活は当たり前ではないし、飲める水があること、食べるものがあること、安心して過ごせる場所があることは本当に幸せなことだし、日々感謝して生きていかなければならないと思った。当時何があって人々がどんな思いだったのか、貴重な当事者の言葉を大切にし、感謝しながら次の世界に語り継ぐことが私たちのすべきことだし使命だと思う。(高校3年・女子・茨城)

    • 『特集ドラマ「アイドル」』(NHK総合)
      ・真っ先に思い浮かんだのが現在も続いているロシアによるウクライナ侵攻のことです。このドラマを見て、戦争をしてもいいことは本当に一つもないと思いました。自分の国でも同じようなことが起きてたくさんの人が犠牲になった過去があるからこそ、世界に戦争の恐ろしさを伝えていくことが大事だと思いました。(高校2年・女子・岩手)
      ・戦時中にアイドルが存在したことにすごく驚きました。いつの時代にも娯楽は求められていたのだと知り、親近感を持って見ることができました。前線へ向かわなければならない人たちの恐怖や葛藤は計り知れません。改めて戦争は繰り返してはいけないし、戦場に向かう選択肢しかなかった人たちのことや被害を忘れてはいけないと思いました。(中学3年・女子・群馬)

    • 『NNNドキュメント’22 「侵略リピート」』(日本テレビ)
      中国戦線に関する話では、戦争時には人が死んでもすぐに忘れてしまったりする特殊な心理について述べられ、当時の非人道的な行いが起こされた心理環境がいかに異常だったかが分かりました。番組の途中で、ロシアによるウクライナ侵攻の映像などが流れ、「戦争は遠い過去の話ではない」という制作者のメッセージが伝わってきました。(高校1年・男子・愛知)

    • 『イサム・ノグチ 幻の原爆慰霊碑』(NHK BS1)
      日本とアメリカとの板挟みになったイサム・ノグチに焦点を当てることで、当時の在米日本人の扱い、戦後の日本でのアメリカ人の扱いなどの問題を取り上げていたのが斬新で面白かった。戦争イコール悲惨で命を奪うものという単一的な価値観ではなく、付随する課題を報じるものが増えれば、ほかの番組も面白くなるのかなと思った。(高校1年・男子・埼玉)

    • 『NNNドキュメント’22「禎子さんの折り鶴~千羽になったら願いが叶うんよ」』(日本テレビ)
      被爆者の高齢化が進んでいるということは、次は私たちが伝えていく番だと思います。唯一の被爆国に住んでいるからこそ「二度と戦争はしてはならない」ということをしっかりと心に留めておきたいと思いました。(中学2年・女子・山口)

    • 『仲間由紀恵・黒島結菜 沖縄戦“記憶”の旅路』(NHK総合)
      “沖縄戦”の実状や奪われた日常を改めて見て「他人事ではない」と思いました。遺骨や遺品が見つからない人が多く、人々の記憶だけでなく戦争の爪痕もなくなってきていることを知り、また戦争が起きるのではないかという不安を感じました。(中学1年・男子・山形)

    • 『長崎原爆の日 被爆から77年のリアル』(NHK総合)
      今、ウクライナ情勢で核の脅威を目の当たりにすることが多い。被爆者の平均年齢が84歳であることを知り、とても驚いた。刻々と近づく「被爆者なき時代」のため、私たち若い世代ができることを考える良い機会になった。私たちには、被爆者の強い思いを継ぐ役割が任せられているのだと考えさせられた。(中学2年・女子・鹿児島)

    • 『セイコグラム ~転生したら戦時中の中学生だった件~』(NHK総合)
      スマホの画面のような見せ方のドラマで、とても新しい形だと思いました。インスタグラムという若者に身近なツールとテレビを掛け合わせる方法は、戦争関連のように、見るのを少しためらってしまうようなテーマの番組をより見やすくするのではないかと思いました。(中学2年・女子・東京)

  • 【自由記述】

    • 今年は終戦関連の番組が少なかったように思います。これまで学校で習うような表面的な部分しか知らなかったので、番組を通して当時の人々の暮らしを知ることができて良かったです。(中学3年・女子・群馬)

    • 去年に引き続き通常の報道番組の中で戦争関連の特集を組んでいる放送局が多く、そのぶん多くの人に情報が伝わったと思います。戦争の話題のように視聴者が深く考えて行動に移してこそ意味をなす報道は、一度に時間をかけることも大切だと思います。現状では、多くの人に情報を届けることと、しっかりした中身の濃い情報を伝えることのバランスが取れていないように感じます。(高校1年・男子・兵庫)

  • 【青少年へのおすすめ番組】

    • 『ニュー試』(NHK Eテレ)
      各国の先進的な取り組みを知ることができ、大学進学を目指す身としてとても勉強になった。番組内で模試を考える時間が十分にあって自分でも考えることができ、とても面白かった。(高校1年・男子・愛知)

    • 『Zボイス 私たちの声を聞いて 18歳 夏 参院選』(NHK BS1)
      政治がどこか遠くで行われているイメージを持っていましたが、政治家の判断によって私も日常生活の中で影響を受けてきた一人なのだと思いました。そのことをしっかり受け止めて行動している同世代の方々を見て、私も将来を担っていく社会の一員として政治に関心を持とうと思いました。(高校2年・女子・岩手)

    • 『チョコプラのぶらり溶接の旅』(テレビ東京)
      再利用が注目されている中で、廃材を使って人のために物を作るという取り組みはとても良いと思います。チョコプラの時々面白いやり取りに楽しませてもらえる番組でした。(中学2年・女子・山口)

◆委員のコメント◆

  • 【終戦関連番組の感想について】

    • 被爆者の平均年齢が高いことを知って驚いたという感想があったが、そのぐらい戦争のリアリティーがないのだろうかと思った。とはいえ、被爆者の思いを伝える役割は自分たちにあると考えたということで、番組からいろいろなことを深く受け取ってくれたのだと思う。ほかにも、これからは私たちが伝えていく番だというとてもいいメッセージが届いていて、感受性豊かに受け止めたモニターが多かったようだ。

    • ウクライナ情勢が連日のように報道される一方で、戦争を実感する機会が少なくなっているという感想を複数のモニターが述べていて考えさせられた。

    • SNSやタイムスリップを取り入れるなど、各番組がどうやって戦争に対するリアリティーを若い人たちに持ってもらうかに知恵を絞っていることが、モニターの報告からよく分かった。

    • 戦争体験者の証言を制作者が意味づけたりあらかじめ文脈を作ったりせず、あくまで個人の生活史に終始して伝えるのが今のドキュメンタリーらしい作りで、時間をかけて人物を丸ごと紹介するところにモニターも好感を持っているようだ。

    • 若い人たちは生々しい戦争の描写などを避ける傾向があるようで、出演しているタレントたちと一緒に理解を進めていくといった、アプローチの仕方の工夫が必要なのだろうと思った。

  • 【自由記述について】

    • 温かいご飯を食べられたりお風呂に入ったりできるなど、当たり前のことが実は当たり前ではないということを書いてくれたモニターが多かった。やはりウクライナで現実に戦争が起き、難民が大変な思いをしていることが報じられていることが、想像をよりリアルにしているのだろうと思った。

    • バラエティー番組について意見を寄せてくれたモニターが複数いた。ウェブサイトに公開している6月の意見交換会の報告も読んでもらい、BPOの役割などを知ってもらえればと思う。

    • 衝撃映像が流れる前に、安心してご覧くださいというテロップが表示されたので安心して見られたという声があり、興味深い感想だった。

  • 【青少年へのおすすめ番組について】

    • 生き物の不思議な姿や行動に着目した番組『へんてこ生物アカデミー』(NHK総合)で、大学生が新しい生態を発見したことが印象的だったと書いてくれた高校生のモニターが、大学の研究費の少なさなど日本の現状についてさまざまな問題提起をしていて感心させられた。

民放連「放送基準」改正について

2023年4月施行の民放連「放送基準」の改正について、事務局から概要報告がありました。

今後の予定について

地方局との意見交換会開催の日程調整について、事務局から進捗状況の説明がありました。

以上

第175回 放送倫理検証委員会

第175回–2022年9月

NHK BS1 東京五輪に関するドキュメンタリー番組への意見の通知・公表について報告

第175回放送倫理検証委員会は9月9日にオンライン形式で開催された。
委員会が9月9日に行ったNHK BS1 東京五輪に関するドキュメンタリー番組への意見の通知・公表について、出席した委員長と担当委員から様子が報告された。
山梨放送が第26回参議院選挙期間中の7月2日に候補者が出演する番組『偉人の子孫を徹底リサーチ ハヤシソン!』を放送したこと、およびBS朝日が同選挙期間中の6月24日に『新・科捜研の女3』、7月8日に『暴れん坊将軍Ⅱ』を放送し、それぞれに候補者が出演していたことについて討議を行った。
第26回参議院議員選挙の投票日当日に、フジテレビが、討論番組『日曜報道THE PRIME』で、応援演説中に銃撃を受けて死亡した安倍晋三元首相の追悼番組を放送したことについて討議を行った。

議事の詳細

日時
2022年9月9日(金)午後5時~午後6時15分
場所
オンライン形式
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、
大石委員、大村委員、長嶋委員、西土委員、米倉委員

1. NHKBS1 東京五輪に関するドキュメンタリー番組への意見の通知・公表について報告

NHKは2021年12月26日に放送したBS1スペシャル『河瀨直美が見つめた東京五輪』後編の字幕の一部に不確かな内容があったとして、番組と局のホームページで公表し謝罪した。委員会は放送倫理違反の疑いがあるとして2月の委員会で審議入りを決め、議論を重ねてきた。審議を経て、委員会は次のとおり事実を認定した。①番組は五輪反対デモに参加していない男性を参加したかのように描くものだった。②男性のその他の発言についても事実の確証は得られていない。③別のデモに関する男性の発言を五輪反対デモに関するものであるかのように編集した。④男性に対し適切な説明をしなかった。そして、放送の結果、番組はデモの参加者はお金で動員されており、主催者の主張を繰り返す主体性のない人々であるかのような印象を視聴者に与え、デモの価値をおとしめたという問題も生じた。以上から、放送倫理基本綱領、NHK放送ガイドラインに反しているとして、重大な放送倫理違反があったと判断した。委員会は9月9日、当該局に対し意見書の通知を行い、続いて意見書の公表の記者会見(オンライン形式)を行った。同日に開催された9月の委員会では、委員会決定を伝えたNHKのニュース番組を視聴し、委員長と担当委員が通知・公表の様子について報告した。
通知と公表の概要は、こちら

2. 参議院選挙期間中に立候補者が出演した3番組について討議

委員会は、参議院選挙期間中に立候補者の出演番組を放送した以下の3番組について討議を行った。
① 山梨放送『偉人の子孫を徹底リサーチ ハヤシソン!』
山梨放送は第26回参議院選挙期間中である7月2日、『偉人の子孫を徹底リサーチ ハヤシソン!』を放送し、西郷隆盛の玄孫(やしゃご)である西郷隆太郎氏を取り上げた。同氏は6月6日、日本維新の会から比例代表候補として立候補表明をしていた。当該番組は他系列の放送局が1月8日に放送したものを購入して放送したものだった。
放送後、候補者の宣伝になるような番組を放送するのは山梨放送が応援しているようで大きな問題だという内容の視聴者意見がBPOに寄せられた。これを受けて委員会では、当該局に報告書と番組DVDの提出を求め、討議を行った。
報告書によれば、購入先の放送局から出演者リストを受けとった5月時点では西郷氏は立候補を表明しておらず、リストにもその記載はなかったという。また番組の素材チェックは公示2日前の6月20日に行われたが、同氏がいわゆるタレント候補ではなかったため担当者は立候補表明をしていたことに気づかず、そのまま放送した。
当該放送局は再発防止策として、購入番組は選挙期間中および公示1か月前からこれまでの担当者のほかに編成部員を加え二重の確認を行う、番組購入の際のチェック体制を一層強化することなどを挙げている。
② BS朝日『暴れん坊将軍Ⅱ』
③ BS朝日『新・科捜研の女3』
BS朝日は第26回参議院選挙期間中の6月24日に『新・科捜研の女3』、7月8日に『暴れん坊将軍Ⅱ』をそれぞれ放送した。
いずれも他局から番組を購入して再放送したもので『新・科捜研の女3』には候補者の石井苗子氏(日本維新の会・比例代表)、『暴れん坊将軍Ⅱ』には三原じゅん子氏(自由民主党・神奈川選挙区)がそれぞれ出演していた。
『暴れん坊将軍Ⅱ』は約40年前の1983年制作で、三原氏は素性を隠し市井にまぎれる将軍に、ある出来事を契機に恋心を抱く町娘の役。『新・科捜研の女3』は約15年前の2006年の制作で、石井氏は質店の社長だが、裏で金融業を営んでいて、融資先とのトラブルで殺害されるという役。三原氏および石井氏は、共に準主役であった。
BPOにはBS朝日から「参議院選挙候補者が選挙期間中に出演していた」旨の自主的な報告があり、また、視聴者からも「過去の出演とはいえ、公職選挙法に違反するのではないか」という意見が寄せられたため、委員会は当該局に報告書と番組DVDの提出を求め、討議を行った。
報告書には、出演者チェックやプレビューは購入時の4月のみで、放送直前には再度のプレビューを行わなかったこと、また、三原じゅん子氏は当時「三原順子」で芸能活動していたことをチェックの担当者が認識しておらず名前を見逃したこと、石井氏については番組資料の出演者リストの中に名前がなかったことなどが記載されていた。
また、再発防止策として、番組プレビューを購入時ではなく番組編成2週間前に行うことや、少なくとも選挙の公示・告示の1カ月前から内容・出演者が選挙期間にふさわしい作品かどうかを編成担当らが複数回確認する等が示されている。

上記の3番組は、委員会が過去に公表した3つの意見書で取り上げた問題を含んでいる。委員会は、2012年12月2日決定第9号「参議院議員選挙にかかわる4番組についての意見」において、参議院選挙期間中に再放送された番組に候補者が出演していた1番組について、放送倫理違反があるとは判断しなかったが、原因について出演者のチェックが行き届かなかったという単純なミスであることや選挙に対する関心の低さについて指摘をしている。
また、2013年4月には、知事選挙期間中に現職候補者の映像を放送したフジテレビのバラエティー番組『VS嵐』について、委員長談話を出し、参議院選挙の年であることに注意喚起も行っていたが、直後の参議院議員選挙期間中に再放送された番組に候補者が出演していた1番組があったため、委員会は、事態を重く見て、2014年1月8日第17号決定「2013年参議院議員選挙にかかわる2番組についての意見」において、視聴者に与える印象の程度は、他の候補者との間で公平・公正性が害されるおそれのある程度にまで達していることや選挙に対する全社的な意識づけの不足があった点も踏まえて放送倫理違反があると判断している。
さらに、2017年2月7日 第25号委員会決定「2016年の選挙をめぐるテレビ放送についての意見」においても、再放送された番組に候補者が出演していた1番組について審議を行っている(放送倫理違反とは判断していない)。
以上の意見書を踏まえて今回討議した3番組のうち、番組①は、候補者が番組の中で国のために働きたいなどの発言をし国政に出る気持ちが察せられたものの、放送に至る経緯をみれば、当該局に不注意があり、選挙と結びつける意図があったとは思われないこと、候補者がタレントでなかったことなどの事実が確認でき、番組②と③は選挙とは全く関係のない番組であることを踏まえて、いずれの番組も他の候補者との間で実質的には公平・公正性が害されるおそれがあるという程度にまでは達しているとまではいえないと考えられた。そして、いずれの放送局においても再発防止策がとられていることから、委員会は、その実効性に期待することとして、討議を終了した。
もっとも、参議院議員選挙のたびに、候補者が出演している再放送番組の放送が繰り返されることについて、委員から「いたちごっこ」になっているとして憂慮する声が相次ぎ、担当者のミスで終わらせるのではなく、出演者の名前を会社のシステムに登録しておくなどの仕組みによって防止できる可能性があること、放送番組は出演者にとっては利用価値のあるものであることを留意すべきであること、再放送であってもチェックには念を入れるべきであることなどの意見が出され、議事概要で改めて注意を喚起すべきであるとの結論で一致した。

3. 視聴者から「投票行動に多大な影響を与える」という意見が寄せられたフジテレビ『日曜報道THE PRIME』について討議

フジテレビは、第26回参議院議員選挙の投票日の7月10日(日)7時30分~8時55分に、討論番組『日曜報道THE PRIME』で、7月8日応援演説中に銃撃を受けて死亡した安倍晋三元首相の追悼番組『安倍晋三元首相を悼む…安倍氏の軌跡と日本の今後』を放送した。放送後、同番組について、視聴者からBPOに「実質的に特定の政党に投票を呼びかけるもので、公職選挙法に違反するのではないか」「放送法第4条、政治的に公平であることへの違反だ。投票行動に多大な影響を与える」といった意見が寄せられた。これを受けて委員会は、フジテレビに報告書と番組DVDの提出を求め、番組内容について討議した。
本件番組は、安倍元首相と所縁の深い3人の識者をコメンテーターとしてスタジオに招き、前半は、映像やコメンテーターが語るエピソードを通じて、安倍元首相の安全保障政策や外交政策の成果や功績について伝えた。後半は、銃撃事件の状況と警備上の問題点を専門家の解説を交えて伝え、選挙戦最終日を迎えた各党の同事件の受け止めを紹介し、最後に、コメンテーターが今後の日本はどうあるべきかについて語って終了した。
委員からは「自民党に直接つながることではないにしても、選挙の当日に、安倍元首相の功績や国際社会での評価を伝えることは、特定の政党の功績や評価を放送しているのと同じだと、視聴者に受け取られかねない」「番組の最後で、コメンテーターが、安倍氏の志を継いで憲法改正を岸田政権にやらせましょうと特定の政党へ投票を呼び掛けるに等しい内容の発言をしている。キャスティングの段階で、そういった発言が予期される場合、司会者や局側がどういう風にコントロールするのかを考えておくべきだ。番組制作のあり方に問題があったのではないか」という意見があった。
一方で「安倍元首相の襲撃事件を選挙前に報道した他の番組と比較して偏りがあるといえるだろうか」「特定の政党に投票を促すと認められる明示的な発言があったとまではいえないのではないか」「この番組が実際に投票行動を左右したかどうかを認定することは難しいのではないか」「銃撃事件のインパクトを考えると、週に1回編成されている番組が、その週を逃すと時期を逸するという気持ちになるのは分からなくもない。かなりレアな出来事に関して投票日当日に報道したということであれば、再発性は低いのではないか」という声があがった。
その上で、当該番組のみを取り上げて政治的な内容の番組に踏み込み具体的な判断を示すと、その判断が拡大解釈を招き、今後放送局が政治問題を伝えるにあたっての足かせになる恐れがあることに加え、当該番組が選挙についての報道・評論に関する番組とはいいがたく、他党の代表者の映像も含まれており、放送基準に照らして選挙の公正さや政治的公平性の問題として取り上げることは困難であるとして、本件番組については、委員から厳しい意見が出たことを議事概要に掲載して注意を喚起した上で、今回で討議を終了し、審議の対象とはしないとの結論に至った。

4. 8月に寄せられた視聴者意見を議論

8月に寄せられた視聴者意見のうち、ワイドショー番組などで旧統一教会に関連する様々な報道についての多様な意見や、情報番組で福島原発の処理水放出に関するコメンテーターの発言に対して批判的意見が寄せられたこと、宗教法人による悪質な霊感商法が社会問題となる中、霊能力者を自称する人物を番組出演させるのは不適切ではないかという意見があったことなどを事務局が報告した。

以上

第308回放送と人権等権利に関する委員会

第308回 – 2022年9月

「ペットサロン経営者からの申立て」ヒアリングを実施…など

議事の詳細

日時
2022年9月20日(火)午後3時~午後7時30分
場所
千代田放送会館会議室
議題
出席者
曽我部委員長、鈴木委員長代行、二関委員長代行、國森委員、斉藤委員、
野村委員、丹羽委員、廣田委員、松田委員、水野委員

1.「ペットサロン経営者からの申立て」ヒアリング及び審理

日本テレビは、2021年1月28日午前8時からの『スッキリ』で、「独自 愛犬急死 “押さえつけシャンプー” ペットサロン従業員ら証言」とサイドスーパーを出しながら、ペットサロンに預けられていたシェパード犬がシャンプー後に死亡した問題を放送した。放送は、犬の飼い主やペットサロン従業員など複数の関係者の証言を基に構成されていた。
この放送に対して、ペットサロン経営者の申立人は、「同番組内で申立人が、お客さんから預かっていた犬を虐待して死亡させたなどと、虚偽事実」を放送したと主張し、「字幕付きの放送をしたことで、申立人が預かっていた犬を虐待死させたかのように印象付け、事実に反する放送をすることで申立人の名誉を侵害した」として、BPO放送人権委員会に申し立てた。
これに対して日本テレビは、放送内容は真実であり、また「当社は事前に十分な取材を行っており、真実であると信じるにつき相当な理由」があり、「私たちの取材・放送によって人権と名誉が侵害されたという申立人の主張はいずれも根拠が無く、受け入れられません」と反論している。
今回の委員会では、申立人・被申立人双方へのヒアリングを行った。特に犬の死亡の経緯について詳しく話を聞いた。終了後、本件の論点を踏まえ審理を続け、担当委員が決定文の起草に入ることになった。

2.「ローカル深夜番組女性出演者からの申立て」審理

申立ての対象となったのは、あいテレビ(愛媛県)が2022年3月まで放送していた深夜のローカルバラエティー番組『鶴ツル』。この番組は男性タレント、愛媛県在住の住職とフリーアナウンサーである申立人の3人を出演者として、2016年4月に放送が開始された。3人が飲酒しながらトークを行う番組だが、申立人が、番組中での他の出演者からの度重なるセクハラ発言などによって精神的な苦痛を受けたとして申し立てた。
申立書によると、番組開始当初から苦痛、改善を訴えていたにもかかわらず、放送された他の出演者のトークが、申立人自身に対するものも含めてしばしば性的な内容に関することに及んで申立人に羞恥心を抱かせることで、また、そのような内容の番組の放送によって申立人のイメージが損なわれたことで、人権侵害を受け、放送倫理上の問題が生じたと主張している。
被申立人のあいテレビは、申立人は番組の趣旨を十分に理解した上で出演しており、申立人からの苦情も2021年11月が初めてで、また、番組の内容も社会通念上相当な範囲を逸脱しておらず、人権侵害や放送倫理上の問題はない、と主張している。
今回の委員会では、双方から提出された書面を確認した。今後更に提出される書面を待ち、議論を深めることとした。

3.「判断ガイド2023」体裁について

2023年発行予定の「判断ガイド2023」のウェブ上での体裁などについて、事務局から報告した。

4. 最新申立て状況

事務局から最新の申立て状況が報告された。

以上

2022年9月9日

NHK BS1 東京五輪に関するドキュメンタリー番組への意見の通知・公表

上記委員会決定の通知は9月9日午後1時30分からBPOで行われた。委員会から小町谷委員長、
高田委員長代行、西土委員、井桁委員の4人が出席し、NHKからは専任局長ら3人が出席した。
まず小町谷委員長から、NHKの報告等は字幕が誤っていたというトーンでまとめられているが、委員会は字幕の付け間違えという考えは取っていない。考えていただきたいのは、本件放送が視聴者に何を伝えたかということだ。五輪反対デモは確固たる信念を持った者が集まって行われているのではなく、主催者が金銭で参加者を組織的に動員し、主催者の意向に沿って行動させているという誤った印象を視聴者に与えることとなったと考える。なぜ、このような事態が起きたのか。委員会は取材、編集、試写の各段階に問題があると判断するに至ったとし、委員会決定に沿って問題点を説明した。
井桁委員は、重大な放送倫理違反と判断した理由について、単なる過失を超えていること、放送の影響が大きかったことの2点を挙げて説明した。コロナ禍での五輪開催という、国民の議論を二分するような大きなイベントに関して、その反対デモという一方当事者の信用や評価を傷つける結果となったことは否定できないと述べた。
高田委員長代行は、男性が五輪反対デモには行かないんだと繰り返して発言しているのにもかかわらず、なぜ、行くかもしれないといったようなことが番組のメインとして扱われることになったのか。一種の思い込みの暴走みたいなものに、なぜストップが掛けられなかったのか、非常に残念であり、疑問だと述べた。
西土委員は、国民が知りたいと思う社会的出来事に対する放送人の関心があって初めて、放送人の行動を規律する放送倫理が活きてくると思う。しかし、本件放送関係者はデモに対する関心が薄く、放送倫理違反に至ったということになる。本件放送は放送倫理の適用の在り方を検討する以前の問題を提起しているのではないか。その意味で、放送倫理を意識する上での条件を見直すべきことを問いかけているように思うと述べた。
これに対してNHKは、「指摘を真摯に受け止める」「取材や制作のあらゆる段階で真実に迫ろうとする放送の基本的な姿勢を再確認し、現在進めている再発防止策を着実に実行して、視聴者の信頼に応えられる番組を制作してまいりたい」と述べた。

その後、午後2時30分からオンライン形式による記者会見を開き、委員会決定を公表した。記者会見には57社118人が参加した。
はじめに小町谷委員長が、本件放送が視聴者に何を伝えたのか、何が問題だったのか、委員会決定に沿って説明し、放送倫理基本綱領及びNHK放送ガイドラインに基づき、重大な放送倫理違反があったと判断したと述べた。そして、従来、委員会が取り上げる事案は経験の少ないスタッフが関わるものが多かったが、最近は他局も含め、中堅スタッフが中心になったケースが散見される。中堅スタッフに何らかの問題があるとすると、若手スタッフの育成を担うことができないということになる。すると、全体として、放送の質が下がっていく可能性があり非常に危惧するところだ。そういうことのないよう、ぜひ、取材の基本である事実確認を改めて徹底していただきたいと述べた。
続いて井桁委員は、本件放送は悪意に基づくものではないかという憶測を呼んでしまったことも否定できない。1つのイベントに対する意見を、一方的におとしめるような悪意があったのかもしれないと思われてしまった。そのように視聴者に誤信させてしまったという影響も無視できないと考えていると述べた。
高田委員長代行は、一番印象に残っているのは、ヒアリングの際に現場スタッフの方のほぼ全員がデモとか、いわゆる社会的活動に関心がないということを、あっけらかんと語っていたことだ。もともと関心がない、だから深く考えなかったと繰り返していた。放送番組を作る側の感度、意識の低さというか、そういう部分も今回の問題の背景にあったのではないかと思うと述べた。
西土委員は、ある研究者の言葉(※)を借りるなら、「あるテーマのための集会に自らの身体を投入するという判断には、相当の決意」が必要なはずだ。五輪反対デモのように、政府の政策に、ある意味で反対する。そのために「自らの身体を人々の前に投入することは、何らかの損害を被るリスクを高める」と私も思う。リスクがあるにも関わらず、あえて声を出している人々の尊厳を傷つける結果となってしまった重大さをNHKは噛みしめていただきたいと述べた。
記者からは、委員会決定の付言:字幕問題に限定されるべきではなかった、について質問が重なった。「NHKが字幕問題に収れんしてしまった原因をどう考えるのか」という問いに対して小町谷委員長は、「まず、委員会は放送局の自律を支援するという立場にある。委員会が報告書の提出を依頼する前からNHKは報告書の準備を進めていた。そういう自律的な動きは尊重したい。ただ、委員会はNHKの報告書とは違う視点で本件を見たということだ。NHKの報告書がどうしてそうなったのか、私たちはそれを追及する立場にはない」と答えた。
「単なる字幕の付け間違いという問題ではないということだが、どういう問題だと認識しているのか」という質問に対して高田委員長代行は、「NHKの報告書と委員会決定を見比べるとわかると思うが、NHKの報告書には、五輪反対デモについての発言ではないものを、五輪反対デモのものとして編集したとか、そういったところは強く書かれていない。あるいは、男性は2時間ほどの取材の中で、カメラが回っている取材の中では、一貫して五輪反対デモには関心がない、自分は行かないということを言い続けたというところはNHKの報告書からは十分に読み取ることができない。しかし、委員会は検証の結果、そういう判断をしたということだ」と述べた。
その他の質問は、事実関係の確認に関するものが多かった。

(※)毛利透「集会の自由―あるいは身体のメッセージ性について」毛利編集『人権Ⅱ』(信山社、2022年)244頁以下

以上

第43号

NHK BS1 東京五輪に関するドキュメンタリー番組への意見

2022年9月9日 放送局:NHK

NHKは2021年12月26日に放送したBS1スペシャル『河瀨直美が見つめた東京五輪』後編の字幕の一部に不確かな内容があったとして、2022年1月9日、番組と局のホームページで公表し謝罪した。番組は、東京五輪の公式映画監督である河瀨直美さんと映画製作チームに密着取材したもの。男性を取材した場面で「五輪反対デモに参加しているという男性」「実はお金をもらって動員されていると打ち明けた」という字幕を付けて伝えた。放送後、視聴者から字幕の内容が事実であるかの問い合わせが相次ぎ、NHKが男性に確認したところ、実際に五輪反対デモに参加していた事実を確認できず、字幕の内容が不確かだったことがわかったという。
委員会は、取材、編集、考査、調査の各段階で問題があるのではないかといった厳しい意見が相次ぎ、放送倫理違反の疑いがあることから、2月の委員会で審議入りを決め、議論を重ねてきた。審議を経て、委員会は次のとおり事実を認定した。①番組は五輪反対デモに参加していない男性を参加したかのように描くものだった。②男性のその他の発言についても事実の確証は得られていない。③別のデモに関する男性の発言を五輪反対デモに関するものであるかのように編集した。④男性に対し適切な説明をしなかった。そして、放送の結果、番組はデモの参加者はお金で動員されており、主催者の主張を繰り返す主体性のない人々であるかのような印象を視聴者に与え、デモの価値をおとしめたという問題も生じた。以上から、放送倫理基本綱領、NHK放送ガイドラインに反しているとして、重大な放送倫理違反があったと判断した。

2022年9月9日 第43号委員会決定

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目 次

2022年9月9日 決定の通知と公表

通知は、2022年9月9日午後1時30分からBPOで行われた。
また公表の記者会見は、午後2時30分からオンライン会議システムを使用して行われ、委員長および担当委員が委員会決定の説明と質疑応答を行った。
会見には57社118人の参加があった。詳細はこちら。

2022年12月9日【委員会決定に対するNHKの対応と取り組み】

委員会決定 第43号に対して、当該のNHKから対応と取り組みをまとめた報告書が2022年12月8日付で提出され、委員会はこれを了承した。

NHKの対応

全文pdf

目 次

  • 1) 委員会決定の放送対応
  • 2) 放送現場への周知
  • 3) 経営委員会・放送番組審議会への報告
  • 4) 放送倫理委員会の開催
  • 5) コンテンツ品質管理連絡会の実施
  • 6) BPO 放送倫理検証委員会との研修会
  • 7) 再発防止に向けて

2022年8月に視聴者から寄せられた意見

2022年8月に視聴者から寄せられた意見

旧統一教会関連の報道、ドラマの中での反社会的勢力の描き方、バラエティー番組への「霊能力者」の出演などに意見が寄せられました。

2022年8月にBPOに寄せられた意見は1,548件で、先月から1,195件減少しました。
意見のアクセス方法の割合は、メール81%、電話17%、郵便・FAX各1%。
男女別は男性44%、女性17%で、世代別では40歳代27%、50歳代22%、30歳代21%、60歳以上14%、20歳代11%、10歳代1%。
視聴者の意見や苦情のうち、特定の番組や放送事業者に対するものは各事業者に送付、8月の送付件数は618件、54事業者でした。
また、それ以外の放送全般への意見の中から19件を選び、その抜粋をNHKと日本民間放送連盟の全ての会員社に送りました。

意見概要

番組全般にわたる意見

旧統一教会関連の報道、ドラマの中での反社会的勢力の描き方、バラエティー番組への「霊能力者」の出演などについての意見が寄せられました。
ラジオに関する意見は27件、CMについては15件でした。

青少年に関する意見

8月中に青少年委員会に寄せられた意見は71件で、前月から68件減少しました。
今月は「表現・演出」が17件、「要望・提言」が10件、「性的表現」と「編成」が、それぞれ6件ずつと続きました。

意見抜粋

番組全般

【報道・情報】

  • 世界平和統一家庭連合(旧統一教会)をめぐる報道について。法令違反や反社会的行動があれば当然批判されるべきだが、エスカレートする報道に影響されて、信教の自由を尊重してきた視聴者の気持ちに、いささかでも変化が生じないかと心配。

  • 旧統一教会の記者会見について。さまざまな問題が指摘されている教団の主張を、生中継でそのまま放送したことに若干の懸念を持った。「教団の言い分」であることを明示して視聴者の注意を喚起してもよかったのではないか。また、脱会したばかりの元信者に影響を及ぼすのではないかと気になった。

  • 旧統一教会問題の追及を継続してもらいたい。政治家との癒着によって、旧統一教会のさまざまな問題が放置されていたのであれば許しがたいと感じる。

  • ある政治家を名指しして、事務所のスタッフに旧統一教会の関係者がいると、コメンテーターが発言していた。事務所スタッフの人数は限られているだろうから特定は不可能ではあるまい。信仰はきわめてセンシティブな個人情報であり、番組で暴露しようとする言動は不適切かと思う。

  • 家庭連合の仲間は報道によって仕事に行きづらくなり、学校でイジメにあい、あるいは人間関係が崩壊するなどしている。ワイドショーなどでの出演者の誤った発言による不利益の責任は誰が取るのか。

  • 旧統一教会の反社会的な活動はもちろん報じるべきだが、安倍元首相が被害者であるということを忘れてはならない。また、旧統一教会の構成員にも日本国民である限り参政権は認められている。報道各社が「報道の自由」を濫用していると感じる。

  • 東京渋谷区で起きた女子中学生による殺人未遂事件で、被害者が路上に倒れている映像が繰り返し放送された。現場映像の重要性は理解できるが、刺された直後の映像を何度も見ていると恐怖心や不安が募るし、被害者やその関係者の心情を傷つけるのではないかとも思う。事件に遭遇した一般の人がスマホなどで撮影した映像、特に視聴者への刺激が強い映像の使用については冷静、慎重であってほしい。

  • 自治体の指定した避難場所が自宅より氾濫箇所に近かったり、避難場所まで行く手段がなかったりなど、どのように行動すべきか迷うことがある。被災現場のローカル局は、地元の地形や道路事情などに詳しいはず。「避難してください」という呼びかけを繰り返すだけでなく、安全な場所はどこか、利用できる移動手段は何かといった、実際の避難行動に役立つ具体的できめ細かな情報を伝えてほしい。

  • ラジオの情報番組のコメンテーターが新型コロナ政策に関する東京都知事の発言について「バカじゃないの」、「人間のクズだね」などと侮辱していた。パーソナリティーの制止などもなし。番組中で行き過ぎたコメントなどがあればフォロー、修正するのがパーソナリティーや制作者の役割だと思う。

  • 情報番組のコメンテーターが福島第一原発の処理水海洋放出について「環境に与える影響が非常に大きい」と発言したことに驚いた。この問題についてはIAEAが国際基準に照らして問題はないという結論を出している。IAEAの見解に反論するのであれば科学的根拠をしっかり示して主張すべきだし、そうではなくて科学とは異なる観点から論じたかったのであれば、もう少し丁寧に言葉を尽くして説明すればよかったと思う。

  • 内閣改造の際、大臣に内定したと分かった人の名を、ひとりずつ速報する必要はあるのだろうか。ちょうどその時間帯に、記録的短時間大雨情報など警戒が呼びかけられている地方があった。組閣速報により気象情報への注意がそれてしまうのではないかと気になった。

  • 「使用済みのマスクを売ります」という女性を取材していた。コロナ禍での生活の実情を映し出した企画だったが、売る側の女性だけではなく、買う側の男性を追跡して取材すれば、さらに問題を掘り下げることができたと思う。買い手がいるから売買が成立するという側面にも触れてほしかった。

【バラエティー・教養】

  • 旧統一教会関連の報道でいわゆる霊感商法が取り沙汰される中、"心霊現象"を扱うバラエティー番組に、過去に相談者の不安をあおったとして損害賠償命令を受けている"霊能力者"を起用し続けているのは不適切。この人物は自身のウェブサイトで番組出演を自分の宣伝のように利用している。放送局が被害の一因を作ってはいないか。

  • 建設重機でビールのジョッキをつかんで人の前に置いたり、焼肉をつかんで人の口元まで近づけたりしていた。ビールや焼肉を提供される側の出演者にはヘルメットなし。安全管理の意識が低すぎるように思う。

  • 制限時間以内に止めないと小麦粉の入った風船が破裂して粉まみれになる装置の作り方と破裂の様子を紹介していた。粉塵爆発の可能性がある大変危険な装置ではないのか。

  • アニメのキャラクター「妖怪人間」に似た人がいるという視聴者の情報に基づいて、その人物を捜すという企画。人の容姿を好奇心の対象にする発想に違和感を覚えた。また、捜し当てた当該人物に取材の同意を得る際に、「妖怪人間」と表現していることなど企画の細部をきちんと説明したのか疑問が残った。その点についてもう少し具体的な説明を番組内で行ってもよかったと思う。

  • カルガモ親子の"引っ越し"に密着、という企画を放送していた。カメラマンをはじめスタッフが大勢で追いかけたことは、カルガモにとって大きなストレスになったのではないかと思った。カルガモはパニックを起こしていたかもしれない。離れたところから静かに見守るべきだと考えるが、もし、今回の番組のような形で密着するのであれば、子カルガモが溝に落ちたときには助けてやるなどしてもよかったのではないだろうか。

【ドラマ】

  • ドラマで、反社会的勢力から不当な要求を受けている被害者を、弁護士が「なすすべがない」と突き放し、その後被害者が警察に相談したかどうかは描かれなかった。また、いわゆるねずみ講に加担してしまった登場人物が、契約解除の申し出を拒否され、その場で暴力に訴えるなど、トラブルに遭った時の対処の仕方について、視聴者を惑わせる可能性があるのではないかと心配になった。また、結婚相手とその家族の経歴や資産状況を細かく調査したという、いわゆる"身上調査"について、当たり前のことのように描かれていたことに違和感を覚えた。

【その他】

  • 夏休み中は、子どもが普段より遅くまでテレビを見ている。美容整形などのCMの放送については、夏休み期間という事情を考慮してほしい。

  • 地方でテレビを見ていると、全国ネットの番組が最後まで放送されずに終わってしまうことがよくある。できれば最後の部分も見たい。何とかならないだろうか。

青少年に関する意見

【「表現・演出」に関する意見】

  • バラエティー番組で、昭和の時代の実写映像の中に教師がパンツ一枚の生徒を背後から竹製の物差しでたたくシーンがあり、「愛のムチ」と紹介された。未成年者に対する暴行でしかない映像を扱うにあたっての配慮が不十分だ。

  • バスや鉄道を乗り継ぐバラエティー番組で、自転車で走行中に「止まれ」の標識が見えるのに一時停止しなかったり、安全確認しないまま横断歩道を渡ったりする場面があった。子供が視聴する時間帯の放送で、堂々と交通法規に違反するのはいかがなものか。

  • バラエティー番組で「熱さ我慢対決」として、蒸し器から出したてで熱々のメガネや帽子、Tシャツをいかに素早く身に着けるかを競わせていた。芸人たちが熱さに耐えながらやる様子を面白がる趣旨だ。子供が真似するかどうかは別にしても、何らかの悪影響があるだろう

【「要望・提言」】

  • 週末を使ったチャリティー放送に、私の孫たちは毎年のように、貯金しては寄付している。集まった金額は公表されるが、使途の詳細は明かされない。募金したお金がどこにどう使われているのかを明確に出してほしい。

【「性的表現」に関する意見】

  • 夜8時からのバラエティー番組でお笑い芸人にドッキリを仕掛けるコーナーがあり、下着姿のセクシーな女性が喘ぎ声を上げながら悶えるシーンが、繰り返し放送された。子供もまだ起きている時間帯に、このような内容は非常に不適切だと感じた。

  • 朝の情報番組の中で男性芸人が、おすすめの商品をフリップに手書きして紹介する際に、著名な清涼飲料の商品名(アルファベット)を、ボケでわざと一文字間違えて、アダルトサイトの名称を書き、ネタにした。夏休み中で、子供も見ている時間帯に流す内容ではなく、不適切なものだ。よく考えてほしい。

【「編成」に関する意見】

  • 23時台放送の連続ドラマを、まだ夏休み中なので遅い時間まで起きて家族で見ていたら、突然怖い映像が連続してあり、わが子がショックで夜眠れなかった。23時台でも起きている未成年者は多いので、このような映像のドラマは夜中にやってもらいたい。

2022年6月28日

「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」に関する『見解』をテーマにした「意見交換会」内容報告 & 事後アンケート調査結果報告

◆概要◆

青少年委員会とBPO加盟各社との意見交換会を2022年6月28日、千代田放送会館2階ホールで開催しました。在京・在阪の放送局およびNHKには来場してもらい、全国の加盟社にはオンラインで同時配信しました。
放送局の参加社は、会場の在京・在阪局が12社39人、全国の加盟社のオンライン参加が105社で、アカウント数は230でした。
委員会からは榊原洋一委員長、緑川由香副委員長、飯田豊委員、佐々木輝美委員、沢井佳子委員、髙橋聡美委員、山縣文治委員、吉永みち子委員の8人全員が出席しました。

最初に榊原委員長から、「皆さん、お集まりいただき、ありがとうございます。この『痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティーについての見解』を作成するにあたり、まとめ役をしてきました。この意見交換会では『見解』をまとめるに至るまでには様々な考え方があったことをお話ししたいと思います」と挨拶がありました。

続いて同じく榊原委員長から今回の『見解』の趣旨や、『見解』を出すに至った経緯などについて説明が、そして起草担当委員から補足説明がありました。

○榊原委員長
まずどのような経過でこの『見解』を公表したのかについて簡単にお話しします。
会場の皆さんの中には昨年11月に在京局の関係者を招いて開催した勉強会・意見交換会に参加された方もいらっしゃるでしょう。この時の意見交換会はまさに『見解』の議論の過程のひとつでした。実際にこのような『見解』になるかどうかまだ分からなかったのですが、こういうテーマを議論しようとなってもう1年近く経っていると思います。
どうしてそれが、私たちの委員会で検討する俎上に上がったかについて、簡単に経緯をお話しします。
まず、これは青少年委員会、あるいはBPO全体もそうなのですが、その性質に関わっている点があります。私たちは「視聴者からの意見」というモニターを行っています。視聴者から届く様々な意見がきっかけとなって、私たちははじめて活動を起こします。私たちは「視聴者からの意見」と離れたところで課題を見つけることは基本的にしません。「視聴者からの意見」の数や内容という一定の基準を作って、委員会の俎上に上げるプロセスをとっていて、全てが「視聴者からの意見」でスタートするのです。
BPOは民放連とNHKが、いわば、皆さんが作った第三者機関で、放送を見た誰もが意見を寄せることができます。BPOはその窓口です。
今回の『見解』に対してニュースやインターネット等で様々な意見や批判があるのは承知しています。しかし、その中の多くの方が誤解しています。BPOが検閲や規制をする機関であるかのような言い方をされ、それが一般の視聴者だけでなく、ニュース記事を書く記者の中にも全くの誤解を基に書いている方がいることはとても残念に思います。
BPOは政府の干渉から放送の自由を守るための仕組みとして、皆さんが作ったものであることを、ぜひ思い返してください。
それから、BPOは政府などの機関と違います。(その決定は)法律とも違います。今回公表した『見解』にも、法的あるいは道義的な規制力はありません。視聴者から寄せられた意見についてどう考えたらよいのかを、エビデンスに基づいて解釈して皆さんにお返しする役割であることを理解してください。
もうひとつの経緯として、BPOは今回とほぼ同じ内容の見解や意見をこれまでに3回出しています。青少年委員会からは2000年に「バラエティー系番組に対する見解」、2007年に「『出演者の心身に加えられる暴力』に関する見解」を、また放送倫理検証委員会から2009年に「最近のテレビ・バラエティー番組に関する意見」を出していて、決して今回が初めてではありません。
『見解』について事前に皆さんから寄せられた質問の中には「痛みの定義とは何か、ガイドラインを示せないか」という趣旨のもがありましたが、BPO青少年委員会の性質とは相容れないものです。私たちは基準やガイドラインを示したり、こうすべきだと言ったりするような委員会ではありません。この『見解』は、「視聴者からこんな意見が来ているが、これにはこういう意味があるのではないか、今後番組を制作するときにぜひ念頭に置いて制作していただきたい」という思いから作ったものです。
「規制をかけるのは何事か」という意見もありますが、私たちには規制をするような権限はありませんし、BPOはそういうために作られたのではないということは確認しておきたいと思います。
この後は『見解』の起草を担当した各委員から補足説明をしてもらった後、質疑応答に移りたいと思います。

○髙橋委員
私はおもに子どもの自殺問題に関して活動していて、いじめに関することと自殺に関することはリンクする部分があると考えています。2013年に「いじめ防止対策推進法」ができて以来、この10年でいじめに関する社会的な情勢がかなり変化してきました。そんな中、番組がいじめを助長することにならないかという視点は欠かせないと思っています。
加えて、今は子どもたちが動画を撮ってそれをSNSに投稿できる時代です。ちょっとしたドッキリの仕掛けであればまねできてしまい、それをSNSで拡散できる時代であると感じます。下手をするとYouTubeなどの投稿動画のほうが悪質な場合が多いです。(映像が) 子どもに与える影響が時代とともに変わってきていると思います。

○沢井委員
私たちは今回の『見解』を科学的なエビデンスに基づいたものにしようと考えました。テレビ放送は70年の歴史があり、番組が視聴者に与える影響についての研究は蓄積され、そのメタ分析から共通項が見出せます。映像で攻撃的な行為を見たり、それを周りが平然と見ている様子を視聴したりすることで、その模倣が生じることを報告する論文が多くあります。
今回の『見解』の新しい点は、痛み苦しんでいる人を傍観的に見ている、あるいはワイプの中で人の苦痛を笑いながら見ている番組が近年増えているという指摘です。「痛みがあってはいけないのか?」という議論もありますが、心理的・肉体的な苦痛を味わっている様子が演じられていたものだとしても、その様子を周辺が見て笑っているという、「潜在的な攻撃性が模倣される可能性」が、今回の問題点です。
「人を殴る場面がテレビ番組、例えばドラマなどにもあるのに、なぜそれについて言わないのか」との意見がありますが、フィクションという枠組みが明確なものは、5歳の子どもでも「ああ、こういう物語か」と分かります。今回は、痛みを受けた人を遠巻きに見て笑うという多重構造のバラエティーが問題ではないかと言っているのです。
『見解』の中で具体的な例を2つ挙げました。下着の例と、3メートルの深い落とし穴に6時間落としたままにしておく企画です。この2例にふだんの10倍の数の視聴者意見が来ました。私たちは視聴者が感じる不快をただ代弁するのではなくて、なぜそれを不快と思う人がいるのか、なぜここで共感性の問題を問わなくてはいけないのかということを、科学的なデータを基に説明する必要があると思いました。視聴者意見の代弁というより、それに対して解釈を加えながら説明する。そして、問題点を指摘し、もう少し違う視点で面白いものを開発できないかという提案の気持ちも込めて、この『見解』を書きました。

○緑川副委員長
私の仕事は弁護士ですが、弁護士の仕事は紛争が生じたときに生じた事実に法律や規範を適用して結論を導いていきます。ですから、何か問題が起こったときにはどうしても、法律はどうなっているのだろう、ルールはどうなっているのだろう、規範はどうなっているのだろうと考え始めて、そこに対して生じている事実がどのように当てはまるのかという思考で仕事をしています。
しかし青少年委員会で、テレビ放送が青少年にどういう影響を与えるのかを考えるときには、BPOの例えば放送人権委員会のように特定の表現が人権を侵害しているのか、放送倫理に違反しているのかというような思考方法とは違ってきます。そこには、これ以上やったら青少年に悪影響を与えると、私たちが当てはめられるようなきっちりとしたルールがあるわけではありません。やっていいルール、やってはいけないルールがあるわけではないのです。
私自身も子どものころは、「8時だヨ!全員集合」を毎週のお楽しみとして見ていた世代で、テレビで子どもによい影響を与えないと言われている番組を見ることが実際子どもにどのくらい影響を与えているのか、説得力のあることなのかと思っていたところがありました。
青少年委員会に入って、毎月届く視聴者意見を見ていると、誰かに痛みを与え、それを笑っているバラエティー番組に対する視聴者意見が毎月一定数、継続して来ていることが分かりました。番組制作者、また私たち第三者機関の委員は、青少年に対する影響というものが説得力のある科学的な根拠を持ったものなのかどうかを、きちんと考えなければ、調べなければ、確認しなければいけないと思うようになりました。
委員長からも「毎回こういう意見が来ている。一度考えてみたほうがよいのではないか」という示唆があり、青少年に対する影響、子どもに対する影響というのが科学的にどういうふうに研究されているのか、科学的な根拠を確認したいという意見も申し上げて、今回の検討が始まりました。発達心理学や小児科医という子どもについての専門家が多くいる中で、時間をかけて世界的な知見について説明を受けて今回の『見解』になりました。
私たちは、こういう研究があることをテレビ番組の制作者の方々とも共有をして、その中で今のこの時代、公共性を持っているテレビとしてこれからどう表現を工夫していくべきかを一緒に考えていきたいと捉えています。
BPOが『見解』などによって、結果的に番組制作者に不自由さをもたらしてしまうのではという意見もあります。青少年に影響があると思えば、この表現はやめておいたほうがよいのではという発想が出てきますが、表現の内容も方法も無限にある中で、今のこの時代や社会において工夫を凝らしていい番組を作っていくということを、私たちも一緒に考えていきたいと思っている次第です。

主な質疑応答の内容は以下のとおりです。

Q:痛みを伴うバラエティーに関して、痛みの判断基準はどこまでがOKでどこまでがNGなのでしょうか。制作者側の物差しになるようなガイドラインは作れないのでしょうか。

A:(榊原委員長)私たちは「ガイドラインを作成してここまではいいですよ」と判断するような立場ではありません。基本的には視聴者である青少年が「本人が苦痛を感じている」「すごく痛そうだ」と思うかどうかです。その痛みは演技である可能性もあると思います。しかし、それを見て「これはちょっとすごく痛そうだ」あるいは「苦痛だ」という「苦悩」、そういう表現が、私たちがここでいう「痛み」になります。
格闘技やドラマの中にも暴力シーンが出てきますが、流れの中、ルールの中でやっているのだということが予見できるものは、表面的に「痛い」と見えても今回対象としたものではありません。
それからもう一点。ただストレートに見るだけではなくて、スタジオにいる人たちがその場面を見て嘲笑している、楽しがっている。この2つのことが同時に見られるということが、私が(『見解』の中で)ミラーニューロンという脳科学の話を出しましたが、子どもたちの中で「これは何なんだろう」と、つまり人が苦しがっているとしか見えないのに、周りにいる人がこんなに笑っている。それをリアリティーショーとして見た場合、何度も何度も見る過程の中で、子どもたちの中には、例えば実生活で他人が苦しみを味わっていても、それを傍観するような姿勢につながる可能性があるということです。
ですから、判断基準というのは書かれたものはありません。表現、演出は皆さんの専門ですので、そこはきちんと見ていただいて、例えば「小学生ぐらいの子どもがこれを見たらどう思うだろうか」というように想像力を働かせて、皆さんの中で判断してもらいたいと思います。

Q:芸人が覚悟を持って臨む“お約束的な”痛みを伴う笑いは明るくおおらかな気持ちで見ることができますが、一方でいわゆるドッキリのように本人が予期せず痛みを受ける姿を笑うような番組には不快感を覚えます。これらをひとくくりにせず分類するような動きはありますか。

A:(榊原委員長)覚悟を持って、明るくおおらかな笑いの気持ちで見ることができるような演出・演技というのはたくさんあると思います。私たちが審議に入ったところで、社会的には大みそか恒例の人気番組に対して向けられたのではないかと言われました。私たちには青天の霹靂でした。今回の審議入りの際に、あの番組については視聴者から批判的な意見は来ていませんし、私たちもあの番組のことは全然対象に考えていませんでした。あの番組はある程度のルールの下で行われている、ゲームと言うと怒られますが、それは子どもにも分かります。小学生の間でもとても人気のある番組で、私たちは審議する段階でこの番組のことは対象として考えていなかったというのが事実です。

(沢井委員)分類してはどうかという点に関しましては、これは作り手の方が分類をなさってもよいのかなと思います。それなりの基準というものを、制作の方がそれぞれに企画の助けとしてお作りになればよいと思います。
拷問のような、「自分ではどうにもできない状態で苦しむもの」が、今までの視聴者の意見においては、非常に不快を持って受け取られる傾向にあります。
痛みがあっても、出演者が挑戦して、乗り越えていくとか、何かを獲得していくとか、メダルを取るとか…という場合では、視聴者は共感を持って見ますし、応援したくなります。例えば『SASUKE』の海外版『THE NINJA WARRIORS』は非常に人気があります。チャレンジする姿は痛そうで辛そうですが、罰ゲームはひとつもない番組です。ゴールまでたどり着けるか否かを競うだけで、ルールも明確です。苦しみがあってもそれが共感になるという構成で、国際的にも評価されている番組です。
日本のバラエティー番組は罰ゲームが多過ぎると思います。なぜこれほどまでに罰を与えなればいけないのか疑問です。輝かしい競争というものがあれば、そこで競い合う姿を見て、誰かを応援するということだけで、視聴者はハラハラドキドキしながらも面白いわけです。

Q:行為の見た目とは違い、被行為者が受ける痛みがほとんどないような場合も見た目が痛そうだからよろしくないという判断になるのでしょうか。お笑い芸人の突っ込みもその部類に入ると思いますが。

A:(榊原委員長)被行為者の受ける痛みがほとんどないような場合でも視聴者にはその場面からしか情報は入りません。特に年齢が小さい子どもには、そこに見えることが全てです。実際には痛みがなくても、明らかに痛みが起こっているように見える演出があった場合、さらにそれを周りの人たちが笑うような場面があった場合、子どもたちによい影響を与えないと思います。
お笑い芸人の突っ込みは、それが芸として成り立っている場合、文脈の中でやっているということが見る側にも明らかです。ひとつの芸として痛い思いをされて、それがまた受けるというような芸が確立している場合には、みんな「来るぞ」という感じで見るわけですから、それは見る側にとって先ほど言った大きな心の痛みにはならない。ただ、同じように2人でやっている場合でも全く予想のつかないところで本当にパンチを喰らわせてしまったときなどで、本当にそれが痛かった場合はリアルに見えると思いますし、この間の線引きだと思います。
お笑い芸人のよく確立された突っ込み芸について、私たちはこれが痛みを伴うことを笑うという対象になるとは最初から考えておりませんでした。

Q:関西には伝統芸能と言ってもよい吉本新喜劇があります。暴力シーンがたびたび出てきます。何かというと棒のようなものや灰皿やお盆で叩いたり、女性の芸人さんを壁に投げ飛ばしてぶつけて目が回るようなしぐさをする場面が頻繁にあります。関西では子どものころからなじみのある芸なので一定の理解をしてお約束事と受け止めますが、いかがでしょうか?

A:(榊原委員長)痛みを伴うことを笑いとするということに該当する番組はどういうものがどのくらいの数があるのかを、数年にわたって見ていますが、吉本新喜劇が視聴者意見で批判的なものとして寄せられたことはほとんどありません。見る方は分かっているのではないかと思います。上からたらいが落ちてきたりするのは芸の流れの中であることは、みんなから理解されていると思います。もちろん私たちも吉本新喜劇が該当するという考えは最初からありませんでした。

Q:先日、亡くなられた人気芸人の熱湯風呂やアツアツおでんのような芸は、痛みを伴うバラエティーの対象にならないと考えてよろしいのでしょうか。

A:(緑川副委員長)
ご本人の芸は有名ですし、今までの説明や質疑応答でもお話ししたとおり、今回の委員会の『見解』が対象にしているものでないことはご理解いただけたのではないかと思います。
今回の『見解』の4ページに、他人の心身の痛みを周囲の人が笑うことを視聴することの意味ということで、今回の『見解』の趣旨を特徴づけていることをご理解いただけるのではないかと思います。文脈があり、見ている人たちが気持ちよく笑える演芸とか芸とか技術とか、そういう域に達している笑いの中に痛みがあるということを問題にしているのではなく、そこを人が嫌がって避けようと思っていて、避けたいのに羽交い絞めにして痛みを与え、そのことをさらに周りで嘲笑していることが、科学的には子どもによい影響を与えないということがあるのではないかということを、一定程度考えて番組制作をしていくためのひとつの情報というか、そういうことがあるのだということを共有していきたいという趣旨で作った『見解』です。そういう観点から番組制作に役立てていただければと思います。

Q:痛みを伴うバラエティーというくくり自体が広過ぎるので、もう少しテーマを絞られたほうがよかったのではないかと思ったのですが…。

A ;  (榊原委員長)どういう名前(『見解』のタイトル)にしようかということは確かに話し合いました。今回はひとつの番組ではなくて、とてもたくさんの種類がある中で共通点がある批判というかコメントが多かったので、番組名を挙げるのではなくて全体的に扱おうということで、この名前に決めました。
昨年11月に在京局の皆さんと意見交換したときにも、「少し広過ぎるのではないか」という同様の意見が出ました。ただ、実際に議論をする中で、私たちの一番の骨子は本当に苦しんで苦痛に見えるところを周りで笑っているというところ、その中で例えば共感性の発達などによくないだろうということが、だんだんと焦点化されてきた経過がございます。誤解を呼ぶような可能性があったかなという点ではおっしゃるとおりだと思っています。

Q:今は、ものすごい多様性の世の中で、YouTubeもあれば漫画もある、映画もある、いろんなものがあり、子どもたちも同様にこの多様性の中で生きています。小学生と高校生だと考え方も違うと思いますし、実際に番組を子どもが見て、いじめといったところに本当にどれだけリンクしているのかというのが我々には分からないところがありますので、そういうことも教えてほしいと思いますが。

A:(髙橋委員)いじめに関することで報道等に関連するデータはないのですが、少なくとも惨事報道や自殺に関する報道に関しては、心理的な影響があるということが、今までの東日本大震災や9.11のテロのときの研究で分かっています。私自身もこのお笑いのことだけではなくて自死に関する報道に関しても、これは子どもたちにどういう影響があるのかを見ているところですが、バラエティーに限らず報道全般の問題だと思います。
今回この議題が上がったのは、BPOの側からではなく、視聴者からいろいろな意見が届いたからです。それを取り上げて、視聴者と番組制作者との間で私たちは調整をしながら、これをどういうふうに持っていったらよいかを一緒に考えていく立場だと思っています。この番組は駄目とかそういうことではなくて、みんなで一緒に考えていくというスタンスです。

(沢井委員)子どものいじめについてその影響がすぐに出るかどうかですが、放送番組を見てから3か月後かもしれないし、5年後かもしれません。攻撃的な番組ばかりを見ていた、罰ゲームばかり見ていたこと…等々が影響する可能性や因果関係をすぐに見ることは難しいです。
子どものSOSの電話の話し相手をしているボランティアによると、「テレビ番組の罰ゲームをまねした強烈ないじめを受け、死にたいと言ってきた小中学生が複数いる」とのことでした。なかなか表に出ない話ですが、ある程度の数があるだろうと予想されます。

Q:本日、お話しいただいたような痛みを伴うバラエティーの痛みの真意について、BPOから直接、記者や芸人さんに向けて発信していただけたらありがたいのですが…。

A:(榊原委員長)意見交換会という形で私たちの考えを正直に申し上げたのは、それを皆さんの中できちんと分かっていただければよいのではないかと思ったからです。私たちは、「いや、この番組は違う、これは違う」ということを申し上げるべき立場ではないと思っています。つまり、BPOがこう考えているということによって、私たちは皆さんに考えていただきたいということで、一般的な問題の投げかけをしたと思っています。
皆さんにはこの『見解』を作るときには大みそかの番組のことが頭になかったことも申し上げましたし、亡くなられた人気芸人の芸についての視聴者からの意見も来ていないことも申し上げましたので、皆さんにはもうそれが伝わっていると思います。その辺で皆さんの中で確信として持っていっていただくことで、言い方としては、「いや、この間そういう意見交換会があって、どうもBPOはそうじゃないみたいだ」など、これは皆さんの解釈で言っていただくことは自由だと思うのですが、私たちがこの番組は私たちにとってよろしい、よろしくないということを言う、そういう立場ではないということです。
この『見解』は一般の視聴者にも公表されていますが、主に民放とNHKという実際に番組を制作する側に読んでいただきたくて作ったのが本音です。皆さん、確信を持った上でこれならできるという形で自信を持って番組を作っていただきたいと思います。

(緑川副委員長)今の関連でこの『見解』を出した後で批判的な意見がBPOに届いたり、ネットで書かれていたという報告を受けています。私も拝見して気になった点として、青少年に悪影響を与えるという根拠を示していないという意見がありましたが、『見解』の全文をお読みいただければ、根拠を示していることがお分かりになると思ったことがあります。
また、例えば罰ゲームでも私たちは今回の『見解』で問題にしたような、人が困っているところを嘲笑してさらに困らせるみたいな、そういうところは本文を読んでいただければ理解してもらえると思って『見解』を作りました。しかし、題名の『痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティーに関する見解』というのは、幅広に解釈できるタイトルだったことをそのとき改めて思いました。タイトルが衝撃的に印象に残って、全文を確認されないまま今までやってきた、受け入れられてきたはずの芸もできなくなってしまうのではないかという批判につながったのではないかとも思いました。
もちろん今日おいでくださった皆さんは十分に理解していただいていると思いますが、テレビ局、制作をされている皆さんにはぜひ、現場の方々にも全文を、BPOのウェブサイトにも出ていますから、読んでいただきたいと思います。これをかいつまんで報道された部分だけを読むことでは、私たち委員会が伝えたかった真意や根拠としたエビデンスがあるというところまで、なかなか理解してもらえないことも誤解につながっているのかなと思います。批判的意見の中には、「根拠を示せ」というものが多くあったのですが、やはり批判をするときには原典に当たってから確認をした上でということも必要なのだろうなと改めて思いましたので、制作現場の方々には読んでいただきたいと思います。
これを読むことによって、罰ゲームは全部駄目なのかとか、芸の範疇だったら全部いいのかとか、そういう単純なことではなく、子どもに対して共感性の発達に影響を与えることがあるのを知っているのと知らないのとでは、どういう番組を作ろうかというとき、みんなで作り上げていくとき、ひとつの参考情報になるのではないかと思います。

Q:ドラマは流れや予見などストーリーがあるから影響はないが、バラエティーはそうではないから影響があると断じられているのがずっと腑に落ちません。バラエティーにも流れや予見はありますし、きちんと台本も書いています。構成も作っていますし、そもそもドッキリ番組はタイトルにドッキリと付いています。なので、視聴者もドッキリを見るつもりでドッキリを見ているので、なぜバラエティーだけそこを断じて悪い影響と言ってしまうのかが極めて腑に落ちません。また芸人がいろいろドッキリを仕掛けられたときに、それをワイプなどで嘲笑されていると書いてあります。お笑い芸人がドッキリを仕掛けられて全力でリアクションをして、それをワイプなどで笑われるという行為は、ばかにされているのではなくて、最大の賛辞であると思うのですが、いかがしょうか。お笑い芸人はそういうところで笑いを生み出して、それをスタジオのMCやゲストが笑うということが一番の喜びで、それを職業にされている方であって、ドラマの中で俳優さんが名演技をして、それを見てスタジオのみんなが泣くのと同様だと思います。そこだけなぜばかにして笑われると断じてしまうのかと思っていて、バラエティーのほうはこの『見解』を読む限りでは強めに批判されているような気がしてなりませんがいかがでしょうか。

A:(榊原委員長)とても線引きが難しいことを言っていらっしゃると思います。ドラマの中で暴力場面がある場合には、もちろん多少は物理的な痛みを感じると思うのですが、やはりドラマというのは作られた話であると思われているわけです。ところが、バラエティーの中でリアリティーショーとして、あるいはドッキリという名前がついていても、ドッキリということ自体は、全部作られたものであったとしても、暴力などを受ける人が知らないところでやるからドッキリは面白いわけです。ですから、先ほど言いましたように芸の一部になっていて、次にここでたらいが落ちてくるよ、ここでお湯の中に落ちるよというのは、もうストーリーがそこで見えるわけです。ドッキリといっても、ドッキリという言葉の中にこれはドッキリをかけられている人は知らないぞというようなリアリティーを作り出していっています。そこがドラマと違うところです。ドッキリとついているから、もちろん大人で見ている人は分かりますよ、ドッキリだから。けれども、実際それは(子どもにとっては)、ドッキリとついているということは、仕掛けられたほうの人は知らないのではないかなというようなリアリティーを作り出しているわけです。それが非常に今技術的にうまくなっていますので、私たちが見ても「おお、これは」というようなのがまさにリアリティーになっているわけです。そこがドラマの間との薄い点ですが、線引きです。
それからもうひとつ、私たちはもちろん芸人さんが命をかけている、あるいは芸としてやっているということは理解していますし、尊敬しています。しかし、私たちはそれを見た視聴者がどう思うかということが全てのスタートです。芸人の間で、芸人同士あるいは作り手との間で、きちんと分かっていること自体が分かっていても、できたものを見る人間、特に年齢の小さい人にとって、例えばすごく苦しそうに見えるような、それもドッキリを知らないところでされたのだと、こういう形になります。ですから、ドッキリはかけられる人が来ることが分かったら全然面白くない。あれはストーリー上知らないことになっていると。それをどんどん作り込みの中で本当にそれらしくしていくわけです。
小学生ぐらいの子どもはそのようなことについては見分けられない可能性があります。その辺のところの小さい線引きは難しいところですが、皆さんにも理解してもらいたいと思っています。

Q:見ているほうが苦痛に感じるか感じないかが重要だと言っていましたが、ドラマも一緒だと思います。なぜドラマだけはストーリーを知っているからこのシーンは影響がないと断言できるのか。ドラマも見たシーンが暴力的だったら、その全部のストーリーを知っているか知らないかにかかわらず影響は大きいと思います。なぜドラマは大丈夫でバラエティーはダメなのですか。

A:(榊原委員長)これは理解力によると思うのですが、ドラマというのは作られたお話だということはかなり小さい子どもでも分かります。しかし、ドッキリでリアリティーショーに作られているところになると、そこは子どもでは分からないと思います。そこで私たちはドラマとは少し分けています。
ただ、もう少し突っ込んで言いますと、この『見解』の中にも書いてありますが、暴力場面自体が小さい子どもにとっては別にリアリティーであろうとドラマであろうと格闘技であろうと、あまりよろしくないというデータは出ております。

Q:痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティーに関してですが、これは痛みを伴うシーンを笑っているという構図を対象にしているということでよろしいですか。痛みを伴うシーンに対して笑うということに対する何か実験だとかデータはあるのかどうかを教えていただきたいのですが。

A:(榊原委員長)  『見解』4ページにございます。これは小さい子どもが共感性ということを発達させる過程にミラーニューロンというものが関係していて、ある他人が苦しい目に遭ったときに自分もそれと同じように感じる部分が脳にあります。その他人を、例えば慰めるとか止めるというところを見て共感性が発達するということが今、脳科学や発達心理学の中で言われています。生まれたばかりの人間の赤ん坊に共感性というのはないと言われています。それがやがて、どういう具合にして自分ではなくて他人が転んで痛くて泣いているところに助けに行ったりするのかということは、実はそういう周りの体験をたくさん見る中で共感性が発達するからだとされています。

Q:他人の心身の痛みを笑うというのと嘲笑するというのでは大分違うと思うのですが、その笑いが嘲笑であるかどうかというのを我々が判断していかねばならないのは非常に悩ましいです。判断基準を我々が考えていくということですと、今回の番組についてもこれは嘲笑ではないからOKだという判断が出る可能性もあるなと、制作者側としては思うのですが。

A:(榊原委員長)  番組の中では分からないのですが、嘲笑と笑いの差というのはやはり状況の中で作られます。他人が明らかに苦しんでいる、泣いているのを笑うのはどんな笑いであっても嘲笑になります。やはり文脈の中で言うしかないですね。痛いことを笑うというのが人間の本質にとって本当に楽しい、心が解放される笑いなのかということの、ある意味ではかなり哲学的な問いになると思いますが、嘲笑と笑いというのはそういうことで厳密に分けることはできないと思っています。

Q:今回対象にしているのは嘲笑であるということですよね。そのときの判断について、我々は日々視聴者からの意見に少数であっても考えねばならないというケースが出てくるのですが、我々の一番の悩みどころはそれを数で判断していいものなのかというところです。その辺はどうお考えでしょうか。

A:(榊原委員長)自由に意見が寄せられたものを数で判断するのは難しいですね。もちろんある期間にどのぐらい来ているかということで総体的な数、これはサンプリングと同じことになると思いますが、そういう意味ではある程度数が多いときと少ないとき、またある番組にたくさん来ているときというのはあります。私たちには常に一定のたくさんの意見が届くわけですから、それが増えていることはある程度、つまり数が反映されていると判断して、こういう議論をしているわけです。ひとつだけあったからそれをやるということはまず基本的にいたしません。ある番組について、ある一定の数が来たというのをまずスタート地点として議論することを私たちのルールにしています。

最後に副委員長と委員長から閉会の挨拶をいただきました。

○緑川副委員長
今日は、長時間にわたってご参加いただき、ありがとうございました。オンラインで視聴していただいた方々も本当にありがとうございました。
今日は私たちが公表したこの『見解』についての説明と、質問に対しての回答をいたしました。『見解』を公表したときに記者会見をすぐにできなかったことを指摘されましたが、今後の参考にさせていただきます。今日は委員のほうからもだいぶ踏み込んだお話をさせてもらい、様々な質問にご説明する機会を持てて本当によかったと思っています。
ずっとコロナがあって、なかなかこういう機会を持つことができなかったわけですが、「視聴者とテレビ局をつなげる回路」ということが青少年委員会の目的とされていますので、今後はできるだけこのような機会を設けてお話をさせていただきたいと改めて思いました。

○榊原委員長
皆さん、最後までいろいろなご意見、ご質問をいただきまして、ありがとうございました。
私たちの表現の仕方などによって誤解が生じたというところについては、今後考えていかねばならないと思っています。ただ、BPOの立ち位置というのを皆さんにしっかり、当事者として知っていただきたいと思います。視聴者から寄せられる意見の中には、私たちは規制する立場ではないのにもかかわらず、「もっと規制を」と要望される方がいます。それから、世の中には放送というものに対してBPOのような第三者機関ではないものを作るべきだという意見もあることは知っていただきたいと思います。
私たちは、より多くの視聴者が楽しんでもらえるテレビ番組を作るにはどうしたらよいかという点では、皆さんと同じ方向を向いているつもりです。今回の『見解』の私たちの発表の仕方というのが誤解を生じてしまったかもしれないということは真摯に受けとめ反省いたしますが、そういう気持ちで活動していることだけはご理解いただけたらと思います。皆さんそれぞれの局に帰られたら、今回の『見解』はBPOのウェブサイトにも掲載されていますので、特に制作に関わる方には「こういうのが載っているのでよく読んでほしい」ということと、今日いろいろお話ししたことを皆さんの中で解釈してもらって、こういう意味なのだということを局の皆さんに伝えていただいて、番組をよくすることに今後いっそう精進してもらえたらと思っています。
本日は最後までありがとうございました。

質疑応答を中心におよそ1時間半にわたって行われた意見交換会は、青少年委員会が公表した『痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティーに関する見解』について、あらためて理解を深めてもらうよい機会となりました。

【参考資料】
◇BPO青少年委員会「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー番組」に関する見解
(2022年4月15日)〈見解全文 PDF〉
https://www.BPO.gr.jp/wordpress/wp-content/themes/codex/pdf/youth/request/20220415_youth_kenkai.pdf

〇BPO青少年委員会「バラエティー系番組に対する見解」
(2000年11月29日) 
https://www.BPO.gr.jp/?p=5111

〇BPO青少年委員会「出演者の心身に加えられる暴力」に関する見解について
(2007年10月23日)
https://www.BPO.gr.jp/?p=5152

〇BPO放送倫理検証委員会「最近のテレビ・バラエティー番組に関する意見」
(2009年11月17日)
https://www.BPO.gr.jp/wordpress/wp-content/themes/codex/pdf/kensyo/determination/2009/07/dec/0.pdf

事後アンケート(概要)

  • (1)開催日時、開催形式について
    • ウェブ配信はありがたい。金曜日以外で、もう少し早い時間帯が参加しやすい。
    • 委員(壇上から)と参加者が対面形式だったため、対立しているように見えた。
    • バラエティーを制作する機会は少ないが、できれば対面で参加したかった。
  • (2)委員会の説明、意見交換について
    • 委員の説明は分かりやすく、「見解」の内容・背景を多角的に理解できた。
    • 委員に真摯に対応してもらい、考えを直接聞けたことは有意義だった。
    • BPOに対して「職員室の先生」のようなイメージを抱いていたが、闊達な意見交換が展開されていて、健全でいいことだと思った。
    • 子どもに悪影響を与えかねないという根拠のデータを詳しく聞きたかった。
    • 見解だけ読めば誤解を与えかねないものだった。公表前に(または公表時に)説明会や記者会見を開くべきだった。
    • 広がった誤解を解くためにも、今回の記録を残して各社で共有するべきだ。
    • 委員会が児童の脳の発達の視点で話していたのに対し、放送局側はプロとしての芸人の仕事への干渉という点で話をしていたため、双方の溝があまり埋まらなかったと感じた。痛みを伴う行為が一律にダメなわけではないとの回答を得られたことは、実りがあった。
    • もっと意見交換と質疑に時間を割いてほしかった。他社の意見を聞きたかった。
  • (3)気づいた点、要望、今後取り上げてほしいテーマ等
    • 定期的に委員の方々と意見交換できる場があればうれしい。
    • 委員会での議論のプロセスが分かるような意見交換会にしてもらえると有意義だと思う。
    • 今後見解を出すときは、誤解を生まないためにも会見を開いたほうがいい。
    • BPOは検閲機関ではなく放送局が自ら律するための機関であるという基本的な理解を含め、今回のような機会を継続して意見交換を重ねていく必要性を感じた。

以上

第174回 放送倫理検証委員会

第174回–2022年8月

NHK BS1スペシャル『河瀨直美が見つめた東京五輪』を審議
9月に委員会決定を通知・公表へ

第174放送倫理検証委員会は8月22日にオンライン形式で開催された。
2月の委員会で審議入りしたNHK BS1スペシャル『河瀨直美が見つめた東京五輪』について、担当委員から意見書の修正案が提出された。意見交換の結果、了承が得られたため、9月に当該放送局へ通知して公表することになった。

議事の詳細

日時
2022年8月22日(月)午後5時~午後7時30分
場所
オンライン形式
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、
大石委員、大村委員、長嶋委員、西土委員、米倉委員

1. NHK BS1のドキュメンタリー番組『河瀨直美が見つめた東京五輪』について審議

NHKは2021年12月26日に放送したBS1スペシャル『河瀨直美が見つめた東京五輪』後編の字幕の一部に不確かな内容があったとして、2022年1月9日、番組と局のホームページで公表し謝罪した。番組は、東京五輪の公式映画監督である河瀨直美さんと映画製作チームに密着取材したもの。男性を取材した場面で「五輪反対デモに参加しているという男性」「実はお金をもらって動員されていると打ち明けた」という字幕を付けて伝えた。放送後、視聴者から字幕の内容が事実であるかの問い合わせが相次ぎ、NHKが男性に確認したところ、実際に五輪反対デモに参加していた事実を確認できず、字幕の内容が不確かだったことがわかったという。
2月の委員会では、委員会からの質問に対する回答書、NHKが設置した「BS1スペシャル」報道に関する調査チームがとりまとめた調査報告書が提出され、それらを踏まえて議論を行った。同報告書では、字幕の内容は誤りであったとされている。議論の結果、取材、編集、考査、調査の各段階で問題があるのではないかといった厳しい意見が相次ぎ、放送倫理違反の疑いがあることから、放送に至った経緯等について詳しく検証する必要があるとして審議入りを決めた。
3月から7月までの委員会において、担当委員からヒアリングなどに基づいた意見書が提出され議論を行ってきた。今回の委員会では、前回委員会までの議論を踏まえ担当委員から示された意見書の修正案について意見が交わされた。その結果、合意が得られたため、表現などについて一部手直しの上、9月に当該放送局へ通知して公表することになった。

2. 7月に寄せられた視聴者意見を議論

7月に寄せられた視聴者意見のうち、安倍元首相の銃撃事件を伝えたニュースや特別番組の内容、参院選特番でのコメンテーターと候補者とのやり取り、参院選候補者の出演した番組などについて、批判的な意見が寄せられたことを事務局が報告した。

以上

第307回放送と人権等権利に関する委員会

第307回 – 2022年8月

「少年法改正と実名報道」4月の少年法改正に伴う実名報道についての現状を共有…など

議事の詳細

日時
2022年8月16日(火)午後4時~午後8時
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO]」第1会議室(オンライン開催)
議題
出席者
曽我部委員長、鈴木委員長代行、二関委員長代行、國森委員、斉藤委員、
野村委員、丹羽委員、廣田委員、松田委員、水野委員

1.「ペットサロン経営者からの申立て」審理

日本テレビは、2021年1月28日午前8時からの『スッキリ』で、「独自 愛犬急死 “押さえつけシャンプー” ペットサロン従業員ら証言」とサイドスーパーを出しながら、ペットサロンに預けられていたシェパード犬がシャンプー後に死亡した問題を放送した。放送は、犬の飼い主やペットサロン従業員など複数の関係者の証言を基に構成されていた。
この放送に対して、ペットサロン経営者の申立人は、「同番組内で申立人が、お客さんから預かっていた犬を虐待して死亡させたなどと、虚偽事実」を放送したと主張し、「字幕付きの放送をしたことで、申立人が預かっていた犬を虐待死させたかのように印象付け、事実に反する放送をすることで申立人の名誉を侵害した」として、BPO放送人権委員会に申し立てた。
これに対して日本テレビは、放送内容は真実であり、また「当社は事前に十分な取材を行っており、真実であると信じるにつき相当な理由」があり、「私たちの取材・放送によって人権と名誉が侵害されたという申立人の主張はいずれも根拠が無く、受け入れられません」と反論している。
今回の委員会では、双方から所定の書面すべてが提出されたのを受けて、論点を整理し、ヒアリングのための質問項目を絞り込み、次回委員会でヒアリングすることを決めた。

2.「ローカル深夜番組女性出演者からの申立て」審理

申立ての対象となったのは、あいテレビ(愛媛県)が2022年3月まで放送していた深夜のローカルバラエティー番組『鶴ツル』。この番組は男性タレント、愛媛県在住の住職とフリーアナウンサーである申立人の3人を出演者として、2016年4月に放送が開始された。3人が飲酒しながらトークを行う番組だが、申立人が、番組中での他の出演者からの度重なるセクハラ発言などによって精神的な苦痛を受けたとして申し立てた。
申立書によると、番組開始当初から苦痛、改善を訴えていたにもかかわらず、放送された他の出演者のトークが、申立人自身に対するものも含めてしばしば性的な内容に関することに及んで申立人に羞恥心を抱かせることで、また、そのような内容の番組の放送によって申立人のイメージが損なわれたことで、人権侵害を受け、放送倫理上の問題が生じたと主張している。
被申立人のあいテレビは、申立人は番組の趣旨を十分に理解した上で出演しており、申立人からの苦情も2021年11月が初めてで、また、番組の内容も社会通念上相当な範囲を逸脱しておらず、人権侵害や放送倫理上の問題はない、と主張している。
今回の委員会では、双方から提出された書面を基に議論した。今後更に提出される書面を待ち、議論を深めることとした。

3. 民放連「放送基準」改正について

2023年4月施行の民放連「放送基準」の改正について、事務局から概要を報告した。

4.「少年法改正と実名報道」

廣田智子委員から、2022年4月施行の少年法改正に伴う「特定少年」の実名報道解禁の現況が報告された。今後起こりうる放送での実名報道に対する人権侵害の申立てに備え、少年法改正の概要と4月以降の「特定少年」実名報道の実状、過去の少年刑事事件での実名報道に起因する名誉毀損案件の裁判例など、多岐にわたり詳細に伝えられた。

5. 最新申立て状況

事務局から最新の申立て状況が報告された。

以上

2022年7月に視聴者から寄せられた意見

2022年7月に視聴者から寄せられた意見

安倍元首相銃撃事件の報道について、さまざまな観点から多数の意見が寄せられました。

2022年7月にBPOに寄せられた意見は2,743件で、先月から1,038件増加しました。
意見のアクセス方法の割合は、メール85%、 電話14%、 郵便・FAX計1%
男女別は男性37%、 女性18%で、世代別では30歳代25%、40歳代24%、50歳代20%、20歳代16%、60歳以上10%、 10歳代2%。
視聴者の意見や苦情のうち、特定の番組や放送事業者に対するものは各事業者に送付、7月の送付件数は1,431件、49事業者でした。
また、それ以外の放送全般への意見の中から40件を選び、その抜粋をNHKと日本民間放送連盟の全ての会員社に送りました。

意見概要

番組全般にわたる意見

安倍元首相銃撃事件の報道について、映像・音声の使い方、参院選への影響、政治家と宗教団体との関係の報じ方などさまざまな観点から多数の意見が寄せられました。
ラジオに関する意見は55件、CMについては20件でした。

青少年に関する意見

7月中に青少年委員会に寄せられた意見は139件で、前月から55件増加しました。
今月は「表現・演出」が54件、「報道・情報」が44件、「要望・提言」が10件、「いじめ・虐待」が6件と、続きました。

意見抜粋

番組全般

【報道・情報】

  • 安倍元首相銃撃の瞬間の映像を流すのはやめてほしい。旗に隠れているだけでまさにその瞬間の映像だったのでゾッとした。配慮に欠ける。

  • 銃撃の瞬間はすなわち殺害の瞬間。映像が相当にショッキングで動悸がおさまらない。インターネットで流れているのは知っていて、あえて見ないようにしていたが、テレビで何の前触れもなく流されたら自衛できない。

  • 元首相の冥福を祈る気持ちは私も同じだが参院選の投票日は二日後に迫っている。夜まで安倍氏の経歴を紹介したり過去の映像を流したりすることは自民党を利することになる。選挙の「公平性」は決してないがしろにすべきではない。

  • 参院選の投票前日に元首相銃撃の特集を放送した。意図はどうあれ特定政党の宣伝になってしまう。公平を保つために放送は選挙終了後にすべきではなかったのか。

  • 元首銃撃事件に使用された自作の銃の構造を、CGなどを用いて詳しく解説していた。見た人がまねて銃を作ることができるほどの再現性だと感じた。こうした情報の取り扱いには十分に配慮すべき。

  • 元首相銃撃事件の容疑者の供述として「元首相が教団と関わりがあると思い込んで」などと、実際には関わりがなかったかのような内容が報道されているが、現実には元首相が教団の関連団体にビデオメッセージを送っていたことが分かっている。これに対し全国霊感商法対策弁護士連絡会は抗議している。「一方的な思い込みによる犯行」と受け取られるような報道は止めるべきだ。

  • 情報番組のMCが「宗教の問題とまったく関係がない元首相に刃が向いた」と発言した。「まったく関係がない」と断じるなら相応の根拠を示すべきだ。

  • 野党幹部が教団の名称変更の経緯などに疑義を呈したことについて、情報番組の出演者が「パフォーマンスっぽいと思ってしまう」。事実とかけ離れた発言で不適切。

  • ラジオでアニメ主題歌を特集したが、うち1曲は参院選に立候補している漫画家の代表作であるアニメのものだった。作品のタイトルを紹介すればすぐにその作者の名前が連想されるため、意図していなくても候補者の宣伝になると思う。選挙期間中にこのような曲を流すのは不適切だ。

  • 開票特番の出演者がある党首へのインタビューで個人的な恨みを晴らしているように感じた。

  • ある局のいくつもの報道・情報番組に出演しているコメンテーターを選挙期間中、出演させなかったということは、その局がこの人物を特定の政党の関係者とみなしている証だと思う。普段、この局はその人物の考えを放送しているということになるのではないか。

  • 情報番組でタレントが新型コロナ感染症について「死者がいる以上、相応の対応が必要という議論があるが、それはほかの病気も同じ」と述べた上で「もはやコロナは心の病気だと思っている」と発言した。私の家族は今、自宅療養中で激しい咳などの症状に苦しんでいる。家庭内で介助や感染対策をしている人たちに冷や水を浴びせるような許しがたい発言だ。また、この発言が感染者やその家族への偏見を呼び起こさないか不安。

【バラエティー・教養】

  • 流行の先端を行くような中高生が体を張って希少な川魚を探したり、山越えの自転車通学について行ったり、また歴史や生物に造詣の深い若者の興味深い話に耳を傾けたり。彼らの姿は「今どきの若者」に対するイメージを大きく改善してくれる。ターゲットにしていると思われる若者の視聴者がいろいろなことに関心を持つきっかけとなることを期待したい。

  • 飲食店でシカの肉の「表面をさっとゆがいたレアなもも刺し」を食べるシーンを紹介した。ジビエの生食は食中毒で死亡するリスクがある。番組は「生食は問題ない」という誤解を視聴者に与える。

  • 揚げパスタ1本を折らないように相手の喉に入れ、入れられる方はむせないように我慢するというゲーム。「マネするなよ」というメッセージはあったが、事故につながる危ないものだと感じた。出演者のケガが心配になる演出はありえないと思う。

  • バラエティー番組の「24時間プラスチックに触らず生活できるか!?」という企画で、マスクの不織布にプラスチックが含まれているという理由で、出演タレントが友人とカラオケを楽しむという閉鎖空間でもスカーフで代用させていた。この時期 タレントの安全のためにもマスクは着用させるべきだったのではないか。放送の際に「安全の観点から例外」とすればいいだけ。何が何でもダメというのは人権侵害ではないか。

  • 世界の「面白動画」を見せるという番組。AIやディープフェイクなどの怖さを教えている身として、「つくられた映像」が十分な検証なしに、あたかも真実であるかのように放送されるのは問題があると考える。今後、編集画像で様々なニュースやインタビューがつくられてしまわぬよう危機感を持った方がいい。

  • 「霊的な現象」や「霊能力」としてさまざまな現象を紹介していた。これらの存在を積極的に肯定していると受け取られる内容を、影響力の強いテレビで放送するのは問題ではないか。長年にわたり社会問題となっている霊感商法等を助長し、さらなる被害者を生む結果とならないか心配だ。特に青少年に与える影響は大きいと思う。

  • 私は自閉症や吃音(きつおん)を持つ子どもたちと関わっている。番組で吃音の芸人が「帰れ、と言われて何分で帰るか」というドッキリのターゲットになっていた。ビデオで芸人の言動を見ているスタジオの出演者が「変なやつ」と発言、ナレーションではこの芸人のことを「奇人」と表現していた。同じ症状がある子どもたちが見たらどう思うだろうか。病気を笑うような内容は放送しないでほしい。

  • 仕掛け人である人気の女性天気キャスターがターゲットの芸人に「自分はあなたのファン、一緒に写真を」と依頼するが、芸人が近づくと「近いんだよ!てめえ」などと大声でののしり始める。人が怒鳴られる様子を見て笑うという神経が考えられない。

  • 「47都道府県○○スポットを一挙公開」というので、自分の地元にもスポットライトが当たるのかと楽しみにして見たが、実際に取り上げられたのは10県程度で地元は登場せず。裏切られた気分だ。自分のワクワクを返してほしい。

  • ロケ現場を自由に使ってスケートボードの技を競う企画で、植え込みの縁を滑走する選択をした人が何度も挑戦し、植え込みの植物をひどく痛めていた。見ていてとても不快だし、まねをする子どもが出てくると考えるとゾッとする。

  • パーソナリティーが紹介する楽曲について繰り返し「ばかみたいな曲」と評し、また歌い手を貶(おとし)めるような発言をしていた。大変不快だった。

【ドラマ】

  • ドラマで、幼少期に父親から受けたDVのトラウマを克服させるという目的で、仲間が本人の了承を得てわざと長時間、小突き回し、罵詈雑言を浴びせて耐えさせるというシーンがあった。「トラウマやPTSDは根性で治る、本人の努力で克服できる」といった誤った認識を植え付ける描写であり、不適切だと感じた。

青少年に関する意見

【「表現・演出」に関する意見】

  • バラエティー番組内の子ども番組を模したコーナーで、男女がヤクザ系の言葉を入れた唄を歌っていて、出演者の子どもたちが怖がっていた。教育上の問題があると思う。

  • 幼児が「おつかい」を初めて体験する番組で、1歳8カ月の男の子が少し離れたお隣さんに回覧板を届ける内容を放送した。子どもの発達の個人差について不安を煽る内容であり、出演する子どもには年齢制限を設けてほしいと思った。

  • ドッキリを扱う番組で、銭湯の浴槽に電気を流して痛がる様子を放送したが、いじめに見える。浴槽から出るのを妨害する役の人もいて、完全にいじめだと思った。

【「報道・情報」に関する意見】

  • 安倍元首相が銃撃された直後のニュースで、現場を見ていた高校生とみられる女性2人にインタビューしていたが、顔と制服がそのまま放送されていた。インタビューするのはよいが、顔と制服は隠すべきではないか。

  • 銃撃の様子を目撃し、インタビューに答えた高校生とみられる女性は今後、自責の感情に苛まれます。目撃者のPTSDはあとから遅れて発症します。目撃直後に無遠慮にマイクを向けるのは二次加害です。必要なのはメンタルケアです。

  • 安倍元首相の銃撃のニュース。子どもが学校から帰宅する時間なのに、銃声音が入った映像や元首相が倒れて出血している映像を流す必要がありますか。子どもたちが目にしてしまい、すぐにテレビを消しました。

【要望・提言】

  • 各局で夕方の時間帯に、連続殺人などのドラマが再放送されている。「再放送するな」とはいわないが、子どもたちが夏休みに入っているのだから、内容を考えて放送してほしい。殺人を扱ったドラマが子どもたちに悪影響を及ぼすのではないかと危惧している。

【「いじめ・虐待」に関する意見】

  • バラエティー番組に、吃音症を持った芸人が出演した。その症状を見て、笑いを誘うような表現があり、吃音症の当事者として不適切だと思った。当事者のほとんどが子どものころに吃音が原因でいじめに遭っており、今回の表現はそうしたいじめの状況を助長するものだと思う。

第248回 放送と青少年に関する委員会

第248回-2022年7月

視聴者からの意見について…など

2022年7月26日、第248回青少年委員会を千代田放送会館会議室で開催しました。
欠席の榊原洋一委員長をのぞく7人の委員が出席し、進行は緑川副委員長が代行しました。
6月後半から7月前半に寄せられた視聴者意見には、安倍元首相銃撃直後の緊急ニュースの中で、高校生とみられる女性2人の顔出しでのインタビューで目撃情報を繰り返し放送したことについて、配慮が必要だったのではないか、などの意見がありました。
7月の中高生モニターリポートのテーマは「最近見たドラマについて」で、様々なジャンルのドラマに対する興味深い意見が寄せられました。
委員会ではこれらの視聴者意見やモニターリポートについて議論しました。
最後に今後の予定について話し合い、8月の委員会は休会となりました。
次回は、9月27日(火)に定例委員会を開催します。(※その後、9月13日(火)に変更になりました。)

議事の詳細

日時
2022年7月26日(火)午後4時30分~午後6時30分
場所
千代田放送会館会議室
議題
視聴者からの意見について
中高生モニター報告について
今後の予定について
出席者
緑川由香副委員長、飯田豊委員、佐々木輝美委員、沢井佳子委員、
髙橋聡美委員、山縣文治委員、吉永みち子委員

視聴者からの意見について

6月後半から7月前半に寄せられた視聴者意見について担当委員から報告がありました。
安倍元首相が銃撃された直後の緊急ニュースの中で、高校生とみられる女性2人の目撃情報についてのインタビューを顔出しで約1時間30分の間に計5回繰り返し放送したことに対して、「インタビューするのはよいが、(高校の)制服と顔は隠すべきではないか」「プライバシー保護のため、口元だけのアップやモザイク処理で顔を隠してあげてほしかった」「PTSDは遅れて発症します。目撃直後にマイクを向けるのは二次加害です」などの意見が寄せられました。
委員からは「とても正確に答えていて、この目撃情報によって何が起こったのか、だいぶ分かった」「本人や保護者の承諾を得るなどの配慮は必要だと考えるが、このインタビューに報道する価値があったことは間違いない。繰り返しの問題も評価は難しいが、事件の重大性や速報性を考えると、局の判断としてはやむを得なかっただろう」との意見がありました。
また、バラエティー番組の中の幼児向け番組を模したコーナーで、子どもたちの前でヤクザの風体をした男女の芸人が、番組スタッフ役の芸人に暴行する真似を見せ、高金利を表すことばを織り込んだ唄を披露したことに対し、「(出演者の)子どもの前で、暴力を振るったり借金の唄を歌ったりするのはいけないと思う」「その場にいた子どもたちが怖がっています。教育上、問題がある」などの意見が寄せられました。
委員からは「あそこに子どもを呼ぶ必要があったのか。大人(の芸人)に子どもの格好をさせてもよかったのではないか」「(劇団所属の子どもを使うという)舞台裏の事情はどうあれ、親の目からみればあまり良い演出とは思えない」などの意見が出されました。
同じバラエティー番組の別のコーナーで、揚げた細い棒状のパスタを、口を開けた芸人の喉に差し入れて、うまく飲み込むのを競わせていたことに対し、「(子どもが真似しないよう)注意の文言を入れても、常識的に考えて、やっていいネタではないと思います」という意見が寄せられました。
委員からは、「パスタを飲み込ませるのは危ないと思う」「危険な行為で、(それを見た)子どもが、許されることだと思ってしまう可能性がある」との意見がありました。
その他特に議論はなく「討論」に進むものはありませんでした。

中高生モニター報告について

7月のテーマは「最近見たドラマについて」でした。モニターからはさまざまなジャンルのドラマ、計22(テレビ21・ラジオ1)番組について報告がありました。
番組への感想では『ラジエーションハウス』(フジテレビ)に「これまで描かれていなかった職種に焦点をあてた斬新な医療ドラマだった」、『過保護のカホコ』(日本テレビ)に「世の中には計り知れない家族の形があると実感した」といった感想が寄せられました。
複数のモニターが取り上げた番組は、『鎌倉殿の13人』(NHK総合)、『星新一の不思議な不思議な短編ドラマ』(NHK BSプレミアム)、『ナンバMG5』(フジテレビ)でした。
「自由記述」では、安倍元首相が銃撃された事件の報道について多くの意見が寄せられました。

◆モニター報告より◆

  • 【最近見たドラマについて】

    • 『未来への10カウント』(テレビ朝日)
      部員一人一人が問題や悩みを抱えながらも精一杯生き抜く姿にとても感動しました。番組の中にあった「最初からあきらめてんじゃねえよ。自分で勝手に限界を作るな」というセリフは受験生の自分にとって、とても胸を打たれるものがありました。改めて一生懸命やることの大切さ、素晴らしさを教えてもらったドラマです。(高校3年・女子・茨城)

    • 『FMシアター』(NHK‐FM)
      ラジオドラマを聴くのは2回目だが、なかなか新鮮だった。テレビとは違い、出演者の息づかいや話すことば一つ一つの迫力が耳から伝わってきた。コロナ禍で浮かび上がった人間模様にスポットをあてた内容だったが、話に引き込まれる構成だった。ただ、途中から聴いた人や話の整理のためにナレーションを加えてほしいと思った。(高校1年・男子・東京)

    • 『ファイトソング』(TBSテレビ)
      登場する一人一人の人物像が愛おしく、個性豊かな中でバランスが取れているので見ていて居心地がよく、大好きでした。最終話では、番組のタイトルとオープニングで流れる曲に、ドラマのストーリーとのつながりがあってとても感動しました。(中学2年・女子・東京)

    • 『初恋の悪魔』(日本テレビ)
      科学捜査などの職業を主人公とするドラマはあったが、この番組は総務課職員たちを主人公にするなど斬新な発想が多くてとても面白かった。模型を作るシーンやイラストなどの演出も現実味があって良かった。(高校1・男子・埼玉)

    • 『メンタル強め美女白川さん』(テレビ東京)
      もともと原作のファンですが、主人公の名言はそのままで、その人間味が原作よりもリアルに映し出されていました。現実はこんなに単純で優しいものではないなと感じられる部分もありましたが、このドラマが描くようなもっと温かい言葉があふれる社会になるといいのにと思いました。終始すごく穏やかで幸せな気持ちで見られるドラマで、毎週の楽しみでした。(高2・女子・岩手)

    • 『過保護のカホコ』(日本テレビ)
      小学校6年生のときも視聴していましたが、見直すと感じることも見る部分も少し変化した気がします。以前は主人公の衣装や部屋の雑貨類までまねしていましたが、今は少し違うところに惹かれます。ドラマの中だけの話ではなく、世の中には計り知れない家族の形があるのだと実感しました。生まれてきた環境や家族のことで悩み苦しんでいる人がいると思うと、私にも何かできることがあるのではないかと考えるきっかけになりました。(高2・女子・千葉)

    • 『家政夫のミタゾノ』(テレビ朝日)
      見ていてとても爽快で面白いです。最後には関係が悪くなっていた家族を仲直りさせるなど、感動できる部分もあっていいです。ドラマの途中には普段使えるような家事の知識を教えてくれる時間があり、内容が面白いだけでなく見ていてためになりました。また、続編を映画化ではなく舞台化するのも新しくて面白い取り組みだなと思いました。(高2・女子・広島)

    • 『再雇用警察官4』(テレビ東京)
      全体的にドキドキするシーンと見入ってしまうシーン、何も感情が湧いてこないシーンが周期的に構成されていてとても面白かったです。ストーリーの進め方が刑事ドラマでありがちな「真犯人は誰だ?」的なものではなく、出てきた人全員がつながっている点に爽快感を覚えました。終盤にかけて登場人物の感情がはっきりしていくのも印象的でした。(高1・男子・兵庫)

    • 『ラジエーションハウス』(フジテレビ)
      従来の医療ドラマで描かれることがなかった職種に焦点があてられたドラマで、斬新だった。放射線技師の職務内容だけでなく、病院内でのポジションや医師との関係性が興味深い。ふだんあまりフィーチャーされることがない職業について知ることができ、月9ドラマにふさわしいテーマだったと思う。(高3・女子・東京)

    • 『鎌倉殿の13人』(NHK総合)
      戦や勢力争い、後継者争いなど話が入り組んでいる場面でも理解しやすい。時々コメディー要素もあって飽きずに見ることができる。出演者は多いが、一人一人に個性があって役名を覚えることができた。このドラマのおかげで鎌倉時代についてだけだが詳しくなり、北条義時についても詳しく知ることができた。(高1・女子・栃木)

    • 『星新一の不思議な不思議な短編ドラマ』(NHK BSプレミアム)
      原作の本を持っていたのでドラマと比べてみたところ、登場人物のセリフや展開の多くが原作そのままで、作品へのリスペクトが感じられました。視聴者の人気投票で作品をドラマ化したりレギュラー化やアニメ化をしたりして、この企画がもっと発展してほしいです。(高校1年・男子・滋賀)

    • 『ナンバMG5』(フジテレビ)
      予告を見たときは「今の時代にヤンキーのドラマやって大丈夫なの?」とか「怖そうだな」などと思っていたが、いざ見てみると私が知っている昔のワルなヤンキーとは違い、とても明るく家族みんな仲がいい楽しそうなヤンキー一家で安心した。演技の面では、特攻服に金髪のヤンキー役と普通の高校生学ラン黒髪役を口調も含めてしっかり演じ分けていてすごいと思った。(高校3年・女子・神奈川)

    • 『私のエレガンス』(BSテレビ東京)
      ファッションアイテムの歴史やオシャレについての知識だけでなく、自己肯定感も引き上げてくれるような素敵なドラマでした。この半年ほど暗いニュースがテレビで流れることが多く、温かい気持ちになるほっこりしたドラマがもう少しゴールデンの時間帯に増えても良いように感じました。2時間の単発のドラマだと比較的視聴しやすいので、そういったものがもっと増えてもいいのかなと思います。(高2・女子・東京)

  • 【自由記述】

    • 番組やVTRに出てくる出演者の名前を紹介するテロップについて、ジェンダーレスなこの時代に、男性は青、女性はピンクというように色を分けるのはどうかと思いました。(中学2年・女子・東京)

    • 安倍元首相が銃撃された事件のニュースで、撃たれた瞬間の映像を何度も流したり、血を流して倒れている画像をずっと出したりするのはどうなのかと思いました。また、銃の作成方法をわざわざ解説することで模倣犯が出てきたらどうするのだろうと思いました。(高校2年・女子・広島)

    • 安倍元首相が銃撃された事件のニュースで、「銃声が鳴ります」などと視聴者が不快に感じないよう配慮していてすばらしいと思いました。(高校2年・男子・福岡)

    • 安倍元首相が銃撃された事件で、SNS上で出回っていた銃撃の瞬間の映像をテレビでも流していたことに疑問を感じた。コメンテーターが「ネットから離れることも自己防衛につながる」と言っていたが、こういう方が増えてほしいと思った。(中学3年・女子・千葉)

  • 【青少年へのおすすめ番組】

    • 『笑わない数学』(NHK総合)
      素数の面白さ、不思議さを知ることができた。手計算で素数を見つけなければならなかったと思うとオイラーやガウスのすごさが分かる。私たちがふだん使っている数学の裏側を知ることは楽しい。同時に昔の数学者への感謝の気持ちも浮かんでくる。(高校1年・女子・栃木)

◆委員のコメント◆

  • 【最近見たドラマについて】

    • モニターが大好きだというドラマについて「アクションはかっこよくて好きだが、血や傷口をあまり映さないほうが安心して見られる」という感想があった。今の若い人たちはテレビに刺激を求めるというより、安心して見たいというのが一つの思いなのだろうかと感じた。

    • モニターによって評価はやや分かれたが、いわゆるヤンキードラマを複数が取り上げていて根強い人気を感じた。バブル時代の話やノスタルジックな部分も描かれ、2000年代がピークだったコンテンツだが、一周回って今の若い人たちに新鮮に映っているのではないか。

  • 【自由記述について】

    • テロップの名前が男女で色分けされていることへの意見があった。視聴者意見にも性差別的な表現や女性蔑視に対する批判はあるが、中学生が少し違う角度からこのような違和感を指摘することに感心した。こうした見方はこれから若い人たちのふつうの感覚になっていくのだろうし、制作者にも知ってもらいたい。

    • 安倍元首相の銃撃事件の報道で、銃声音が流れることを事前に告知したことを評価する声があった。ドラマでは暴力シーンなどを演出の一部として楽しむ一方、ショッキングな報道に対して警戒する感性があるようで、こうした点は丁寧に考えていく必要があるのだろうと思った。

  • 【青少年へのおすすめ番組について】

    • 数学の奥深さを伝える番組に多くのモニターから感想が寄せられ、「大学教授ではなく芸人さんが解説するので身構えずリラックスして見られた」というコメントがあった。このようなジャンルでも説明上手な芸人さんが重要な役割を果たしているのだなと感じた。

今後の予定について

地方局との意見交換会開催の日程調整について、事務局から進捗状況の説明がありました。
また、8月の青少年委員会は休会になることを確認しました。次回は、9月27日(火)に定例委員会を開催します。(※その後、9月13日(火)に変更になりました。)

以上

青少年のメディア・リテラシー育成に関する放送局の取り組みに対する調査研究

「青少年のメディア・リテラシー育成に関する放送局の取り組みに対する調査研究」

青少年のメディア・リテラシー育成は放送局にとって、ますます重要な課題となっています。この調査研究は、青少年のメディア・リテラシー育成に関しての各放送局の取り組みについてアンケート調査と聞き取り調査を行い、その実態を明らかにするとともに今後の在り方を展望することを目的に2019年~2021年の3年間にわたり実施されました。

調査内容

青少年のメディア・リテラシー育成に関する放送局の取り組みに対する調査研究
【WEB版PDF】pdf

◆目次◆

※WEB版は、掲載用に一部編集しています。

調査研究報告会

青少年のメディア・リテラシー育成に関する放送局の取り組みに対する調査研究

年次報告会に先立って3年間にわたり行った調査研究の結果を、中心となってまとめてきた中橋雄委員と飯田豊氏(立命館大学産業社会学部准教授)が説明しました。

pdf当日使用されたパワーポイントデータ(PDF)

日 時: 2022年3月16日(水) 午後1時45分~2時45分
場 所: 千代田放送会館(オンライン開催)

■報告者:
中橋 雄(なかはし ゆう)
【青少年委員会委員】
1975年生まれ。日本大学文理学部教育学科教授。関西大学大学院総合情報学研究科博士課程後期課程修了・博士(情報学)。株式会社博報堂、福山大学、独立行政法人メディア教育開発センター、武蔵大学に勤務した経歴をもつ。専門分野は、メディア・リテラシー論教育の情報化に関する実践研究、教育工学。著書に、『メディア・リテラシー論(単著)』『メディアプロデュースの世界(編著)』『映像メディアのつくり方(共著)』など。

飯田 豊(いいだ ゆたか)
1979年生まれ。広島県出身。立命館大学産業社会学部准教授。専門分野はメディア論、メディア技術史、文化社会学。東京大学大学院学際情報学府博士課程単位取得退学。メディアの技術的な成り立ちを踏まえて、これからのあり方を構想することに関心があり、歴史的な分析と実践的な活動の両方に取り組んでいる。著書に『テレビが見世物だったころ』、『メディア論の地層』、『新版 メディア論』(放送大学教材、共著)などがある。

第306回放送と人権等権利に関する委員会

第306回 – 2022年7月

「ローカル深夜番組女性出演者からの申立て」審理入り…など

議事の詳細

日時
2022年7月19日(火)午後4時~午後7時
場所
千代田放送会館7階会議室
議題
出席者
曽我部委員長、鈴木委員長代行、二関委員長代行、國森委員、斉藤委員、
野村委員、丹羽委員、廣田委員、松田委員、水野委員

1.「ペットサロン経営者からの申立て」審理

日本テレビは、2021年1月28日午前8時からの『スッキリ』で、「独自 愛犬急死 “押さえつけシャンプー” ペットサロン従業員ら証言」とサイドスーパーを出しながら、ペットサロンに預けられていたシェパード犬がシャンプー後に死亡した問題を放送した。放送は、犬の飼い主やペットサロン従業員など複数の関係者の証言を基に構成されていた。
この放送に対して、ペットサロン経営者の申立人は、「同番組内で申立人が、お客さんから預かっていた犬を虐待して死亡させたなどと、虚偽事実」を放送したと主張し、「字幕付きの放送をしたことで、申立人が預かっていた犬を虐待死させたかのように印象付け、事実に反する放送をすることで申立人の名誉を侵害した」として、BPO放送人権委員会に申し立てた。
これに対して日本テレビは、放送内容は真実であり、また「当社は事前に十分な取材を行っており、真実であると信じるにつき相当な理由」があり、「私たちの取材・放送によって人権と名誉が侵害されたという申立人の主張はいずれも根拠が無く、受け入れられません」と反論している。
今回の委員会では、双方から提出された書面を基に議論した。今後更に提出される書面を待ち、議論を深めることとした。

2. 審理要請案件「ローカル深夜番組女性出演者からの申立て」

申立ての対象となったのは、あいテレビ(愛媛県)が2022年3月まで放送していた深夜のローカルバラエティー番組『鶴ツル』。この番組は男性タレント、愛媛県在住の住職とフリーアナウンサーである申立人の3人を出演者として、2016年4月に放送が開始された。3人が飲酒しながらトークを行う番組だが、申立人が、番組中での他の出演者からの度重なるセクハラ発言などによって精神的な苦痛を受けたとして申し立てた。
申立書によると、番組開始当初から苦痛、改善を訴えていたにもかかわらず、放送された他の出演者のトークが、申立人自身に対するものも含めてしばしば性的な内容に関することに及んで申立人に羞恥心を抱かせることで、また、そのような内容の番組の放送によって申立人のイメージが損なわれたことで、人権侵害を受け、放送倫理上の問題が生じたと主張している。
被申立人のあいテレビは、申立人は番組の趣旨を十分に理解した上で出演しており、申立人からの苦情も2021年11月が初めてで、また、番組の内容も社会通念上相当な範囲を逸脱しておらず、人権侵害や放送倫理上の問題はない、と主張している。
申立てを受け、双方による交渉が持たれたが不調に終わり、今回の委員会で審理入りするか否かを検討した。
委員会は、委員会運営規則第5条(苦情の取り扱い基準)に照らして、本件申立ては審理要件を満たしていると判断し、審理入りすることを決めた。次回委員会から実質審理に入る。
なお、審理対象とするのは、申し立てられた日から1年以内の2021年2月以降の放送分とし、それ以前のことは背景事情として考慮することが委員会で決定された。

3.「判断ガイド2023」について

来年2023年を目途に制作される「判断ガイド2023」について、事務局からウェブ化を図りたいことなど計画を説明した。体裁などにも委員会の賛同を得て、実務編集作業を進めることとなった。

4. 最新申立て状況

事務局から最新の申立て状況について説明した。

5. その他

今年12月に開催予定の札幌での意見交換会について、事務局から概略を説明した。

以上

2022年7月25日

2022年 7月25日

感染症対策に伴う視聴者電話応対業務について

BPOは、新型コロナウイルス感染症対策のため、次の業務対応といたします。

  • 当分の間、視聴者からの電話応対時間を短縮します。
    視聴者意見電話受付時間 平日 10:30~12:00 および 13:00~16:30
  • 郵便物とメール、ファクスは通常通り受け付けます。
  • なお、今後の感染状況によっては、電話受付を休止することがあります。

2022年7月19日

「ローカル深夜番組女性出演者からの申立て」審理入り決定

 BPO放送人権委員会は、7月19日の第306回委員会で、上記申立てについて審理入りを決定した。

 申立ての対象となったのは、あいテレビ(愛媛県)が2022年3月まで放送していた深夜のローカルバラエティー番組『鶴ツル』。この番組は男性タレント、愛媛県在住の住職とフリーアナウンサーである申立人の3人を出演者として、2016年4月に放送が開始された。3人が飲酒しながらトークを行う番組だが、申立人が、番組中での他の出演者からの度重なるセクハラ発言などによって精神的な苦痛を受けたとして申し立てた。
 申立書によると、番組開始当初から苦痛、改善を訴えていたにもかかわらず、放送された他の出演者のトークが、申立人自身に対するものも含めてしばしば性的な内容に関することに及んで申立人に羞恥心を抱かせることで、また、そのような内容の番組の放送によって申立人のイメージが損なわれたことで、人権侵害を受け、放送倫理上の問題が生じたと主張している。
 被申立人のあいテレビは、申立人は番組の趣旨を十分に理解した上で出演しており、申立人からの苦情も2021年11月が初めてで、また、番組の内容も社会通念上相当な範囲を逸脱しておらず、人権侵害や放送倫理上の問題はない、と主張している。
 申立てを受け、双方による交渉が持たれたが不調に終わり、今回の委員会で審理入りするか否かを検討した。

 7月19日に開かれたBPO放送人権委員会は、委員会運営規則第5条(苦情の取り扱い基準)に照らして、本件申立ては審理要件を満たしていると判断し、審理入りすることを決めた。次回委員会から実質審理に入る。
 なお、審理対象とするのは、申し立てられた日から1年以内の2021年2月以降の放送分とし、それ以前のことは背景事情として考慮することが委員会で決定された。

放送人権委員会の審理入りとは?

「放送によって人権を侵害された」などと申し立てられた苦情が、審理要件(*)を満たしていると判断したとき「審理入り」します。
ただし、「審理入り」したことがただちに、申立ての対象となった番組内容に問題があると委員会が判断したことを意味するものではありません。

* 委員会審理に必要な要件については、同委員会「運営規則 第5条」をご覧ください。

第173回 放送倫理検証委員会

第173回–2022年7月

NHK BS1スペシャル『河瀨直美が見つめた東京五輪』を審議

第173回放送倫理検証委員会は7月8日に千代田放送会館で開催された。
2月の委員会で審議入りしたNHK BS1スペシャル『河瀨直美が見つめた東京五輪』について、担当委員から意見書の修正案が提出された。

議事の詳細

日時
2022年7月8日(金)午後5時~午後7時30分
場所
千代田放送会館BPO第一会議室
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、
大石委員、大村委員、長嶋委員、西土委員、米倉委員

1. NHK BS1のドキュメンタリー番組『河瀨直美が見つめた東京五輪』について審議

NHKは2021年12月26日に放送したBS1スペシャル『河瀨直美が見つめた東京五輪』後編の字幕の一部に不確かな内容があったとして、2022年1月9日、番組と局のホームページで公表し謝罪した。番組は、東京五輪の公式映画監督である河瀨直美さんと映画製作チームに密着取材したもの。男性を取材した場面で「五輪反対デモに参加しているという男性」「実はお金をもらって動員されていると打ち明けた」という字幕を付けて伝えた。放送後、視聴者から字幕の内容が事実であるかの問い合わせが相次ぎ、NHKが男性に確認したところ、実際に五輪反対デモに参加していた事実を確認できず、字幕の内容が不確かだったことがわかったという。
2月の委員会では、委員会からの質問に対する回答書、NHKが設置した「BS1スペシャル」報道に関する調査チームがとりまとめた調査報告書が提出され、それらを踏まえて議論を行った。同報告書では、字幕の内容は誤りであったとされている。議論の結果、取材、編集、考査、調査の各段階で問題があるのではないかといった厳しい意見が相次ぎ、放送倫理違反の疑いがあることから、放送に至った経緯等について詳しく検証する必要があるとして審議入りを決めた。
3月から6月までの委員会において、担当委員からヒアリングなどに基づいた意見書が提出され議論を行ってきた。今回の委員会では、前回委員会までの議論を踏まえ担当委員から示された意見書の修正案について意見が交わされた。
次回の委員会には、再び、意見書の修正案が提出される予定である。

2. 6月に寄せられた視聴者意見を議論

6月に寄せられた視聴者意見のうち、ニュース番組で参院選に向けた党首討論がなされた際の司会役の進行や、情報番組で前日の緊急地震速報を繰り返し使用したことに批判的意見が多数寄せられたことなどを事務局が報告したが、踏み込んだ検証が必要だという意見はなかった。

以上

2022年6月に視聴者から寄せられた意見

2022年6月に視聴者から寄せられた意見

参院選の選挙報道のあり方や、いわゆる「ドッキリ」で陰口を言うように仕向けてそれを本人に聞かせる企画などに意見が寄せられました。

2022年6月にBPOに寄せられた意見は1,705件で、先月から550件減少しました。
意見のアクセス方法の割合は、メール78%、電話20%、郵便・FAX 各1%。
男女別は男性45%、女性18%で、世代別では40歳代28%、50歳代21%、30歳代20%、60歳以上13%、20歳代11%、10歳代2%。
視聴者の意見や苦情のうち特定の番組や放送事業者に対するものは各事業者に送付、6月の送付件数は675件、57事業者でした。
また、それ以外の放送全般への意見の中から26件を選び、その抜粋をNHKと日本民間放送連盟の全ての会員社に送りました。

意見概要

番組全般にわたる意見

参院選を前に選挙報道のあり方についての意見が目立ったほか、陰口を引き出して本人に聞かせる、出演者の私物を本人に無断で「視聴者プレゼント」にするといったバラエティー番組の企画などに意見が寄せられました。
ラジオに関する意見は51件、CMについては13件でした。

青少年に関する意見

6月中に青少年委員会に寄せられた意見は84件で、前月から35件減少しました。
今月は「表現・演出」が24件、「低俗、モラルに反する」が11件、「いじめ・虐待」も11件で、「言葉」が5件、と続きました。

意見抜粋

番組全般

【取材・報道のあり方】

  • 参院選の目立った特番がなく、有権者が投票先を選択する上で必要な情報が、投票日より前に十分に報道されているとは思えない。各局、ゴールデンタイムに各党の政策の違い、与党の公約の達成状況などを伝える特番を放送してほしい。

  • 投票日前はさほど選挙を取り上げていない。放送業界が投票率を上げる努力をしないのは役割放棄ではないのか。放送業界の努力に期待している。

  • 党首討論で特定の政党の発言が「テーマから逸脱している」として司会者に遮られた。まだ到底「逸脱している」とは思えない段階だった。暴走を止めるために仕方がなかったとしても判断が早すぎると感じた。

  • 党首討論で司会者が党首の発言を制止していた。発言を終了させる権利はどこからきているのだろうか。

  • ネットの「底辺の仕事ランキング」という記事に批判が殺到し、その記事が削除された騒動を取り上げていた。信頼性のはっきりしない記事に基づいて取材、放送すること自体が職業差別を助長することになる。そのことを分かっていて取り上げたのであれば人の道に外れているし、分からずに取り上げたのなら能力不足。

  • 交通トラブルに起因する暴行事件の映像について。「被害者」とされる男性が明らかに挑発していて、「加害者」が悪いとは思えなかった。挑発した「被害者」の顔は隠されていたが「加害者」はそのままで名前も放送され納得がいかなかった。

  • 朝の情報番組で前日の地震について伝えた際、取材中に緊急地震速報の警報音が鳴っている場面を2度も放送した。テロップでは「昨日の速報音」と表示されたようだが、私は出勤準備をしていたので画面は見ておらず、大変驚いた。追い討ちをかけるように2度目が流され、生きた心地がしなかった。命の危険を知らせる音をこんなにポンポンと流すというのはいかがなものか。わざわざこの部分を流す必要はあったのか。

  • 猛暑、電力ひっ迫で日本中が節電に腐心しているが、そのニュースを伝える出演者はきちんとスーツを着て汗もかいていない。どれほどスタジオの冷房を効かせているのか。ネクタイ姿で「節電を」と言っても視聴者には響かない。冷房を弱め、半袖シャツ姿でニュースを読んでも礼儀に反することはない。考え方を改めるべきだ。

  • スーパーの節電を伝えるリポーターがタンクトップ姿だった。店の紹介には失礼でふさわしくない。暑くてももう少しきちんとした服装をすべきだ。

【番組全般・その他】

  • 国会議員のいわゆる「パパ活」疑惑を取り上げた際、それを楽しいこと、良いことと若者に思わせかねない部分があった。実際には性被害を受ける女性も多い。推奨される行為ではないということも強調すべきではないだろうか。

  • 情報番組中、「ランドセルが重い」という話題でMCが「タブレット端末があるのになぜ教科書を別に持たないといけないのか。今は書籍や漫画もタブレットで読めるのに遅れている」と発言した。学習端末によるいじめが報告され、私の子供が通う中学校の保護者の間にも心配する声がある。視力、学力が紙ベースの時より下がったという報告もある。ネットの無料漫画も年齢制限がないなど心配。自宅待機もなくなり学習端末を持つメリットが感じられない。番組としてもう少し思慮深い発言が聞きたかった。

  • 摂食障害を経験した元アスリートが、医師に入院と競技生活の休止を勧められたが、実家暮らしのまま、競技も続けながら病気を克服したと語っていた。苦しんでいる人たちの役に立ちたいという気持ちは素晴らしいが、この部分は残念。命に関わることであり、番組は「危険なので皆さんはまねをしないでください」と付け加えるべきだったと思う。

  • 芸能人の闘病体験の再現ドラマ。医師から「股関節に負担をかけないよう杖を使って」と指示された芸能人が、妻を心配させまいと「杖を使うがカッコイイものにする」と伝える。妻は「杖が『かっこいい』なんてダサい。病気を受け入れている感がある」。芸能人本人はこれを「励まし」と受け止めて杖を使わなかったというが、医師の指示に反する行動であり、また病気を受け入れて戦っておられる方々や杖を使用する方々に対して大変失礼。

  • 肥満の子ども2人とその父親が大量の食材を買い、調理して食べる様子を紹介するシリーズ。朝食にコンビニサイズの4倍だという巨大おにぎりとバナナ6本(1人分)を食べて「爆睡」していた。子どもたちが糖尿病になってないか心配になった。こうした様子をスタジオの芸能人が笑いながら見ている。いいのだろうか。

  • いわゆる「ドッキリ」で、タ―ゲットのタレント数人が囲んでいるテーブルから突然、天板を突き破って仕掛け人が飛び出し、ターゲットたちがいすから転がり落ちていた。1人は心配になるほど腰を強打していた。所属事務所が事前に了承していたとしても、実際の反応までは予測できない。以前にも同様の場面を目にしたことがあり、問題が多いと感じた。

  • 芸人数人に犬の着ぐるみを着せて「大型犬コンテスト」。MCが「吠えまねでカラオケ」「お題のことばを吠え声で」など課題を指示して採点、罰ゲームは「尻の嗅ぎ合い」や「ドッグラン」。その態度にも何かしら難癖をつけてさらなる罰ゲームを課し、笑いをとろうとしていた。全員が合意の上での演出とは推察されるが、それでもなお学校のいじめの風景を強く連想させる。いじめを助長しかねないと思う。以前から続くシリーズだが、今回はさすがに笑って見られなかった。

  • MCであるベテラン芸人が、ゲストでVTRを見て感想を述べる役割のお笑い芸人2人の顔に、番組冒頭で多量の墨汁をかけ、2人は汚れた顔のまま2時間出演した。かけられる側もあらかじめ承知しているとは思われるが、子どもが見た場合は誤解し、いじめを助長すると思う。また、人に痛みや不快感、驚きなどを与え、それを嘲笑する演出は、仮に出演者の同意があるとしても不快に感じる。

  • いわゆる「ドッキリ」。他人をだましてまで陰口を引き出して本人に聞かせ、それを面白いと思って放送する感覚はおかしいと思う。とても不快だった。

  • 陰口を本人に聞かせる企画で、仕掛け人役が中座した後の陰口は聞いていられないほどひどかった。仕掛け人役がふびんでとても悲しかった。人の心をどう考えているのだろうか。

  • 陰口を本人に聞かせる企画は出演者たちの今後の関係性にも影響するように見え、一ファンとして心配。

  • 「自分が二度見したことは」と質問された出演者が「たぶん、路上生活を始めた初日の人」と答え、その様子を滑稽なものとして笑いながら紹介していた。路上生活者をあざ笑うなどありえない。ほかの出演者やスタッフも笑っていた。この編集を許し放送したテレビ局の人権感覚を疑う。

  • 出演芸能人の私物を自宅から勝手に持ち出して本人の承諾なく「視聴者プレゼント」。本気で嫌がっているように見える。そのように演じているだけだとしても非常に不快だ。司会者が「マネージャーさんに協力してもらいました」と説明していたが、マネージャーが盗んだということなのか。

青少年に関する意見

【「表現・演出」に関する意見】

  • 歌手や歌のうまい芸能人が、曲のサビ部分を歌って、1音でもミスすると失格、それを10曲連続で成功すると100万円もらえる番組で、司会者らが歌っている人をバカにする発言や暴言ばかりで、ほんとに耳障り、不快だ。そのひどい発言を笑い、全員で演者を攻撃ばかりしている様子はいじめとしか受け取れない。子ども達が真似し、いじめを助長する。
  • オムニバスドラマの2話目で、銀座の金持ちの頭に網をかぶせて捕獲する場面がある。人間の金持ちを家畜のように飼う内容で、道徳・人権に反していて差別的だ。人身売買を促進する内容で見ていて非常に不快だった。子ども達にも悪影響を及ぼすと思う。

【低俗、モラルに反する】

  • バラエティー番組の「2時間スペシャル」で、外来種を美味しくいただくとして、沖縄のタイワンハブを探すため、廃墟のような空き家の中に勝手に入りヘビを探していた。家主に確認したとのテロップ記載はない。子どもが真似したら困るし、不法侵入が疑われて不快な内容だった。
  • 大型犬コンテストと称して、芸人5人ほどに犬のような模様のタイツを着せ、犬の吠え真似でクイズに答えさせ、その解答が気に入らないと、罰ゲームとして懸命に遠吠えさせたり、犬の恰好で必死に走らせたりしていた。実際は、仲間内の芸人が合意のもと、やっていると推察されるが、それでも学生のいじめの風景を強く連想させる。いじめを助長しかねないと考える。

【「いじめ・虐待」に関する意見】

  • お笑いタレントが、子どもに走り方を指導し、最後には、そのタレントを落とし穴に落として笑いにするドッキリがあった。子どもに演技させてまで、指導を踏みにじる場面を笑いにしたことと、それを見た子どもが、指導をあざ笑うことが面白いと受け取ることが、心配だ。

【「言葉」に関する意見】

  • 天気予報のコーナーで、女性キャスターが気象予報士と楽しそうに父の日について喋っていたが、親がいない子どももいる。気遣いがなさすぎてお手本になっていない。赤ちゃんポストを知らないキャスターなのか、そんなわけない。ニュース番組でそんなことをいうのは、いかがなものか。

第247回 放送と青少年に関する委員会

第247回-2022年6月

「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」に関する見解についての意見交換会を開催…など

6月28日、青少年委員会が4月に公表した「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」に関する見解について、加盟各社との意見交換会をオンライン併用で開催しました。
意見交換会終了後に第247回青少年委員会を開き、8人の委員全員が出席しました。
視聴者からの意見(5月後半から6月前半)では、マナー講師が番組スタッフにテーブルマナーを厳しく指導する内容のバラエティー番組や、新型コロナのワクチン接種を連想させる設定の子ども向け特撮ドラマなどに多くの視聴者意見が寄せられました。
中高生モニターの6月のテーマは「最近見たバラエティー番組について」でした。
委員会ではこれらの視聴者意見やモニターからの報告について議論しました。
次回は、7月26日(火)に定例委員会を開催します。

議事の詳細

日時
2022年6月28日(火)午後4時00分~午後7時00分
場所
千代田放送会館ホール
議題
「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」に関する見解についての意見交換会
視聴者からの意見について
中高生モニター報告について
今後の予定について
出席者
榊原洋一委員長、緑川由香副委員長、飯田豊委員、佐々木輝美委員、
沢井佳子委員、髙橋聡美委員、山縣文治委員、吉永みち子委員

「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」に関する見解についての意見交換会

2022年6月28日、「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」に関する見解をテーマに、青少年委員会とBPO加盟各社との意見交換会を開催しました。バラエティー番組の制作が多い在京・在阪の放送局およびNHKには千代田放送会館に来場いただき、全国の加盟社にはオンラインで配信しました。
委員会からは委員全員が出席し、各委員の紹介のあと、今回の『見解』の趣旨や、見解を出すに至った経緯などを榊原委員長が説明しました。
そして、事前に各局から受けた質問に委員がそれぞれの考えを述べたのに続き、会場の参加者と直接質疑応答を行い、およそ1時間半にわたって意見交換をしました。 
青少年委員会の基本的な立場や考え方についても、あらためて理解を深めてもらう機会になりました。

視聴者からの意見について

5月後半から6月前半に寄せられた視聴者意見について担当委員から報告がありました。
女性マナー講師がスパルタ式にテーブルマナーを番組スタッフに指導したクイズ形式のバラエティー番組の内容に対し、「弱いものに対する高圧的な態度は不快だ」といった意見が寄せられました。
委員からは「同じ文脈の中で『今度はよくできました』とほめてもいるので問題はない」との意見がありました。
子ども向けの人気特撮ヒーロードラマで新型コロナワクチン接種の危険性を揶揄したような内容に対し、「現在の(政府の)ワクチン政策に反対する考えや、ワクチンに対する恐怖を子どもに植え付ける」などの意見が寄せられました。
妻の機嫌を損ねないような気配りを語り合うトーク番組で、脳科学者の「みなさん(夫)は寄生虫」という発言に対し、「夫への侮辱・差別だ」「妻の要求は全て正しく、夫に対してのモラハラ・パワハラは笑いごととして看過されるべきと勘違いする危険性がある」などの意見が寄せられました。
歌のうまいタレントに音を外さずにカラオケを歌いきったら100万円ブレゼントという企画で、MCのお笑い芸人が挑戦者に暴言を浴びせ続ける内容に対して、「いじめを助長する」「暴言をヒートアップさせ、大変不快だ」との意見がありました。
速く走れない小学生にお笑いタレントが長期ロケで秘訣を伝授するというニセ密着番組のフィナーレで、頑張った小学生に走り寄るタレントを落とし穴に落とすドッキリの内容に対して、「人の善意を弄び過ぎ」「小学生をだます側に起用するのは不快だ」との意見が寄せられました。
委員からは、「子どもにだます役割を負わせるという点では非常に後味の悪い番組」「子役の子たちならば許容範囲ではないか」との意見が出されました。
その他は特に議論もなく「討論」に進むものはありませんでした。

中高生モニター報告について

6月のテーマは「最近見たバラエティー番組について」で、モニターからは合わせて24番組への報告がありました。
このうちトークやクイズを中心とした番組には「自分自身を見つめ直すきっかけになっている」「人間力を高めることができる」などの感想が届きました。
「自由記述」では、ウクライナ情勢についてもっと放送してほしいという声などが寄せられています。

◆モニター報告より◆

  • 【最近見たバラエティー番組について】

    • 『人間観察バラエティモニタリング』(TBSテレビ)
      一般人をターゲットにしているため、「一般的な考え方」「一般的な行範囲」などが共感できて楽しく、家族全員が夕食を食べながら感情移入する良い機会になると思う。個性豊かなレギュラーのみなさんが、感想や意見を面白おかしく次々とテンポよく述べていく様子は見ていて飽きない。ときには考えさせられることもあり、いろいろな面で自分と重ねて考える機会になる良い番組だ。(中学2年・女子・鹿児島)

    • 『人志松本の酒のツマミになる話』(フジテレビ)
      笑えるような話から、あまり考えてこなかったけど案外深い話までさまざまなジャンルの話を聞くことができます。ドッキリ企画やクイズ番組など、企画があらかじめ用意されているバラエティー番組ももちろん面白いですが、誰が話すかを決める酒瓶ルーレットと円卓だけで笑いを起こさせるというのは、やはり芸人さんの腕だなと毎回感じています。このようなトークバラエティーは今のテレビにあまりないように感じます。この番組は「唯一無二だから見たくなる」そんな力があるのではないでしょうか?番組で気になったトークテーマは、友達や家族にも話して意見を聞くようにして2段階で楽しんでいます。 (お酒を飲まない高校生も視聴していることを伝えたい)(高校2・女子・千葉)

    • 『しゃべくり007』(日本テレビ)
      この番組ではドッキリを含むロケなどはほとんど行われず、しゃべくりメンバーのみなさんとゲストの方の純粋なトークや即興コントなどで僕たち視聴者を笑わせてくれます。痛みを伴っているかもしれない行動は、ときおり行われるジャングルパニックと呼ばれるものがありますが、あれはお互いの信頼のもとで成り立っているように思うので、視聴者としてまったく不快な気持ちにはなりません。(高校3年・男子・東京)

    • 『THE グレートアンサー』(毎日放送)
      冒頭の「テレビ画面にかじりついて必死に問題を解く必要はありません!」というセリフに衝撃を受けました。問題を解いている方々の思考法を見ているだけで、気がつくと賢くなったような気持ちになりました。どの問題も観察力や、目の前のことだけでなく周りに気配りができているかをみるもので、真のトップは勉強だけではないのだなあと思いました。次はぜひゴールデン帯で放送していただきたいです。ただのクイズ番組ではなく、人間力を高めることができるのも良いポイントだと思いました。(中学3年・女子・千葉)

    • 『キョコロヒー』(テレビ朝日)
      この番組のように出演者が毎回あまり変わらないトークバラエティーは、コーナーも含めてあまり代わり映えがないように思えるかもしれません。しかし、そのぶん毎回安定した面白さがあり、視聴者としても安心感があるなと思います。たくさんの方が出ている番組もいいのですが、この番組のようにゆるく、リラックスして見られる番組に出会えて本当にうれしく思います。(中学2年・女子・東京)

    • 『オードリーさん、ぜひ会ってほしい人がいるんです。』(中京テレビ)
      キー局や在阪局にできないような、いい意味でのB級感や手づくり感が出ていてとてもいいなと思いました。ほかの地方局が制作した番組もキー局とはまったく違う味を出しているので、もっとローカル番組を見たい!と思い、地方局間でもっと柔軟に番組を融通しあったりできたらいいのにと思いました。(高校1年・男子・愛知)

    • 『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ)
      お祭りに芸人さんが参加する企画では一緒にその土地の情報をPRしていて、街を知るきっかけになっていいと思いました。祭りの定義などを改めながら企画のノリなどをそのまま残していて、昔から見ていたひとも楽しめると思います。(中学1年・男子・山形)

    • 『マツコの知らない世界』(TBSテレビ)
      「自衛隊メシ」についての特集番組は何度も見たことがありますが、この番組のように陸・海・空それぞれから給養員の方をゲストに呼ぶという企画は見たことがありませんでした。3人の料理隊員の方が一堂に会することで、それぞれの特色が明確に分かり、とても面白かったです。空自の料理についてお話してくださった方が「日本一元気な、ご飯をいっぱい食べてくれる人にご飯を作りたい」という理由で給養員になったという言葉にはとても感動しました。「やりがい」をいちばん大切にして仕事を選ぶという姿勢を、将来進む道や仕事を決めるときに思い出したいです。(高校2年・女子・東京)

    • 『有吉ぃぃeeeee!』(テレビ東京)
      毎回気になったゲームを取り上げてくれ家族と楽しく見ています。「負けた人に罰ゲーム」などということがないのでいつも安心して見られます。食についても毎回紹介してくれるのでご飯を食べている時の会話がとても面白いです。(中学2年・女子・山形)

    • 『100カメ』(NHK)
      大河ドラマの制作現場に密着していた。戦いのシーンは主役の武将を見ることが多いですが、エキストラや動物の撮影と演出にもこだわっていて、ときには別撮りの映像を使うことで映像の効率とクオリティを上げていることが分かりました。作品を見るだけでは知ることができない裏方の努力が見られる部分もこの番組の醍醐味です。(高校3年・男子・千葉)

    • 『むっちゃリサーチ!関西リアルコスパ』(毎日放送)
      商品の値段だけではなくほかの要素も加えた“コスパ”から紹介しているところに独自性が出ていて面白かったです。番組内のコーナーを明確に分けていたことで情報が錯そうせず、変に間延びしている感覚がなくて見やすかったです。すでにある商品データだけを使って計算するのではなく、番組が独自に実験しているのも面白かったです。ランキングが絡む番組の多くは、順位の結果がコーナーの終盤に発表されると思いますが、それが見ていてストレスが溜まる原因になっているのではないかと考えます。もしランキングの結果をコーナーの初めのほうで発表した場合、今までのようなランキングの結果がいつ発表されるかを注意し続ける見方から、ランキングの結果を知ってリラックスしたうえで商品の詳細な情報に耳を傾けられるような見方に変わるのではないかと思います。(高校1年・男子・兵庫)

  • 【自由記述】

    • ここ2、3年の動物系バラエティー番組のほとんどがインターネットで話題になった短い動画を引用しているのが気になる。コロナウイルスの流行初期はそのような形式の番組が増えたことにも違和感を覚えなかったが、規制緩和が進むいま、このようなジャンルの番組はもとの形に戻っていく必要があると考える。動物の面白い動画や人気の動画はスマートフォン等で手軽に閲覧でき、テレビという媒体を通すメリットがないからである。テレビ局の強味を生かし、高価な資料映像の放送や一般人の立ち入りのできない場所の取材などを行なってほしい。(高校3年・女子・東京)

    • 最近あまりウクライナのことが言われなくなりましたが、今どういう状況なのかを知りたいです。(中学2年・女子・山口)

    • ロシアのウクライナ侵攻から3か月以上経っていますが、最近はこれについてのニュースが少ないように感じます。テレビで見ないと、政治関連のニュースはあまり情報が入ってこないので、定期的に報道していただきたいです。(中学2年・女子・山形)

    • 最近、情報番組等で出演者がコメントする際、批判がないようにと慎重に言葉を選び、誰でも思うようなコメントは多いです。同じような意見ばかりだと、人は同じような考えになってしまいます。このようではメディアとしての意義が失われてしまいます。より多くの意見を多くの人に知ってもらうのがメディアなのではないか、と家族と話をしました。(中学2年・男子・山形)

  • 【青少年へのおすすめ番組】

    • 『ロッチと子羊』(NHK Eテレ)
      面白くて30分一気に見終わりました。登場した哲学者の著書や解説書などの紹介があると、興味を持った人がより学びやすくなるのではと思います。(高校1年・男子・滋賀)

    • 『激レア動物タイムズ』(テレビ東京)
      このような動物を扱う番組はいろいろあると思うが、空港探知犬など社会において動物が重要な役割をはたしていると気づかされた。こうした番組は、動物の殺処分などへの意識を啓発するという意味でも価値があると思う。(高校3年・男子・東京)

◆委員のコメント◆

  • 【バラエティー番組の感想について】

    • トーク番組での話題について地方在住の観点から感想があった。テレビは依然、とくに青少年にとって世界とつながる重要な窓口になっていて、自分の住んでいる地域の価値について考え直す契機にもなっているのだなと思った。

    • 人気が高まっているeスポーツやゲーム番組の青少年の見方がうかがえた。一時期は地上波から消えたゲーム番組だが、ネットのゲーム実況動画との差別化を図りながら、いまのテレビバラエティーらしい仕上がりになっているという印象を受けた。

    • ランキングの結果を初めのほうで発表してもいいのではという意見があった。「ランキングはCMの後で」という考えで固まっている制作者が“そうかもね”と思うような、そもそも的な感想だった。

    • 「世界の果てまでイッテQ!」についての感想は、番組の新しい模索が若い視聴者に受け入れられているのだなと思えるコメントだった。祭り企画を立て直した番組制作者の皆さんに、個人的には敬意を表したいと思う。

  • 【自由記述について】

    • 海外の衝撃映像を紹介する番組について、家族の中でも好みが分かれるという感想があった。とても鋭い分析で、動画投稿サイトにあるものをテレビにも求めるのか、それともネットにはないものをテレビに求めるかの違いなのかと思う。

    • ネットで話題になった動画を引用する手法に対し、それでいいのかという意見があった一方、いま流行っているいわゆるバズりものの特集を評価する声もあり、とても対照的な受け止めだと思った。

今後の予定について

地方局との意見交換会について、次回以降に対象地域と日程を具体的に詰めていくことになりました。

以上

第305回放送と人権等権利に関する委員会

第305回 – 2022年6月

「ペットサロン経営者からの申立て」審理入り…など

議事の詳細

日時
2022年6月21日(火)午後4時~午後6時
場所
千代田放送会館7階会議室
議題
出席者
曽我部委員長、鈴木委員長代行、二関委員長代行、國森委員、斉藤委員、
野村委員、丹羽委員、廣田委員、松田委員、水野委員

1. 審理要請案件「ペットサロン経営者からの申立て」

日本テレビは、2021年1月28日午前8時からの『スッキリ』で、「独自 愛犬急死 “押さえつけシャンプー” ペットサロン従業員ら証言」とサイドスーパーを出しながら、ペットサロンに預けられていたシェパード犬がシャンプー後に死亡した問題を放送した。放送は、犬の飼い主やペットサロン従業員など複数の関係者の証言を基に構成されていた。「押さえなさい。暴れないように。それを何回も何回も繰り返すので」「『私は神だ』みたいなことを言うんです」といった、ペットサロン経営者に関する発言が放送された。
この放送に対して、ペットサロン経営者の申立人は、「同番組内で申立人が、お客さんから預かっていた犬を虐待して死亡させたなどと、虚偽事実」を放送したと主張し、「字幕付きの放送をしたことで、申立人が預かっていた犬を虐待死させたかのように印象付け、事実に反する放送をすることで申立人の名誉を侵害した」として、BPO放送人権委員会に申し立てた。
これに対して日本テレビは、放送内容は真実であり、また「当社は事前に十分な取材を行っており、真実であると信じるにつき相当な理由」があり、「私たちの取材・放送によって人権と名誉が侵害されたという申立人の主張はいずれも根拠が無く、受け入れられません」と反論している。
3カ月以上、9回の面会・交渉を経ても解決せず、「相容れない状況」となっていたために今回の委員会で審理入りするか否かを検討した。
今回の委員会では、委員会運営規則第5条(苦情の取り扱い基準)に照らして、本件申立ては審理要件を満たしていると判断し、審理入りすることを決めた。次回委員会から実質審理に入る。

2. その他

事務局から最新の申立て状況や「自殺報道」に対する視聴者意見、「民放連放送基準」改正について説明した。

以上

2022年6月21日

「ペットサロン経営者からの申立て」審理入り決定

 BPO放送人権委員会は、6月21日の第305回委員会で、上記申立てについて審理入りを決定した。

 日本テレビは、2021年1月28日午前8時からの『スッキリ』で、「独自 愛犬急死 “押さえつけシャンプー” ペットサロン従業員ら証言」とサイドスーパーを出しながら、ペットサロンに預けられていたシェパード犬がシャンプー後に死亡した問題を放送した。放送は、犬の飼い主やペットサロン従業員など複数の関係者の証言を基に構成されていた。「押さえなさい。暴れないように。それを何回も何回も繰り返すので」「『私は神だ』みたいなことを言うんです」といった、ペットサロン経営者に関する発言が放送された。
 この放送に対して、ペットサロン経営者の申立人は、「同番組内で申立人が、お客さんから預かっていた犬を虐待して死亡させたなどと、虚偽事実」を放送したと主張し、「字幕付きの放送をしたことで、申立人が預かっていた犬を虐待死させたかのように印象付け、事実に反する放送をすることで申立人の名誉を侵害した」として、BPO放送人権委員会に申し立てた。
 これに対して日本テレビは、放送内容は真実であり、また「当社は事前に十分な取材を行っており、真実であると信じるにつき相当な理由」があり、「私たちの取材・放送によって人権と名誉が侵害されたという申立人の主張はいずれも根拠が無く、受け入れられません」と反論している。
 3カ月以上、9回の面会・交渉を経ても解決せず、「相容れない状況」となっていたために今回の委員会で審理入りするか否かを検討した。

 6月21日に開かれたBPO放送人権委員会は、委員会運営規則第5条(苦情の取り扱い基準)に照らして、本件申立ては審理要件を満たしていると判断し、審理入りすることを決めた。次回委員会から実質審理に入る。

放送人権委員会の審理入りとは?

「放送によって人権を侵害された」などと申し立てられた苦情が、審理要件(*)を満たしていると判断したとき「審理入り」します。
ただし、「審理入り」したことがただちに、申立ての対象となった番組内容に問題があると委員会が判断したことを意味するものではありません。

* 委員会審理に必要な要件については、同委員会「運営規則 第5条」をご覧ください。

第172回 放送倫理検証委員会

第172回–2022年6月

テレビ朝日『大下容子ワイド!スクランブル』視聴者質問の作り上げに関する意見への対応報告を了承

第172回放送倫理検証委員会は6月10日に千代田放送会館で開催された。
毎日放送のバラエティー番組『東野&吉田のほっとけない人』についての委員長談話が6月2日に公表され、その概要が報告された。
委員会が3月9日に通知・公表したテレビ朝日の情報番組『大下容子ワイド!スクランブル』視聴者質問の作り上げに関する意見について、当該放送局から再発防止に関する取り組み状況などの対応報告が書面で提出され、その内容を検討した結果、報告を了承して公表することにした。
2月の委員会で審議入りしたNHK BS1スペシャル『河瀨直美が見つめた東京五輪』について、担当委員から意見書の修正案が提出された。

議事の詳細

日時
2022年6月10日(金)午後5時~午後7時
場所
千代田放送会館BPO第一会議室
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、
大石委員、大村委員、長嶋委員、西土委員、米倉委員

1. 毎日放送『東野&吉田のほっとけない人』についての委員長談話の公表を報告

毎日放送が2022年元日に放送したバラエティー番組『東野&吉田のほっとけない人』について、5月の第171回委員会では、放送局としての自律的な自浄作用が機能しているとの一定の評価を行うとともに、質的公平性について踏み込むことは政治ジャーナリズムの足かせになる可能性があることを考え、紙一重のところで審議入りはしないとの結論に至った。その上で、当該番組に問題がなかったと誤解されるおそれもあることから討議入りとし、6月2日、委員長談話をBPOウェブサイトに公表した。
今回の委員会では、小町谷委員長から公表についての報告が行われ、事務局からは毎日放送のチェック体制の強化策など対応が説明された。

2. テレビ朝日『大下容子ワイド!スクランブル』視聴者質問の作り上げに関する意見への対応報告を了承

3月9日に通知・公表したテレビ朝日『大下容子ワイド!スクランブル』視聴者質問の作り上げに関する意見(委員会決定第42号)への対応報告が、当該放送局から委員会に書面で提出された。
報告書には、委員会決定の内容を社内に周知徹底した上で、社内各部署の危機管理担当者で構成される「放送倫理関連委員会」において、放送倫理違反があった点と、本件放送の5つの問題点についての説明が行われ、全社的な共有をしたことや、検証委員会の委員を招いて勉強会を開催したことなどが記されている。また再発防止に向けて、番組全般の管理の強化や、中堅、ベテラン向けの報道倫理研修を行い、「放送倫理ホットライン」を設置したことと共に、制作会社のテレビ朝日映像における再発防止策などが報告されている。
委員からは、再発防止に向けて「管理の強化」や「徹底的なチェック」などが挙げられているが、それ以前に放送ジャーナリストとしての基本的な確認作業を怠らないようにすべきだとの意見が出されたものの、委員会の意図するところはくまれているとして、報告を了承し、公表することにした。
テレビ朝日の対応報告は、こちら(PDFファイル)

3. NHK BS1『河瀨直美が見つめた東京五輪』について審議

NHKは2021年12月26日に放送したBS1スペシャル『河瀨直美が見つめた東京五輪』後編の字幕の一部に不確かな内容があったとして、2022年1月9日、番組と局のホームページで公表し謝罪した。番組は東京五輪の公式映画監督である河瀨直美さんと映画製作チームに密着取材したもの。男性を取材した場面で「五輪反対デモに参加しているという男性」「実はお金をもらって動員されていると打ち明けた」という字幕を付けて伝えた。放送後、視聴者から字幕の内容が事実であるかの問い合わせが相次ぎ、NHKが男性に確認したところ、実際に五輪反対デモに参加していた事実を確認できず、字幕の内容が不確かだったことがわかったという。
2月の委員会では、委員会からの質問に対する回答書、NHKが設置した「BS1スペシャル」報道に関する調査チームがとりまとめた調査報告書が提出され、それらを踏まえて議論を行った。同報告書では、字幕の内容は誤りであったとされている。議論の結果、取材、編集、考査、調査の各段階で問題があるのではないかといった厳しい意見が出され、放送倫理違反の疑いがあることから、放送に至った経緯等について詳しく検証する必要があるとして審議入りを決めた。
3月から5月までの委員会において、担当委員からヒアリングに関する報告に続き、意見書の原案が提出され議論を行ってきた。今回の委員会では、追加で実施した当該番組の関係者に対するヒアリングの内容が報告された。その上で、前回委員会までの議論を踏まえ担当委員から示された意見書の修正案について意見が交わされた。
次回の委員会には、再度、意見書の修正案が提出される予定である。

4. 5月に寄せられた視聴者意見を議論

5月に寄せられた視聴者意見のうち、知床観光船事故で犠牲になった男性がプロポーズの手紙をしたためていたことを放送したことについてプライバシーの侵害だと指摘する意見や、人気お笑い芸人の死去に関する報道がWHOの「自殺報道ガイドライン」に反していたと指摘する意見が、それぞれ複数あったことについて、事務局から概要が報告されたが、さらに踏み込んだ検証が必要だという意見はなかった。

以上

2022年5月に視聴者から寄せられた意見

2022年5月に視聴者から寄せられた意見

バラエティー番組での「妻の脳内では夫は寄生虫みたいな感じ」という出演者の発言、「鬼講師」のスパルタぶりを強調した演出などに多くの意見が寄せられました。

2022年5月にBPOに寄せられた意見は2,255件で、先月と比較して607件増加しました。
意見のアクセス方法の割合は、メール83%、電話16%、郵便・FAX1%。
男女別は男性45%、女性15%で、世代別では40歳代26%、30歳代23%、50歳代21%、20歳代15%、60歳以上9%、10歳代2%。
視聴者の意見や苦情のうち特定の番組や放送事業者に対するものは各事業者に送付、5月の送付件数は1,152件、50事業者でした。
また、それ以外の放送全般への意見の中から35件を選び、その抜粋をNHKと日本民間放送連盟の全ての会員社に送りました。

意見概要

番組全般にわたる意見

バラエティー番組出演者の「妻の脳内では夫は寄生虫みたいな感じ」という発言、芸能人の急死の報じ方、バラエティー番組での「鬼講師」のスパルタぶりを強調した演出などに多くの意見が寄せられました。
ラジオに関する意見は39件、CMについては28件でした。

青少年に関する意見

5月中に青少年委員会に寄せられた意見は119件で、前月から34件減少しました。
今月は「表現・演出」が25件、「いじめ・虐待」が23件、「マナー・服装」が19件、「非科学的な事柄」が16件、「報道・情報」が11件でした。

意見抜粋

番組全般

【取材・報道のあり方】

  • 誤送金問題の報道について。容疑者が小学校の卒業文集に書いた内容を報道していることは理解に苦しむ。小学生時代に書いたことと今を結びつけ、金への執着は「昔からの性根」と言わんばかり。人権問題ではないか。

  • 誤送金に新人職員が関わっていたと報じられていたが、新たな報道では、この職員は銀行に書類を持っていくよう指示されただけで、ミスの根幹部分には関わっていないという。この職員へのネットでの攻撃はすさまじく、個人名および写真が公開されている。報道がこのような状況を作ったといえる。

  • 誤送金によって一人の青年を犯罪者にし、その一生を激変させてしまったことについて町はどう考えているのか、どう責任を取っていくのかを取材すべきではないだろうか。

  • 急死した芸能人の自宅前から中継。方法や発見場所を具体的に説明。「自殺報道ガイドライン」にことごとく反している。

  • 芸能人急死の報道後、彼と年齢の近い知人が自殺念慮を口にするようになった。相談窓口の案内さえすれば免罪されるかのように報道しているが、報道の繰り返しが新たな自殺者を生むことを、報道機関として自覚してもらいたい。

  • 時々「いのちの電話」などを利用しているが、有名人の急死報道で紹介されるたびにつながりにくくなる。中には必要がないのにかけてみる人もいると聞く。必要な人が利用できるよう紹介を1回おきに減らすなど検討してほしい。

【番組全般・その他】

  • あるラジオ情報番組のコメンテーターは特定の国会議員が大嫌いのようだ。その議員の「脱マスク」発言を取り上げたニュースについて「彼に必要なのはマスクより猿ぐつわ。後ろ手に縛りあげてボコボコにしたい」「ふざけるな、このバカたれが」などと発言。個人的な悪感情をラジオという公の場でむき出しにするのは不適切。

  • ニュースを解説するバラエティー番組で中国と日本のアニメーターの「平均月収」について「中国52万円、日本19万円」と伝えたことに対して、Twitterで中国人のアニメーターらが「うそだ」と指摘、給与明細の画像が公開されたりしている。「中国52万円」は「ごく一部の人」の給料であって、全体の平均は日本と同じレベルかそれ以下だという。誤った情報を放送すべきでない。

  • 高校サッカー部の暴行問題で学校関係者を生出演させてその一方的な意見を放送し、問題が限定的であるかのような印象を与えた。後日、その学校関係者の番組での発言にうその内容があったと指摘されている。公平な取材に基づく放送が行われたとはいえない。

  • 「マナー講師」が相手を叱りつける、明らかにパワハラと思われる行為を面白おかしくナレーションを付けて放送した局に不快感を覚えた。局のモラルを問う。

  • スパルタマナー講師が相手を面罵(めんば)する演出。これが放送されたということはこの内容を放送局が容認したということ。放送局の時代遅れな体質、偏見、おごりを感じた。講師個人ではなく、この演出を笑いとして制作した放送局にがく然とした。子どもたちも見る人気の番組だからこそ視聴率だけを求めるのではなく、もっと真摯(しんし)に価値ある番組作りをしてほしかった。視聴者に寄り添う温かい気持ちを感じない番組だった。

  • バラエティー番組で「認知科学評論家」の出演者が「妻の脳内では『家庭』は『自分の領域』。そのルールが適用されるので世間のルールは通用しない。(夫である)皆さんは寄生虫みたいな感じ」と発言した。男女を入れ替えて「夫から見て妻は寄生虫みたいなもの」という内容であれば放送できるわけがない。ということは適切な内容ではない。笑えればいいというものではない。

  • 「妻の地雷を踏まない方法スペシャル」で夫を「寄生虫」呼ばわり。出演した男性タレントたちが披露したエピソードは男女が逆ならモラハラ、DVと非難されるようなものばかりだった。

  • お笑い芸人がラジオの生放送で、最近自身が健康診断代わりに受けたという「検査」について「脳に傷ができているそうなので砂糖玉を舌下において癒(いや)す」「特殊なもので単なる砂糖玉ではない」「検査含めて4万円」などと詳細に説明していた。法に抵触する医療行為を推奨するような内容だ。「砂糖玉」などいわゆる「ホメオパシー医療」について日本学術会議は「治療効果は科学的に明確に否定されている」との会長談話を出している。公共の電波でこうした情報を提供するのは不適切ではないか。

  • 父親が「柔道の指導」として17歳の娘にヴィーガン(完全菜食主義)を勧め、高校入学以降、肉、魚、卵、乳製品を一切とらせていないという。柔道の成績が上がったことをヴィーガンの効果として語っていたが、青少年の場合は身体への悪影響が非常に大きい。間違った知識がテレビで流布され、それを見た知識のない親が子どもに与える苦痛を考えると看過できない。

  • 私は内科医。番組で「オフィスで次々に人が倒れた。原因はある人の皮膚から出た有毒ガス。パトム/PATMという症状」というケースを、実際に起こりうることとして描いていた。医学的にはPATMという疾患は認められていないし、次々と人が倒れるような濃度の有毒ガスが人の皮膚から出るはずがない。

  • いわゆる「おバカタレント」の誤答・珍答を嘲笑する番組は見ていて不快。学習障害などの人に対する配慮・理解が失われると思う。

  • 人気俳優に密着取材した番組で彼の喫煙シーンが何度も放送され、喫煙に対するポジティブなメッセージになっていると感じた。

  • ワイドショーで「『新人は30分前出社』という自社のルールに疑問」という視聴者の投稿を取り上げ、出演者が「自分なら従う」「従わない」などの意見を述べ合って終わった。人間関係や恋愛の問題ならこれでもいいかもしれないが、この問題は賃金、労働時間など法令にも関係する。専門家を交えてトークするなどすべきで、素人の雑談で終わらせるのは不適切ではないか。

  • 寿司を毎日食べるという評論家が、ある大手回転寿司チェーンのメニューをランキングしたという内容だったが、紹介した6品中、3品が「明日発売」。不適切だと思った。

  • コンプライアンスが厳しくなってやりにくい、という出演者や制作者の発信がある。確かに規制の行き過ぎを感じることもあるが、出演者・制作者が視聴者との価値観のズレに気付いていないから、という場合もあるのではないか。実際に新しい価値感でネタを作って結果も出している若い芸人たちがいる。

青少年に関する意見

【「表現・演出」に関する意見】

  • 夫婦関係にまつわるトーク番組で、脳科学者の「みなさん(夫)は寄生虫」発言があった。番組全体を通して、妻の要求は全て正しく、夫に対してのモラハラ・パワハラは笑いごととして看過されるべきという内容。社会経験が少ない母親などが影響され、自分のワガママを許さない夫に責任があるとして、児童虐待、ネグレクトを正当化する材料にもなり、罪のない児童の虐待死につながる可能性も考えられる。公共のテレビで放送する危険性を考慮すべき。

【「いじめ・虐待」に関する意見】

  • あるゲーム番組で、連勝中の特定の出演者が負けるように仕向けることを“キャンペーン”と称し、「負けろ」「空気を読め」等の貼り紙を貼るなどしていた。実力で良い成績を残した人を妬み、いじめてもいいという印象を与えており憂慮する。

【「非科学的な事柄」に関する意見】

  • 特撮ヒーロー番組で、政府特務機関(味方組織)が、敵組織の戦略的人類退化政策から国を守るため、「体内の“悪魔”を取り除く」スタンプの押印を義務化するという描写があった。その見せ方が、最近の新型コロナウイルスのワクチン接種と酷似している。政府特務機関はヒーローと悪魔を戦わせ、国民たちに不安の危機感を煽り、そのスタンプ押印希望者を増やすマッチポンプをしていた。接種への皮肉もしくは警鐘を鳴らしているのだろうが、陰謀論者による反ワクチン描写のようにも思えるので、これを朝の子供達が見る時間帯に放送されていて心配になった。

【「マナー・服装」に関する意見】

  • 女性マナー講師が番組ADにスパルタ式にテーブルマナーを指導していたが、言葉遣いも悪く見ていて気分が悪かった。相手を追い込み威圧する高圧的な態度は許せない。子どもも見ている時間帯で、教育上よくない。

【「報道・情報」に関する意見】

  • 芸能人の訃報について。直接的な言葉を使った報道に耳を疑い、ひどくショックを受けた。WHOの自殺報道ガイドラインを認識しているのか。厚労省が注意喚起したのは明らかに特定の番組に向けてだ。翌日に反省の言葉もなく、続報を流す姿勢にも大きな疑問が残る。子ども達も多く見ている時間、視聴者への影響をよく考えるべきだ。

第246回 放送と青少年に関する委員会

第246回-2022年5月

視聴者からの意見について…など

2022年5月24日、第246回青少年委員会を千代田放送会館会議室で開催し、8人の委員全員が出席しました。
4月後半から5月前半に寄せられた視聴者意見には、美容整形手術をテーマにしたバラエティー番組に元AV女優が出演したことに対し、「ゴールデンタイムの出演はいかがなものか」「家族で見ていられない」などの意見が寄せられました。また、恐怖体験を語るトーク番組で、お笑い芸人がエレベーターに乗った時に先に待っていた女性が一緒に乗って来ず、自分を警戒していたことが不服でもう一度戻って反応を見ようとしたら、既に姿がなく恐怖でゾっとしたというオチの話をしたという内容に対し、「性被害を自衛する女性を批難する言動」「人権意識が希薄だ」という意見が寄せられました。
委員会ではこれらの視聴者意見について議論しました。
5月の中高生モニターリポートのテーマは「最近見たニュース・報道・情報番組について」でした。モニターからは知床の観光船沈没事故の報道で、「被害者家族への取材に気配りが感じられた」という受け止めの一方、「運航会社を批判的にとらえるインタビューばかりだった」「亡くなった人の手紙を公開する必要はないのではないか」などの意見が寄せられました。
委員会ではこれらのモニターからの意見について議論しました。
最後に次期調査研究のテーマ選定や、「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」に関する見解についての意見交換会、および地方局との意見交換会など、今後の予定について話し合いました。
次回は、6月28日に定例委員会を開催します。

議事の詳細

日時
2022年5月24日(火)午後4時30分~午後6時30分
場所
千代田放送会館会議室
議題
視聴者からの意見について
中高生モニターについて
自殺報道のガイドラインについて
調査研究について
地方局との意見交換会について
今後の予定について
出席者
榊原洋一委員長、緑川由香副委員長、飯田豊委員、佐々木輝美委員、
沢井佳子委員、髙橋聡美委員、山縣文治委員、吉永みち子委員

視聴者からの意見について

4月後半から5月前半に寄せられた視聴者意見について議論しました。
美容整形手術をテーマにしたバラエティー番組に元AV女優が出演したことに対し、「ゴールデンタイムの出演はいかがなものか」「家族で見ていられない」などの意見が寄せられました。委員からは「以前から同様の批判的意見が寄せられることがあるが、出演自体が青少年に与える影響はあまり感じられない」「番組の内容自体に特に問題はないと思われる」といった意見が出されました。
恐怖体験を語るトーク番組で、お笑い芸人がエレベーターに乗った時に先に待っていた女性が一緒に乗って来ず、自分を警戒していたことが不服でもう一度戻って反応を見ようとしたら、既に姿がなく恐怖でゾっとしたというオチの話をしたという内容に対し、「性被害を自衛する女性を批難する言動」「人権意識が希薄だ」という意見が寄せられました。委員からは「心霊体験もどきの話を意図したもので、話を盛り上げるための状況説明の範囲だろう」という意見が出されました。
何百年も続く旧家に嫁ぐ庶民の女性の苦闘を描くドラマで、子どもが溺れていても一族の人間が誰も助けず傍観する薄情な様子や、主人公をサウナに閉じ込める危険な行為の描写に対して、「人命を粗末にしている」「いじめを助長する」などの意見が寄せられました。委員からは「フィクションとしての設定であり、特に問題はないと思われる」との意見が出されました。
特撮ヒーロー番組で、敵に操られて悪に染まった人間を主人公が見殺しにし「悪い奴は死んで当然だ」という発言をしたことに対し、「あまりに残酷」「改心させて欲しかった」などの意見が寄せられました。委員からは「勧善懲悪ストーリーの範囲内で、そこまでの影響はないだろう」との意見が出されました。
高級料理を皆で食べその料金を予測し一番外れた者が全額を負担するという番組で、一人の出演者が連勝し続けている状況下で他の出演者が「負けろ」「空気を読め」などの嫌がらせをしたことに対し、「ズルではなく実力で勝ち続ける人を貶めるようなやり方は、いじめにしか見えない」「学校や会社でのいじめに繋がる」との意見が寄せられました。委員からは「弱い者への集団的行為と捉えられるものではない」「強い者に対するやっかみレベルの演出と思われる」との意見が出されました。
童謡の歌詞を替え歌にしてお笑芸人に仕掛けるドッキリ企画に対し、「子どもが真似をする」「冷蔵庫に人が入るのは危険」などの意見が寄せられました。委員からは「同様の番組について前回も議論しており、このような視聴者意見が来ていることを確認してほしい」「今回は一人に連続して全部を仕掛ける内容にはなっておらず、全体として討論に進むという程度には至っていないと思われる」との意見が出されました。
今回の委員会の議論から、「討論」に進んだものはありませんでした。

中高生モニターについて

5月のテーマは「最近見たニュース・報道・情報番組について」でした。朝や夕方の情報番組を取り上げたモニターが多く、いくつかの番組を比較した報告もありました。
一番感想が多かった知床の観光船沈没事故の報道では「被害者家族への取材に気配りが感じられた」という受け止めの一方、「運航会社を批判的にとらえるインタビューばかりだった」「亡くなった人の手紙を公開する必要はないのではないか」などの声がありました。
山梨県の不明女児や芸能人の自殺に関する報道については「もっと家族などに配慮すべきではないか」という感想が複数寄せられました。
「自由記述」では、ウクライナ情勢の報道や生放送中の地震対応などについて要望・感想がありました。
「青少年へのおすすめ番組」では、バラエティー番組の『LIFE!春~君の声に捧げるコント~』(NHK)に8人から感想が寄せられ、とくに「大人たちに言いたいこと」をお題にした”子ども川柳”に「共感できた」という声が挙がっていました。そのほか『香川照之の昆虫すごいぜ』(NHK Eテレ)、『世界くらべてみたらSP』(TBSテレビ)にそれぞれ3人から、『半分だけで考えてみた!』(NHK BS)に2人から感想がありました。

◆委員の感想◆

  • 【最近見たニュース・報道・情報番組について】

    • 観光船の沈没事故をはじめ不明女児や芸能人の死去に関する報道で、家族にお気持ちを聞くシーンが多かったように思う。観光船事故の報道で、被害者の手紙を公開したことに疑問の声があったが、事故と関係ないようなプライベートな話を報じる傾向はあるので、何が必要で何が必要でない情報か、私たちが得るべき情報は何かということを一緒に考えたい。

    • 観光船事故の報道で「運航会社が悪者のようなインタビューばかりだった」という声があった。ただ、こうした事故があったときどういう会社かを知るためには周りにインタビューをするし、それを放送すると結果的に悪者のようになってしまうことがある。それを抑えようとすると公式な発表があるまで報じられなくなってしまい、その辺の兼ね合いについても考えてもらえればと思う。

    • SDGsの話に関心を持っている中学生モニターがかなりいたことは喜ばしい。報道や学校教育などの効果だと思う。

    • ローカル番組を取り上げてローカル性の良さに触れている報告が複数あった。ローカル放送局の大切さも意識して見てくれているのはよいことだと感じた。

  • 【自由記述について】

    • 報道番組のキャスターについて「コメントが的確で、スポーツニュースのときに楽しそうでいい」などと評価する声があった。キャスターに対しても、そうした人間性が見えたようなときに親しみを感じたりするのだろう。

    • 「昔よりバラエティー番組の幅が狭くなった」という記述があった。少し深読みかもしれないが、もっと自由にやっていいのではないかというような感想と受け止めた。

    • バラエティー番組のパターンが似てきていて幅が狭くなった、という印象を持っているのかもしれない。

    • 中高生がテレビのバラエティーに求めるのは、今のお笑いの第7世代と呼ばれる若手に象徴されるように、コンビ仲がいいとか優しい笑いのようなものではないか。若手芸人の皆さんや若い制作者の方々は、そのあたりの感触もよく分かっているのではないかと思う。

  • 【青少年へのおすすめ番組について】

    • 『LIFE! 春~君の声に捧げるコント~』(NHK)に多くの感想が届けられた。NHKの「君の声が聴きたい」キャンペーンの一環だったが、とかく重いテーマになりがちなところをうまくコントにつなげ、子どもたちの今のリアリティを吸い上げたのではないか。

◆モニターからの報告◆

  • 【最近見たニュース・報道・情報番組について】

    • 『news every.』(日本テレビ)、『ゴゴスマ』(CBCテレビ)知床観光船沈没のニュースに関しては、報道陣の方々の多くは、被害者家族の方々にマイクを向けることに十分気を配っていらっしゃるように感じます。一方で、山梨県道志村の不明女児の報道に関しては、少し違和感を覚えています。行方不明の女の子の母親に対して、捜査が進展するたびに報道陣の方々からのマイクやカメラが向き、連日母親のコメントが報道されている印象です。いちばん辛い状況におかれているはずのご家族に対しては、極力配慮をするべきだと思います。(高校2年・女子・東京)

    • 『ZIP!』(日本テレビ)、『情報7DAYSニュースキャスター』(TBSテレビ)亡くなった被害者の方のプロポーズの内容が書かれた手紙の公開はしなくてよいと強く思いました。相手の方のためだけに書かれたものを亡くなったからといって公開することはプライバシーの侵害です。「もし、自分が」と思うと「あなたたちに伝えたかったことじゃない!」と思ってしまうなと思いました。「他の番組では放送しないことを放送して見てもらおう!」ではなく、「どの報道番組よりも相手に寄り添う番組にしよう!」という心がけで番組が制作されたら「見てみたいな」となると思います。(高校2年・女子・千葉)

    • 『Live News イット!』(フジテレビ)北海道の観光船が事故を起こしたというニュースの取り上げ方が気になりました。当初、事故を起こした会社を批判的にとらえる、会社を悪者にするようなインタビューばかり放送されていて「もし、これが別の原因で起こってしまった事故だったら番組はどうやって責任をとるつもりだろうか」と疑問を持つとともに怖くなりました。「取材部ネタプレ」のコーナーはとても面白いなと感じています。普段、現場で取材をしている記者たちがイチオシのネタをプレゼンしていて、記者だからこその詳しい情報が分かるし、毎回惹かれる見出しと内容なのでどの記事もとても気になります。選ばれなかった記事も見てみたいなと思いました。(高校2年・女子・岩手)

    • 『めざまし8』(フジテレビ)上島竜兵さんが亡くなられた時のニュースを見ました。ネットでも問題視されていましたが、死因を報道する、本人の自宅前からの中継、近隣の方へのインタビューなど、やり過ぎた報道が行われていたように思います。今回の報道の仕方は、上島さんへの配慮と同時に、視聴者への配慮も足りなかったのではないかと思います。(高校2年・女子・広島)

    • 『news23』(TBSテレビ)今回の放送は、局のSDGsウィーク中であったこともあり、その話題を冒頭にもってきていたのは印象づけられて良いと思いました。SDGsのように長期的な取り組みを継続して報道する姿勢は素敵だなと思います。番組中盤の「調査報道23時」では、映画界の性暴力被害について、被害者のそのままの声を時間をかけて伝えたり、具体的な被害の内容や現場の取り組みについても伝えたりしていて内容が深く入ってきました。(高校1年・男子・兵庫)

    • 『真相報道バンキシャ!』(日本テレビ)平日朝に放送している『ZIP!』は朝の情報番組ということもあり、短い時間でたくさんのことを伝えているのですが、バンキシャ!は日曜日にゆっくり深掘りできる内容なので落ち着いてみることができる。時間帯や曜日ごとに取り上げ方が違うことに、制作をしている方々の工夫を感じた。(中学3年・女子・千葉)

  • 【自由記述】

    • 知床遊覧船の沈没事故についてのニュースの中で、事故当日に交際相手の女性にプロポーズをする予定だった男性が書いた手紙が公開されていて驚きました。この事故を実感を持って伝えるには有効な報道の仕方でしょうし、遺族に公開の許可をとっていれば問題ないというメディアの考え方もわかります。ただ問題は、ニュースの受取り手が「亡くなられた男性に対するプライバシーの侵害だ」「メディアには道徳が欠けているのではないか」などと感じていること自体です。そうなってしまうとメディアが伝えたかったニュースの核の部分が入らなくなってしまいます。”多くの人に見られる番組”だけにとらわれないようにお願いします。(高校1年・男子・兵庫)

    • 芸能人の方が亡くなるニュースが次々と入ってきました。詳しいことはよく分からないのですが、この報道をするたび同時に「こころの相談窓口」の電話番号なども画面に映されますが、なんとなくその部分の説明が形式的な「社会的な義務だからやってます」という雰囲気がして気になっています。(高校1年・男子・滋賀)

    • ロシアとウクライナの情勢について、在日のロシア人が日本人に誹謗中傷を受けていることに違和感をもっています。これは、マスコミの報道の仕方に問題があると思います。そこで報道するとき「ロシア」と使わずに「ロシア軍」や「プーチン大統領」など、ロシア国民には侵攻に関与したり支持したりしていない人が多いことをしっかり示してほしいです。(高校2年・男子・福岡)

    • 通販番組は一社だけの収入になってしまいます。この状態が激しくなってしまうと、お金のある企業だけがどんどんメディアを侵食し、その企業の作りたい未来しか作れません。テレビ・ラジオという選択の余地が限られているものの中で、そのようなことをやっても大丈夫なのか?と家族と話しました。地方になればなるほど選択ができなくなって真実がぼやけてしまいます。通販番組のあり方についてもう一度考えてほしいです。(中学2年・男子・山形)

    • 最近、日本では地震がとても多くなり、生放送の番組を見ていて、そのアナウンサーの対応がとてもすごいなと思います。どの番組のどのアナウンサーも瞬時に言葉を選び、その言葉は私たちの不安を和らげてくれるような気がします。地震が起こるとすぐに生放送をやっている番組に切り替えます。生放送、アナウンサー、とてもすごいし大切だと思います。(中学2年・女子・東京)

    • 昔と比べてバラエティー番組の幅が狭くなったと感じます。興味を持ったお笑い番組の多くも深夜にやっていて少し残念です。SNS時代である今だからこそ、少し奇抜、クセのある番組を放送しても良いのではないでしょうか。(中学2年・女子・山形)

  • 【青少年へのおすすめ番組】

    • 『LIFE!春~君の声に捧げるコント~』(NHK)川柳のコーナーでは、同じ世代の人たちの声だったので、とても共感しました。家族に対する思春期特有の悩みがある人は、一緒にこの番組を見たら「ここをもう少しこうしてほしい」などと、素直に話せるようになるのではないでしょうか。(中学2年・女子・山形)

    • 『世界くらべてみたらSP』(TBSテレビ)SDGsやガーナのゴミ問題など、世界や地球環境について考えることができた。ゴミを使ったアート作品は、売ったお金を現地で活用していて、あまり世界で活躍する日本人をみる機会がなかったので知ることができてよかった。(中学2年・女子・山形)

自殺報道のガイドラインについて

中高生モニターからの意見等を受けて、自殺報道についての議論となりました。
人気お笑い芸人の訃報を伝える情報番組で、自殺の手段を伝え自宅前からの中継に街頭インタビューを交えて動機を推測するなど、直接的な表現を使った報道に対して、「WHOの自殺報道ガイドラインを認識しているのか」「厚労省が注意喚起したのは明らかに特定番組だ」との意見がありました。
2020年にも芸能人の自殺報道が問題になり厚労省の注意喚起が出され、民放連でもWHOの自殺報道ガイドラインと共に自主・自律的に対処する呼び掛けがあったことが事務局より報告されました。
委員からは、「行政の介入には反対だが、直接的な表現を使った報道には問題があると思う」「自殺報道に限らず、行政機関から注意喚起があったという事態を踏まえ、報道の自由を守るという視点から考えていただきたい」「相談窓口の紹介さえすればアリバイ的に大丈夫というマニュアル化に陥っているのでは」「知床の観光船事故のプロポーズ全文もそうだが、エモーショナル過ぎないか」などの意見も出されました。

調査研究について

次期調査研究担当委員から、青少年がバラエティー番組から得られる満足をテーマとする研究の提案があり、年次変化を見る調査方法などについてのプレゼンが行われ、それについて意見交換しました。
次回以降に継続して議論を行い、調査研究のロードマップを検討することになりました。

地方局との意見交換会について

新型コロナウイルス禍により開催が延期されていた青少年委員会と地方局との意見交換会を、感染状況を考慮し感染防止に配慮しつつ、年度内に再開する方向で準備を進めることになりました。

今後の予定について

本年4月15日に公表した「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」に関する見解をテーマにした在京・在阪各局の番組制作担当者を招いての意見交換会を開催する予定です。

以上

委員長談話

毎日放送『東野&吉田のほっとけない人』について

2022年6月2日
放送倫理検証委員会
委員長 小町谷 育子

 BPO放送倫理検証委員会は、毎日放送が2022年元日に放送した2時間のトークバラエティー番組『東野&吉田のほっとけない人』(以下「本番組」という)に、政治的公平性を問題視する意見が視聴者から多数BPOに寄せられたことから、本番組について4回にわたり議論をしてきた。
 本番組では、司会のお笑いタレント2人が、3組のゲストとの間で順繰りにトークを行うという構成が取られていた。冒頭のゲスト1組が、松井一郎大阪市長、吉村洋文大阪府知事、弁護士でコメンテーターの橋下徹氏の3人だった。松井氏には日本維新の会代表、吉村氏には同副代表との肩書が付され、そこに日本維新の会前代表である橋下氏が加わることにより、同一政党の関係者が一堂に会した形となった。松井氏と橋下氏が吉村氏を挟んで並び、ボケとツッコミのような巧みな話術により笑いを取りながら、先の衆議院選における維新の躍進、文通費(文書通信交通滞在費)問題、将来の総理候補などの国政に関する政治問題や、大阪における新型コロナ対策、大阪万博、大阪都構想などの関西エリアの問題に関するトークが繰り広げられた。構成上、3人のトークは冒頭だけではなく最終パートでも流されており、3人がメインのゲストとして遇されている。
 委員会は、本番組を収録したDVDを視聴するとともに、毎日放送がまとめた報告書および番組審議会の議事要旨などを参考にしながら、本番組が制作された経緯や放送後の対応を検討した。委員会の席上、委員から次々と意見が述べられた。

  • 報告書は、視聴率の追求を前面に打ち出すことで、今回の問題を政治的公平性の案件とはとらえていない、政治性はないということを述べているようだが、果たしてそのように評価してよいか。
  • 政治的な問題を取り扱った番組としては量的公平性を著しく損なっている事案といえるが、それを質的公平性により補正し政治的公平性を保っているといえるか。番組側が日本維新の会の政治的主張に対する批判や反論を投げかけたりしていない以上、質的公平性も損なわれている可能性がある。
  • 収録番組で編成等の目を通っているはずで、バランスを取る編集も十分可能であったのに、そのまま放送に至ったのは、毎日放送のガバナンスに問題があるのではないか。
  • 報道、教養、教育、娯楽など各ジャンルの調和を保つことを求める番組調和原則があるが、多くの番組が特定のジャンルに分類することが難しくなっている現状を踏まえると、バラエティー番組だから政治的公平性は緩くても大丈夫という言い訳はもはや通用しない。
  • 番組を収録した以上、放送しなければならないという考えがあったとすれば、放送倫理違反など問題がある番組にストップをかけられなくなりかねず深刻な事態だ。
  • 政党政治家と公権力担当者の区別を曖昧にすることにより、行政の施策を府知事・市長が説明する形を取って、政党の言いたいことを言わせてしまっている。局は視聴者の知る権利に応えるために番組を制作すべきであり、誰の声を聴いて番組を制作しているのかわからない。
  • 政策トークの中に特定の政党名がふんだんに盛り込まれている。にもかかわらず、番組進行はただ面白く盛り上げているだけで、そのまま放送するようなことが許されていいのだろうか。
  • 局の他番組を精査した場合、果たして放送局全体で政治的公平性が保たれているのだろうか。放送、編成の実態も含めた判断が必要だ。

 委員のこれらの意見は、個別に述べられたものであるが、委員会の総意として共有のできるものであった。
 討議の結果、委員会は、全員一致の結論として、次の2つの理由から紙一重のところで本番組について審議入りを見送ることとした。
 第一に、テレビ放送における政治的公平性で問われるのは量的公平性ではなく質的公平性である(選挙報道・評論について述べたものとして「2016年の選挙をめぐるテレビ放送についての意見」委員会決定第25号)。量的公平性を厳密に追求すると質的公平性がかえって損なわれる可能性があるとともに、放送ジャーナリズムの意義が形式化するおそれがある。質的公平性に十全に配意して番組制作がなされれば、たとえ量的公平性を損なっている部分があるとしても、政治的公平性を保つことができるはずである。しかし、本番組の制作過程で、質的公平性の確保に向けて、番組の構成を綿密に検討したり、トークの内容に創意工夫を尽くしたりした形跡はうかがわれない。非常に問題のある番組といえるのだが、委員会が審議し意見書を公表すれば、放送局が政治問題を伝えるにあたって質的公平性を追求する際の足かせになるおそれがあることを懸念した。
 第二は、放送後の対応である。本番組放送直後に開かれた番組審議会は、バラエティー番組の方が影響力は大きいこと、出演者が政治的な影響力を持っていることに制作者が鈍感であることなどを厳しく指摘し、維新の政策の取り上げ方、スタジオトークを出演者任せにした手法、毎日放送の番組全体で政治的公平性が取れていると局が考えたことなどに疑問を呈していた。委員会とは役割が異なるものの、番組審議会の意見は委員会も賛同ができるところである。そして、専務取締役をリーダーとして立ち上げられた調査チームが速やかに自主的な調査を行い、再発防止のための活動も始まっている。したがって、局の自律的な自浄作用が理想的な形で働いたと一定の評価ができる。
 以上が委員会が審議入りをしない判断に落ち着いた理由である。しかし一方で、審議入りしないという結論だけが独り歩きし、本番組に垣間見えた問題点が放送界に共有されないことを委員会は危惧する。そこで、各放送局の番組制作において参考にしてもらうために、以下の2点を指摘することとした。

①視聴率重視から生じる懸念
 まず、委員会が着目したのは、視聴率重視によるキャスティングが相次ぐことにより政治的公平性を損なうおそれがある点である。
 本番組で3人がキャスティングされた理由の一つは、松井氏、吉村氏が過去に出演したコーナーの視聴率が高かったことから、高視聴率が取れるのではないかと期待したからだという。新型コロナの感染拡大で、大阪府知事と大阪市長はコロナ対策の陣頭指揮を執るリーダーとしてテレビに出演する機会が格段に増えた。大阪の視聴者にとって、2人は名前も顔も良く知られた話題性のある政治家ということになる。彼らが話術に長けたタレント性を併せ持っていることもあって、視聴率を追求するならば、大阪の放送局では、日々のニュース以外でも日本維新の会の政治家を出演させる割合が高まる可能性がある。そこに党派的に偏った番組制作がなされる危うさがあるのだ。
 有権者に対する影響がより広範囲に及ぶ全国放送ではどうか。政治に関する番組を視聴率重視で制作するならば、テレビで取り上げられる機会が多くなじみのある政治家、すなわち大阪と同様に話題性のある政治家が視聴率の取れる出演者として選ばれることになるのではないか。それでは、特定の政党の政治家のみが取り上げられるおそれを払拭できない。 
 こうした視聴率重視のキャスティングが各番組でなされた場合、全体として政治的公平性を保つことは難しくなるといえる。
 番組ジャンル間の境界が曖昧になる中、バラエティー番組では、こと政治問題を取り上げるに限っては、視聴率重視によるキャスティングが適切であるかどうかは、今一度見直す必要がある。加えて、情報と娯楽が混在しているニュース番組や情報番組において、視聴率を偏重すれば本番組と同様のことが起きかねないことにも留意してほしい。
 さらに、視聴率にとらわれると、コメンテーター等の出演者の意見が過激になり、面白さを求めるあまり情報が偏り、結果として誤った印象を視聴者に与えることがありうるのではないか。政治に関する番組でそうしたことが起きた場合の悪影響はいうまでもないだろう。本番組はその最たる例になっているのではないかと、委員会は憂慮する。

②異なる視点の不提示と質的公平性
 次に、委員会が指摘したいのは、本番組が行政を担っている政党の政策について何ら異なる視点を提示しておらず、質的公平性を欠いているのではないかという点である。
 たとえば、新型コロナ対策については、行政における数々の実績が紹介される一方、その影で昨年5月以降、人口あたりの新型コロナ死者数が全国で一番高い水準で推移していたことなど、対策の評価にとって不都合な事実は紹介されていない。その他の事項についても日本維新の会の政策に対して、異なる観点から質問をしたり、反論、異論が出されたりすることはなく、同党の政策が一方的に肯定的に流される結果になったきらいがある。これでは、質的公平性をできる限り確保するために、局が自主性を発揮してさまざまな創意工夫をこらしたと見ることは困難だろう。
 もっとも、こうした事態は、バラエティー番組の本番組に限ったことではないかもしれない。政治家の記者会見や取材において、相手の嫌がる問題を取り上げたり、困らせる質問をしたりすれば、政治家を不愉快にさせ、怒らせ、ひいては将来の取材に支障をきたすのではないかと自粛、抑制、萎縮してしまっていないだろうか。それでは、メディアは、政治家の主張を紹介するだけの導管になってしまいかねない。
 政策を多角的に検討して、そのプラスとマイナスを十分に掘り下げることによって、視聴者はより広くより深く政策を理解することができ、その是非の判断もなし得るのである。質的公平性を担保するためには、異なる視点の提示が欠かせないことを忘れてほしくない。
 大切なのは、視聴者の側に立って、放送に至るまで、放送局が政治的公平性について真剣に議論をした上で番組を制作したのかということである。その鋭意な努力を欠いた放送番組によって一番不利益を受けるのは、偏った情報を受け取ることになる視聴者である。

 政治をめぐる放送において視聴率偏重の人選がなされていないか、異なる視点の提示がないなど質的公平性が担保されていない番組が制作されていないか。今回の問題をきっかけに各放送局において改めて確認をしてもらいたい。

 今夏には参議院議員選挙が予定されており、積極的な政治報道が望まれるところである。民主主義社会においては、政治に関する情報は党派に偏ることなく主権者に対し潤沢に伝えられるべきであり、委員会は、各放送局が、政治的公平性に配慮しながら、有権者のために政治に関する情報を分かりやすく多角的に伝える放送を行うことを期待している。

以上

委員長談話全文(PDF)pdf

第171回 放送倫理検証委員会

第171回–2022年5月

毎日放送『東野&吉田のほっとけない人』を討議

第171回放送倫理検証委員会は5月13日に千代田放送会館で開催された。
2月の委員会で審議入りしたNHK BS1スペシャル『河瀨直美が見つめた東京五輪』について、当該番組の関係者に対して行ったヒアリング等を踏まえ、担当委員から意見書の原案が提出された。
毎日放送のバラエティー番組『東野&吉田のほっとけない人』に同じ政党の関係者3人が出演し政治的な課題などについて見解を語ったことについて議論を行った結果、討議入りとし委員長談話を公表することを決めた。

議事の詳細

日時
2022年5月13日(金)午後5時~午後7時30分
場所
千代田放送会館会議室
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、
大石委員、大村委員、長嶋委員、西土委員、米倉委員

1. NHK BS1のドキュメンタリー番組『河瀨直美が見つめた東京五輪』について審議

NHKは2021年12月26日に放送したBS1スペシャル『河瀨直美が見つめた東京五輪』後編の字幕の一部に不確かな内容があったとして、2022年1月9日、番組と局のホームページで公表し謝罪した。番組は、東京五輪の公式記録映画監督である河瀨直美さんと映画製作チームに密着取材したもの。男性を取材した場面で「五輪反対デモに参加しているという男性」「実はお金をもらって動員されていると打ち明けた」という字幕を付けて伝えた。
放送後、視聴者から字幕の内容が事実であるかの問い合わせが相次ぎ、NHKが男性に確認したところ、実際に五輪反対デモに参加していた事実を確認できず、字幕の内容が不確かだったことがわかったという。
2月の委員会では、委員会からの質問に対する回答書、NHKが設置した「BS1スペシャル」報道に関する調査チームがとりまとめた調査報告書が提出され、それらを踏まえて議論を行った。同報告書では、字幕の内容は誤りであったとされている。議論の結果、取材、編集、考査、調査の各段階で問題があるのではないかといった厳しい意見が相次ぎ、放送倫理違反の疑いがあることから、放送に至った経緯等について詳しく検証する必要があるとして審議入りを決めた。
今回の委員会には、当該局から提出された報告書やヒアリングの内容を基に前回の委員会で交わされた意見を踏まえ、担当委員が作成した意見書の原案が示され、議論が行われた。
次回の委員会では、意見書の修正案が提出される予定である。

2. 毎日放送のバラエティー番組『東野&吉田のほっとけない人』について討議

毎日放送は2022年元日、バラエティー番組『東野&吉田のほっとけない人』を放送した。番組ゲストとして、弁護士・コメンテーターの橋下徹氏と日本維新の会代表・大阪市長の松井一郎氏、日本維新の会副代表・大阪府知事の吉村洋文氏が出演し、MCのタレント2人と「今の政治&大阪の未来は!?」をテーマに、番組内で計1時間程度トークを展開する内容であった。
放送後BPOには、「まるで維新の会の宣伝にしか見えない」「一特定政党だけをヨイショする番組」など、視聴者から批判的な意見が多数寄せられた。また1月11日に開催された当該局の番組審議会では、委員から「政治的なバランスに欠ける」「バラエティー番組に政治家を招くことに対する認識が欠如している」などの意見が出された。
これを受けて毎日放送は社内に調査チームを立ち上げ、関係者に対するヒアリングを行って事実関係を明らかにするとともに、全社研修やチェック体制の強化など再発防止に向けた取り組み状況を3月1日の番組審議会に報告した。
委員会は、当該局の一連の取り組みについて、放送局としての自律的な自浄作用が機能しているとの一定の評価を行うとともに、質的公平性について踏み込むことは政治ジャーナリズムの足かせになる可能性があることを考え、紙一重のところで審議入りはしないこととした。一方で、問題がなかったと誤解されるおそれもあることから討議入りとし、政治問題や政治家に関する番組を制作する際の留意点などを委員長談話として公表することを決めた。
委員長談話は、こちら。

3. 4月に寄せられた視聴者意見について議論

4月にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、ニュース番組でのウクライナ情勢に関するインタビューの字幕が不正確といった指摘や知床の遊覧船沈没事故での不適切な取材のあり方、また、今夏に予定される参議院選挙に関連した放送に対する批判的意見などが事務局から報告され議論を行った。

以上

第304回放送と人権等権利に関する委員会

第304回 – 2022年5月

BPOの国際活動について委員会に報告…など

議事の詳細

日時
2022年5月17日(火)午後4時~午後5時30分
場所
千代田放送会館7階会議室
議題
出席者
曽我部委員長、鈴木委員長代行、二関委員長代行、國森委員、斉藤委員、
野村委員、丹羽委員、廣田委員、松田委員、水野委員

1.「判断ガイド2023」について

「判断ガイド2023」について、事務局から目次構成案を示し、協議した。現在の「判断ガイド2018」の目次項目に、未収録の10本の「委員会決定」の内容を加えてみて、過不足がないか議論した。今後、委員長代行2名が監修委員となり、執筆・編集作業を進めていくことが確認された。

2.BPOの国際活動について

2021年度から開始しているBPO全体としての国際活動の現状について、事務局から報告した。特にドイツの放送自主規制機関FSF所長とBPO大日向理事長とのオンラインによる交流について詳しく伝えた。

3. その他

事務局から最新の申立て状況について説明した。

以上

2022年4月に視聴者から寄せられた意見

2022年4月に視聴者から寄せられた意見

エレベーターでの防犯対策として推奨される女性の行動に不快感を示した男性芸人の体験談に「不適切」などの意見が寄せられました。

2022年4月にBPOに寄せられた意見は1,648件で、先月から69件減少しました。
意見のアクセス方法の割合は、メール79%、電話19%、郵便・FAX 各1%。
男女別は男性41%、女性24%で、世代別では40歳代27%、50歳代23%、30歳代19%、20歳代13%、60歳以上12%、10歳代2%。
視聴者の意見や苦情のうち特定の番組や放送事業者に対するものは各事業者に送付、4月の送付件数は856件、54事業者でした。また、それ以外の放送全般への意見の中から24件を選び、その抜粋をNHKと日本民間放送連盟の全ての会員社に送りました。

意見概要

番組全般にわたる意見

女性にエレベーターを譲られたことを男性芸人が「不快な体験」として披露したことについて、防犯対策として警察も推奨する行動であり不適切という意見が寄せられました。またバラエティー番組で過去のテレビドラマを、主演の男性タレントが存在していなかったかのように紹介。これについて、大手芸能事務所を退所したこととの関連を懸念する意見が寄せられました。
ラジオに関する意見は49件、CMについては21件でした。

青少年に関する意見

4月中に青少年委員会に寄せられた意見は153件で、前月から49件増加しました。
今月は「いじめ・虐待」が43件、「低俗、モラルに反する」が33件、「表現・演出」が25件、「人権」が18件、「暴力・殺人・残虐シーン」が8件でした。

意見抜粋

番組全般

【取材・報道のあり方】

  • 発言内容が取り沙汰されている講義で実際に使われた「無垢」、「生娘」、「シャブ漬け」などの言葉を、ある放送局は別の言葉に置き換えていた。もし放送上不適当と判断したのなら行き過ぎで間違っていると思う。それらの言葉が不適当かどうかは視聴者やリスナーの判断に任せるべきだ。もし政治家の発言であったとしたら、誤った内容を視聴者に伝えることになる。大きな問題だと思った。

  • ヒグマが人を襲ったり目撃されたりしたニュースで、キャスターが「小学生は登下校時にクマよけの鈴をつけて」と呼びかけている。専門家の意見だとは思うが、おととし私は、鈴をつけていてクマに追いかけられた。ツキノワグマには有効かもしれないが、好奇心の強いヒグマには有効ではない。人の気配があっても出てくるクマは、人間の廃棄物を食べた、もしくは人を襲った経験があると思った方がいい。クマよけの鈴は「エサがある」という目印になるだけだ。数年前まではロケット花火や爆竹なども有効だといわれていたが、銃で仕留め損ねたシカを食べた経験から、今では火薬の匂いをエサと勘違いして近寄ってくる。クマよけの鈴をつけていれば安心だと思わせる報道は危険。

  • 放送局の社外取締役の一人が県議会議長。政治家が社外取締役では公平性に欠けるのではないか。また、地元選出国会議員の後援会への勧誘を副知事が県幹部に依頼していた事件について、この放送局は国会議員の名前を伏せて報道した。これも中立性に欠けるのではないか。

【番組全般・その他】

  • 「離婚後の親権の問題を考える」という番組のゲスト2人が共同親権に否定的な弁護士や学者で、離婚後に子どもとの面会交流ができないのは「別居親に問題がある」という印象を与える内容だった。同居親が不倫をして他方親の同意なく子を連れて転居(実子誘拐)するようなケースもある。

  • 性犯罪への対策のひとつとして、警察などは男性と二人きりでエレベーターに乗り合わせないよう女性に注意喚起している。それに従ったと思われる女性の行動について、男性芸人が「不快に感じたので脅かしてやろうと思った」という主旨の発言。これを自慢げに話すなんてどうかしている。ネタとしてOKを出し放送したテレビ局もおかしい。

  • 女性にエレベーターを譲られたことを男性芸人が「不快な体験」として披露。腹いせによる報復をおそれて男性と同乗し、犯罪に巻き込まれるなどの影響がありそうで心配だ。大変有害な内容だと思った。人気のある芸人の発言なので「怖がってはいけない、男性に配慮しないといけない」と思う子どもも出るかもしれない。

  • バラエティー番組で過去のテレビドラマを、主演の男性タレントが存在していなかったかのように紹介した。主演俳優が誰なのかは少し調べれば分かることで、単なる勘違いではないはず。大手芸能事務所に忖度(そんたく)して退所したタレントを起用しないなどの行為がいまだになくならないことについて調査してほしい。

  • 過去に公正取引委員会が元SMAPメンバーの扱いについて注意をしたが、大手芸能事務所の退所者への不当な扱いは一向に改善されない。事実を歪めてまで放送することが政治的な内容にまで及ぶことが懸念され、視聴者としては放送が信頼しにくくなる。

  • 「都市伝説」と銘打ってはいるが、世界情勢に乗じてデマを広めているだけだと感じた。稚内市内の看板などのロシア語表示をロシアの脅威と関連付けたり、プレゼンターが「日本が大きな自然災害に見舞われた時にどさくさに紛れて(外国に)攻め込まれるのが怖い、乗っ取られる」などと発言したり。公的なメディアで流すのは適切ではないと思う。関東大震災ではデマによって朝鮮人が虐殺されている。また、「バイデン(米大統領)はAI」という発言もあったが、もはや「都市伝説」ではなく危険な「陰謀論」。それを助長する内容はいかがなものか。

  • 私は電気設備の技術者。紀行番組のエンディングでスタジオの芸人を「メキシコの電気ビリビリマシーン」に感電させているが、子どもがこの企画を見て興味本位でコンセントに金属棒を突っ込んだらどうなるだろう。取り返しのつかないことになる前に即中止すべき。

  • 愛媛県の銘菓の特集で、飲食店を経営する友人が取材を受けた。放送日に従業員と常連客が集まり、店がいつ登場するかとテレビ画面を凝視していたが、最後まで触れられないまま放送が終わった。気落ちしている友人がとても気の毒だ。事前に「放送しないことになりました」と一言連絡するなどできなかったのだろうか。

  • セキセイインコに首輪をつけ、肩に乗せて散歩する飼い主。他人の飼育方法についてどうこう言うつもりはないが、「鳥博士」として取り上げ、その危険な飼育方法を紹介するのは番組としてお粗末。鳥は驚くとパニックを起こし飛び立とうとする。ひもに絡まれば脚の切断、絶命にもつながる。誤った知識を広めるのは罪。専門家の監修を受けるべきだ。

  • 「旧家に眠るお宝 一挙に売ります」という企画。テレビ番組が数百~数千万円の高額美術品の売買を仲介するような行為に問題はないのだろうか。

  • バラエティー番組で芸人が包茎をネタにする。何が面白いのかわからないが、人の身体的欠陥(ネタにしている人はそう思っているのだろう)で笑いを取ろうとしている。次の日、学校でいじめに遭うんです。なかなかしんどいです。芸能事務所やテレビ局にメールしたけど返信はない。「表現の自由があるのでやめなくてもいいのかな」「死なないと取り合ってもらえないのかな」たくさんの疑問が湧く。僕がテレビを見ないことは簡単なんですけど、いじめてる人に見させないことはできない。これをネタにしないと生きていけないくらいの芸人はいなくなれ。親に申し訳ないのでこんなことで死なないとは決めてるけど、本当にしんどいよ。それでも聞きたい、僕が死んだらこのネタ、放送しないようになりますか?

  • 海外生活が長く、帰国後に日本のバラエティー、お笑い番組を見てがく然とした。人をののしる、冷やかす、ばかにする、たたく、そういったことで笑いを取っている。信じがたい光景で欧米ではあり得ない。他に笑いを取る芸がないのであれば、芸人の質がたいへん落ちているということだと思う。人のアタマをたたく笑いなど、海外では「芸」ではなく犯罪だ。

  • BPOの「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」に関する見解は評価する。しかし、テレビ番組が規制されるほど、YouTubeなどに過激で危険な動画が増え、再生数が伸びる(収入になる)のも現実だ。BPOは、テレビ番組を規制した先のことも踏まえた対策をしてほしい。

  • BPOが罰ゲームや暴力について否定的な見解を示したが、大人が子どもをしっかり教育できなくなっているだけ。放送がけしからんというのは責任を放棄している大人の意見。犯罪を助長してはいけないが、そうでない暴力的な内容は、それがいやな人は見なければいいし、子どもたちにはちゃんと教育すればいい。

青少年に関する意見

【「いじめ・虐待」に関する意見】

  • アイドルグループの1人が他のメンバーそれぞれにドッキリを仕掛けるという企画で、最後に発案者が全てを受ける逆ドッキリを仕掛けられるという内容。一人一人のドッキリは体を張るものも多少はあったが、健康にはある程度留意していたのかと思う。しかし最後に番組側からドッキリ全てをかけられる場面はいじめにしか見えず、とても笑えなかった。子どもが他者を傷つける言動や危険行為を「面白いこと」として捉えることを助長している。

【「低俗、モラルに反する」】

  • 中高生等も見る時間帯に、AV女優を出演させて整形について語らせていた。この方を知らない人もネットで検索すれば、裸の画像や動画がすぐに出てきてしまう。やるなら夜中の時間帯に放送するべきではないか。そして最近よく特集される整形についても、安易に放送するのはあまり良くないと思う。

【「表現・演出」に関する意見】

  • 特撮ヒーローもので、主役の1人が普段は大人しく優しい男性なのに、恋人が傷つけられて「彼女を傷つける奴はどんな人間でも絶対にゆるさない」と、悪人を殺してしまったのは残酷だ。悪人も、毎回普通の人間が敵の親玉に操られているだけなのに、どうして改心させたり救ったりせず、容赦なく殺してしまうのか。あまりにも残酷すぎて子ども番組とは思えない。

【「人権」に関する意見】

  • お笑い芸人が「エレベーターで先に待っていた女性に譲られ、1人で乗った。怪しまれたと思ったから腹が立ってもう一回降りて脅かしてやろうと思った」と発言した。話を誇張している可能性もあるが、このような犯罪を助長するような発言で笑いを取ろうとすることに、人権侵害を感じる。性犯罪を少しでも助長するような発言、またそれを軽視する発言を放送していいとは思えない。

【「暴力・殺人・残虐シーン」に関する意見】

  • 最近ウクライナ紛争で報道が過熱していて、視聴率アップを狙ってなのか死体の映像を各メディアで流している。深夜ならまだしも、子どもが見るであろう朝や日中にも頻繁に映像を出している。いつから死体の映像が解禁されたかわからないが、あまりにも凄惨な映像にショックを受けている。放送倫理として如何なものか。放送時間帯を制限するなど規制が必要だと思う。


第245回 放送と青少年に関する委員会

第245回-2022年4月

視聴者からの意見について…など

2022年4月26日、第245回青少年委員会を千代田放送会館会議室で開催し、8人の委員全員が出席しました。
3月後半から4月前半に寄せられた視聴者意見には、4月スタートの深夜トーク番組のパイロット版が3月に生放送され、グラビア美女へのセクハラや過激で下品な性的表現、容姿をアフリカ民族への侮蔑的表現を使って揶揄した発言などがあったことに対し、「女性蔑視も甚だしい、非常に不快だ」「時代に沿ったコンプライアンスを学び直してと欲しい」といった意見などが寄せられました。
委員会ではこれらの視聴者意見について議論しました。
4月の中高生モニターリポートのテーマは「これまでで一番印象に残ったテレビ・ラジオ番組について」でした。モニターからは、第二の人生を歩む姿を描いたドキュメンタリーについて、「平和で生き生きとした暮らしぶりを見ていると、とても心が和みます」などの意見が寄せられました。
委員会ではこれらの意見について議論しました。
最後に今後の予定について話し合いました。
次回は、5月24日に定例委員会を開催します。

議事の詳細

日時
2022年4月26日(火)午後4時30分~午後6時30分
場所
千代田放送会館会議室
議題
視聴者からの意見について
中高生モニターについて
今後の予定について
その他
出席者
榊原洋一委員長、緑川由香副委員長、飯田豊委員、佐々木輝美委員、
沢井佳子委員、髙橋聡美委員、山縣文治委員、吉永みち子委員

視聴者からの意見について

3月後半から4月前半に寄せられた視聴者意見について議論しました。
4月スタートの深夜トーク番組のパイロット版が3月に生放送され、グラビア美女へのセクハラや過激で下品な性的表現、容姿をアフリカ民族への侮蔑的表現を使って揶揄した発言などがあったことに対し、「女性蔑視も甚だしい、非常に不快だ」「時代に沿ったコンプライアンスを学び直してと欲しい」といった意見が寄せられました。
委員からは、「“アイヌ蔑視発言”とも関連するが、放送倫理上の問題と思われる」との意見が出たうえで、「確かに下品の極みだが、テレビ局は後日ホームページで謝罪し、さらに社長会見でも謝罪している」「番組のレギュラー化に際して生放送は取りやめ、チェック体制の強化を表明している」などの意見が出され、局として自主・自律的な対応を取っていることから議論はこれで終了することにしました。
男性アイドルグループの一人が他メンバーにドッキリを企画するが、最後に企画者本人に対して、他メンバーに敢行したドッキリ・ネタ全てを一気に連続で仕掛けられる”ドッキリ返し”を番組スタッフからされるという内容に対し、「拷問、集団リンチだ」「いじめの様な酷い内容を周りが笑っていることが怖い」という意見が寄せられました。
委員からは、「一つ一つの内容はそれほど危険・残忍とは思えないが、最後に一人に対して総掛かりで有無を言わせず仕掛ける様は、仲間内の“いじり”を越えて、そのしつこさは”いじめ”を想起させる」「芸人ならある程度了解済みということは理解できるかもしれないが、仕掛けられるのがアイドルだと小さい子どもにはそうは見えないのでは」「簡単に出来そうな仕掛けだからこそ、安易に模倣される恐れがあるのでは」などの意見が出されました。これについては、委員会が4月に「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」について「見解」を出したことも踏まえ、これ以上の「討論」には進まないこととしました。
今回の委員会の議論から、「討論」に進んだものはありませんでした。

中高生モニターについて

2022年度の新しい中高生モニターは30人です。4月のテーマは「これまでで一番印象に残ったテレビ・ラジオ番組について」でした。「自由記述」と「青少年へのおすすめ番組」の欄も設けました。全員から報告がありました。
「これまでで一番印象に残ったテレビ・ラジオ番組について」では、テレビが25番組、すべて違う番組が寄せられました。ドキュメンタリー、ドラマ、バラエティーなどジャンルはさまざまで、何年も前に見た番組を取り上げたモニターも複数いました。ラジオは4番組で、2人が同じ番組を挙げていました。
「自由記述」では、ウクライナ報道について「どの言葉がうそで、どの映像が正しいのか分からず困惑している」などの声がありました。新年度になり「ご長寿番組が次々に終了して残念」といった感想もありました。
「青少年へのおすすめ番組」では、『バリューの真実』(NHK Eテレ)と『東大王SP』(TBSテレビ)にそれぞれ4人から感想が寄せられました。

◆委員の感想◆

  • 【これまでで一番印象に残ったテレビ・ラジオ番組について】
    • ドキュメンタリーでもドラマでも、生き方や社会の現実を反映した番組が印象に残っているように感じる。小学校低学年の頃に見た番組を挙げたモニターも複数いた。テレビやラジオの番組が、一部の若者にこれだけ影響を与えているということを制作者に伝え、心に残るいい番組を作ってほしいと思う。

    • テレビやラジオに関心がある若者は、脚本家やディレクター、放送作家といった裏方の制作者への関心も強いと感じる。かつてバラエティーにあったような裏方も表に出て笑いを取るというやり方とは違う形で、制作者の存在を魅力的に伝えることも、これからの放送の価値を高めていくうえで重要なのではないか。

    • シニアが第二の人生を歩む姿を描く番組を挙げたモニターは、年代を問わず視聴者の心を和ませ、ポジティブな生き方を参考にできる、という感想を寄せてくれた。自分も常々、家族そろって見られる番組とはどんな特徴なのかと考えているので参考になる意見だった。

    • 東京にある店の特集は自分たち県民にはほぼ無関係なので全国の人に役立つ情報がほしい、というモニターの声があった。情報はどうしても東京に偏ってしまうところがあり、地方の人たちはどんな思いでこういう番組を見ているのだろうかと気になっていたところがあり、その辺のバランスも必要なのかと思う。

  • 【自由記述について】
    • ウクライナ報道について、戦闘や遺体の映像を流すときは、多くの人が安心して見られるよう(注意書きを表示するなどの)配慮が欲しい、という声があった。戦争の悲惨さを伝えるときは「安心できないもの」ということが伝わらないと意味がない気がするが、今は戦争を扱ったドキュメンタリー番組でも残虐なシーンが問題になったりする。それで報道と言えるのだろうかというところもあり、非常に難しい問題だと感じた。

◆モニターからの報告◆

  • 【これまでで一番印象に残ったテレビ・ラジオ番組について】
    • 『シリーズ江戸川乱歩短編集』(NHK)このシリーズの面白いところは、回によって演出家が変わるところです。「江戸川乱歩という一人の作家の短編を4人の演出家が30分の映像にする」。この試み自体がとてもユニークだし、どの回も演出家の個性が出ているので「明智小五郎」という人物の新しい顔を見ることができて楽しいです。ワクワクします。(高校2年・女子・埼玉)  

    • 『ねほりんぱほりん「児童相談所職員」』(NHK Eテレ)普段は報道されることのない立場の方、しかも児童虐待をいちばん近くで見てきた方が児童虐待について語るこのような番組は、「児童虐待防止」を訴えるうえで、とても重要だと思いました。この番組の面白い点は、人形劇で展開していくところだと思います。「児童相談所職員」の回は、特に重い話が多い回だったのですが、随所にくすっと笑えるようなシーンが挟まっていて、自分の気持ちをリセットしながら見ることができました。(高校1年・女子・東京)

    • 『掟上今日子の備忘録』(日本テレビ)小学2年生の時にたまたま見たドラマで、掟上今日子の総白髪で眠ってしまうと記憶がリセットされてしまうというキャッチ―な設定に心ひかれたことをよく覚えています。どんな難事件も一日で解決するため、とてもスピーディーで、凝ったトリックが見ていてとても楽しかったです。いかに一日が大切なのか、記憶に残るような一日を過ごせていることはとても幸せなことなのだと幼いながらに思いました。(中学3年・女子・群馬)

    • 『カルテット』(TBSテレビ)夜10時という当時は遅い時間に、大人の世界を垣間見たような感覚だった。コメディタッチで楽しみやすい部分もありながら、登場人物が抱える秘密や関係性など、それまでは見たことのないようなストーリーで、俳優がエンディングを歌っているなどすごく新鮮だった。(高校1年・男子・埼玉)

    • 『リッチマン、プアウーマン』(フジテレビ)私はこのドラマの影響を受けてプログラマーみたいな、人のために役立つものを作れる人になりたいと思い、現在高校3年生ですが、志望大学の工学部に入学できるよう毎日勉強しています。小学生の時に見始めてから今まで、考え方などずっと影響されています。1話~最終話まで30回以上見ていますし、今でも勉強するときはサウンドトラックを聴きながらやっています。(高校3年・女子・茨城) 

    • 『人生の楽園』(テレビ朝日) 平和で生き生きとした暮らしぶりを見ていると、とても心が和みます。毎週違った家庭の様子を取り上げることで、たくさんの人々から、自分の参考になるような生き方、考え方が得られます。年代を問わず視聴者の心を和ませ、ポジティブな生き方を参考にできる、とても良い番組だと思います。(中学2年・女子・鹿児島)

    • 『二つの祖国』(テレビ東京)2019年3月に特別企画のドラマとして放送されていました。そのなかで、ジャパニーズ・インターンメントと呼ばれる第二次世界大戦下での日系人の強制収容を描いたシーンがありました。私はアメリカに留学していた経験があるのですが、アメリカでは、ひとつの人権侵害が行われた事件としてこれを歴史で学びます。番組を視聴して、改めて戦争の残酷さを感じたとともに、戦争を日系アメリカ人という新しい立場から考え直すことができ、自分の視野が広がったと感じます。現在行われている戦争でも、置かれている立場が似ている人がいるのではと思い、痛ましくも感じます。(高校3年・男子・東京)

    • 『SCHOOL OF LOCK!』(エフエム東京)いじめや貧困、障がいなど、社会的に前向きに掘り下げないような内容に優しく寄りそって一緒に考えているところが長所だと感じました。もう少し聴きやすいように放送時間を早めてほしいです。自分のようにスマホを持っていないリスナーも多いと思うので、固定電話でも参加できるイベントをつくってほしいです。(中学1年・男子・山形)

    • 『SixTONESのオールナイトニッポンサタデースペシャル』(ニッポン放送)
      いつもと違う6人全員集合の回でしたが、誰かが話しているときは耳を傾ける、一気に沢山の人が話さず、1人が話し、面白い場面ではみんなで笑い合えるのが、バランスがよくとても聴きやすかったです。聴くだけでなく、メールで参加しやすい参加型のラジオで、読むスピードもちょうど良く、ラジオに若い世代を取り入れるには最適だったと思います。(中学2年・女子・山形)

  • 【自由記述】
    • 私が小学生だった頃よりも番組の入れ替わりが激しくなり、中には1年で終わる番組もあらわれるようになってとても悲しかったです。SNSなどで流行が秒単位で変わる時代だからこそ、テレビ番組は流行を最速でキャッチするより、少し古くてもそこが味になるような世代を超えて愛される存在でいてほしいと私は思います。(高校2年・女子・岩手) 

    • テレビからスマホ時代になっている今、似たような企画を行う番組が増えたように感じます。コロナ禍であるため制限されることもあり、番組制作が今まで以上に大変だと感じておりますが、そんな世の中だからこそ、明るく笑顔になるような番組を待っています。(高校2年・女子・千葉)

  • 【青少年へのおすすめ番組】
    • 『バリューの真実』(NHK Eテレ)MCを務めるSixTONESが高校生の目線に立って質問に答え、説明をしているので、まるで学校の先輩に教わっているかのような親近感が湧きました。「価値観のズレ」に焦点を当てているので、保護者とのコミュニケーションが少なくなっている方や、あまり保護者と話さないという方は、保護者と一緒に視聴するのも良いのではないかと思いました。この番組を一緒に見ることで「私も実はこんな悩みがある」「こんなコンプレックスがある」と話しやすくなるのではないでしょうか。(高校1年・女子・東京)

    • 『東大王SP』(TBSテレビ)この番組は知識も必要ですが、ひらめき問題も豊富なので小さい子どもも大人も一緒に楽しめるところが良いと思います。あまり悪いところはないのですが、しいて言えば出題から答案までの時間が長すぎることだと思います。(中学2年・女子・東京)

以上

第303回放送と人権等権利に関する委員会

第303回 – 2022年4月

「判断ガイド2023」の編集方法を協議…など

議事の詳細

日時
2022年4月19日(火)午後4時~午後5時30分
場所
千代田放送会館7階会議室
議題
出席者
曽我部委員長、鈴木委員長代行、二関委員長代行、國森委員、斉藤委員、
野村委員、丹羽委員、松田委員、水野委員

1. 2022年度新任委員挨拶 新任調査役挨拶

2022年度の新任委員として松田美佐中大教授が挨拶した。また、6人の調査役のうち3人が新たに事務局に加わりそれぞれ挨拶した。

2.「判断ガイド2023」について

概ね5年に一度の改訂を行っている「判断ガイド」の次期改訂方針について、事務局から報告した。現在の「判断ガイド2018」以降に10本の「委員会決定」が公表されているため、新たな決定をどのような方法で編集していくかなどを協議した。

3. その他

事務局から最新の申立て状況について説明した。また、4月15日に公表されたBPO青少年委員会「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」に関する見解について事務局から概略を説明した。

以上

2022年4月15日

「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」に関する見解

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2022年4月15日
放送と青少年に関する委員会

青少年委員会の視点
インターネットの普及によるメディアの多様化の中で、従来のテレビやラジオなどの公共性が高い放送の相対的な位置が低下してきていると言われているが、依然として放送は、国民の誰もが視聴できるという特性を有するがゆえに、老若男女を問わず国民の生活に大きく関わっている。こうした放送の幅広い公共性がBPOの存立の基礎にあることは、BPOの創立以来不変の事実である。
単に青少年向けに作られた番組だけではなく、大人向けに制作された番組も、録画や「テレビ、ラジオ以外のメディア」によって、青少年の誰もがいつでもどこでも番組を視聴することが可能になった。青少年委員会は、BPOに統合前の当委員会の時代から、青少年向けの番組のみならず全ての番組について、それらが成長と発達の過程にある青少年の人間観、価値観、さらには社会情動性の発達に与える影響について注意を払うとともに、番組制作者に向け、以下の2つの見解をはじめ、折に触れて委員会の考えや委員長コメントを提示してきた。
今回、当委員会が「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」について審議入りしたのも、これまでの基本的な視点の延長線上にある。

バラエティー番組に関するこれまでの当委員会の見解
バラエティー番組は、そのダイナミックな構成と展開によって、多くの国民の間で高い人気を博している。一年を通じて、人気のある芸人が出演するバラエティー番組は、相対的に高い視聴率を得ている。翻ってこのことは、人気のある芸人が出演する番組は、それを視聴する多くの視聴者に大きな影響力を持っていることになる。これまで当委員会の審議事案の多くがバラエティー番組であったこともこうした事情を反映している。

BPOに統合前の当委員会は、2000年11月29日に、暴力を肯定するようなシーンに対して「武力や暴力を表現する時は、青少年に対する影響を考慮しなければならない」という民放連放送基準(19条)などに抵触し、「"いじめ"を肯定的に取り扱わないように留意する」という放送基準審議会からの要望(1999年6月)の趣旨に反するという理由で見解を公表し、番組制作者に注意を喚起している。

さらに、当委員会は2007年10月23日に、バラエティー番組の中でよく行われる「罰ゲーム」に関して、「出演者の心身に加えられる暴力」に関する見解を発出している。同見解は、出演者をいたぶる暴力シーンについて、バラエティー番組を好んで視聴している中学生モニターさえも「人間に対する否定的な扱い」に対して一様に不快感を表明したことを紹介するとともに、暴力シーンと未成年者の「いじめ行動」との直接的な関係に関しては、いまだ確定的な結論が見出されていない現状ではあるものの、多くの青少年がテレビメディアの公共性を信頼している中において、「人間を徒らに弄ぶような画面が不断に彼らの日常に横行して、彼らの深層に忍び込むことで、形成途上の人間観・価値観の根底が侵食され変容する危険性もなしとしない」と述べ、番組がこうした動きを増幅させないよう一考を促している。

当委員会に寄せられる視聴者意見や中高生モニターの意見
当委員会は、上記をはじめとした一連の見解、委員会の考え及び委員長コメント等が番組制作者に共有され、バラエティー番組の企画制作に活用されていることを願うものである。しかし、ここ数年間、「出演者の心身に加えられる暴力」を演出内容とするバラエティー番組に関して、当委員会に寄せられる「いじめを助長する」「不快に感じる」という趣旨の視聴者意見は減少していない。また、近時の中高生モニターからも、「本当に苦しそうな様子をスタジオで笑っていることが不快」「出演者たちが自分たちの身内でパワハラ的なことを楽しんでいるように見える」など、不快感を示す意見が一定数寄せられている。
他方において視聴者からは、これまでにもバラエティー番組に対してBPOが見解等を表明することにより「テレビがつまらなくなる」「家庭の教育の問題」というような趣旨の意見、また当委員会が「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」について審議を開始したことに対して、「BPOの規制により番組の多様性を失う」「表現の自由の範囲内の内容だ」「いじめは家庭のしつけの問題」などの意見も寄せられている。
あらためてBPOは、放送における表現の自由を実質的に確保するとともに、青少年の健やかな成長と発達にも資することを目的として、放送界が自ら設置した第三者機関であることを確認したい。今なおテレビが公共性を有し放送されることは、権威を伴って視聴者に受け容れられているといってよい社会状況のなかで、暴力シーンや痛みを伴うことを笑いの対象とする演出について番組制作者に引き続いて検討を要請するために、この見解を示すことにした。

審議の経過
当委員会は、2021年8月24日開催の委員会において「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」について審議することを決定し、その後、2022年3月22日まで7回にわたり委員会で審議した。審議の過程で、2009年11月17日公表の「最近のテレビ・バラエティー番組に関する意見」を発出したBPO放送倫理検証委員会の委員の一人であった水島久光東海大学文化社会学部教授からのヒアリング及び意見交換、バラエティー番組制作に携わるテレビ局関係者との意見交換、2021年度青少年モニターとの意見交換を行った。

暴力シーンの意味
暴力シーンは、それ自体で視聴者に情動反応を引き起こし、幼少児では模倣行動を惹起するという意味で、その放映には十分な注意が必要である。しかし、番組の中で暴力シーンが提示される文脈(ストーリー)や、暴力を振るう個人と暴力を振るわれる個人の関係性によってその意味が大きく違ってくる。
事前に両者の間の一定の了解ないしはルールが明示されている場合と、そうでない場合で、視聴者の受ける情動的インパクトは大きく異なる。ルールのある格闘技(たとえルール破りという演出があっても)や、ドラマの中での暴力シーンは、幼少児を除いては、両者の了解のもとに行われる一種の演技であることが視聴者にも明白である。
ところが近年のバラエティー番組の罰ゲームやドッキリ企画は、時として視聴者へのインパクトを増すために、出演者の間では了解されていたとしても、リアリティー番組として見えるように工夫されている。より強いインパクトを求めて、最近のリアリティーショーは、制作者、出演者の作り込みを精緻化させ、大人でさえもリアルとしか思えないような演出がなされることもある。中高生モニターの高校生の中には、制作者と出演者の間の了解を理解している例も見られるが、視聴者が小学生の場合は、作り込まれたドッキリ企画をリアリティー番組としてとらえる可能性は高い。

近年には、多数の視聴者からの批判が寄せられた以下のような番組がある。

刺激の強い薬品を付着させた下着を、若いお笑い芸人に着替えさせ、股間の刺激で痛がる様子を、他の出演者が笑う番組があった。被害者のお笑い芸人は、事前にある程度知らされていたのかもしれないが、痛みはリアルであり、周りの出演者は他人の痛みを嘲笑していた。

深い落とし穴に芸人を落とし(ここまではドッキリ番組の定番であるが)、その後最長で6時間そのまま放置するというドッキリ番組もあった。その穴から脱出するための試みが何回となく放映され、脱出に失敗して穴の中に落ちる芸人を、スタジオでビデオを視聴する他の出演者のうち何人かが、嘲笑するというものもあった。

この2つの事例は、視聴者と、心身に加えられた暴力に苦悶する出演者の間に、それを見て嘲笑する他の出演者が入るという多重構造になっている。
この「他人の心身の痛み」を周囲の人が笑う場面が、リアリティーショーの体裁として放映されることの中に、2007年の当委員会の見解の中で憂慮した「人間を徒らに弄ぶような画面が不断に彼らの日常に横行して、彼らの深層に忍び込むことで、形成途上の人間観・価値観の根底が侵食され変容する危険性」が現実化しかねない、以下に述べる理由がある。

「他人の心身の痛み」を周囲の人が笑うことを視聴することの意味
近年の発達心理学と脳科学の発達によって、人の社会性や情動性の発達に関わる脳内活動についての理解が深まった。人が健全な社会性を獲得する上で重要な、「他者の気持ちや意図を理解する能力の発達」が、ミラーニューロン系と呼ばれる一連の脳内回路によって担われていることも明らかになっている。他者の表情や行動を見ることによって、自分が同等の表情(感情)や行動をしたときに活性化される脳内部位があり、それがミラーニューロンにあたる。たとえば他者の痛みによる苦悶の表情を見ると、自分が同様の痛みを感じたときに活性化する、自身のミラーニューロンが活性化することがわかっている。「他者の苦痛を慰撫することで、自分のミラーニューロンの活動(投影された痛み)が軽減するという仕組み」が、共感性発達の重要な鍵になるのである。子どもは「他者が慰められたり苦痛から解放されたりするシーンを見ること」で、自分自身も解放され、自然に他者の困難を助けようとする共感性を発達させてゆく。幼少時から、苦痛や困難に苦しむ人が他の人によって慰められたり助けられたりする場面を見ないで育った子どもは、共感性の発達が障害される可能性が高くなる。幼少時に虐待を受けた子どもが、自分が親になったときに、自らの子どもを虐待する率が高いこと(虐待の世代間連鎖)も、こうした共感性発達の障害が原因であると考えることができる。

では、バラエティーのドッキリ番組で、リアルに(見える)心身の痛みに苦しむ芸人を、周囲の他の出演者が嘲笑しているシーンを見たらどうなるだろうか。「苦しんでいる人を助けずに嘲笑する」シーンは、ミラーニューロンの活動を軽減せず、子どもの中に芽生えた共感性の発達を阻害する可能性があることは否めない。さらに他人の心身の痛みを嘲笑している人が、子どもが敬愛し憧れの対象である芸人だとしたらその影響はさらに大きなものになるであろう。

このように、攻撃的な場面が繰り返される番組が、人間の心理、とりわけ子どもの行動傾向および心理発達に与える影響については、多くの科学的エビデンスがもたらされている。米国を始めとする先進国において、過去60年間に蓄積された心理学・医学・社会学等の論文をメタ分析した研究では、暴力的な映像を日常的に視聴する青少年には、攻撃行動の増加および暴力に対する鈍感さ(脱感作)や、向社会的行動(例:援助行動)の減少と共感性の低下等々の心理・行動の変化が起きることが確認されている。暴力的な状況下で被害者が痛みを伴う場面を繰り返し視聴することには、視聴する子どもの攻撃性を増す危険因子があることが実証されているのである。こうした子どもの攻撃性は、視聴直後に現れるとは限らない。6歳から10歳の子どもが、攻撃的な場面の多い映像を視聴し続けたあと、その子どもが15歳から18歳になる頃に、攻撃的・反社会的行動の発現の頻度が高まることを示す縦断研究があることは、映像の視聴の影響が潜在的に長期に及ぶことを示唆するものである。

さらに、当委員会では、前述のように2000年と2007年に見解を出しているが、2013年に「いじめ防止対策推進法」が成立するなど、この15年の間にいじめをめぐる社会的認識は大きく変化している。テレビで演出される「他人に心身の痛みを与える行為」を、青少年が模倣して、いじめに発展する危険性も考えられる。また、スタジオでゲストが笑いながら視聴する様子が、いじめ場面の傍観を許容するモデルになることも懸念される。

結びとして
当委員会は、もとより番組制作者に対してバラエティー番組の基準やルールを提示することを目的として本見解を出すものではない。
気持ちの良い笑いが脳を活性化させてリラクゼーション効果をもたらし、ストレスを解放して、円滑な人間関係にもつながることは多くの人が実感するところである。バラエティー番組がテレビにおける重要なジャンルの一つであることは疑いようがなく、当委員会は、テレビ局関係者との意見交換等をとおして、制作者が限られたリソースのなかで工夫を重ね、視聴者に快い笑いを届けるために努力を重ねていることも認識しているつもりである。
その上で、70年余のテレビの歴史とその公共性に鑑みれば、その時々の時代や社会状況のなかで、視聴者を楽しませるバラエティー番組の制作を実現するためには、番組制作者の時代を見る目、センスや経験、技術を常に見直し、改善し、駆使することが重要であることを改めてお伝えしたい。
そして、「他人の心身の痛みを嘲笑する」演出が、それを視聴する青少年の共感性の発達や人間観に望ましくない影響を与える可能性があることが、最新の脳科学的及び心理学的見地から指摘されていることも事実であり、公共性を有するテレビの制作者は、かかる観点にも配慮しながら番組を作り上げていくことが求められている。
当委員会は、番組制作者がテレビの公共性や青少年に与える影響を真摯かつ謙虚に受けとめながら、今後もさらに表現に工夫を凝らしてバラエティー番組の楽しさを深め、広げていくことを期待して、本見解を出すことにした。

以上

第170回 放送倫理検証委員会

第170回–2022年4月

NHK BS1スペシャル『河瀨直美が見つめた東京五輪』を審議

第170回放送倫理検証委員会は4月8日に千代田放送会館で開催された。
字幕の内容に誤りがあったとされるNHK BS1スペシャル『河瀨直美が見つめた東京五輪』について、2月の委員会で審議入りが決まったことを受け、今回の委員会では、担当委員から当該番組の関係者に対して実施したヒアリングの概要が報告され、事実関係について共有し議論を行った。
民放局のバラエティー番組に、同じ政党の幹部3人が出演し政治的な課題などについて見解を語ったことについて、当該放送局から提出された全社研修など事後対応についての報告書を踏まえ議論を行った。

議事の詳細

日時
2022年4月8日(金)午後5時~午後7時30分
場所
千代田放送会館会議室
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、
大石委員、大村委員、長嶋委員、西土委員、米倉委員

1. NHK BS1『河瀨直美が見つめた東京五輪』について審議

NHKは2021年12月26日に放送したBS1スペシャル『河瀨直美が見つめた東京五輪』後編の字幕の一部に不確かな内容があったとして、2022年1月9日、番組と局のホームページで公表し謝罪した。番組は、東京五輪の公式記録映画監督である河瀨直美さんと映画製作チームに密着取材したもの。男性を取材した場面で「五輪反対デモに参加しているという男性」「実はお金をもらって動員されていると打ち明けた」という字幕を付けて伝えた。 放送後、視聴者から字幕の内容が事実であるかの問い合わせが相次ぎ、NHKが男性に確認したところ、実際に五輪反対デモに参加していた事実を確認できず、字幕の内容が不確かだったことがわかったという。 2月の委員会では、委員会からの質問に対する回答書、NHKが設置した「BS1スペシャル」報道に関する調査チームがとりまとめた調査報告書が提出され、それらを踏まえて議論を行った。同報告書では、字幕の内容は誤りであったとされている。議論の結果、取材、編集、考査、調査の各段階で問題があるのではないかといった厳しい意見が相次ぎ、放送倫理違反の疑いがあることから、放送に至った経緯等について詳しく検証する必要があるとして審議入りを決めた。 今回の委員会では、これまでに当該番組の関係者に対して実施したヒアリングの概要が担当委員から報告され、委員の間で事実関係を共有し議論を行った。 次回の委員会では、今後行われるヒアリングの概要が報告され、意見書の原案が提出される見通しである。

2. 同じ政党の幹部がそろって出演した民放局バラエティー番組について議論

元日に放送された民放局のバラエティー番組に同じ政党の幹部3人が出演し、政治的な課題などについて見解を語ったことについて、視聴者から政治的公平性を問題視する意見がBPOに寄せられた。先月の委員会では、当該放送局から社内の調査チームがまとめた報告書とそれをもとに行われた番組審議会の議事録要旨が提出され、議論が行われた。今回は、当該放送局から全社研修の実施や番組内容を確認し助言する体制を強化することなど、事後対応の進捗状況について報告書が提出された。これらを受けて委員会では、放送における政治的公平性についてどのような形で意見表明をすべきか等について意見が交わされ、さらに検討が必要であるとして議論を継続することとした。 

3. 3月に寄せられた視聴者意見を議論

3月にBPOに寄せられた視聴者意見のうち、民放放送局の深夜のバラエティー番組(生放送)で、女性の身体的特徴に関する発言や差別的な表現等が放送されたことに対し批判的意見が多数寄せられたことについて、事務局から概要が報告され議論したが、さらに踏み込んだ検証が必要であるとの結論には至らなかった。

以上

2022年3月に視聴者から寄せられた意見

2022年3月に視聴者から寄せられた意見

深夜のバラエティー番組出演者の発言について「セクハラ」や「差別」を指摘する意見が多かった。また、ウクライナ人ゲストへのラジオ番組出演者の発言に対して「配慮を欠く」などの意見が寄せられた

2022年3月にBPOに寄せられた意見は1,717件で、先月と比較して213件増加した。
意見のアクセス方法の割合は、メール 82%、電話 16%、 郵便・FAX各 1%
男女別は、男性40%、女性22%で、世代別では40歳代 27% 、30歳代 21%、 50歳代 20% 20歳代 14%、 60歳以上 12% 、10歳代 2%。
視聴者の意見や苦情のうち、番組名と放送事業者を特定したものは、当該事業者のBPO連絡責任者に「視聴者意見」として通知。3月の通知数は922件【55事業者】であった。
このほか、放送事業者を特定しない放送全般への意見の中から23件を抜粋し、全会員事業者に送信した。

意見概要

番組全般にわたる意見

深夜のバラエティー番組出演者の発言について「セクハラ」、「差別」と指摘する意見が多かった。また、ラジオ番組出演者のウクライナ人ゲストへの発言に対して「配慮を欠く」などの意見が寄せられた。ラジオに関する意見は87件、CMについては27件あった。

青少年に関する意見

3月中に青少年委員会に寄せられた意見は104件で、前月から12件増加した。
今月は「低俗、モラルに反する」が23件、「いじめ・虐待」が18件、「表現・演出」が14件、「差別・偏見」が12件と続いた。

意見抜粋

番組全般

【取材・報道のあり方】

  • 電話出演したウクライナ人ゲストに対し、スタジオ出演者が「ウクライナが抵抗を続けることで死者が増えている」「『無駄死に』させたくない」などと発言、ゲストが取り乱すまでに至った。発言のもとになっているのが、ウクライナの人々の命を心配する気持ちであることは分かるが、心配していることを表現するに留めるべきであったと思う。

  • 有名タレントの名を冠した「緊急生放送」番組。「ゼレンスキー、プーチン両大統領の素顔に○○(タレント名)が迫る」などと予告していた。ウクライナ情勢について専門家の意見は他の番組で聞いていたので、より視聴者に近い彼の意見が聞きたいと思って番組を見た。ところが彼の発言はほとんどなく詐欺にあったような心持ちだった。番組タイトルは視聴率を取るためのものだったのか。

  • 2月に新型コロナに感染し復帰した情報番組の司会者が「『しばらくは抗体価が高いのでワクチンは今だと打ち損になる』などと聞いたので3回目はまだ接種していない」と発言した際、コメンテーターの一人が強い口調で「打ってないの?番組の代表であるMCが3回目打ってない」と非難した。テレビでワクチン接種を推奨することを悪いとは思わないが、未接種者を責めるような内容を放送するのはいかがなものか。

  • 学校でのいじめの問題を取り上げていた。27分間の番組で全てを表現するのは難しいとは思うが、いじめが犯罪であることが強調されなかったことに危機感を覚えた。やはりこのことが社会的に認知されていかないといじめ、自殺者は減らないと思う。でも放送することは非常に良いこと。次回はもっと良いものになることを願っている。

  • 子宮頸がんワクチンの積極的接種が始まるという特集が放送されたが、約9年前、何の医学的根拠もなく副反応の不安をあおる報道がなされた。生命を守るための国の政策であるにもかかわらず、当時の報道にはそれを中止させようという意図があったはず。放送局は毎年子宮頸がんで亡くなる人の数字をどう見ていたのだろうか。今回、メディアとして反省がはっきりと示されなかったことに憤りを覚えた。

  • 成人式会場周辺で暴走行為をした疑いで逮捕された新成人が「日本一派手な成人式にしたかった。捕まったのは残念だがテレビに映って日本一なので満足している」と供述。暴走行為を放送するテレビ局は「彼の愚行を誘ったのは自分たち」という自覚を持つべきだ。

  • ニュース番組の「野菜泥棒」「さい銭泥棒」の取材方法、放送内容について。無人野菜売り場や神社にカメラを仕掛け、スタッフがまるで探偵のような行動をとって盗んだ人物に詰め寄り、警察に現行犯で逮捕させる。犯罪者を作り上げているようなやり方だ。泥棒が絶対にいけないのは当然だが、人権はどうなるのか。テレビ局、報道というものはここまで許容されるのか。

  • 私は視覚障害者。ニュース番組の外国人のインタビューが、音声は原語のまま、日本語訳は字幕のみというケースがあり困っている。ロシアの戦争の情勢を知りたいと思っても、緊迫している雰囲気は想像できるが発言の中身が分からないので、ただただ不安を煽られているように感じることも多い。「吹き替えではニュアンスが変わってしまう」という意見も聞くが、聴覚に頼る人のためにぜひ吹き替えをつけてほしい。

  • 外国人のインタビューの日本語訳は、吹き替えではなく字幕で示してほしい。視覚障害者向けの吹き替えは副音声に入れてほしい。吹き替えでは話し手の元の発言が聞き取れず、誤訳、改ざんの可能性も否定できなくなる。

  • この報道・情報番組に出演しているのは、MCもコメンテーターも皆同じ考えを持つ人ばかり。反対意見を持つ人を出演させて番組内で議論するのなら理解できるが、これでは一方向に誘導されているように感じてしまう。

【番組全般・その他】

  • スタジオに水着姿の女性を並べて「品定め」。尻の大きな女性を例えて「ホッテントット」。「胸の張りで生理の前か後か分かる」には背筋がゾッとした。共演の男性タレントにも自慰の頻度を言わせるなど屈辱的なセクハラ。出演者とスタッフによる公開セクハラ、人権侵害だ。

  • スタジオに水着姿の女性を並べて「品定め」。さまざまなハラスメントがあった非常に不快な内容だった。「お色気」がよくないのではなく、異性や他者への敬意に著しく欠け、その尊厳を傷つけていて、大きな問題があると感じた。

  • タレントたちにニュースを解説する番組の「日韓関係SP」。全編が韓国を蔑視する論調で見るに堪えないものだった。こんな差別的な番組を放送していいわけがない。

  • タレントたちにニュースを解説する番組の「日韓関係SP」。日本の公式の立場を全く考慮せず、韓国側の主張に基づいて解説している。

  • 何らかの理由で歯が少ない一般の人をスタジオに集め、タレントたちが滑舌などを手掛かりにして歯の本数を当てるというゲーム。人の身体的欠損を笑う悪趣味な企画だった。気分が良くないし倫理的にどうかと思う。

  • 教員をしていて、東京大学をあがめるような番組の影響を子どもたちが少なからず受けている気がする。難関校に行きたがるが「将来自分が何になりたいか、何を学びたいか」については深く考えていない。「学歴ではなく何を学ぶかが大事」と諭すと、「学歴が悪いと馬鹿にされる」と答える生徒までいた。テレビで過度に学歴を誇張すると、それが社会に広まっていったり、子供たちの視野を狭めたりするのかなと感じた。

  • 何十年と放送が続く人気アニメでは、母親はみな専業主婦、父親は会社員。性別によって役割を決めつけ、そのイメージを子どもたちに洗脳のように植えつけている。ジェンダーギャップで日本が世界から取り残される下地になっていると思う。子どもたちに「ジェンダーギャップを助長するからこの番組は見ないで」とは言えない。何かを変えていかないと世界との溝は埋まらない。

  • サッカーW杯アジア最終予選。日本が勝てばW杯出場が決まるという試合なのに、地上波で放送する局が一つもない。がっかり。

  • 飲食店を紹介する番組を見て店に行った。放送では「一人前2,800円」だったが実際には1人1万円。ほかの客たちも皆同額だったので仕方なく支払った。制作している局にメールで事情を知らせたが何の返答もなく、この店はその後も何度か紹介されている。いくらバラエティー番組であっても情報は正しく伝えてほしい。他の店の情報も嘘っぱちなんだろうと思ってしまう。

  • 出演者がある場所の写真を渡され、写真から読み取れる情報をスマホで検索しながら、いかに早くその場所にたどり着くかを競うゲーム。約45分間のこの企画のかなりの部分が「歩きスマホ」で目的地に向かう出演者の姿で、強い違和感を覚えた。歩きスマホの女性が踏切で亡くなった、あの悲惨な事故を思い出した。

  • タレントが旋盤で「寸胴なべ」製作にチャレンジ、手袋を着けたまま回転部に手を近づけたり、回転する寸胴に触ったりしていた。一歩間違えば指や腕を失う非常に危険な行為。製造業に携わる者からすれば放送できるレベルではない。視聴者が参考にしたら危ない。

  • 大学院で脳の病気について研究している。番組でタレントがフィギュアスケートに挑戦、転んでリンク氷面で頭を強打した。「30分後、復活」と練習を再開していたが、この対応は非常にまずい。たとえヘルメットを付けていても危険な場合がある。タレント本人の健康を考えるとすぐに病院に行って検査を受けるべきだった。

  • 一部の放送局が視聴者意見の電話を、「0570」で始まる有料サービスでしか受け付けなくなった。公共の電波を使って放送事業を行う者が、視聴者からの意見に料金を課すというのは良くない。視聴者の意見に耳を傾けないという姿勢を取っているかのようだ。従来の番号に戻してほしい。

青少年に関する意見

【「低俗、モラルに反する」】

  • グラビアアイドルを集めて女性の体のことを揶揄、その女の子達に対する利きおっぱい、生理は匂いでわかるなどの際どいセクハラ発言。また男性МCに月に何回自慰をするのか聞くなど、男女双方にセクハラを感じた。「この時代において、尖ったことをやろう」というテーマなのだろうが「尖ったこと」とは女性軽視なのか。

【「いじめ・虐待」に関する意見】

  • 「人の普通の行動、クセを許せるかどうか」の基準を作るという企画、意見の不一致があれば階段を落とされ熱湯に入れられるという罰ゲーム。人の生まれながらの笑い方について笑い、怖い、許せない、気持ち悪いなどの悪口を平気で言う。笑い方が似ている娘はショックでトラウマになりそうと言っている。人のちょっと変わった特徴を笑うだけでなく、蔑み、許せるかどうかの基準を作るのはいじめにつながる。

【「表現・演出」に関する意見】

  • 占い企画で、「29日生まれは嫌われる、人に好かれない」という発言。自ら鑑定を望んだ人に対してはいいと思うが、学生はちょっとしたことでイジメや揉め事、派閥が生じるデリケートな時なのに、いくら占いとはいえ、無神経に倫理観を欠いた発言と番組作りだ。

【「差別・偏見」に関する意見】

  • あるドラマの内容…主人公が住むアパートに越してきた青年には「連続幼児殺人事件の犯人・元少年A」とのウワサがあり、そのウワサをSNSに流していたのは、わが子を犯罪で失った過去のある管理人だった。犯罪を憎むあまりの過激な行為だが、ドラマの結末は「誤解も解け、全てを水に流してめでたしめでたし」となっていた。だが管理人の行為は反省すれば許される程度のことではない。「SNS上での人権侵害行為には懲役刑も適用され得る」と法律の改正案が決定されたばかりだ。いくらドラマでもあまりにも安易な終わり方だ。小学生の孫たちは「面白かった!」と見終わった後で言っていた。「人権を侵害する行為は決して許されず、厳しく罰せられる」ということで結んでほしかった

【「言葉」に関する意見】

  • 外来語など横文字の言葉のイントネーションがおかしくなっている。語尾を上げる「アクセントの平板化」が横行している。タレントは仕方ないにしても、最近はアナウンサーまでこの傾向が強い。国際社会に出てゆく子どもに正しい日本語を教育しなくては日本が恥をかくことになる。少なくともアナウンサーが正しい日本語を話すように、指導を徹底してほしい。

2022年2月18日

「リアリティ番組」をテーマに意見交換会を開催

放送人権委員会は、加盟放送局との意見交換会を2月18日にオンラインで開催し、全国103の放送局から約230人が参加した。委員会からは曽我部真裕委員長をはじめ委員9人全員が出席した。
放送人権委員会の意見交換会は、感染拡大の影響で、2019年に名古屋市で開催した「中部地区意見交換会」以来ほぼ2年ぶりとなり、冒頭で2021年度に就任した4人を含む委員全員を紹介した。
今回のテーマは、2021年3月に委員会が出した決定第76号「リアリティ番組出演者遺族からの申立て」で、前半は委員会決定と個別意見の解説を行った。
後半は今回の事案で課題にあがったSNSへの対応について意見交換をした。

〈事案の概要〉
審理の対象となった番組は、2020年5月19日にフジテレビが放送した『TERRACE HOUSE T0KYO 2019-2020』。
放送後、出演していた木村花さんが亡くなったことについて木村さんの母親が、“過剰な演出”がきっかけでSNS上に批判が殺到したことなどが原因で、人権侵害があったと申し立てた。
委員会は決定で、人権侵害があったとまでは断定できないとした一方、「出演者の精神的な健康状態に対する配慮が欠けていた」と指摘し、放送倫理上の問題があったとした。

◆委員会の判断と個別意見

委員会の考え方や判断理由について、担当した曽我部委員長(審理当時は委員長代行)が解説した後、個別意見を付した委員3人がそれぞれの見解を説明した。
(以下、発言者と発言の概要)

一連の経緯について(曽我部委員長)
「コスチューム事件」と呼ばれる場面が2020年3月31日にNetflixで配信され、SNS上で木村さんへの非難が殺到した。直後に木村さんが自傷行為に至り、そのことは数日経って制作会社からフジテレビの制作責任者へ報告された。
木村さんは4月中旬頃まで精神的に不安定な様子で、制作会社のスタッフは自宅を訪問したりLINE等でやり取りをしたりして一定のケアをしていたが、コロナ禍もあり十分なコミュニケーションがとれないところがあった。
5月14日に番組公式YouTubeで未公開動画が配信されて再び誹謗中傷を招き、5月19日に地上波で放送が行われた後、木村さんは亡くなった。

人権委員会 図

「放送局の責任」の考え方 (曽我部委員長)
申立人は、視聴者からの誹謗中傷がインターネット上に殺到することは十分認識できたのだから、放送局には「本件放送自体による、視聴者の行為を介した人権侵害」の責任があると主張した。
委員会は一般論として、責任があるとすれば誹謗中傷を書き込んだ者の責任であり、その元になった放送局に常に責任があるとすることは、表現の自由との関係で問題があると考えた。
ただこの事案では、先にNetflixの配信で誹謗中傷を招き、すでにその段階で自傷行為という重大な結果を招いていたので、放送局は「大変な状況になる」ことが予見可能だったにも関わらず、地上波で放送した点に責任があるのではないかという点が更に問題となる。
この点について委員会は、具体的な被害が予見可能なのに、あえてそうした被害をもたらす行為をしたといえるような場合には人権侵害の責任が認められるであろうと考えた。
この点に関する裁判例はなく、「少なくともそういう場合には人権侵害と言えるだろう」という考え方である。
そのうえで、木村さんに対しては一定のケアがなされていたし、放送前も一定の慎重さを持って判断されていたので漫然と地上波で放送したとはいえず、人権侵害とまでは断定できないという結論になった。

「自己決定権の侵害」への判断(曽我部委員長)
申立人は、放送局と交わした「同意書兼誓約書」は、放送局の指示に反した場合に重いペナルティがあるなど木村さん側に非常に不利なもので、そうした威嚇のもとで無理な言動をさせられたとして、自己決定権や人格権の侵害があったと主張した。
委員会は、成人である出演者が自由意思で応募して出演している番組制作の過程で、制作スタッフからの指示が違法と言えるのは、自由な意思決定の余地が事実上奪われているような場合に限られると考えた。
委員会の審理手続きの限界もあって事実経緯に分からないところもあるが、今回は、少なくともそうした例外的な場合にはあたらないと判断した。

放送倫理上の問題(曽我部委員長)
放送倫理上の問題については、結論として、木村さんに精神的な負担を生じることが明らかな放送を行うという決定過程において、出演者の精神的な健康状態に対する配慮に欠けていた点で放送倫理上の問題があったと判断した。
リアリティ番組での出演者の言動は、ドラマなどと違って本人の真意のように見えるため、そのリアクションは良いことも悪いことも直接出演者に向けられ、それを自身で引き受けなければならないという構造がある。
このため出演者が精神的負担を負うリスクはフィクションの場合より格段に高く、放送局は、特に出演者の身体的・精神的な健康状態に配慮すべきといえる。

課題と委員会からの要望(曽我部委員長)
決定では、最初に自傷行為があった後のケアの体制やSNSで誹謗中傷を招いた時の対応について、組織的な対応や準備が十分でなかったとして、制作や放送体制に課題があったと指摘した。
リアリティ番組の特殊性やリスクというものを今回の事案と本決定から汲み取って、放送界全体で教訓として受け止めてほしい。
放送倫理としての出演者への配慮については、放送基準などに明確な規定はないが、当然に放送倫理の内容と考えるべきという提起だと受け止めてもらいたい。

放送とSNSについて(廣田智子委員)
SNSは発信される側としては制御することは難しく、社会のさまざまな場面で深刻な問題を引き起こす場合がある。そうした問題が起きたとき、放送局はどう対応すべきで、放送番組はどのような責任を問われるのか、非常に難しい問題である。
一方でSNSには、番組への利用の仕方によって社会を楽しくするような新しい可能性があり、放送とSNSとの関係について、放送界全体で、また放送に携わるひとり一人が考え続けて常にアップデートしていくことが重要だと思う。

補足意見(水野剛也委員)
木村さんを追いつめた直接的で最大の要因は、番組そのものではなくネット上の誹謗中傷と考えられ、結論として「放送倫理上問題あり」とすべきか、とても迷った。
放送局は全くケアをしていなかったわけではなく、スタッフが何とか木村さんを救いたいと真摯に向き合っていた姿勢が見えた。コロナ禍で思うように面会できないなど、放送局にとって不幸な事情も重なった。
しかし、未熟な若者の生の感情を資本とするリアリティ番組の本質部分の危うさについて、作り手側のあまりに無自覚な姿勢が見えた。番組制作者は、いつ爆発しても不思議ではない若者たちの生の感情をコンテンツの中核に置いていることに、もっと自覚的であるべきだったと考える。

少数意見(國森康弘委員)
自傷行為やうつは致命的な状況であり、放送局側は把握した時点で早急に専門家らによるケアや放送の中止、差し替えをするべきだった。地上波で放送したことは危機意識の欠如と言わざるを得ず、木村さんへの精神的ケアや誹謗中傷を防ぐための対応、また放送決定に至った判断材料の吟味も不十分だったと考える。
木村さんが番組スタッフにも送っていたSOSを、より責任ある立場の人たちと共有して速やかに全社的な救済対応を取るべきではなかったか。
重大な被害を被っている出演者を守る対応が不十分だったために、相当な精神的苦痛を与える形となって人権を侵害したと判断した。
木村さんは出演者として弱い立場にあり、自由な意思決定が一定程度奪われていたと思われ、一人の生身の人間にのしかかる精神的苦痛としては許容限度を相当に超えていたと考えられる。
日本の制作現場でも、精神科医やSNS対策の専門家、また弁護士などが常駐したり継続的に立ち会ったりして助言するような体制をつくることが望ましいと考える。
それが、出演者はもちろん視聴者ひいては制作者自身を守ることにつながると思う。

少数意見(二関辰郎委員長代行)
放送人権委員会は、放送されていないことは原則として取り扱わない。今回の事案では、木村さんの当時の心理的状況やケアのあり方など放送されていない事項が検討材料として大きな比重を占めていた。また、委員会には精神的ケアに関わる専門的知見がない。そのため、そうした問題を委員会が判断することは難しいと考え、法的責任の有無については、判断を控えるほうが妥当と考えた。
一方、放送倫理上の問題としては、「同意書兼誓約書」によって、放送局は出演者をコントロールできる強い立場を確保していたとみられ、そのことに対応して安全配慮義務的な責任が重くなると考えた。
また「コスチューム事件」は、木村さんがコスチュームを乾燥機に置き忘れた自分のミスを棚に上げて男性出演者を非難しているため、もともと視聴者からの批判が集まりやすいと予想できるものであった。YouTubeの未公開動画は、その点を修正する効果はなかったと考えられる。実際、YouTube未公開動画の配信後に再びSNSで非難が上がっており、その直後に地上波で放送した経緯を重視すべきと考えた。
放送倫理上の問題があるという根拠として多数意見が指摘する点に、そうした観点を踏まえ、放送倫理上は重大な問題があったとの判断に至った。

<おもな質疑応答>

Q: 木村氏の自傷行為を認識した時点での対応や判断は大事な論点だと思うが、その重大な事実が放送局の上層部で適切に共有・検討されなかったように見える。その点について委員会はどう考えたか
A: 自傷行為がフジテレビ側の責任者に連絡されたのは3日後ということだが、その点に関しては明瞭な説明が得られなかった。委員会の審理に限界もあり具体的な事実関係が解明できなかった部分はあるが、その範囲であったとしてもフジテレビ側のガバナンスがうまくいってなかったのではないか、危機意識が十分ではなかったのではないかという印象を持った。
(曽我部委員長)
   
Q: 今回の番組が、ネット配信がなくて通常の放送のみだった場合は、放送局に人権上の問題があったといえるのか。
A: 番組の全部あるいはその前のエピソードを見ると、木村さんの怒りというのはそれなりに理由があり、ネット上の激しい反発を呼び起こすことが確実だとか、意図的に煽っているという感じはなかったというのが多くの委員の考えだと思う。
番組の内容自体に、人権侵害や放送倫理上の問題があるようには見受けられず、仮定の話で断定はできないが、一回だけの配信や放送だったとすれば、問題はないという判断が出ることは十分あると思う。(曽我部委員長)
A: 一回放送して誹謗中傷などが起き、それで終わったのであれば放送倫理上問題ありという判断からやや遠のくと思われる。ただ一定期間後に再放送した場合は、かなり似た状況になって、問題ありとなる可能性はあるのではないか。(水野委員)
   

◆SNSとの向き合い方

後半では、今回の事案をきっかけにSNS対策部を新設したフジテレビから、具体的な取り組みについて報告してもらった。
これを受けてSNSへの対応について意見交換し、SNSとの向き合い方をめぐる課題や問題意識を共有した。

<おもな質疑応答>

Q: 自社ニュースのネット配信を行っているが、その記事に対するネット上のコメントで取材対象者の人権を侵害するような書き込みをされることもあり得る。具体的な事例はないが、放送以外の部分でどう対応していくべきか考えさせられる。
A: 放送したニュースがネガティブなものであれば、報道された対象者に対するネット上の誹謗中傷や批判が多数なされるということは普通にあり、そうした場合にも放送局に責任があるとすると、表現の自由や報道の自由は成り立たなくなってしまう。
ニュースや番組の内容自体が、名誉毀損やプライバシー侵害、肖像権侵害ということであれば放送局は責任を負うが、それ以上に誹謗中傷が引き起こされ、それによって放送対象の人物が傷ついたということについては、放送局には、少なくとも人権侵害といった法的な責任はないということを明確にしておきたい。
そのうえで、少しでも余計な被害や負担を減らすという配慮は考えられると思うが、法的な責任ということでいえば、先ほど述べたことが基本であることを押さえてほしい。
(曽我部委員長)
   
Q: 一般の人が主人公となる番組において、SNSの誹謗中傷からどう守ってあげられるか、今後そうしたことが起きたときのために何をすべきか。
A: すべての放送局がフジテレビのような体制を組むわけにいかないだろうがやはりSNS上の状況には注意をして、必要に応じて対応を取ることは大事だと思う。
そのときに、どういう対応、選択肢があり得るのか、実際にどのようにやるのか、誰に相談すればいいのかを予め社内で共有し、議論しておくことが必要ではないか。
SNSの誹謗中傷に限らず、出演の際のいろいろな悩みについて相談できるような体制、雰囲気といったものを作っていくことは、配慮すべき点だと思う。(曽我部委員長)
   
Q: BPOの審理・審議の対象は基本的に放送となっているが、最近はこの事案のようにSNSやデジタルのプラットフォームなどにおける発信で人権侵害や倫理上の問題が起きている。BPOの組織や審理、審議対象のあり方などについて、これまでどのような議論がなされ、今後どのような展開が見込まれるか。
A: BPOはNHKと民放連の合意に基づいて、放送への苦情や放送倫理上の問題に対応する組織として設立されたので、その合意に基づいた運営をしている。
したがって、BPOがただちにSNSやデジタルプラットフォーム上でのコンテンツに関して、審議・審理の対象にするということにはならないし、そうしたものを対象にするということであれば、改めてNHKと民放連に議論してもらい、合意の上で対応することになる。
(BPO渡辺専務理事)
A: 放送人権委員会の実情について補足すれば、先例として、例えばニュースを細分化してニュースクリップとしてウェブサイトに掲載するなど、放送と同じ内容のものがネットに掲載されている場合は審理している。
これは、放送に関する人権侵害を扱うというミッションからは厳密には外れるが、放送の延長線上にあるということで解釈上可能だろうと判断している。
今回の事案では、YouTubeで配信された未公開動画は放送された番組には出てこない部分だった。これを正面から審理して判断することは、現状のルール及びその解釈では難しいと思われる。(曽我部委員長)
   
Q: 性的指向や性自認などについての理解は深まっているが、性別に関わる放送用語についてどこまで配慮すべきか悩ましい。看護婦や保母といった役割の決めつけによる用語の言い換えは進んでいる一方、女優、女性警官、女流棋士など、説明として使用する用語も性差別となってしまうのか。
A: 難しい問題で確たる答えというものはないが、差別かどうかはグラデーションであり、ここまでは差別ではなくここからは差別だという明確な線引きがあるわけではない。ただ基本的なスタンスとして、必然性のないものは中立的にやっていくというのが大きな視点としてはあるのではないか。
例えば女優という言い方は、新聞社によっては性別を問わず俳優としているところもある。他方で女流棋士という呼び方は、まさに制度として棋士と女流棋士とで分かれていて、そこには必然性がある。
ニュースなどの中で、必然性があるときは性別を示すこともあるだろうが、そうでない場合、とくに説明できない場合は中立的に使うというのが基本的なスタンスではないか。
また、そうした言葉遣いも大事だが、番組全体の作りについてもジェンダーの観点というものが重要なのではないかと思う。(曽我部委員長)
   

◆意見交換会のまとめ(曽我部委員長)

今回の事案は、出演者が亡くなってしまうという重大性があったが、フジテレビには真摯に受け止めてもらい、しっかり体制を作ってもらった。今後、引き続き発展させてもらうとともに、他の放送局にもぜひ参考にしてもらいたい。
テレビ離れと世の中で言われるが、ネット上でもテレビ番組の話題というのは、まだまだ非常に多いと感じる。番組の出演者の言動などをきっかけに炎上することも少なからずあり、そうしたときに放置するのか、謝罪や釈明をするのか、あるいは抗議するのか法的措置をとるのかなど、いろいろな選択肢がある。
どういうときにどういう対応をするのか、法的措置をとるとすれば誰にどう相談したらいいかということを普段からシミュレーションしておくことが大事だ。
その前提として、自社の番組に対するネット上の反応というものを常に見ておく必要があるが、一方で注意すべきは、炎上に参加している人というのはわずかであって、炎上の中に出てくる声が世論全体の声とは限らないことである。
したがって過剰反応せずに冷静に見ていく必要があるので対応は難しいが、炎上とはどういう現象なのかといったネットに対する理解を深めることも大事である。
それぞれの放送局が問題意識をさらに深めて必要な準備をしてもらうことが、今回の教訓ではないかと思う。

以上

第244回 放送と青少年に関する委員会

第244回-2022年3月

「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」について「見解」を公表へ・・・など

2022年3月22日、第244回青少年委員会を千代田放送会館で開催し、7人の委員全員が出席しました。
榊原委員長から、「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」について、先月の「審議」を受けて担当委員らが検討した修正案が提示され、その内容について意見交換しました。その結果、「見解」を出すこと及びその内容について合意するとともに、表現の最終調整を委員長に一任して「審議」を終了しました。
2月後半から3月前半に寄せられた視聴者意見には、とくに注目する案件はありませんでした。
3月の中高生モニターリポートのテーマは「1年間で最も印象に残った番組について」でした。モニターからは、出演者が秘境へ赴いたり、様々な事に体を張って挑戦するバラエティーについて、「この1年間で最も視聴し、最も笑いを与えてもらった番組だと思います」などの意見が寄せられました。
委員会ではこれらの意見について議論しました。
最後に今後の予定について話し合いました。
次回は、4月26日に定例委員会を開催します。

議事の詳細

日時
2022年3月22日(火) 午後4時30分~午後6時30分
場所
千代田放送会館会議室
議題
「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」について
視聴者からの意見について
中高生モニターについて
今後の予定について

出席者
榊原洋一委員長、緑川由香副委員長、佐々木輝美委員、沢井佳子委員、
髙橋聡美委員、中橋雄委員、吉永みち子委員

「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」についての審議

榊原委員長から、先月の「審議」を受けて担当委員らが検討した修正案が提示され、その内容について意見交換しました。その結果、「見解」を出すこと及びその内容について合意するとともに、表現の最終調整を委員長に一任して「審議」を終了しました。

視聴者からの意見について

2月後半から3月前半に寄せられた視聴者意見について担当委員から報告がありました。
先月に引き続き、東大生というネーミングを使ったクイズ番組について、「東大前刺傷事件があったのに、学歴偏重を助長する」「学歴差別だ」などの意見が寄せられました。
委員会の議論から「討論」等に進んだものはありませんでした。

中高生モニターについて

35人の中高生モニターにお願いした3月のテーマは、「1年間で最も印象に残った番組について」でした。「自由記述」と「青少年へのおすすめ番組について」の欄も設けました。全部で31人から報告がありました。
「1年間で最も印象に残った番組について」では、全部で26番組(テレビ番組24、ラジオ番組2)への報告が寄せられました。複数のモニターが取り上げたのは2番組で、『世界の果てまでイッテQ』(日本テレビ)について3人が、『クローズアップ現代+』(NHK総合)について2人が記述しました。特定の放送局の番組ではありませんが、「オリンピック」関連番組についての感想もありました。
「自由記述」では、ウクライナ情勢のニュース・報道に関する記述が多く、「小学生や中学生には分かりづらい内容がある。理解できるように報道の仕方を工夫してほしい」「正しい情報をしっかりと伝えてほしい」「多面的な情報が知りたい」という要望が複数ありました。また、ニュース・報道全般に対して、「暗い話題だけでなく、明るい出来事についても取り上げてほしい」「偏りなく、信ぴょう性のある番組作りをしてほしい」などの声が挙がっていました。
「青少年へのおすすめ番組」では、複数のモニターから感想が寄せられたのは3番組でした。『スペシャルドラマ「津田梅子~お札になった留学生~」』(テレビ朝日)を8人が、『モンモンZ』(NHK Eテレ)を6人が、『ライオンのグータッチ』(フジテレビ)を3人が取り上げています。

◆委員の感想◆

  • 【1年間で最も印象に残った番組について】

    • 今回のリポートにたくさんあったような、「良い番組だ」というモニターからの評価はぜひとも制作者に伝えたい。そして、このような制作者を力づける感想を若い世代にどんどん発信してほしいと思う。

    • 芸人が体を張った企画について、「ちょっとやり過ぎではないか」という心配を記述したモニターがいた。何が面白くて何がやり過ぎと感じるのかという若者の意見はとても大事。これも積極的に発信してほしいと考える。

    • リポートの中に、番組を視聴して自分もいろいろなことに挑戦したくなった、元気を与えてもらった、という感想があった。やはりテレビの持つ力は大きく、中高生に良い影響を与えているということを再確認した。

    • 1年間で最も印象に残った番組として時代劇を挙げてくれたモニターの感想が印象に残った。時代劇を通して、現代社会のSNSで起こりうる問題について考えてくれたという内容で、そこに注目したというのが面白い。時代劇を視聴する若い世代は少ないのかもしれないが、見てみると現代社会のいろいろな問題について考えさせるような要素があり、提言のようなものが入っていることがある。このモニターにとっては、そこが新しい発見だったのだろう。

    • 「最も印象に残った番組」「自由記述」の両方の欄で、ロシアのウクライナ侵攻に関する記述が多かった。一般市民やジャーナリストたちの生々しい映像、その叫びとも言える声がテレビを通して伝えられ、モニターたちはそれをしっかり受け取っていると強く感じた。最前線の報道を、「これから侵攻が始まる」という情報が出た時点から見ている。ただ、中には、「さまざまな情報が飛び交う中で、情報がどのようにコントロールされているのか分からない」というような記述もあった。正しい情報を得ることが難しいと感じている様子が伺えた。

    • ウクライナにCNNやBBCなどからたくさんの記者が行っているが、様々な事情から日本の記者が現地に入ることはなかなか難しい。それを歯がゆく思っているモニターもいた。そのような状況だと、情報の信ぴょう性についてフェイクであっても分からない。ウクライナの一般市民からもSNSなどでどんどん画像が送られてくる中で、何を基準にして、何を信じればいいのかという疑問の声も上がっている。ウクライナの情勢というのは、今後の報道の在り方の大きな転換点になるのではないかと感じている。

  • 【自由記述について】
    • 「今のテレビは映像を“編集の力”で面白くしようとしているところがあまり好きではない」と記述したモニターがいた。この感想は示唆的なのかもしれないと思う。素材の力をより効果的に伝えるために行う編集作業が、かえって素材の良さを削いでしまうこともあり、バランスがとても大切ということなのではないのか。

◆モニターからの報告◆

  • 【1年間で最も印象に残った番組について】
    • 『世界の果てまでイッテQ』(日本テレビ)この番組は芸人さんたちが毎回体を張って企画に取り組まれているからこそ面白いと感じる反面、やりすぎではないのか、体を壊さないかという心配もあります。その部分はうまく調整してほしいです。そう感じる一方で、コロナ禍で制限されたからこそ、この番組で国内の魅力や素晴らしさを再認識することができました。この1年間で最も視聴し、最も笑いを与えてもらった番組だと思います。これからも放送が続いてほしいです。(中学3年・女子・富山)

    • 『世界の果てまでイッテQ』(日本テレビ)どの回が印象に残っているかと聞かれると…毎回印象に残っています。メンバーがたくさん努力したショーなどを見られるのがとても楽しいです。くだらないギャグなどもあるのですが、イラストやシンプルな編集により、とても面白くなっているのも見ていてひかれるポイントであり、魅力なのかなと思います。コロナが終わった時には、もう一度、世界に飛んでいってほしいし、一般人が見られないような景色を届けてほしいです。(中学3年・女子・奈良)

    • 『クローズアップ現代+』(NHK総合)ウクライナ情勢は、自分が生きている間にこんな軍事侵攻が起こるとは思っていなかった私にとって、今年最も衝撃的なものだった。人道回廊についての内容で「遺体の映像が流れます」というテロップが流れてきた。逃げようとした遺体とともに置いてあった避難に必要な物を詰め込んだスーツケースを見て、これが戦争なのだと感じた。今まで見てきた白黒の戦争ではない、1か月前まで私たちと同じように家があった街がボロボロになっていて、何十キロもの道のりを子どもも歩いていく。SNSでリアルタイムに流れてくる現地の人の映像が本当に起こっていることなのだと実感させられた。戦争にはさまざまな被害があることがよく分かる。攻撃によるもの、攻撃による物資の不足によるもの、精神的なもの。今回の番組を通して、目に見えない被害がたくさんあるのだと痛感した。(高校2年・女子・東京)

    • 『ソーイング・ビー4』(NHK Eテレ)モデルに合わせて洋服を作る時に、自分の選んだ人をモデルにすることができる場面があって、その中にゲイの人がいて、男性が恋人として男性を連れてきていました。まだ、日本では“性„についての多様な考え方が広まっていない所があります。ですが、この番組の中でモデルとして男性を連れてきていた男性や、その周りの人などは「その事は変ではない」と思わせてくれるような、ふだんと全く変わらない接し方をしていました。こういった世界のことをたくさん放送して、もっとみんなに世界中の人の考え方を知ってもらいたいと思いました。(中学2年・女子・大分)

    • 『グレートトラバーズ「田中陽希501座 7年の軌跡』(NHK-BSプレミアム)自分の知らない景色を見るために、僕も何かに挑戦したくなった。田中陽希さんはテレビを通じて僕らに挑戦することの意味を教えてくれた。(中学3年・男子・静岡)

    • 『日曜劇場「ドラゴン桜」』(TBSテレビ)自分は、勉強が嫌いな人だから、この番組を見るまで本気で勉強したことがなかった。しかし、視聴して、ここで頑張ることにより、未来で楽しいことが待っているかもしれないと思えるようになり、今は少しずつではあるが勉強を続けている。(中学2年・男子・神奈川)

    • 『金曜ドラマ「妻、小学生になる。」』(TBSテレビ)ドラマを見る時間が現実から離れて楽しめる時間であると同時に、作品に込められたメッセージを感じることができる時間でもありました。特にそれを感じたのがこの番組でした。家族がいる温かさ、その幸せは当たり前ではないということ、そして前を向いて歩むことの大切さ、たくさんのことに気づかせてくれる作品だと思いました。(高校1年・女子・京都)

    • 『はじめてのおつかい 泣いて笑って3時間!新春の大冒険SP』(日本テレビ)以前からこの番組が好きでよく見ていました。私が特に好きなのは「あれから何年?」のコーナーです。これは、昔おつかいをした子どものその後を調査するもので、この番組が長寿番組であるからこそできる企画なのだと思います。一部では泣いている子どもまでおつかいに行かせる必要があるのかという意見もあるようですが、私は、純粋に子どもたちの成長を見届けることができる番組としてこれからも長く続いてほしいと思います。(高校1年・女子・東京)

    • 『大豆田とわ子と三人の元夫』(フジテレビ)日々の疲れを癒してくれるようなゆるい雰囲気から始まり、「また明日も頑張ろう!」と思わせてくれるような心温まる番組だと感じた。1年を通して、「また見たい」といちばん思った番組だった。(中学2年・女子・千葉)

    • 『スペシャルドラマ 必殺仕事人』(朝日放送テレビ)登場人物の描いたことを疑いもせず信じて広める町の人たちの様子が、今のSNS社会の悪いところをそのまま映し出しているなと思った。私たちもSNSを使う中で、真実か分からない情報を広め、誰かを傷つけてしまっているかもしれないと考えさせられた。時代劇で今私たちが抱える問題を考えるというのが面白いし、良いと思った。(中学3年・女子・京都)

    • 『オリンピック 卓球決勝(男女混合ダブルス)』水谷隼選手と伊藤美誠選手が中国人選手に勝ち、金メダルを取った瞬間が忘れられない。私は今年受験生だったため、毎日勉強漬けで悩むことが多かったが、このシーンを見ると、2人のように努力すれば必ず報われると信じて頑張ることができた。(中学3年・女子・千葉)

    • 『北京オリンピック』人の心を動かし、それぞれが称え合える平和の祭典、オリンピックを1年間に2回も見ることができ、より深く印象に残りました。コロナ禍で気持ちも落ち込みますが、こういった明るい話題が生まれるのはいいことだと思いました。(中学1年・女子・東京)

    • 『SCHOOL OF LOCK!』(エフエム東京)ゲストの秋元康さんが生活の中で細かなところでも注視して歌詞にしているという姿がよく伝わりました。何気ないことでも面白く考えて詞にしている秋元さんの視点は、私たちの生活の中でもいかせる部分が多くあると思います。例えば、友だちがしている小さなことでも、それを見つけるだけで発見になります。その発見を集めれば、人に良い思いをさせたり、場を和ませたりすると思います。これからもラジオでさまざまな発見、学びをしていきたいです。(中学2年・男子・長崎)

  • 【自由記述】

    • BPOのモニターになってから、家族でテレビを見る機会がかなり増えました。今までは、YouTubeやインターネットばかり見て、真剣にテレビを見ることはあまりありませんでした。しかし、しっかり見たことで情報の伝え方について考えさせられるきっかけになったとともに、毎月レポートを書く上で、語弊がないか、違う表現はないか、と文章を深く考えるようになりました。(中学1年・女子・東京)

    • 中高生モニターとしての活動を通して、テレビ番組をただ楽しむだけではなく、「このドッキリは不快に思う人がいるのではないか」とか「テロップが多くて見づらい」とか批判的な視点でもテレビを見てきました。そうする中で、全員が不快感なく楽しめる番組を作ることの難しさを感じました。また、SNSではテレビ番組についてのコメントが多数あることにも気づきました。「テレビ離れ」とよく言われますが、やはり今でもテレビの影響力は絶大であると思いました。(高校2年・女子・神奈川)

    • ウクライナとロシアの戦争が始まりました。どの情報が正しいのか、世界中のみんなが分からない状況になってきています。どの情報が正しいのか判断できるようにたくさんのことを身に付けたいと思っています。そして、メディアの方にも正しい情報を報じてほしいと思います。(中学3年・女子・奈良)

    • 最近のニュースではウクライナ侵攻が多く取り上げられています。しかし、中学生の私には言葉などが難しすぎて理解できない部分があるのでもう少し言葉を簡単に、分かりやすくしてほしいです。(中学3年・女子・宮崎)

    • 日本のテレビ局は他国のメディアに比べると現地での取材が少ないような気がしている。事実の説明に終始しているようで、これでは戦争の現実味がわかず、視聴者はどこか他人行儀に感じてしまうのではないか思う時がまれにある。(高校1年・男子・東京)

    • テレビをつけると殆どがウクライナ情勢の話題を取上げている。私は、最新の情報を知りたいので、YouTubeでニュースを見ることが多い。また、その中でも海外のニュース(CNN)などを見ている。テレビで放送されているニュースも勿論最新のものが多いが、その分信ぴょう性が薄いと私は思っている。なので、個人的にはYouTubeなどでいろんな国視点のニュースを見た方が情報収集の良い手段だと思っている。また、テレビは現状を伝えることがメインなので、今の私たちに何ができるか、なぜこのような事態が始まったのかなどは伝わってこない。テレビのニュースに依存するのではなく、自分から知っていかないと何も変わらないと思う。(高校1年・女子・埼玉)

    • ロシアのウクライナ侵攻について、はじめは他国のことだからと遠い存在のように感じていましたが、たくさんの情報番組がウクライナの現地の状況について取り上げているのを見て心が痛むことも多くなり、自分たちももっと国や政治について知るべきなのではと思うようになりました。改めて、メディアの影響力はとても大きいものだと思いました。(高校2年・女子・奈良)

    • ウクライナについて知ることはもちろん大切だけど、ロシアが今どのような状況かどうか知ることもこの軍事侵攻を理解するためには必要であるように思えた。報道に制限があるため難しいのかもしれないが、解決のために何かすることがあるのだとするなら、まず多くの側面から知りたいと思った。(高校2年・女子・東京)

    • ウクライナとロシアの戦争の報道が後を絶たない中、3月11日に東日本大震災の報道がどれくらいあったのかと思った。私は、少ないと思った。私は去年の夏に震災ボランティアで初めて岩手に行った。復興が進みきれいな街並みだった。でも、被災された方からの話は心に響くものばかりで、胸が痛んだ。だからこそ、震災を忘れずに伝えるためにも報道し続けるべきだと思う。(高校2年・女子・静岡)

    • コロナや戦争のことだけではなく、もっと良いニュースも知りたいと思うので番組の内容に入れてほしい。(中学1年・男子・神奈川)

    • テレビは私たちが情報を求めなくても自然と知ることができる大きなツールだと思っています。小さい頃は特にそのままのことを吸収します。それは良いことである反面、意識せず生じた情報の偏りなどもそのまま事実として知ることになると思います。耳、目、脳を通して印象づけられるテレビだからこそ、改めて情報の信憑性含めて慎重な報道に回帰してほしいです。(高校1年・女子・京都)

    • 今のテレビは全体的に、昔のテレビと違い映像を「編集の力」で面白くしようとしているところが、あまり好きではありません。(中学2年・男子・長崎)

    • どのテレビ番組も視聴者のニーズにこたえたいという根幹があると思いますが、人々が不快な思いをしないような番組をこれからも届けていってほしいと思います。これからもテレビを視聴していきたいです。(中学3年・女子・富山)

  • 【青少年へのおすすめ番組】

    • 『スペシャルドラマ「津田梅子~お札になった留学生~」』(テレビ朝日)津田梅子が女性のために動いたことで、今私たちはまだ対等になったわけではないけど、男子と共に学び、仕事をして自分の意見を言えるようになったんだとありがたく思った。(中学3年・女子・京都)

    • 『スペシャルドラマ「津田梅子~お札になった留学生~」』(テレビ朝日)非常に良いドラマだったが、唯一残念な点があったとすれば、女子英学塾を創立するところまでの津田梅子の生い立ち、性格に関する描写に時間を割きすぎて、ドラマの最後の方が駆け足になってしまったように感じた点である。恐らく相当数の人々がこのドラマを見て津田梅子について知るであろうことを考えると、できることならもう少し津田梅子の功績を取り上げた方が、五千円札に採用された理由が分かりやすかったのではないだろうか。(高校1年・男子・東京)

    • 『スペシャルドラマ「津田梅子~お札になった留学生~」』(テレビ朝日)約140年経った現代も、日本では完全な男女平等が達成されていないように感じるのは、梅の時代から人々の意識が変わっていないからだと思います。再来年には五千円札の顔となる津田梅子の生き方を通じて、日本人の価値観や現代まで続く男女間格差の問題について考えさせられました。(高校1年・女子・東京)

    • 『モンモンZ』(NHK Eテレ)恋愛に対する価値観の違いや悩みについて正直に話し合う新鮮な雰囲気が面白かった。(中学2年・女子・千葉)

    • 『ライオンのグータッチ』(フジテレビ)何かに打ち込む子どもたちを応援する番組の姿勢がとても温かいなと思います。(高校1年・女子・京都)

    • 『ライオンのグータッチ』(フジテレビ)私も卓球をしていて、水谷隼選手は本当にすごい選手だと思う。そんな選手から直接指導をしてもらえることは、一生の宝物になり、卓球へのモチベーションアップにもつながると思った。また、直接指導を受けることができ、自信にもつながると思った。指導を受けていた子どもは、小学5年生で卓球を始めて4年にもかかわらず、強くなりたいという思いで名門クラブに移籍したことだけでもすごいなと思った。そして、水谷選手から教えてもらったサーブを毎日クラブに早く来て、練習する姿に感心してしまった。このような姿を見て、私も負けてられないなと背中を押された。(高校2年・女子・静岡)

委員退任について

中橋委員が3月末で任期満了となり、退任することになりました。2期6年務められました。

今後の予定について

2022年度の中高生モニターのメンバーが決定したことおよび月別のテーマの予定について事務局より報告がありました。

以上